説明

流体ポンプ

【課題】2つの異なる燃料を使用するシステムを提供することが知られている。しかしながら、2つの異なる燃料を供給するため2つのポンプを別々に設けるのは、高圧ポンプの製造コストが高いため費用が嵩む。
【解決手段】2つ又はそれ以上の異なる流体を送り出すためのポンプが提供されている。ポンプは、長手方向のボア(5)を有する本体(3)と、逆止弁(10、12、20、22)を介してボア(5)と選択的に連通し、ボアへの通路を提供する少なくとも第1及び第2入口(9、19)と、を備えている。プランジャ(16)は、ボア(5)内で往復運動するように取り付けられており、更に、少なくとも1つのピストン(14)が、ボア(5)内で往復運動するように取り付けられていて、少なくとも1つの種類の流体が、一方又は両方の入口(9、19)を通って、ボア(5)の中に流入するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用のポンプに関する。より具体的には、本発明は、燃料噴射システムの一部を形成する燃料ポンプに関する。本発明は、流体を送り出す方法の改良も含んでいる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関分野の最近の研究の多くは、予混合圧縮着火(HCCI)に関わるプロセスに注目してきた。しかしながら、その様なエンジンに既知の燃料、即ちガソリン及びディーゼル燃料を用いると、エンジンは、車両が通常遭遇する負荷及び速度の全範囲に亘って、その様なプロセスで効率的に作動できるわけではない。
【0003】
ガソリンエンジンは、通常、エンジンのシリンダに入って予混合状態になった燃料及び空気に火花を使って点火し、作動させる。燃焼反応は、電気火花の位置から始まり、シリンダ全体を通して燃料と反応する。それに対して、ディーゼル燃焼では、ピストンの圧力を受けてシリンダ内の空気が圧縮され、高温高圧の環境が作り出される。燃料が直接シリンダ内に噴射されるとき、空気の温度と圧力は、燃料の燃焼を開始させ、それが噴射部位からシリンダ全体に広がるようにするのに十分なものになっている。
【0004】
HCCIが作動する原理は、一様な(予混合された)燃料/空気の混合物がエンジンのシリンダに導入され、次いで圧縮され、シリンダ内が適切な状態、即ち温度と圧力の組み合わせが燃焼反応を開始できるだけの状態に達すると、燃料が自動的に着火するというものである。その瞬間に、着火は燃料内の多数の場所で起こり、シリンダ全体に同時燃焼が起こる。これは、燃焼が始まる境界又は点が常に存在し、従って、或る特定の時間に燃焼するのは燃料の一部分であるという上記の火花点火及び圧縮点火モードとは極めて対照的である。
【0005】
HCCIは数多くの利点を有しており、特に、事実上全ての燃料が完全に燃焼するため燃料効率が優れていること、及び従来の火花点火及び圧縮点火モードの下で作動しているエンジンからの排気物質と比べて、望ましくない排気物質が減ることである。
【0006】
しかしながら、HCCI法でガソリン又はディーゼル燃料の何れかを燃焼させることには、目下、数多くの制約及び/又は欠点がある。例えば、エンジンが、エンジンアイドリングの様な、低負荷の下で比較的低速で作動している場合、事実上全ての燃料が同時に着火して燃焼するという自動着火に必要な状態は比較的低温で発生するので、ディーゼル燃料と空気の混合物を使用するのが適している。
【0007】
これに対し、エンジンが比較的高速で且つ比較的高負荷の下で作動している場合、シリンダ内の温度が上昇する。これによって、ディーゼル燃料の自動着火が、ピストンの運動サイクルの圧縮行程内の過早タイミング、即ち上面死点前で起こることになる。これは、エンジンの最適効率(出力)を低下させる。更に、ディーゼル燃料の圧縮比は、従来型のディーゼルエンジンの圧縮比よりも高くなる。その結果、シリンダハウジング内の圧力が著しく高くなって、ピストンを動かしている機械的構成要素に物理的な応力と歪みを与えることになる。
【0008】
従って、内燃機関が使用中に損傷するかもしれないという大きな危険性がある。別の欠点は、エンジンが振動し易くなり、車両の運転中に望ましくない共振が生じるかもしれないということである。
【0009】
自動着火の開始に必要な温度は、ガソリンと空気の混合物の方がディーゼル燃料と空気の混合物の場合よりも高いので、シリンダが高速で作動するときには、HCCIシステムではガソリンと空気の混合物を使用するのが好都合である。燃焼率は、従来のガソリン電気火花システムで経験される燃焼率と大きくは変わらないので、シリンダ内に望ましくない圧力が生成されることはない。しかしながら、当然のことながら、低速の作動では、燃料を圧縮するだけでガソリンの自動燃焼を実現するのは難しい。
【0010】
速度及び負荷の全範囲に亘って作動するエンジンでは、ガソリン及びディーゼル燃料の何れも、HCCIシステムで使用するには理想的とは言えないので、未だに、この点火モードを従来型の車両エンジンに成功裏に利用できていない。エンジンが、異なる作動モードに対して異なる燃料を利用できるシステムであるのが望ましいことになる。しかしながら、その様なシステムは、新たな問題に悩まされることなく設計されたことはない。
【0011】
例えば、上記問題の幾つかに取り組む試みにおいて、2つの異なる燃料を使用するシステムを提供することが知られている。しかしながら、2つの異なる燃料を供給するため2つのポンプを別々に設けるのは、高圧ポンプの製造コストが高いため費用が嵩む。燃料の種類毎に別々のポンピング要素を組み込んだ単一の高圧ポンプも考えられてきた。しかしながら、その様な構成は、必要な設計に付帯する非効率と重量増のため理想的なものとはならず、必要なポンプ容量は、ポンプが実際に一度に送り出すことのできる燃料の体積の2倍になってしまう。
【0012】
本発明は、発明人の努力から生まれたものであり、上記問題に煩わされること無く従来型の車両にHCCIを実装し、且つコモンレール式燃料噴射器に目下用いられている他の技術とも適合する、技術を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、流体を送り出すためのポンプが提供されており、同ポンプは、長手方向のボアを画定している本体と、ボアと連通している第1及び第2入口と、ボアと連通している第1及び第2出口と、ボア内で往復運動して、流体を、第1入口から第1出口へ、そして第2入口から第2出口へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャと、ボア内に滑動可能に取り付けられていて、第1の静止モードと第2の往復運動モードで作動するよう配置されているピストンと、を備えており、第1の静止モードでは、流体は、プランジャだけの往復運動によって第2入口から第2出口へ送られ、第2の往復運動モードでは、流体は、プランジャとピストン両方の往復運動によって第1入口から第1出口へ送られるようになっている。
【0014】
或る好適な構成では、ポンプは、2つの異なる流体を、流体同士が混じり合うか又はポンプ内で相互汚染されること無く、異なる時間に送り出せるように作動することができる。
【0015】
これは、ボア内の空間を効果的に分割し、流体を第1及び第2入口から選択的に吸い込むピストンをポンプのボア内に設けることによって実現される。ピストンは、長手方向のボアに沿って動くように配置され、少なくとも1つの種類の流体が、何時でも、第1入口又は第2入口から流れ込んでボアを通過できるようになっている。ピストンの位置は、入口の流体圧力に依って変わる。
【0016】
これらの構成要素は1つのポンプの中に組み込まれているので、受容し難い大きな体積を占めるシステムを必要とすること無く、少なくとも2つの異なる流体を選択的に送り出すことができる。
【0017】
更に、どの入口が作動しているかに関わり無く、ピストンを、ボア内で移動可能にし、2つ以上の流体を送り出せるよう配置することによって、ポンプ内の流体の無効体積が比較的少なくなる。各入口に一方向弁を設けて、流体がボアから入口へ逆流しないようにしてもよい。
【0018】
1つの実施形態では、ピストンに当接するプランジャ端部は、ボア内で、プランジャとピストンの間に空間ができるような形状になっている。具体的には、プランジャは、上部の外側表面が、プランジャの残り部分の外側表面に対して窪んでいる。空間は、プランジャの窪んだ表面とボアの相対する内側表面の間に画定される。
【0019】
長手方向のボアは、ポンプの本体内のピストンの運動を制限する、閉じた端部を有している。
1つの実施形態では、第1入口は、閉じた端部に近接するボアと連通している。1つの変形例では、第1入口は、閉じた端部自体に設けられている。ピストンがボアの中を下がって閉じた端部から遠ざかると、流体は、第1入口を通して吸い込まれ、ピストン上方の空間を満たす。この過程で、第1入口の一方向弁は、第1入口に供給される流体の圧力によって開位置に保持される。その後、プランジャは、ピストンをボア内でその閉じた端部に向けて押し戻す。その結果ボアと第1入口の間に生じた圧力差によって、第1入口の一方向弁が閉じ、流体は、ボア内の上昇した圧力によって開かれた出口の一方向弁を通して出口へと押し出される。各ポンピングサイクルの間にボア内に保持される流体量は僅かであり、従ってポンプの容積効率は極めて高く、好都合である。
【0020】
第2入口に供給される第2流体の圧力が第1流体の圧力を越えると、ポンピングサイクルの充填行程中に、プランジャが、閉じた端部から離れる方向に動かされても、ピストンは、ボアの閉じた端部と接触したままに保持される。従って、流体は、第2入口からボアの中に吸い込まれ、ピストンとプランジャの端部の間の空間を満たす。
【0021】
1つの実施形態では、ピストンをボアの天井に引き付けるか又は一時的に保持するための、例えば、ハウジング内に配設されて必要に応じて電力が供給される電磁石の様な手段が設けられている。
【0022】
更に、第2入口は、ボアの閉じた端部から、ピストンの長さより長いか、望ましくはピストンの長さとほぼ等しい距離の位置で、ボアに接続されている。プランジャは、送出行程でボアの閉じた端部に向かう方向に動くとき、ピストンの下面に当接して、流体を出口から押し出し、少量の流体だけがボア内に残る。このため、ポンプの容積効率は極めて高いものとなる。
【0023】
2つ又はそれ以上の流体を同時に送り出すことができれば望ましい。これは、両方の流体を同時に使用しなければならない場合、例えば、重複燃料噴射するために流体を送り出す場合には、特に有用である。
【0024】
1つの実施形態では、これは、両方の流体を実質的に同じ圧力で供給し、第1と第2の入口の2つのそれぞれの一方向弁が同時に開くようにすることによって達成される。ピストンの端部は、ピストンがボアから外向きに動くときに第2入口を遮断しないように、先細になっているのが望ましい。具体的には、ピストンは、底部の外側表面の部分が、外側表面の残りの部分より窪んでいる。窪みを、追加して又は代わりに、プランジャ及び/又はボアの内側表面に設けて、この機能を提供するか又は効果を強めることもできる。2つの異なる流体は、各入口から、ボア内の別々の領域に吸い込まれる。ポンプは、第1及び第2入口に対応して、相対するボア表面に少なくとも2つの出口を備えていて、それぞれの流体が、実質的に交じり合うことなく、互いに独立してポンプを通過するのが望ましい。
【0025】
更に、ポンプは、ボア内のピストンの運動を制限して、ピストンが第2入口を機能させない位置に移動するのを防ぐための手段を備えていてもよい。この機構は、ピストンが先細になっている、いないに関わらず、設けてもよい。拘束手段は、少なくとも1つのストッパ又はフランジを備えており、これが、ボアの内側表面上の、第2入口の一方の側とほぼ同じ高さに配置されているのが望ましい。
【0026】
プランジャの外向きの運動に応えて、ピストンが、ボアの閉じた端部から離れると、第1入口近くに空間ができるのが有用である。しかしながら、ピストンは、その後ストッパ又はフランジに当接して、ピストンが第2入口を閉じないようになっている。
【0027】
ピストンの先細部分が第2入口近くに移動しても、ボア内には、第2入口とピストンの先細部分の間にまだ空間が在る。従って、ポンピングサイクルの充填行程で、異なる流体が同時にボア内の別々の空間に吸い込まれ、送出行程で各出口を通して送り出される。従って、ハウジング内に、ボアと連通し、そこからの通路を提供する少なくとも2つの出口を有しているのが望ましい。ピストンがこの配置で送り出しているときは、別々の空間内の圧力は実質的に同じであり、一方の空間から漏れた流体が他方の空間へ入る危険性が最小になり、好都合である。
【0028】
この配置は、第1入口から入る流体が、ガソリン、エタノール、又はジメチルエーテル(DME)の様に、高温で粘度が比較的低い場合には、特に有用である。その様な流体は、ポンプ内の別個の空間内に密閉するのは難しいので、比較的高圧になるポンピングシステムには、普通は適していない。
【0029】
ピストンの上方の圧力と下方の圧力は、ポンピングの間は等しくなり、好都合である。これは、圧力シールの形態をしていてもよい。圧力シールは、ピストンの、ボアの内側表面と接触する場所に配置されるのが望ましい。その様な配置であれば、ピストンの何れの側の流体も、分離したままに維持され、適度に加圧される。これは、蒸発しないように圧力を掛けて保持しなければならないDMEの様な流体には、特に有用である。上記実施形態では、これらの種類の流体を使用することができる。更なる利点として、ポンプ内の空間は、ポンプが作動していないときも、加圧された状態に維持されるので、ポンプは、別のパージシステムを必要としない。
【0030】
ポンプは、更に、ピストンをボアの閉じた端部に選択的に保持するための、電磁石の様な手段を備えていてもよい。ピストンは、この位置に保持されていれば、第1入口を遮断するので、少なくともポンピングサイクルの充填行程の最初の部分の間に、第1入口を通して流体を充填することができなくなる。流体を送り出すときにボア内で観察される無効容積が減り、ポンプをより効率的に作動させることができるようになるので、好都合である。第1入口が、ボアの閉じた端部を通して直接ボアと連通している場合は、この効果が更に強化される。この場合、電磁石自体が、入口を遮断する働きをする。
【0031】
ポンプは、更に、何時ピストンがボアの閉じた端部に在るかを感知するための手段を備えていてもよい。センサーは、ポンプのボア内に直接配置することができる。その様なセンサーは、ピストンがその行程の最上部に達するタイミングに関係する情報を供給することができ、その情報は、エンジン管理システムに提供される。この情報は、次に、ポンピング機構を更に強化するのに用いられる。
【0032】
ポンプを2つの異なる流体で満たしても、ボアから一方の流体だけを出口に送り出すのが望ましい場合もある。例えば、第1流体は、ボア内に在ってバッファとして作用し、第1流体と比べて潤滑性が比較的低い燃料を送り出すことができるようにする役を果たす。その様な実施形態では、ポンプハウジングは、第1入口の反対側に単一の出口だけを備えている必要がある。
【0033】
本発明は、単一の流体又は2つの流体を送るための配置に限定されるわけではなく、ポンプが、追加の流体を送り出すことのできる別の入口と出口を備えることも考えられる。その様な配置は、それぞれの流体を互いに分離して保持するため、1つ又は複数の追加のピストン及び作動システムを備えていてもよい。例えば、3つの流体のシステムは、油、ディーゼル及びガソリンを含むことができる。
【0034】
第1及び第2入口を通してボア内のそれぞれの領域に吸い込まれる流体は、2つの異なる種類の燃料でもよい。しかしながら、代わりに、他の燃料でない流体を、単独で、又は1つ又は複数の種類の燃料と組み合わせて用いてもよい。例えば、第1入口に水又は尿素溶液を、第2入口に潤滑油を用いることもできる。
【0035】
本発明は、異なる燃料を内燃機関に送らなければならない燃料噴射器に特に適している。従って、本発明は、先に述べた様にポンプを有する燃料噴射器、及びその様な燃料噴射器を備えた内燃機関にも及んでいる。
【0036】
本発明の発明者は、油又はビチューメン或いは固体の形態をした重質燃料でも、エンジンが始動して十分な内部温度に達すると、固体が溶けて上記のように送ることができるようになるのであれば、内燃機関システム内の燃料噴射システム内で送る流体として利用できる、と考えている。
【0037】
本発明は、上に述べた型式のポンプを組み込んだ燃料噴射システム、及びその様な燃料噴射システムを有する内燃機関にも及んでいる。
本発明は、更に、2つの異なる流体を、1つのポンプを使って独立して送るための方法にも及んでおり、このポンプは、長手方向ボア内で往復運動するように配置されているプランジャと、プランジャと協働するピストンと、ボア内のピストンの位置に依って、ボア内の第1領域を介して第1出口と選択的に連通するように配置されている第1入口と、ボアの第2領域を介して第2出口と選択的に連通するように配置されている第2入口とを備えており、この方法は、第1流体を第1入口に供給する段階と、第2流体を第2入口に供給する段階と、ボア内のピストンの位置を制御して、第1流体が第1入口から第1出口へ送られ、及び/又は第2流体が第2入口から第2出口へ送られる段階と、を含んでいる。
【0038】
本発明の出願人は、本発明の特定の実施形態の何れかの個々の特徴を、単独で他の実施形態に適用してもよいし、互いに組み合わせて適用してもよいと言明している。例えば、ストッパ機構及び/又は環状シールを、上記の他の機構と組み合わせて、何れの実施形態に適用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を、より容易に理解して頂くために、限定するわけではないが、好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1と図2は、中央ボア5が内向きに伸張しているハウジング3を備えているポンプ1を示している。ポンプ1は、行き止まりの端部に向けてボア5内に装着されている独立した円筒形ピストン14を更に備えている。長手方向プランジャ16は、部分的にボア5内に収容されており、ピストン14をボア5内で捉え、その中でピストン14の長手方向運動を制限している。プランジャ16は、窪み部分28を備えており、その上面は、ピストン14の下面に接触している。窪み部分28の表面とボアの当該部分の内側表面は、一緒になって環状空間17を画定している。プランジャ16の運動は、作動機構(図示せず)(例えば、カムとローラー、クランク、偏心傾斜面、ソレノイド、圧電スタックなど)によって制御されている。作動機構は、ポンピングサイクルの充填と送出の行程を通してプランジャ16を繰り返し動かす。
【0040】
行き止まりの端部は、ボアの天井7を画定している。第1入口9は、ボア5と天井7に近接して連通している通路を備えている。第1の一方向弁10は、弁10に掛かる圧力差に依って第1入口9を開閉するように配置されている。第1出口11は、ボア5と天井7に近接して連通している通路を備えている。第2の一方向弁12は、弁12に掛かる圧力差に応えて第1出口11を開閉するように配置されている。第2入口19は、ボア5と連通する通路を備えている。第3の一方向弁20は、これも弁20に掛かる圧力差に依って第2入口19を開閉するように配置されている。第2出口21は、ボア5と連通する通路を備えている。もう1つの一方向弁22は、出口21を開閉するようになっている。
【0041】
具体的に図1では、ポンプ1は、ポンピングサイクルの充填行程にある。第1流体を送り出さなければならない場合は、この流体が加圧され、第1の一方向弁10を開かせる。作動機構がプランジャ16をボア5から後退させると、ピストン14の下面が、プランジャ16の窪み部分の上面に堅く押し付けられて保持される。ピストン14とプランジャ16の外向きの運動は、ボア5内に真空を作り出し、第1流体は、入口9を通してボア5内へ吸い込まれ、少なくとも部分的にはボア5内の空間を満たす。
【0042】
図2は、プランジャ16がポンピングサイクルの行程の最上位置にある状態を示している。ピストン14は、プランジャ16によって、ピストン14の上面がボア5の天井7と接触するまで、ボア5の中へと戻されており、それによって、第1流体がボア5から第1出口11へ、そしてポンプ1から、押し出される。
【0043】
次に図3は、ポンプ1がポンピングサイクルの充填行程にあり、第1入口9が閉じ、第2入口19が開いている状態を示している。プランジャ16がボア5から後退すると、ピストン14とプランジャ16の間に真空が作られ、第2入口19からの第2流体がボア5に吸い込まれる。この場合、ピストン14は、プランジャがボア5から引き抜かれるときに、プランジャ16に押し付けて保持されることはない。この実施形態では、流体は、入口19を通ってボア5に流れ込むことはない。
【0044】
図4では、プランジャ16は、送出行程でボア5の中へと戻されているので、ボア5内で流体が利用できる空間の容積が減少する。ピストン14が内向きに動くにつれ、ピストン14とプランジャ16の間の流体は、加圧され、第2出口21を通してボア5から送り出される。
【0045】
図5は、2つの異なる流体を同時にポンピング処理するように作動するポンプの別の実施形態を示している。この場合、第1及び第2入口9、19の両方が開いており、従って、それらの各弁10、20も開いた状態にある。その結果、ピストン14はプランジャ16と接触した状態に保持されず、ポンプの充填行程の間に、プランジャ16がボア5から後退し始めると、ボア内の(a)ピストン14とプランジャ16の間、及び(b)ピストン14とボアの天井7の間の両方に真空が作り出される。この実施形態のピストン14は先細部分30を有しているので、ピストン14がボア5から外向きに動かされたときにピストン14の本体が第2入口19を塞ぐことはない。更に、ピストン14が受容可能な寸法であるか、又は入口通路9、19が互いに十分離れているので、プランジャ16が動いたとき、ピストン14は、ボア5内の、2つの入口9、19の間の或る位置にあり、流体が、第1及び第2入口9、19のそれぞれから、ボア5でピストン14の上方と下方に作り出されたそれぞれの空間に吸い込まれる。これらの空間内の圧力は、実質的に同じになるので、一方の空間からの流体が他方の流体充填空間に漏れることは起きにくい。2つの異なる流体は、従って、1つの動作によって、ポンプ1のボア5内の別々の空間へ吸い込まれ、次いで、それぞれの出口11、21を通して同時に送り出される。
【0046】
図6は、数多くの追加の特徴を有する別の実施形態によるポンプ1を示している。ボア5内の環状突起形態をしたストッパ32は、長手方向に、第2入口19と第2出口21の最上部とほぼ同じ高さの位置に配置されている。ピストン14がボア5から外向きに動くとき、ストッパ32は、ピストン14の本体と当接し、ピストン14がそれ以上動かないようする。その結果、ピストン14が第2入口19を覆って入口19とボア5の連通を遮ることは無くなる。ピストン14の先細部分30は、ピストン14の本体に比べて直径が小さく、ボア5内に、第2入口19に隣接して配置される。しかしながら、第2入口19とピストン14の先細部分30の間には、なおボア5内の空間が存在する。
【0047】
ポンプ1には、更に、ピストン14上に、ボア5の内側表面に接触する環状シール34が配置されている。シール34は、その一方の側の流体が、他方の側の流体と混じって、相互汚染されるのを防いでいる。シール34は、更に、ポンプのスイッチが切られたときに、少なくともボアの閉じた端部の流体を、ポンプ1内で適度に加圧された状態に保持する。
【0048】
図7は、電磁石36が、その下面がボア5の天井7に隣接するようにポンプ1のハウジング3内に配置されている、或る実施形態のポンプ1を示している。第1入口9を使用不能にする必要がある場合は、電磁石36に電力が供給され、ピストン14は、ボア5の天井7の所定の位置に保持される。ピストン14は、ボア5内を内向きに、天井7に接触してそこにしっかりと保持されるまで動く。ピストン14は、電磁石への電力供給が遮断されるまで、天井7と接触したまま留まる。
【0049】
図8は、感知面42と送信リード線44を備えたセンサー装置40を有する、或る実施形態のポンプ1を示している。センサー装置40は、ハウジング内に、長手方向ボア5に面して配置されている。感知面42は、それ自体が、ボア5の天井を画定している。センサー装置40は、ピストン14がボア5の天井に在る時間を検出するように配置されている。センサー装置40が受け取った情報は、送信リード線44を介して、中央電子機器ユニット(図示せず)に送られる。
【0050】
図9は、第1入口9の反対側に1つだけ出口11を備えている、別の実施形態のポンプ1を示している。低粘性流体が、第2入口19を通してボア5内のピストン14とプランジャ16の間に注入される。これは緩衝液となり、低粘性流体に比べて潤滑性が比較的低い燃料を、ポンプ1を通してより容易に送り出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の1つの実施形態によるポンプの断面図であり、ポンピングサイクルの充填段階で、第1流体が第1入口を通ってボアに吸い込まれている状態を示している。
【図2】図1のポンプの断面図であり、送出段階の終わりで、第1流体がボアから第1出口へ送り出されてしまった状態を示している。
【図3】図1のポンプの断面図であり、別の作動モードの充填段階で、第2流体が第2入口を通ってボアに吸い込まれている状態を示している。
【図4】図1のポンプの断面図であり、前記の別の作動モードの送出段階で、第2流体がボアから第2出口へ送り出されている状態を示している。
【図5】本発明の別の実施形態によるポンプの断面図であり、2つの異なる流体が同時にポンピング処理されている。
【図6】本発明の又別の実施形態のポンプの断面図であり、ポンプは、更に、端部ストッパとシーリング装置を含んでいる。
【図7】本発明の又別の実施形態のポンプの断面図であり、電磁石を含んでいる例である。
【図8】本発明の又別の実施形態のポンプの断面図であり、センサーを含んでいる例である。
【図9】本発明の又別の実施形態のポンプの断面図であり、出口が1つしかない例である。
【符号の説明】
【0052】
1 ポンプ
5 ボア
9、19 入口
11、21 出口
16 プランジャ
14 ピストン
10、12、20、22 弁
32 ストッパ
36、40 保持手段
34 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送り出すためのポンプ(1)において、
長手方向のボア(5)を画定している本体(3)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2入口(9、19)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2出口(11、21)と、
前記ボア(5)内で往復運動して、流体を、前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ、前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャ(16)と、
前記ボア(5)内に滑動可能に取り付けられていて、第1の静止モードと、第2の往復運動モードで作動するように配置されているピストン(14)であって、前記第1の静止モードでは、流体は、前記プランジャ(16)だけの往復運動によって前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送られ、前記第2の往復運動モードでは、流体は、前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)両方の往復運動によって前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ送られる、ピストンと、を備えているポンプ。
【請求項2】
前記ピストン(14)の位置は、前記第1及び第2入口(9、19)の流体圧力によって制御されるように配置されている、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ボア(5)と連通している第3入口と、
前記ボア(5)と連通している第3出口と、
前記ボア(5)内に滑動可能に配置され、且つ前記最初に述べたピストン(14)と組み合わせて配置されていて、流体が前記第3入口から前記第3出口へ送り出される第3のモードで作動するようになっている第2ピストンと、を更に備えている、請求項1又は2に記載のポンプ(1)。
【請求項4】
前記入口(9、19)と前記出口(11、21)には、それぞれ、流体が、前記ボア(5)から前記第1及び第2入口(9、19)へ、及び各出口(11、21)から前記ボア(5)へ流れないようにする一方向弁(10、12、20、22)が設けられている、請求項1から3の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項5】
前記ピストン(14)をその第1位置に保持するための手段(36)を更に備えている、請求項1から4の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項6】
前記保持手段は、電磁石(36)を備えている、請求項5に記載のポンプ(1)。
【請求項7】
前記ピストン(14)が、前記第2入口(19)と前記第2出口(21)の間の連通を妨げないように、前記ピストン(14)の前記ボア(5)内での運動を制限するための手段(32)を更に備えている、請求項1から6の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項8】
前記制約手段は、当接部(32)を備えている、請求項7に記載のポンプ(1)。
【請求項9】
前記ピストン(14)がその第1位置に在るときを感知するための手段(40)を更に備えている、請求項1から8の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項10】
前記入口(9、19)の一方を通過する流体の流れを選択的に防止するための手段を更に備えている、請求項1から9の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項11】
前記防止手段は、電磁石を備えている、請求項10に記載のポンプ(1)。
【請求項12】
前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)の相対する端部は、前記ボア(5)内に環状空洞を画定するように形状が整えられている、請求項1から11の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項13】
前記ピストン(14)の長さは、前記第1及び第2の入口(9、19)の間の長手方向の分離距離とほぼ等しい、請求項1から12の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項14】
前記第1及び第2入口(9、19)を通って前記ボア(5)に入ってきた流体が混じり合うのを防ぐためのシール(34)を更に備えている、請求項1から13の何れかに記載のポンプ(1)。
【請求項15】
上記請求項の何れかに記載されているポンプ(1)を備えている燃料噴射器。
【請求項16】
請求項15に記載の流体噴射器を備えている内燃機関。
【請求項17】
2つの異なる流体を、請求項1から14の何れかに記載のポンプ(1)を使って独立して送り出す方法において、
第1流体を前記第1入口(9)に供給する段階と、
第2流体を前記第2入口(19)に供給する段階と、から成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−133303(P2009−133303A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−264734(P2008−264734)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】