説明

流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング制御方法

【課題】流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち吸引力の大きい強クリーニングパターンに基づくクリーニングが実行された場合であっても、クリーニングの成功率の低下を抑制できる流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング制御方法を提供する。
【解決手段】電源スイッチが操作された場合には、クリーニングでのクリーニングパターンに関して、記録ヘッドからのインクの吸引量に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち、相対的に吸引力の大きな強クリーニングパターンを選択し(ステップS20)、該選択した強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを電源断時クリーニングとして実行し(ステップS26)、その後、電源遮断処理を実行する(ステップS30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズルからターゲットに対してインク(流体)を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。このようなプリンタには、ノズルからインクを吸引可能な状態で記録ヘッドに当接可能なキャップと、該キャップ内の空気やインクなどを吸引可能な吸引ポンプとを有するクリーニング手段が設けられている。そして、キャップを記録ヘッドに当接させた状態で吸引ポンプを駆動させることによりキャップ内に発生する吸引力によって、増粘したインクや気泡などをインクと共に記録ヘッドのノズルからキャップ内に排出させるクリーニングが実行されるようになっている。
【0003】
ところで、近時のプリンタでは、記録ヘッドからのインクの吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンが設定されたものが知られている。例えば、吸引力の大きい強クリーニングを実行するための強クリーニングパターンと、該強クリーニング時に比して吸引力の小さい弱クリーニングを実行するための弱クリーニングパターンとが設定されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−320689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、強クリーニングが実行された場合は、弱クリーニングが実行された場合に比して、インクカートリッジ(流体貯留手段)から記録ヘッドのノズル内までにインクを供給するインク供給路(流体供給路)内がより減圧されるため、該インク供給路のインク中に含まれている気泡は、強クリーニングの実行によりノズルから排出されるようになっている。しかしながら、強クリーニングの実行が終了した場合、強クリーニングの実行前にインク供給路のインク中に含まれていた気泡は排出できるものの、強クリーニング時におけるインク供給路内の減圧によってインク内に溶解していた空気の一部が沸騰現象により析出して微細気泡がインク供給路のインク内に新たに発生してしまうことがあった。このような微細気泡は、所定時間(例えば「15」分程度)経過すればインク内に自然に溶解するものである。しかしながら、微細気泡がインク内に溶解する前に印刷が実行された場合には、記録ヘッドのノズルから微細気泡がインクと共に噴射されることによって、印刷不良(即ち、インクの噴射不良)が発生するおそれがあった。すなわち、インクの噴射不良を抑制すべく実行されたはずの強クリーニングが失敗になってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち吸引力の大きい強クリーニングパターンに基づくクリーニングが実行された場合であっても、クリーニングの成功率の低下を抑制できる流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、流体供給路を介して流体貯留手段から供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッドのノズルから流体を吸引して排出させるクリーニングを実行するクリーニング手段と、流体噴射装置の電源を断状態にする際に操作される電源断操作手段と、前記クリーニング時には前記流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち何れか一つのクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行されるように前記クリーニング手段の駆動を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合に、前記各クリーニングパターンのうち相対的に吸引力の大きな強クリーニングパターンに基づいた強クリーニングを電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする。
【0007】
この発明によれば、電源断操作手段が操作された場合には、強クリーニングパターンに基づく強クリーニングが実行され、その後、電源が断状態になる。そして、強クリーニングの実行に基づいて流体供給路内に発生した微細気泡は、電源の遮断中に流体内に溶解することになる。そのため、電源が投入された場合には、強クリーニングの実行により流体供給路内に発生した微細気泡は流体中に溶解しているため、該微細気泡が流体噴射ヘッドから噴射されることによる流体の噴射不良が抑制される。したがって、流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち吸引力の大きい強クリーニングパターンに基づく強クリーニングが実行された場合であっても、クリーニングの成功率の低下を抑制できる。
【0008】
本発明の流体噴射装置は、前記クリーニング手段によって実行されたクリーニングの実行パターンを記憶する実行パターン記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合には、その操作前において最後に実行されたクリーニングの実行パターンを前記実行パターン記憶手段から読み出し、該読み出した実行パターンが前記強クリーニングパターンであるときには、前記電源断時クリーニングを未実行の状態で前記電源を断状態にする。
【0009】
この発明によれば、電源断操作手段が操作される前において最後に実行されたクリーニングが強クリーニングである場合には、電源断操作手段が操作されたときに強クリーニング(電源断時クリーニング)が実行されずに電源が断状態になる。そのため、強クリーニングが連続して実行されることによる流体の消費過多が抑制される。
【0010】
本発明の流体噴射装置は、前記クリーニング手段により最後にクリーニングが実行されてからの経過時間を計測する計測手段をさらに備え、前記制御手段は、前記計測手段によって計測された経過時間が予め設定された間隔時間閾値を超えた場合には、前記各クリーニングパターンのうち相対的に吸引力の小さな弱クリーニングパターンに基づいた弱クリーニングがタイマクリーニングとして実行されるように前記クリーニング手段の駆動を制御するようになっており、前記制御手段は、前記弱クリーニングによるタイマクリーニングが予め設定された所定回数実行された後において前記電源断操作手段が操作された場合には、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを前記電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする。
【0011】
一般に、流体供給路内の流体中に含まれる気泡が大きくなるには、時間がかかる。そこで、本発明では、タイマクリーニング(弱クリーニング)が所定回数実行された場合に気泡が大きくなったと判断する。そして、タイマクリーニングの実行回数が所定回数以上になった状態で電源断操作手段が操作された場合に、強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行され、その後、電源が断状態になる。そのため、電源断操作手段が操作される度に強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行される場合に比して、クリーニングによる流体の消費過多が抑制される。
【0012】
本発明の流体噴射装置は、前記流体貯留手段内に貯留されている流体の残量を検出する流体残量検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合において、前記流体残量検出手段によって検出された流体の残量が予め設定された残量閾値未満になったときには、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを前記電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする。
【0013】
通常、流体切れと判断された流体貯留手段を新しい流体貯留手段に交換する際に実行される交換クリーニングは、流体貯留手段の交換直後に実行される。そして、この交換クリーニングが実行されることにより、今回ではなく前回の流体貯留手段の交換時に流体供給路内に混入してしまった気泡が排出されることになる。しかしながら、交換クリーニングが強クリーニングであった場合には、この交換クリーニングの実行によって流体供給路内に発生した微細気泡が流体内に自然に溶解する前に流体噴射ヘッドのノズルから流体を噴射させようとしたときには、微細気泡が流体噴射ヘッドのノズルから噴射されることによる流体の噴射不良が発生するおそれがあった。そこで、本発明では、電源断操作手段が操作された際において、流体貯留手段内の流体の残量が残量閾値未満になった場合には、次回に電源が投入されたときに流体貯留手段の交換が実行されると判断して強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行され、実際に流体貯留手段が交換されたときには強クリーニングが実行されない。そのため、強クリーニングが実行されたことにより流体供給路内に微細気泡が存在する状態で流体噴射ヘッドから流体が噴射されることが回避される。
【0014】
本発明の流体噴射装置は、前記流体供給路上に配設された開閉弁をさらに備え、前記制御手段は、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを実行する場合には、前記開閉弁を閉じ動作させることにより前記流体供給路内において前記流体貯留手段内と前記流体噴射ヘッドのノズル内とを非連通状態にしてから前記クリーニング手段の駆動を開始させ、その後、前記流体供給路内において前記流体貯留手段内と前記流体噴射ヘッドのノズル内とを連通させるべく前記開閉弁を開き動作させる。
【0015】
この発明によれば、強クリーニングが実行される場合には、開閉弁を閉じ動作させた後からクリーニング手段が駆動するため、流体供給路内において開閉弁よりも下流側は減圧された状態になる。この状態で開閉弁を開き動作させるため、開閉弁を流体供給路上に設けないでクリーニングを実行した場合に比して大きな吸引力を流体に付与することが可能になる。そのため、このような強クリーニングを実行することにより、流体供給路内に存在する気泡を流体噴射ヘッドのノズルから流体と共に効率的に排出することが可能になる。
【0016】
本発明の流体噴射装置におけるクリーニング制御方法は、流体噴射ヘッドのノズルから流体を吸引して排出させるクリーニングを実行する流体噴射装置におけるクリーニング制御方法であって、流体噴射装置の電源を断状態にする際に操作される電源断操作手段が操作された場合には、前記クリーニングでのクリーニングパターンに関して、前記流体噴射ヘッドからの流体の吸引量に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち、相対的に吸引力の大きな強クリーニングを実行するための強クリーニングパターンを選択し、該選択した強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを電源断時クリーニングとして実行した後に前記電源を断状態にするようにした。
【0017】
この発明によれば、電源断操作手段が操作されていない場合には、人為的な制御指令以外の強クリーニングパターンに基づく強クリーニングの実行が規制される。そのため、強クリーニングの実行に基づいて流体供給路内に発生した微細気泡が流体噴射ヘッドのノズルから噴射されることによる流体の噴射不良が抑制される。したがって、流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち吸引力の大きい強クリーニングパターンに基づく強クリーニングが実行された場合であっても、クリーニングの成功率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング制御方法を具体化した一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向(副走査方向)、左右方向(主走査方向)、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0019】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が設けられている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモータ14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0020】
また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、キャリッジ16が、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。すなわち、キャリッジ16は左右方向に貫通形成された支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、このガイド軸15の長手方向に沿って往復移動自在に支持されている。
【0021】
また、フレーム12の後壁内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ18の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリ17a,17b間には、キャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。したがって、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動可能となっている。
【0022】
キャリッジ16の下面側には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられる一方、キャリッジ16上には記録ヘッド19へ供給する複数種類のインク(流体)を貯留する流体貯留手段としてのインクカートリッジ20が着脱可能に搭載されている。このインクカートリッジ20の外側面には、図2に示すように、該インクカートリッジ20がキャリッジ16上に装着された場合に後述する制御装置40と電気的に接続状態になるICチップ21が設けられ、該ICチップ21には、制御装置40によって算出されたインクカートリッジ20内のインクの残量が記憶されるようになっている。
【0023】
また、記録ヘッド19には、その下面側に開口する複数(図2では1つのみ図示)のノズル22が形成されており、該各ノズル22内は、キャリッジ16及び記録ヘッド19内に形成された流体供給路としてのインク供給路23を介してインクカートリッジ20内とそれぞれ連通している。インク供給路23上には、後述した制御装置40に電気的に接続する開閉弁24(例えば、電磁弁)が配設されている。そして、開き状態にある開閉弁24が閉じ動作した場合には、インクカートリッジ20内と記録ヘッド19のノズル22とが非連通状態になる一方、閉じ状態にある開閉弁24が開き動作した場合には、インクカートリッジ20内と記録ヘッド19のノズル22とが連通状態になる。
【0024】
また、開閉弁24が開き状態にある場合に、記録ヘッド19内に設けられた圧電素子22Aが駆動することにより、インクカートリッジ20内のインクは、インク供給路23を介してノズル22内に供給されて該ノズル22から噴射されるようになっている。なお、記録ヘッド19の下面のうち各ノズル22の開口が形成された領域のことを、「ノズル形成面19a」というものとする。
【0025】
また、図1に示すように、フレーム12内の右端部、すなわち、用紙Pが至らない非印刷領域には、記録ヘッド19をメンテナンスする場合にキャリッジ16を位置させるためのホームポジションが設けられている。そして、このホームポジションに配置された状態のキャリッジ16の下方には、記録ヘッド19からの用紙Pに対するインク噴射が良好に維持されるように、各種のメンテナンス動作を行うクリーニング手段としてのメンテナンスユニット25が設けられている。
【0026】
次に、メンテナンスユニット25について図3に基づき以下説明する。
図3に示すように、メンテナンスユニット25は、記録ヘッド19のノズル形成面19aに各ノズル22を囲うようにして当接可能な上側が開口した有底四角箱状をなす合成樹脂製のキャップ26を備えている。キャップ26内には、該キャップ26の内底面全体を覆うように、可撓性を有する多孔質材料からなる四角板状のインク吸収材27が敷設されている。キャップ26の上面全体には、ゴム等の可撓性部材よりなる四角枠状のシール部材28が設けられている。
【0027】
また、キャップ26には、該キャップ26を昇降させるための昇降装置29が連結されている。そして、キャリッジ16を非印刷領域に移動させた状態で、キャップ26を昇降装置29によって上昇させることで、キャップ26はシール部材28の上面が記録ヘッド19のノズル形成面19aに密着し、各ノズル22を囲んだ状態となって記録ヘッド19に当接するようになっている。なお、このようにキャップ26がノズル形成面19aにシール部材28を密着させるようにして記録ヘッド19に当接した状態のことを以下では「当接状態」ともいい、この当接状態では、インク吸収材27の上面は、ノズル形成面19aから僅かに離間するようになっている。
【0028】
キャップ26の下面には、該キャップ26内からキャップ26外へインクを排出させる排出通路30aを内部に有する排出部30が下側に延びるように設けられている。排出部30には、可撓性材料よりなる排出チューブ31の一端部31a(上流側の端部)が接続されると共に、排出チューブ31の他端部31b(下流側の端部)は、タンク32(「廃インクタンク」ともいう。)内に挿入されている。したがって、キャップ26内とタンク32内とは、排出チューブ31を介して連通されている。そして、タンク32内に流入したインクは、タンク32内に収容されたインク吸収材33に吸収されるようになっている。
【0029】
また、排出チューブ31の中間部には、キャップ26内に吸引力を及ぼすために駆動される吸引ポンプ34(本実施形態ではチューブポンプ)が配設されている。そして、記録ヘッド19のノズル形成面19aにキャップ26のシール部材28が各ノズル22を囲うようにして密着した当接状態で吸引ポンプ34を駆動することで、各ノズル22内の増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ26及び排出チューブ31を介してタンク32内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、以降の記載において、記録ヘッド19からキャップ26内に排出されたインクのことを、「廃インク」ともいう。
【0030】
また、メンテナンスユニット25は、インク供給路23上の開閉弁24を利用する、いわゆるチョーククリーニングを行うようになっている。すなわち、このチョーククリーニングの際には、昇降装置29を駆動させることにより、キャップ26を上昇させて記録ヘッド19に当接させ、開き状態にある開閉弁24に閉じ動作させる。この状態で吸引ポンプ34を駆動させると、キャップ26内の空間(即ち、キャップ26と記録ヘッド19の下面とに囲まれた空間)の空気及びインクが排出チューブ31を介して吸引ポンプ34内に吸引される。その結果、キャップ26内は負圧状態になり、この負圧が記録ヘッド19の各ノズル22内に作用して、インク供給路23内における開閉弁24よりも下流側の流路内のインクが各ノズル22からキャップ26内に排出される。
【0031】
さらに吸引ポンプ34が駆動されると、インク供給路23内における開閉弁24よりも下流側の流路内は、さらに減圧される。この状態で閉じ状態にある開閉弁24が開き動作すると、インク供給路23内における開閉弁24よりも上流側の流路内のインクには、開閉弁24の開閉動作を伴わないクリーニングの場合に比して、より大きな吸引力が加わることになる。そのため、インク供給路23内においては、キャップ26内へのインクの流速が速くなる結果、もし仮にインク供給路23内に気泡が発生していたとしても該気泡はインクと共に各ノズル22からキャップ26内に排出される。
【0032】
したがって、本実施形態では、上記のように開閉弁24の開閉動作を伴ったチョーククリーニングのことを、相対的にインクの吸引力が大きい「強クリーニング」という一方、開閉弁24の開閉動作を伴わないクリーニングのことを、相対的にインクの吸引力が小さい「弱クリーニング」というものとする。なお、強クリーニングが実行された場合、インク供給路23内は、弱クリーニングが実行された場合に比してより大きく減圧されることになる。そのため、強クリーニングの終了後には、該クリーニングの実行に起因して、インク供給路23内においてインク内に溶解していた空気の一部が沸騰現象により析出してしまうおそれがある。すなわち、強クリーニングの終了後には、インク供給路23内に微細気泡(クリーニングによって排出される気泡よりも十分にサイズが小さい気泡)が発生してしまうおそれがある。このような微細気泡は、所定時間(例えば「15」分)程度経過するとインク内に自然に溶解する。
【0033】
次に、上記インクジェット式プリンタ11の電気的構成について図3に基づき以下説明する。
図3に示すように、インクジェット式プリンタ11は、該プリンタ11全体を制御する制御装置40を備えている。この制御装置40の入力側インターフェースには、プリンタ11と交流電源60を遮断状態(即ち、電源断状態)にする際に操作される電源断操作手段としての電源スイッチSW1、及びユーザの意志(人為的な制御指令)によりクリーニングを実行させる際に操作されるクリーニングスイッチSW2などが電気的に接続されている。一方、制御装置40の出力側インターフェースには、紙送りモータ14、キャリッジモータ18、開閉弁24、各圧電素子22A、昇降装置29及び吸引ポンプ34などが電気的に接続されている。そして、制御装置40は、電源スイッチSW1及びクリーニングスイッチSW2などからの入力信号に応じて、紙送りモータ14、キャリッジモータ18、開閉弁24、各圧電素子22A、昇降装置29及び吸引ポンプ34などの駆動を各別に制御するようになっている。
【0034】
また、制御装置40内には、制御手段としての制御部41と、電源コード42などを介して交流電源60と電気的に接続される電源回路43とが設けられている。制御部41には、CPU44、ROM45、RAM46、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)47、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)48及びタイマ49などが設けられている。ROM45には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各種の制御プログラム(後述するタイマクリーニング処理、マニュアルクリーニング処理、駆動終了処理等)、各種のテーブル(後述する各クリーニングパターンを示すテーブル等)及び各種閾値(後述する間隔時間閾値、インク残量閾値等)などが予め記憶されている。
【0035】
また、RAM46には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。さらに、EEPROM47には、インクジェット式プリンタ11が非給電状態になったとしても消去されるべきではない各種の情報(後述する経過時間等)などが記憶されるようになっている。タイマ49は、例えばクロック回路からのクロック信号に基づき生成された所定周波数の入力パルスのパルス数を計数するカウンタにより構成されたものであって、最後に後述するタイマクリーニングが実行されてからの経過時間を計測するようになっている。したがって、本実施形態では、タイマ49が、計測手段として機能するようになっている。なお、タイマ49は、ソフトウェアでタイマ機能を実現したソフトタイマであってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、制御部41(詳しくは、CPU44)は、用紙Pへのインクの噴射回数やクリーニングの回数などに基づき、インクの使用量を算出(検出)している。そして、制御部41は、現在のインクカートリッジ20内におけるインクの貯留量と算出されたインクの使用量とから、インクカートリッジ20内におけるインクの残量を算出し、該算出結果をインクカートリッジ20のICチップ21に記憶させるようになっている。したがって、本実施形態では、制御部41が、流体残量検出手段としても機能するようになっている。
【0037】
次に、ROM45に記憶されるテーブルについて図5に基づき以下説明する。
図5に示すテーブルには、本実施形態のメンテナンスユニット25が実行するクリーニングにおいて適用される複数種類(本実施形態では5種類)のクリーニングパターンが示されている。すなわち、ROM45の所定領域には、各クリーニング(マニュアルクリーニング、タイマクリーニング、交換クリーニング)の種類毎に各クリーニングパターンが分類して記憶されている。
【0038】
具体的には、マニュアルクリーニングは、クリーニングスイッチSW2が操作された場合に実行されるクリーニングであって、2種類のマニュアルクリーニングパターンMCL1,MCL2が設定されている。また、タイマクリーニングは、最後に実行されたタイマクリーニングが終了してからの経過時間が予め設定された間隔時間閾値(本実施形態では10日)を超えた場合において印刷を実行するときに、その前処理として実行されるクリーニングであって、2種類のタイマクリーニングパターンTCL1,TCL2が設定されている。さらに、交換クリーニングは、インクカートリッジ20内のインクの残量が予め設定された残量閾値未満になった際に実行されるクリーニングであって、1種類の交換クリーニングパターンCCLが設定されている。
【0039】
各クリーニングパターンMCL1,MCL2,TCL1,TCL2,CCLは、各パターンに基づくクリーニングが実行された場合における記録ヘッド19の各ノズル22からのインクの吸引流速(即ち、吸引力)の差に応じて、2つに分類可能である。すなわち、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1及び第1タイマクリーニングパターンTCL1は、上述した弱クリーニングを実行するための弱クリーニングパターンに分類される。一方、第2マニュアルクリーニングパターンMCL2、第2タイマクリーニングパターンTCL2及び交換クリーニングパターンCCLは、強クリーニング(チョーククリーニング)を実行するための強クリーニングパターンに分類される。したがって、本実施形態では、ROM45が、パターン記憶手段として機能するようになっている。
【0040】
電源回路43は、交流電源60(例えば100V)から入力した交流電圧を所定の直流電圧に変換する。そして、電源回路43は、制御部41や図示しない各駆動回路に直流電圧を各別に供給するようになっている。例えば、電源回路43は、制御部41には制御系の直流電圧(例えば3〜6V)を供給すると共に、紙送りモータ14やキャリッジモータ18を駆動させるための各モータ駆動回路にはモータ駆動系の直流電圧(例えば約30〜50V)をそれぞれ供給するようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の制御部41が実行する各種制御処理のうち、タイマクリーニング処理ルーチン、マニュアルクリーニング処理ルーチン及び駆動終了処理ルーチンについて以下説明する。なお、タイマクリーニング処理ルーチンは、タイマクリーニングの実行の有無を判定するための制御処理である。また、マニュアルクリーニング処理ルーチンは、クリーニングスイッチSW2が操作された際に実行される制御処理である。そして、駆動終了処理ルーチンは、電源スイッチSW1が操作された際に実行される制御処理である。
【0042】
まず始めに、タイマクリーニング処理ルーチンについて、図6に示すフローチャートに基づき以下説明する。
さて、制御部41は、印刷(用紙Pへのインクの噴射)を実行する前処理としてタイマクリーニング処理ルーチンを実行する。そして、このタイマクリーニング処理ルーチンにおいて、制御部41は、最後に実行されたタイマクリーニングが終了してからの経過時間T1をタイマ49の計測結果から読み出し、該経過時間T1が予め設定された間隔時間閾値KT1以上であるか否かを判定する(ステップS10)。この間隔時間閾値KT1は、タイマクリーニングを実行させる間隔を設定した値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0043】
ステップS10の判定結果が否定判定(T1<KT1)である場合、制御部41は、タイマクリーニング処理ルーチンを終了する。一方、ステップS10の判定結果が肯定判定(T1≧KT1)である場合、制御部41は、ROM45に記憶されているテーブル(図5に示すテーブル)から第1タイマクリーニングパターンTCL1を読み出す(ステップS11)。続いて、制御部41は、タイマクリーニングの実行回数をカウントするクリーニングカウンタKKを「1」だけインクリメントする(ステップS12)。なお、クリーニングカウンタKKがカウントした値は、EEPROM47の所定領域に記憶されるようになっている。
【0044】
そして、制御部41は、第1タイマクリーニングパターンTCL1に基づくタイマクリーニング(弱クリーニング)を実行するために、キャリッジ16がホームポジションに位置していることを確認してからメンテナンスユニット25の駆動を制御する(ステップS13)。すなわち、本実施形態では、印刷を実行する前には第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づく強クリーニングが実行されることなく、第1タイマクリーニングパターンTCL1に基づく弱クリーニングが実行される。そして、制御部41は、タイマクリーニングが終了したか否かを判定する(ステップS14)。
【0045】
この判定結果が否定判定である場合、制御部41は、ステップS14の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS14の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定である場合、制御部41は、実行したクリーニングの実行パターン(この場合、第1クリーニングパターンTCL1)をEEPROM47の所定領域に上書き記憶させる(ステップS15)。したがって、本実施形態では、EEPROM47が、実行パターン記憶手段としても機能する。その後、制御部41は、タイマクリーニング処理ルーチンを終了する。
【0046】
そして、制御部41は、キャリッジ16を左右方向に移動させつつ記録ヘッド19の各ノズル22からインクを噴射させることにより用紙Pへの印刷を行う。この印刷時においては、前処理で実行されたクリーニングが強クリーニングではなく弱クリーニングであるため、インク供給路23内での微細気泡の発生もほとんどない。そのため、微細気泡が記録ヘッド19の各ノズル22から噴射されることもないため、タイマクリーニングの失敗に起因したインクの噴射不良の発生が抑制される。
【0047】
次に、マニュアルクリーニング処理ルーチンについて以下説明する。
さて、制御部41は、クリーニングスイッチSW2が操作されたことを契機にマニュアルクリーニング処理ルーチンを実行する。そして、このマニュアルクリーニング処理ルーチンにおいて、制御部41は、ユーザによるクリーニングスイッチSW2の操作態様に応じたマニュアルクリーニングパターンMCL1,MCL2をROM45に記憶されているテーブル(図5に示すテーブル)から読み出す。例えば、所定時間(例えば「1」秒)以内に1回だけクリーニングスイッチSW2が操作された場合、制御部41は、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1を読み出す。また、所定時間以内に2回以上クリーニングスイッチSW2が操作された場合、制御部41は、第2マニュアルクリーニングパターンMCL2を読み出す。
【0048】
続いて、制御部41は、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1が読み出された場合には、該第1マニュアルクリーニングパターンMCL1に基づくマニュアルクリーニングを実行させる。一方、制御部41は、第2マニュアルクリーニングパターンMCL2が読み出された場合には、該第2マニュアルクリーニングパターンMCL2に基づくマニュアルクリーニングを実行させる。そして、制御部41は、マニュアルクリーニングが終了した場合に、実行したマニュアルクリーニングの実行パターン(第1マニュアルクリーニングパターンMCL1又は第2マニュアルクリーニングパターンMCL2)をEEPROM47の所定領域に上書き記憶させ、その後、マニュアルクリーニング処理ルーチンを終了する。すなわち、本実施形態では、所定時間以内に2回以上クリーニングスイッチSW2が操作された場合、即ち、人為的な制御指令が制御部41に入力された場合、電源スイッチSW1が未操作であっても強クリーニングが実行される。
【0049】
最後に、駆動終了処理ルーチンについて図7に示すフローチャートに基づき以下説明する。
さて、制御部41は、電源スイッチSW1が操作されたことを契機に駆動終了処理ルーチンを実行する。そして、この駆動終了処理ルーチンにおいて、制御部41は、電源スイッチSW1の操作前において最後に実行されたクリーニングの実行パターンをEEPROM47の所定領域から読み出す(ステップS20)。続いて、制御部41は、ステップS20にて読み出した実行パターンが強クリーニングパターンであるか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果が肯定判定である場合、制御部41は、連続して強クリーニングが実行されることを回避するために、その処理を後述するステップS29に移行する。
【0050】
一方、ステップS21の判定結果が否定判定である場合、制御部41は、最後に実行されたクリーニングが弱クリーニングであると判断し、インクカートリッジ20のICチップ21から該インクカートリッジ20内のインクの残量IQを読み出す(ステップS22)。そして、制御部41は、ステップS22にて読み出したインクの残量IQが予め設定されたインク残量閾値KIQ未満であるか否かを判定する(ステップS23)。このインク残量閾値KIQは、インクカートリッジ20の交換をユーザに促す契機となる値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。なお、本実施形態では、インク残量閾値KIQは、1回の強クリーニングが実行された際に、記録ヘッド19の各ノズル22から十分にインクを排出できる程度の値に設定されている。
【0051】
そして、ステップS23の判定結果が肯定判定(IQ<KIQ)である場合、制御部41は、その処理を後述するステップS26に移行する。一方、ステップS23の判定結果が否定判定(IQ≧KIQ)である場合、制御部41は、クリーニングカウンタKKが「4」以上であるか否かを判定する(ステップS24)。この判定結果が否定判定(KK<「4」)である場合、制御部41は、強クリーニングを実行することなく、その処理を後述するステップS29に移行する。一方、ステップS24の判定結果が肯定判定(KK≧「4」)である場合、制御部41は、クリーニングカウンタKKを「0(零)」にセットし(ステップS25)、その後、その処理を後述するステップS26に移行する。
【0052】
ステップS26において、制御部41は、ステップS23の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM45のテーブル(図5に示すテーブル)から交換クリーニングパターンCCLを読み出す。そして、制御部41は、読み出した交換クリーニングパターンCCLに基づく交換クリーニング(即ち、強クリーニング)を電源断時クリーニングとして実行すべく、メンテナンスユニット25の駆動を制御する。すなわち、本実施形態では、インクカートリッジ20を交換する必要がある場合において、電源スイッチSW1が操作されたときには、インクカートリッジ20の交換前に強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行される。なお、電源スイッチSW1が操作される前にインクカートリッジ20の交換が行われた場合には、新しいインクカートリッジ20内のインクの残量IQはインク残量閾値KIQ以上となるため、このタイミングで交換クリーニングが行われることはない。
【0053】
また、制御部41は、ステップS24の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM45のテーブル(図5に示すテーブル)から第2タイマクリーニングパターンTCL2を読み出す。そして、制御部41は、読み出した第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づくタイマクリーニング(即ち、強クリーニング)を電源断時クリーニングとして実行すべく、メンテナンスユニット25の駆動を制御する。すなわち、第1タイマクリーニングパターンTCL1に基づくタイマクリーニング(弱クリーニング)が「4」回実行された場合において、電源スイッチSW1が操作されたときには、強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行される。
【0054】
そして、制御部41は、クリーニングが終了したか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果が否定判定である場合、制御部41は、ステップS27の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS27の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS27の判定結果が肯定判定である場合、制御部41は、メンテナンスユニット25の駆動を停止させ、キャップ26の当接状態を維持させる(ステップS28)。
【0055】
ステップS29において、制御部41は、タイマ49が計測している経過時間T1をEEPROM47の所定領域に記憶させる。続いて、制御部41は、電源回路43の電源を遮断する指令を出力する電源遮断処理を実行し(ステップS30)、その後、駆動終了処理ルーチンを終了する。すると、インクジェット式プリンタ11と交流電源60とが遮断状態になる。
【0056】
すなわち、本実施形態では、クリーニングスイッチSW2の操作に基づいて第2マニュアルクリーニングパターンMCL2が選択された場合を除いて、強クリーニングパターンに基づく強クリーニングは、電源スイッチSW1が操作された場合にのみ実行される。そのため、強クリーニングの実行に起因してインク供給路23内に微細気泡が多数発生したとしても、インクジェット式プリンタ11と交流電源60とが遮断状態になり、強クリーニングの終了直後に印刷が実行されることはない。そして、この間(電源が遮断されている間)にインク供給路23内においては、微細気泡がインク内に自然に溶解するため、再びインクジェット式プリンタ11が駆動した場合には、微細気泡に起因したインクの噴射不良の発生が回避される。
【0057】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電源スイッチ(電源断操作手段)SW1が操作されていない場合には、クリーニングスイッチSW2の操作に基づいて第2マニュアルクリーニングパターンMCL2が選択された場合を除いて、強クリーニングの実行が規制される。そのため、強クリーニングの実行に基づいてインク供給路(流体供給路)23内に発生した微細気泡が記録ヘッド(流体噴射ヘッド)19の各ノズル22から噴射されることによるインク(流体)の噴射不良が抑制される。したがって、記録ヘッド19からのインクの吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンTCL1,TCL2,CCLのうち相対的に吸引力の大きいクリーニングパターン(強クリーニングパターン)TCL2,CCLに基づく強クリーニングが実行された場合であっても、クリーニングの成功率の低下を抑制できる。
【0058】
(2)また、電源スイッチSW1が操作されない状態で強クリーニングを実行した状態で、強クリーニングの実行に基づきインク供給路23内に発生した微細気泡に起因した印刷不良(即ち、インクの噴射不良)を回避する方法として、強クリーニングの実行後に所定時間だけインクの噴射を禁止する方法が考えられる。この場合、上記所定時間の間、印刷をすぐにでも実行したいユーザを待たせてしまうという問題がある。その点、本実施形態では、ユーザの意志に基づいた強クリーニング(第2マニュアルクリーニングパターンMCL2に基づく強クリーニング)以外の強クリーニングが実行された場合には、電源遮断処理が実行される。したがって、強クリーニングの実行に基づいてインク供給路23内に発生した微細気泡がインク内に自然溶解するまでユーザに印刷の実行を待たせてしまうことを回避できる。
【0059】
(3)また、電源スイッチSW1が操作されない状態で強クリーニングが実行された際に、強クリーニングの実行に基づきインク供給路23内に発生した微細気泡を強制的に取り除く方法として、弱クリーニングを実行する方法が考えられる。しかしながら、この場合、クリーニングを連続して実行することになるため、インクの消費量が多くなってしまうという問題があった。この点、本実施形態では、ユーザの意志に基づいた強クリーニング(第2マニュアルクリーニングパターンMCL2に基づく強クリーニング)以外の強クリーニングが実行された場合には、電源遮断処理が実行されるため、インク供給路23内の微細気泡がインク内に自然に溶解する時間を十分に確保できる。したがって、インクの消費過多を抑制できる。
【0060】
(4)電源スイッチ(電源断操作手段)SW1が操作される前において最後に実行されたクリーニングが強クリーニングである場合には、電源スイッチ(電源断操作手段)SW1が操作されたときに強クリーニングが実行されずに、インクジェット式プリンタ(流体噴射装置)11と交流電源60とが遮断された状態になる。そのため、強クリーニングが連続して実行されることによるインク(流体)の噴射過多を抑制できる。
【0061】
(5)一般に、インク供給路(流体供給路)23内のインク中に含まれる気泡が大きくなるには、時間がかかる。そこで、本実施形態では、第1タイマクリーニングパターンTCL1に基づくタイマクリーニング(弱クリーニング)の実行回数であるクリーニングカウンタKKが所定回数(=「4」)以上である状態で電源スイッチ(電源断操作手段)SW1が操作された場合に、第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づくタイマクリーニング(強クリーニング)が電源断時クリーニングとして実行されるようになっている。そのため、電源スイッチSW1が操作される度に強クリーニングが電源断時クリーニングとして実行される場合に比して、クリーニングによるインクの消費過多を抑制できる。
【0062】
(6)通常、インク(流体)切れのインクカートリッジ(流体貯留手段)20を新しいインクカートリッジ20に交換する際に実行される交換クリーニング(強クリーニング)は、インクカートリッジ20の交換直後に実行される。そして、この交換クリーニングが実行されることにより、今回のインクカートリッジ20の交換ではなく、前回のインクカートリッジ20の交換時にインク供給路(流体供給路)23内に混入してしまった気泡がインクと共に排出されることになる。しかしながら、この場合、交換クリーニングの実行に基づきインク供給路(流体供給路)23内に発生した微細気泡がインク内に自然に溶解する前に印刷を実行させようとしたときには、微細気泡がインクと共にノズル22から噴射されることによるインクの噴射不良が発生するおそれがあった。そこで、本実施形態では、電源スイッチ(電源断操作手段)SW1が操作された際において、インクカートリッジ20内のインクの残量IQがインク残量閾値KIQ未満になった場合には、次回に電源が投入されたときにインクカートリッジ20の交換が実行されると判断して交換クリーニング(強クリーニング)が実行される。そのため、強クリーニングが実行されてインク供給路23内に微細気泡が存在する状態で記録ヘッド19からインクが噴射されることを回避できる。
【0063】
(7)本実施形態の強クリーニングは、インク供給路(流体供給路)23上に配設された開閉弁24を用いたチョーククリーニングである。そのため、強クリーニングを実行することにより、インク供給路23内に存在する気泡(上記微細気泡よりも十分に大きいサイズの気泡)を記録ヘッド(流体噴射ヘッド)19の各ノズル22から効率的に排出することができる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、強クリーニングは、弱クリーニングの実行時よりも吸引ポンプの回転速度が速くなるように設定されたものであってもよい。この場合、インク供給路23上に開閉弁24を設けなくてもよい。このように構成しても上記(1)〜(6)の作用効果を得ることができる。
【0065】
・上記実施形態において、流体噴射装置を、インクカートリッジ20をキャリッジ16とは別の位置に配置するいわゆるオフキャリタイプのインクジェット式プリンタに具体化してもよい。この場合、開閉弁24は、インク供給路23内において、開閉弁24の配置位置よりも下流側の流路内が減圧された場合に閉じ動作する一方、開閉弁24の配置位置よりも上流側の流路内が加圧された場合に開き動作する弁装置であってもよい。このように構成しても上記(1)〜(7)の作用効果を得ることができる。
【0066】
・上記実施形態において、駆動終了処理ルーチンにおいてステップS22とステップS23を実行せずに、ステップS21の処理の実行後にステップS24の判定処理を実行するようにしてもよい。この場合、インクカートリッジ20の交換が行われた際に交換クリーニングを実行し、インク供給路23内の微細気泡がインク内に自然に溶解するまでの間、印刷を実行しないようにすることが望ましい。このように構成しても上記(1)、(3)〜(7)の作用効果を得ることができる。
【0067】
・上記実施形態において、ROM45のテーブルには、記録ヘッド19からのインクの吸引力に差を持たせた3種類以上のタイマクリーニングパターンが記憶されていてもよい。このように構成しても上記(1)〜(7)の作用効果を得ることができる。
【0068】
・上記実施形態において、クリーニングを実行した場合には、該クリーニングに対応するクリーニングパターン(実行パターン)をRAM46に記憶させるようにしてもよい。この場合、RAM46が実行パターン記憶手段として機能することになる。このように構成しても上記(1)〜(7)の作用効果を得ることができる。
【0069】
・上記実施形態において、キャップ26は、その一部が記録ヘッド19に当接した状態で吸引ポンプ34が駆動した場合に、記録ヘッド19から廃インクが吸引されるような構成であればよい。例えば、キャップ26は、その上側部が記録ヘッド19の側面に当接可能な構成であってもよい。
【0070】
・上記実施形態において、電源スイッチSW1が操作された場合には、強クリーニングが必ず実行されるような構成であってもよい。このように構成しても、電源が断状態である間に、強クリーニングの実行に基づいてインク供給路23内に発生した微細気泡はインク内に溶解ことになる。そのため、電源が投入された場合には、強クリーニングの実行によりインク供給路23内に発生した微細気泡はインク中に溶解しているため、該微細気泡が記録ヘッド19から噴射されることによるインクの噴射不良を抑制できる。
【0071】
・上記実施形態において、流体噴射装置を、用紙Pの搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッド19が用紙Pの幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプのプリンタに具体化してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略斜視図。
【図2】キャリッジ上の構成を説明する模式図。
【図3】メンテナンスユニットの模式図。
【図4】電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】各クリーニングパターンを示すテーブル。
【図6】タイマクリーニング処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図7】駆動終了処理ルーチンを説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0074】
11…インクジェット式プリンタ(流体噴射装置)、19…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、20…インクカートリッジ(流体貯留手段)、22…ノズル、23…インク供給路(流体供給路)、24…開閉弁、25…メンテナンスユニット(クリーニング手段)、41…制御部(制御手段)、45…ROM(パターン記憶手段)、47…EEPROM(実行パターン記憶手段)、49…タイマ(計測手段)、60…交流電源、CCL…交換クリーニングパターン、IQ…インクの残量(流体の残量)、KIQ…インク残量閾値、KT1…間隔時間閾値、MCL1,MCL2…マニュアルクリーニングパターン、SW1…電源スイッチ(電源断操作手段)、T1…経過時間、TCL1,TCL2…タイマクリーニングパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給路を介して流体貯留手段から供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、
該流体噴射ヘッドのノズルから流体を吸引して排出させるクリーニングを実行するクリーニング手段と、
流体噴射装置の電源を断状態にする際に操作される電源断操作手段と、
前記クリーニング時には前記流体噴射ヘッドからの流体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち何れか一つのクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行されるように前記クリーニング手段の駆動を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合に、前記各クリーニングパターンのうち相対的に吸引力の大きな強クリーニングパターンに基づいた強クリーニングを電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする流体噴射装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段によって実行されたクリーニングの実行パターンを記憶する実行パターン記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合には、その操作前において最後に実行されたクリーニングの実行パターンを前記実行パターン記憶手段から読み出し、該読み出した実行パターンが前記強クリーニングパターンであるときには、前記電源断時クリーニングを未実行の状態で前記電源を断状態にする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記クリーニング手段により最後にクリーニングが実行されてからの経過時間を計測する計測手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記計測手段によって計測された経過時間が予め設定された間隔時間閾値を超えた場合には、前記各クリーニングパターンのうち相対的に吸引力の小さな弱クリーニングパターンに基づいた弱クリーニングがタイマクリーニングとして実行されるように前記クリーニング手段の駆動を制御するようになっており、
前記制御手段は、前記弱クリーニングによるタイマクリーニングが予め設定された所定回数実行された後において前記電源断操作手段が操作された場合には、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを前記電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体貯留手段内に貯留されている流体の残量を検出する流体残量検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電源断操作手段が操作された場合において、前記流体残量検出手段によって検出された流体の残量が予め設定された残量閾値未満になったときには、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを前記電源断時クリーニングとして実行させるべく前記クリーニング手段の駆動を制御し、該クリーニング手段の駆動停止後に前記電源を断状態にする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体供給路上に配設された開閉弁をさらに備え、
前記制御手段は、前記強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを実行する場合には、前記開閉弁を閉じ動作させることにより前記流体供給路内において前記流体貯留手段内と前記流体噴射ヘッドのノズル内とを非連通状態にしてから前記クリーニング手段の駆動を開始させ、その後、前記流体供給路内において前記流体貯留手段内と前記流体噴射ヘッドのノズル内とを連通させるべく前記開閉弁を開き動作させる請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
流体噴射ヘッドのノズルから流体を吸引して排出させるクリーニングを実行する流体噴射装置におけるクリーニング制御方法であって、
流体噴射装置の電源を断状態にする際に操作される電源断操作手段が操作された場合には、前記クリーニングでのクリーニングパターンに関して、前記流体噴射ヘッドからの流体の吸引量に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンのうち、相対的に吸引力の大きな強クリーニングを実行するための強クリーニングパターンを選択し、該選択した強クリーニングパターンに基づく強クリーニングを電源断時クリーニングとして実行した後に前記電源を断状態にするようにした流体噴射装置におけるクリーニング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−200885(P2008−200885A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36474(P2007−36474)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】