説明

流体ディスペンサ

【課題】適合性の問題を生じさせる事なく微生物学的安全性を維持し、複製物の生成を防止する流体ディスペンサを提供する。
【解決手段】流体ディスペンサに微量作用活性物質を介して相互作用する能力を有する少なくとも1つの材料が組み込まれ、定量ポンプと入口弁26および出口弁22とを含み、少なくとも1つの微量作用活性物質と接触する流体が、出口弁22の領域、出口弁22への流入および/または出口弁22からの流出領域に存在する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌流体用の流体ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、滴下ピペットの形態を有し、かつ、点眼薬が入った容器に取り付けられている流体ディスペンサが説明されている。滴下ピペットの内部には、容器内へ戻る液滴とともに吸い込まれる空中に浮遊する病原菌が、容器に入る前に、抗菌(微量作用)活性銀層を通過しなければならないように、銀または難溶性の銀塩からなる銀被覆物が配置されている。また、塩化銀が埋め込まれた直径9mmのセラミックリングが適切であることがわかったことも述べられている。これらのセラミックリングは、あらゆる通常の種類の医薬品、点眼びんの点滴器に、単に押し込むことにより、しっかりと装着することができる。点滴器に銀被覆物を導入するこの方法は、銀被覆物と接触するのが点滴器の壁に沿って戻る液滴だけであり、点滴器を下向きにして通常の方法で使用した後に、点滴器から容器内へと逆流する流体柱の内部の液体の部分は接触しないという欠点を有している。このため、点眼薬容器を使用するたびに、点眼薬が汚染される。さらなる欠点は、容器の内部が点滴器を介して周囲空気と接触しているので、使用中でなくても、病原菌が常に容器中に入り、容器内の点眼薬の汚染をもたらすことである。
【0003】
特許文献1から、流体用の入口開口部とその流体用の吐出開口部とを接続し、また、その中に、微量作用の抗菌活性物質を有する貫通路を含む無菌流体用の流体ディスペンサが公知である。その装置は、定量ポンプ、入口弁および出口弁を含む。入口弁および/または出口弁の領域には、微量作用の殺菌活性物質が存在している。この文献の図1によると、銀で被覆可能なばねが示されている。同様に、入口弁として機能するバルブボールは、その中に、微量作用の有効物質として、銀材料が埋め込まれたコランダムからなっている。この装置の欠点は、しばしば、銀の存在と不要な副生成物を発生させる酸化過程とにより、適合性の問題が生じるということであり、そして、それは、しばしば、適切な製剤の限られた選択をもたらす。
【特許文献1】独国特許発明第4027320C2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第01128625A1号明細書
【非特許文献1】Pharmazeutische Zeitung、124、No.20、1979年5月17日付、949頁および950頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの側面は、特許文献1において言及されるような種類の流体ディスペンサを提供することであり、そして、その流体ディスペンサは、適合性の問題を生じさせることがなく、また、システムの十分かつ同程度の微生物学的安全性(すなわち、無菌利用(germ~free application))を同時に維持しながら、副生成物の生成を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、可撓性材料からなる供給容器に入れられた流体のための入口開口部と、前記液体を分配するための、かつ、その内部に前記流体と接触する少なくとも1つの微量作用活性物質を有する、吐出開口部とを接続する貫通路、空気圧補償なしで動作し、これにより、動作中に空気の流入を通して容器内で圧力補償が起こることがない定量ポンプであって、該ポンプは、前記流体と接触するばね手段と、前記入口開口部を閉じるための入口弁と、出口弁とを含む定量ポンプ、および前記出口弁から前記吐出開口部へとつながる前記貫通路の一部である出口通路、を含む無菌流体用流体ディスペンサであって、ここで、銀、銀塩、その他の銀化合物、合金および金属または塩の形態あるいはこれらの化合物としてのこれらのナノマーからなる群から選択される微量作用物質を介して、病原菌と相互作用する能力を有する材料を含む汚染除去手段が前記出口通路の上部に設けられた無菌流体用流体ディスペンサに関する。
【0006】
本発明は、さらに、本発明の流体ディスペンサの使用に関する。本発明の流体ディスペンサは、医薬品、化粧品および医療機器のような様々な分野における液体の微量を分配するのに適している。液体は、通常、局所的に塗布される。好適な液体は、眼薬組成物および鼻薬組成物である。
【0007】
「相互作用する」という用語は、本発明において、表面反応の一種として定義されるべきである。その理論は、液体中に含まれる病原菌と相互作用する能力を有する材料の表面付近または好ましくは表面上で、相互作用が起こることである。病原菌は、ここでは、周囲環境と接触する吐出開口部の保護されていない外側部分の汚染に由来し得る。病原菌は、ここでは、流体中、すなわち、空気、涙液、粘膜などのような流体ディスペンサと接触するその他の物質中に含まれ得る。1つの考えられるメカニズムは、汚染された液体が、材料の表面上に直接形成された金属酸化物に由来するイオンと接触することである。この接触は、抗菌効果をもたらす。材料の表面とその大きさの関係においては、表面が大きいほど汚染除去効果が高いという一般則が見られる。ここでは、病原菌との異なるレベルの相互作用が起こり得る。例えば、相互作用は、流体中の病原菌の成長の減速または停止をもたらし得る。強いレベルの相互作用は、例えば、微量作用活性物質が、実際に、流体中の病原菌を殺滅するという微量作用効果である。
【0008】
本発明の流体ディスペンサによると、汚染除去手段が、出口通路、好ましくは出口通路の上部に設けられている。「上部」という用語は、さらに最適な汚染除去が保証され得る出口通路の領域を含む。
【0009】
本発明によると、特に強力な殺菌作用は、出口弁の位置および汚染除去手段に由来する。特有の技術的構成により、可動式出口弁は、周囲環境と接触することがなく、それは、出口弁の動作中における汚染の危険性の低減をもたらす。その結果、出口弁の外側に、微量作用活性物質を設けなければならず、それは、汚染除去手段により実現される。さらに、この構成によれば、容器内の流体は、常に微量作用活性物質と接触しているわけではなく、それは、微量作用物質との流体の上述の望ましくない反応を低減する。定量ポンプは、空気圧補償なしで動作し、それによって、従来の定量ポンプの動作における圧力補償のために容器内に流入する空気に起因する流体供給の汚染が防止される。本発明の流体ディスペンサは、供給容器内の流体が使用中でさえも無菌に保たれることを保証し、それによって、防腐剤を添加したり、容器の他の領域に微量作用活性物質を導入したりする必要がない。
【0010】
微量作用活性物質は、出口通路にまたはその近くに配置され、周囲環境から生じる可能性のある病原菌の数を低減することによって、微生物汚染を防止する。
【0011】
流体と接触している定量ポンプおよび容器の材料および構成要素は、各流体と適合性のあるいかなる種類の構成要素および材料であってもよい。応用例においては、定量ポンプおよび容器の内部に、病原菌と相互作用する能力のあるいかなる材料をも設ける必要がないものもある。しかしながら、その他の応用例においては、定量ポンプおよび容器内で、病原菌と相互作用する能力のある材料を用いるのが有利なものもある。例えば、入口弁および/またはばね手段が、病原菌と相互作用する能力のある材料を含んでいると有利である。ここで、材料は、銀、銀塩、その他の銀化合物、ステンレス鋼および金属または塩の形態あるいはこれらの化合物としてのこれらのナノマーからなる群から選択し得る。この場合において、ステンレス鋼は、クロム、ニッケル、モリブデン、銅、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブおよびタンタルからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含んでいてよく、残部は主成分としての鉄である。上記の材料の中で、銀、銀塩またはその他の銀化合物を含むすべての材料は、通常、微量作用活性を有する。ステンレス鋼材料は、通常は微量作用活性ではないか、または、微量作用活性を有していたとしても非常に弱い程度にすぎないと考えられている。しかしながら、ステンレス鋼材料は、病原菌の成長を減速または停止させることによって、病原菌と相互作用することができると考えられている。
【0012】
好ましくは、貫通路は、少なくとも入口弁の領域において、常に流体で満たされている。さらに好ましくは、吐出開口部を被覆するために、流体ディスペンサの上にはめることができるキャップの内側に、微量作用活性物質が設けられている。ここで、キャップにはピンおよび孔部が設けられていてもよい。さらに、ヘッドに位置する吐出開口部にピンをはめ込んでもよい。
【0013】
さらに好ましくは、入口弁は、閉鎖部材と協働する弁座をさらに含み、ここで、弁座には、微量作用活性物質が設けられている。さらに好ましくは、出口弁は、閉鎖部材と協働する弁座をさらに含んでいる。さらに好ましくは、入口弁は、ボール弁であり、また、入口弁の閉鎖部材と協働する弁筐体が設けられており、この弁筐体には、微量作用活性物質が設けられている。好ましくは、出口弁は、ピストン弁であり、また、出口弁の閉鎖部材と協働する弁筐体が設けられている。さらに好ましくは、汚染除去手段は、円形状を有する材料からなる。ここでは、汚染除去手段は、環状体、らせん体または被覆材であってもよい。上記材料は、微量作用活性化合物が埋め込まれたコランダムであってもよい。あるいは、上記材料は銀であってもよい。
【0014】
ここで、一例として、本発明の一実施形態の長手方向断面を示す図の一つの図を参照して、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体ディスペンサは、適合性の問題を生じさせることがなく、また、システムの十分でかつ同程度の微生物学的安全性(すなわち、無菌利用(germ-free application))を同時に維持しながら、副生成物の生成を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図に示すように、装置は、円筒形のポンプ本体1、操作プランジャ2およびキャップ3からなる定量ポンプを含む。
【0017】
ポンプ本体1は、底部が開いているように図示されている第1の中空円筒形本体部4、図中では上部が開いている、より大きな直径の第2の中空円筒形本体部5(部品5は、操作プランジャ2の一部である)、および、両端が開いており、ポンプ本体の2つの部品4、5の間の遷移領域において、内向き環状フランジ7に中央で固定された中空シリンダ6を含んでいる。第1の本体部4は、無菌流体が充填され、かつ、概略のみを示された容器9をねじ留めすることができる内部ねじ山を有していてもよい。あるいは、内部ねじ山の代わりに、図示するように、スナップ閉め(snap on closure)を用いることができる。容器9とポンプ本体4との間を確実に密閉封止するために、環状フランジ7の(図中)下側に、封止部11が設けられている。ポンプの第1の本体部4からの出口付近においては、中空シリンダ6は、可能な場合には、上昇管へとつながるより小さな直径の円筒形弁部14に接続する円錐形に先細になった遷移部12を有している。上昇管の開いた底端は、定量ポンプの入口開口部15を形成している。あるいは、図示するように、上昇管は省略されてもよい。
【0018】
操作プランジャ2は、図面において、底部が開き、また、頂部がヘッド16によって閉じられているように示されている外側の中空円筒形部17と、ヘッド16から中央に下向きに延びる中空の内側円筒形部18とを含む。中空の外側円筒形部17の直径は、第1のポンプ本体部4の直径よりも小さい。
【0019】
中空シリンダ6の内部にはめ込まれ、かつ、貫通孔20を有するピストン19は、その上端にて、内側中空円筒形部18の中に固定されている。中空円筒形部18の内部にはめ込まれた出口弁22のピストン弁21は、一端ではピストン19の端部、他端ではばね23を介してヘッド16により、それらの間で支持されている。ヘッド16上の吐出開口部24へとつながる出口通路25は、ピストン弁21の位置で、内側中空円筒形部18の内部に接続されている。
【0020】
出口通路25の上部、または好ましくは外側中空円筒形部17の上部には、銀、銀塩、その他の銀化合物およびこれらの合金あるいはこれらの金属もしくは塩の形態のナノマー(nanomers)または化合物からなる群から選択された微量作用活性物質を介して、表面付近で相互作用する能力のある材料を含む汚染除去手段33が設けられている。ここでは、汚染除去手段33を出口通路25の内側および/または外側壁に設けてもよい。
【0021】
銀は、10億分の1(ppb)濃度で、最も好ましい治療上の指標を示す。経済的な問題にもよるが、上記手段は、銀、銀で被覆された別の金属、または微量作用の殺菌活性物質が埋め込まれた材料で形成することができる。本発明の好適な実施形態においては、汚染除去手段33は、環状体またはらせん体などの円形形状を有している。微量作用活性物質がキャリア材中に埋め込まれている場合には、コランダムを好都合な材料の1つとして挙げられることがわかっている。
【0022】
また、流体ディスペンサの構成および用途にもよるが、汚染除去手段33を、被覆材として設けることもできる。一例としては、被覆材を、出口通路25の上部の外側中空円筒形部17上に配置することができる。銀からなる被覆材あるいは銀または銀化合物が埋め込まれた適切な材料からなる被覆材を設けることができる。
【0023】
出口通路25の上部において、被覆材を用いる場合には、銀被覆材が、ナノマーからなるナノ被覆材であるのが適切なことがある。例えば、銀コロイドを含む望ましいナノ被覆材が、特許文献2において説明されている。
【0024】
既に説明したように、出口弁として機能するピストン弁21は、吐出開口部24に直接に位置しているわけではない。その代わり、ピストン弁21は、内側中空円筒形部18の中に位置しており、ピストン弁21から吐出開口部24へとつながる出口通路25が設けられている。そのため、貫通孔20と出口通路25とは、ピストン弁21によって隔てられている。ここでは、ピストン弁21の機能は、容器9から内部空間32、貫通孔20および出口通路25を通って、吐出開口部24までの流体10の送出を可能にするが、出口通路25から貫通孔20への流体10の逆流を防止することである。
【0025】
ピストン弁21を用いると、閉じたシステム、すなわち、一旦流体10がシステムから出ると、逆流してシステム内に戻ることのないシステムが確立される。これにより、閉じたシステムへの病原菌および細菌の侵入が有効に防止される。これは、病原菌の侵入が防止されるので、病原菌と相互作用する能力を有する材料または微量作用活性物質を用いる必要性がないので、閉じたシステム内の構成部品に対して、いかなる適切な材料を用いる可能性をもたらす。しかしながら、病原菌の成長を停止または減速させることによって、病原菌と相互作用することができる材料を用いること、あるいは微量作用活性物質を用いることが有利な場合もある。
【0026】
出口通路25は、非常に細く小さな毛細管として設けられ、これにより、デッドボリューム、すなわち閉じたシステムの外部にあって、汚染除去手段と接触する流体の容積が低減される。
【0027】
本発明の実施形態によると、入口弁26の一部およびポンプ筐体の一部に、抗菌性被覆材を設けることができる。該被覆材は、ポンプのプラスチック製の構成要素およびスチール製の構成部品に直接塗布され得る。
【0028】
弁座27と協働するボール28を含む入口弁26は、弁部14内に形成されている。ピストン19に固定されたばね29は、弁部14上の突出部30上で支持されており、ポンプ動作を支える。ピストン19と弁部14の間の中空シリンダ6内部の空間を、参照符号32によって示す。
【0029】
バルブボール28は、微量作用活性物質を介してでも最終的に病原菌と相互作用する能力のある材料を含むことができる。さらに、弁座27およびピストン弁21の領域における内側中空円筒形部18の内側を、微量作用活性物質を介してでも最終的に病原菌と相互作用する能力のある材料で被覆してもよい。ピストン弁21は、プラスチックなどのいかなる不活性材料製であってもよい。
【0030】
また、ばね手段29は、微量作用活性物質を介してでも最終的に病原菌と相互作用する能力のある材料を含んでいてもよい。原則的に、製剤と適合性のある材料である限り、いかなる適切な材料を用いてもよい。
【0031】
上記の装置構成部品に好適な材料は、ステンレス鋼であることが示されている。一般に、ステンレス鋼は、クロム、ニッケル、モリブデン、銅、タングステン、アルミニウム、タンタル、ニオブおよびチタンのような合金元素を比較的多量に含んでおり、一方、合金の大部分に相当する残部は鉄である。
【0032】
ステンレス鋼は耐食性であることが知られている。耐食性は、鋼の表面の極めて薄く非常に強固な酸化クロム層によるものである。クロムは、他の重金属と同様に、非常に少量で、微生物成長を低減させることもある微量作用活性物質として作用し得る。例えば、有用なステンレス鋼材料は、材料1.4034および1.4401などを含む。本発明の様々な実施形態においては、クロムステンレス鋼のような適切な鋼を、微量作用活性物質として、らせん体29および入口弁26に用いた場合に、有効な病原菌殺滅作用が達成され得る。上部ばね23は、充填される流体と接触することがないので、上部ばね23をステンレス鋼材料で形成してもよい。
【0033】
ステンレス鋼との適合性の観点から、特に、起こり得るアレルギー反応を考慮して、ニッケルフリーステンレス鋼またはニッケル含有量が非常に低いステンレス鋼が用いられる。
【0034】
閉じたシステム内で、特に、入口弁26、ボール28、弁座27、中空円筒形部18の内側部分、ばね手段19については、また、流体10と接触する流体ディスペンサの全ての部分については、銀、銀塩、その他の銀化合物、ステンレス鋼および金属もしくは塩の形態またはこれらの化合物としてのこれらのナノマー、またはプラスチックなどの、病原菌と相互作用する能力のあるいかなる材料をも用いることができることは、注目すべきである。
【0035】
一方、閉じたシステム内で用いられる材料および構成要素は、いかなる微量作用活性物質をも含まないものであってもよい。
【0036】
本発明の定量ポンプは、空気圧補償なしで動作する。すなわち、動作の最中に、空気の流入により、容器9内において、圧力補償が起こることはない。そのため、空気による病原菌または細菌の容器9または閉じたシステムへの侵入が、防止される。
【0037】
本発明の定量ポンプは以下のように動作する。使用者がキャップ3を取り外し、操作プランジャ2を第2のポンプ本体部5内に押し込むように押すと、ばね29の力に対抗するピストン19の対応した運動が同時に起こる。これにより、ボール28がより強く弁座27に押し付けられ、定量ポンプの以前の動作の際に、内部空間32および貫通孔20に吸い込まれていた液体10に圧力が加わる。この圧力は、出口弁22のピストン弁21を、ばね23の力に反して移動させて、出口通路25への接続部を開き、正確に測定された量の液体10を、吐出開口部24を通して吐出する。ピストン19がその死点(dead centre position)に到達するとすぐに、内部空間32内および貫通孔20内の圧力が非常に低下するので、出口弁22が閉じて入口弁26が開き、そのため、液体10が容器9から吸い取られる。その後、入口弁26が再び閉じる。その後すぐに、使用者は、キャップ3を再びプランジャ2上に置き、それによって、吐出開口部24を閉じる。
【0038】
吐出開口部24、出口通路25内および貫通孔20内、ならびに内部空間32内および入口弁29内に残留している液体は、様々な場所と接触し、そしてそこで、微量作用の殺菌物質が、流体と接触する。
【0039】
無菌流体で満たされた容器9は、プラスチック材料などの可撓性材料で形成されていてもよい。場合によっては、装置の最終的な用途に応じて、容器9は、外側部分および無菌流体用の貯蔵部としての内側袋を含む少なくとも2つの袋を備えたシステムから構成されていてもよい。
【0040】
好ましい実施形態においては、容器9は、外側容器および流体10が入った内側容器からなる。内側容器は、可撓性材料で形成され、また、該内側可撓性容器は、定量ポンプの動作のたびに、流体10が吸い出される際の可撓性容器内部の圧力を補償するために収縮する。そのため、可撓性容器内での圧力補償が、内側可撓性容器内に空気を流入することなく達成される。好ましくは、外側容器は、流体ディスペンサの使用者が、流体ディスペンサを適切に持ち、また、定量ポンプを操作できるようにするために、非可撓性材料で形成される。さらに、外側容器によって、内側可撓性容器を破壊から保護することができる。定量ポンプの動作の際に、内側可撓性容器が収縮できるようにし、また、2つの容器間の陰圧を回避するために、外側容器に少なくとも1つの小さな開口部が設けられる。
【0041】
上記に説明したシステムを用いれば、容器内への空気の流入が防止される。さらに、定量ポンプの動作のたびに、内側可撓性容器は収縮し、すなわちその容積が減少する。これは、定量ポンプの入口開口部15と、流体10の常時の接触をもたらす。そのため、流体ディスペンサの向きとは無関係に、すなわち使用者の流体ディスペンサの持ち方とは無関係に、入口開口部15を介して、流体10を吐出することができる。これは、流体ディスペンサの360°の使用、すなわち直立、真っ逆さま、または、その他のあらゆる位置において、流体ディスペンサの操作を可能とする。
【0042】
さらに、容器9内に含まれる、汚染除去手段33以外で操作プランジャ2とポンプ本体4とを含む構成部品の大半は、コストおよび製造の点での認知されている利点から、プラスチック材料などの可撓性材料で形成してもよい。ばね23および29のような他の強化用または耐荷重用の構成部品については、プラスチック材料は、容器9の使用寿命にわたって、ばねの完全性を維持するのに十分な強度を有していなければならない。さらに、バルブボール28、入口弁26および出口弁22のような磨耗性の構成部品の場合は、プラスチック材料は耐摩耗性プラスチック材料でなければならない。また、上述のように、汚染除去手段33は、微量作用活性物質で被覆されたプラスチック材料で形成してもよい。
【0043】
本発明の1つの実施形態は、吐出開口部23を被覆および封止するためにキャップ3を含む流体ディスペンサを提供する。キャップ3には、ピン3aと孔部3bが設けられている。ピン3aは、ヘッド16に位置する吐出開口部24にはまる。孔部3bは、通気手段として機能する。この孔部3bを通して空気を送ることによって、使用後に残留している過剰な流体が蒸発できるようになり、そのため、汚染に対するより一層の保護が得られる。
【0044】
本発明による流体ディスペンサは、微量のあらゆる種類の液体、好ましくは液体状医薬品組成物を分配するのに申し分ないものである。本発明の好適な実施形態においては、流体ディスペンサは、眼薬(ophthalmicum)または鼻薬(nasalium)などの液体状医薬品組成物を分配する(suspensing)のに用い得る。さらなる適用例は、医療機器または化粧品として用いられる流体である。本発明による流体ディスペンサは、最終用途に応じて、いかなる大きさで利用し得る。
【0045】
1つまたはそれ以上の実施形態に関連して、本発明を説明してきたが、説明してきた具体的な機構および技術は、単に本発明の原理を説明するのに役立つものであり、説明してきた方法および装置に対しては、添付の請求項によって規定されるような本発明の精神および範囲を逸脱することなく、数多くの変更を成し得る。
【実施例1】
【0046】
微生物学的試験:培地充填試験および色素試験によって、流体ディスペンサの微生物学的安全性を確認した。これらの試験は、システムの気密性および流体ディスペンサの開口部の保護を評価することに焦点を当てた。流体ディスペンサの開口部は、開口部の領域の設計によって、微生物学的成長から保護された。毛細管の長さのみならず、先端領域の形状および小さな直径によって、微生物がより流体ディスペンサに入りにくくなると考えられる。微生物による汚染が及びにくいように設計された出口弁の位置および出口部におけるデッドボリュームの構成によって、抗菌効果は、特に達成される。流体ディスペンサの被覆キャップに、湿気が蒸発する孔部があってもよい。加えて、いかなる残留危険性をも低減させるために、流体ディスペンサの開口部の直後に、銀のらせん体を配置した。金属の銀は微量作用効果を発揮した。
【実施例2】
【0047】
使用試験:流体ディスペンサの使用中の利用を模擬するために、日常使用シミュレーション微生物負荷検査(simulated daily use microbial challenge study)を実施した。目的は、過酷な使用の後に、微生物が流体ディスペンサ内に導入されているかどうかを決定することであった。流体ディスペンサから液滴を分配することにより、典型的に消費者が遭遇する微生物について調べた。また、液滴は、流体ディスペンサの先端に置かれた。試験期間の最後に、貯蔵部の無菌性について調べた。使用検査の結果は、ディスペンサの日常使用シミュレーション中に、流体ディスペンサの貯蔵部への試験微生物の侵入はなかったことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の流体ディスペンサは、医薬品、化粧品および医療機器などののような様々な分野における液体の微量を分配するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の1つの実施形態の長手方向断面を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 ポンプ本体
2 操作プランジャ
3 キャップ
3a ピン
3b 孔部
6 中空シリンダ
7 管状フランジ
9 容器
10 流体
11 封止部
12 遷移部
14 円筒形弁部
15 入口開口部
16 ヘッド
17 外側中空円筒形部
18 内側中空円筒形部
19 ピストン
20 貫通孔
21 ピストン弁
22 出口弁
23 ばね
24 吐出開口部
25 出口通路
26 入口弁
27 弁座
28 ボール
29 ばね
30 突出部
32 内部空間
33 汚染除去手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなる供給容器に入れられた流体のための入口開口部と、前記液体を分配するための、かつ、その内部に前記流体と接触する少なくとも1つの微量作用活性物質を有する、吐出開口部とを接続する貫通路、
空気圧補償なしで動作し、これにより、動作中に空気の流入を通して容器内で圧力補償が起こることがない定量ポンプであって、該ポンプは、前記流体と接触するばね手段と、前記入口開口部を閉じるための入口弁と、出口弁とを含む定量ポンプ、および
前記出口弁から前記吐出開口部へとつながる前記貫通路の一部である出口通路、
を含む無菌流体用流体ディスペンサであって、
ここで、銀、銀塩、その他の銀化合物、合金および金属または塩の形態あるいはこれらの化合物としてのこれらのナノマーからなる群から選択される微量作用物質を介して、病原菌と相互作用する能力を有する材料を含む汚染除去手段が前記出口通路の上部に設けられた無菌流体用流体ディスペンサ。
【請求項2】
前記入口弁および/または前記ばね手段が、病原菌と相互作用する能力を有する材料を含んでいる請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項3】
前記材料が、銀、銀塩、その他の銀化合物、ステンレス鋼、および、金属または塩の形態のいずれか、あるいはこれらの化合物としてのこれらのナノマーからなる群から選択されている請求項2に記載の流体ディスペンサ。
【請求項4】
前記ステンレス鋼が、クロム、ニッケル、モリブデン、銅、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブおよびタンタルからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含み、残部は主成分としての鉄である請求項3に記載の流体ディスペンサ。
【請求項5】
前記貫通路が、少なくとも前記入口弁の領域において、常に前記流体で満たされている請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項6】
前記微量作用活性物質が、前記吐出開口部を覆うために、前記流体ディスペンサの上にはめることができるキャップの内側に設けられている請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項7】
前記キャップにピンおよび孔部が設けられている請求項6に記載の流体ディスペンサ。
【請求項8】
前記ピンが、前記ヘッドに位置される前記吐出開口部にはめ込まれる請求項7に記載の流体ディスペンサ。
【請求項9】
前記入口弁が、閉鎖部材と協働する弁座をさらに含み、ここで、該弁座に、前記微量作用活性物質が設けられている請求項2に記載の流体ディスペンサ。
【請求項10】
前記出口弁が、閉鎖部材と協働する弁座をさらに含んでいる請求項2に記載の流体ディスペンサ。
【請求項11】
前記入口弁がボール弁であり、かつ、前記入口弁の閉鎖部材と協働する弁筐体が設けられ、該弁筐体に、前記材料が設けられている請求項2に記載の流体ディスペンサ。
【請求項12】
前記出口弁がピストン弁であり、かつ、前記出口弁の閉鎖部材と協働する弁筐体が設けられている請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項13】
前記汚染除去手段が、円形状の材料からなる請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項14】
前記汚染除去手段が、環状体である請求項13に記載の流体ディスペンサ。
【請求項15】
前記汚染除去手段が、らせん体である請求項13に記載の流体ディスペンサ。
【請求項16】
前記汚染除去手段が、被覆材である請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項17】
前記材料は、その中に、前記微量作用活性化合物が埋め込まれたコランダムである請求項13に記載の流体ディスペンサ。
【請求項18】
前記材料が銀である請求項13に記載の流体ディスペンサ。
【請求項19】
医薬品、化粧品、および医療機器の分野において、微量の液体を分配するための請求項1に記載の流体ディスペンサの使用方法。
【請求項20】
前記液体が局所的に塗布される請求項19に記載の使用方法。
【請求項21】
前記液体が眼薬または鼻薬である請求項20に記載の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−175199(P2006−175199A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−101630(P2005−101630)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503194299)ウルザファルム・アルツナイミッテル・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】URSAPHARM ARZNEIMITTEL GMBH & CO.KG
【Fターム(参考)】