説明

活性物質を安定化させるための水性ポリマー分散物

【課題】活性物質を安定化させるための水性ポリマー分散物を提供する。
【解決手段】a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;およびc)30〜95重量%の水:を含む水性分散物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の活性成分を安定化させるために有用な水性ポリマー分散物およびポリマーに関する。特に、本発明は1以上の活性成分の安定化において有用性を有する水性ポリマー分散物である。さらに詳細には、本発明は水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分および水不溶性活性成分およびその組み合わせを安定化させる水性ポリマー分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,142,010号は、ポリマーの官能基と化学的に結合した強力な殺生物性基の存在により微生物の成長を防止するポリマー組成物を開示している。これは、共通のアミン置換基からなるペンダント活性官能基を有する、コポリマー、ターポリマー、およびオリゴマーを包含するポリマーを含む抗微生物組成物を開示している。
【特許文献1】米国特許第5,142,010号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかるポリマーに関する一つの問題は、抗微生物生成物が基体上の微生物の成長を防げるためにポリマー組成物中に残存するよう意図されていることである。水溶性、部分的に水溶性、水不溶性およびその組み合わせである1以上の活性成分を安定化させる低分子量ポリマー組成物を提供することが望ましい。低分子量ポリマー安定化活性成分を化学的および/または構造的に関連する高分子量ポリマーと組み合わせると、ポリマー混合物から1以上の活性成分の放出をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は:(a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;および(b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分:を含む水性分散物を提供する。
【0005】
本発明はさらに:a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜94.9重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;およびc)30〜95重量%の水:を含む水性分散物を提供する。
【0006】
本発明は:(a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜49.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および(c)水性分散物中の固形分の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマーを含み;1以上の活性成分が、前記構成成分および水を組み合わせる前に(a)中に分配されている水性分散物を提供する。
【0007】
本発明は:(a)組成物の重量基準で5〜49.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)組成物の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および(c)組成物の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマーを含み;1以上の活性成分が、前記構成成分を組み合わせる前に(a)中に分配されている組成物を提供する。
【0008】
本発明はさらに、水性分散物から製造されるフィルムおよび組成物から製造されるフィルムも提供する。本発明は、水性分散物から製造されるコーティングおよび組成物から製造されるコーティングも提供する。本発明は、水性分散物から製造される接着剤および組成物から製造される接着剤も提供する。本発明はさらに、水性分散物または組成物から製造される1以上の活性成分を放出するためのデリバリーシステムも提供する。
【0009】
本発明はさらに、1以上の活性成分を安定化させるための方法であって:a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマーを含む水性分散物を調製する工程;およびb)前記水性分散物を、水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分と組み合わせる工程:を含む方法も提供する。
【0010】
本発明はさらに、1以上の活性成分を水性分散物から放出させるための方法であって:a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜49.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマーを含む第一水性分散物を調製し;b)前記水性分散物を、水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分と組み合わせ;c)前記第一の水性分散物を、組成物の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマーの第二の水性分散物と組み合わせ(ここにおいて、1以上の活性成分は第二の水性分散物と組み合わせる前に第一の水性分散物中に分配される);およびd)水性分散物の混合物を乾燥してフィルムまたはコーティングを形成する:ことを含む方法も提供する。
本発明は、水性分散物のブレンドを乾燥する追加の工程を含む、水性分散物で安定化された1以上の活性成分を放出させる方法も提供する。
【0011】
本発明は、水性分散物として本発明の低分子量ポリマーを使用する、多量(高負荷量とも言う)の活性成分を含ませるための方法も提供する。本発明は、水性分散物として本発明の低分子量ポリマーを使用する、少量(低負荷量)の高活性の成分を含ませるための方法も提供する。本発明は、一定濃度の1以上のAIを、哺乳動物の皮膚を包含するが、これに限定されない使用環境に放出するための方法も提供する。
【0012】
本発明は、1000ミクロン〜1nm(10ミクロン未満のサイズのAIドメインを包含し、1ミクロン未満のサイズのAIドメインを包含する)に活性成分のドメインサイズを制御するための方法も提供する。
【0013】
本発明は、活性成分の分布および位置に関して複合フィルムの形態を制御して、AIドメインがポリマーフィルムマトリックス中に均一に分布するか、またはフィルムの表面に濃縮されるか、またはフィルムにおいて勾配として分布するようにする方法も提供する。
【0014】
本発明は、低分子量を有する1以上のポリマーを使用して、異なる活性成分の複数のドメインを含ませる方法も提供する。
【0015】
本発明は、粒子サイズ、ドメインサイズ、ドメイン分布、および濃度の制御により、本発明のポリマーを使用して、活性成分の放出速度および特性を制御する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書において、「分散物」なる用語は、少なくとも2つの異なる相を包含する物質の物理的状態をさし、ここにおいて、第一相は第二相中に分布し、第二相は水を包含するがこれに限定されない連続媒体である。水性ポリマー分散物は、主に水である水性第二相中に分布した第一相を含有する分散物である。本明細書において用いられる場合、「安定化」なる用語は、ポリマー粒子サイズまたはポリマー中に組み入れられる1以上の活性成分の粒子サイズの制御または維持を意味する。「安定化」なる用語は、ポリマー中に組み入れられた1以上の活性成分の結晶化または再結晶を防止することも意味する。あるいは、「安定化」なる用語は、水性ポリマー分散物により安定化される1以上の活性成分に関する場合、一以上の活性成分が次の挙動を示すことを意味する:すなわち、水性ポリマー分散物において、これに限定されないが、溶解、カプセル封入、分配、膨潤およびその組み合わせを包含する。本明細書において用いられる場合、水溶性、部分的に水溶性および水不溶性なる用語は、米国特許第5,521,266号において開示されるように定義される。本明細書において用いられるように、活性成分は、医薬活性を包含する生物学的活性を有する任意の化合物を意味し、例えば、化学/物理応答を有する化合物および合成、半合成および天然起源の化合物が挙げられる。
【0017】
他に特に記載しない限り、本明細書において用いられる粒子サイズなる用語は、毛細管流体力学的分別装置、例えば、Matec CHDF−2000装置(Matec Applied Sciences,MA)を用いて、200nmでの紫外線検出で決定されるような数平均粒子直径をいう。粒子サイズ標準は、米国標準技術局(NIST)の50〜800nmの追跡可能なポリスチレン標準、例えば、Duke Scientific Corporation,CAにより供給されるものにより提供される。粒子サイズはさらに、光学顕微鏡法により、またはBrookhaven Instruments Corp.90Plus粒子サイズ分析器を用いて決定した。固形分は、150℃で40分後の重量損失により決定した。分子量分布は、HP1100オートサンプラーおよびポリスチレン標準を用いたPolymer Labs蒸発光散乱検出器を備えたポンプに連結されたPolymer labs Mixed C300×7.5mmカラム上でのGPC分析により決定した。水性分散物から調製されたフィルムを、透過型電子顕微鏡法(TEM)および走査プローブ顕微鏡法(SPM、AFM)を包含する電子顕微鏡法により特徴づけた。適当と認められるときは、粒子サイズは光学顕微鏡法(100倍の油浸レンズを有するLeitz Orthoplan)により測定する。ドメインサイズは、透過型電子顕微鏡法により、フィルムの極低温マイクロトーンイング(microtoning)およびRuO染色から得られるサンプルを用いて決定される。ドメインサイズは低分子量ポリマーマトリックスにおける活性成分の水性分散物の粒子サイズからも推測されうる。
【0018】
他に特に記載しない限り、Mnなる用語は、本明細書において用いられる場合、Polymer Laboratoriesにより提供されるEasiCal PS−2(登録商標)ポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定されるような数平均分子量をさす。
【0019】
他に特に記載されない限り、Mwなる用語は、本明細書において用いられる場合、Polymer Laboratoriesにより提供されるEasiCal PS−2(登録商標)ポリスチレン標準を用いたSECにより決定される重量平均分子量である。
【0020】
本明細書において用いられるTgなる用語は、Fox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、3号、123ページ(1956))を用いて決定されるポリマーのガラス転移温度である。本明細書において用いられる「測定されたTg」とは、10℃/分の加熱率を用い、熱流対温度遷移の中点をTg値として、示差走査熱量測定法(DSC)により決定されるガラス転移温度を意味する。
【0021】
本明細書において用いられる場合、「(メタ)」なる用語とそれに続くアクリレートなどの別の用語の用法は、アクリレートおよびメタクリレートのどちらも意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを意味し;「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかを意味し;「(メタ)アクリル酸」なる用語は、アクリル酸またはメタクリル酸のいずれかを意味し;「(メタ)アクリルアミド」なる用語は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのいずれかを意味する。
【0022】
本発明による有用な高分子量水性ポリマー分散物は、10,000超、たとえば100,000までを包含し、500,000までも包含し、1,000,000まで、2,000,000未満を包含する重量平均分子量ポリマーを有するポリマー粒子を含む。好適な高分子量ポリマーは、これに限定されないが、エマルジョンポリマーを包含する。
【0023】
低分子量水性ポリマー分散物(「オリゴマー」または「オリゴマー分散物」ともいう)は、10,000未満、例えば、5,000未満および3,000未満を包含する数平均分子量ポリマーを有するポリマー粒子を含む。オリゴマー分散物のMnは1,000から10,000の間である。好適な低分子量ポリマーは、これに限定されないが、エマルジョンポリマーを包含する。オリゴマー分散物の分子量は、当該分野において公知の任意の手段により制御される。
【0024】
一具体例によると、連鎖移動剤は、メルカプタン、ポリメルカプタン、チオエステル、ハロゲン化化合物、有機溶媒(アルコール、イソプロパノール、イソブタノールおよびその組み合わせを包含するがこれに限定されない)から選択される。いくつかの好ましい具体例において、オリゴマー分散物の分子量は、直鎖または分岐C−C22アルキルメルカプタン、例えば、n−ドデシルメルカプタンおよびt−ドデシルメルカプタンの使用を通じて制御される。オリゴマー分散物の分子量は、触媒連鎖移動剤、例えば、米国特許第5,962,609号および第4,746,713号において記載されているコバルト化合物の使用により制御することができる。別の具体例によると、オリゴマーの分子量は、溶液重合の溶媒としてのイソプロピルアルコールにより制御される。
【0025】
低分子量ポリマー分散物またはオリゴマー分散物は、例えば、塊状重合、溶液重合、エマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、ミクロエマルジョン重合、または懸濁重合プロセスをはじめとする当該分野において公知の任意の手段により形成される。オリゴマーも塊状重合または溶液重合により形成することができる。溶液重合に関して、連鎖移動剤は、イソプロピルアルコールなどの溶媒であってよい。低分子量ポリマーは、溶媒の蒸発により単離される。低分子量ポリマー分散物または「オリゴマー」分散物は、水中での低分子量ポリマーの乳化により調製することができる。一具体例によると、Mn<10000を有するポリマーまたは「オリゴマー」は、1以上のエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル開始重合により形成される。別の具体例によると、アニオン開始をはじめとする他の形態の開始も企図される。このような具体例において、オリゴマーは米国特許第5,710,277号に開示されているような高温オリゴマー化プロセスにより形成される。オリゴマーが水性分散プロセス以外の手段により形成されるならば、これらは当該分野において公知の技術により水性分散物に変換される。別の具体例によると、オリゴマー分散物は、水性分散物として調製され、水が除去され、オリゴマー油状物が形成される。低分子量ポリマーを調製するためにアクリルモノマーが使用される場合、アクリル油(AO)が調製される。別の具体例によると、オリゴマー分散物は溶液重合により調製され、これにより直接オリゴマー油状物が産生される。低分子量ポリマーを調製するためにアクリルモノマーが使用される場合、アクリル油(AO)が調製される。当該分野において公知の慣用技術により、オリゴマーを再乳化させるか、または水性分散物に変換することができる。別の具体例によると、当該分野において公知の慣用技術により、オリゴマーをポリマー固体として調製し、乳化させて、水性分散物を形成する。
【0026】
油状物としてオリゴマーを調製する利点は、粒子サイズが制御され、部分的に可溶性であるかまたは水不溶性である1以上の活性成分と組み合わせられる場合、活性成分のドメインサイズも制御されることである。フィルムなどのポリマーマトリックス中の分散物の分布および配置も制御される。
【0027】
本発明の他の利点は、低分子量ポリマーが水性分散物中の1以上の活性成分のローディングを制御し、調節する方法を提供することである。多量の1以上の活性物質(95重量%まで)から少量(<0.5重量%)の1以上の高活性成分をポリマー中にロードすることができるか、またはポリマー組成物として調製することができる。
【0028】
本発明のもう一つ別の利点は、低分子量ポリマーが、例えば、10ミクロン未満のサイズのAIドメインを包含し、1ミクロン未満のサイズのAIドメインを包含する1000ミクロンから1nmに活性成分のドメインサイズを制御する方法を提供することである。
【0029】
本発明のもう一つ別の利点は、低分子量ポリマーが、活性成分の分布および配置に関して、ポリマーフィルムまたは複合フィルムの形態を制御して、AIドメインがポリマーフィルムマトリックス中に均一に分布するか、またはフィルムの表面で濃縮されるか、またはフィルムにおいて勾配として分布するようにする方法を提供することである。
【0030】
本発明のもう一つ別の利点は、低分子量ポリマーが、低分子量を有する1以上のポリマーを用いて異なる活性成分の複数のドメインを含める方法を提供することである。
【0031】
本発明のもう一つ別の利点は、低分子量ポリマーが、本発明のポリマーを用いて、粒子サイズ、ドメインサイズ、ドメイン分布、および濃度の制御により、活性成分の放出速度および特性を制御する方法を提供することである。
【0032】
本発明の高分子量および低分子量ポリマーは、1以上のエチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマー、縮合ポリマー、縮合ポリマーおよび付加ポリマーの両方を含有するハイブリッドポリマーを包含する。縮合ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの付加重合により形成されないポリマーであり、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、ポリアミド、アルキド、ポリカーボネート、ポリシリコーン、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D);オクタメチルシクロテトラシロキサン(D);およびデカメチルシクロペンタシロキサン(D):の縮合生成物;ポリアルキルオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリアセタール;およびバイオポリマー、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリペプチド、およびポリサッカライドを包含する。
【0033】
本発明にしたがって有用な高分子量および低分子量ポリマーはどちらも、1以上のエチレン性不飽和モノマーの重合により調製され、溶液重合、エマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、ミクロエマルジョン重合、または懸濁重合プロセスを包含する当該分野において公知の任意の手段により重合される。好ましいのは、エマルジョンまたはミニエマルジョンである。エマルジョン重合の実施は、D.C.Blackley、Emulsion Polymerization(Wiley,1975)およびH.Warson,The Applications of Synthetic Resin Emulsions、第2章(Ernest Benn Ltd.,London 1972)において詳細に議論されている。
【0034】
エマルジョンまたはミニエマルジョン重合プロセスを利用する本発明のこれらの具体例において、慣用の界面活性剤、例えば、アニオン性および/または非イオン性乳化剤、例えば、アルキル、アリール、またはアルキルアリールスルフェート、スルホネートまたはホスフェートのアルカリ金属またはアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;エチレン性不飽和界面活性剤モノマー;およびエトキシル化アルコールまたはフェノールを用いることができる。使用される界面活性剤の量は、通常、モノマーの重量基準で0.1重量%〜6重量%である。熱またはレドックス開始プロセスのいずれかを使用できる。反応温度は、反応の間中、典型的には100℃より低い温度に維持される。30℃から95℃の間、さらに好ましくは50℃から90℃の間の反応温度が好ましい。モノマー混合物は、ニートで、または水中エマルジョンとして添加することができる。モノマー混合物は、1回以上の添加で、または連続して、直線的かどうかにかかわらず、反応期間全体にわたって、またはその組み合わせで添加することができる。
【0035】
一具体例に従って、本発明の高分子量および低分子量ポリマーはいずれも、慣用のフリーラジカル開始剤、例えば、過硫酸アンモニウムまたはナトリウム、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、過硫酸アンモニウムおよび/またはアルカリ金属塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸およびその塩、過マンガン酸カリウム、およびパーオキシ二硫酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩を、典型的には合計モノマーの重量基準で0.01重量%〜3.0重量%の量で使用したエチレン性不飽和モノマーの重合により形成される。例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩、例えば、亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、ヒドロ亜硫酸、硫化、水硫化または亜ジチオン酸ナトリウム、ホルマジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、ナトリウム2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸、アセトン重亜硫酸、アミン類、例えば、エタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸および前記酸の塩などの適当な還元剤とカップリングした同じ開始剤(あるいは本明細書においては「酸化剤」ともいう)を使用したレドックス系を用いることができる。レドックス反応を触媒する鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、またはコバルトの金属塩を用いることができる。
【0036】
本発明に従ってMn>10,000を有するポリマーおよびMn<10,000を有するポリマーを調製するのに有用なエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、例えば、(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、エチレン、ブタジエン;酢酸ビニル、酪酸ビニルおよび他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、ビニルトルエン、およびビニルベンゾフェノン;および塩化ビニリデンを包含する。
【0037】
本発明に従ってMn>10000を有するポリマーおよびMn<10000を有するポリマーを調製するのに有用なエチレン性不飽和酸モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキルアリルスルホコハク酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、およびアリルホスフェートを包含する。
【0038】
本発明のいくつかの具体例において、エチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマーは、共重合した多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびジビニルベンゼンを含有することができる。
【0039】
本発明のいくつかの具体例において、1以上のポリマー成分中に、水性分散物に特殊な性能を付与する官能性モノマーを組み入れることが望ましい。一例は、ある基体に改善された接着性を付与する官能基を有するモノマーを含めることである。かかる官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、これらに限定されないが、例えば、アセト酢酸ビニル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、ビニルアセトアセトアミド、およびアセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミドを包含する。
【0040】
一具体例によると、1以上のモノマーのエマルジョン重合が用いられる場合、連鎖移動剤、例えば、ハロゲン化合物、例えばテトラブロモメタン;アリル化合物;またはメルカプタン、例えば、アルキルチオグリコレート、アルキルメルカプトアルカノエート、およびC−C22直鎖または分岐鎖アルキルメルカプタンを用いて、エチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマーの分子量を低下させる、および/または他の方法で任意のフリーラジカル生成開始剤を用いて得られるものと異なる分子量分布を提供することができる。別の具体例によると、1以上のモノマーの溶液重合が用いられる場合、例えば、イソプロパノールなどのアルコールを包含するが、これに限定されない有機溶媒が、分子量を調節するための連鎖移動剤として用いられる。
【0041】
一具体例によると、本発明の有用性を有するオリゴマーは水中に部分的に可溶性であるかまたは可溶性でない。これにより、本発明者らは、オリゴマーの水中分散物の溶解した濃度が25〜50℃、2から12の間のpHで5重量%以下であり;好ましくは2重量%以下であり;さらに好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。
【0042】
水性分散物は、ポリマー固形分基準で:a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および30重量%〜95重量%の水を含む。
【0043】
あるいは、重量パーセント基準で、:(a)組成物の重量基準で5〜99.9重量%の、10000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)組成物の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分を含む組成物が本発明に従って調製される。
【0044】
いくつかの具体例において、本発明の分散物は、ポリマー分散物およびオリゴマー分散物を含む水性分散物を、他のポリマー分散物を含む水性分散物とブレンドすることにより形成することができる。ブレンドとは、ポリマー分散物およびオリゴマー分散物を含む少なくとも1種の水性分散物を、他のポリマー分散物を含む水性分散物と組み合わせるかまたは混合する任意の手段を意味する。ブレンドの手段は、ポリマー分散物およびオリゴマー分散物を含む分散物を、もうひとつ別のポリマー分散物を含む水性分散物に添加すること、または後者のポリマー分散物を含む分散物を、前者のポリマー分散物およびオリゴマー分散物を含む分散物に添加することを包含する。分散物を、バッチ、半連続、または連続的様式で組み合わせることができる。
【0045】
一具体例に従って、水性低分子量ポリマー分散物およびオリゴマー分散物は、米国特許第5,521,266号に開示されているように、疎水性空洞を有する高分子有機化合物の存在下でのフリーラジカル水性重合により調製される。本発明の方法において有用な、疎水性空洞を有する高分子有機化合物は、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;疎水性空洞を有する環状オリゴ糖、例えば、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトース、およびシクロイヌロオクトース;カリキサレン;およびキャビタンドを包含する。
【0046】
本発明の方法において有用なシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体は、特定の重合条件下で選択されるシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の溶解度によってのみ限定される。本発明の方法において有用な好適なシクロデキストリンは、これらに限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンを包含する。本発明の方法において有用な好適なシクロデキストリン誘導体は、これらに限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンのメチル、トリアセチルヒドロキシプロピルおよびヒドロキシエチル誘導体を包含する。好ましいシクロデキストリン誘導体は、メチル−β−シクロデキストリンである。
【0047】
本発明の方法において有用な、疎水性空洞を有する環状オリゴ糖、例えば、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトースなどは、Takaiら、Journal of Organic Chemistry,1994、第59巻、11号、2967〜2975ページに記載されている。
【0048】
本発明の方法において有用なカリキサレンは、米国特許第4,699,966号、国際公開番号WO89/08092および日本国特許公開番号1988/197544および1989/007837に記載されている。
【0049】
本発明の方法において有用なキャビタンドとは、イタリア国特許出願番号22522A/89およびMoranら、Journal of the American Chemical Society、第184巻、1982、5826〜5828ページに記載されている。
【0050】
疎水性空洞を有する高分子有機化合物の使用は、任意のポリマーおよびオリゴマー分散物が、水性フリーラジカル重合により形成される場合、および重合において用いられる1以上のモノマーおよび/または連鎖移動剤が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下;50ミリモル/リットル以下の水溶性を有する場合に特に有用である。
【0051】
ポリマーおよびオリゴマー分散物の任意のものが水性フリーラジカル重合により形成される場合および重合において用いられる1以上のモノマーおよび/または連鎖移動剤が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下;50ミリモル/リットル以下の水溶性を有する場合、モノマーおよび/または連鎖移動剤を重合に50ミクロン未満;25ミクロン未満の平均液滴サイズを有するモノマーエマルジョンの形態で導入することも有用である。
【0052】
水性オリゴマー分散物を、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分と組み合わせる。いくつかの具体例によると、活性成分(AI)は生物活性を有する任意の化合物である。他の具体例によると、活性成分は薬理活性を有する任意の化合物である。他の具体例によると、AIは、局所効果を得るため哺乳動物の皮膚に適用されるか、または全身性効果を得るために皮膚を介して吸収されるような生物学的に活性であるか医薬的に活性な化合物である。他の具体例によると、AIは使用場所または環境に適用される。他の具体例によると、AIは、使用場所または環境に適用された場合に、物理化学的応答を有する化合物である。他の具体例によると、AIは、これに限定されないが、例えば哺乳動物の皮膚を包含する表面を保護する化合物である。
【0053】
本発明に従って用いられる活性成分は、水溶性、部分的に水溶性、水不溶性およびその組み合わせである。液体または固体であり、アモルファス、結晶性、半結晶性およびその組み合わせであるAIの形態の、水溶性、部分的に水溶性、水不溶性およびその組み合わせ。
【0054】
一具体例によると、水性オリゴマー分散物は、1以上の水溶性AIと組み合わせられ、ここにおいて、AIはアモルファス、結晶性、半結晶性およびその組み合わせである。水溶性AIは任意の好適な方法で、水性オリゴマー分散物と組み合わせられ、例えば、これらに限定されないが、オリゴマー分散物を形成するために1以上のモノマーが重合される場合に1以上のAIが存在するか、1以上のAIがオリゴマー分散物に添加されるか、固体としてのオリゴマー分散物が1以上の水溶性AIを含む水性溶液中に分散されることを包含する。水溶性AIは、オリゴマー分散物内で選択的に分配されるか、またはオリゴマー(油相)および水性相中に分布するかのいずれかである。
【0055】
別の具体例によると、水性オリゴマー分散物は、1以上の部分的水溶性または水不溶性AIと組み合わせられ、ここにおいて、AIはアモルファス、結晶性、半結晶性およびその組み合わせである。AIは水性オリゴマー分散物と任意の好適な方法で組み合わせられ、例えば、これらに限定されないが、オリゴマー分散物を形成するために1以上のモノマーが重合される場合に1以上のAIが存在するか、1以上のAIがオリゴマー分散物に添加されるか、その中に分配された1以上の部分的水溶性または水不溶性AIを含むオリゴマー分散物が水性溶液中に分散されることを包含する。水溶性AIは、オリゴマー分散物内で選択的に分配されうるか、またはオリゴマー(油相)および水性相中に分布しうる。AIは、オリゴマー分散物内で選択的に分配されるか、またはオリゴマー(油相)および水性相中に分布するかのいずれかである。
【0056】
一具体例によると、1以上の活性成分は、薬理活性および免疫学的活性を有する薬剤を包含する任意の生物活性剤である。生物活性剤は、結晶、半結晶、アモルファスおよびその組み合わせから選択される形態を示す。好適な生物活性剤は、これらに限定されないが、例えば、抗炎症剤;抗微生物剤;殺生剤;抗バクテリア剤;抗ウイルス剤、例えば、これらに限定されないが、アシクロビル(商標)(水溶液 37℃、2.5mg/mL)、ラミブジン(商標)(水溶液 20℃、70mg/mL)、ジドブジン(商標)(水溶液 25℃、20.1mg/mL)、ザナミビル(商標)(水溶液、20℃、18mg/mL)、オセルタミビル(商標)(タミフル(商標))、リバビリン(商標)、プレコナリル(商標)および硫酸アバカビル(商標)(水溶液 25℃、77mg/mL)、アンプレナビル(商標)(水溶液 25℃、0.04mg/mL)、フォサンプレナビル(商標)(水溶液 25℃、0.31mg/mL)およびバラシクロビル(商標)(水溶液 25℃、174mg/mL)、抗レトロウイルス剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、脂質、リポソーム、アドレナリン作動剤;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;アルドステロン拮抗物質;同化剤;蘇生薬;鎮痛薬;麻酔薬;食欲抑制剤;にきび抑制剤;抗アドレナリン作動薬;抗アレルギー剤;抗アメーバ薬;抗貧血剤;抗狭心症薬;抗関節炎薬;抗ぜんそく薬;抗アテローム性動脈硬化症薬;抗コリン作用剤;抗凝血剤;抗痙攣剤;抗うつ剤;抗糖尿病剤;止瀉薬;抗利尿薬;制吐薬;抗てんかん薬;抗線維素溶解薬;抗カビ剤;抗出血薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂質血症薬;抗高血圧薬;抗低血圧薬;抗感染薬;偏頭痛薬;細胞分裂抑制薬;抗真菌剤;制嘔吐剤;抗腫瘍薬;抗好中球減少薬;駆虫薬;抗増殖剤;抗精神病薬;抗リウマチ薬;抗脂漏薬;抗分泌薬;鎮痙剤;抗血栓剤;抗潰瘍薬;食欲抑制剤;血糖調節剤;骨吸収阻害剤;気管支拡張薬;心血管作動薬;コリン作動薬;抑制薬;診断補助薬;利尿剤;ドーパミン作動薬;エストロゲンレセプター作用物質;線維素溶解薬;蛍光剤;フリー酸素ラジカルスカベンジャー;胃腸運動エフェクター;グルココルチコイド;発毛剤;収斂剤;ヒスタミンH2レセプター拮抗物質;ホルモン:コレステロール低下剤;血糖降下薬;脂質低下薬;降圧薬;造影剤;免疫化剤;免疫賦活剤;免疫調節剤;免疫刺激剤;免疫抑制剤;角質溶解剤;LEIGH作用物質;気分調節剤;粘液溶解薬;散瞳薬;鼻充血除去薬;神経筋遮断薬;神経保護薬;NMDA拮抗物質;非ホルモンステロール誘導体;プラスミノーゲンアクチベーター;血小板活性化因子拮抗物質;血小板凝集抑制剤;向精神薬;放射性医薬品;疥癬虫殺虫剤;硬化薬;鎮静薬;催眠鎮静薬;選択的アデノシンA1拮抗物質;セロトニン拮抗物質;セロトニン阻害剤;セロトニンレセプター拮抗物質;ステロイド;甲状腺ホルモン;抗甲状腺薬;甲状腺ホルモン様薬;トランキライザー;筋萎縮性側索硬化症薬;脳虚血薬;パジェット病薬;不安定狭心症薬;血管収縮薬;血管拡張薬;創傷治療薬;キサンチンオキシダーゼ阻害剤;抗癌剤および生物活性剤の組み合わせを包含する。
【0057】
好適な生物活性剤は、免疫学的剤、例えば、アレルゲン、花粉、および抗原(ウイルス、細菌、真菌、および寄生生物などの病原体からの抗原)も包含する。抗原は、完全不活化生物、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、またはその組み合わせの形態であってよい。前記種類に含まれ、人間への使用が認可された薬剤または免疫学的剤の具体例は当業者には公知である。
【0058】
他の具体例によると、本発明の1以上の活性成分は、化学的および/または物理的効果を示す任意の化合物を包含するが、これらに限定されない。本発明の好適な活性成分は、例えば、気体、殺虫剤、除草剤、香料、防汚剤、色素、塩、油、インク、化粧品、触媒、洗剤、UV吸収剤、有機化合物、およびポリマー、フレーバー、食物、写真薬剤、殺生剤、医薬、薬剤、およびその組み合わせを包含するが、これらに限定されない。
【0059】
1以上のAIを含む水性オリゴマー分散物を、第二の水性ポリマー分散物と組み合わせる。結果として得られる水性分散物は均質な分散物であるか、またはAIがその中に分配されたオリゴマーのドメインを含むものである。一具体例によると、結果として得られる水性分散物は:(a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜49.9重量%の、10,000未満の数平均平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的水溶性活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および(c)水性分散物中の固形分の重量基準で、94.9〜5.1重量%の、10,000超の数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマーを含み;ここにおいて、1以上の活性成分(b)は、(c)および水と組み合わせられる前に(a)中に分配される。水性分散物を乾燥し、例えば、フィルム、コーティング、接着剤、感圧型接着剤(PSA)、シーラント、化粧品、軟膏、クリームまたはローションを包含するが、これに限定されない有用な物品に合わせられる場合、1以上のAIは物品内で不適合性になり、ポリマーを出てポリマー基体(任意の通常公知の基体および哺乳動物皮膚を包含するが、これに限定されない)界面へ拡散する。
【0060】
オリゴマー分散物およびポリマー分散物の両方におけるモノマーは、AIの水溶性または水不溶性に応じて調節される。水溶性AIは、酸含有モノマーを含むオリゴマー中に分配される。部分的に可溶性または水不溶性AIは、非イオン性モノマーを含むオリゴマー中に分配される。
【0061】
オリゴマー分散物およびポリマー分散物は、デリバリーシステムを調製するために使用される。一具体例によると、システムは、ラテックスポリマーブレンドを含む。一具体例によると、ブレンドの一構成成分は、良好なフィルム形成特性を有する高分子量ポリマーである。ラテックス組成物は、好適な物品、例えば、コーティングまたはPSAに調製することができる。第二の構成成分は、その中に分配された1以上のAIを含むオリゴマーラテックスを含む。オリゴマーラテックスは、水溶性および水不溶性医薬組成物を含む活性成分のリザーバとしても機能することができる。ポリマーラテックスを乾燥してフィルムにする場合、1以上のAIが、使用場所もしくは使用環境、または哺乳動物皮膚中に放出または送達される。
【0062】
1以上のAIの水性分散物も、当該分野において公知の慣用技術により乾燥して、例えば、フィルム、接着剤、PSA、シーラント、エラストマーおよび発泡体を包含するが、これらに限定されない物品の形態の乾燥組成物が提供される。いくつかの具体例によると、本発明の組成物は、噴霧乾燥、界面重合、熱溶解カプセル化、相分離カプセル化、凍結乾燥、溶媒蒸発、マイクロカプセル化、溶媒除去マイクロカプセル化、コアセルべーション、および低温微小球形成および転相を包含する、水性ポリマー分散物の乾燥により調製される。
【0063】
1以上のAIを使用環境、場所または哺乳動物皮膚に放出する方法は、これに限定されないが、例えば、貼付剤、接着剤、コーティング、シーラント、発泡体、オイル、および、例えば、ガーゼ、デバイス、縫合糸、包帯、および接着剤を包含するがこれに限定されない医療用物品などの物品の形態において、デリバリーシステムとして有用性を有する。
【実施例】
【0064】
本発明の例示的な態様を以下の実施例においてまとめる。実施例1〜5に関して、粒子サイズは、光学顕微鏡法によるか、またはBrookhaven Instruments Corp.90Plus粒子サイズ分析器を用いて決定した。固形分は、150℃で40分後の重量損失により決定した。分子量分布は、HP1100オートサンプラーおよびポリスチレン標準を使用したPolymer Labs蒸発光散乱検出器を備えたポンプに連結されたPolymer Labs Mixed C300×7.5mmカラムを用いて、GPC分析により決定した。水性分散物から調製されたフィルムは、透過型電子顕微鏡法(TEM)および走査プローブ顕微鏡法(SPM、AFM)を包含する電子顕微鏡法により特徴づけられた。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1
エマルジョン重合による低分子量ポリマー分散物
エマルジョン重合は、メカニカルスターラー、温度調節装置、凝縮器、モノマーおよび開始剤フィードラインならびに窒素入口を備えた5リットル四口丸底フラスコ中で行った。
【0067】
脱イオン水(1100g)、メチル−β−シクロデキストリン(59.2g)および界面活性剤(18.8)を反応フラスコ中に室温で導入して、反応混合物を形成した。内容物を窒素スィープ下で撹拌しながら85℃に加熱した。脱イオン水(625g)、界面活性剤(14.1g)、モノマーBA(1050g)、LA(450g)、nDDM(300g)のモノマーエマルジョンを別に調製した。
【0068】
85℃で、25グラムの水中5.0グラムの過硫酸アンモニウムを反応混合物に添加した。アクリル分散物(45%固形分で137.6g)をシードポリマーとして添加した。温度が85℃で安定化した後、モノマーエマルジョンを反応混合物中に100分にわたって過硫酸アンモニウム溶液(100グラムの水中1.0グラム)と共に供給した。モノマーエマルジョン供給の最後に、反応混合物を85℃で20分間保持し、75℃に冷却し、t−ブチルヒドロパーオキシドおよびイソアスコルビン酸(それぞれ10gの水中0.51gおよび25gの水中0.27g)でFeSO(0.15%溶液を4g)の存在下でチェイスした。追加のチェイスを60℃で行った。
【0069】
アクリル分散物(実施例1A)は、54.1%の合計固形分含量を有し、粒子サイズは304nmである。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はそれぞれ2449および1842と測定された。
【0070】
第二の分散物(実施例1B)を、BA(900g)、スチレン(585g)、MAA(15g)およびnDDM(202.5g)を用いて同様に調製した。実施例1Bの粒子サイズは487nm、固形分は38.3%、Mnは1500と測定された。
【0071】
実施例2
エマルジョン重合からの低分子量ポリマー
低分子量ポリマーを実施例1の分散物から水の蒸発により粘稠性油状物として単離した。この油状物をゼオライトを通して濾過し、透明油状物(アクリル油状物という(AO))を得た。
【0072】
実施例3
溶液重合からの低分子量ポリマー
メカニカルスターラー、温度調節装置、凝縮器、モノマーおよび開示剤供給ラインならびに窒素入口を備えた3リットルの丸底四口フラスコ中で溶液重合を行った。
【0073】
イソプロパノール(600g)を反応フラスコ中に室温で導入した。内容物を窒素スィープ下で82℃に加熱した。BA(1800g)およびイソプロパノール(180g)を含有するモノマー混合物を別に調製した。モノマー混合物を120分にわたって、イソプロパノール(300g)中Trigonox(商標)125C−75(72g)を含有する開始剤溶液と共に反応フラスコ中に供給した。反応混合物を供給の最後に85℃で30分間維持し、イソプロパノール(168g)中Trigonox(商標)125−C75(18g)を含有する開始剤溶液を添加した。85℃で30分後、イソプロパノール(168g)中Trigonox(商標)125−C75(18g)を含有する別の開始剤溶液を添加した。反応混合物を85℃で90分間保持し、次いで室温に冷却した。
【0074】
ロータリーエバポレーターを用いてイソプロパノールをストリッピングすることにより低分子量ポリマーを単離して、透明粘稠性油状物を得た。ポリマーのMwおよびMnは、GPCによりそれぞれ5556および4190と測定された。
【0075】
実施例4
溶液重合による低分子量ポリマー分散物
4gの低分子量ポリマー(実施例3、100BA/1.9iPrOH、Mn4191)、0.4gのNeodol 45−7、0.5gのRM8W(17.5%固形分)および5.1gの水を含む安定な水性分散物を調製した。混合物を1分間超音波処理して、粒子サイズが0.5〜1μであり、合計固形分が〜40%である分散物を得た。
【0076】
実施例5
低分子量ポリマーおよび部分的水溶性活性成分の水性分散物
実施例1Aの水性分散物(10g)をサリチル酸メチル(19g)と周囲条件下で混合した。水性分散物を光学顕微鏡下で観察した。粒子は30分以内に0.8〜1ミクロンに目に見えて膨張した。定量的膨張した理論的粒子サイズは830nmである。
【0077】
別法として、溶液重合から得られた分散物(実施例4)から同様にして分散物を調製する。
【0078】
実施例6
低分子量ポリマーおよび水不溶性活性成分の水性分散物
イブプロフェン(商標)(2.5g)を低アクリル油(5g、実施例1A)中に40℃で溶解させた。油混合物溶液を、水(6g)、Tergital(商標)15−S−5(0.5g)およびラウリル硫酸ナトリウムSLS(1g)からなる水性溶液に60℃で添加した。水性混合物を60℃で1分間超音波処理し(最大500WのSonicator Processor、XLの40%電力設定)、〜200nmの粒子サイズを有する水中アクリル油/イブプロフェン(商標)の水性分散物を得た。調製された水性分散物は、水中、16.7重量%のイブプロフェン(商標)および33.3重量%のアクリル油を含んでいた。分散物は室温で30分間安定であり、その後、針状形態の結晶の形成を光学顕微鏡下で見ることができる。
【0079】
別法として、溶液重合から誘導される低分子量ポリマー(実施例3)を同様にしてイブプロフェンと組み合わせて、水性分散物を形成した。
【0080】
実施例7
低分子量ポリマー、水不溶性活性成分およびフィルム形成性ポリマーの水性分散物
実施例4からの水性分散物(6g)をフィルム形成性接着剤分散物、Robond(商標)PS−90(14g)と混合して、水中、5.4重量%のイブプロフェン(商標)、10.8重量%のアクリル油および34.7重量%の高分子量ポリマーからなる水性分散物を形成した。水性分散物は1週間にわたって光学顕微鏡下で結晶形成が観察されることなく安定であった。
【0081】
実施例8
ポリマー中の活性成分の組成物
実施例5における水性分散物のアリコート(8g)を直径8インチのテフロン(登録商標)製ペトリ皿に添加し、周囲条件下で乾燥した。最終乾燥組成物は、70%の高分子量ポリマー、10%のイブプロフェン(商標)および20%のアクリル油からなる。極低温条件下でマイクロトーニングし、RuOで染色したサンプルを用いて、透過型電子顕微鏡により観察されるものとして、イブプロフェン(商標)はポリマー相中でドメイン(〜125nm)として観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;およびc)30〜95重量%の水:を含む水性分散物。
【請求項2】
(a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜49.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および(c)水性分散物中の固形分の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10,000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマー:を含み;
1以上の活性成分が、前記構成成分および水を組み合わせる前に(a)中に分配されている、水性分散物。
【請求項3】
(a)組成物の重量基準で5〜49.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマー;(b)組成物の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分;および(c)組成物の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10,000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマー:を含み;
1以上の活性成分が、前記構成成分を組み合わせる前に(a)中に分配されている、組成物。
【請求項4】
請求項2記載の水性分散物から製造されるフィルム。
【請求項5】
請求項2記載の水性分散物から製造される接着剤。
【請求項6】
a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜99.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマーを含む水性分散物を調製する工程;およびb)前記水性分散物を、水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜95重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分と組み合わせる工程:を含む、1以上の活性成分を安定化させる方法。
【請求項7】
a)水性分散物中の固形分の重量基準で5〜49.9重量%の、10,000未満の数平均分子量を有する1以上のポリマーを含む第一水性分散物を調製し;b)前記水性分散物を、水性分散物中の固形分の重量基準で0.1〜45重量%の、水溶性活性成分、部分的に水溶性の活性成分、水不溶性活性成分およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の活性成分と組み合わせ;c)第一水性分散物を、組成物の重量基準で94.9〜5.1重量%の、10,000より大きい数平均分子量を有する1以上のフィルム形成性ポリマーの第二水性分散物と組み合わせ(ここにおいて、1以上の活性成分は、第二水性分散物と組み合わせられる前に第一水性分散物中に分配される);およびd)水性分散物の混合物を乾燥して、フィルムまたはコーティングを形成すること:を含む、水性分散物から1以上の活性成分を放出させる方法。
【請求項8】
水性分散物の組み合わせを乾燥した後にフィルムが形成される請求項7記載の方法。

【公開番号】特開2007−169629(P2007−169629A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−324223(P2006−324223)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】