説明

活性汚泥槽、活性汚泥処理装置、ガス化ガス精製装置及び活性汚泥処理方法

【課題】活性汚泥を活性化させて効率的な処理を図ることができる活性汚泥槽等を提案する。
【解決手段】有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥槽12において、槽内12に炭酸カルシウムを投入する。炭酸カルシウムを坦体として投入する。活性汚泥処理装置Bは、最初沈殿池9、凝集沈殿槽10、アンモニアストリッピング11、活性汚泥槽12、最終沈殿槽13が直列に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥槽、活性汚泥処理装置、ガス化ガス精製装置及び活性汚泥処理方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を熱分解して可燃性ガス、タール・軽油、飛散チャーを含有する熱分解ガスを得て、この熱分解ガスを精製して燃料ガスとして利用する方法が知られている。
ガス化ガス精製方法や燃料ガス改質装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1,2がある。
【0003】
そして、ガス化ガス精製装置から排出される排液は、活性汚泥槽を経て浄化された後に放水される。この活性汚泥槽は、排水中の有機物を細菌、原生動物、後生動物など多様な生物種により吸着・分解して浄化する手法であって、下水処理や産業排水処理などに広く用いられている。
活性汚泥処理には長時間を要するため、活性汚泥を活性化して効率的に処理を行うことが求められる。このため、例えば、特許文献3に示すように、排水を硝化槽から脱窒槽の順に通して硝化脱窒する窒素除去方法において、硝化槽に活性汚泥又は硝化細菌を含む担体を投入して排水を中性付近に維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−45857号公報
【特許文献2】特開2005−60533号公報
【特許文献3】特開2001−79592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活性汚泥の活性化には、槽内のpHの影響が大きく影響する。活性汚泥槽では、有機物及び窒素を硝化・脱窒する際のpHの変動が顕著であり、pHが基準値より逸脱した場合には処理が行われなくなってしまう。このため、従来はpHを維持するためにNaOH水溶液のようなアルカリを使用し調整している。
しかしながら、アルカリを随時投入するため手間がかかるという問題がある。また、排水の性状により正確なアルカリ投入量を把握するのが困難であるため、投入量過多もしくは不足する場合も少なくないという問題がある。
【0006】
また、特許文献3に開示された技術は、硝化槽と脱窒槽を有する2槽式であり、有機物及び窒素を1つの槽で硝化・脱窒する場合には適さないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、活性汚泥を活性化させて効率的な処理を図ることができる活性汚泥槽、活性汚泥処理装置、ガス化ガス精製装置及び活性汚泥処理方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る活性汚泥槽、活性汚泥処理装置、ガス化ガス精製装置及び活性汚泥処理方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥槽において、前記槽内に炭酸カルシウムを投入したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、炭酸カルシウムのバッファ効果により活性汚泥のpHの変動が少なくなる。したがって、活性汚泥の活性化を容易かつ確実に図ることができる。
【0010】
また、前記炭酸カルシウムを坦体として投入したことを特徴とする。
これにより、投入量が過多となったり不足したりする場合がなくなるという効果がある。
【0011】
第2の発明は、最初沈殿池、凝集沈殿槽、アンモニアストリッピング、活性汚泥槽、最終沈殿槽が直列に連結される活性汚泥処理装置において、前記活性汚泥槽として、第1の発明に係る活性汚泥槽を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、活性汚泥処理を効率的に行うことができる。
【0012】
第3の発明は、ガス化炉からのガス化ガスを酸化改質する酸化改質炉と、前記酸化改質炉で改質したガス化ガスを冷却して熱回収する熱交換器と、前記熱交換器で冷却した後のガス化ガスを冷却して水蒸気を凝縮させる冷却器と、前記冷却器で冷却したガス化ガスを加圧する昇圧機と、前記昇圧機で加圧したガス化ガスを冷却してCOを分離するCO吸収装置と、前記冷却器及び前記昇圧機6で発生した排水を処理する排水処理器と、を備えるガス化ガス精製装置において、前記排水処理器に第2の発明に係る活性汚泥処理装置を連結したことを特徴とする。
本発明によれば、ガス化ガス精製を効率的に行うことができる。
【0013】
第4の発明は、有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥処理方法において、前記槽内に炭酸カルシウムを投入したことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、炭酸カルシウムのバッファ効果により活性汚泥のpHの変動が少なくなる。したがって、活性汚泥の活性化を容易かつ確実に図ることができる。
【0015】
また、前記炭酸カルシウムを坦体として投入したことを特徴とする。
これにより、投入量が過多となったり不足したりする場合がなくなるという効果がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炭酸カルシウムのバッファ効果により活性汚泥のpHの変動が少なくなる。したがって、活性汚泥の活性化を容易かつ確実に図ることができる。
また、前記炭酸カルシウムを坦体として投入したので、投入量が過多となったり不足したりする場合がなくなるという効果がある
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るガス化ガス精製装置の概要構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る活性汚泥処理装置及び活性汚泥槽の概要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る活性汚泥槽、活性汚泥処理装置、ガス化ガス精製装置及び活性汚泥処理方法の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るガス化ガス精製装置Aの概要構成を示す図である。
図1に示すように、石炭等のガス化ガス精製装置Aは、ガス化炉1、酸化改質炉2、熱交換器3、直接冷却器4、間接冷却器5、昇圧機6、脱硫器・脱CO器7、排水処理器8を備えている。
【0020】
ガス化炉1は、ガス化原料として石炭と水蒸気とを供給してガス化ガスを生成するものである。すなわち、ガス化炉1は、石炭を700℃〜900℃の温度にてガス化するように設定されており、更に石炭と水蒸気のみならず、排水処理器8からのタール分やチャー、循環して残ったガス化ガス等が供給されるようになっている。
【0021】
酸化改質炉2は、ガス化炉1からのガス化ガスを高温にて酸化改質するものである。すなわち、酸化改質炉2は、酸素、空気を導入すると共に水素を燃焼して1100℃〜1300℃程度の高温になるように設定されており、更に出口側では冷却水を噴霧してガス温度を1000℃〜1200℃程度に低減するようにしている。
【0022】
熱交換器3は、酸化改質炉2で改質したガス化ガスを冷却して熱回収するものである。
すなわち、熱交換器3は、ボイラ等の熱回収構造により構成されている。
【0023】
直接冷却器4は、熱交換器3で冷却した後のガス化ガスを冷却するものである。すなわち、直接冷却器4は、水スプレー噴霧等の冷却手段を備え、熱交換器3からのガス化ガスを直接冷却するようにしている。
【0024】
間接冷却器5は、直接冷却器4で冷却したガス化ガスを更に間接冷却するものである。すなわち、間接冷却器5は、熱交換用の配管等の間接冷却手段を備え、直接冷却手段からのガス化ガスを間接冷却するようにしている。
【0025】
昇圧機6は、間接冷却器5で間接冷却したガス化ガスを加圧するものである。すなわち、昇圧機6は、ガス化ガスを1MPa〜5MPa程度まで加圧するガスコンプレッサであり、ガス化ガス中のタール分の飽和蒸気濃度を下げるようにしている。
【0026】
脱硫器・脱CO器7は、昇圧機6で昇圧されたガス化ガスから硫黄・COを除去するものである。すなわち、脱硫器・脱CO器7は、ガス化ガスから硫黄及びCOを分離するように構成されている。
【0027】
排水処理器8は、直接冷却器4、間接冷却器5、昇圧機6で発生した排水を処理するものである。すなわち、排水処理器8は、直接冷却器4、間接冷却器5、昇圧機6に連結され、これらにおいて発生する排水を処理して、可燃性物質のタール分及びチャーと処理水とを分離しするように構成されている。
【0028】
このような構成において、ガス化ガス精製装置Aは、ガス化ガスを処理する際には、ガス化炉1において石炭等をガス化する。
そして、ガス化炉1からのガス化ガスを酸化改質炉2で酸化・水蒸気改質することでガス化ガスに含まれるタール分を除去する。
改質したガス化ガスを熱交換器3で冷却して熱回収し、冷却後のガス化ガスを直接冷却器4及び間接冷却器5で冷却してガス化ガスに残存する水蒸気を凝縮させる。
冷却したガス化ガスを昇圧機6により加圧し、加圧したガス化ガスを脱硫器・脱CO器7で冷却して硫黄、COを分離する。
そして、ガス化ガスを精製して所望の供給先へ供給すると共に、COを廃棄、固定化するようにしている。
【0029】
なお、酸化改質炉2の出口側では、ガス化ガスの20%程度(モル流量比)の冷却水(クエンチ水)を噴霧してガス温度を1000℃〜1200℃程度まで下げ、下流側の熱交換器3等の耐久性を保証している。また、噴霧した冷却水は、下流側の直接冷却器4、間接冷却器5、昇圧機6で温度低下に伴って凝縮され、排水処理器8に送られている。
そして、排水処理器8は、排水から可燃性物質のタール分及びチャーを分離してガス化炉1へ供給している。
【0030】
次に、排水処理器8に連結される活性汚泥処理装置B及び活性汚泥槽12について図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る活性汚泥処理装置B及び活性汚泥槽12の概要構成を示す図である。
【0031】
図2に示すように、排水処理器8には、最初沈殿池9、凝集沈殿槽10、アンモニアストリッピング11、活性汚泥槽(曝気槽)12、最終沈殿槽13が直列に連結される。これら最初沈殿池9から最終沈殿槽13の設備を活性汚泥処理装置Bという。
そして、排水処理器8から排出された処理水が活性汚泥処理装置B、すなわち最初沈殿池9から最終沈殿槽13を経ることで、放流水として外部に放水されるようになっている。
【0032】
最初沈殿池9は、排水処理器8から排出された処理水に含まれる固形物を沈殿させて除去する。
【0033】
凝集沈殿槽10は、最初沈殿池9から排出された処理水に対して凝固剤を投入し、凝固した固形物を沈殿させて除去する。
【0034】
アンモニアストリッピング11は、凝集沈殿槽10から排出された処理水から化学反応によってアンモニア性窒素を除去する。
すなわち、処理水中のアンモニウムイオン(NH)と水酸化物イオン(OH)を反応させて、水(HO)とアンモニアガス(NH)に変化させ、アンモニアガスを大気に放散させる。
【0035】
活性汚泥槽(曝気槽)12は、アンモニアストリッピング11から排出された処理水に含まれる有機物をバクテリアにより吸着・分解して浄化するものである。
活性汚泥は、主としてバクテリア(細菌類)、原生動物、後生動物などから構成されている。バクテリアは処理水中の有機物を食べて増殖し、原生動物や後生動物はそのバクテリアや粒子状の有機物を食べて増殖する。その結果、処理水中の有機物や粒子状物質が減少するため、処理水が浄化される。
【0036】
そして、最終沈殿槽13は、活性汚泥槽12から排出された処理水に含まれる固形物を沈殿させて除去し、放流水として外部に放流する。
【0037】
活性汚泥槽12では、処理水の有機物(例えばC126)及び窒素(アンモニア態窒素:NH)を硝化、脱窒する時に槽内のpHの影響が大きく左右する。そして、pHが基準値より逸脱すると浄化処理が行われなくなってしまう場合がある。特に、硝化、脱窒反応では顕著である。
【0038】
このような不都合を回避するため、活性汚泥槽12においては、槽内に炭酸カルシウム(CaCO)の坦体が投入されている。炭酸カルシウムの担体を活性汚泥槽12に投入することにより、活性汚泥のpH変動を少なくすることができる。
【0039】
なぜなら、炭酸カルシウムは、活性汚泥槽12内で、炭酸水素イオン(HCO)と炭酸イオン(CO2−)との間で自在に変化し、槽内のpH変動を減らして平衡を保つように機能するからである(バッファ効果)。したがって、活性汚泥のpHが中性付近で安定し、活性汚泥が活性化される。
【0040】
また、活性汚泥が溶解したCa2+を取り込むことにより、活性汚泥の比重が増すため、沈降性向上が起きる。そのため、汚泥濃度MLSSを高めることも可能であり、より高濃度の排水を処理することも可能になる。
【0041】
このように、活性汚泥槽12の槽内に炭酸カルシウムの坦体を投入することで、バッファ効果により、活性汚泥のpHの変動が少なくなる。したがって、従来、活性汚泥のpHを維持するために添加されていたNaOH水溶液のようなアルカリの使用を廃止することができる。また、汚泥の沈降性向上に効果がある。
【0042】
なお、炭酸カルシウムを坦体として投入するのは、わずかに水に溶けるため、容易に活性汚泥槽12の槽内に長時間滞留させることができるからである。言い換えれば、溶解度が高い炭酸塩の場合には、槽内からすぐに流出してしまう虞がある。
【0043】
このように、本実施形態に係る活性汚泥槽12によれば、有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥槽12に炭酸カルシウムを投入したので、炭酸カルシウムのバッファ効果により活性汚泥のpHの変動が少なくなる。したがって、活性汚泥の活性化を容易かつ確実に図ることができる。
【0044】
また、前記炭酸カルシウムを坦体として投入したので、投入量が過多となったり不足したりする場合がなくなるという効果がある。
【0045】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
A…ガス化ガス精製装置、 B…活性汚泥処理装置、 1…ガス化炉、 2…酸化改質炉、 3…熱交換器、 4…直接冷却器、 5…間接冷却器、 6…昇圧機、 7…脱硫器・脱CO器、 8…排水処理器、 9…最初沈殿池、 10…凝集沈殿槽、 11…アンモニアストリッピング、 12…活性汚泥槽、 13…最終沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥槽において、
前記槽内に炭酸カルシウムを投入したことを特徴とする活性汚泥槽。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムを坦体として投入したことを特徴とする請求項1に記載の活性汚泥槽。
【請求項3】
最初沈殿池、凝集沈殿槽、アンモニアストリッピング、活性汚泥槽、最終沈殿槽が直列に連結される活性汚泥処理装置において、
前記活性汚泥槽として、請求項1又は請求項2に記載の活性汚泥槽を用いたことを特徴とする活性汚泥処理装置。
【請求項4】
ガス化炉からのガス化ガスを酸化改質する酸化改質炉と、
前記酸化改質炉で改質したガス化ガスを冷却して熱回収する熱交換器と、
前記熱交換器で冷却した後のガス化ガスを冷却して水蒸気を凝縮させる冷却器と、
前記冷却器で冷却したガス化ガスを加圧する昇圧機と、
前記昇圧機で加圧したガス化ガスを冷却してCOを分離するCO吸収装置と、
前記冷却器及び前記昇圧機で発生した排水を処理する排水処理器と、
を備えるガス化ガス精製装置において、
前記排水処理器に請求項3に記載の活性汚泥処理装置を連結したことを特徴とするガス化ガス精製装置。
【請求項5】
有機物及び窒素を1つの槽内で硝化・脱窒する活性汚泥処理方法において、
前記槽内に炭酸カルシウムを投入したことを特徴とする活性汚泥処理方法。
【請求項6】
前記炭酸カルシウムを坦体として投入したことを特徴とする請求項5に記載の活性汚泥槽処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−247008(P2010−247008A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95893(P2009−95893)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】