説明

活性炭素多孔体の製造方法、活性炭素多孔体、および、電気二重層キャパシタ用電極

【課題】本発明の目的は、電気二重層キャパシタ用電極の材料などに適した所望の孔径および比表面積を有する活性炭素多孔体を製造する方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、炭化性材料、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して混合材料を得る混合工程と、上記混合材料を炭化する炭化工程と、炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法である。また、本発明は、炭化性材料から得られた活性炭、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して複合材料を得る混合工程と、上記混合材料を炭化する炭化工程と、炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭素多孔体の製造方法、活性炭素多孔体、および、電気二重層キャパシタ用電極に関する。更に詳しくは、活性炭素多孔体の、特に細孔構造が制御された電気二重層キャパシタ用電極に好適な活性炭素多孔体の製造方法、活性炭素多孔体、および、電気二重層キャパシタ用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタ(EDLC)は、電解液中にセパレータを介して、2対の電極(EDLC用電極)を対向することにより構成される。充放電はセルに電圧を印加することにより、電解液中のイオンが電極表面に電気的吸脱着をすることにより行われる。このように、EDLCは電極と電解液間で化学的な反応が伴わないため、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池など他の二次電池と比較して、高い出力、高い寿命、さらには高い安全性を有することが特徴である。
【0003】
EDLCは、半導体メモリのバックアップ電源として実用化され、次いで、高容量化と共に太陽電池と組み合わせた道路標識、照明等に使用されるようになった。近年、注目されているEDLCの利用分野は、車載用電源と瞬時停電用電源である。特に車載用途は、自動車の電子制御化、ハイブリッド化と共に、電源への信頼性、寿命、出力特性に対する要求が高まり、これらの特性に優れるEDLCが注目されている。
【0004】
EDLCの電極材には、高い比表面積を有する活性炭が用いられている。活性炭はナノサイズの細孔から成る多孔質炭素である。この細孔内で電気二重層形成及びイオン移動などが起こるため、EDLCの特性向上を目的とし、予てより電極材としての活性炭の改良検討が盛んに行われてきた。
【0005】
従来より、活性炭はその優れた吸着能から吸着剤やEDLC用電極として広く使用されている。このような用途で効果的に機能するために、活性炭には適切な物性(例えば、比表面積、細孔径など)を有することが要求されている。
【0006】
EDLC用の多孔質炭素材に活性炭が使われるのは、活性炭にはミクロ孔と呼ばれる直径が2nm以下の微細な孔が大量にあり、比表面積が大きいため、EDLCに用いた場合にEDLCの容量を高くすることができるからである。すなわち、従来の活性炭の製造方法においては、まず、炭化処理により炭素材料の孔(主にマクロ孔)の内部等により小さな細孔(主にメソ孔)を形成し、さらに賦活処理により、炭化処理で出来た細孔(主にメソ孔)の内部等に、さらに多くの微細な孔(主にミクロ孔)を形成することで、表面積を大きくし、未処理の炭素材料に比べて非常に大きな能力(吸着性能等)を持たせている。
【0007】
しかし、電解質イオンの大きさは約0.5〜1nmであり、ミクロ孔の大きさに近いため、活性炭には電解質イオンが吸脱着できないような小さなミクロ孔も存在する。このような電解質イオンが吸脱着できない孔はELDCの容量に寄与しないため、EDLCの高容量化のためには、単に比表面積が大きいだけでなく、電解質イオンが十分に浸透できるような直径が2〜50nmの細孔(メソ孔)を多く含む活性炭素多孔体が望ましい。
【0008】
従来の活性炭の製造方法として、特許文献1(特開2011−1232号公報)には、炭素原料と融点が250℃以下の複素環式化合物や芳香族炭化水素のような有機化合物を混合して、アルカリ賦活して活性炭を製造する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献2(特開2010−280515号公報)には、炭化性材料である球状フェノール樹脂に所定量のポリビニルアルコールを添加して、混合し、脱液した後、得られた球状フェノール樹脂を平均粒径0.1mm以上に粗解砕し、炭化し、賦活した後、得られた賦活物を平均粒径が0.1nm以上、1nm未満になるように微解砕して活性炭を製造する方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献3(特表2010−538458号公報)には、炭素を含む導電性多孔質母材に炭化性材料を含浸させ、硬化、炭化および賦活工程を経て導電性多孔質母材の孔に含浸された炭化性材料を炭化させることにより複合炭素電極を製造する方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記のような方法によりフェノール樹脂等の炭化性材料を炭化・賦活するだけでは、ミクロ孔を多く含むことにより比表面積が大きな活性炭素多孔体を得ることができたとしても、活性炭表面の細孔としてメソ孔を多く含み、かつ、比表面積が大きな活性炭を得ることは困難であった。なお、かかる従来の方法で得られる活性炭における多孔部分の総体積に対するメソ孔の比率は20〜30体積%程度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−1232号公報
【特許文献2】特開2010−280515号公報
【特許文献3】特表2010−538458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、EDLC用電極の材料などに適した所望の孔径および比表面積を有する活性炭素多孔体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、炭化性材料、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して混合材料を得る混合工程と、
上記混合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、炭化性材料から得られた活性炭、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して複合材料を得る混合工程と、
上記混合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法である。
【0016】
上記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂であることが好ましい。
【0017】
上記複合材料を得る混合工程において、上記活性炭と混合する上記熱可塑性樹脂が粒子状であり、その平均粒径が1〜100nmであることが好ましい。
【0018】
上記混合材料を得る混合工程において、上記熱可塑性樹脂の混合割合が、上記炭化性材料と上記熱可塑性樹脂との合計重量に対して0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0019】
上記炭化工程の温度は300〜1000℃であることが好ましい。
また、本発明は、上記活性炭素多孔体の製造方法を用いて製造された活性炭素多孔体にも関する。さらに、本発明は、当該活性炭素多孔体を備えた電気二重層キャパシタにも関する。
【0020】
また、本発明は、直径が1〜100nmの孔の割合が細孔容量の総体積に対して50体積%以上である活性炭素多孔体にも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法においては、炭化性材料と熱可塑性樹脂とを混合した混合材料、または、活性炭と熱可塑性樹脂とを混合した複合材料を所定の温度で炭化させることにより、炭化中、混合材料または複合材料中に含有されている熱可塑性樹脂は、固体から液体に変化し、炭化、分解または蒸発することなく混合材料または複合材料中から液体状態で流出する。これにより、電気二重層キャパシタ用の電極材料などとして好適な孔径および比表面積を有する活性炭素多孔体を、歩留まりよく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[活性炭素多孔体の製造]
活性炭とは、「細孔を有する多孔質の炭素質物質」であり、大きな比表面積と吸着能力を持つ物質であり、活性炭素多孔体は、かかる活性炭の性状を有する多孔質の炭素質形状である。主に、「炭化工程」および「賦活工程」の2工程で製造される。活性炭素多孔体の形状は特に限定されないが、例えば、破砕物状、造粒物状、顆粒状、繊維状、フェルト状、織物状、シート状、棒状等の各種の形状が挙げられる。
【0023】
本発明の活性炭素多孔体の製造方法は、
炭化性材料、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して混合材料を得る混合工程と、
上記混合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の活性炭素多孔体の製造方法は、
上記炭化性材料から得られた活性炭および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して複合材料を得る混合工程と、
上記混合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した上記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする。
【0025】
<混合工程>
(炭化性材料)
炭化性材料は、好ましくは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、石油ピッチ、石炭、石油コークス、石炭コークス、石炭ピッチ、木炭、おが屑、ヤシガラ、セルロース系繊維合成ピッチ、フォトレジスト、フェノールホルムアルデヒドレゾール、フェノールホルムアルデヒドノボラックからなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記フェノール樹脂としては、特に限定はなく、種々公知のフェノール樹脂を用いることができ、例えば、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、その他の特殊フェノール樹脂等を用いることができる。
【0026】
なお、上記炭化性材料には導電材を添加することもできる。導電材としては、炭素質材料に導電性を付与できるものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0027】
(熱可塑性樹脂)
炭化性材料と混合される融点が300℃以上の熱可塑性樹脂は、好ましくは耐熱性芳香族熱可塑性樹脂である。耐熱性芳香族熱可塑性樹脂は、好ましくはベンゼン環がエーテルとケトンにより結合した直鎖状ポリマー構造を持ち、結晶性の熱可塑性樹脂に属するポリマーである芳香族ポリエーテルケトンである。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えば、融点が334℃のポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、融点が383℃のポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂(PEKEKK)、融点が373℃のポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)が挙げられ、好ましくは、PEEKまたはPEKEKKである。
【0028】
(複合材料)
複合材料は、上記炭化性材料から硬化または/および炭化、賦活工程の通常の工程を経て製造された活性炭に、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して得られる。活性炭と熱可塑性樹脂を混合する際において、活性炭の形状は特定されないが、熱可塑性樹脂は粒子状であることが好ましい。粒子状の熱可塑性樹脂の平均粒径は、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは2〜20nmである。これにより、電解質イオンが十分に浸透できるようなメソ孔(直径2〜50nm)を多く含み、かつ比表面積が大きなEDLC用電極に適した活性炭素多孔体を製造することが可能となる。
【0029】
(混合材料)
上記混合材料を得る混合工程において、熱可塑性樹脂の混合割合は、活性炭と熱可塑性樹脂との合計重量に対して、好ましくは0.01〜30重量%であり、より好ましくは0.1〜10重量%である。このような範囲に調整することで、所望の孔径および比表面積を有する活性炭素多孔体を得ることができる。
【0030】
混合工程の温度は、炭化性材料が硬化しないような温度(炭化性材料がフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂である場合は、硬化温度より低い温度)であることが好ましく、また、熱可塑性樹脂の融点より低い温度であることが好ましい。このような温度において、混合工程を実施することにより、熱可塑性樹脂の混合前の形状を維持したまま、熱可塑性樹脂を炭化性材料中に分散させることができる。
【0031】
<硬化工程>
本発明の活性炭素多孔体の製造方法は、炭化工程の前に、硬化工程を含んでいてもよい。この硬化工程により、最終的に得られる活性炭素多孔体の形状を調整することができる。
【0032】
炭化性材料と熱可塑性樹脂との混合材料の硬化は、100〜300℃の温度で0.2〜10時間かけて行なうことが好ましい。
【0033】
例えば、炭化性材料としてノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、硬化剤によって硬化処理を施すことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を炭化して得られた炭素を用いて作製された電極材は、充電時に起こる構造変化が抑制され、出力特性の悪化が抑制されるので好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としては特に制限はないが、具体的にはヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド供給源が挙げられる。また、硬化の手法としてはノボラック型フェノール樹脂を溶融させ硬化剤と混合する溶融硬化が一般的であるが、ノボラック型フェノール樹脂を水溶液中に縣濁させた後硬化剤を添加し、水溶液中で熱処理する縣濁硬化法、また、乾燥機等の加熱処理装置を用いた加熱硬化等が挙げられる。
【0034】
硬化した樹脂は粉砕した後に、次の炭化工程を行ってもよい。粉砕には通常の粉砕機を用いることができ、粉砕機としては、例えば、カッターミル、ピンミル、ジェットミルが挙げられる。
【0035】
<炭化工程>
炭化方法としては、所定の時間、複合材料を加熱して炭化する方法が好ましい。加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂の融点以上の温度であり、熱可塑性樹脂が炭化、分解または蒸発する温度以下の温度であることが好ましく、具体的には、300〜1000℃であることが好ましい。加熱は非酸化性雰囲気下で行われることが好ましい。非酸化性雰囲気下としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオンなどの不活性ガス、または、これらの2種以上の混合ガスの雰囲気下が挙げられる。加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間である。この炭化工程により、混合材料中の炭化性材料が炭化するのとほぼ同時に、熱可塑性樹脂は固体から液体に変化し、混合材料から流出することで、炭化した炭化性材料中に熱可塑性樹脂の形状に応じた無数の微細孔が形成される。また、複合材料中の熱可塑性樹脂も炭化工程において、固体から液体に変化し、複合材料から流出することで、活性炭中に熱可塑性樹脂の形状に応じた無数の微細孔が形成される。
【0036】
<賦活工程>
「賦活」とは、一般的に炭素材料の細孔構造を発達させ、細孔を付加することである。賦活工程に用いる賦活方法としては、特に限定されず、種々公知の賦活方法を用いることができる。
【0037】
上記炭化工程後も、混合材料中には一部の熱可塑性樹脂が残留している場合があるが、この場合でも、混合材料または複合材料中に残留していた熱可塑性樹脂は賦活工程により完全に流出する。
【0038】
[活性炭素多孔体]
本発明において得られる活性炭素多孔体は、直径が1〜100nmの孔の割合が細孔容量の総体積に対して50体積%以上であることが好ましい。後述の電気二重層キャパシタ用電極に用いる場合、電気二重層キャパシタを大電流で充放電可能なものとすることができるためである。なお、直径が1〜100nmの孔の割合は、BET法によって測定することができる。
【0039】
このような好ましい多孔構造を有する活性炭素多孔体は、上述の本発明の製造方法において、各条件を調整することにより得ることができる。特に、上記熱可塑性樹脂の粒径や混合割合を調整することで、所望の多孔構造を有する活性炭素多孔体を製造することが可能である。
【0040】
このため、本発明の製造方法は、上述の電気二重層キャパシタ用電極に用いるのに適した活性炭素多孔体の製造だけでなく、各種の吸着剤に適した他の所望の多孔構造を有する活性炭素多孔体の製造に用いた場合においても、高い歩留りで所望の活性炭素多孔体を製造することができる。
【0041】
また、活性炭素多孔体のBET比表面積は、好ましくは500〜3000m2/gであり、より好ましくは1200〜2500m2/gである。BET比表面積が500m2/g未満であると、十分な静電容量が得られない場合があり、3000m2/gを超えるとかさ密度が低くなり、電気二重層キャパシタの体積容量が低下するため好ましくない。なお、BET比表面積は窒素ガス吸着測定などにより測定することが可能である。
【0042】
[電気二重層キャパシタ用電極]
電気二重層キャパシタは、通常、一対の電極(電気二重層キャパシタ用電極)と、これら分極性電極間に介在させたセパレータと、電解液とを含んでいる。本発明に係る電気二重層キャパシタ(EDLC)用電極は、上述のようにして製造された活性炭素多孔体を用いるものである。
【0043】
ELDC用電極としては、例えば、上記活性炭素多孔体とバインダーポリマーとを含んでなる電極組成物を、集電体上に塗布してなるものを用いることができる。また、電極組成物を溶融混練した後、押出し、フィルム成形することにより形成することもできる。さらに、活性炭素多孔体をシート状に成形した場合、かかるシート状の活性炭素多孔体を表面処理されたアルミシートなどの集電体上に貼り付けることにより、ELDC用電極を形成することもできる。この場合、塗布及び乾燥工程が省略できるので、大幅に電極の製造コストを低減できる。両者の貼り付けには、例えば、種々公知の導電性接着剤等を用いることができる。
【0044】
集電体を構成する正・負極としては、通常、ELDCに用いられるものを任意に選択して使用できるが、集電体としてアルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0045】
上記各集電体を構成する箔の形状としては、薄い箔状、平面に広がったシート状、孔が形成されたスタンパブルシート状等を採用できる。また、箔の厚さは特に限定されないが、通常は1〜200μm程度である。
【0046】
なお、上記セパレータとしては、通常電気二重層キャパシタ用のセパレータ基材として用いられているものを使用することができる。例えば、ポリオレフィン不織布、PTFE多孔体フィルム、クラフト紙、レーヨン繊維・サイザル麻繊維混抄シート、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、セルロース系電解紙、レーヨン繊維からなる抄紙、セルロースとガラス繊維の混抄紙、またはこれらを組み合せて複数層に構成したものなどを使用することができる。
【0047】
電気二重層キャパシタは、上記のようにして得られる一対の電極間にセパレータを介在させてなる電気二重層キャパシタ構造体を積層、折畳、または捲回させて、さらにコイン型に形成し、これを電池缶またはラミネートパック等の電池容器に収容した後、電解液を充填し、電池缶であれば封缶することにより、一方、ラミネートパックであればヒートシールすることにより、組み立てることができる。
【0048】
本発明の電気二重層キャパシタ用電極を用いた電気二重層キャパシタは、大電流で充放電可能なものであり、電気自動車、電動工具等の大電流を必要とする大電流蓄電デバイスとして好適に使用することができる。また、本発明は電気二重層キャパシタだけでなく、一方の電極に電気二重層を使用し、他方の電極が酸化還元反応を使用したハイブリッドキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)に応用することで電気二重層キャパシタ同様の効果が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
平均粒径8μmのフェノール樹脂(マリリン樹脂HF−008、群栄化学工業社製)に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(KT−820P、ソルベイスペシャリティポリマーズ社製)を破砕して得た平均粒径78nmのPEEK樹脂を、フェノール樹脂/PEEK樹脂の重量比5/1で混練した。その混練した混合物をジメチルフォルムアルデヒドに溶解して20重量%溶液を得た。得られた溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフイルム表面に厚さ20μmで塗布した。
【0050】
そのシート(20cm×30cm)を試料として、窒素気流下、250℃の温度で50分加熱した後冷却した。次いで、該シートを窒素気流下200℃、5時間低温焼成した後、該シートを窒素気流下900℃で180分焼成し炭化させた。更に、KOHを混合した窒素気流下で、炭化材料(炭化したシート)を900℃、50分間保持しアルカリ賦活させた。このアルカリ賦活物を塩酸洗浄し、温水洗浄して活性炭素多孔体を得た。
【0051】
得られた活性炭素多孔体は、20nmの平均細孔径と1250m/gの比表面積を有するものであった。また、全細孔容積に対する細孔径1〜100nmの細孔の割合は60体積%であった。比表面積はBET法により求め、細孔径と細孔容積は、ミクロ領域(0.1〜1.0nm)、ミクロ領域(1.0〜2.0nm)およびメソポア領域(1〜100nm)の細孔径分布から算出した。
【0052】
(実施例2)
平均粒径0.60μmの微粒球状フェノール樹脂の水分散液(固形分90質量%)に対して、粒子径78nmのPEEK樹脂を36重量%混合し、脱水し、粗解砕し、平均粒径8μmの破砕状とした。粗解砕品を窒素気流下200℃、5時間低温焼成した後、700℃、3時間加熱して炭化を行った。さらにロータリーキルンを用いて700℃、10時間KOHでアルカリ賦活させた。更に、このアルカリ賦活物を塩酸洗浄し、温水洗浄して平均粒径6μmの球状活性炭(活性炭素多孔体)を得た。
【0053】
得られた活性炭は、1300m/gの比表面積を有しており、全細孔容積に対する細孔径1〜100nmの細孔の割合は58体積%であった。
【0054】
前記実施例1および2で得られた活性炭素多孔体は、電気二重層キャパシタ用電極に適した性能を有するものであった。
【0055】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明で得られる活性炭素多孔体は、電気二重層コンデンサ用電極およびハイブリッドキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)や各種吸着材の炭素材料として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化性材料、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して混合材料を得る混合工程と、
前記混合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した前記混合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項2】
炭化性材料から得られた活性炭、および、融点が300℃以上の熱可塑性樹脂を混合して複合材料を得る混合工程と、
前記複合材料を炭化する炭化工程と、
炭化した前記複合材料を賦活する賦活工程とを備えることを特徴とする、活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂である、請求項1または2に記載の活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項4】
前記複合材料を得る混合工程において、前記活性炭と混合する前記熱可塑性樹脂が粒子状であり、その平均粒径が1〜100nmである、請求項2または3に記載の活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記混合材料を得る混合工程において、前記熱可塑性樹脂の混合割合が、前記炭化性材料と前記熱可塑性樹脂との合計重量に対して0.01〜30重量%である、請求項1または3に記載の活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項6】
前記炭化工程の温度は300〜1000℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の活性炭素多孔体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性炭素多孔体の製造方法を用いて製造された活性炭素多孔体。
【請求項8】
請求項7に記載の活性炭素多孔体を備えた電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項9】
直径が1〜100nmの孔の割合が細孔容量の総体積に対して50体積%以上である活性炭素多孔体。

【公開番号】特開2013−49617(P2013−49617A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169804(P2012−169804)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【出願人】(511188680)TOCキャパシタ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】