説明

流体分析装置

ガス分析装置は、導電性チャネルに基づく有機半導体(6)とゲート(2)との間にキャビティ(7)を有するトランジスタを有する。動作中、キャビティ(7)に案内されたガスサンプルからの成分は、有機半導体(6)の露出された吸収感応性表面部分において吸収されることが可能である。検出器(13)は、露出表面部分において吸収された成分によりもたらされるトランジスタの閾値電圧における変化を検出する。この変化の検出に応じて、検出器は、サンプルにおける成分の濃度を表す測定信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分析装置、特に、トランジスタを有する流体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のアプリケーションのために開発された多くの種類のトランジスタ装置が存在する。一部の既知のトランジスタは、環境の空気又は吐息における揮発性成分の濃度を検出及び測定するために用いられてきた。そのようなトランジスタの1つを有するセンサについては、文献“Electronic noises,principles and application,JW Gardner,PN Bartlett,Oxford University Press,pp101,1999”に記載されている。その文献に記載されているセンサは、揮発性成分がトランジスタのゲートに吸収された後、そのゲートの仕事関数における変化を測定することにより揮発性成分を検出するものである。そのトランジスタは有機シリコンに基づく物質を組み込み、その物質自体は、揮発性成分の存在に対して感応しないものである。それらのセンサは限定された感度を有し、トランジスタのゲートは、構成するには困難であり且つ高価である浮遊金属ゲートである。文献“Handbokk of Conducting Polymers,ed.TA Skotheim,RL Elsenbaumer,JR Reynolds,Marcel Dekker,New York,pp.963,(1998)”においては、ガスを検知するために有機半導体導体を用いるトランジスタについて記載されている。そのような有機半導体の電気的性質は、ガスがそれらの有機半導体に吸収されるにつれて変化し、ガスが検出されることを可能にする。ドレインとソースとの間のチャネルは有機半導体を有し、そのチャネルの一の面はゲート絶縁体との界面を構成する。その逆の面においては、有機半導体が空気との界面を構成する。半導体/空気界面において有機半導体にガスが吸収されるにつれて、半導体の電気的性質の変化が起こり、吸収物質が検知されることを可能にする。この構成を有するトランジスタを有するガスセンサは、尚も比較的低感度である。
【0003】
病気を検出する又は制御するために用いられる吐息における複数のバイオマーカーが存在する。吐息分析は、患者の健康をモニタするように家庭で患者自身が用いることが可能である非侵襲的な診断又は医療方法である。患者は、必要に応じて、適切な呼気分析器を備えることができる。呼気分析のうちで最も広く行き渡ったものの1つは、吐息中のNOの存在を検出するものであり、呼気中のNOの濃度は、患者の喘息の重症度に関連付けられることが可能である。
【0004】
比較的簡単で、安価で、且つ高感度である流体センサに対する要請が存在している。
【非特許文献1】Electronic noises,principles and application,JW Gardner,PN Bartlett,Oxford University Press,pp101,1999
【非特許文献2】Handbokk of Conducting Polymers,ed.TA Skotheim,RL Elsenbaumer,JR Reynolds,Marcel Dekker,New York,pp.963,(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、上記の課題を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にしたがって、ゲート及び半導体導電性チャネルを有するトランジスタであって、ゲートと、キャビティに案内された流体サンプルからの成分が半導体の露出表面部分に吸収されることが可能であるような半導体導電性チャネルとの間のキャビティを規定する、トランジスタ;及び、半導体の露出表面に吸収されている成分によりもたされる変化であって、それに応じてサンプルにおける成分の濃度を示す測定信号を生成する、変化を検出するための検出器;を有する流体分析装置を提供する。
【0007】
例示としての実施形態においては、分析装置はガス分析装置であり、半導体導電性チャネルは、バイオマーカーの吸収に対して感応する有機半導体である。
【0008】
例示としての実施形態においては、半導体の特性は閾値電圧である。
【0009】
また、流体サンプルを分析する方法であって、トランジスタの導電性チャネルを構成する半導体層とトランジスタのゲートとの間の、トランジスタにおいて規定されているキャビティに流体サンプルを受け入れる段階であって、それ故、その流体の成分が半導体層の露出表面部分において吸収される、段階;露出表面部分において吸収されている成分によりもたらされるトランジスタの特性における変化を検出し、それに応じて、サンプルにおける成分の濃度を表す信号を生成する、段階;を有する、方法を提供する。
【0010】
本発明の実施形態について、以下、添付図を参照しながら、例示として詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで、図1を参照するに、図1は電界効果トランジスタ(FET)1を示している。FET1は、高濃度ドーピングシリコンウェーハを典型的に有するゲート2を有する。酸化珪素であることが可能である絶縁物質3は、第1絶縁体領域3aを構成するゲート2の表面の第1部分2a及び第2絶縁体領域3bを構成するゲートの表面の第2部分を覆い、それ故、絶縁体材料におけるゲートは、ゲート2の表面の露出された第2部分2cを横切って延びている。一部の実施形態においては、金属層、典型的には、金が、電気的接触を構成するように第3部分2cにおいて堆積されている。
【0012】
絶縁物質が酸化珪素を有する場合、絶縁層3は、100乃至300nmの範囲内の、好適には、200nmの厚さに堆積されることが可能である。酸化珪素を有する絶縁体層3は熱的に成長されることが可能であり、フォトリソグラフィ及びエッチングによりギャップが生成される。
【0013】
代替の実施形態においては、絶縁体物質3は、有機ポリマー又はフォトラッカを有することが可能である。絶縁体層3が有機ポリマーを有する場合、第1領域3aと第2領域3bとの間のギャップは成形により形成され、絶縁体層3は数ミクロンの高さに堆積されることが可能である。絶縁体層がフォトラッカを有する場合、そのギャップは、紫外線露光及び露光領域の現像により形成される。
【0014】
典型的には、金であるソース電極4は、絶縁体材料の第1領域3a及びドレイン電極5において堆積され、また、典型的には、金は、絶縁体物質の第2領域3bにおいて堆積される。ソース4電極及びドレイン5電極は、典型的な厚さ、約20nmを有する。
【0015】
半導体物質6の層、好適な実施形態においては、有機半導体が、ゲート2の表面の露出された第3部分2cを橋渡しするように、ソース電極4からドレイン電極5まで延びている。それ故、ゲート2、絶縁体領域3a及び3b、ソース電極4、ドレイン電極5及び半導体層6は、ゲート2の表面の露出された第3部分2cが半導体層6の露出表面領域6aと対向するキャビティ7を規定する。最終的に、フォイルの保護層8(典型的には、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート等)が有機半導体層6を覆う。
【0016】
当業者が理解できるように、FET1は、既知の半導体装置製造技術、及び正常な空気又は乾燥窒素等の希ガスで満たされたキャビティ7を用いて構築される。
【0017】
実際には、ガスキャビティ7は、ゲート2と半導体層6との間において誘電性である。動作中、FETの導電性チャネルは、半導体層6及びキャビティ7の界面の近傍のドレイン5とソース4との間の半導体層6を介して動作する。
【0018】
半導体層6とキャビティ7との間のこの界面は、トランジスタが有効なガスセンサとして機能することを可能にする。清浄な空気のサンプルが、キャビティ7の誘電特性及びFET1の電気特性を変えることなく、空気又は希ガスキャビティ7に案内されることが可能である。しかしながら、キャビティ7に案内された空気又は吐息における揮発性化学種は、キャビティ7の誘電特性及びOFET1の電気特性に影響を与える可能性がある。特に、そのような揮発性化学種は、半導体層6の露出表面領域6aに吸収され、その領域において、それらの化学種はFET導電性チャネルに近づき、半導体層と強く相互作用する。その相互作用は、トランジスタの電気特性、例えば、閾値電圧に影響する相互作用である。
【0019】
適切に較正されたFET1については、特定の成分、例えば、半導体/空気界面において吸収されたNOによりもたらされる閾値電圧における変化の測定は、キャビティ7におけるその化学種の分圧(又は、濃度)を示す。半導体層6を有する物質の選択は、OFET1が検出するようにデザインされている特定のガス成分に依存するものである。例えば、ポリアリルアミンに基づく半導体を有する特定の有機半導体は、NOの吸収に対して高感度を有し、NOと反応する。そのような有機半導体は、NO検出装置で用いられるOFET1における半導体層6として用いられるには理想的である。良好な感度のために、特に、有機半導体層6は、5nm乃至5mmの範囲内の、特に好適には、30乃至100nmの範囲内の厚さを有する。半導体層6について適切な物質を用いることにより、本発明の実施形態は、NOばかりでなく他のバイオマーカー、例えば、アセトン、エチルアルコール、一酸化炭素及びイソプレンも検知するように用いられることが可能である。
【0020】
有機半導体層6を有する有機FET1は、標準的な技術を用いて、ゲート2、絶縁体層3、ソース電極4及びドレイン電極5を先ず、形成することにより容易に構築されることが可能である。FET1を完成させるように、ポリマーフォイル8が、有機半導体層6、例えば、ポリアリルアミンによりコーティングされることが可能である。ポリマーフォイル8及び有機半導体6のフレキシブルな二重層が、その場合、図1に示すように、有機半導体層6がソース電極4及びドレイン電極5と接するようにされるように、位置付けられることが可能である。
【0021】
好適な実施形態においては、半導体層6の吸収表面は、粗さRaが50nmに過ぎない程度に、特には、表面粗さRaが5nmである程度に比較的平坦である。
【0022】
本発明を実施するシステムは、空気又は吐息における揮発性成分の比較的低濃度の存在を検出することが可能である。例えば、喘息の患者は、20乃至100ppbの範囲内(Pparts per billion)(非喘息の患者における0乃至20ppbの範囲内とは対照的に)のNOの息を吐き、その濃度範囲はOFET1により検出可能である。
【0023】
閾値電圧を有する、トランジスタの電気特性になぜ、吸収物質が影響を与えるかを支配する基本的な原理については分かっていない。その影響は、界面双極子として作用する吸収物質又は有機半導体において新しいドーパントを生成する吸収物質をもたらす可能性がある。
【0024】
良好な測定感度についての上記の実施例においては、キャビティ7の幅は、好適には、0.5μm乃至500μmの範囲内にあり、最も好適には、約10μmである。
【0025】
上記実施例においては、キャビティ7の一部を構成する絶縁体層3においてギャップが存在する。このことは本質的でない。代替の実施形態においては、キャビティ7は、絶縁体層3、半導体層6、ソース電極4及びドレイン電極5により規定される。そのような実施形態においては、キャビティ7の高さは、ドレイン電極4及びソース電極の高さ又は厚さにより決定され、好適には、20nm以上である。絶縁体層3においてギャップが存在する実施形態においては、キャビティ7の高さは、典型的には、有機ポリマー絶縁体層については最大数μm及び酸化珪素の絶縁体については約200nmである絶縁体層3の厚さにより、主に決定される。
【0026】
ここで、図2を参照するに、喘息検出について家庭用ケアキットで用いるために適する、本発明を実施する呼気分析装置10を示している。分析装置10は、ガスセンサユニット13に接続されているマウスピース11を有する。ガスセンサユニット13は、図1に関連して上で説明しているOFET1と、検出器及び制御回路12とを有する。
【0027】
使用するとき、患者はマウスピース1に息を吐き、そのマウスピースはキャビティ7に呼気のサンプルを案内する。マウスピース1は、行われる測定についての制御されている流量及び温度においてキャビティ7にサンプルを案内するように備えられている。呼気のサンプル7は、そのサンプルにおけるNO分子が有機半導体/空気界面において吸収されることを可能にするキャビティを通る。検出器及び制御回路12は、NOの吸収により、及びサンプルにおけるNOの濃度を表す信号(図示せず)の出力に応じて、もたらされるOFET1の閾値電圧又は他の電気性質における何れかの変化を測定する。
【0028】
上記の実施形態はガス分析装置に関するものであるが、本発明の実施形態は、他の流体、例えば、液体を分析するように用いられることが可能である。
【0029】
上記においては、好適な実施形態を参照して本発明について詳述しているが、対象の実施形態は単なる例示であり、同時提出の特許請求の範囲に記載している本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく並びにそれらと同等であるように種々の修正及び変改が可能であることが当業者には理解できるであろう。用語“を有する”及びその用語の派生の用語は、全体として、何れかの請求項又は明細書に列挙されている要素又は段階以外の要素又は段階を排除するものではない。要素の単数表現は、そのような要素の複数の存在を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】トランジスタの模式図である。
【図2】図1に示すトランジスタを有する流体センサの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート及び半導体導電性チャネルを有するトランジスタであって、使用するときに、キャビティに案内された流体サンプルからの成分が前記半導体の露出表面部分に吸収されることが可能であるように、前記ゲートと前記半導体導電性チャネルとの間に前記キャビティを規定する、トランジスタ;並びに
前記半導体の前記露出表面において吸収され、それに応じて、前記サンプルにおける前記成分の濃度を表す測定信号を生成する、前記成分によりもたらされる前記トランジスタの特性における変化を検出するための検出器;
を有する流体分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記半導体導電性チャネルは有機半導体である、流体分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体分析装置であって、前記有機半導体はポリアリルアミンを有する、流体分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記トランジスタは、前記ゲートの表面において形成された絶縁層を更に有し、前記絶縁層は前記ゲートの表面の一部を露出したままにし、前記ゲートの前記露出表面部分に対向する前記半導体の前記露出表面部分を有するキャビティを前記ゲート、前記半導体導電性チャネル及び前記絶縁層が共に実質的に規定する、流体分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体分析装置であって、前記トランジスタは、前記絶縁体層の第1部分と前記半導体との間に形成されたソース、及び前記絶縁体層の第2部分と前記半導体との間に形成されたドレインを更に有する、流体分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記トランジスタは、前記半導体の上側表面において形成された保護層を更に有する、流体分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記トランジスタ特性は閾値電圧である、流体分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記流体サンプルは呼気のサンプルであり、前記分析装置は、前記呼気のサンプルを前記キャビティに供給するためのマウスピースを更に有する、流体分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の流体分析装置であって、前記成分は、一酸化窒素、アセトン、エチルアルコール、一酸化炭素及びイソプレンのうちの一である、流体分析装置。
【請求項10】
流体サンプルを分析する方法であって:
トランジスタのゲートと、前記トランジスタの導電性チャネルを構成する半導体層との間のトランジスタにおいて規定されるキャビティに流体サンプルを受け入れる段階であって、前記流体サンプルの成分は前記半導体層の露出表面部分において吸収されることが可能である、段階;及び
前記露出表面部分において吸収される前記成分によりもたらされ、それにより、前記流体サンプルにおける前記成分の濃度を表す信号を生成する、トランジスタの特性における変化を検出する段階;
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501927(P2009−501927A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522106(P2008−522106)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052282
【国際公開番号】WO2007/010425
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】