説明

活性炭および該活性炭を用いた電気二重層キャパシタ

【課題】吸着量と吸着物質の移動速度とをバランスよく両立させた活性炭を提供する。
【解決手段】本発明の活性炭は、BET比表面積が1000m2/g以上3000m2/g以下であり、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の細孔のBET比表面積中の面積比率が40%以上、かつ、細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔の全細孔容積中の容積比率が40%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ孔およびメソ孔の両方を有する活性炭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、高い比表面積を有することから吸着用途などに用いられている。また、近年では、電気二重層キャパシタ用電極などの電子材料としての用途にも用いられている。活性炭は、直径2.0nm以下のミクロ孔を多く有するため、他の多孔質材料に比べて比表面積が高いという特徴を有する。しかし、ミクロ孔は細孔容積当たりの比表面積が高くなるが、その孔径が小さいため、吸着剤に用いた場合には吸着物質の細孔内への移動が遅く、また電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合には電解質イオンの拡散・移動が遅い。従って、高い比表面積を有していても微細な細孔内の吸着サイトを充分に生かしきれていなかった。
【0003】
このような問題を解決するために、単純に個々の細孔径を大きくすることにより、吸着物質や電解質イオンの細孔内への拡散速度を向上させることが考えられる。しかし、単に細孔径を大きくした場合には、細孔容積当たりの比表面積が低下してしまい、活性炭質量もしくは活性炭体積当たりの吸着量、静電容量が低下する。そこで、活性炭の吸着量を向上させる微細な細孔と、物質移動を速やかに行う比較的大きな細孔を有する活性炭が、種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、クランストン−インクレイ法により測定された細孔径の分布が、1.0〜2.0nmと2.0nm〜10.0nmの間に各々ピークを有する活性炭が開示されている。特許文献2には、細孔径分布において、細孔直径が1.0〜4.0nmの範囲に少なくとも1個のピークと細孔直径が0.6〜0.9nmの範囲に少なくとも1個のピークを備え、細孔直径が1.0〜5.0nmの大口径細孔の内表面に細孔直径が0.6〜0.9nmの小口径細孔が形成されている活性炭が開示されている。特許文献3には、細孔容積が0.01ml/g以上0.2ml/g以下であって、細孔直径が10.0〜30.0nmの細孔容積(A)と、細孔直径が2.0〜3.0nmの細孔容積(B)の比(A/B)が0.6以上である活性炭が開示されている。
【0005】
特許文献4には、細孔容積分布において、細孔径2.1〜2.4nmの範囲、1.7〜2.1nmの範囲、1.4〜1.7nmの範囲、1.1〜1.4nmの範囲にそれぞれピークを有する活性炭が開示されている。特許文献5には、細孔分布曲線において、少なくとも4.0nm未満に少なくとも2つ以上のピークトップを有し、比表面積が1200〜2500m2/gである活性炭が開示されている。特許文献6には、孔径が2.0以上50.0nm未満のメソ細孔の比表面積が100〜2500m2/gであり、且つ孔径が2.0nm未満のミクロ細孔の比表面積が600〜2500m2/gであり、全細孔容積に対するメソ細孔容積の比率が10〜40%である繊維状活性炭が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−328308号公報
【特許文献2】特開2000−351613号公報
【特許文献3】特開2006−143494号公報
【特許文献4】特開2007−186411号公報
【特許文献5】特開2007−269552号公報
【特許文献6】特開2008−149267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜6のように、微細な細孔と、比較的大きな細孔とを有する活性炭が提案されている。しかし、吸着量と吸着物質の移動速度とを両立させる観点から、活性炭に形成される直径2.0nm以下のミクロ孔と直径2.0nm超50nm未満のメソ孔との存在比率には、未だ検討の余地があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、吸着量と吸着物質の移動速度とをバランスよく両立させた活性炭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することができた本発明の活性炭は、BET比表面積が1000m2/g以上3000m2/g以下であり、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の細孔のBET比表面積中の面積比率が40%以上、かつ、細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔の全細孔容積中の容積比率が40%以上であることを特徴とする。前記活性炭は、細孔径10.0nm以上50.0nm未満の細孔の全細孔容積中の容積比率が8%以上であることが好ましい。
【0010】
また、前記活性炭は、窒素吸着法により測定した細孔分布図(縦軸:log微分細孔容積dV/dlogD(cm3/g)、横軸:細孔径D(nm))において、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の範囲に最大ピークを有することが好ましい。さらに、前記細孔分布図において、細孔径が3.0nm、4.0nmおよび10.0nmのときのlog微分細孔容積の値をそれぞれV3、V4およびV10としたとき、V10/V3≧0.4、かつ、V10/V4≧0.5であることが好ましい。
【0011】
前記活性炭の平均細孔径は2.0nm以上3.0nm以下が好ましい。
【0012】
また、本発明には、前記活性炭を含有する電気二重層キャパシタ用電極材料、該電極材料を用いた電気二重層キャパシタ用電極、ならびに、該電極を用いた電気二重層キャパシタも含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の活性炭は、ミクロ孔とメソ孔とをバランスよく有しているため、吸着量と吸着物質の移動速度とがバランスよく両立されている。そのため、例えば、本発明の活性炭を電極材料に用いれば、静電容量および内部抵抗に優れた電気二重層キャパシタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】活性炭No.1〜5の細孔分布図である。
【図2】活性炭No.3、6、7の細孔分布図である。
【図3】活性炭No.3、8、9の細孔分布図である。
【図4】活性炭No.3、10、11の細孔分布図である。
【図5】実施例の活性炭を使用して製造した電気二重層キャパシタを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の活性炭は、高比表面積を有し、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の細孔(以下、「ミクロ孔」と称する場合がある)と、細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔(以下、「メソ孔」と称する場合がある)をバランスよく有することを特徴とする。吸着サイトとして作用するミクロ孔と、吸着物質の移動経路となるメソ孔とをバランスよく存在させることで、活性炭内での吸着物質の拡散、移動が早くなり、かつ、細孔深部に存在する吸着サイトまでも十分に生かすことができる。そのため、例えば、本発明の活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料として用いた場合、静電容量が高く、かつ、内部抵抗の低い電気二重層キャパシタが得られる。また、本発明の活性炭をガス吸着剤、浄水用吸着剤、排水浄化用吸着剤などの吸着剤として用いれば、吸着容量および吸着速度を向上させることができる。
【0016】
以下、本発明の活性炭について具体的に説明する。
【0017】
前記活性炭のBET比表面積(Stotal)は1000m2/g以上3000m2/g以下である。BET比表面積が1000m2/g未満では、活性炭の吸着能力が低くなる。そのため、例えば、活性炭を電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に十分な質量当たりの静電容量(F/g)が得られない。また、BET比表面積が3000m2/gを超えると活性炭の密度が低下し過ぎる。そのため、例えば、活性炭を電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に体積当たりの静電容量(F/cm3)が低下する。前記BET比表面積は1200m2/g以上が好ましく、より好ましくは1500m2/g以上であり、2500m2/g以下が好ましく、より好ましくは2200m2/g以下である。
【0018】
前記活性炭は、BET比表面積(Stotal)中における細孔径1.0nm以上2.0nm以下である細孔のBET比表面積(S1-2)の面積比率が40%以上である。BET比表面積中のミクロ孔の面積比率が40%未満では、吸着サイトとして作用するミクロ孔の比率が低くなり過ぎる。そのため、例えば、電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に十分な質量当たりの静電容量(F/g)が得られない。前記BET比表面積中のミクロ孔の面積比率は、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。BET比表面積中のミクロ孔の面積比率の上限は、メソ孔の面積比率により変化するが、通常80%である。
【0019】
また、前記活性炭は、BET比表面積(Stotal)中における細孔径2.0nm超50.0nm未満である細孔のBET比表面積(S2-50)の面積比率が40%以下であることが好ましく、より好ましくは36%以下、さらに好ましくは32%以下である。前記BET比表面積中のメソ孔の面積比率が40%以下であれば、相対的にミクロ孔の面積比率が増大する。そのため、例えば、電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に、質量当たりの静電容量(F/g)がより良好となる。BET比表面積中のメソ孔の面積比率の下限は、通常20%である。
【0020】
前記活性炭の全細孔容積(Vtotal)は、0.7cm3/g以上が好ましく、より好ましくは0.8cm3/g以上、さらに好ましくは0.9cm3/g以上であり、3.0cm3/g以下が好ましく、より好ましくは2.5cm3/g以下、さらに好ましくは2.0cm3/g以下である。
【0021】
前記活性炭は、全細孔容積(Vtotal)中における細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔の細孔容積(V2-50)の容積比率が40%以上である。全細孔容積中のメソ孔の容積比率が40%未満では、吸着物質の移動経路となるメソ孔の比率が低くなり過ぎる。そのため、例えば、電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に内部抵抗が増大する。前記全細孔容積中のメソ孔の容積比率は45%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。全細孔容積中のメソ孔の容積比率の上限は、ミクロ孔の容積比率により変化するが、通常70%である。
【0022】
前記活性炭は、全細孔容積(Vtotal)中における細孔径10.0nm以上50.0nm未満である細孔(以下、「大径メソ孔」と称する場合がある)の細孔容積(V10-50)の容積比率が8%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上である。全細孔容積中の大径メソ孔の容積比率が8%以上であれば、大きな内径を有する移動経路が増加するため、活性炭内部での吸着物質の移動、拡散がより容易となる。そのため、例えば、電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合、内部抵抗がより低減する。全細孔容積中の大径メソ孔の容積比率は20%以下が好ましい。
【0023】
前記活性炭の平均細孔径は2.0nm以上が好ましく、より好ましくは2.1nm以上、さらに好ましくは2.2nm以上であり、3.0nm以下が好ましく、より好ましくは2.6nm以下、さらに好ましくは2.4nm以下である。前記平均細孔径が上記範囲内であれば、吸着物質が活性炭から出入りしやすくなる。そのため、例えば、電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合に急速充放電特性が向上する。
【0024】
前記活性炭は、窒素吸着法により測定した細孔分布図(縦軸:log微分細孔容積dV/dlogD(cm3/g)、横軸:細孔径D(nm))において、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の範囲に最大ピークを有することが好ましい。前記細孔分布図においてミクロ孔領域に最大ピークを有していれば、活性炭がミクロ孔を多く有していることとなり、吸着サイトを多く有することとなる。なお、前記細孔分布図においてメソ孔領域に最大ピークを有する活性炭では、メソ孔の存在比率が高く、比表面積が低くなる傾向がある。
【0025】
また、前記細孔分布図において、細孔径が3.0nm、4.0nmおよび10.0nmのときのlog微分細孔容積の値をそれぞれV3、V4およびV10としたとき、V10/V3≧0.4、かつ、V10/V4≧0.5であることが好ましい。V10/V3およびV10/V4が上記範囲であれば、ミクロ孔とメソ孔とが効率よく連通し、例えば、電気二重層キャパシタ用として使用した際には、電解液やイオン類などの多孔質炭素内部への拡散性が高くなり、その結果、イオンの吸着量が多くなって静電容量が高くなる。
【0026】
次に、上記活性炭の製造方法について説明する。上記活性炭は、賦活原料に賦活処理することで製造できる。ここで、「賦活処理」とは、賦活原料の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。賦活処理としては、薬品賦活、ガス賦活のいずれも採用することができ、薬品賦活およびガス賦活の両方を行ってもよい。また、賦活処理は一回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。賦活原料は、通常の活性炭の原料として用いられるものであれば、特に限定されない。
【0027】
なお、上記活性炭の製造方法としては、比較的大きい細孔(メソ孔)が形成されやすい賦活原料(以下、「メソ孔形成原料」と称する場合がある)と比較的小さい細孔(ミクロ孔)が形成されやすい賦活原料(以下、「ミクロ孔形成原料」と称する場合がある)との複合物を、水蒸気賦活することが好適である。賦活原料として、メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との複合物を用いれば、賦活処理を複数回行うことなく、一回の賦活処理でミクロ孔とメソ孔とをバランスよく有する活性炭が得られる。
【0028】
前記メソ孔形成原料としては、例えば、紙、綿繊維、木質材料などのセルロース系原料などが挙げられる。前記ミクロ孔形成原料としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂などの合成樹脂系原料などが挙げられる。これらのメソ孔形成原料、ミクロ孔形成原料は、それぞれ少なくとも1種以上使用する。なお、メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との配合比は、所望とする活性炭の物性に応じて適宜変更すればよい。メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との複合物としては、例えば、紙フェノール樹脂積層板などが挙げられる。
【0029】
前記メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との混合物または複合物は、炭化処理して用いることが好ましい。前記炭化処理は、通常、不活性ガス雰囲気下で加熱処理することによりなされる。該炭化処理の温度は、500℃以上が好ましく、より好ましくは550℃以上であり、850℃以下が好ましく、より好ましくは800℃以下である。
【0030】
水蒸気賦活に用いる前記メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との混合物または複合物、あるいはその炭化物の平均粒子径は1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、10cm以下が好ましく、より好ましくは7cm以下、さらに好ましくは5cm以下である。ここで、本願において平均粒子径とは、水に分散させた試料を、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製の「SALD(登録商標)−2000」)により測定して、求められる体積平均粒子径である。なお、賦活原料の平均粒子径は粉砕により調整すればよい。また、賦活原料の平均粒子径が200μm以上の場合は、篩を用いて整粒すればよい。
【0031】
前記水蒸気賦活では、賦活原料を所定の温度まで加熱した後、水蒸気を供給することにより賦活処理を行う。賦活原料の加熱は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。なお、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを用いることができる。
【0032】
賦活処理を行う際の温度(炉内温度)は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上であり、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1300℃以下である。また、賦活処理を行う際の加熱時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1.0時間以上であり、10時間以下が好ましく、より好ましくは5時間以下である。
【0033】
賦活処理中に供給する水蒸気の総量は、賦活原料100質量部に対して50質量部以上が好ましく、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上であり、10000質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5000質量部以下、さらに好ましくは3000質量部以下である。供給する水蒸気の総量が賦活原料100質量部に対して50質量部以上であれば、賦活反応による細孔形成がより良好となり、10000質量部以下であれば、賦活反応がより効率良く進行し、生産性を向上できる。
【0034】
水蒸気を供給する態様としては、水蒸気を希釈せずに供給する態様、水蒸気を不活性ガスで希釈して供給する態様のいずれも可能であるが、賦活反応を効率良く進行させるために、不活性ガスで希釈して供給する態様が好ましい。水蒸気を不活性ガスで希釈して供給する場合、該混合ガス(全圧101.3kPa)中の水蒸気分圧は40kPa以上が好ましく、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは70kPa以上である。
【0035】
水蒸気賦活後の活性炭は、さらに洗浄、熱処理、粉砕を行ってもよい。洗浄は、水蒸気賦活後の活性炭を、水、酸、有機溶剤などの溶媒を用いて行う。活性炭を洗浄することにより、金属不純物、灰分、有機溶剤可溶成分などを除去することができる。熱処理は、水蒸気賦活後あるいは洗浄後の活性炭を、さらに不活性ガス雰囲気下で加熱する。活性炭を熱処理することにより、活性炭の表面の官能基量を調整することができる。粉砕は、ディスクミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて行う。なお、活性炭の粒子径は、用途に応じて適宜調整すればよい。
【0036】
次に、本発明の電気二重層キャパシタについて説明する。本発明の電気二重層キャパシタは、前記活性炭を用いたことを特徴とする。
【0037】
電気二重層キャパシタ用電極としては、例えば、活性炭、導電性付与剤、およびバインダーを混練し、さらに溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔などの集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去したものが挙げられる。
【0038】
前記電気二重層キャパシタ用電極に使用されるバインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂などを使用できる。また、導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを使用できる。
【0039】
電気二重層キャパシタは、一般的には、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造となっている。前記電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの有機溶剤に、アミジン塩を溶解した電解液;過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液;4級アンモニウムやリチウムなどのアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液;4級ホスホニウム塩を溶解した電解液などが挙げられる。また、前記セパレータとしては、例えば、セルロース、ガラス繊維、または、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0041】
比表面積、全細孔容積および平均細孔径の測定方法
活性炭0.2gを150℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置(マイクロメリティックス社製、「ASAP−2400」)を用いて、吸着等温線を求め、BET法により比表面積、全細孔容積を算出した。また、活性炭に形成された細孔の形状をシリンダー状と仮定し、細孔径1.0nm〜30nmの範囲における細孔容積と比表面積に基づき、下記式(1)により平均細孔径を算出した。
【0042】
【数1】

【0043】
電気二重層キャパシタ性能評価
静電容量
充放電装置(楠本化成社製、「ETAC(登録商標) Ver.4.4」)の充放電端子を電気二重層キャパシタの集電板に接続し、集電板間電圧が2.5Vになるまで40mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で30分間充電を行った。充電後、定電流(放電電流10mA)で電気二重層キャパシタの放電を行った。このとき、集電板間電圧がV1、V2となるまでに要した放電時間t1、t2を測定し、下記式(2)を用いて静電容量を求めた。得られた静電容量を、キャパシタ用電極における電極材料層中の活性炭質量で除することにより質量基準静電容量(F/g)を算出し、キャパシタ用電極における電極材料層の総体積で除することにより体積基準静電容量(F/cm3)を算出した。また、下記式(3)を用いて内部抵抗を求めた。なお、静電容量および内部抵抗の測定は、25℃および−30℃の温度下で行った。
【0044】
【数2】

【0045】
【数3】


I:10(mA)
t1:電気二重層キャパシタ電圧がV1となるまでに要した放電時間(sec)
t2:電気二重層キャパシタ電圧がV2となるまでに要した放電時間(sec)
V1:2.0(V)
V2:1.0(V)
【0046】
1.活性炭の製造
製造例1
賦活原料として、紙フェノール樹脂積層板を炭化したもの(平均粒子径:5mm〜15mm)100gをロータリーキルン(タナカテック社製(容積:2.5L))内に投入し、窒素流通下(1L/分)で900℃まで昇温した(昇温速度:10℃/分)。
900℃に達してからロータリーキルン内に水蒸気(水蒸気分圧:71kPa)を窒素とともに供給して、2.0時間水蒸気賦活処理を行い活性炭No.1を得た。なお、供給する窒素の流量は1.0L/分とした。この時、水蒸気の総使用量は240g、すなわち賦活原料100質量部に対して240質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0047】
製造例2
水蒸気賦活処理時間を3.0時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして活性炭No.2を得た。この時、水蒸気の総使用量は360g、すなわち賦活原料100質量部に対して360質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0048】
製造例3
水蒸気賦活処理時間を3.5時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして活性炭No.3を得た。この時、水蒸気の総使用量は420g、すなわち賦活原料100質量部に対して420質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0049】
製造例4
水蒸気賦活処理時間を4.0時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして活性炭No.4を得た。この時、水蒸気の総使用量は480g、すなわち賦活原料100質量部に対して480質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0050】
製造例5
水蒸気賦活処理時間を4.5時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして活性炭No.5を得た。この時、水蒸気の総使用量は540g、すなわち賦活原料100質量部に対して540質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0051】
製造例6
ロータリーキルン内に水蒸気を窒素とともに供給する際の水蒸気分圧を54kPaに変更したこと以外は製造例3と同様にして活性炭No.6を得た。なお、供給する窒素の流量は1.6L/分とした。この時、水蒸気の総使用量は300g、すなわち賦活原料100質量部に対して300質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0052】
製造例7
ロータリーキルン内に水蒸気を窒素とともに供給する際の水蒸気分圧を41kPaに変更したこと以外は製造例3と同様にして活性炭No.7を得た。なお、供給する窒素の流量は1.8L/分とした。この時、水蒸気の総使用量は200g、すなわち賦活原料100質量部に対して200質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0053】
製造例8
賦活原料の仕込み量を、125gに変更したこと以外は製造例3と同様にして活性炭No.8を得た。この時、水蒸気の総使用量は420g、すなわち賦活原料100質量部に対して336質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0054】
製造例9
賦活原料の仕込み量を、150gに変更したこと以外は製造例3と同様にして活性炭No.9を得た。この時、水蒸気の総使用量は420g、すなわち賦活原料100質量部に対して280質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0055】
製造例10
賦活原料として、フェノール樹脂(住友ベークライト社製)を炭化したもの(平均粒子径:5mm〜15mm)100gをロータリーキルン(タナカテック社製(容積:2.5L))内に投入し、窒素流通下(1L/分)で900℃まで昇温した(昇温速度:10℃/分)。
【0056】
900℃に達してからロータリーキルン内に水蒸気(水蒸気分圧:71kPa)を窒素とともに供給して、4.0時間水蒸気賦活処理を行い活性炭No.10を得た。この時、水蒸気の総使用量は480g、すなわち賦活原料100質量部に対して480質量部とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0057】
製造例11
特開平11−87190の実施例No.1と同様にして活性炭No.11を得た。すなわち、紙基材フェノール樹脂積層板を約2.5mm角に粉砕したものを、不活性ガス雰囲気下において700℃で4時間炭化処理を施した後、ロータリーキルン装置を用いて水蒸気賦活処理を行い活性炭No.11を得た。水蒸気賦活処理の条件は、試料仕込み量:500g、水使用量:500g/時間、窒素流入量:12L/分、賦活温度:900℃、賦活時間:3.0時間とした。得られた活性炭を評価し、結果を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
製造例1〜9で得られた活性炭No.1〜9は、いずれも比表面積が大きく、ミクロ孔およびメソ孔をバランスよく有している。これらの結果より、メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との混合物または複合物を賦活原料に用いることで、ミクロ孔とメソ孔とをバランスよく有する活性炭が容易に製造できることがわかる。活性炭No.10、11は、BET比表面積が高く、BET比表面積中のミクロ孔の面積比率も大きいが、全細孔容積中のメソ孔の容積比率が小さい、すなわち、ミクロ孔は多く形成されているが、メソ孔の比率が小さい。
【0060】
2.電気二重層キャパシタの製造
上記で得た活性炭No.1〜3、10を用いて電気二重層キャパシタを製造した。具体的には、活性炭に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末とアセチレンブラックとを、活性炭:PTFE:アセチレンブラック=8:1:1(質量比)になるように混合し、ペースト状になるまで混練した。ついで、ミニブレンダーで粉砕し、500μmのステンレス鋼製篩で篩って粒度を揃えた。次に、直径2.54cm(1インチ)の金型を用い、プレス後の厚みが0.5mmになるように仕込み量を調節し、50.4MPaの圧力でプレス成形して、キャパシタ用電極を作成した。
【0061】
得られたキャパシタ用電極を真空条件下、200℃、1時間の条件で乾燥した後、窒素ガスを流通させたグローブボックス内で電解液(1Mテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液)を電極に真空含浸させた。この電極を使用して図5に示すように電気二重層キャパシタを組み立てた。図5に示す電気二重層キャパシタは、前記電解液を含浸させたセパレータ(Celgard社製、「セルガード(登録商標)#3501」)1を前記キャパシタ用電極2で挟み、電極をOリング3で囲繞した後、さらに集電板としてのアルミニウム板4で挟んで作成した。得られた電気二重層キャパシタの評価結果を表2に示した。
【0062】
【表2】

【0063】
活性炭No.1〜3を用いた電気二重層キャパシタは、いずれも高い静電容量を有しており、特に、全細孔容積中のメソ孔の容積比率が50%以上である活性炭No.2および3では、電気二重層キャパシタの内部抵抗が大幅に低減されていることがわかる。活性炭No.10を用いた電気二重層キャパシタは、活性炭No.1を用いた電気二重層キャパシタに比べて、内部抵抗は若干低いが静電容量も低い値となっている。このことから、活性炭No.10では吸着物質の移動経路となるメソ孔の比率が低いため、細孔深部の吸着サイトが充分に生かしきれていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料や吸着剤に好適である。
【符号の説明】
【0065】
1:セパレータ、2:キャパシタ用電極、3:Oリング、4:アルミニウム板、5:ポリテトラフルオロエチレン板、6:ステンレス鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が1000m2/g以上3000m2/g以下であり、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の細孔のBET比表面積中の面積比率が40%以上、かつ、
細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔の全細孔容積中の容積比率が40%以上であることを特徴とする活性炭。
【請求項2】
細孔径10.0nm以上50.0nm未満の細孔の全細孔容積中の容積比率が8%以上である請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
窒素吸着法により測定した細孔分布図(縦軸:log微分細孔容積dV/dlogD(cm3/g)、横軸:細孔径D(nm))において、細孔径1.0nm以上2.0nm以下の範囲に最大ピークを有する請求項1または2に記載の活性炭。
【請求項4】
前記細孔分布図において、細孔径が3.0nm、4.0nmおよび10.0nmのときのlog微分細孔容積の値をそれぞれV3、V4およびV10としたとき、
10/V3≧0.4、かつ、
10/V4≧0.5である請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性炭。
【請求項5】
平均細孔径が2.0nm以上3.0nm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の活性炭。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の活性炭を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項7】
請求項6に記載の電極材料を用いたことを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項8】
請求項7に記載の電極を用いたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20907(P2011−20907A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169473(P2009−169473)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【出願人】(505447766)カーボンテック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】