説明

活性金属アノードを保護するためのイオン伝導複合物

【解決手段】 活性金属アノードを保護するためのイオン伝導性の複合体およびそれらを製造するための方法が開示される。複合体は、活性金属負極(アノード)構造および電池セルに組み込まれて良い。本発明に従って、異なるイオン伝導体の各特性が組み合わされ、アノード、カソード、および電池製造の際に遭遇される周囲条件に対し、高いイオン伝導率並びに優れた化学的安定性という好ましい特性を全体として実現できる、複合材料が構成される。複合体は、高いレベルのイオン伝導率を提供する一方で、電池の他の構成要素または周囲条件との有害な反応から活性金属アノードを保護することによって、複合体を組み込まれた電池セルの製造の促進および性能の向上の少なくとも一方を可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電池で使用するためのセパレータおよび電極構造に関するものである。本発明は、より具体的には、空気、水分、および電池の他の構成要素との有害な反応から活性金属アノードを保護するための複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムなどのアルカリ金属は、その低当量の特性ゆえに、電池電極の構成要素としてとりわけ魅力的である。リチウムは、ニッケルやカドミウムなどの従来の標準的な電池と比べて、単位体積あたりで生成できるエネルギが大きい。しかしながら、充電式のリチウム金属電池は、いまだ商品化に成功していない。
【0003】
充電式のリチウム金属電池の問題は、主に、セルのサイクル特性にある。充放電サイクルが繰り返されるにつれて、リチウムの「樹状突起」は、徐々にリチウム金属電極から突き出して、電解質を通り、最終的に正極に接触する。これは、電池の内部で短絡を引き起こすので、比較的少ないサイクル数で電池を使用不能にする。リチウム電極は、サイクル中に「コケ状」堆積物を成長させる。これは、負極から剥がれて電池の容量を減少させる。
【0004】
液体電解質系におけるリチウムの低サイクル特性に対処するため、何人かの研究者は、電解質に面する側のリチウム負極を「保護層」で被覆することを提案した。このような保護層は、リチウムイオンを伝導すると同時に、リチウム電極表面と電解質全体との接触を阻止する必要がある。保護層を適用する技術は、その多くが成功していない。
【0005】
考えられるリチウム金属の保護層のいくつかは、リチウム金属と、該リチウムに接触するセル内の電解質化合物との反応によってin-situ形成される。これらのin-situ形成された膜の大部分は、電池の組み立て後の化学的制御反応によって成長する。一般に、このような膜は、多孔性の形態を有するので、電解質の一部を透過させ、剥き出しのリチウム金属表面に到達させる。従って、これらの膜は、リチウム電極を十分に保護することができない。
【0006】
事前成形される各種のリチウム保護層が考案されてきた。例えば、米国特許の第5,314,765号(1994年5月24日付けでBatesに対して発行された)は、スパッタリングされた酸窒化リチウムリン(「LiPON」)または関連の材料で形成された層を含有するリチウム電極を製造するためのex−situ技術を開示している。LiPONは、ガラス質の単一イオン伝導体(リチウムイオンを伝導する伝導体)であり、集積回路に給電するためにケイ素上に作成されて使用される固体リチウムミクロ電池において、その電解質の候補として研究されてきた(いずれもBatesらに対して発行された、米国特許の第5,597,660号、第5,567,210号、第5,338,625号、および第5,512,147号を参照せよ)。
【0007】
本出願人の実験室における研究は、活性金属電解液の中でLiPONなどのガラス質または非結晶質の保護層を使用するための技術を開発した。(例えば、2000年2月15日付けで発行された米国特許第6,025,094号、2002年6月11日付けで発行された米国特許第6,402,795号、2001年4月10日付けで発行された米国特許第6,214,061号、および2002年7月2日付けで発行された米国特許第6,413,284号を参照せよ。いずれもViscoらに対して発行され、PolyPlus Battery Companyに譲渡された。)このような進歩にもかかわらず、とりわけリチウム金属に代表される活性金属については、依然として、その電池性能を高められるような代替の保護膜および構造を見いだす努力が続けられている。とりわけ、保護層のいずれの側の材料および条件に対しても高いイオン伝導率および化学的安定性を両備することができる保護層が望まれている。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、アノードおよび電解質を保護するためのイオン伝導性複合体、並びにそれらを製造するための方法を提供する。該複合体は、活性金属負極(アノード)構造および電池セルに組み込まれて良い。本発明に従うと、異なるイオン伝導体の各特性が組み合わされ、アノード、カソード、および電池製造の際に遭遇される周囲条件に対し、高いイオン伝導率並びに優れた化学的安定性という好ましい特性を全体として実現することができる、複合材料が構成される。該複合体は、高いイオン伝導率を提供する一方で、電池の他の構成要素または周囲条件との有害な反応から活性金属アノードを保護することができ、それによって、複合体を組み込まれた電池セルの製造の促進および性能の向上の少なくとも一方を可能にすることができる。
【0009】
複合体は、異なる化学的適合性要件を有する異なる材料で形成された少なくとも二枚の層で構成される。「化学的適合性」(すなわち化学的に適合性である)とは、着目した材料が、電池セルの他の構成要素、または製造条件、取り扱い条件、もしくは貯蔵条件のうちの一つまたはそれ以上に接した際に、電池セルの動作に悪影響を及ぼす生成物を反応によって形成することがないことを意味する。複合体の第1の材料層(すなわち第1の層材料)は、イオン伝導性で、且つ活性金属電極材料に対して化学的に適合性である。本発明の本態様において、化学的適合性とは、活性金属電極材料に接触した際に、化学的に安定性で、且つそれ故にほぼ非反応性である材料を指すものとする。これは、また、空気に対して化学的に安定性であることによって、貯蔵および取り扱いを促進する材料を指しても良く、活性金属電極材料に接触した際に反応を起こすことによって、活性金属電極材料に対して化学的に安定性で且つ望ましいイオン伝導率を有する生成物(すなわち第1の層材料)を生成して良い。このような反応性の材料は、ときに、「前駆」材料と称される。複合体の第2の材料層は、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ第1の材料に対して化学的に適合性である。これらの狙いを達成するため、または、さもなければ電極の安定性もしくは性能を向上させるために、追加の層が設けられても良い。複合体の層は、それらの多層保護構造のイオン伝導率が、少なくとも10-7S/cm、高ければ10-3S/cmまたはそれ以上になるように、いずれの層も、少なくとも10-7S/cm、一般には例えば10-5S/cm〜10-4S/cmなど少なくとも10-6S/cm、高ければ例えば10-3S/cmまたはそれ以上の高イオン伝導率を有する。
【0010】
本発明に従って、上述された原則に見合った保護用複合体を製造するために、種々様々な材料が使用されて良い。例えば、活性金属に接触する第1の層は、その全部または一部が、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、または活性金属の酸窒化リンをベースにしたガラスなどで構成されて良い。具体例は、Li3N、L3P、LiI、LiBr、LiCl、LiF、およびLiPONを含む。これらの材料は、活性金属電極に適用されても良いし、または、金属窒化物、金属リン化物、金属ハロゲン化物、赤リン、ヨウ素、並びに窒素含有もしくはリン含有の有機物およびポリマなどの前駆体を適用することによってin-situ形成されても良い。このような第1の層のin-situ形成は、前駆体をそれらのリチウム類似物に不完全変換した結果として得られて良い。それでもなお、このような不完全変換は、本発明に従った保護用複合体の第1の層材料としての要件を満たしているので、本発明の範囲内である。
【0011】
保護用複合体の第2の層は、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、酸窒化リンをベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物/硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミック活性金属イオン伝導体、リチウムベータアルミナ、ナトリウムベータアルミナ、Li超イオン伝導体(LISICON)、およびNa超イオン伝導体(NASICON)など、ほぼ不浸透ガラス状または非晶質性のイオン伝導体で構成されて良い。具体例は、LiPON、Li3PO4・Li2S・SiS2、Li2S・GeS2・Ga23、Li2O・11Al23、Na2O・11Al23、(Na,Li)1+xTi2-xAlx(PO43(0.6≦x≦0.9)および結晶学的に関連性の構造、Na3Zr2Si2PO12、Li3Zr2Si2PO12、Na5ZrP312、Na5TiP312、Na3Fe2312、Na4NbP312、Li5ZrP312、Li5TiP312、Li3Fe2312、並びにLi4NbP312を含む。
【0012】
保護用複合体の第2の層として特に適したガラスセラミック材料は、次の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックである。ここで、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、MはNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、QはAlまたはGaである。ガラスセラミックスは、原材料を融解させて融解物とし、融解物を鋳造してガラスとし、更に、ガラスに熱処理を施すことによって得られる。このような材料は、日本の株式会社オハラから入手することができ、尚かつ、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許の第5,702,995号、第6,030,909号、第6,315,881号、および第6,485,622号において、更に説明されている。
【0013】
いずれの層も、追加の構成要素を含んで良い。例えば、活性金属に対して適合性である適切な層(第1の層)は、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)・ヨウ素錯体(P2VP−I2)、ポリエチレン・ヨウ素錯体、またはテトラアルキルアンモニウム・ヨウ素錯体などのポリマ・ヨウ素錯体は、Liと反応することによって、純粋なLiIよりもイオン伝導率が大幅に高いLiIベースの膜を形成することができる。また、適切な第1の層は、その使用を促進するために使用される材料を含んでも良い。例えば、第1の層材料としてLiPONが使用される場合は、(堆積の際の)気相リチウムとLiPONとの反応を阻止するために使用される濡れ層の残留物(例えばAg)が含まれて良い。
【0014】
適切な第2の層は、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、上述のガラスセラミック材料などのガラスセラミック活性金属イオン伝導体が、ポリマ電解質と組み合わされ、保護用複合体の第2の層として使用できる可撓性の複合材料シートを形成して良い。このような可撓性複合材料の重要な一例は、日本の株式会社オハラによって開発されたものである。それは、Liイオンを伝導する上述のようなガラスセラミック材料の粒子と、PEO−Li塩錯体をベースとする固体ポリマ電解質とで構成される。株式会社オハラは、この材料を、厚さ約50ミクロンのシート状に製造している。これは、高イオン伝導率を維持すると同時に可撓性を実現することができる厚さである。イオン伝導率が比較的高く(オハラの製品の場合は室温のもとで4×10-5S/cmを上回る)、尚かつLi金属に対して安定性であるので、この種の複合電解質は、完全固体電池において、室温またはそれ以上の温度のもとで使用することができる。
【0015】
また、これらの層は、様々な技術を使用して形成されて良い。これらは、LiN3またはイオン伝導性ガラスなどの材料層の堆積または蒸着(電子ビーム蒸着を含む)を含む。また、前述のように、活性金属電極に隣接する層は、一つまたはそれ以上の前駆体を活性金属電極と非有害反応させることによってin-situ形成されて良い。例えば、CuN3をLiアノード表面に接触させることによって、Liアノードの上にLiN3層を形成しても良く、赤リンをLiアノード表面に接触させることによって、Liアノードの上にLiP3を形成しても良い。
【0016】
本発明は、周囲環境に対して安定性である前駆体を組み込まれた保護層および電池セパレータを、その全面に形成された、保護されたアノード構造を、その範囲に含む。各前駆体は、電池セルに組み込まれる前に劣化することがなく、通常の大気条件のもとで取り扱うまたは貯蔵することができる。電池セル、並びに複合体および電池セルを作成するための方法も、提供される。
【0017】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明において、更に説明され例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の具体的な実施形態について、詳しく言及される。これらの具体的な実施形態の実例が、添付の図面に例示されている。本発明は、これらの実施形態に関連して説明されるが、これは、本発明の範囲をこれらの具体的な実施形態に限定することを意図していない。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の趣旨および範囲に含まれるものとして、あらゆる代替形態、変更形態、および等価形態を含むものと解釈される。以下の説明では、本発明の完全な理解を促す目的で、数多くの詳細が設定されている。しかしながら、本発明は、これらの詳細の一部または全部が特定されなくても実施することができる。また、本発明が不必要に不明瞭にならないように、周知の処理工程の詳細な説明は省略されている。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「備える」、「備える方法」、「備えるデバイス」、または類似の表現と共に使用される単数表現は、文中にそのように特に明記されない限りは、複数も含むものとする。本明細書において使用される技術用語および科学用語は、特に定められない限りは、全て、本発明が属する当該分野の当業者に共通に理解される意味と同じ意味を有するものとする。
【0020】
導入
アノードおよび電解質を保護するためのイオン伝導性の複合体、並びにそれらを製造するための方法。該複合体は、活性金属負極(アノード)構造および電池セルに組み込まれて良い。本発明に従うと、異なるイオン伝導体の各特性が組み合わされ、アノード、カソード、および電池製造の際に遭遇される周囲条件に対し、全体として望ましい高イオン伝導率並びに化学的安定性を実現することができる、複合材料が構成される。該複合体は、高いイオン伝導率を提供する一方で、電池の他の構成要素または周囲条件との有害な反応から活性金属アノードを保護することができ、それによって、複合体を組み込まれた電池セルの製造の促進および性能の向上の少なくとも一方を可能にすることができる。
【0021】
複合体は、異なる化学的適合性要件を有する異なる材料で形成された少なくとも二枚の層で構成される。「化学的適合性」(すなわち化学的に適合性である)とは、着目した材料が、電池セルの他の構成要素、または製造条件、取り扱い条件、もしくは貯蔵条件のうちの一つまたはそれ以上に接した際に、電池セルの動作に悪影響を及ぼす生成物を反応によって形成することがないことを意味する。複合体の第1の材料層は、イオン伝導性で、且つ活性金属電極材料に対して化学的に適合性である。本発明の本態様において、化学的適合性とは、活性金属電極材料に接触した際に、化学的に安定性で且つそれ故にほぼ非反応性である材料を指すものとする。活性金属は、周囲条件のもとで反応性に富む金属であり、電極として使用される際は、障壁層によって恩恵を受ける。それらは(活性金属は)、一般に、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、もしくはカリウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウムもしくはマグネシウム)、および特定の遷移金属(例えば亜鉛)の少なくともいずれかの金属、並びにこれらの二種またはそれ以上を組み合わせた合金のうち、少なくともいずれかである。下記の活性金属が使用されて良い。すなわち、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Mg、Ba)、またはCa、Mg、Sn、Ag、Zn、Bi、Al、Cd、Ga、Inとの二元もしくは三元のアルカリ金属合金が使用されて良い。好ましい合金は、リチウム・アルミニウム合金、リチウム・シリコン合金、リチウム・錫合金、リチウム・銀合金、およびナトリウム・鉛合金(例えばNa4Pb)を含む。好ましい活性金属電極は、リチウムで構成される。また、化学的適合性とは、酸化材料に対して化学的に安定性である材料を指しても良く、これは、活性金属電極に接触した際に反応することによって、活性金属電極材料に対して化学的に安定性で且つ望ましいイオン伝導率を有する生成物(すなわち第1の層材料)を生成する。このような反応性材料は、ときに、「前駆」材料と称される。
【0022】
複合体の第2の材料層は、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ第1の材料に対して化学的に適合性である。ほぼ不浸透性であるとは、その材料が、電池の電解質および溶媒、並びに電極材料を損ないうる電池のその他の構成要素に対して十分な障壁となることによって、電極の性能を劣化しうるこのようなあらゆる損傷の発生を阻止することができることを意味する。従って、それは、非膨張性であると共に、空気、水分、および電解質などを第1の材料へと貫通させる細孔、欠陥、並びにあらゆる通路と無縁であることが望ましい。第2の材料層は、他のリチウム電極を処理する際に常用されてきた精密なドライボックス条件を必要としなくても、周囲条件のもとでカプセル化リチウム合金電極を取り扱うことが可能であるように、周囲の水分、二酸化炭素、および酸素などに対して不浸透性であることが好ましい。本明細書で開示される複合保護層は、このように、リチウム(またはその他の活性金属)を良く保護することができるので、本発明の電極および電極・電解質複合体は、電池の外において極めて長い貯蔵寿命を有することができる。従って、本発明は、負極を含む電池のみならず、未使用の負極および電極・電解質積層体それら自体も考慮している。このような負極および電極・電解質積層体は、シート状、ロール状、およびスタック状などの形態で提供されて良い。これらは、最終的には電池の他の構成要素と統合されて、電池を構成する。本発明による電池の優れた安定性は、この製造手続きを大幅に簡略化する。
【0023】
なお、第1および第2の材料は、本質的にイオン伝導性である。すなわち、第1および第2の材料は、イオン伝導性である故に、液体電解質またはその他の作用剤の存在に依存しない。
【0024】
これらの狙いを達成するため、または、さもなければ電極の安定性もしくは性能を向上させるためには、追加の層が設けられても良い。複合体の層は、それらの多層保護構造のイオン伝導率が、少なくとも10-7S/cm、高ければ10-3S/cmまたはそれ以上になるように、いずれも、少なくとも10-7S/cm、一般には例えば10-5S/cm〜10-4S/cmなど少なくとも10-6S/cm、高ければ例えば10-3S/cmまたはそれ以上の高イオン伝導率を有する。
【0025】
保護用複合体およびそれらの構造
図1は、リチウム・硫黄電池などの活性金属電池セル120に使用されるイオン伝導性の保護用複合体を、本発明に従って示している。複合体100は、イオン伝導性で且つ活性金属電極材料に対して化学的に適合性である材料の、第1の層102で構成される。複合体は、また、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ第1の材料に対して化学的に適合性である材料の、第2の層104も含む。複合体のイオン伝導率は、少なくとも10-7S/cm、一般には例えば10-5S/cm〜10-4S/cmなど少なくとも10-6S/cm、高ければ例えば10-3S/cmまたはそれ以上である。第1の層102は、活性金属(例えばリチウム)アノード106に隣接する。活性金属カソード106は、銅などの伝導性金属で構成される集電体108に接続される。複合体100の反対側では、第2の層104が、電解質110と(随意に)接触する。第2の層104は、実施形態によっては、それ自体が電池セルの唯一の電解質であっても良い。電解質110に隣接するのは、集電体114を伴うカソード112である。
【0026】
図2は、保護用複合体の電池セパレータを、本発明に従って示している。セパレータ200は、第1の材料層を含む、または、イオン伝導性で且つ活性金属に対して化学的に適合性である前駆体202を含む。ほとんどの場合において、第1の材料は、酸化材料(例えば空気や水分など)に対して化学的に適合性でない。活性金属に接触する第1の層は、その全部または一部が、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、または活性金属の酸窒化リンをベースにしたガラスで構成されて良い。具体例は、Li3N、L3P、LiI、LiBr、LiCl、およびLiFを含む。少なくともある一例において、第1の材料すなわちLiPONは、酸化材料に対して化学的に適合性である。第1の材料層の厚さは、好ましくは約0.1〜5ミクロンまたは0.2〜1ミクロンであり、例えば約0.25ミクロンである。
【0027】
前述のように、第1の材料は、活性金属に対して化学的に適合性である前駆材料であっても良く、これは、活性金属電極材料に接触した際に反応することによって、活性金属電極材料に対して化学的に安定性で且つ望ましいイオン伝導率を有する生成物(すなわち第1の層材料)を生成する。適切な前駆材料の例は、金属窒化物、赤リン、窒素含有およびリン含有の有機物(例えばアミン、ホスフィン、ボラジン(B336)、トリアジン(C333))、並びにハロゲン化物を含む。具体例の一部は、P(赤リン)、Cu3N、SnNx、Zn32、FeNx、CoNx、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si34)、並びにI2、B2、Cl2、およびF2を含む。このような前駆材料は、次いで、活性金属(例えばLi)と反応することによって、上述された窒化リチウム、リン化リチウム、およびハロゲン化リチウムなどのLi金属塩を形成することができる。これらの第1の層材料の前駆体は、場合によっては、空気(水分および周囲の空気中に通常的に存在する他の材料を含む)中において化学的に安定性であることによって、取り扱いおよび製造を促進しても良い。例として、例えばCu3Nなどの金属窒化物が含まれる。
【0028】
また、活性金属に対して適合性である適切な層は、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)・ヨウ素錯体(P2VP−I2)、ポリエチレン・ヨウ素錯体、またはテトラアルキルアンモニウム・ヨウ素錯体などのポリマ・ヨウ素錯体は、Liと反応することによって、純粋なLiIよりもイオン伝導率が大幅に高いLiIベースの膜を形成することができる。
【0029】
第1の材料のイオン伝導率は、少なくとも10-7S/cm、一般には例えば少なくとも10-5S/cm、高ければ例えば10-3S/cmまたはそれ以上の高イオン伝導率である。
【0030】
第1の材料層または前駆体層202に隣接するのは、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ第1の材料または前駆体に対して化学的に適合性である第2の層204であり、例えば、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、酸窒化リンをベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物/硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、リチウムベータアルミナ、ナトリウムベータアルミナ、Li超イオン伝導体(LISICON)、およびNa超イオン伝導体(NASICON)などである。具体例は、LiPON、Li3PO4・Li2S・SiS2、Li2S・GeS2・Ga23、Li2O・11Al23、Na2O・11Al23、(Na,Li)1+xTi2-xAlx(PO43(0.6≦x≦0.9)および結晶学的に関連性の構造、Na3Zr2Si2PO12、Li3Zr2Si2PO12、Na5ZrP312、Na5TiP312、Na3Fe2312、Na4NbP312、Li5ZrP312、Li5TiP312、Li3Fe2312、並びにLi4NbP312を含む。
【0031】
保護用複合体の第2の層として特に適したガラスセラミック材料は、次の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックである。ここで、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、MはNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、QはAlまたはGaである。ガラスセラミックスは、原材料を融解させて融解物とし、融解物を鋳造してガラスとし、更に、ガラスに熱処理を施すことによって得られる。このような材料は、日本の株式会社オハラから入手することができるうえ、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許の第5,702,995号、第6,030,909号、第6,315,881号、第および6,485,622号において、更に説明されている。
【0032】
これらのガラスおよびガラスセラミックスのいくつかが有する高伝導性(約10-5〜10-3S/cmの範囲またはそれを超えるイオン伝導率)は、保護されたリチウムアノードの性能を向上させると共に、オーム抵抗の観点から見て大きな不具合を生じることなく比較的厚い膜を堆積させることを可能にする。
【0033】
また、第2の適切な層は、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、上述のガラスセラミック材料などのガラスセラミック活性金属イオン導電体が、ポリマ電解質と組み合わされ、保護用複合体の第2の層として使用できる可撓性の複合材料シートを形成して良い。このような可撓性複合材料の重要な一例は、日本の株式会社オハラによって開発されたものである。それは、Liイオンを伝導する上述のようなガラスセラミック材料の粒子と、PEO−Li塩錯体をベースとする固体ポリマ電解質とで構成される。株式会社オハラは、この材料を、厚さ約50ミクロンのシート状に製造している。これは、高イオン伝導率を維持すると同時に可撓性を実現することができる厚さである。イオン伝導率が比較的高く(オハラの製品の場合は室温のもとで4×10-5S/cmを上回る)、尚かつLi金属に対して安定性であるので、この種の複合電解質は、完全固体電池において、室温またはそれ以上の温度のもとで使用することができる。
【0034】
複合障壁層は、本質的に高いイオン伝導率を有することが望ましい。一般に、複合体のイオン伝導率は、少なくとも10-7S/cm、一般には少なくとも約10-6〜10-5S/cm、高ければ例えば10-4〜10-3S/cmまたはそれ以上である。第1の前駆材料層の厚さは、第2の材料層と、隣接する材料または層との接触を、具体的にはセパレータを使用されるアノードの活性金属との接触を阻止するのに十分な厚さであることが望ましい。例えば、第1の材料層は、約0.1〜5ミクロン、0.2〜1ミクロン、または約0.25ミクロンの厚さを有して良い。
【0035】
第2の材料層の厚さは、好ましくは約0.1〜1000ミクロンであり、あるいは、第2の材料層のイオン伝導率が約10-7S/cmである場合は約0.25〜1ミクロンであり、あるいは、第2の材料層のイオン伝導率が10-4〜10-3S/cmである場合は約10〜1000ミクロン、好ましくは1〜500ミクロン、更に好ましくは10〜100ミクロンであり、例えば20ミクロンである。
【0036】
第1の材料層が、例えばCu3NまたはLiPONのように、空気中において化学的に安定性の前駆材料であるとき、保護用複合体の電池セパレータは、電池セルに組み込まれる前に劣化することなく、通常の大気条件のもとで取り扱うまたは貯蔵することが可能である。セパレータが、電池セルに組み込まれるとき、前駆層202は、活性金属(例えばリチウム)電極に接触する。前駆体は、活性金属と反応することによって、活性金属電極材料に対して化学的に適合性のイオン伝導性材料を形成する。第2の層は、カソードおよび集電体を適用されるまたは適用された電解質に接触する。あるいは、第2の層は、電池セルにおいて唯一の電解質として機能する。いずれにせよ、保護用複合体の中の二枚の層の組み合わせは、活性金属電極と、電解質およびカソードの少なくとも一方とを、互いの間で有害な反応が生じないように保護する。
【0037】
図3は、保護用複合体を組み入れたカプセル化アノード構造を、本発明に従って示している。構造300は、例えば銅などの集電体310に接合された例えばリチウムなどの活性金属電極308と、保護用複合体302とを含む。保護用複合体302は、イオン伝導性で、且つ活性金属電極材料に対して化学的に適合性で、且つ酸化材料(例えば空気)に対して化学的に適合性でない材料の、第1の層304で構成される。例えば、活性金属に接触する第1の層は、その全部または一部が、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、または活性金属のハロゲン化物で構成されて良い。具体例は、Li3N、L3P、LiI、LiBr、LiCl、およびLiFを含む。第1の材料層の厚さは、好ましくは約0.1〜5ミクロンまたは0.2〜1ミクロンであり、例えば約0.25ミクロンである。
【0038】
これらの第1の層材料は、活性金属電極に適用されても良いし、または、金属窒化物、金属リン化物、金属ハロゲン化物、赤リン、およびヨウ素などの前駆体を適用することによってin-situ形成されても良い。このような第1の層のin-situ形成は、例えば(P、CuN3、およびPbI2を前駆体の例として使用した)下記の反応に従って、前駆体をリチウム類似物に変換することによって得られて良い。
1. 3Li+P=Li3P(Liイオン伝導体を形成する前駆体の反応)
2(a). 3Li+Cu3N=Li3N+3Cu(Liイオン伝導体と金属との複合体を形成する反応)
2(b). 2Li+PbI2=2LiI+Pb(Liイオン伝導体と金属との複合体を形成する反応)
【0039】
電子伝導性の金属粒子を含み、in-situ変換の結果として得られた第1の層の複合体は、本発明に従った保護用複合体の第1の層材料としての要件を満たしているので、本発明の範囲内である。
【0040】
保護用複合体の第2の層306は、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、酸窒化リンをベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物/硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、リチウムベータアルミナ、ナトリウムベータアルミナ、Li超イオン伝導体(LISICON)、およびNa超イオン伝導体(NASICON)など、ほぼ不浸透ガラス状または非晶質性のイオン伝導体で構成される。具体例は、LiPON、Li3PO4・Li2S・SiS2、Li2S・GeS2・Ga23、Li1-x-yAlxTi2-xSiy3-y12(日本の株式会社オハラから入手することができ、尚かつ、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許の第5,702,995号、第6,030,909号、および第6,315,881号において更に説明されている)、Li2O・11Al23、Na2O・11Al23、(Na,Li)1+xTi2-xAlx(PO43(0.6≦x≦0.9)および結晶学的に関連性の構造、Na3Zr2Si2PO12、Li3Zr2Si2PO12、Na5ZrP312、Na5TiP312、Na3Fe2312、Na4NbP312、Li5ZrP312、Li5TiP312、Li3Fe2312、並びにLi4NbP312を含む。
【0041】
複合体のイオン伝導率は、少なくとも10-7S/cm、一般には例えば10-5〜10-4S/cmのように少なくとも約10-6S/cm、高ければ例えば10-3S/cmまたはそれ以上である。第2の材料層の厚さは、好ましくは約0.1〜1000ミクロンであり、あるいは、第2の材料層のイオン伝導率が約10-7S/cmである場合は約0.25〜1ミクロンであり、あるいは、第2の材料層のイオン伝導率が10-4〜10-3S/cmである場合は約10〜1000ミクロン、好ましくは1〜500ミクロン、更に好ましくは10〜100ミクロンであり、例えば20ミクロンである。
【0042】
アノード構造が電池セルに組み込まれるとき、第1の層304は活性金属(例えばリチウム)アノードに隣接し、第2の層306は電解質に隣接する、あるいは、第2の層が電池セルの唯一の電解質である場合はカソードに隣接する。
【0043】
いずれの層も、追加の構成要素を含んで良い。例えば、活性金属に対して適合性である適切な第1の層304は、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)・ヨウ素錯体(P2VP−I2)、ポリエチレン・ヨウ素錯体、またはテトラアルキルアンモニウム・ヨウ素錯体などのポリマ・ヨウ素錯体は、Liと反応することによって、純粋なLiIよりもイオン伝導率が大幅に高いLiIベースの膜を形成することができる。また、適切な第2の層306も、その性質を向上させるために、構成要素としてポリマを含んで良い。例えば、上述された、株式会社オハラから市販されているようなガラスセラミック活性金属イオン導電体が、高イオン伝導率を維持すると同時に可撓性を付与するポリマーマトリックス(日本の株式会社オハラから市販されている)に組み込まれて良い。
【0044】
また、これらの層は、様々な技術を使用して形成されて良い。これらは、LiN3またはイオン伝導性ガラスなどの材料層の堆積または蒸着(電子ビーム蒸着を含む)を含む。また、前述のように、活性金属電極に隣接する層は、一つまたはそれ以上の前駆体を活性金属電極と非有害反応させることによってin-situ形成されて良い。例えば、CuN3をLiアノード表面に接触させることによって、Liアノードの上にLiN3層を形成しても良く、赤リンをLiアノード表面に接触させることによって、Liアノードの上にLiP3を形成しても良い。
【0045】
また、第1の材料および第2の材料を、転位層および濡れ層の少なくとも一方などの別の材料で覆う方法が、用いられても良い。例えば、オハラのガラスセラミック板は、LiPON層で覆われ、次いで、薄い銀(Ag)の被膜で覆われる。この構造にリチウムが蒸着されると、AgはAg−Liに変換され、その少なくとも一部分がより大量の堆積リチウム中に拡散され、保護されたリチウム電極を形成する。薄いAgの被覆は、熱い(気相の)リチウムが、第1のLiPON材料層に接触して不利な反応を起こすのを阻止する。蒸着後の固相リチウムは、LiPONに対して安定性である。望ましい結果を実現するためには、このような遷移層または濡れ層(例えばSn)と第1の層材料とを、様々に組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明は、周囲環境に対して安定性の前駆体を組み込まれた保護層および電池セパレータを、その全面に形成された、保護されたアノード構造を、その範囲に含む。各前駆体は、電池セルに組み込まれる前に劣化することがなく、通常の大気条件のもとで取り扱うまたは貯蔵することができる。電池セル、並びにセパレータ、アノード構造、および電池セルを作成するための方法も、提供される。
【0047】
製造技術
活性金属電池セルを製造するための材料および技術は、例えば、1997年11月11日付けでChuに対して発行された、米国特許第5,686,201号に記載されている。アノード保護層を有する活性金属電池セルを製造するための材料および技術に関する更なる説明は、1998年8月25日付けで出願され、May-Ying Chu、Steven J. Visco、およびLutgard C.Dejongeを発明者とした、米国特許出願第09/139,601号「障壁層を有するカプセル化リチウム合金電極」(現在では、2001年4月10日発行の米国特許第6,214,061号である)、1998年5月29日付けで出願され、Steven J. ViscoおよびMay-Ying Chuを発明者とした、米国特許出願第09/086,665号「負極のための保護被覆」(現在では2000年5月15日発行の米国特許6,025,094号である)、1998年8月25日付けで出願され、May-Ying Chu、Steven J. Visco、およびLutgard C.Dejonhgeを発明者とした、米国特許出願第09/139,603号「保護被覆の下に金属負極をメッキする」(現在では、2002年6月11日発行の米国特許第6,402,795号である)、並びに、1998年8月25日付けで出願され、Steven J. ViscoおよびFloris Y. Tsangを発明者とした、米国特許出願第09/139,601号「ガラス保護層を有するカプセル化リチウム電極を形成するための方法」(現在では、2001年4月10日発行の米国特許第6,214,061号である)に記載されている。活性金属電極は、2002年7月3日付けで出願され、Steven J. Visco、Yevgeny S. Nimon、およびBruce D. Katzを発明者とした、米国特許出願第10/189,908号「カプセル化合金電極」に更に記載されるように、活性金属合金電極であっても良い。これらの文献に開示された、アノード、カソード、セパレータ、および保護層などを含む電池の構成要素の材料および技術は、概して本発明に適用可能であり、これらの各特許出願は、引用によって完全な形で本明細書に組み込まれるものとする。
【0048】
具体的に言うと、本発明に従った保護用複合体は、様々な方法を使用して形成されて良い。これらは、第1の材料層もしくは前駆体を第2の材料層の上に堆積または蒸着(電子ビーム蒸着を含む)させることを含む。また、前述され且つ後ほど詳述されるように、第1の層は、一つまたはそれ以上の前駆体を活性金属電極または活性金属材料と非有害反応させることによって、またはリチウムを前駆体の上に堆積または蒸着させることによって、または前駆体をリチウム金属(例えば箔)に直接に接触させることによって、または第2の層材料を通じて前駆体にリチウムをメッキすることによって、in-situ形成されて良い。いくつかの実施形態において、第2の層材料は、後ほど詳述されるように、第1の層材料の上に形成されても良い。
【0049】
図4Aは、本発明に従って保護用複合体を形成するための第1の方法を示している。活性金属に対して化学的に適合性の高イオン伝導性材料である第1の層は、前述されたLiPONまたはオハラのガラスセラミック材料などの高イオン伝導性のガラス材料もしくはガラスセラミック材料などを例とする、ほぼ不浸透性のイオン伝導性材料である第2の層材料の上に、直接に堆積される。これは、例えばRFスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、または反応性の熱蒸着もしくは電子ビーム蒸着などを含む様々な技術によって行われて良い。図に示された具体例では、先ず、リチウムが、窒素プラズマの中で蒸着されて、前述されたオハラの材料などのガラスセラミック材料の表面の上に、窒化リチウム(Li3N)層を形成する。次いで、リチウム金属がLi3N膜の上に蒸着される。Li3N層は、リチウム金属電極を第2の材料層から隔てる一方で、Li電極からのLiイオンをガラスに通すことができる。当然ながら、本明細書に記載されるその他の活性金属、並びに第1および第2の層材料も、同様に使用されて良い。
【0050】
また、図4Bは、本発明に従って保護用複合体を形成するための第2の方法を示している。化学的に適合性で、且つイオン伝導性である第1の層材料は、前駆体層の形成に続いて、第2の層材料の上にin-situ形成される。図に示された具体例では、先ず、例えば前述されたオハラの材料で構成されたガラスセラミック層の表面に、活性金属(この場合はリチウム)リン化物の前駆体である赤リンが被覆される。次いで、そのリンの上に、リチウム金属の層が堆積される。リチウムとリンとの反応は、3Li+P=Li3Pの反応式に従って、Li3Pを形成する。Li3Pは、リチウムアノードおよびガラスセラミック材料の両方に対して化学的に適合性であるイオン伝導性材料である。このようにすれば、ガラスセラミック(または他の第2の層材料)が、リチウム電極に直接に接触することはない。当然ながら、本明細書に記載されるその他の活性金属、第1の層の前駆材料、および第2の層材料も、同様に使用されて良い。前駆体の代替例としては、CuN3およびヨウ化鉛が含まれる。CuN3は、第2の層材料(例えばガラスセラミック)の上に薄層状に形成されて良く、3Li+Cu3N=Li3N+3Cuの反応式に従って、やはりLiアノードに同様に接触することができる。ヨウ化鉛は、ポリマ電解質の上に薄層状に形成されて良く、2Li+PbI2=2LiI+Pbの反応式に従って、やはりLiアノードに同様に接触することができる。
【0051】
上述されたいずれの方法においても、第1の層材料または前駆体の上にリチウム(または他の活性金属)層を形成する替わりに、例えば押し出し成形されたリチウム金属箔を直接に接触させるなど、金属リチウムを保護用層間材料または前駆体に接合させることによって、保護用複合体の第1の層材料または前駆体をリチウムに接触させて良い。この代替方法の一実施形態が、図4Aおよび図4Bの両方法について、図5に示されている。
【0052】
更に別の一実施形態では、例えば錫膜などの濡れ層を銅の上に有する好適な基板が、例えばCu3Nなどの第1の層材料の前駆体で被覆されて良い。これは、次いで、例えば(イオン)伝導性ガラスなどの第2の層材料で被覆されて良い。すると、第1の層材料および第2の層材料を通じて、錫電極にリチウム(または他の活性金属)がメッキされ、活性金属電極が形成される。Cu3N前駆体も、この動作によってLi3Nに変換され、こうして、本発明に従った保護用複合体が、リチウム金属電極の上に完成される。活性金属のメッキ処理の詳細は、引用によって既に組み込まれている同一出願人による米国特許第6,402,795号に記載されている。
【0053】
図4Aまたは図4Bに例示されたいずれの方法においても、第1の層材料または前駆体の上にリチウム(または他の活性金属)層を形成する替わりに、保護用複合体の第1の層材料または前駆体をリチウムまたは他の活性金属材料の上に堆積させて良い(または別の方法で形成して良い)。次いで、例えば高伝導性ガラスを第1の層材料の上に蒸着させるなどによって、第2の層材料が形成されて良い。この代替方法の一実施形態が、図5に示されている。図中、活性金属電極は、成形された銅・錫(Cu−Sn)合金の上にリチウムを蒸着させることによって形成され、その結果、拡大されたLi−Cu−Sn合金アノードが、保護用複合体を構成する第1および第2の層材料の基板として形成される。
【0054】
また、前述のように、本発明の代替の一実施形態において、第1の層は、追加の構成要素を含んで良い。例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)・ヨウ素錯体(P2VP−I2)、ポリエチレン・ヨウ素錯体、またはテトラアルキルアンモニウム・ヨウ素錯体などのポリマ・ヨウ素錯体は、Liと反応することによって、本明細書に開示された活性金属および第2の層材料の両方に対して化学的に適合性であるLiIベースのイオン伝導膜を形成することができる。理論に縛られることは意図していないが、ポリマ・ヨウ素の電荷移動錯体の使用は、LiIおよびポリマを含有し、且つ純粋なLiIよりも大幅に高いイオン伝導率を有する複合体の形成に通じることができる。例えば臭素の錯体など、他のハロゲンも同様に使用されて良い。
【0055】
図6Aには、本発明の本態様の第1の実施形態が示されている。第2の層材料の表面は、ポリマ層およびヨウ素層で覆われ、これらの層は、ポリマ・ヨウ素錯体を形成する反応を生じる。
【0056】
この方法に従うと、ポリマの薄層は、刷毛塗り、浸し塗り、または吹き付け塗りなどによって、第2の材料層(例えば伝導性ガラス)に適用されて良い。例えば、導電性ガラスの層は、このようにして、P2VPの薄い(例えば0.5〜2.0ミクロン、好ましくは0.1〜0.5ミクロンの)層で覆われて良い。
【0057】
ヨウ素被覆を適用するための技術の一つは、結晶性のヨウ素を昇華させるものである。これは、ドライボックスまたはドライルームの中に設置された反応装置の中で、室温(例えば約20〜25度)のもとで実現することができる。ヨウ素の昇華層は、極薄(例えば0.05〜1.0ミクロン)にすることができ、昇華の速度は、温度または基板とヨウ素源との間の距離を変化させることによって、調整することができる。
【0058】
また、高濃度(例えば50〜100g/l)のヨウ素が、アセトニトリルおよびn−ヘプタンなどの有機溶媒に溶かされて良い。溶解ヨウ素は、なかでも、浸漬被覆、吹き付け塗り、または刷毛塗りなどの方法によって、伝導性ガラスの表面の上に塗布されて良い。このとき、処理条件は、被覆処理の時間およびヨウ素の濃度を変化させることによって、容易に変更することができる。この技術のヨウ素源の例としては、AgIおよびPbI2などの金属ヨウ化物が挙げられる。これらは、固体電池において、LiアノードおよびLiIベースの固体電解質と共に、カソード材料として使用されるものとして知られている。
【0059】
次いで、リチウム(または他の活性金属)が、伝導性ガラス(または他の第2の層材料)の上のポリマ・ヨウ素錯体に接触される。これは、例えば、錯体で覆われたガラスにリチウムを蒸着または押圧するなどによって実現される。その結果、LiIを含有する複合体である保護用障壁層が、Liアノードの上に形成される。
【0060】
図6Bは、本発明の本態様の別の一実施形態を示している。伝導性ガラス(または他の第2の層材料)の表面は、前述された技術などによって、ヨウ素の薄層で被覆される。このヨウ素の薄層は、Liと反応することによって、LiI層(A)を形成することができる。
【0061】
例えばリチウム箔などの活性金属は、例えば前述されたように、ポリマ(B)の薄い層を塗布され、次いで、ガラス上のヨウ素層に接触させることができる。合体後、ヨウ素がポリマ層と反応し、その結果、インピーダンスの低下したLiI含有複合体である保護用障壁層が形成される。
【0062】
具体例
次の具体例は、リチウム電極における本発明に従った複合体保護用構成の有利な特性、特に、とても低いインピーダンス、を説明する詳細を提供する。これら具体例は本発明の態様を例示し、より明確に説明するために提供され、決して限定を意図しているものではない。
【0063】
具体例1:複合保護層においてLIPONを使用した場合のインピーダンス測定
MRC8671スパッタ堆積システムの中で、およそ0.75ミクロンのLiPONが、銅箔のサンプルの上にRFスパッタ堆積された。窒素環境において、銅を標的としたRFマグネトロンスパッタリングが実施され、銅箔のサンプルの一部が、Cu3Nの追加層(およそ0.9ミクロン)で覆われた。次いで、LiPON/Cuサンプルの一つが、真空蒸着装置に移され、そのLiPON表面に、およそ3〜7ミクロンのリチウム金属が直接に蒸着された。それとは別に、Cu3N/LiPON/Cuサンプルの一つが、同じ厚さのリチウムで覆われた。非保護のLiPON/Cuサンプルのインピーダンスは、図7Aに示されている。LiPON表面にリチウムを蒸着させると、サンプルの抵抗は激増する。これは、電気化学デバイスにとって望ましくない。図7Bからわかるように、保護用Cu3N膜の優れた効果は、この場合のインピーダンスを激減させる。
【0064】
実施例2:複合保護層においてガラスセラミック活性金属イオン伝導体(オハラ)を使用した場合のインピーダンス測定
Li+導電性ガラスセラミック板のサンプルが、オハラ社より入手された。およそ3〜7ミクロンのリチウムが、オハラのガラスセラミック板の上に直接に蒸着された。図8Aからわかるように、リチウムと電解質との有害な反応は、サンプルのインピーダンスを、およそ40,000Wcm2と極めて大きくする。二つ目のガラスセラミック板のサンプルは、RFマグネトロンスパッタリングによってCu3N(厚さ〜0.9ミクロン)の膜をスパッタ堆積され、次いで、約3〜7ミクロンのリチウムを蒸着された。図8Bに示されるように、Cu3N膜の優れた効果は、そのガラスセラミック板のインピーダンスを、Cu3N膜を有さない板と比べて劇的に改善する。図8Aおよび図8Bを図8Cに重ね合わせれば、Cu3Nで保護された板の性能が劇的に改善されたことを、更にはっきりと見ることができる。保護膜のイオン伝導特性が、図8Dに示されている。リチウムは、Li/Cu3N/ガラスの境界面を横断する。これは、おそらくは、イオン絶縁性のCu3N膜が、高伝導性のLi3N+Cuに変換されるためであると考えられる。
【0065】
結論
以上、本発明は、発明の理解を明瞭にする目的で、いくつかの詳細を特定した状態で説明されたが、本発明の範囲内で、特定の変更および修正が可能であることは明白である。なお、本発明のプロセスおよび組成は、言うまでもなく、様々な代替の方法によって実現することができる。従って、本発明は、例示的なものであって、限定的なものであるとは見なされず、本明細書で特定された詳細に限定されない。
【0066】
本明細書で言及された参考文献は、いずれも、引用によって本明細書に組み込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた活性金属電池セルの概略図である。
【図2】本発明に従った保護用複合体電池セパレータの概略図である。
【図3】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた活性金属アノード構造の概略図である。
【図4A】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた電気化学デバイス構造を作成するための代替の方法を示した概略図である。
【図4B】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた電気化学デバイス構造を作成するための代替の方法を示した概略図である。
【図5】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた電気化学デバイス構造を作成するための代替の方法を示した概略図である。
【図6A】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた電気化学デバイス構造を作成するための代替の方法を示した概略図である。
【図6B】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体を組み込まれた電気化学デバイス構造を作成するための代替の方法を示した概略図である。
【図7A】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。
【図7B】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。
【図8A】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。
【図8B】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。
【図8C】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。
【図8D】本発明に従ったイオン伝導性の保護用複合体の有利な性能を示したデータの表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスの構成要素であって、
第1の表面および第2の表面を有する活性金属電極と、
前記電極の前記第1の表面の上の保護用複合体セパレータであって、
前記電極に接触する第1の材料層であって、イオン伝導性で、且つ前記活性金属に対して化学的に適合性である、第1の材料層と、
前記第1の層に接触する第2の材料層であって、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ前記第1の材料に対して化学的に適合性である、第2の材料層と
を備え、イオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、保護用複合体セパレータと
を備える構成要素。
【請求項2】
請求項1の構成要素であって、更に、
前記活性金属電極の前記第2の表面の上に集電体を備える構成要素。
【請求項3】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層は、のちに形成される電池セルの唯一の電解質である、構成要素。
【請求項4】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記構造は、更に、電解質を含む、構成要素。
【請求項5】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、構成要素。
【請求項6】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-6S/cmから10-3S/cmまでの間である、構成要素。
【請求項7】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-3S/cmである、構成要素。
【請求項8】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の材料層の厚さは、約0.1〜5ミクロンである、構成要素。
【請求項9】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の材料層の厚さは、約0.2〜1ミクロンである、構成要素。
【請求項10】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の材料層の厚さは、約0.25ミクロンである、構成要素。
【請求項11】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層の厚さは、約0.1〜1000ミクロンである、構成要素。
【請求項12】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-7S/cmで、前記第2の材料層の厚さは、約0.25〜1ミクロンである、構成要素。
【請求項13】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-4S/cmから10-3S/cmまでの間で、前記第2の材料層の厚さは、約10〜500ミクロンである、構成要素。
【請求項14】
請求項13に記載の構成要素であって、
前記第2の材料層の厚さは、約10〜100ミクロンである、構成要素。
【請求項15】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記電極の前記活性金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属からなる群より選択される、構成要素。
【請求項16】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記電極の前記活性金属は、アルカリ金属である、構成要素。
【請求項17】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記電極の前記活性金属は、リチウムまたはリチウム合金である、構成要素。
【請求項18】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、および活性金属の酸窒化リンガラスからなる群より選択される材料を含む、構成要素。
【請求項19】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、Li3N、L3P、LiI、LiBr、LiCl、LiF、およびLiPONからなる群より選択される材料を含む、構成要素。
【請求項20】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の層は、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物または硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される材料を含む、構成要素。
【請求項21】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の層は、LiPON、Li3PO4・Li2S・SiS2、Li2S・GeS2・Ga23、LISICON、NASICON、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される材料を含む、構成要素。
【請求項22】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、活性金属ハロゲン化物とポリマとの錯体を含む、構成要素。
【請求項23】
請求項23に記載の構成要素であって、
前記ポリマは、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリエチレン、およびテトラアルキルアンモニウムからなる群より選択される、構成要素。
【請求項24】
請求項23に記載の構成要素であって、
前記錯体は、LiI−ポリ(2−ビニルピリジン)である、構成要素。
【請求項25】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、Li3Nを含む、構成要素。
【請求項26】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、Li3Pを含む、構成要素。
【請求項27】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、LiPONを含む、構成要素。
【請求項28】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックである、構成要素。
【請求項29】
請求項28に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、Li3Pを含む、構成要素。
【請求項30】
請求項28に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、Li3Nを含む、構成要素。
【請求項31】
請求項28に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、LiI−ポリ−2−ビニルピリジンを含む、構成要素。
【請求項32】
請求項28に記載の構成要素であって、
前記第1の層は、LiPONを含む、構成要素。
【請求項33】
請求項1に記載の構成要素であって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックの粒子を、固体ポリマ電解質の中に含む、可撓性の膜である、構成要素。
【請求項34】
保護用複合体電池セパレータであって、
活性金属および空気に対して化学的に適合性である、イオン伝導性の第1の材料層または前駆体と、
前記第1の層に接触する第2の材料層であって、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ前記第1の材料に対して化学的に適合性である、第2の材料層と
を備え、イオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、セパレータ。
【請求項35】
請求項34に記載のセパレータであって、前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-4〜10-3S/cmである、セパレータ。
【請求項36】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第1の材料層の厚さは、約0.1〜5ミクロンである、セパレータ。
【請求項37】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の材料層の厚さは、約0.1〜1000ミクロンである、セパレータ。
【請求項38】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の材料層のイオン伝導率は、約10-4S/cmから10-3S/cmまでの間で、前記第2の材料層の厚さは、約10〜500ミクロンである、セパレータ。
【請求項39】
請求項38に記載のセパレータであって、
前記第2の材料層の厚さは、約10〜100ミクロンである、セパレータ。
【請求項40】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第1の層は、LiPONである、セパレータ。
【請求項41】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第1の層は、第1の層材料の前駆体である金属窒化物を含む、セパレータ。
【請求項42】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第1の層は、Cu3Nを含む、セパレータ。
【請求項43】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の層は、ほぼ不浸透性である、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物または硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される材料を含む、セパレータ。
【請求項44】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の層は、LiPON、Li3PO4・Li2S・SiS2、Li2S・GeS2・Ga23、LISICON、NASICON、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される材料を含む、セパレータ。
【請求項45】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックである、セパレータ。
【請求項46】
請求項34に記載のセパレータであって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックの粒子を、固体ポリマ電解質の中に含む、可撓性の膜である、セパレータ。
【請求項47】
電気化学デバイスの構成要素を製造するための方法であって、
積層体を形成する工程を備え、
前記積層体は、
活性金属アノードと、
前記活性金属アノードに隣接する第1の材料層であって、イオン伝導性で、且つ活性金属に対して化学的に適合性である、第1の材料層と、
前記第1の層に隣接する第2の材料層であって、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ前記第1の材料に対して化学的に適合性である、第2の材料層と
を含み、イオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、
前記積層体を形成する工程は、
(a)活性金属アノードおよび前記第2の材料層の一方を基板として提供する工程と、
(b)前記基板の上に、前記第1の材料または前記第1の材料の化学的前駆体の層を形成する工程と、
(c)工程(a)における前記活性金属アノードおよび前記第2の材料層のもう一方を、前記基板の上の前記第1の材料または前駆体の層に適用する工程と
を備える、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、
前記アノードの前記活性金属は、リチウムまたはリチウム合金である、方法。
【請求項50】
請求項48に記載の方法であって、
前記第1の材料および前駆体は、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、活性金属の酸窒化リンガラス、活性金属のハロゲン化物とポリマとの錯体、金属の窒化物、赤リン、アミン、ホスフィン、ボラジン(B336)、トリアジン(C333)、およびハロゲン化物からなる群より選択される、方法。
【請求項51】
請求項48に記載の方法であって、
前記第2の材料は、ほぼ不浸透性である、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物または硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される、方法。
【請求項52】
請求項48に記載の方法であって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックである、方法。
【請求項53】
請求項48に記載の方法であって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックの粒子を、固体ポリマ電解質の中に含む、可撓性の膜である、方法。
【請求項54】
請求項48に記載の方法であって、
前記基板は、前記第2の材料層であり、前記第1の材料または前駆体の層は、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、および活性金属のハロゲン化物からなる群より選択される第1の材料層であり、前記活性金属アノードは、蒸着によって堆積されるリチウムである、方法。
【請求項55】
請求項48に記載の方法であって、
前記基板は、前記第2の材料層であり、前記第1の材料または前駆体の層は、金属の窒化物、赤リン、アミン、ホスフィン、ボラジン(B336)、トリアジン(C333)、およびハロゲン化物からなる群より選択される前駆体であり、前記活性金属アノードは、蒸着によって堆積されるリチウムであり、従って、前記前駆体は、前記蒸着による堆積の際にリチウムと反応し、リチウム類似物である第1の層材料に変換される、方法。
【請求項56】
請求項48に記載の方法であって、
前記基板は、前記第2の材料層であり、前記第1の材料または前駆体の層は、LiPONであり、前記活性金属アノードは、リチウムの蒸着に先だって前記LiPONの上に形成される遷移層の上に、蒸着によって堆積されるリチウムであり、従って、前記遷移層は、気相のリチウムと前記LiPONとの反応を阻止する、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
前記遷移層は、リチウムに混和できる金属である、方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、
前記金属は、Agである、方法。
【請求項59】
請求項48に記載の方法であって、
前記基板は、前記第2の材料層であり、前記第1の材料または前駆体の層は、前記第2の材料層にポリ(2−ビニルピリジン)を適用し、次いで前記ポリ(2−ビニルピリジン)にヨウ素を適用し、次いでリチウムを前記活性金属アノードとして適用することによって形成される、LiI−ポリ(2−ビニルピリジン)錯体の層である、方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、
前記活性金属アノードは、リチウムの蒸着によって適用される、方法。
【請求項61】
請求項59に記載の方法であって、
前記活性金属アノードは、リチウム箔の形で適用される、方法。
【請求項62】
電池セルであって、
第1の表面および第2の表面を有する活性金属負極と、
前記電極の前記第1の表面の上の複合体セパレータであって、
前記電極に接触する第1の材料層であって、イオン伝導性で、且つ前記活性金属に対して化学的に適合性である、第1の材料層と、
前記第1の層に接触する第2の材料層であって、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ前記第1の材料に対して化学的に適合性である、第2の材料層と
を備え、イオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、保護用複合体セパレータと、
硫黄をベースにした正極、金属酸化物をベースにした正極、および金属硫化物をベースにした正極の中から選択される、前記第2の層に接触する正極と
を備える電池セル。
【請求項63】
請求項62に記載の電池セルであって、更に、
前記二つの電極の間にポリマ電解質を備える電池セル。
【請求項64】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記負極の前記活性金属は、リチウムまたはリチウム合金である、電池セル。
【請求項65】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記第1の層は、活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、および活性金属の酸窒化リンガラスからなる群より選択される材料を含む、電池セル。
【請求項66】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記第1の層は、Li3N、L3P、LiI、LiBr、LiCl、LiF、およびLiPONからなる群より選択される材料を含む、電池セル。
【請求項67】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記第1の層材料は、活性金属のハロゲン化物とポリマとの錯体を含む、電池セル。
【請求項68】
請求項67に記載の電池セルであって、
前記錯体は、LiI−ポリ(2−ビニルピリジン)である、電池セル。
【請求項69】
請求項67に記載の電池セルであって、
前記第2の層は、リンをベースにしたガラス、酸化物をベースにしたガラス、硫黄をベースにしたガラス、酸化物または硫化物をベースにしたガラス、セレン化物をベースにしたガラス、ガリウムをベースにしたガラス、ゲルマニウムをベースにしたガラス、ガラスセラミックの活性金属イオン伝導体、ナトリウムベータアルミナ、およびリチウムベータアルミナからなる群より選択される材料を含む、電池セル。
【請求項70】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックである、電池セル。
【請求項71】
請求項62に記載の電池セルであって、
前記第2の層は、下記の組成:
【表1】

を有すると共に、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43およびLi1+x+yxTi2-xSiy3-y12の少なくとも一方で構成された主要な結晶相を含有する、イオン伝導性のガラスセラミックであって、Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy2-x(PO43について、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、尚かつ、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される要素であり、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12について、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、尚かつ、Qは、AlまたはGaである、イオン伝導性のガラスセラミックの粒子を、固体ポリマ電解質の中に含む、可撓性の膜である、電池セル。
【請求項72】
電池セルを作成する方法であって、
積層体であって、
活性金属電極と、
前記電極に隣接する第1の材料層であって、イオン伝導性で、且つ活性金属に対して化学的に適合性である、第1の材料層と、
前記第1の層に隣接する第2の材料層であって、ほぼ不浸透性で、イオン伝導性で、且つ前記第1の材料に対して化学的に適合性である、第2の材料層と
を含み、イオン伝導率は、少なくとも10-7S/cmである、積層体を形成する工程と、
硫黄をベースにした正極、金属酸化物をベースにした正極、および金属硫化物をベースにした正極の中から選択される正極を、前記第2の材料層に接触させる工程と
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2006−503416(P2006−503416A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545584(P2004−545584)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/033457
【国際公開番号】WO2004/036669
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(500163551)ポリプラス バッテリー カンパニー (5)
【氏名又は名称原語表記】PolyPlus Battery Company
【Fターム(参考)】