説明

活性化合物を含んでなる顆粒の安定化

本発明は酵素顆粒を調製するプロセスに関し、酵素を含んでなる水性混合物を顆粒形成プロセスに供給する工程を含んでなるとともに、当該混合物のpHを7よりも高くするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素含有混合物を含んでなる顆粒に関し、顆粒形成プロセスに供給される前記混合物のpHを7よりも高くするものである。本発明は更に、前記顆粒を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性化合物を乾燥固体粒子又は顆粒に導入することにより、前記活性化合物を不活性化から保護し、及び/又は、前記活性化合物からその周囲を保護することが、当該技術分野では知られている。更には、前記活性化合物含有粒子に安定剤を導入することにより、前記活性化合物が環境中の攻撃性物質によって不活性化するのを防ぐことも、当該技術分野では知られている。
【0003】
EP206417には、酵素コア及びアルカリ緩衝塩被膜を含んでなる酵素顆粒状組成物が開示されている。
【0004】
酵素含有造粒物の酵素活性の低下を防止する手法が、特開昭62−79298号公報に開示されている。本文献には、酵素を含有するコア部が、pH7〜11のアルカリ緩衝塩を含有する保護層で被覆されてなる酵素組成物が記載されている。
【0005】
EP415652及びEP290223には、被覆された酵素を含んでなる漂白組成物が開示されており、また、この被膜に、pHが11よりも高いケイ酸ナトリウム等のアルカリ化合物が含まれていてもよい旨が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い保存安定性を有する酵素含有顆粒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべき事に、酵素顆粒形成プロセスに供給される酵素混合物のpHを7よりも高い値に調整することにより、酵素含有顆粒の保存安定性を改善できることが明らかになった。
即ち、本発明の第1の要旨によれば、酵素顆粒を調製する方法であって、
a)酵素を含有し、pHが7よりも高い水性液体を調製する工程と、
b)工程a)の水性液体を造粒機に供給する工程と、
c)前記造粒機で粒子を調製する工程とを含んでなる方法が提供される。
本発明は更に、上述の方法により得られうる顆粒と、当該顆粒の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
定義
本発明において「%RH」とは、空気の相対湿度であると解すべきである。100%RHとは、特定の温度における水分飽和空気のことであり、よって%RHとは、空気の水分飽和率を指すことになる。
【0009】
化合物又は物質の「定常吸湿度」(本発明においてはCHと略称される場合がある。)とは、前記化合物の飽和水溶液を前記化合物の固相と接した状態で所定温度の閉空間内に閉じ込めた場合における、前記飽和水溶液と平衡状態にある周辺空気の%RHであると解すべきである。この定義は「Handbook of chemistry and physics」、CRC Press, Inc., Cleveland, USA, 58th edition, p E46, 1977-1978に拠るものである。これに従えば、ある化合物についてCH20℃=50%とは、化合物の飽和水溶液が20℃で湿度50%の空気と平衡状態になることを意味する。即ち、定常吸湿度とは、ある化合物の吸湿特性を表わす指標である。
【0010】
本発明において酵素含有混合物の「pH」とは、酵素含有混合物を造粒プロセス/造粒機に供給する前に室温で測定された酵素含有水性混合物のpHであると解すべきである。
【0011】
本発明において「酵素含有混合物」は「酵素含有水性混合物」と同義であり、酵素を含有する水性液体であると解すべきである。当該混合物は、酵素以外の成分を含んでいてもよい。
【0012】
本発明において「酵素マトリックス」とは、酵素含有顆粒中のマトリックスであると解すべきである。「酵素含有混合物」との違いは、「酵素マトリックス」は製品顆粒、即ち酵素顆粒の調製後に得られる顆粒中に存在する、「酵素含有混合物」の乾燥形態であるという点にある。
【0013】
本発明において「酵素濃縮物」とは、酵素の濃度を高める処理を施した発酵濾過液であると解すべきである。
【0014】
序論
顆粒に含まれる酵素の安定性は、保存時の周辺環境の影響を受ける。これは前記安定性を低下させる化学的又は物理的な因子となるからである。特に湿度は、酵素含有顆粒の安定性にとって重要な因子である。あまりに高い湿度は、前記安定性に対して好ましくない影響を与える。
【0015】
通常、酵素の造粒に使用される酵素濃縮物のpHは、6未満に調整される。これは、微生物の安定性が弱酸性環境下で向上することが知られているためである。
【0016】
我々は、驚くべきことに、酵素顆粒の製剤プロセスに使用される酵素含有水性液体のpHを高くすることにより、酵素含有顆粒の保存安定性を著しく改善できることを見出した。このようにpHを高くしても、酵素が損なわれることはないことが見出された。酵素顆粒の製剤時に酵素含有液体のpHを高くすることにより、顆粒の保存後の残存酵素活性が著しく向上する。
【0017】
我々は更に、追加の水分障壁、例えば塩被膜を組み合わせることにより、保存安定性がより一層向上し、より高い残存酵素活性が得られることを見出した。この顕著な改善は、相対湿度が高い場合にも同様にみられる。
【0018】
本発明の顆粒
本発明は、コア及び被膜を含んでなる顆粒に関する。ここで、前記コアは、酵素含有水性混合物の形態で顆粒形成プロセスに加えられた酵素を含んでなり、前記混合物は7よりも高いpHを有する。
【0019】
本発明の顆粒は酵素マトリックスを含んでなる。酵素マトリックスは、酵素を含有し、また、追加の造粒材料を含有していてもよい水性酵素含有混合物から調製される。前記顆粒は更に、少なくとも一種の被膜、特に塩被膜を含んでいてもよい。酵素マトリックスは前記顆粒のコアに存在するが、非活性コア粒子上に導入されていてもよく、コア自体であってもよい。本発明の特定の実施形態によれば、非活性コア上に酵素層が形成される。
【0020】
本発明の顆粒は、従来公知のpHが7未満、例えば6未満の酵素含有水性混合物を用いて得られた顆粒に比べて、保存安定性が向上している。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明はコア及び被膜を含んでなる顆粒に関する。ここで、前記コアは、酵素含有水性混合物の形態で顆粒形成プロセスに加えられた酵素を含んでなり、前記混合物は7よりも高いpHを有する。得られる顆粒は、pHが7未満の酵素含有水性混合物を用いて調製された顆粒に比べて、保存安定性が向上している。本発明のより特定の実施形態は、コア及び被膜を含んでなる顆粒に関する。ここで前記コアは、酵素含有水性混合液の形態で造粒プロセスに加えられた酵素を含んでなる。
【0022】
本発明の顆粒は、保存時の残存酵素活性に優れており、40℃の密閉ジャー内で13週間保存した後に測定される当該活性の増分が、5%超、例えば10%超、更には20%超増加する。特定の実施形態によれば、40℃の密閉ジャー内で13週間保存した後における前記顆粒の残存酵素安定性が、50%超増加する。本発明のより特定の実施形態によれば、40℃の密閉ジャー内で13週間保存した後における、酵素含有コア粒子の残存酵素活性は、5%以上、例えば10%以上、15%以上、20%以上、更には30%以上である。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、40℃の密閉ジャー内で13週間保存した後における本発明の顆粒の残存酵素活性は、50%以上、例えば60%以上、70%以上、80%以上、更には90%以上である。
【0024】
酵素含有混合物
酵素含有混合物は、酵素を含んでなる液体である。酵素を含有するとともに、追加の造粒材料を含有していてもよく、更に水等の液体を含んでいる。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、前記酵素含有混合物は、酵素濃縮物である。本発明の別の実施形態によれば、前記酵素含有混合物は、追加の造粒材料と混合された酵素濃縮物である。造粒プロセスの前に、前記酵素含有混合物のpHを、7よりも高く、例えば8よりも高く、更には9よりも高く、例えば更には10よりも高い値に調整する。本発明の特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは7から13の間である。本発明のより特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは8から12の間である。本発明の更に特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは9から12の間である。本発明の特に特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは9から11の間である。本発明の最も特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは10から11の間である。本発明の特定の実施形態によれば、酵素含有混合物のpHは12未満、特に11未満である。
【0026】
前記酵素含有混合物をアルカリpHにするには、アルカリ化合物、例えば水酸化ナトリウムを混合物に加えればよい。
【0027】
酵素の他に、酵素含有マトリックスは、任意の手法で構成することができ、また、混合物に所望の機能特性を付与する、任意の材料から構成することができる。例えば、前記混合物は、水性媒体に導入することにより容易に酵素を放出させる材料からなっていてもよい。好ましい一実施形態によれば、前記コア粒子は、非活性コアの表面に前記酵素含有混合物を吸着させ、及び/又は、前記酵素含有混合物を塗布することにより構成される。
【0028】
別の特定の実施形態によれば、前記コアの調製は、所謂 T-granulate と同様に行なうことができる。これは、酵素と造粒材料とを混合することにより、コア全体に亘って酵素が導入された顆粒を形成したものであり、例えばUS4,106,991の Example 1 等に記載されている。前記コアの調製には、従来の任意の手法及び非酵素材料を用いることができる。従来公知のコア及び材料の例としては、中でも、(特に)US4,106,991、EP170360、EP304332、EP304331、EP458849、EP458845、WO97/39116、WO92/12645、WO89/08695、WO89/08694、WO87/07292、WO91/06638、WO92/13030、WO93/07260、WO93/07263、WO96/38527、WO96/16151、WO97/23606、US5,324,649、US4,689,297、EP206417、EP193829、DE4344215、DE4322229A、DD263790、特開昭61−162185号公報、特開昭58−179492号公報等に記載のものが挙げられる。
【0029】
アルカリ化合物
酵素含有混合物に加えることにより7よりも高いpHを付与する化合物であれば、任意の化合物を用いて、酵素含有混合物のpHを調整することができる。好適な化合物としては塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ緩衝塩等が挙げられる。
【0030】
好適な緩衝塩としては、塩化カリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。その他の好適な塩を用いてもよい。
【0031】
酵素
本発明において、酵素は如何なる酵素であってもよく、また、複数種の酵素の組み合わせであってもよい。よって、「酵素」という場合には、通常は単一の酵素又は複数種の酵素の組み合わせを含むものと解すべきである。酵素の変異種(例えば、組み換え技術により作製されるもの)も、この「酵素」の語義に含まれると解すべきである。このような酵素の変異種の例は、EP251,446(Genencor)、WO91/00345(Novo Nordisk)、EP525,610(Solvay)、及びWO94/02618(Gist-Brocades NV)等に開示されている。
【0032】
酵素は Enzyme Nomenclature(NC-IUBMB、1992)ハンドブックに基づいて分類される。また、インターネットの ENZYME サイト(http://www.expasv.ch/enzyme/)も参照されたい。ENZYME は、酵素の命名法に関する情報のリポジトリである。これは主に、国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology:IUB-MB)のNomenclature Committeeの勧告(Academic Press, Inc., 1992)に基づいており、特徴付け及びEC(Enzyme Commission)番号の付与が行なわれた各種の酵素が記載されている(Bairoch A. The ENZYME database, 2000, Nucleic Acids Res 28:304-305)。このIUBMB Enzyme Nomenclature は、酵素の基質特異性に基づくものであるが、酵素の分子機能に基づいている場合もある。こうした分類法は酵素の構造的特徴を反映したものではない。
【0033】
特定のグリコシドヒドロラーゼ酵素、例えばエンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、ガラクタナーゼ、マンナナーゼ、デキストラナーゼ、及びα−ガラクトシダーゼ等についての別の分類法として、アミノ酸配列の類似度に基づくファミリーによる分類法が、数年前から提案されている。これらは現在、90の異なるファミリーに分類されている。CAZy(ModO)インターネットサイト(Coutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999))Carbohydrate-Active Enzymes サーバ(URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/~cazy/CAZY/index.html)を参照されたい(対応文献:Coutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999) Carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach. In "Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering", H.J. Gilbert, G. Davies, B. Henrissat and B. Svensson eds., The Royal Society of Chemistry, Cambridge, pp. 3-12;Coutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999) The modular structure of cellulases and other carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach. In "Genetics, Biochemistry and Ecology of Cellulose Degradation"., K. Ohmiya, K. Hayashi, K. Sakka, Y. Kobayashi, S. Karita and T. Kimura eds., Uni Publishers Co., Tokyo, pp. 15-23)。
【0034】
本発明の顆粒に導入してもよい酵素の種類としては、オキシドレダクターゼ(EC 1.-.-.-)、トランスフェラーゼ(EC 2.-.-.-)、ヒドロラーゼ(EC 3.-.-.-)、リアーゼ(EC 4.-.-.-)、イソメラーゼ(EC 5.-.-.-)、及びリガーゼ(EC 6.-.-.-)が挙げられる。
【0035】
本発明は特にオキシドレダクターゼに有用であることが分かっている。
本発明において好適なオキシドレダクターゼとしては、ペルオキシダーゼ(EC 1.1.1.1)、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、及びグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)が挙げられる。市販のオキシドレダクターゼ(EC 1.-.-.-)の例として、GluzymeTM(Novozymes A/S 社製酵素)が挙げられる。その他のオキシドレダクターゼは、別の業者から入手可能である。
【0036】
好適なトランスフェラーゼとしては、以下の何れかのサブクラスに属するトランスフェラーゼが挙げられる。
a.一炭素基(one-carbon groups)を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.1);
b.アルデヒド又はケトン残基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.2);アシルトランスフェラーゼ(EC 2.3);
c.グリコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4);
d.メチル基以外のアルキル又はアリール基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.5);
e.窒素含有基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.6)。
【0037】
本発明において最も好適な種類のトランスフェラーゼとしては、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase, protein-glutamine γ-glutamyltransferase;EC 2.3.2.13)が挙げられる。
他の好適なトランスフェラーゼの例は、WO96/06931(Novo Nordisk A/S)に記載されている。
【0038】
本発明は特にヒドロラーゼ、例えばフィターゼ(phytases)に有用であることが確認されている。
【0039】
本発明において好適なヒドロラーゼとしては:カルボキシルエステルヒドロラーゼ(carboxylic ester hydrolases:EC 3.1.1.-)、例えばリパーゼ(EC 3.1.1.3);フィターゼ(EC 3.1.3.-)、例えば3−フィターゼ(EC 3.1.3.8)及び6−フィターゼ(EC 3.1.3.26);グリコシダーゼ(EC 3.2、これらは以下「カルボヒドラーゼ」と呼ぶ群に分類される。)、例えばα−アミラーゼ(EC 3.2.1.1);ペプチダーゼ(EC 3.4、プロテアーゼとも呼ばれる。);並びにその他のカルボニルヒドロラーゼ(carbonyl hydrolases)が挙げられる。市販のフィターゼの例としては、Bio-FeedTM Phytase(Novozymes)、RonozymeTM P(DSM Nutritional Products)、NatuphosTM(BASF)、FinaseTM(AB Enzymes)、及び PhyzymeTM product シリーズ(Danisco)が挙げられる。他の好適なフィターゼの例としては、WO98/28408、WO00/43503、及びWO03/066847に記載のものが挙げられる。
【0040】
本発明は特にカルボヒドラーゼ、例えばアミラーゼに有用であることが分かっている。
【0041】
ここで「カルボヒドラーゼ」という語は、特に五員及び六員環構造の炭化水素鎖(例えばスターチやセルロース)を分解可能な酵素(例えばグリコシダーゼ、EC 3.2)に加えて、炭化水素の異性化、例えばD−グルコース等の六員環構造からD−フルクトース等の五員環構造への異性化が可能な酵素をも指すものとして使用する。
【0042】
適切なカルボヒドラーゼを以下に挙げる(括弧内にEC番号を記す。):α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ(glucan 1,4-α-glucosidases;EC 3.2.1.3)、エンド−1,4−β−グルカナーゼ(endo-1,4-beta-glucanase、cellulases;EC 3.2.1.4)、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ(endo-1,3(4)-β-glucanases;EC 3.2.1.6)、エンド−1,4−β−キシラナーゼ(endo-1,4-β-xylanases;EC 3.2.1.8)、デキストラナーゼ(dextranases;EC 3.2.1.11)、キチナーゼ(chitinases;EC 3.2.1.14)、ポリ−ガラクツロナーゼ(poly-galacturonases;EC 3.2.1.15)、リゾチーム(EC 3.2.1.17)、β−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)、α−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)、β−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23)、アミロ−1,6−グルコシダーゼ(amylo-1,6-glucosidases;EC 3.2.1.33)、キシラン1,4−キシロシダーゼ(xylan 1,4-β-xylosidases;EC 3.2.1.37)、グルカンエンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ(glucan endo-1,3-β-D-glucosidases;EC 3.2.1.39)、α−デキストリンエンド−1,6−グルコシダーゼ(α-デキストリン endo-1,6-α-glucosidases;EC 3.2.1.41)、スクロースα−グルコシダーゼ(sucrose α-glucosidases;EC 3.2.1.48)、グルカンエンド−1,3−α−グルコシダーゼ(glucan endo-1,3-α-glucosidases;EC 3.2.1.59)、グルカン1,4−β−グルコシダーゼ(glucan 1,4-β-glucosidases;EC 3.2.1.74)、グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ(glucan endo-1,6-β-glucosidases;EC 3.2.1.75)、ガラクタナーゼ(galactanases;EC 3.2.1.89)、アラビナンエンド−1,5−α−L−アラビノシダーゼ(arabinan endo-1,5-α-L-arabinosidases;EC 3.2.1.99)、ラクターゼ(lactases;EC 3.2.1.108)、キトサナーゼ(chitosanases;EC 3.2.1.132)、及びキシロースイソメラーゼ(xylose isomerases;EC 5.3.1.5)。
【0043】
市販のプロテアーゼ(ペプチダーゼ)の例としては、KannaseTM、EverlaseTM、EsperaseTM、AlcalaseTM、NeutraseTM、DurazymTM、SavinaseTM、OvozymeTM、PyraseTM、Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)、Bio-FeedTM Pro、及びClear-LensTM Pro(何れもNovozymes A/S, Bagsvaerd, Denmark から入手可能)が挙げられる。その他の好適なプロテアーゼとしては、WO01/58275及びWO01/58276に記載のものが挙げられる。
【0044】
その他の市販のプロテアーゼとしては、RonozymeTM Pro、MaxataseTM、MaxacalTM、MaxapemTM、OpticleanTM、PropeaseTM、PurafectTM、及びPurafect OxTM(Genencor International Inc.、Gist-Brocades、BASF、又は DSM Nutritional Products から入手可能)が挙げられる。
【0045】
市販のリパーゼの例としては、LipexTM、LipoprimeTM、LipopanTM、LipolaseTM、LipolaseTM Ultra、LipozymeTM、PalataseTM、ResinaseTM、NovozymTM 435、及びLecitaseTM (何れも Novozymes A/S から入手可能)が挙げられる。
【0046】
その他の市販のリパーゼとしては、LumafastTM(Genencor International Inc. 社製 Pseudomonas mendocina lipase);LipomaxTM(Gist-Brocades/Genencor Int. Inc. 社製 Ps. pseudoalcaligenes lipase;及び Solvay Enzymes 社製 Bacillus sp. lipase が挙げられる。その他のリパーゼは他の業者から入手可能である。
【0047】
市販のカルボヒドラーゼの例としては、Alpha-GalTM、Bio-FeedTM Alpha、Bio-FeedTM Beta、Bio-FeedTM Plus、Bio-FeedTM Wheat、Bio-FeedTM Z、NovozymeTM 188、CarezymeTM、CelluclastTM、CellusoftTM、CelluzymeTM、CeremylTM、CitrozymTM、DenimaxTM、DezymeTM、DextrozymeTM、DuramylTM、EnergexTM、FinizymTM、FungamylTM、GamanaseTM、GlucanexTM、LactozymTM、LiquezymeTM、MaltogenaseTM、NatalaseTM、PentopanTM、PectinexTM、PromozymeTM、PulpzymeTM、NovamylTM、TermamylTM、AMGTM(Amyloglucosidase Novo)、MaltogenaseTM、SweetzymeTM、及び AquazymTM(何れもNovozymes A/S から入手可能)が挙げられる。その他のカルボヒドラーゼは別の業者から入手可能であり、その例としては、RoxazymeTM 及び RonozymeTM product シリーズ(DSM Nutritional Products)、AvizymeTM、PorzymeTM、及びGrindazymeTM product シリーズ(Danisco, Finnfeeds)、並びに、NatugrainTM(BASF)、PurastarTM、及び PurastarTM OxAm(Genencor) が挙げられる。
【0048】
その他の市販の酵素としては、MannawayTM、PectawayTM、StainzymeTM、及び RenozymeTM が挙げられる。
【0049】
本発明は特に、ラッカーゼ活性を示す酵素の製剤との関係で有用であることが分かっている。
ラッカーゼ活性を示す化合物としては、国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology:IUB-MB)のNomenclature Committeeによって規定される酵素分類の EC 1.10.3.2 に含まれる任意のラッカーゼ酵素でも、若しくはこれらに由来する断片であってラッカーゼ活性を示す任意の断片でもよく、又は、同様の活性を示す任意の化合物、例えばカテコールオキシダーゼ(catechol oxidase:EC 1.10.3.1)、o−アミノフェノールオキシダーゼ(o-aminophenol oxidase:EC 1.10.3.4)、若しくはビリルビンオキシダーゼ(bilirubin oxidase:EC 1.3.3.5)でもよい。
【0050】
ラッカーゼ酵素及び/又はラッカーゼ活性を示す化合物のうち好適なものは、微生物由来の酵素である。これらの酵素は、植物に由来するものでも、細菌(bacteria)に由来するものでも、真菌(fungi)(糸状菌(filamentous fungi)及び酵母(yeasts)を含む。)に由来するものでもよい。
【0051】
真菌由来の好適な例としては、Aspergillus、Neurospora、例えば N. crassa、Podospora、Botrytis、Collybia、Fomes、Lentinus、Pleurotus、Trametes、例えば T. villosa 及び T. versicolor、Rhizoctonia、例えば R. solani、Coprinus、例えば C. cinereus、C. comatus、C. friesii、及び C. plicatilis、Psathyrella、例えば P. condelleana、Panaeolus、例えば P. papilionaceus、Myceliophthora、例えば M. thermophila、Schytalidium、例えば S. thermophilum、PoIyporus、例えば P. pinsitus、Phlebia、例えば P. radita(WO92/01046)、或いは Coriolus、例えば C. hirsutus(特開平2−238885号)の菌株に由来するラッカーゼが挙げられる。
【0052】
細菌由来の好適な例としては、バチルス属(Bacillus)の菌株に由来するラッカーゼが挙げられる。
【0053】
本発明の特定の実施形態によれば、ラッカーゼは ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、チョレイ属(Polyporus)、スキタリジウム属(Scytalidium)、又はリゾクトニア属(Rhizoctoni)に由来する。より特定の実施形態によれば、ラッカーゼは Coprinus cinereus、Myceliophthora thermophila、Polyporus pinsitus、Scytalidium thermophilum、又は Rhizoctonia solani に由来する。
【0054】
ラッカーゼ又はラッカーゼ関連酵素は、当該ラッカーゼをコード化したDNA配列、並びに、ラッカーゼをコード化したDNA配列の発現を可能にする機能をコード化したDNA配列を担持する組み換えDNAベクターにより形質転換された宿主細胞を培地中、ラッカーゼ酵素の発現を許容する条件下で培養する工程と、前記培養物からラッカーゼを回収する工程とを含んでなる方法によって製造しうるものであってもよい。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、酵素は、ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、チョレイ属(Polyporus)、スキタリジウム属(Scytalidium)及びリゾクトニア属(Rhizoctoni)由来のラッカーゼからなる群より選択される。特に、それぞれWO95/33836、WO96/00290、WO95/33837、及びWO95/07988で挙げられている、ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、チョレイ属(Polyporus)、スキタリジウム属(Scytalidium)及びリゾクトニア属(Rhizoctoni)に由来する酵素は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0056】
ラッカーゼ活性(LACU)の決定
ラッカーゼ(特に好適にはチョレイ属(Polyporus)ラッカーゼ)活性は、好気性条件下でのシリンガルダジン(syringaldazin)の酸化により決定することができる。生成した紫色は、530nmで光度測定される。分析条件は、19mMシリンガルダジン、23mM酢酸バッファ、pH5.5、30℃、反応時間1分である。
【0057】
1ラッカーゼユニット(LACU)は、上記条件において、1分間当たり1.0mmolのシリンガルダジンの転化を触媒する酵素量である。
【0058】
ラッカーゼ活性(LAMU)の決定
ラッカーゼ活性は、好気性条件下でのシリンガルダジンの酸化により決定することができる。生成した紫色は、530nmで測定される。分析条件は、19mMシリンガルダジン、23mM酢酸バッファ、pH7.5、30℃、反応時間1分である。
【0059】
1ラッカーゼユニット(LAMU)は、上記条件において、1分間当たり1.0mmolのシリンガルダジンの転化を触媒する酵素量である。
【0060】
不活性コア
不活性(inert)コアは、非活性(non-active)コアと同義であり、本発明のプロセスに供給される際には実質的に酵素を含んでいない(enzyme free)コア粒子を表わす。不活性コアは、担持核(carrier nuclei)でも、偽核(placebo nuclei)でも、種核(seeds)でもよく、その上に前記酵素含有混合物が積層されていてもよい。この不活性コアは、無機塩、糖、糖アルコール、有機酸や有機塩等の有機小分子、粘土やケイ酸塩等のミネラル、或いはこれらのうち二以上の組み合わせの何れであってもよい。顆粒の調製時には、この不活性コア上/内に酵素が吸着される。
【0061】
本発明の特定の実施形態においては、前記酵素含有混合物を不活性コア上に塗布することにより、前記コア粒子が調製される。
【0062】
追加の造粒材料
顆粒に導入される追加の造粒材料としては、バインダー、多糖類、合成ポリマー、ワックス、促進剤(enhancing agents)、フィラー、繊維材料、酵素安定化剤、溶解化剤、架橋剤、懸濁剤、粘度調整剤、軽量球体(light spheres)、脱塩素剤、可塑剤、顔料、塩、潤滑剤(例えば界面活性剤や帯電防止剤)、及び芳香剤が挙げられる。
【0063】
追加の造粒材料は、酵素含有混合物を顆粒形成プロセスに供給する前にこの混合物に加えてもよく、前記プロセスに別途加えてもよい。
【0064】
バインダー
好適なバインダーは、融点が高いか、或いは融点を全く有さず、蝋性を有さないバインダーであり、例としては、ポリビニルピロリドン、デキストリン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はCMCが挙げられる。好適なバインダーとしては、デキストリン等の炭水化物バインダー、例えば Glucidex 21 D や Avedex W80 が挙げられる。
【0065】
多糖類
本発明の多糖類は未修飾の天然多糖類であってもよく、修飾された天然多糖類であってもよい。
好適な多糖類としては、セルロース、ペクチン、デキストリン、及びスターチが挙げられる。スターチは水に対して可溶でもよく、不溶でもよい。
【0066】
本発明の特定の実施形態によれば、多糖類はスターチである。本発明の特定の実施形態によれば、多糖類は不溶性スターチである。
【0067】
本発明においては、広範な種類の植物材料由来の天然スターチが(スターチ自体としても、修飾スターチの出発物質としても)好適である。適切なスターチとしては、米、とうもろこし、小麦、ジャガイモ、オート麦、キャッサバ、サゴヤシ、ユッカ、大麦、サツマイモ、モロコシ、ヤムイモ、ライ麦、キビ、ソバ、クズウコン、タロイモ、ヤウテア由来のスターチが挙げられる。これらは例えば粉状であってもよい。
【0068】
本発明において好適なスターチとしては、キャッサバスターチが挙げられる。これに関して言及すると、キャッサバ及びキャッサバスターチは、タピオカ、マニオク、マンディオカ、マニホト等、各種の別称でも知られている。
【0069】
本発明において「修飾スターチ」は、天然スターチに対して少なくとも部分的に、ある種の化学修飾、酵素修飾、及び/又は物理若しくは物理化学修飾を加えたものであって、通常は、その特性が「親の」スターチから変化したものを指す語として使用する。
【0070】
合成ポリマー:
合成ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスルフォネート、ポリカルボキシレート、及びこれらのコポリマーから選択されるが、特に水溶性のポリマー又はポリマーである。
【0071】
ワックス
本発明において「ワックス」とは、その融点が25〜150℃、好適には30から100℃、より好適には35から85℃、最も好適には40から75℃のポリマー材料を指すものと解すべきである。ワックスは室温、25℃で固体であることが好ましい。下限は、ワックスが融解し始める温度と、顆粒又は顆粒を含んでなる組成物が保存される温度との差が、適切な温度、20から30℃となるように設定することが好ましい。
【0072】
顆粒によっては、例えば洗剤産業で使用される顆粒の場合は、ワックスの好ましい特徴の一つとして、ワックスが水に対し、特に中性又はアルカリ性の溶液に対して、可溶性又は分散性を有するという点が挙げられる。これによって、被覆された本発明の粒子を水溶液中に導入すると、即ちそれを水で希釈すると、ワックスが分解及び/又は溶解して、粒子中に含まれている活性物質が水溶液に迅速に放出され、溶解するようになる。水溶性ワックスの例としては、ポリエチレングリコール(PEG's)が挙げられる。水不溶性ワックスのうち、水溶液に分散可能なものとしては、トリグリセリドやオイルが挙げられる。顆粒によっては、例えば食用の顆粒の場合には、被膜中に不溶性ワックスを含んでいてもよい。
【0073】
本発明のワックス組成物は、化学的に合成される任意のワックスを含んでいてもよい。また同様に、天然の原料から分離されたワックスや、その誘導体を含んでいてもよい。即ち、本発明のワックス組成物は、以下に挙げるリストから選択されるワックスを含んでいてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0074】
- ポリエチレングリコール、PEG。分子サイズの異なる様々なPEGワックスが市販されており、分子サイズの低いPEGはその融点も低い。好適なPEGの例としては、PEG 1500、PEG 2000、PEG 3000、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、PEG 9000 等が挙げられ、例えばBASF 社(Pluriol E シリーズ)、Clariant 社、Ineos 社から入手できる。ポリエチレングリコールの誘導体も使用可能である。
【0075】
- ポリプロピレン(例えば、BASF 社製ポリプロピレングリコール Pluriol P シリーズ)若しくはポリエチレン、又はそれらの混合物。ポリプロピレン及びポリエチレンの誘導体も使用可能である。
【0076】
- 室温において固体の非イオン性界面活性剤。例としては、高濃度のエトキシ基を有するエトキシ化脂肪アルコール、例えば、BASF社製 Lutensol AT シリーズ等。1分子当たりのエチレンオキシド量の異なるC16−C18の脂肪アルコール、例えば、Lutensol AT11、AT13、AT25、AT50、AT80。ここで、番号はエチレンオキシド基の平均数を表わしている。その他に有用なものとして、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドのポリマー、又はこれらのブロックポリマー等のコポリマー、例えばBASF社製 Pluronic PE 6800。エトキシ化脂肪アルコールの誘導体も挙げられる。
【0077】
- 天然原料から分離されたワックス、例えばカルナウバワックス(融点80〜88℃)、キャンデリラワックス(融点68〜70℃)、及び蜜蝋。その他のワックス及びその誘導体としては、動物や植物由来のワックス、例えば海産物由来のワックス。水素化された植物油や動物性油脂。これらのワックスの例としては、水素化牛脂、水素化パーム油、水素化綿種子、及び/又は 水素化大豆油。ここで「水素化」とは、トリグリセリド等における不飽和炭化水素鎖を飽和すること、即ち、炭素=炭素二重結合を炭素−炭素一重結合に変換することと解すべきである。水素化パーム油は、例えば独 Hobum OeIe und Fette GmbH や独 Deutche Cargill GmbH 等から市販されている。
【0078】
- 脂肪酸アルコール、例えば55〜60℃の融点を有する直鎖状の長鎖脂肪酸アルコール、独 Condea Chemie GMBH 製 NAFOL 1822(C18, 20, 22)。脂肪酸アルコールの誘導体。
【0079】
- モノグリセリド及び/又はジグリセリド、例えばグリセリルステアレートであって、ステアレートがステアリン酸及びパルミチン酸の混合物であるものが、ワックスとして有用である。例としては、デンマークの Danisco Ingredients 社製の Dimodan PM が挙げられる。
【0080】
- 脂肪酸、例えば水素化された直鎖状の長鎖脂肪酸、及び脂肪酸の誘導体。
- パラフィン、即ち固体炭化水素。
- 微結晶ワックス。
【0081】
更なる実施形態によれば、本発明において有用なワックスとして、CM. McTaggart et. al., Int. J. Pharm. 19, 139 (1984) 、又は、Flanders et. al., Drug Dev. Ind. Pharm. 13, 1001 (1987) に記載のものが挙げられる。これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0082】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明のワックスは二種以上の異なるワックスの混合物である。本発明の特定の実施形態によれば、これらのワックス又はその組み合わせは、PEG、エトキシ化された脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸アルコール、及びグリセリドからなる群より選択される。
【0083】
本発明の別の特定の実施形態によれば、ワックスは合成ワックスから選択される。最も特定の実施形態によれば、本発明のワックスはPEG又は非イオン性界面活性剤である。本発明の最も特定の実施形態によれば、ワックスはPEGである。
【0084】
発酵ブロス
本発明に係る発酵ブロスは、バイオマス、例えば微生物細胞及び/又はその断片を含んでなる。
【0085】
好ましい実施形態によれば、発酵ブロスは、10%以上のバイオマスを含んでなる。より好ましくは50%以上、より一層好ましくは75%以上、最も好ましくは95%以上の、発酵に由来するバイオマスを含んでなる。別の好ましい実施形態では、ブロスは0〜31%w/wの乾燥物質を含有する。好ましくは0〜20%w/w、より好ましくは0〜15%w/w、例えば10〜15%w/wの乾燥物質を含有する。但し乾燥物質0%は上記範囲から除外される。バイオマスは上記乾燥物質の90%w/w以下、好ましくは75%w/w以下、より好ましくは50%w/w以下を占める。一方、酵素は乾燥物質の50%w/w以下、好ましくは25%w/w以下、より好ましくは10%w/w以下を占める。
発酵ブロスを濾過によって精製し、発酵濾物としてもよい。
【0086】
促進剤
ラッカーゼ等の酵素の中には、その基質特異性が十分でないために、実用に際して促進剤の併用が必要なものがある。促進剤は、基質の酸化等により、基質の利用度を高めるものである。
【0087】
促進剤は特に、ラッカーゼとの組み合わせで、口臭等の脱臭に使用すると有用である。特例の実施形態によれば、顆粒はラッカーゼ及び促進剤を含んでなる。
【0088】
促進剤は、>N−OHという部位を有する脂肪族、環状脂肪族、複素環式、又は芳香族化合物からなる群より選択することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、促進剤は下記一般式Iの化合物である。
【化1】

【0089】
ここで、R1、R2、R3、R4は各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、カルボキシ並びにその塩及びエステル、アミノ、ニトロ、C1-12−アルキル、C1-6−アルコキシ、カルボニル(C1-12−アルキル)、アリール、特にフェニル、スルホ、アミノスルホニル、カルバモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、並びにその塩及びエステルからなる群より選択される。R1、R2、R3、R4はR5で置換されていてもよい。ここでR5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、カルボキシ並びにその塩及びエステル、アミノ、ニトロ、C1-12−アルキル、C1-6−アルコキシ、カルボニル(C1-12−アルキル)、アリール、特にフェニル、スルホ、アミノスルホニル、カルバモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、並びにその塩及びエステルを表わす。[X]は、(−N=N−)、(−N=CR6−)m、(−CR6=N−)m、(−CR7=CR8−)m、(−CR6=N−NR7−)、(−N=N−CHR6−)、(−N=CR6−NR7−)、(−N=CR6−CHR7−)、(−CR6=N−CHR7−)、(−CR6=CR7−NR8−)、及び(−CR6=CR7−CHR8−)から選択される基を表わす。ここでR6、R7、及びR8は、互いに独立に、H、OH、NH2、COOH、SO3H、C1-6−アルキル、NO2、CN、Cl、Br、F、CH2OCH3、OCH3、及びCOOCH3から選択される。また、mは1又は2である。
【0090】
ここで「C1-n−アルキル」という語(nは2から12である)は、1以上特定数以下の炭素原子を有する、分岐鎖又は直鎖アルキル基を表わす。一般的なC1-6−アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0091】
本発明のより好ましい実施形態によれば、促進剤は一般式IIの化合物である。
【化2】

【0092】
ここで、R1、R2、R3、R4は各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、カルボキシ並びにその塩及びエステル、アミノ、ニトロ、C1-12−アルキル、C1-6−アルコキシ、カルボニル(C1-12−アルキル)、アリール、特にフェニル、スルホ、アミノスルホニル、カルバモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、並びにその塩及びエステルからなる群より選択される。R1、R2、R3、R4はR5で置換されていてもよい。ここでR5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、カルボキシ並びにその塩及びエステル、アミノ、ニトロ、C1-12−アルキル、C1-6−アルコキシ、カルボニル(C1-12−アルキル)、アリール、特に フェニル、スルホ、アミノスルホニル、カルバモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、並びにその塩及びエステルを表わす。
促進剤は、式I又はIIの塩又はエステルであってもよい。
【0093】
更に好ましい促進剤は、複素環式化合物のオキソ誘導体及びN−ヒドロキシ誘導体、並びに、複素環式化合物のオキソ−及びホルミル−誘導体のオキシムである。当該複素環式化合物としては、五員環の窒素含有複素環、特にピロール、ピラゾール及びイミダゾール、並びにそれらの水素化等価体(例えばピロリジン)、並びにトリアゾール、例えば1,2,4−トリアゾール;六員環の窒素含有複素環、特にモノ−、ジ−及びトリアジナン(例えばピペリジン及びピペラジン)、モルホリン及びそれらの不飽和等価体(例えばピリジン及びピリミジン);並びに、上述の複素環を部分構造として含有する縮合複素環、例えばインドール、ベンゾチアゾール、キノリン、及びベンゾアゼピンが挙げられる。
【0094】
これらの分類に属する化合物のうち、好ましい促進剤の例としては、ピリジンアルドオキシム;N−ヒドロキシピロリジンジオン、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド 及びN−ヒドロキシフタルイミド;3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシベンゾ[1,2,3]トリアジン−4−オン;ホルムアルドオキシムトリマー(N,N’,N”−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジナン);並びにビオルル酸(1,3−ジアジナン−2,4,5,6−テトロン−5−オキシム)が挙げられる。
【0095】
本発明に適用することが可能な、より一層好ましい促進剤としては、芳香族化合物のオキソ−及びホルミル−誘導体のオキシム、例えばベンゾキノンジオキシム及びサリチルアルドオキシム(2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム)、並びにN−ヒドロキシアミド及びN−ヒドロキシアニリド、例えばN−ヒドロキシアセトアニリドが挙げられる。
【0096】
好ましい促進剤は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールナトリウム塩;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールカリウム塩;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールリチウム塩;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールアンモニウム塩;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールカルシウム塩;1−ヒドロキシベンゾトリアゾールマグネシウム塩;及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−6−スルホン酸からなる群より選択される。
特に好ましい促進剤は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールである。
【0097】
上述のN−ヒドロキシ化合物の説明には、等価な限りにおいて、N−オキシド等の互変体が含まれるものと解される。
【0098】
その他の好ましい促進剤の群として、−CO−NOH−基を有し、一般式IIIで表わされるものが挙げられる。
【化3】

【0099】
ここで、Aは、
【化4】

である。
【0100】
また、Bは、Aと同じであるか、H又はC1-12−アルキルである。ここで、アルキルは、ヒドロキシ、エステル、又はエーテル基(例として、エーテルの酸素が直接A−N(OH)C=O−に結合しているものが挙げられる。よって、N−ヒドロキシカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。)である。また、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに独立に、H、OH、NH2、COOH、SO3H、C1-8−アルキル、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、NOH−CO−フェニル、CO−NOH−フェニル、C1-6−CO−NOH−A、CO−NOH−A、COR12、フェニル−CO−NOH−A、OR7、NR8R9、COOR10、又はNOH−CO−R11である。ここで、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、C1-12−アルキル又はアシルである。
【0101】
AのR2、R3、R4、R5、及びR6は、好ましくは、H、OH、NH2、COOH、SO3H、C1-3−アルキル、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、NOH−CO−フェニル、CO−NOH−フェニル、COR12、OR7、NR8R9、COOR10、又はNOH−CO−R11である。ここで、R7、R8、及びR9は、C1-3−アルキル又はアシルであり、R10、R11、及びR12は、C1-3−アルキルである。;より好ましくは、AのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、NH2、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、CO−NOH−フェニル、COCH3、OR7、NR8R9、又はCOOCH3である。ここで、R7、R8、及びR9は、CH3又はCOCH3である。更に好ましくは、AのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CO−NOH−フェニル、OCH3、COCH3、又はCOOCH3である。特に、AのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、COOH、SO3H、CH3、NO2、CN、Cl、Br、CO−NOH−フェニル、又はOCH3である。
【0102】
BのR2、R3、R4、R5、及びR6は、好ましくは、H、OH、NH2、COOH、SO3H、C1-3−アルキル、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、NOH−CO−フェニル、CO−NOH−フェニル、COR12、OR7、NR8R9、COOR10、又はNOH−CO−R11である。ここで、R7、R8、及びR9は、C1-3−アルキル又はアシルであり、R10、R11、及びR12は、C1-3−アルキルである。より好ましくは、BのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、NH2、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、CO−NOH−フェニル、COCH3、OR7、NR8R9、又はCOOCH3である。ここで、R7、R8、及びR9は、CH3又はCOCH3である。更に好ましくは、BのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CO−NOH−フェニル、OCH3、COCH3、又はCOOCH3である。特に、BのR2、R3、R4、R5、及びR6は、H、OH、COOH、SO3H、CH3、NO2、CN、Cl、Br、CO−NOH−フェニル、又はOCH3である。
【0103】
Bは、H又はC1-3−アルキルであることが好ましい。ここで、当該アルキルは、ヒドロキシ、エステル又はエーテル基を有していてもよい。好ましくは、当該アルキルが、エステル又はエーテル基を有している。より好ましくは、当該アルキルが、エーテル基を有している。
【0104】
ある実施形態によれば、A及びBは互いに独立に、
【化5】

であるか、或いはBが、H又はC1-3−アルキルである。当該アルキルは、ヒドロキシ、エステル又はエーテル基を含んでいてもよい(例として、エーテルの酸素が直接A−N(OH)C=O−に結合しているものが挙げられる。よって、N−ヒドロキシカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。)。そして、R2、R3、R4、R5、及びR6は、互いに独立に、H、OH、NH2、COOH、SO3H、C1-3−アルキル、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、NOH−CO−フェニル、CO−NOH−フェニル、COR12、OR7、NR8R9、COOR10、又はNOH−CO−R11である。ここで、R7、R8、及びR9は、C1-3−アルキル又はアシルであり、R10、R11、及びR12は、C1-3−アルキルである。
【0105】
別の実施形態によれば、A及びBは、互いに独立に、
【化6】

であるか、或いはBが、H又はC1-3−アルキルである。当該アルキルは、ヒドロキシ又はエーテル基を含んでいてもよい(例として、エーテルの酸素が直接A−N(OH)C=O−に結合しているものが挙げられる。よって、N−ヒドロキシカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。)。そして、R2、R3、R4、R5、及びR6は、互いに独立に、H、OH、NH2、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CF3、CO−NOH−フェニル、COCH3、OR7、NR8R9、又はCOOCH3である。ここで、R7、R8、及びR9は、CH3又はCOCH3である。
【0106】
別の実施形態によれば、A及びBは、互いに独立に、
【化7】

であるか、或いはBが、H又はC1-3−アルキルである。当該アルキルは、ヒドロキシ又はエーテル基を含んでいてもよい(例として、エーテルの酸素が直接A−N(OH)C=O−に結合しているものが挙げられる。よって、N−ヒドロキシカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。)。そして、R2、R3、R4、R5、及びR6は、互いに独立に、H、OH、COOH、SO3H、CH3、アシル、NO2、CN、Cl、Br、F、CO−NOH−フェニル、OCH3、COCH3、又はCOOCH3である。
【0107】
別の実施形態によれば、A及びBは、互いに独立に、
【化8】

であるか、或いはBが、C1-3−アルキルである。当該アルキルは、エーテル基を含んでいてもよい(例として、エーテルの酸素が直接A−N(OH)C=O−に結合しているものが挙げられる。よって、N−ヒドロキシカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。)。そして、R2、R3、R4、R5、及びR6は、互いに独立に、H、OH、COOH、SO3H、CH3、NO2、CN、Cl、Br、CO−NOH−フェニル、又はOCH3である。
【0108】
ここで「C1-n−アルキル」という語(nは2から12である)は、1以上特定数以下の炭素原子を有する、分岐鎖又は直鎖アルキル基を表わす。一般的なC1-6−アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0109】
また、ここで「アシル」という語は、C1-6−アルキル基等の一価の置換基がカルボニル基を介して結合した基を表わす。例としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル等が挙げられる。
【0110】
ある実施形態によれば、Aの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも1つがHであり、好ましくはAの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも2つがHであり、より好ましくはAの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも3つがHであり、最も好ましくはAの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも4つがHであり、特にAの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6の全てがHである。
【0111】
別の実施形態によれば、Bの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも1つがHであり、好ましくはBの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも2つがHであり、より好ましくはBの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも3つがHであり、最も好ましくはBの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも4つがHであり、特にBの置換基R2、R3、R4、R5、及びR6の全てがHである。
【0112】
本発明に係る特定の実施形態によれば、促進剤は、
4−ニトロ安息香酸−N−ヒドロキシアニリド;
4−メトキシ安息香酸−N−ヒドロキシアニリド;
N,N’−ジヒドロキシ−N,N’−ジフェニルテレフタルアミド;
デカン酸−N−ヒドロキシアニリド;
N−ヒドロキシ−4−シアノアセトアニリド;
N−ヒドロキシ−4−アセチルアセトアニリド;
N−ヒドロキシ−4−ヒドロキシアセトアニリド;
N−ヒドロキシ−3−(N’−ヒドロキシアセトアミド)アセトアニリド;
4−シアノ安息香酸−N−ヒドロキシアニリド;
N−ヒドロキシ−4−ニトロアセトアニリド;
N−ヒドロキシアセトアニリド;
N−ヒドロキシ−N−フェニル−カルバミン酸イソプロピルエステル;
N−ヒドロキシ−N−フェニル−カルバミン酸メチルエステル;
N−ヒドロキシ−N−フェニル−カルバミン酸フェニルエステル;
N−ヒドロキシ−N−フェニル−カルバミン酸エチルエステル;及び
N−ヒドロキシ−N−(4−シアノフェニル)−カルバミン酸メチルエステル
からなる群より選択される。
【0113】
その他の好ましい促進剤の群として、一般式IVのフェノール系化合物(アルキルシリンゲイト:alkyl syringates)が挙げられる。
【化9】

【0114】
ここで、当該式の符号Aは、−D、−CH=CH−D、−CH=CH−CH=CH−D、−CH=N−D、−N=N−D、又は−N=CH−D等の基を指す。ここでDは、−CO−E、−SO2−E、−N−XY、及び−N+−XYZからなる群より選択される。ここで、Eは、−H、−OH、−R、又は−ORである。X、Y、及びZは同一でも異なっていてもよく、−H及び−Rから選択される。ここでRはC1-16アルキルであり、好ましくはC1-8アルキルである。ここでアルキルは飽和でも不飽和でもよく、分岐を有していてもいなくてもよく、カルボキシ、スルホ又はアミノ基で置換されていてもよい。また、B及びCは同一でも異なっていてもよく、Cm2m+1から選択される。ここでm=1、2、3、4又は5である。
【0115】
上述した一般式IVにおいて、Aはヒドロキシ基に対してパラ位に示されているが、代わりにメタ位に存在していてもよい。
【0116】
本発明の特定の実施形態によれば、促進剤は一般式Vで表わされる群より選択される。
【化10】

【0117】
ここで、Aは−H、−OH、−CH3、−OCH3、−O(CH2nCH3等の基であり、n=1、2、3、4、5、6、7又は8である。
【0118】
更に他の好ましい促進剤の群として、一般式VIで表わされる化合物が挙げられる。
【化11】

【0119】
前記一般式において、Aは、単結合、又は、(−CH2−)、(−CH=CH−)、(−NR11−)、(−CH=N−)、(−N=N−)、(−CH=N−N=CH−)、若しくは(>C=O)の何れかの基を表わす。
【0120】
前記一般式において、置換基R1〜R11は、同一でも異なっていてもよく、各々独立に、下記ラジカルの何れかを表わす。水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、アセチル、カルボキシ並びにそのエステル及び塩、カルバモイル、スルホ並びにそのエステル及び塩、スルファモイル、メトキシ、ニトロ、アミノ、フェニル、C1-8−アルキル。
【0121】
ここで、カルバモイル、スルファモイル、フェニル、及びアミノ基は、未置換でもよく、一又は二以上の置換基R12によって置換されていてもよい。また、C1-8−アルキル基は飽和でも不飽和でもよく、分岐を有していてもいなくてもよく、更には、未置換でも、一又は二以上の置換基R12によって置換されていてもよい。
【0122】
ここで、置換基R12は、下記ラジカルの何れかを表わす。水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、アセチル、カルボキシ並びにそのエステル及び塩、カルバモイル、スルホ並びにそのエステル及び塩、スルファモイル、メトキシ、ニトロ、アミノ、フェニル、又はC1-8−アルキル。ここでカルバモイル、スルファモイル、及びアミノ基は、未置換でもよく、一又は二以上のヒドロキシ又はメチルによって置換されていてもよい。
【0123】
前記一般式において、R5及びR6が結合して、基−B−を形成していてもよい。ここでBは単結合、又は(−CH2−)、(−CH=CH−)、(−CH=N−)のうち何れかの基を表わす。或いは、Bは硫黄又は酸素を表わす。
【0124】
本発明の特定の実施形態において、促進剤は、一般式VIIで表わされる群より選択される。
【化12】

【0125】
前記一般式において、Xは単結合、酸素、又は硫黄を表わす。
前記一般式において、置換基R1〜R9は、同一でも異なっていてもよく、各々独立に下記ラジカルの何れかを表わす。水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、アセチル、カルボキシ並びにそのエステル及び塩、カルバモイル、スルホ並びにそのエステル及び塩、スルファモイル、メトキシ、ニトロ、アミノ、フェニル、C1-8−アルキル。
【0126】
カルバモイル、スルファモイル、フェニル、及びアミノ基は、未置換でもよく、一又は二以上の置換基R10によって置換されていてもよい。また、C1-8−アルキル基は、飽和でも不飽和でもよく、分岐を有していてもいなくてもよく、更には未置換でも、一又は二以上の置換基R10によって置換されていてもよい。
【0127】
置換基R10は、下記ラジカルの何れかを表わす。水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、アセチル、カルボキシ並びにそのエステル及び塩、カルバモイル、スルホ並びにそのエステル及び塩、スルファモイル、メトキシ、ニトロ、アミノ、フェニル、又はC1-8−アルキル。ここで、カルバモイル、スルファモイル、及びアミノ基は、未置換でもよく、一又は二以上のヒドロキシ又はメチルによって置換されていてもよい。
【0128】
フィラー
好適なフィラーとしては、水に可溶性及び/又は不溶性の無機塩、例えば、微粉砕したアルカリケイ酸塩、アルカリ炭酸塩及び/又はアルカリ塩化物、粘土、例えばカオリン(例えばEnglish China Clay 社製 SPESWHITETM)、ベントナイト、タルク、ゼオライト、白亜、炭酸及び/又はケイ酸カルシウムが挙げられる。一般的なフィラーとしては、硫酸ナトリウム(disodium sulphate)及びリグノスルホン酸カルシウムが挙げられる。他のフィラーとしては、シリカ、石膏、カオリン、タルク、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、並びにセルロース繊維が挙げられる。
【0129】
繊維材料
好適な繊維材料としては、例えば、おが屑状等の繊維状の純粋又は非精製のセルロース、純粋な繊維セルロース、綿、又は他の形態の純粋又は非精製の繊維セルロースが挙げられる。また、繊維セルロースを用いた濾過助剤も使用できる。繊維状のセルロースとしては、CepoTM や ArbocellTM等、幾つかの銘柄が市場で入手可能である。好ましい繊維セルロースとしては、ArbocelTM BFC200 が挙げられる。また、EP304331B1に記載等の合成繊維も使用することができる。一般的な繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、特にナイロン、ポリビニルホルマット(polyvinylformat)、ポリ(メタ)アクリル化合物からなるものが挙げられる。
【0130】
酵素安定化又は酵素保護剤
酵素安定化又は保護剤は、幾つかのカテゴリーに分類される。アルカリ性又は中性の物質、還元剤、酸化防止剤、及び/又は第1遷移系列の金属イオンの塩等である。これらは各々、同一又は異なるカテゴリーの他の保護剤と併用してもよい。アルカリ性の保護剤の例としては、アルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩又は重炭酸塩であって、酸化体等を能動的に中和することにより化学的な捕捉効果を発揮するものが挙げられる。還元性の保護剤の例としては、亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩又はチオ硫酸塩等の塩が挙げられる。酸化防止剤の例としては、メチオニン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)又はブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。最も好ましい化合物としてはチオ硫酸塩、例えばチオ硫酸ナトリウムが挙げられる。また、酵素安定剤としては、ホウ酸塩、ホウ砂、ギ酸塩、ジ−及びトリカルボン酸、並びにいわゆる可逆的酵素阻害剤、例えスルフヒドリル基を有する有機化合物、又は、アルキル化若しくはアリール化されたホウ酸が挙げられる。
【0131】
架橋剤:
架橋剤の例としては、酵素融和性の(enzyme-compatible)界面活性剤、例えばエトキシ化アルコール、特に10から80のエトキシ基を有するものが挙げられる。
【0132】
溶解化剤:
顆粒の溶解性は、被覆粒子を洗剤の製剤成分として使用する場合等には、特に重要である。当業者には知られているように、種々の方法で得られた多数の薬剤が、製剤の溶解性を高める目的で使用できる。当該技術分野で知られている一般的な薬剤は、National Pharmacopeia のものである。
【0133】
軽量球体(Light spheres):
軽量球体は真密度が低い小粒子である。一般的には、内部に空気又はガスを有する中空の球形粒子である。このような材料は通常、固体材料を膨張させることにより調製される。これらの軽量球体は、無機性のものでも有機性のものでもよい。例としては The PQ Corporation から入手可能な PM-series(プラスチック製の中空球)が挙げられる。軽量球体は、スターチやその誘導体等の多糖類から調製することもできる。Biodac(登録商標)は、中空を有さないセルロース製の軽量材料(製紙廃材)の例であり、GranTek Inc から入手できる。これらの材料は、本発明の顆粒に単独で含まれていてもよく、異なる軽量材料の混合物として含まれていてもよい。
【0134】
懸濁剤:
懸濁剤、即ち(例えば洗浄用途において、粒子の溶解による漂白作用を上昇させるための)媒介物質及び/又は溶媒が、前記顆粒に含まれていてもよい。
【0135】
粘度調整剤:
粘度調整剤が、前記顆粒に存在していてもよい。
【0136】
可塑剤:
本発明において顆粒に有効な可塑剤としては、例えば:ポリオール、例えば糖、糖アルコール、グリセリン、グリセロールトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、トリエタノールアミン、モノ−、ジ−、及びトリエチレングリコール又はグリコール(PEGs)であって、分子量が1000未満のもの;尿素、フタル酸エステル、例えばフタル酸ブチル又はジメチル;チオシアン酸塩、非イオン性界面活性剤、例えばエトキシ化アルコール及びエトキシ化リン酸塩、並びに水が挙げられる。
【0137】
顔料:
好適な顔料としては、制限されるものではないが、微細化した白色化剤、例えば二酸化チタン又はカオリン、着色顔料、水溶性着色剤、並びに一又は二以上の顔料及び水可溶性着色剤の組み合わせが挙げられる。
【0138】
塩:
塩としては無機塩、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、塩化物又は炭酸塩等の塩でもよく、単純有機酸(炭素原子10未満、例えば炭素原子6以下)の塩、例えばクエン酸塩、マロン酸塩又は酢酸塩等でもよい。これらの塩におけるカチオンの例としては、アルカリ又はアルカリ土類金属イオンが挙げられるが、アンモニウムイオン又は第1遷移系列の金属イオン、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛又はアルミニウムである。アニオンの例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、一塩基リン酸塩、二塩基リン酸塩、次亜リン酸塩、二水素ピロリン酸塩、四ホウ酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、メタケイ酸塩、クエン酸塩、りんご酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、又はグルコン酸塩が挙げられる。特に、アルカリ−又はアルカリ土類金属の硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、塩化物若しくは炭酸塩、又は、クエン酸塩、マロン酸塩又は酢酸塩等の単純有機酸を用いることができる。特有な例としては、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、(NH4)H2PO4、K2HPO4、KH2PO4、Na2SO4、K2SO4、KHSO4、ZnSO4、MgSO4、CuSO4、Mg(NO32、(NH42SO4、ホウ酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0139】
また、塩は、WO99/32595に記載されているような、水和塩、即ち、(一又は二以上の)結晶結合水を有する結晶性の塩水和物であってもよい。水和塩の例としては、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4(7H2O))、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4(7H2O))、硫酸銅五水和物(CuSO4(5H2O))、二塩基リン酸ナトリウム七水和物(Na2HPO4(7H2O))、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO32(6H2O))、ホウ酸ナトリウム十水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、及び酢酸マグネシウム四水和物が挙げられる。
【0140】
潤滑剤:
本明細書において「潤滑剤」という語は、表面摩擦を低減し、前記顆粒の表面を潤滑化し、静電気の蓄積傾向を低減し、及び/又は、前記顆粒の破砕し易さを低減する薬剤を広く指すものとする。潤滑剤はまた、被膜中のバインダーの粘着性を低減することにより、被覆プロセスを改善する役割も有する。即ち、潤滑剤は凝集防止剤や湿潤剤として機能する。好適な潤滑剤の例としては、低級ポリエチレングリコール(PEGs)、エトキシ化脂肪アルコール、並びに、鉱物油、植物油、及び動物油が挙げられる。中でも、潤滑剤は鉱物油又は非イオン性界面活性剤であり、特に、潤滑剤は他の被覆材料とは混和しない。
【0141】
塩被膜
酵素顆粒は高相対湿度に極めて敏感であるので、そのような条件下でも許容しうる程度の保存安定性を得るために、前記顆粒を更に改善する手法が求められる。我々は、前記顆粒を塩被膜で被覆することにより、特に高湿度下における酵素安定性を改善できることを見出した。特に、WO00/01793に記載の塩被膜が、本発明における被膜として好適であることが分かった。
【0142】
本発明において好適な塩としては、追加の造粒材料の欄において前述したものが挙げられる。本発明において特に好適な塩としては、Na2HPO4(CH20℃=95%)、Na3PO4(CH25℃=92%)、(NH4)H2PO4(CH20℃=93.1%)、KH2PO4(CH20℃=92%)、Na2SO4(CH20℃=93%)、K2SO4(CH25℃=99%)、KHSO4(CH20℃=86%)、ZnSO4(CH20℃=90%)、及びクエン酸ナトリウム(CH25℃=86%)が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、塩は、Na2HPO4、Na3PO4、(NH4)H2PO4、KH2PO4、Na2SO4、K2SO4、KHSO4、ZnSO4、及びクエン酸ナトリウムからなる群より選択される。
【0143】
前記被膜は、60%w/w以上、例えば65%w/w又は70%w/wの塩を含有するが、好ましくは75%w/w以上、例えば80%w/w以上、85%w/w以上、例えば90%w/w以上、又は95%w/w以上であってもよい。
【0144】
本発明の特定の実施形態において、塩被膜は、50%を超える塩を含んでなり、例えば70%を超える塩を含んでなり、例えば90%を超える塩を含んでなり、例えば100%が塩である。
【0145】
特定の実施形態において、塩被膜の塗布量は酵素コアの50%w/w超であり、例えば酵素コアの100%w/w超であり、更には酵素コアの200%w/w超である。
【0146】
追加の被膜
本発明の顆粒は、追加の被膜層を一層又は二層以上含んでいてもよい。
本発明の特定の実施形態によれば、前記顆粒は少なくとも二層の被膜層を含んでなる。
【0147】
追加の被膜は、例えば前記顆粒に対して更なる特徴又は性質を付与するものである。即ち、追加の被膜は、例えば以下の効果のうち一又は二以上を達成するものである。
【0148】
(i) 顆粒の塵粉生成性の低減。
(ii) 環境中の敵性化合物からの前記顆粒中の活性化合物の保護。
(iii) 液性媒体(例えば酸性媒体)に前記顆粒を導入する際に任意の濃度で溶解。
(iv) 前記顆粒により高い物理的強度を付与する。
【0149】
追加の被膜として、従来知られている所望の性質の(一又は二以上の)被膜を適用可能である。従来の被膜材料及び被覆方法としては、例えば、US4,106,991、EP170360、EP304332、EP304331、EP458849、EP458845、WO97/39116、WO92/12645、WO89/08695、WO89/08694、WO87/07292、WO91/06638、WO92/13030、WO93/07260、WO93/07263、WO96/38527、WO96/16151、WO97/23606、US5,324,649、US4,689,297、EP206417、EP193829、DE4344215、DE4322229A、DD263790、特開昭61−162185号公報、特開昭58−179492号公報、又はPCT/DK/01/00628に記載のものが挙げられる。
【0150】
本発明の特定の実施形態によれば、追加の被膜は、US4,106,991又はEP0,569,468に記載されたワックス被膜であり、これらは引用により本明細書に組み込まれる。好適なワックスについては、上述の「ワックス」の欄を参照されたい。本発明の特定の実施形態によれば、追加の被膜はPEG及び/又はパーム油を含んでなる。
【0151】
追加の被膜材料
前記被膜は、上述の「追加の造粒材料」の欄で記載した、追加の被膜材料、例えばバインダー、フィラー、繊維材料、酵素安定化剤、溶解化剤、懸濁剤、粘度調整剤、軽量球体、可塑剤、塩、潤滑剤、及び芳香剤を含んでいてもよい。更に他の成分として、顔料が挙げられる。
【0152】
顆粒の調製
本発明はまた、本発明の顆粒の製造に関する。本発明の特定の実施形態は、酵素顆粒を調製する方法であって、
a)酵素を含有し、pHが7よりも高い水性混合物を調製する工程と、
b)工程a)の混合物を粒子形成プロセスに供給し、酵素含有コア粒子を得る工程と、
c)工程b)のコア粒子を少なくとも一層の被膜で被覆する工程とを含んでなる方法である。
【0153】
上記方法の工程c)は、特定の実施形態においては、流動床装置において実施される。
本発明のより特定の実施形態においては、工程c)の酵素含有混合物が不活性コア粒子に塗布される。
【0154】
本発明の別の特定の実施形態は、酵素顆粒を調製する方法であって、
a)酵素を含有し、pHが7よりも高い水性混合物を調製する工程と、
b)工程a)の水性液体を造粒機に供給する工程と、
c)造粒機において粒子を調製する工程とを含んでなるものである。
【0155】
更なる実施形態によれば、前記酵素含有混合物は8よりも高いpHに調整される。更なる実施形態によれば、前記酵素含有混合物は9から11のpHに調整される。
【0156】
本発明の特定の実施形態によれば、酵素を含んでなる水性液体を調製し、これを造粒機に供給し、その水性液体のpHを、造粒機内において、7よりも高いpHに調整する。
【0157】
本発明の特定の実施形態によれば、造粒機内で調製される前記酵素含有粒子は、被膜層によって被覆される。
【0158】
特定の実施形態によれば、前記被膜は塩被膜である。更なる実施形態によれば、前記塩被膜中の塩は、20℃における定常吸湿度が60%よりも高い。更には、前記塩被膜中の塩は、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、(NH4)H2PO4、K2HPO4、KH2PO4、Na2SO4、K2SO4、KHSO4、ZnSO4、MgSO4、CuSO4、Mg(NO32、(NH42SO4、NaCl、ホウ酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群より選択される。
【0159】
特定の実施形態によれば、酵素は、オキシドレダクターゼ、カルボヒドラーゼ、及びヒドロラーゼからなる群より選択される。更には、オキシドレダクターゼはラッカーゼである。更には、ラッカーゼは、ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、チョレイ属(Polyporus)、スキタリジウム属(Scytalidium)及びリゾクトニア属(Rhizoctoni)に由来する群より選択される。
【0160】
本発明の特定の実施形態によれば、前記酵素顆粒の調製は造粒機で行なわれる。造粒機は、任意の種類の酵素含有粒子を形成しうる装置である。
【0161】
本発明の特定の実施形態によれば、造粒機は、流動床装置、噴霧乾燥機、流動床噴霧乾燥機、押出機、ローラー圧縮機、及び混合機からなる群より選択される。
【0162】
前記酵素顆粒は、コア及び被膜を含んでなり、このコアは、前記酵素マトリックスを含んでなる。特定の実施形態によれば、このコア粒子は、前記酵素含有混合物を不活性コア粒子上に塗布することにより調製される。
【0163】
前記のコア及び被膜を調製する方法は、「Handbook of Powder Technology;Particle size enlargement」、C. E. Capes 著、Volume 1、1980、Elsevier に記載されている。調製法としては公知の供給及び顆粒製剤技術が挙げられる。その例は以下の通りである。
【0164】
a)噴霧乾燥品、即ち、液体の酵素含有溶液を噴霧乾燥塔で霧化し、小液滴が乾燥塔内を降下する間に乾燥し、酵素含有粒子材料とする。これによって極小の粒子を形成できる(Michael S. Showell 編「Powdered detergents」、Surfactant Science Series、1998、vol. 71、page 140-142、Marcel Dekker)。
【0165】
b)層状品、即ち、前記酵素含有混合物によって、予め形成した非活性コア粒子の周囲を層状に被覆する。通常は酵素含有混合物を、予め形成したコア粒子を流動させた流動床装置内で霧化し、前記酵素含有混合物をコア粒子に付着させ、これを乾燥させることにより、コア粒子表面上に乾燥した酵素層を得る。これにより、所望のサイズの有用なコア粒子が分かっている場合には、当該所望のサイズの粒子が得られる。この種の製品は、例えばWO97/23606に記載されている。
【0166】
c)吸着コア粒子、即ち、酵素含有混合物によりコア周囲を層状に被膜するのではなく、酵素含有混合物をコア表面上及び/又は内部に吸着させる。このようなプロセスは、WO97/39116に記載されている。
【0167】
d)押出し又はペレット化品、即ち、酵素含有ペーストをプレスによりペレット化し、又は圧力下で小開口から押出し、粒子上に切り出して略乾燥する。このような粒子は通常、比較的大きなサイズを有する。押出し口(通常はプレートに形成された穿孔)を形成する材料によって、押出し口における圧力差に許容限界が生じるからである。また、小さな開口の使用時に非常に高い押出し圧を加えると、活性化合物ペーストの発熱が促進され、活性化合物に有害である。(Michael S. Showell 編「Powdered detergents」、Surfactant Science Series、1998、vol. 71、page 140-142、Marcel Dekker)
【0168】
e)小球化(Prilled)品、即ち、溶融したワックス中に酵素粉末を懸濁させ、得られた懸濁液を、回転円板噴霧機等を用いて冷却チャンバー内に噴霧し、液滴を速やかに凝固させる(Michael S. Showell 編「Powdered detergents」、Surfactant Science Series、1998、vol. 71、page 140-142、Marcel Dekker)。得られた製品においては、活性化合物が不活性物質の表面に集中することなく、不活性物質の全面に均一に存在する。この技術に関する文献としては、US4,016,040及びUS4,713,245も挙げられる。
【0169】
f)混合機造粒品、即ち、従来の造粒成分の乾燥粉末組成物に酵素液を加える。前記の液及び粉末を適切な比率で混合すると、液の湿分が乾燥粉末に吸収され、乾燥粉末の成分が付着して凝集し、粒子が生成して、活性化合物を含有する顆粒が形成される。このプロセスはUS4,106,991(NOVO NORDISK)、並びに、関連文献であるEP170360B1(NOVO NORDISK)、EP304332B1(NOVO NORDISK)、EP304331(NOVO NORDISK)、WO90/09440(NOVO NORDISK)、及びWO90/09428(NOVO NORDISK)に記載されている。このプロセスで得られる製品のうち、各種の高剪断混合機が造粒機として使用できる特定の製品については、活性化合物である酵素、フィラー、及びバインダー等からなる顆粒をセルロース繊維と混合し、粒子を強化することにより、いわゆる T-granulate を形成することができる。強化粒子はより強固であり、酵素粉塵の発生がより少ない。
【0170】
g)微細化、即ち、活性物質を含有する大きな粒子、ペレット、タブレット、ブリケット等を粉砕又は破砕してコアを製造する。粉砕又は破砕品を篩い分けすることにより、所望のコア粒子の画分が得られる。サイズが大き過ぎる粒子や小さ過ぎる粒子は再利用できる。微細化は、Martin Rhodes 編「Principles of Powder Technology」、1990、Chapter 10、John Wiley & Sons に記載されている。
【0171】
h)流動床造粒。流動床造粒は、微粒子を気流中で浮遊させ、この流動粒子上に酵素液をノズルから噴霧することにより行なう。噴霧液滴と衝突すると、粒子は濡れて粘着するようになる。これらの粘着性の粒子が他の粒子に衝突して付着し、顆粒を形成する。
【0172】
i)これらのコアは、流動床乾燥機等により、乾燥に供してもよい。当業者であれば、酵素分野で知られている他の顆粒乾燥法を用いることもできる。乾燥は、製品温度が25℃から90℃の範囲で行なうことが好ましい。酵素によっては、塩で被覆する前の酵素含有コアが、少量の水を含んでいることが重要な場合もある。水感受性の活性化合物を、過剰な水を除去することなく塩で被覆してしまうと、過剰な水がコアの内部に閉じ込められてしまい、酵素の活性に好ましからぬ影響を及ぼす場合がある。乾燥後のコアの水分含有量は、好ましくは0.1〜10%w/wである。
【0173】
塩被膜の調製
塩被膜を酵素含有コア顆粒に塗布するには、流動床内でコア顆粒に噴霧すればよい。塩被膜の塗布には更に、真空混合機、ドラジェ型(dragee type)コーター(パンドラム(pan-drum)コーター)、種子粉衣用装置、回転底を有する装置(例えば、Roto Glatt、CF granulators (Freund)、torbed processors (Gauda)、又は、回転流動床処理装置、例えば Omnitex(Nara)等を使用してもよい。
【0174】
塩層の形成後、顆粒を乾燥してもよい。塩被覆顆粒の乾燥は、当業者が利用可能な如何なる手法で行なってもよい。例としては噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、流動床乾燥、パンドラム(pan drum)コーティング、及びマイクロ波乾燥が挙げられる。また、塩被覆顆粒の乾燥は、造粒法と組み合わせて行なってもよい。造粒法の例としては、流動床、流動床噴霧乾燥機(FSD)、又は多段乾燥機(MSD)の使用が挙げられる。
【0175】
追加の被膜の調製
当該技術分野で公知の従来の被膜及び被膜形成法を好適に使用することが可能であるが、例としては、デンマークPA200200473、WO89/08694、WO89/08695、270608B1、及び/又はWO00/01793に記載のものが挙げられる。従来の被膜材料の他の例としては、US4,106,991、EP170360、EP304332、EP304331、EP458849、EP458845、WO97/39116、WO92/12645A、WO89/08695、WO89/08694、WO87/07292、WO91/06638、WO92/13030、WO93/07260、WO93/07263、WO96/38527、WO96/16151、WO97/23606、WO01/25412、WO02/20746、WO02/28369、US5879920、US5,324,649、US4,689,297、US6,348,442、EP206417、EP193829、DE4344215、DE4322229A、DE263790、JP61162185A、及び/又はJP58179492に記載のものも挙げられる。
【0176】
被膜は上述と同様の方法により調製可能である。
得られた顆粒について、MarumeriserTM 等による面取り(例えば球形化)や、締固め(compaction)を行なってもよい。
【0177】
本発明の顆粒を含んでなる組成物
本発明はまた、本発明の顆粒を含んでなる組成物に関する。前記組成物は如何なる組成物であってもよいが、とりわけ好適な組成物としては、パーソナルケア組成物、クリーニング組成物、漂白等の繊維加工用組成物、調剤用組成物、皮革加工用組成物、パルプ又は紙加工用組成物、食品及び飲料品用組成物、及び動物飼料用組成物が挙げられる。
【0178】
クリーニング組成物としては、洗剤及び抗菌組成物が挙げられる。繊維加工用組成物としては、繊維の酵素漂白用、及び/又は、デニム等のストーンウォッシュ用組成物が挙げられる。食品及び飲料品用組成物としては、ワイン、油脂、柑橘類及びジュース製品、スターチ及び糖製品、アルコール及び/又は醸造製品、大豆製品、並びにベーキング用粉又は生地等の製造業に用いられる酵素組成物が挙げられる。本発明は特に、キャット・リター(cat litter)組成物、おむつ材(diapers)、マウス・ウォッシュ(mouth wash)組成物、チューイング・ガム(chewing gum)、及びチューイング・ミント(chewing mints)等に、消臭目的で配合されることが好ましい。本発明は特に口臭の除去に有用である。
【0179】
本発明はまた、本発明の顆粒の、消臭、繊維加工、皮革加工、パルプ加工、紙加工、食品、飲料品、硬表面、並びに、人体又は動物体における使用を包含する。前記顆粒はまた、人体又は動物体の治療薬の製造にも使用できる。本発明の特定の実施形態によれば、本発明の顆粒又は組成物は、液体肥料の消臭に使用される。
【0180】
本発明は更に、本発明の顆粒を含んでなる組成物を歯磨きに用いる工程を含んでなる消臭方法に関する。また、本発明の顆粒を含んでなる組成物をネコ用トイレ(cat tray)に加える工程を含んでなる消臭方法に関する。更には、本発明の顆粒を含んでなるおむつ材を取り替える工程を含んでなる消臭方法に関する。特定の実施形態によれば、ミント、チューイング・ガム、又はマウス・ウォッシュを口内に摂取する工程を含んでなる、口の消臭方法に関する。
【実施例1】
【0181】
実施例1
ミセリオフトラ属(Myceliophthora)ラッカーゼ顆粒を以下の手順で調製した。20%の乾燥物質を含有するpH5.5、活性5275LAMU/gの液状濃縮物0.525kgを、流動床型 Huttlin HKC-5-TJ を用いて、塩化ナトリウムのコア3.5kg(平均サイズ315μm及びスパン0.94)上に噴霧し、前記コア上に酵素の層を形成した後、乾燥に供した。Huttlin 床のパラメータは以下の通りであった。
エアインレット温度:70℃
製品温度:56℃
エアボリューム:450m3/h
霧化エア:1.5bar
ミクロクリマエア(Micro clima air):0.65bar
【0182】
活性が777LAMU/gの顆粒が得られた。追加の被膜を有さない状態における、この顆粒単体での保存安定性を調べるため、密閉ジャー内で25℃で26週、40℃で13週保存し、また、ジャーを開放して40℃及び相対湿度60%に曝し、4週間保存した。保存試験の結果を表Iに示す。
【0183】
【表1】

【0184】
実施例2
噴霧前における濃縮物のpHを、1NのNaOHを用い、pH7からpH10までの範囲内で調整した他は、実施例1の記載と同様の手順で一群の顆粒を得た。得られた顆粒について、実施例1と同様に、密閉ジャー内での保存安定性を調べた。実施例2について得られた結果を表IIA〜Bに示す。濃縮物のpHを10まで調整することにより、保存安定性が顕著に向上していることが分かる。40℃/60%RHの湿潤条件下では、残存活性は何れも1%未満であり、湿度を遮る追加の障壁が必要であることが分かる。
【0185】
【表2】

【0186】
【表3】

【0187】
実施例3
噴霧前の濃縮物のpHをpH10、pH10.5、及びpH11に調整するとともに、GEA Precision Coater 流動床を用いて、酵素層と、最後に塩層を形成した他は、実施例1の記載と同様の手順で一群の顆粒を得た。pH10.5の濃縮物から得られた顆粒には、更に、塩化ナトリウムの50%被膜(コアに添着された酵素の%として算出した)を形成した。この被膜は塩24%を含む水溶液から調製した。これらの顆粒について、実施例1と同様に、密閉ジャー内での保存安定性を調べた。実施例3について得られた結果を表IIIA〜Cに示す。pHを高くすることにより、また、塩被膜を追加することにより、温度及び湿度安定性がともに向上していることが分かる。
【0188】
【表4】

【0189】
【表5】

【0190】
【表6】

【0191】
実施例4
噴霧前のpHを10.5に調整した濃縮物を用いて、実施例1の記載と同様の手順で、一群のラッカーゼ添着コアを得た。これを更に、実施例3と同様に塩で被覆した。但し、コアとしては硫酸ナトリウムを用い、被膜としても同様に硫酸ナトリウムを用いた。被膜は、酵素添着コアの50%、100%、及び200%の量となるように形成した。被膜用の水溶液としては、26%の硫酸ナトリウムと、1.3%のデキストリン Avedex W80を含有するものを用いた。被膜用溶液の温度は、グラウバー塩の形成を避けるため、40℃〜45℃の範囲内に維持した。これらの群について得られた安定性のデータを表IVA〜Cに示す。
【0192】
【表7】

【0193】
【表8】

【0194】
【表9】

【0195】
実施例5
以下に記載する手順でラッカーゼ顆粒を作製した。
Cassava 特許に記載のように、活性5630LAMU/g、pH5.5の液状ラッカーゼ濃縮物3.5kgを、50リットルの Lodige ミキサー内で、キャッサバのコア(粒子サイズ600〜700μm)15kgに噴霧して吸着させた。吸着後の湿潤状態の酵素添着顆粒を、従来の流動床により乾燥させた。
【0196】
乾燥した添着酵素2kgを、続いて、US4,106,991に記載の手順により、5リットルの Lodige ミキサー内で、a)80gのPEG 4000、及び、b)240gのカオリンで被覆した。
【0197】
被覆顆粒単体の保存安定性を調べるために、密閉ジャー内で、25℃で26週、40℃で13週、また、ジャーを開放して40℃及び相対湿度60%に曝し、4週間保存した。保存試験の結果を表Vに示す。
【0198】
【表10】

【0199】
実施例6
吸着前の濃縮物のpHを、1NのNaOHにより、pH7からpH10までの範囲で調整するとともに、調整後のラッカーゼ濃縮物0.60kgに対し、5リットルのLodige ミキサー内で、2.0kgのキャッサバコアを噴霧した他は、実施例5の記載と同様の手順で一群の顆粒を得た。実施例5と同様の手順で、カオリン/PEG 4000 被膜を形成した。得られた顆粒の密閉ジャー内での保存安定性を、実施例1と同様に調べた。実施例6の結果を表VIA〜Bに示す。濃縮物のpHを10まで調整することにより、保存安定性が顕著に向上していることが分かる。40℃/60%RHの湿潤条件下では、残存活性は何れも1%未満から僅かに上回る程度であり、湿度を遮る追加の障壁が必要であることが分かる。
【0200】
【表11】

【0201】
【表12】

【0202】
実施例7
吸着前の濃縮物のpHをpH10、pH10.5、及びpH11に調整した他は、実施例5の記載と同様の手順で一群の顆粒を得た。pH10.5の濃縮物から得られた酵素添着コアには、カオリン/PEG被膜の代わりに、硫酸ナトリウムの50%及び100%被膜(酵素添着コアに対する%として算出した)を形成した。被膜の形成は、実施例4と同様、硫酸ナトリウム溶液を用いて、Huttlin 流動床内で行なった。パラメータは、酵素添着コア3kg、エアインレット温度80℃、製品温度50℃、及び、エアボリューム500m3/hとした。得られた顆粒の密閉ジャー内での保存安定性を、実施例1と同様に調べた。実施例7の結果を表VIIA〜Cに示す。pHを高くすることにより、また、塩被膜を追加することにより、温度及び湿度安定性がともに向上していることが分かる。
【0203】
【表13】

【0204】
【表14】

【0205】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素顆粒を調製する方法であって、
a)酵素を含有し、pHが7よりも高い水性液体を調製する工程と、
b)工程a)の水性液体を造粒機に供給する工程と、
c)前記造粒機で粒子を調製する工程とを含んでなる方法。
【請求項2】
前記粒子を被膜層で被覆する工程を更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記pHが8よりも高い、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記pHが9から12である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記被膜層が塩を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記被膜中の前記塩が20℃において60%よりも高い定常吸湿度を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記被膜中の前記塩が、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、(NH4)H2PO4、K2HPO4、KH2PO4、Na2SO4、K2SO4、KHSO4、ZnSO4、MgSO4、CuSO4、Mg(NO32、(NH42SO4、NaCl、ホウ酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記酵素が、オキシドレダクターゼ、カルボヒドラーゼ、及びヒドロラーゼからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記オキシドレダクターゼがラッカーゼである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ラッカーゼが、ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、チョレイ属(Polyporus)、スキタリジウム属(Scytalidium)及びリゾクトニア属(Rhizoctoni)に由来する群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記水性液体が促進剤を更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記水性液体が酵素濃縮物である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
追加の造粒材料を前記造粒機に供給する工程を更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
工程b)において前記水性液体を不活性コア粒子に塗布する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
工程a)における前記造粒機が、流動床装置、噴霧乾燥機、及び混合造粒機からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載の方法により得られうる顆粒。
【請求項17】
前記酵素がラッカーゼであり、前記顆粒が促進剤を更に含んでなる、請求項16記載の顆粒。
【請求項18】
前記顆粒が不活性コア粒子を含んでなる、請求項16記載の顆粒。
【請求項19】
前記顆粒が追加の造粒材料を含んでなる、請求項16記載の顆粒。
【請求項20】
請求項16〜19の何れかに記載の顆粒を含んでなる組成物。
【請求項21】
前記組成物がチューイング・ガムである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物がチューイング・ミントである、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物がマウス・ウォッシュ組成物である、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が歯磨きペーストである、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物がキャット・リター組成物である、請求項20記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物がおむつ材である、請求項20記載の組成物。
【請求項27】
請求項16記載の顆粒又は請求項20記載の組成物の、消臭への使用。
【請求項28】
請求項16記載の顆粒又は請求項20記載の組成物の、液体肥料の消臭への使用。

【公表番号】特表2008−520195(P2008−520195A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540498(P2007−540498)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000734
【国際公開番号】WO2006/053564
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】