説明

流体ポンプ装置用斜板機構

流体供給装置は、ハウジングと、往復動ピストン式流体ポンプと、一次駆動部と、斜板機構と、噴霧ノズル部とを備える。往復動ピストン式流体ポンプは、ハウジングの内部のポンプチャンバ内に配設されたピストンを有する。一次駆動部は、ハウジングに組み込まれて回転入力を生成する。斜板機構は、一次駆動部を往復動ピストン式流体ポンプに連結し、回転入力をピストンへの往復動入力に変換する。噴霧ノズル部は、ポンプチャンバの出口に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給システムに関する。特に、本発明は、塗料スプレーヤ用のポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレーヤは、建築物及び家具等々の表面の塗装において使用するものとしてよく知られており、普及している。エアレス塗料スプレーヤは、液体塗料を微細に霧化することが可能であるため、一般的なスプレーヤシステムの中でも最高品質の仕上がりを実現する。特に、エアレス塗料スプレーは、3,000psi(ポンド/平方インチ)(約20.7MPa)超まで液体塗料を加圧し、小さな成形孔を通してこの塗料を排出する。しかし、典型的なエアレススプレーヤシステムは、このような高い圧力を生じさせるために、電気モータ、ガソリンモータまたは空気圧縮機などの大型の定置式動力ユニット、及び大型の定置式ポンプユニットを必要とする。動力ユニットは、5ガロン(約18.9リットル)サイズのバケットなどの定置式塗料供給源、及びスプレーガンに接続される。一般的に立設ユニットと呼ばれるこれらのユニットは、高耐久性構造、多数の構成要素、及び莫大な製造コストにより、非常に高価であるが、高品質の仕上がりが求められる大面積の塗装に非常に適している。
【0003】
また、定置式の立設ユニットシステムを配置することが望ましくないかまたは不可能である比較的小さな面積を塗装することも求められている。例えば、初めに立設ユニットで塗装された領域と同様の仕上げを修正領域や装飾領域にも施すことが望ましい。様々なタイプの手持ち式スプレーヤシステム及び手持ち式スプレーヤユニットが、かかる事情に対応するように開発されてきた。例えば、一般的にバズガン(buzz gun)またはカップガン(cup gun)と呼ばれるものは、電源コンセントに接続することで電気的に動力が供給される手持ち式の小型装置を備える。例えば、いくつかの手持ち式ユニットは、ウイリアムス(Williams)による特許文献1及びドリューズ・ジュニア(Drewes, Jr.)による特許文献2にそれぞれ記載されるように、クランク・ロッド機構またはべベルギヤ機構を使用して駆動されるピストンポンプを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,488,789号
【特許文献2】米国特許第2,629,539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのポンプ装置は、多数の複雑なパーツを有し、これらのパーツにより、手持ち式ユニットの製造コスト及び製造サイズが、実現可能な範囲を超えて増大する。
従って、とりわけエアレススプレーヤの製造費用を低減させるポンプ装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハウジングと、往復動ピストン式流体ポンプと、一次駆動部と、斜板機構と、噴霧ノズルとを備える流体供給装置を対象とする。往復動ピストン式流体ポンプは、ハウジングの内部のポンプチャンバ内に配設されたピストンを有する。一次駆動部は、ハウジングに組み込まれて、回転入力を生成する。斜板機構は、一次駆動部を往復動ピストン式流体ポンプに連結して、回転入力をピストンへの往復運動入力に変換する。噴霧ノズル部は、ポンプチャンバの出口に連通する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の斜板機構を備えるエアレス流体供給装置の主要構成要素のブロック図である。
【図2】図1のエアレス流体供給装置の実施形態として、手持ち式スプレーヤを示す側面側の斜視図である。
【図3】ハウジング、噴霧ノズル組立体、液体容器、ポンプ機構、斜板機構、及び駆動部を示す、図2の手持ち式スプレーヤの分解図である。
【図4】図3のポンプ機構、斜板機構、及び駆動部の分解図である。
【図5】図4の駆動部及びポンプ機構と共に使用されるハブ・コネクティングロッド機構を支持するピンを有した斜板機構の斜視図である。
【図6A】コネクティングロッドが前進位置に位置するときの、図5の斜板機構の断面図である。
【図6B】コネクティングロッドが後退位置に位置するときの、図5の斜板機構の断面図である。
【図7】組み付けられた状態のポンプ機構、斜板機構、及び駆動部の断面図である。
【図8】図3の噴霧ノズル組立体のバルブユニットの垂直方向断面図である。
【図9】図8のバルブユニットの水平方向断面図である。
【図10A】本発明の斜板機構が使用される、立設ユニット式エアレススプレーシステムの斜視図である。
【図10B】本発明の斜板機構が使用される、立設ユニット式エアレススプレーシステムの分解図である。
【図11】切欠形状を有するコネクティングロッドを備え、図10A及び図10Bのシステムにおいて使用される斜板機構の斜視図である。
【図12】コネクティングロッド機構を支持するピン・ハブアセンブリを有した斜板機構の断面図である。
【図13】ドエル・コネクティングロッド機構を支持するハブ端部を有した斜板機構の断面図である。
【図14】一体的に組み込まれた2組の軸受を介して2つのピストンを駆動する構成のコネクティングロッド機構を支持する一体成形シャフト・ハブを有した斜板機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明のエアレス流体供給装置10のブロック図である。図示した実施形態において、エアレス流体供給装置10は、ハウジング12、噴霧ノズル組立体14、液体容器16、ポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22を備える。エアレス流体供給装置10として構成されたスプレーガン10は、エアレス供給システムからなり、ポンプ機構18が、液体容器16から液体を引き出し、駆動部20からの動力により液体を加圧して、噴霧ノズル組立体14を介して霧化する。本発明の種々の実施形態において、噴霧ノズル組立体14、液体容器16、ポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22は、定置式または可搬式のスプレーシステム内に共に組み込まれる。例えば、液体容器16は、ハウジング12から分離され、ホースを介して噴霧ノズル組立体14、ポンプ機構18、及び駆動部20に接続されてもよい。別の実施形態として、噴霧ノズル組立体14がハウジング12から分離され、ホースを介して液体容器16、ポンプ機構18、及び駆動部20に接続され、図10A及び図10Bに図示するような立設ユニット式システムを形成することが可能である。図2に示すように、噴霧ノズル組立体14、液体容器16、ポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22は、ハウジング12に直に設置し、一体型手持ち式スプレーガン装置を構成することも可能である。開示する実施形態において、ポンプ機構18は、往復動ピストン式ポンプを備え、駆動部20は、本発明の斜板機構22を介してポンプ機構18を駆動する電気モータを備える。
【0009】
図2は、ハウジング12、噴霧ノズル組立体14、及び液体容器16を有するスプレーガン10の側面側の斜視図である。ポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22(図1)は、ハウジング12内に配設されている。スプレーガン10は、圧力リリーフバルブ23、トリガ24、及びバッテリ26をさらに備える。噴霧ノズル組立体14は、保護部材28、噴霧ノズル部30、及び接続部材32を備える。ハウジング12は、一体型ハンドル34、容器蓋36、及びバッテリ接続ポート38を備える。
【0010】
液体容器16にはスプレーガン10から噴霧されることとなる液体が入れられている。例えば、液体容器16は塗料またはワニスで充填されており、この塗料またはワニスは、液体容器16と蓋36との連結によって噴霧ノズル組立体14まで送られる。バッテリ26は、バッテリ接続ポート38に差し込まれて、ハウジング12内の駆動部20に電力を供給する。トリガ24は、バッテリ26及び駆動部20に電気的に接続されており、トリガ24を操作することにより、電力がポンプ機構18に供給される。トリガ24は、ピストルグリップタイプのハンドルからなるハンドル34内に配設されている。ポンプ機構18は、流体容器16から液体を汲み出し、加圧した液体を噴霧ノズル組立体14に供給する。接続部材32は、ハウジング12の出口ポートにて噴霧ノズル組立体14をポンプ機構18に結合する。保護部材28は、接続部材32に連結されており、物体が噴霧ノズル部30から噴射される高速液体に接触するのを防ぐ。噴霧ノズル部30は、保護部材28及び接続部材32内のボアに挿入され、ポンプ機構18からの加圧液体を受ける噴霧オリフィスを有する。ポンプ機構18には、駆動部によって斜板機構22を介して動力が供給される。噴霧ノズル組立体14は、十分に霧化された液体の流動を生成して、高品質の仕上がりを実現する。圧力リリーフバルブ23は、ポンプ機構18に接続されて、ポンプ機構を大気圧に開放する。
【0011】
図3は、ハウジング12、噴霧ノズル組立体14、液体容器16、ポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22を有するスプレーガン10の分解図である。スプレーガン10は、圧力リリーフバルブ23、トリガ24、バッテリ26、クリップ40、スイッチ42、及び回路基板44をさらに備える。噴霧ノズル組立体14は、保護部材28、噴霧ノズル部30、接続部材32、及びバレル46を備える。ポンプ機構18は、吸い込み管48、リターン管路50、及びバルブユニット52を備える。駆動部20は、モータ54及びギヤ機構56を備え、このギヤ機構56は、斜板機構22に連結されている。ハウジング12は、一体型のハンドル34、液体容器用の蓋36、及びバッテリポート38を備える。
【0012】
ポンプ機構18、駆動部20、斜板機構22、ギヤ機構56、及びバルブユニット52は、ハウジング12内に設置され、種々のブラケットにより支持される。例えば、ギヤ機構56及び斜板機構22はブラケット60を備え、このブラケット60は、締結部材64を使用してポンプ機構18のブラケット62に連結される。バルブユニット52はブラケット62内に螺合され、噴霧ノズル部30の接続部材32はバルブユニット52に螺合される。噴霧ノズル部30、バルブユニット52、ポンプ機構18、及び駆動部54は、リブ66によりハウジング12内に支持される。スプレーガン10の別の実施形態においてハウジング12は、図11〜図14に図示するように、ブラケット60を使用せずに、ギヤ機構56及び斜板機構22を直接的に支持するためのリブまたは他の指示構造を備えている。トリガ24がハウジング12において人間工学的に適切な位置に位置決めされるように、スイッチ42はハンドル34の上方に配置され、回路基板44はハンドル34の下方に配置される。スイッチ42は、駆動部20に接続するための端子を備え、バッテリ26は、回路基板44と接続するようにハウジング12のポート38によって支持される。具体的な実施形態として、回路基板44は、駆動部20に供給される電圧を制御して、ポンプ機構18からの流量を変化させるようにプログラムされる。バッテリ26は、リチウムバッテリ、ニッケルバッテリ、リチウムイオンバッテリ、または任意の他の適切な充電式バッテリで構成することができる液体容器16は、ハウジング12の蓋36に螺合される。吸い込み管48及びリターン管路50は、ポンプ機構18から液体容器16内に延在する。クリップ40により、スプレーガン10を作業者のベルトに適切に装着したり、保管ラックなどの上に適切に収めることが可能になる。
【0013】
スプレーガン10を動作させるために、液体容器16には、噴霧ノズル部30から噴霧されることとなる液体が充填される。トリガ24が作業者により操作されると、駆動部20が起動する。駆動部20は、バッテリ26から電力を引き出し、ギヤ機構56に連結されたシャフトを回転させる。ギヤ機構56は、斜板機構22に、ポンプ機構18の駆動運動を生じさせる。具体的には、斜板機構22が、駆動部20の回転動力をポンプ機構18のための往復動力に変換する。
【0014】
ポンプ機構18は、吸い込み管48を使用して液体容器16から液体を汲み出す。ポンプ機構18が処理できない余剰液体は、起動バルブ23及びリターン管路50を介して液体容器16に戻される。ポンプ機構18からの加圧液体は、バルブユニット52に供給される。加圧液体の圧力がしきい値圧力レベルに達すると、バルブユニット52が開弁し、加圧液体が噴霧ノズル部30のバレル46内に流入可能となる。バレル46は噴霧オリフィスを備え、この噴霧オリフィスは、液体が噴霧ノズル部30及びスプレーガン10から放出される際に加圧液体を霧化する。バレル46は、保護部材28から取り外すことが可能な着脱式噴霧ノズルチップか、または保護部材28内において回転する開閉式噴霧ノズルチップのいずれかを備えていてもよい。
【0015】
図4は、図3のポンプ機構18、駆動部20、及び斜板機構22の分解図である。ポンプ機構18は、ブラケット62、締結部材64、流入バルブ組立体68、流出バルブ組立体70、第1ピストン72、及び第2ピストン74を備える。また、駆動部20は、駆動シャフト76、第1ギヤ78、第1ブッシュ80、第2ギヤ82、シャフト84、第2ブッシュ86、第3ブッシュ88、第3ギヤ90、第4ブッシュ92、及び第4ギヤ94を備える。斜板機構22は、コネクティングロッド96、軸受機構98、ピン100、ハブ101、及びスリーブ102を備える。第1ピストン72は、第1ピストンスリーブ104及び第1ピストンシール106を備える。第2ピストン74は、第2ピストンスリーブ108及び第2ピストンシール110を備える。流入バルブ組立体68は、第1バルブカートリッジ112、シール114、シール116、第1バルブステム118、及び第1スプリング120を備える。流出バルブ組立体70は、第2バルブカートリッジ122、バルブシート124、第2バルブステム126、及び第2スプリング128を備える。
【0016】
駆動シャフト76は、駆動部20が作動すると第1ギヤ78が回転するように、第1ブッシュ80内に挿入されている。本発明の種々の実施形態において、第1ブッシュ80及び第1ギヤ78は、単体の構成要素として一体的に形成される。第2ブッシュ86及び第3ブッシュ88は、ブラケット60内の受容孔内に挿入され、シャフト84が、第2ブッシュ86及び第3ブッシュ88内に挿入されている。第2ギヤ82は、シャフト84の第1端部に連結されて第1ギヤ78と噛合し、第3ギヤ90は、シャフト84の第2端部に連結されて第4ギヤ94と噛合する。本発明の種々の実施形態において、第2ギヤ82、シャフト84、第3ギヤ90、及び第4ブッシュ92は、単体の構成要素として一体的に形成される。スリーブ102は、ブラケット62内の受容孔内に挿入されており、ピン100が、スリーブ102内に挿入されて斜板機構22を支持する。斜板機構22は、製造及び組立の容易ないくつかの構成要素を使用して、駆動部20とポンプ機構18との間の動力伝達を実現する。
【0017】
軸受機構98は、コネクティングロッド96にピン100を連結する。コネクティングロッド96は、第1ピストン72と結合されている。第1ピストン72及び第2ピストン74は、ブラケット62内のポンプチャンバ内に設置される第1ピストンスリーブ104及び第2ピストンスリーブ108内にそれぞれ挿入されている。第1ピストンシール106及び第2ピストンシール110は、ポンプチャンバをシールする。締結部材64は、ブラケット62及びブッシュ130中のボアを貫通して挿入され、ブラケット60に螺合している。第1バルブカートリッジ112は、ブラケット62中の受容孔内に挿入されている。第1スプリング120は、第1バルブカートリッジ112に向けて第1バルブステム118を付勢する。同様に、第2バルブカートリッジ122は、第2スプリング128がブラケット62に向けて第2バルブステム126を付勢するように、ブラケット62中の受容孔内に挿入されている。第1バルブカートリッジ112及び第2バルブカートリッジ122は、第1バルブステム118及び第2バルブステム126を容易に交換することが可能となるように、ブラケット62から取外し可能である。シール114及び116は、液体が流入バルブ組立体68から外に漏れるのを防ぎ、バルブシート124は、液体が流出バルブ組立体70から外に漏れるのを防ぐ。圧力リリーフバルブ23は、第1ピストン72及び第2ピストン74からの液体の流動と交差するようにブラケット62中の受容孔内に挿入されている。
【0018】
図5は、図4の斜板機構22の斜視図を示す。斜板機構22は、ピン100を備え、このピン100に、ハブ101、軸受機構98、コネクティングロッド96、及び第4ギヤ94が装着されている。斜板機構22は、駆動部20とポンプ機構18との間の連結を可能にする。第1ピストン72は、玉継手機構または凹凸嵌合機構によりコネクティングロッド96に連結される。斜板機構22は、駆動部20による軸回転を第1ピストン72の往復運動に変換する。図6A及び図6Bにわかり易く例示するように、第4ギヤ94を介したピン100の回転は、この回転軸に対して傾斜した回転軸を有する表面を有するランド132を介し、コネクティングロッド96の揺動を発生させる。ピン100及びハブ101は、図6A及び図6Bに示されるように、コネクティングロッド96用のシャフトを形成するように構成される。図12は、ピン・ハブシャフト組立体の代替的な構成を示している。本発明の種々の実施形態として、シャフトは、図13に図示するように、ハブ・ドエル構成体から構成することが可能である。さらに別の実施形態においては、シャフトは、図14に図示するように、単体の部材として一体的に形成される。
【0019】
図6Aは、コネクティングロッド96が前進位置に位置した状態の、図5の斜板機構22の断面図である。また図6Bは、コネクティングロッド96が後退位置に位置した状態の、図5の斜板機構22の断面図である。斜板機構22は、第4ギヤ94、コネクティングロッド96、軸受機構98、ピン100、ハブ101、スリーブ102、及びブッシュ134を備える。ハブ101は、ランド132、ブッシュ取付座135、揺動用取付座136、及びギヤ取付座137を備える。並行して論じられる図6A及び図6Bは、回転運動を受けたときにランド132により生じる往復運動を例示する。ピン100は、第1の端部がスリーブ102によって支持され、スリーブ102は、ポンプ機構18のブラケット62内に支持される。ピン100は、ハブ101を貫通して第2の端部がブッシュ134によって支持され、ブッシュ134は、ブラケット60内に支持される。スリーブ102及びブッシュ134は、ピン100の回転を容易にする軸受を構成する。他の実施形態として、ころ軸受などの他のタイプの軸受を使用してもよい。ハブ101は、ピン100の周囲に配設され、ブッシュ134用のブッシュ取付座135、第4ギヤ94用のギヤ取付座137、及びランド132を備える。ランド132は、コネクティングロッド96用の揺動用取付座136を備える。コネクティングロッド96は、第1ピストン72内の受け口部内に配設されるボール部138と、ヨーク139とを備える。
【0020】
軸受機構98は、アウターレース98A、インナーレース98B、及び軸受セット98Cを備える。アウターレース98Aは、ヨーク139の内面に隣接する。インナーレース98Bは、揺動用取付座136の外面に隣接する。アウターレース98A及びインナーレース98Bの中には、半球形状溝またはV字型溝などの溝が設けられ、この溝内に軸受セット98Cが配設される。軸受セット98Cは、アウターレース98Aとインナーレース98Bとの間で転がるように構成された複数の軸受ボールを備える。アウターレース98A、インナーレース98B、及び軸受セット98Cは、軸受機構98として事前に組み立てられるような1つの集合体を構成する。次いで、軸受機構98が揺動用取付座136の周囲に圧入され、ヨーク139が軸受機構98の周囲に圧入可能となる。他の実施形態として、軸受機構は、図14に図示するものと同様に、コネクティングロッド96及びランド132内に一体的に組み込むこともできる。
【0021】
第4ギヤ94は、ランド132及びピン100を回転させ、ランド132及びピン100は、スリーブ102及びブッシュ134内で回転する。揺動用取付座136は、ハブ101及びピン100の回転中心軸線からある角度だけ偏移または傾斜された軸線を中心として旋回する表面を有した円筒状の構造を備える。ハブ101が旋回すると、ランド132の中心軸線は、ピン100の中心軸線を周回して円錐状の軌道を描く。軸受機構98は、揺動用取付座136の中心軸線と直交する平面に配設される。そのため、軸受機構98は、ピン100の中心軸線と直交する平面に対して波状運動する、すなわち揺動する。コネクティングロッド96は、軸受機構98の径方向外側端部に連結されるが、ボール部138によってピン100を中心とした回転が阻止される。ボール部138は、第1ピストン72に連結され、第1ピストン72は、ブラケット62中のピストンシート内に配設されていて回転が阻止される。但し、ボール部138は、軸受機構98が揺動する際に、軸方向に移動することが許容されている。従って、揺動用取付座136の回転運動により、ボール部138の直線運動が生じ、ポンプ機構18が駆動される。
【0022】
図7は、駆動部20に組み付けられたポンプ機構18の断面図である。駆動部20は、バッテリ26からの電気入力を受け取るDC(直流)モータなどの、駆動シャフト76の回転を生じさせるための機構またはモータを備える。他の実施形態として、駆動部は、電源コンセントにプラグを接続することにより電気入力を受け取るAC(交流)モータ、または入力として圧縮空気を受け取る空気圧モータを備えてもよい。第1ギヤ78は、駆動シャフト76に嵌め込まれており、第1ブッシュ80により定位置に保持される。第1ブッシュ80は、止めねじまたは別の適切な手段を使用して駆動シャフト76に固定されている。
【0023】
第1ギヤ78は、第2ギヤ82に噛合し、第2ギヤ82は、シャフト84に連結されている。シャフト84は、第2ブッシュ86及び第3ブッシュ88によりブラケット62内に支持されている。第3ギヤ90は、シャフト84の縮径部に配設され、第4ブッシュ92を使用して定位置に固定されている。第4ブッシュ92は、止めねじまたは別の適切な手段を使用してシャフト84に固定されている。第3ギヤ90は、第4ギヤ94と噛合してピン100を回転させる。ピン100は、スリーブ102及びブッシュ134によってブラケット62及び60内にそれぞれ支持される。第1ギヤ78、第2ギヤ82、第3ギヤ90、及び第4ギヤ94は、駆動部20により与えられる入力を減速してピン100へ入力する減速ギヤ機構を形成する。使用するポンプ機構のタイプ及び使用する駆動部の形式に応じ、ポンプ機構18の所望の動作を生じさせるために必要な様々なサイズのギヤ及び減速ギヤ機構を設けることが可能である。
【0024】
図6A及び図6Bに関して述べたように、ピン100の回転により、コネクティングロッド96のボール部138の直線運動が引き起こされる。ボール部138は、第1ピストン72の受け口部140に機械的に連結されている。従って、コネクティングロッド96は、前進位置及び後退位置のそれぞれに第1ピストン72を直接的に駆動する。第1ピストン72は、ブラケット62中の第1ピストンスリーブ104内において前進及び後退する。第1ピストン72が、前進位置から後退する際に、液体が、流入バルブ組立体68内に引き込まれる。流入バルブ組立体68は、吸い込み管48が接続される管部142を備える。吸い込み管48は、液体容器16の内部の液体内に浸漬されている(図3)。液体は、第1バルブステム118の周囲及び流入口146を通過してポンプチャンバ144内に引き込まれる。第1バルブステム118は、第1スプリング120により第1バルブカートリッジ112に向けて付勢されている。シール116は、第1バルブステム118が閉じているときに、第1バルブカートリッジ112と第1バルブステム118との間における液体の通過を阻止する。シール114は、第1バルブカートリッジ112とブラケット62との間の液体の通過を阻止する。第1バルブステム118は、第1ピストン72により引き起こされる吸引力により第1バルブカートリッジ112から引き離される。第1ピストン72が前進すると、ポンプチャンバ144内の液体は、流出口148を通り、流出バルブ組立体70の方向に押し出される。
【0025】
ポンプチャンバ144内で加圧された液体は、流出バルブ組立体70の第2バルブステム126の周囲を経由して圧力チャンバ150内に押し込まれる。第2バルブステム126は、第2スプリング128によりブラケット62に向けて付勢されている。バルブシート124は、第2バルブステム126が閉じているときに、第2バルブステム126とブラケット62との間における液体の通過を阻止する。第1ピストン72が前進位置に向けて移動する際、第1スプリング120及び第1ピストン72により生じる圧力が流入バルブ組立体68を閉じるので、第2バルブステム126は、ブラケット62から引き離される。ポンプチャンバ144からの加圧液体が、第2バルブカートリッジ122とブラケット62との間のスペースからなる圧力チャンバ150内及びポンプチャンバ152内に充填される。そして加圧液体は、後退位置へと第2ピストン74を押しやる。第2バルブカートリッジ122は圧力チャンバ150の容積を低減させ、それにより、ポンプ機構18内に貯蔵される液体が減少すると共に、ポンプ機構18を通過する液体の速度が上昇し、ポンプ機構18の洗浄効果を高める。ポンプチャンバ144の容積及び第1ピストン72の変位は、第2ピストン74の変位及びポンプチャンバ152の容積よりも大きい。そのため、第1ピストン72の1度のストロークにより、ポンプチャンバ152を満たすと共に、圧力チャンバ150が加圧液体で充填された状態に維持するのに十分な液体が供給される。さらに、第1ピストン72は、ブラケット62の流出口154から加圧液体を押し出す上で十分な行程容積を有する。大きなピストン1つだけで吸入を行うことにより、小さなピストン2つで行う吸入よりも吸入性能が向上する。別の実施形態においては、第1ピストン72及び第2ピストン74のそれぞれが、液体容器16から液体を直接的に引き出して、圧力チャンバ150を加圧する。
【0026】
第1ピストン72が後退して、ポンプチャンバ144内にさらなる液体を引き込むと、第2ピストン74は、コネクティングロッド96のヨーク139の前側の面の上方部分により前方に押される。第2ピストン74は、ブラケット62中の第2ピストンスリーブ108内に配設されており、第2ピストンシール110は、加圧液体がポンプチャンバ152から漏出するのを防ぐ。第2ピストン74が前進すると、第1ピストン72によってポンプチャンバ152内に押し込まれた液体が排出される。この液体は、圧力チャンバ150内に押し戻され、ブラケット62の流出口154を通過する。その後、第1ピストン72によりポンプチャンバ152内に加圧液体が押し戻されることによって、第2ピストン74がポンプチャンバ152内において後退するので、スプリングによる戻り機構は必要ない。第1ピストン72及び第2ピストン74は、互いに位相のずれた状態で動作する。本実施形態においては、第2ピストン74は、第1ピストン72と180度位相がずれており、第2ピストン74が最前進位置に位置する場合に、第1ピストン72は最後退位置に位置する。位相のずれた動作により、第1ピストン72及び第2ピストン74は、協調し、スプレーガン10における振動を低減させながら、加圧液体を連続的に圧力チャンバ150に流動させる。圧力チャンバ150は蓄圧器として働き、流出口154に加圧液体が定常的に流動し、バルブユニット52及び噴霧ノズル組立体14(図3)への連続的な液体の流動を得ることが可能となる。
【0027】
図8は、バルブユニット52及び噴霧ノズル組立体14の垂直方向断面図である。図8と併せて参照する図9は、バルブユニット52及び噴霧ノズル組立体14の水平方向断面図である。バルブユニット52は、シリンダ156、キャップ158、ボールチップ160、シール162、ニードル164、スプリング166、シール168、スプリングダンパ170及び172、シール174、シール176、ストッパ178、流路180、ならびにフィルタ182を備える。噴霧ノズル組立体14は、保護部材28、接続部材32、噴霧ノズル部30を備え、噴霧ノズル部30は、バレル46、バルブシート184、及び噴霧オリフィス186を備える。
【0028】
バルブユニット52のシリンダ156は、ポンプ機構18のブラケット62内の受け口内に螺合している。シール168は、ブラケット62とシリンダ156との間における液体の漏れを防ぐ。スプリングダンパ172、スプリング166、及びスプリングダンパ170は、ニードル164の周囲に配置されており、フィルタ182は、ニードル164及びスプリング166の周囲に配置されている。ストッパ178は、シリンダ156内の軸方向ボア188内に挿入されている。ニードル164及びフィルタ182は、シリンダ156内に挿入され、ニードル164は、シリンダ156内の軸方向ボア188内に延在する。シール176は、シリンダ156内の軸方向ボア内に液体が漏れるのを防ぐ。フィルタ182は、キャップ158をシリンダ156に連結して、環状流路の形態で流路180をキャップ158の方向に延在させる。キャップ158は、シリンダ156の流路180内に挿入される。シール174は、シリンダ156とキャップ158との間における液体の漏れを防ぐ。シール162は、キャップ158内に挿入されて、ニードル164の一体型ボールチップ160を囲んでいる。接続部材32は、シリンダ156に螺合し、シール162をキャップ158と係合された状態に維持し、ニードル164をシリンダ156内に配設された状態に維持する。
【0029】
噴霧オリフィス186は、噴霧ノズル部30のバレル46内のボア190内に挿入されており、段部192に当接している。バルブシート184は、ボア190内に挿入され、噴霧オリフィス186を段部192に当接した状態に維持する。噴霧ノズル部30は、バルブシート184がニードル164と同一直線状に位置するように、キャップ158内の横方向ボア194内に挿入されている。ボールチップ160は、スプリング166によりバルブシート184に向けて付勢されている。バルブシート184は、ボールチップ160が係合することにより加圧液体が噴霧ノズル部30内に進入するのを防ぐように成形された表面を備える。保護部材28は、キャップ158の周囲に配置されている。
【0030】
トリガ24の操作などによりポンプ機構18が起動すると、加圧液体が流出口154に供給される。ポンプ機構18からの液体は、流出口154を通りバルブユニット52内に押し込まれる。この液体は、流路180を通過し、フィルタ182の周囲を通ってキャップ158に達する。キャップ158では、(図9に示されるように)加圧液体がキャップ158とニードル164との間の通路196を通過することが可能であり、これによりシール162とニードル164のランド198との間に至る。ランド198及びニードル164の前方に向く表面に対して作用する液体の圧力により、ニードル164がシリンダ156内において後退する。スプリング166は、スプリングダンパ170と172との間にて縮み、これにより、ポンプ機構18からの加圧液体の脈動が生じた際のスプリング166の振動が抑制される。ストッパ178は、ニードル164が過度に移動しないようにするものであって、シリンダ156に対するニードル164の衝撃を低減させる。ニードル164が後退した状態においては、加圧液体がシール162を通過してバルブシート184のボア200内に進入することが可能である。ボア200からの加圧液体は、噴霧オリフィス186によって霧化される。
【0031】
本発明の別の実施形態として、バルブユニット52は、PCT出願PCT/US2009/005740号において示され論じられるように、バルブシート184がシリンダ156内に一体化された組立体を備えてもよい。例えば、米国ミネソタ州ミネアポリス在のグラコミネソタ社(Graco Minnesota Inc.)より入手可能なクリーンショット(Cleanshot(商標))遮断弁などの圧力駆動型遮断弁を使用してもよい。かかる圧力遮断弁は、グラコミネソタ社を譲受人とする、ワインバーガー(Weinberger)らによる米国特許第7,052,087号において説明されている。本発明と共に使用するのに適した噴霧ノズル部には、グラコミネソタ社を譲受人とする、パイル(Pyle)らによる米国特許第3,955,763号において説明されているものなど、従来の噴霧ノズル部の構成が含まれる。
【0032】
図10Aは、本発明の斜板機構が使用される、立設ユニット式のエアレススプレーシステム202の斜視図である。エアレススプレーシステム202は、ハウジング204、スタンド206、スプレーヤ208、ポンプ機構210、吸い込み管212、及びスプレーチューブ214を備える。駆動部(図示せず)は、ハウジング204内に配設され、斜板機構(図示せず)を介してポンプ機構210に連結されている。スプレーヤ208は、スプレーチューブ214を用いてポンプユニット210に接続することが可能である。スタンド206は、吸い込み管212を液体容器内に位置させることができるように、液体容器の頂部に配置されるように構成されている。従って、駆動部及び斜板機構によりポンプ機構210を駆動することにより、容器からの液体が、スプレーヤ208による供給のために加圧される。
【0033】
図10Bは、図10Aの立設ユニット式のエアレススプレーシステム202の分解図である。エアレススプレーシステム202は、ハウジング204、スタンド206、ポンプ機構210、吸い込み管212、斜板機構215、及び駆動部216を備える。ハウジング204は、側方半部204A及び204B、ならびにハンドル204Cを備える。スタンド206は、液体容器の頂部の上に設置する、または液体容器の周囲に配設されるベース206Aと、ハウジング204に連結するためのネック206Bとを備える。ポンプ機構210は、ピストン217を備え、ピストン217は、受け口部218、圧力リリーフバルブ219、流出口ステム220、及びシリンダブロック222を備える。斜板機構215は、ピン224、ヨーク226及びボール227部を備えるコネクティングロッド225、ならびにギヤ228を備える。駆動部216は、モータ230、駆動シャフト232、ブッシュ234、及び駆動ブロック236を備える。
【0034】
流出口ステム220は、スプレーチューブ214(図10A)を介してスプレーヤ208に接続される。スプレーヤ208(図10A)は、図8及び図9に関連して説明したものと同様の噴霧ノズル組立体のバルブユニットを備える。本実施形態において、複数のチューブを備える吸い込み管212は、シリンダブロック222内の流入口ポートに接続されている。圧力リリーフバルブ219は、シリンダブロック222に接続され、流出口ステム220と流体的に連通状態にある。ピストン217は、シリンダブロック222内のピストンシリンダ内に挿入され、シリンダは、流入口ポート及び流出口ステム220と流体的に連通状態にある。斜板機構215は、駆動部216にピストン217を連結する。コネクティングロッド226のボール部227は、ピストン217の受け口部218と連結している。コネクティングロッド225は、駆動ブロック236内に延在するピン224の近傍に配設されている。ギヤ228は、ピン224に連結され、駆動部216により駆動される。駆動部216のモータ230は、駆動ブロック236と結合している。ブッシュ234は、駆動ブロック236内において駆動シャフト232を支持する。駆動シャフト232は、ギヤ228と噛合する歯を備える。従って、図6A及び図6Bに関連して説明したものと同様に、駆動シャフト232の回転によりピストン217の往復運動が生じる。
【0035】
図11は、図10A及び図10Bのシステムにおいて使用される斜板機構215の斜視図を示す。斜板機構215は、コネクティングロッド225を備え、コネクティングロッド225は、ヨーク226及びボール部227を備える。また、斜板機構215は、ピストンン217、ピン224、ギヤ228、及び駆動ブロック236を備える。ピン224は、駆動ブロック236から延在する。ランドを有するハブが、図6A及び図6Bと同様にピン224の上方に配設される。同様に、ヨーク226が嵌合する軸受機構が、ランドに配設される。駆動シャフト232(図10B)は、駆動ブロック236に形成された孔238を貫通して延在し、ギヤ228に係合している。先に説明したように、ピン224の回転により、ヨーク226が揺動して、ピストン217が往復動する。
【0036】
図11の実施形態において、ヨーク226は、ボール部227が配置される位置が切り欠かれている。具体的には、ヨーク226が、平坦な前面及び平坦な後面(図示せず)を有する環状の本体を備える。また、ヨーク226は、円弧状の外側面242及び円弧状の内側面(図示せず)を有する。円弧状の外側面242の一部は、切り欠かれ、即ち平坦に形成されて、面244を形成する。面244によってコネクティングロッド225の高さが低くなったことにより、ヨーク226がエアレススプレーシステム202(図10B)内のより小さな領域に適合可能となる。例えば、前方表面240の下方部分の高さが減少している。さらに、面244がピストン217の中心を均衡のとれた位置に移動する。具体的には、ボール部227の先端部が、前方表面240の周縁部位が切り欠かれずに完全に丸かった場合に当該周縁部があったであろう位置へと移動される。これにより、図7に示されるものと同様のボール部227によるピストン217の前進に加えて、前方表面240の上方部分を用いてピストンを前進させるときに、ヨーク226の往復動を安定化させることができる。
【0037】
図12〜図14は、図10A及び図10Bのエアレススプレーシステム202において使用するのに適した斜板機構の他の実施形態を示し、同様の特徴部及び構成要素は、同一の参照番号を有する。しかし、かかる斜板機構は、図2〜図4のスプレーガン10においても使用することができる。
【0038】
図12は、コネクティングロッド252及び軸受機構254を支持するピン248及びハブ250を備えた、斜板機構246の断面図である。斜板機構246は、ブッシュ256及び軸受258をそれぞれ使用してシリンダブロック222と駆動ブロック236との間にて支持されている。ブッシュ234は、駆動シャフト232がギヤ228に噛合するように、駆動ブロック236内でシャフト232を支持する。ピストン217は、シリンダブロック222内に配設されており、コネクティングロッド252のボール部227がピストン217の受け口部218に係合するように、ブッシュ260により支持されている。駆動シャフト232の回転により、ピン248及びハブ250が回転する。斜板機構246は、図6A及び図6Bの構成と同様のピン・ハブ構造を使用し、ハブ250は、軸受面、ギヤ面、及びブッシュ面を有するランドを備える。但し、ハブ250は貫通孔ではなく受け口を備えるため、ピン248はハブ250を貫通して延在しない。これにより、ピン248をハブ250と正確に同一軸線上に配列する必要がなくなるため、斜板機構246の容易な組立が可能となる。ピン248及びハブ250は共に、回転することによりコネクティングロッド252にピストン217を往復移動させるシャフトを構成する。
【0039】
図13は、斜板機構266の断面図である。この斜板機構266は、ハブ端部268、ハブ端部270、及びドエル272を備え、これらは、コネクティングロッド274及び軸受機構276を支持する。斜板機構266は、ブッシュ278及び軸受280をそれぞれ使用してシリンダブロック222と駆動ブロック236との間にて支持される。斜板機構266は、例えば斜板機構246と同様に機能するが、異なる構成部品から組み立てられる。具体的には、ハブ端部268及び270が、受け口282及び284をそれぞれ備え、これらの受け口がドエル272を受容する。受け口282及び284の中心軸線は、ハブ端部268及び270の回転軸から傾斜している。そのため、ダウエル272は、ピストン217を往復動させるための軸受機構276を支持するランドを構成する。図13の実施形態により、様々な製造技術及び組立技術を使用して斜板機構用のシャフトを作製することが可能となる。
【0040】
図14は斜板機構286の断面図である。この斜板機構286は、コネクティングロッド機構290を支持するシャフト288を備える。シャフト288は、ブッシュ292及び軸受294により中心軸線A1に沿って支持される。斜板機構286は、斜板機構246及び266と同様に機能するが、ハブ296及びランド298が一体化された一体成形シャフトから構成される。さらに、斜板機構286は、2つのピストン(ピストン300及びピストン302)がコネクティングロッドアセンブリ290により精密に駆動され、2組の軸受(軸受セット304及び軸受セット306)がコネクティングロッド機構290に一体的に組み込まれた一実施形態として例示されている。
【0041】
コネクティングロッド機構290は、ヨーク307、ボール部308、及びボール部310を備える。ヨーク307は環状構造を備え、ボール部308及び310がその外周面から延在する。ボール部308及び310は、ヨーク307の径方向において対向する位置にあり、ヨーク307の外周面において180度離れて位置している。ボール部308及び310は、受け口部312及び314にそれぞれ連結して、ピストン300及び302と結合している。ピストン300及び302は、中心軸線A2及びA3にそれぞれ沿ってシリンダブロック(図示せず)の内部のポンプチャンバ内に配設されている。また、ヨーク307は、軸受セット304及び306のためのレースが形成された内径表面を備える。これらのレースは、軸受セット304及び306の軸受ボールが中で転がることができるように成形された凹溝を備える。
【0042】
シャフト288は、軸受セット304及び306内に挿入されて、コネクティングロッド機構290を支持する。ハブ296は、軸受セット304及び306の軸受ボールのためのインナーレース溝を備える。これらのインナーレース溝は、ハブ296のランド298上に配設される。ランド298は、ヨーク307を通過して伸びる中心軸線A4に沿って指向されている。中心軸線A4は、シャフト288の中心軸線A1に対して角度αで傾斜しており、シャフト288が回転する際に揺動作用を生じさせる。駆動シャフト232は、中心軸線A5に沿って駆動ブロック236を貫通して延在し、ギヤ228に噛合している。ハブ296が、中心軸線A1周りに回転すると、ランド298の中心軸線A4が中心軸線A1を周回し、ヨーク307に揺動を生じさせる。従って、ピストン300及び302は、中心軸線A2及びA3にそれぞれ沿って、位相のずれた状態で往復動する。
【0043】
シャフト288の中心軸線A1、ピストン300の中心軸線A2、ピストン302の中心軸線A3、及び駆動シャフト232の中心軸線A5は、同一平面上に位置し、平行である。別の実施形態においては、ヨーク307に装着されたピストンの中心軸線が、中心軸線A1及び中心軸線A5と同一平面上に位置しない。例えば、ヨーク307の外周面に沿って120度ずつ離間された3つのピストンを使用してもよい。同様に、シャフト232の中心軸線A5は、中心軸線A1〜A3と同一平面内に位置する必要はない。例えば、シャフト232の位置をシャフト288からずらして、減速ギヤ機構を介装するようにしてもよい。但し、実装、整列、均衡、及び振動に関する利点については、中心軸線A1、中心軸線A2、中心軸線A3、及び中心軸線A5が同一平面上に位置し、平行であることが望ましい。但し、ランド298の中心軸線A4は、揺動作用を実現するために、他の中心軸線に対し、傾斜し、同一平面外に位置する。
【0044】
本発明の斜板機構は、コンパクトな構成で駆動部からポンプ機構に動力を伝達し、可搬式エアレススプレーシステム内への実装を容易にする。また、斜板機構は、効率的な動力伝達を行うことにより、高圧を生成して高霧化スプレーを実現することが可能となる。この斜板機構は、最小限の構成部品を用いて様々な方法で製作することができる。各構成部品は、安価な製造プロセスを利用して製造することが可能である。また、これらの構成部品は、容易に組み立てられる。従って、斜板機構は、最小限のコスト及び時間で製造することができ、可搬式エアレススプレーヤの大量生産が可能となる。
【0045】
代表的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことが可能であり、これらの実施形態の要素を均等物に置換することができることが、当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、ある特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるべく、様々な変更を行うことができる。従って、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内に含まれるあらゆる実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部の第1ポンプチャンバ内に配設される第1ピストンを有する往復動ピストン式流体ポンプと、
前記ハウジングに組み込まれ、回転入力を生成する一次駆動部と、
前記一次駆動部を前記往復動ピストン式流体ポンプに連結し、前記回転入力を前記第1ピストンへの往復動入力に変換する斜板機構であって、前記回転入力を受け取るランド、及び前記ランドを前記第1のピストンに連結するコネクティングロッドを備える斜板機構と、
前記第1ポンプチャンバに連通する噴霧ノズル部と
を備えることを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
前記斜板機構は、回転駆動中心軸線に沿って前記ハウジング内に配設され、前記一次駆動部から前記回転入力を受け取るように構成されたシャフトを備え、
前記ランドは、前記回転駆動中心軸線を囲むように前記シャフトの周囲に配設され、前記ランドは、前記回転駆動中心軸線から傾斜した揺動用中心軸線の周囲に配設される円筒面を有し、
前記コネクティングロッドは、前記ランドに装着されて、前記第1ピストンに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記斜板機構は、
前記ランドと前記コネクティングロッドとの間に配設される軸受機構と、
前記シャフトの周囲に配設されて前記一次駆動部からの入力を受け取る入力ギヤと
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項4】
前記シャフトの第1端部の周囲に配設される第1軸受と、
前記シャフトの第2端部の周囲に配設される第2軸受とを更に備え、
前記入力ギヤは、前記軸受機構と前記第2軸受との間に同一軸線上に配設されることを特徴とする請求項3に記載の流体供給装置。
【請求項5】
前記軸受機構は、
前記ランドに設置されるインナーレースと、
前記コネクティングロッド内に設置されるアウターレースと、
前記インナーレスと前記アウターレースとの間において転動するように構成された1組の軸受転動要素と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の流体供給装置。
【請求項6】
前記軸受機構は、前記ランドと前記コネクティングロッドとの間において転動するように構成された第1組の軸受転動要素及び第2組の軸受転動要素を備えることを特徴とする請求項3に記載の流体供給装置。
【請求項7】
前記シャフトは、第1端部及び第2端部を有するピンを備えることを特徴とする請求項3に記載の流体供給装置。
【請求項8】
前記シャフトは、ハブをさらに備え、
前記ハブは、
前記ランドを有して前記ピンの前記第2端部に配設される第1端部と、
前記ピンの前記第2端部から軸線方向に延在する第2端部と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の流体供給装置。
【請求項9】
前記ピンは、前記ハブの前記第1端部及び前記第2端部を貫通して延在することを特徴とする請求項8に記載の流体供給装置。
【請求項10】
前記ピンと、前記シャフトの前記ハブと、前記ランドとは、同一材料で一体に形成された単一の部材からなることを特徴とする請求項8に記載の流体供給装置。
【請求項11】
前記軸受機構は、
前記ランドの外面によって形成されるインナーレースと、
前記コネクティングロッドの内面によって形成されるアウターレースと、
前記インナーレースと前記アウターレースとの間において転動するように構成された1組の軸受転動要素と
を備えることを特徴とする請求項10に記載の流体供給装置。
【請求項12】
前記シャフトは、ハブをさらに備え、
前記ハブは、
前記ピンの前記第1端部に連結された第1の受け口を有する第1半部と、
前記ピンの前記第2端部に連結された第2の受け口を有する第2半部と
を備え、
前記第1の受け口及び前記第2の受け口が前記揺動用中心軸線に沿って配向されることにより、前記ピンが前記ランドを画定することを特徴とする請求項7に記載の流体供給装置。
【請求項13】
前記コネクティングロッドは、
前記軸受機構の周囲に同心状に配設されるヨークと、
前記ヨークから延在し、前記第1ピストンに形成された第1受け口部に連結されるボール部と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の流体供給装置。
【請求項14】
前記ヨークには切り欠きが設けられ、当該切り欠きの部分において、前記ボール部が前記ヨークから延設されていることを特徴とする請求項13に記載の流体供給装置。
【請求項15】
前記往復動ピストン式流体ポンプは、第2ポンプチャンバ内に配設された第2ピストンを備えることを特徴とする請求項13に記載の流体供給装置。
【請求項16】
前記ヨークは、前記第2ピストンの後方端部を押圧して、前記第2ピストンを前記第2ポンプチャンバ内に前進させるための前側の面を備えることを特徴とする請求項15に記載の流体供給装置。
【請求項17】
前記コネクティングロッドは、前記ヨークから延在して前記第2ピストンの第2受け口部に連結される第2ボール部を備えることを特徴とする請求項15に記載の流体供給装置。
【請求項18】
前記第1ピストン及び前記第2ピストンは、互いに位相のずれた状態で往復動するように、前記コネクティングロッドに係合することを特徴とする請求項15に記載の流体供給装置。
【請求項19】
前記回転駆動中心軸線、前記駆動部の中心軸線、及び前記第1ピストンの中心軸線は、同一平面上に位置すると共に互いに平行であることを特徴とする請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項20】
前記ハウジングは、可搬式手持ち式ユニットを備え、
前記可搬式手持ち式ユニットは、
ピストル型のグリップハンドルと、
液体供給源の液体を受け取り前記ポンプチャンバの入口に接続するための流入口を有する容器用の蓋と、
前記噴霧ノズル部を介して前記ポンプチャンバの流出口に接続される出口を有した噴霧ノズルポートと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2012−526235(P2012−526235A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509811(P2012−509811)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/001360
【国際公開番号】WO2010/129064
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(308025451)グラコ ミネソタ インコーポレーテッド (32)
【Fターム(参考)】