説明

流体噴射装置

本発明は、噴射軸(AB)を有するインジェクタ(7)に関するものであり、本インジェクタ(7)は、軸方向空洞(20)を含むハウジング(2):電気活性部分(30)を含み、且つ貫通部材(33)の形態で延在する第1前面部(31)と第1前面部(31)とは反対側にある第2前面部(32)とを有するアクチュエータ(3)であって、ハウジング(2)内に取り付けられ、部材(33)が、空洞(20)内に挿入されたピストン(330)を含み、且つアクチュエータ(3)とハウジング(2)との間の流体連結部を画定しているアクチュエータ(3);並びにアクチュエータ(3)の電気活性部分(30)を設定周期τで振動させる駆動手段を備えている。本発明によれば、貫通部材(33)は、貫通部材(33)を通って伝搬する音響波の伝搬時間(T)が、等式:T=[2n+1][τ/4](nは正の整数の乗算係数)を満たすような長さ(L)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体、例えば燃料の噴射装置に関し、特に内燃機関用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
更に詳細には、本発明は、本発明の第1の態様によれば、インジェクタとして知られる、加圧流体1を噴射する噴射装置7に関するものであり、例えば特許文献1に記載されているもののような、図1に部分的に示す先行技術によるものと同様の装置である。この公知のインジェクタ7は、主噴射軸ABを有し、且つ少なくとも、
−加圧流体1で満たされ、且つハウジング2の内部20に通じる少なくとも1つの軸方向空洞20を含むハウジング2、
−電気活性材料300を含む少なくとも1つの電気活性部分30を含む積層構造を呈するアクチュエータ3であって、
・貫通部材33が軸方向に延在する方向と直交する第1横断面31と、
・第1面とは軸方向に反対側に位置する第2横断面32と
を有し、ハウジング2内を軸方向に移動することができるように取り付けられており、前記部材33が、空洞20内をほぼ流体密封状態で摺動するピストン330を含み、且つアクチュエータ3とハウジング2との間の流体接続部を形成する、アクチュエータ3、
−アクチュエータ3の電気活性部分30を設定周期τで振動させるように設計された駆動手段
を備えている。
【0003】
先行技術においては、流体接続部は、振動ピストン330と静止空洞20との摩擦を小さくするために、ピストン330の位置における流体の浸出(ごくわずかな流れ)を可能にする必要があることにより、不完全である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願第2888889号
【発明の概要】
【0005】
このような状況により、本発明の目的は、この困難を克服して、更に効果的な流体接続部を実現することである。この目的のために、上述した本発明の一般的定義による他の態様の噴射装置は、基本的に、前記貫通部材が軸方向長さを有することにより、アクチュエータの電気活性部分の振動によって発生し、且つこの長さに沿って伝搬する、「音響飛行時間」と呼ばれる音響波の伝搬時間Tが、次の等式:
T=[2n+1][τ/4] (E1)
(nは正の整数の係数)を満たすことを特徴とする。
【0006】
インジェクタをこのようにして構成することにより、ピストンと空洞との間で完全な密閉を達成し易くなる。音響構造が特殊であるため、特に貫通部材の軸方向の音響長さが選択的であるため、ピストン、特に空洞の方を向き、且つアクチュエータの第1横断面とは軸方向に沿って反対側に位置する当該ピストンの自由端は振動節を呈する傾向があり、すなわち空洞に対して実質的に不動状態を保持し、しかもその際にハウジング内でのアクチュエータの振動的な動きを防止しない。その結果、ピストンを潤滑する必要が無いので、当該ピストンを空洞に一致するように機械加工することにより、流体の前記浸出を防止し、更に効果的な流体接続部を実現することができる。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、本発明による流体噴射装置を使用する内燃機関に関し、すなわちこのような噴射装置を搭載しているエンジンに関する。
【0008】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図面を参照し、非制限的な例示とする後述の説明から明白になると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、先行技術によるインジェクタの図であり、このインジェクタは、エンジンに搭載され、且ついわゆる突出先端タイプのニードルを備えており、ニードルは、ハウジング内に軸方向に取り付けられるアクチュエータに接続されている。
【図2】図2は、本発明によるインジェクタの図であり、このインジェクタは、エンジンに搭載され、且ついわゆる突出先端タイプのニードルを備えており、ニードルは、ハウジング内に軸方向に取り付けられるアクチュエータに接続されている。
【図3】図3は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、一方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的側面図である。
【図4】図4は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、一方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的上面図である。
【図5】図5は、本発明によるインジェクタの、ピストンと少なくとも1つの折り返し部を含む中間ボディとを有する貫通部材の長手方向の簡略断面図である。
【図6】図6は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、二方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的側面図である。
【図7】図7は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、二方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的上面図である。
【図8】図8は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、二方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的側面図である。
【図9】図9は、本発明によるインジェクタの、ピストンと、二方向横断面を有する穿孔中間ボディとを含む貫通部材の簡単な模式的上面図である。
【図10】図10は、ノズル及び突出先端ニードルにより形成されるバルブの動作を示す図であり、バルブが閉じた状態を示している。
【図11】図11は、ノズル及び突出先端ニードルにより形成されるバルブの動作を示す図であり、バルブが開いた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
先行技術を開示した図1については、既に説明した。
【0011】
既述のように、また図2〜11に示すように、本発明は、噴射装置7、又はインジェクタに関するものであり、このインジェクタは、加圧流体1をインジェクタ7から噴射するように構成される。この加圧流体は、例えば、
−内燃機関8の燃焼室80(図2)中に噴射されるか、
−吸気ダクト(図示せず)中に噴射されるか、又は
−内部での酸化反応を容易にして煤を酸化するために、排気ダクト、特に前記排気ダクトに収容される排出制御手段中に噴射される
加圧燃料1とすることができる。
【0012】
インジェクタ7は、主噴射軸ABを有し、この主噴射軸ABは、好ましくは、当該インジェクタの対称軸に一致する。
【0013】
インジェクタ7は、好ましくは円筒形(例えば、回転対称を呈する)の少なくとも1つのハウジング2を備えており、このハウジング2は、少なくとも1つの軸方向空洞(ボア)20を含み、この軸方向空洞(ボア)20は加圧流体1で満たされ、且つハウジング2の内部21に開口している。図2に示すように、ハウジング2は、少なくとも1つの第1加圧開口部22を介してエンジン8の少なくとも1つの加圧回路9に接続することができる。加圧回路9は、加圧流体1を処理する少なくとも1つの装置90を含み、この装置90は、例えばポンプ、タンク、フィルタ、バルブを含む。前述の先行技術におけるように、加圧流体1を搬送する流路がハウジング2内に配置されて、加圧回路9を加圧開口部22に接続することができる。
【0014】
インジェクタ7は、円筒形(例えば、回転対称を呈する)の積層構造を有する少なくとも1つのアクチュエータ3を含み、このアクチュエータ3は、電気活性材料300を含む少なくとも1つの電気活性部分30を含んでいる。電気活性材料300は、所定の周波数ν、例えば約20kHz〜約60kHzの超音波周波数の振動、すなわちそれぞれ約50μs〜約16μsの設定振動周期τを持つ振動(図3、5、6、8に矢印Yを使用して図示される)を生じさせるように構成される。例えば、スチールの場合、振動波長λは、ν=50kHz(τ=20μs)で約10−1mである。アクチュエータ3は、電気活性部分30を設定周期τで振動させる(特に、軸方向に振動させる)ように構成された駆動手段14を少なくとも含む。
【0015】
積層構造は、アクチュエータ3に一致し(図2)、貫通部材33が軸方向に延在する方向と直交する第1横断面31と、第1面31とは軸方向に反対側の端部に位置する第2横断面32とを備える。貫通部材33の直線寸法、例えば軸ABに直交する方向に測定される幅、及び/又は軸ABに沿って測定される長さは、積層構造のこれらの寸法よりも小さい。前記貫通部材33はピストン330を含むことができ、このピストン330は、空洞20内にほぼ流体密封状態で係合し、アクチュエータ3とハウジング2との間の流体接続部を形成する。前記流体接続部は、円筒形アクチュエータにおけるように、加圧流体1(図2のハウジング2の内部21に位置するインジェクタ7の加圧領域による)と、インジェクタ7の減圧領域によるこの同じ流体10との間でピストン330に作用する圧力差に影響を与える。これは、減圧開口部23及びバルブのような少なくとも1つの遮断手段120を介して空洞20に接続される減圧回路12の形態で図2に描かれている。
【0016】
アクチュエータ3は、ハウジング2内に可動に取り付けられている。したがって、アクチュエータ3は、ハウジング内で軸方向に振動するように構成される。アクチュエータ3は、軸ABの回りを回転するように構成することもできる。前記流体接続部を利用して、アクチュエータ3をハウジング2に対して所定の軸方向位置に移動させ、インジェクタ7が定常状態で作動している間、すなわち、エンジン8の始動フェーズ、及び停止フェーズ以外のフェーズで所定の温度で作動している間は、その位置に維持することができる。
【0017】
本発明によれば、前記貫通部材33は、アクチュエータ3の電気活性部分30の振動により発生し、且つ「音響長さ」として知られる軸方向長さLに沿って伝搬する音響波の伝搬時間Tが次の等式:
T=[2n+1][τ/4] (E1)
(nは正の整数の係数)を満たすような、軸方向長さLを有している(図2〜3、5〜6、8)。
【0018】
貫通部材33の軸方向の音響長さL、及び軸方向の直線寸法(非音響的な寸法)は普通、2つの別個の物理値の形態をとることを理解されたい。図2〜3、5〜6、8は、これらの2つの値が一致する特殊な場合を示していることに注意されたい。
【0019】
好適には、前記貫通部材33は、ピストン330と第1横断面31との間に軸方向に配置される少なくとも1つの中間ボディ331を含む。更に、ピストン330は、半径方向に中間ボディ331を越えて突出している。
【0020】
このような構成により、貫通部材33の重量を軽量化することができ、またピストン330上に、第1横断面31の方を向き、且つ中間ボディ331に(、最終的にアクチュエータ3に)加圧流体1から生じる加圧力を伝達するように設計される第1摺動面3301(図3、5〜6、8)を形成することができる。このように、ハウジング2の外部に向かう方向に第1流体摺動面3301に作用する加圧流体1を使用して、図2の矢印ABとは反対の方向に、軸に沿ってピストン330(及び、従ってアクチュエータ3)を押すことができる。
【0021】
好適には、ピストン330の軸方向の音響長さhは、中間ボディ331の長さhと比べると無視することができる:h<<h(図8)。同様に、ピストン330の軸方向の直線厚さ(非音響的な厚さ)は、中間ボディ331の軸方向の直線寸法(非音響的な寸法)と比べると無視することができる。これらの構成は、貫通部材33の更なる軽量化に寄与することができる。
【0022】
前記中間ボディ331は、以下のボディのうちの1つとすることができる:(a)前記軸ABに直交する方向に少なくとも1つの一方向断面を有する第1ボディ3310(図3〜4に示す薄板3310のような)、(b)前記軸ABに直交する方向に少なくとも1つの二方向固体断面を有する第2ボディ3311(図5〜7に示す回転円筒体形状の軸方向固体ロッド3311のような)、(c)前記軸ABに直交する方向に少なくとも1つの二方向中空断面を有する第3ボディ3312(図8〜9に示す筒状チューブ3312のような)。
【0023】
これらの構成により、貫通部材33を更に一層軽量化することができる。
【0024】
好適には、前記中間ボディ331は穿孔される(図3、5)。
【0025】
これらの構成はまた、貫通部材33の重量を減らすように作用する。
【0026】
前記中間ボディ331は、少なくとも1つの折り返し部3313を含むことができる。図5は、軸ABに対して対称に配置された2つの折り返し部3313を含む中間ボディ331の別の形状の実施形態を示している。更に、前記中間ボディ331は、図3において軸方向穿孔3315により示され、図5において不連続軸方向固体ロッド3311により示される、少なくとも1つの軸方向に不連続な領域3314を含むことができる。
【0027】
これらの構成により、前記中間ボディ331の軸方向の大きさのみを、当該中間ボディの軸方向の音響長さLを変更することなく減らすことができる。
【0028】
インジェクタ7は、軸ABに沿って一定の長さを有する少なくとも1つのノズル6を備え、このノズル6は、前記軸ABに沿って、噴射孔60と、シート部61とを含んでいる。反対側の端部では、ノズル6はハウジング2に接続される(図2)。ハウジング2の直線寸法、例えば軸ABに直交する方向に測定される幅、及び/又は軸ABに沿って測定される長さは、ノズル6のこれらの寸法よりも大きくすることができる。ハウジング2の密度はノズル6の密度よりも大きくすることができる。
【0029】
インジェクタ7は、少なくとも1つのニードル5を備える。このニードル5は、前記軸ABに沿って、シート部61との接触領域にバルブを画定する自由端50を有している。反対側の端部では、ニードル5は、アクチュエータ3の積層構造、特に当該アクチュエータの第2横断面32に、第1連結領域Zを介して接続される(図2)。アクチュエータ3の直線寸法、例えば軸ABに直交する方向に測定される幅、及び/又は軸ABに沿って測定される長さは、ニードル5のこれらの寸法よりも大きくすることができる。アクチュエータ3の密度は、ニードル5の密度よりも大きくすることができる。アクチュエータ3は、前記設定周期τでニードル5を振動させ、当該ニードルの端部50とノズル6のシート部61との間に、図10〜11に示すようにバルブを交互に開閉することができる相対移動を生じるように設計されている。したがって、アクチュエータ3は、ニードル5を制御する能動「マスター」として機能し、従ってこのニードル5が被制御受動「スレーブ」として動作する。
【0030】
これらの構成により、バルブが開くときにノズル6から漏れ出す加圧流体1により形成される層状流(sheet)が壊れ、微小液滴(図示せず)を形成する。燃焼室80中に燃料を噴射するインジェクタ7の1つの適用形態では、微小液滴によって空気/燃料の混合がより均一に行なわれ、これによってエンジン8の排出量が低減して当該エンジンの燃費が改善される。
【0031】
バルブを画定するニードル5の端部50は、好ましくは、軸ABに沿ってアクチュエータ3とは反対側へと先端51まで延び、先端51は、バルブを閉じるときにインジェクタ7の密閉性を高めるためにシート部61を閉鎖する(図10)。
【0032】
図2、10〜11は、突出先端として知られ、図2の矢印ABの方向に、ハウジング2からノズル6外部の燃焼室80内に向かって広がる裾広がり形状(好ましくは、切頭円錐形)の先端51を持つニードル5の事例を示している。好ましくは、先端51の少なくとも1つの側壁510(図11の実施例では切頭円錐形)は、軸ABと所定の鈍角α(α>90°)をなす。バルブは、突出先端51の位置で、突出先端51がシート部61に接触する領域に画定される。突出先端51はノズル6の外部(図2の矢印ABに沿ってハウジング2とは反対側に位置する)からシート部61を閉鎖する。ノズル6のシート部61は、ノズル6の外部に向かって広がる対応する裾広がり形状(切頭円錐形が好ましい)とすることができる。このような構成は、バルブが閉じるときのインジェクタ7の密閉性を高めるように作用する(図10)。
【0033】
図2に示すように、積層構造は増幅部34として知られる少なくとも1つの部分34を含み、この増幅部は、第2横断面32の位置で軸方向にニードル5に接続しており、電気活性部分30とニードル5とが、増幅部34のそれぞれの側に軸方向に配置されている。増幅部34は、電気活性材料300の振動をニードル5に伝達して振動を増幅することにより、バルブの位置におけるニードル5の移動が電気活性材料300の総変形量よりも大きくなるように設計される。増幅部34は、略円筒形を有することができ、例えば回転対称を示す形状を有することができる(図2)。別の構成として、増幅部34は、異なる形状(図示せず)を有してもよく、例えば軸ABの方向に電気活性部分30からニードル5に向かって狭まる切頭円錐形を有することができる。
【0034】
積層構造は更に、後方質量部35として知られる少なくとも1つの他の部分35を含み、増幅部34及び後方質量部35のが、電気活性材料300の軸方向のそれぞれの側に配置されている。後方質量部35は、電気活性部分30とは軸方向に反対側の端部に壁を有し、前記壁は、積層構造の第1横断面31に一致する。
【0035】
後方質量部35は、機械的荷重により電気活性材料300に掛かる軸方向応力の分布を更に均一にする(軸ABに直交する方向に)ように作用する。したがって、例えばインジェクタ7の組み立て及び/又は作動中の電気活性材料300のひび割れ及び/又は破断の数を減らすことができる。
【0036】
好適には、電気活性材料300は圧電材料であり、例えば、軸方向に上下に積層されて積層構造の電気活性部分30を形成する1つ以上の圧電セラミックワッシャの形態で提供することができる。電気活性材料300の選択的変形、例えば設定周期τの周期的変形は、インジェクタ内に音響波を発生させ、その結果、ニードル5の先端51がノズル6のシート部61に対して相対的に長手方向に移動するか、又は逆に、シート部61が先端51に対して相対的に長手方向に移動し、図2及び図10〜11に関連して上述したように、バルブを交互に開閉することができる。このような選択的変形は、対応する駆動手段14によって制御される。この駆動手段14は、積層構造の、例えば、電気活性圧電材料300に取り付けられる電極301に、配線(図示せず)を介して印加される電位差により発生する電界を使用して、電気活性部分30を設定周期τで振動させるように設計されている。別の構成として、電気活性材料300は磁歪材料とすることができる。電気活性材料300の選択的変形は、図示されない対応する駆動手段により、例えば磁気誘導を使用して制御され、この磁気誘導は、例えば図示しないエナジャイザを使用して得られる選択的磁界、特に、例えば積層構造に接続されるコイル又は積層構造を取り囲む別のコイルを使用して得られる選択的磁界から発生する。
【0037】
増幅部34、電気活性部分30及び後方質量部35は、
・積層構造に少なくとも部分的に予荷重を加えるように設計された予荷重付与手段36により一括して締め付けられ、且つ
・電気活性部分30の振動によって開始される音響波を通過させるように設計される。
【0038】
このような構成により、アクチュエータ3(一方の側に貫通部材33を、他方の側にニードル5を有する)は、音響波が伝搬する媒体を形成する。この媒体は、少なくとも線形音響インピーダンスIを持つ媒質であり、この線形音響インピーダンスIは、軸ABに直交する媒体の断面表面積Σと、媒質の密度ρと、媒体を通過する音速cとに依存し:I=f(Σ、ρ、c)で表わされる。したがって、ニードル5の端部50の移動を制御することにより、燃焼室80内の圧力の影響を受け難いインジェクタ7のバルブ開度を実現することができる。同様に、貫通部材33の選択的音響長さLが上の等式E1を使用して表現されるとすると、貫通部材33の第2摺動面3302を、変位ノードのように、空洞20の方へ不動に又は軸方向に固定される状態に動的に保持することができる。この第2摺動面3302は、流体1に接触すると、流体接続部に固有の軸方向の力を伝達して、インジェクタ7内のアクチュエータ3の所定の軸方向位置を調整するように設計されている。第2摺動面3302は、軸ABに沿った当該第2摺動面の長手方向速度をゼロに等しく保持することにより、動的に不動状態に保持されるので、後方質量部35から貫通部材33を通って放出される音響波の伝搬現象の周期性を有効に利用することができる。
【0039】
中間ボディ331は、軸ABに直交する半径方向寸法が、当該ボディの(非音響的な)直線軸方向の寸法に比較して小さいボディの形態をとる。上述のように、ピストン330の(非音響的な)直線軸方向寸法(当該ピストンの軸方向厚さと丁度同じように)は、中間ボディ331のこれらの寸法に比較して無視することができる。その結果、貫通部材33の簡易化音響モデルは、ロッド(固体ロッド(図6)、又は例えば、長手方向に穿孔した中空ロッド(図8))により表わすことができ、このロッドは、第2連結ゾーンZ内の後方質量部35に嵌め込まれる。音響波の伝搬は、引張(力)ジャンプΔFの伝搬、及び速度ジャンプΔvの伝搬を、等式:ΔF=ΣΔσ=ΣΔvを使用して合成したものであり、ここでΣはロッドの主軸AB、例えばロッドの対称軸に直交する方向のロッドの断面表面積であり、Δσ=zΔvは応力ジャンプであり、zは、等式:z=ρcにより定義される音響インピーダンスであり、ここでρはロッドの密度であり、cはロッドを通過する音の速度である。引張力Fは圧縮方向に正であり、速度vは音響波の伝搬方向に正であることを理解されたい。中実又は中空であるロッドの音響特性を表わす積I=Σz=Σρcは、「線形音響インピーダンス」又は「線形インピーダンス」として知られている。
【0040】
線形インピーダンスIの少なくとも1つの第1不連続点は、第2連結ゾーンZにおいて発生する。「不連続点」という用語は、「線形インピーダンスIの変化が、音響波の伝搬方向を基準に、媒体内に位置する線形インピーダンス不連続領域の上流の線形インピーダンスと下流の線形インピーダンスとの差を表わす所定の閾値を超え、音響波が、波長より短い距離、好ましくは波長の8分の1、すなわちλ/8’’よりも短い距離に亘ってこの線形インピーダンス不連続領域を伝搬する」ことを意味する。線形インピーダンスIの第2不連続点は、貫通部材33の端部で(又は、ピストン330の軸方向の音響長さhが無視できる場合は中間ボディ331の端部で)、且つ後方質量部35とは軸方向に反対側の端部で発生する。音響飛行時間Tで表わされる軸方向の音響長さL=f(T)の場合、この音響長さは、線形インピーダンスIの第1不連続点と第2不連続点との間で測定される。
【0041】
上の等式E1は、製造上の制約、例えば設定周期τの約±10%の公差、すなわち前記設定周期の4分の1、すなわちτ/4の約±40%の公差を考慮に入れて設定される特定の公差内で成立すると考えられることを理解されたい。この公差を考慮すると、上の等式E1は、次式のように書き直すことができる。
T=[2n+1][τ/4]±0.4[τ/4] (E2)
【0042】
実際には、大量生産される対応する部品について測定される、音響飛行時間Tで表わされる軸方向の音響長さL=f(T)は、上の等式E1を使用して計算される基準値からわずかな変化を示す可能性がある。このようなわずかな変化は、付加質量効果に起因する。このような付加質量は、例えば、中間ボディ331の軸ABに直交する平面内のガイド突起部(図示せず)に対応する。前記公差幅は、前記付加質量効果を考慮することで、上の等式E2を使用して、軸方向の音響長さの表現式を音響飛行時間の観点からL=f(T)補正することを可能にする。
【0043】
好適には、インジェクタ7はシール手段4を備えることができ、このシール手段4は:
・ピストン330と空洞20との間に半径方向に挿入されて、これらの要素間にシール領域を形成し、
・ピストン330の第1摺動面3301と第2摺動面3302との間に軸方向に挿入されて、ピストン330に、最終的には流体接続部に加わる軸方向の力の平衡を崩しうる流体1の軸方向の漏出を防止する。
【0044】
ピストン330の第2摺動面3302は、上の等式E1又はE2のうちの少なくとも1つの等式により表わされるような貫通部材33の選択的な軸方向の音響長さL=f(T)により、動的に不動であるので、シール部を設けることにより後方質量部の(一般的にはアクチュエータ3の)振動Yが遅くなることはなく、最終的に、インジェクタ7のバルブの開き動作及び/又は閉じ動作の邪魔になることはない。
【0045】
アクチュエータ3を戻す戻し手段11を設けることにより、ニードル5の先端51がノズル6のシート部61に押圧された状態を保持して、確実に、流体1がない状態でバルブを閉じることができ、従って、例えばインジェクタ7を組み立てた後、エンジン8のシリンダヘッド13に装着するときに流体1の加圧回路9に接続するまでは、流体接続部が形成されていない状態で閉じることができる。これによって、有利には、インジェクタ7の内部21を、例えば電気活性部分30の電極群301を短絡させうる全ての塵挨から保護することができる。
【0046】
戻し手段11は、加圧流体1がノズル6に向かって流れる方向を基準としてハウジング2の下流に、軸ABに沿って配置された予荷重付与コイルばねにより表わすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主噴射軸(AB)を有する、加圧流体(1)を噴射するための噴射装置(7)であって、
−加圧流体(1)で満たされ、且つハウジング(2)の内部(21)に通じる少なくとも1つの軸方向空洞(20)を含むハウジング(2)と、
−電気活性材料(300)を含む少なくとも1つの電気活性部分(30)を含む積層構造を呈するアクチュエータ(3)であって、前記積層構造が、
・貫通部材(33)が軸方向に延在する方向と直交する第1横断面(31)、及び
・第1面とは軸方向に反対側に位置する第2横断面(32)
を有し、
アクチュエータ(3)はハウジング(2)内で軸方向に移動することができるように取り付けられており、前記部材(33)が、空洞(20)内にほぼ流体密封状態で係合し、且つアクチュエータ(3)とハウジング(2)との間に流体接続部を形成するピストン(330)を含んでいる、アクチュエータ(3)と、
−アクチュエータ(3)の電気活性部分(30)を設定周期τで振動させるように設計された駆動手段と
を備えており、
前記貫通部材(33)の軸方向の長さ(L)が、アクチュエータ(3)の電気活性部分(30)の振動によって発生してこの長さ(L)に沿って伝搬する音響波の伝搬時間Tが、次の等式:T=[2n+1][τ/4](nは正の整数の係数)を満たすような長さであることを特徴とする、噴射装置(7)。
【請求項2】
前記貫通部材(33)が、軸方向に沿ってピストン(330)と第1横断面(31)との間に配置される少なくとも1つの中間ボディ(331)を含むことと、ピストン(330)が半径方向に中間ボディ(331)を越えて突出することとを特徴とする、請求項1に記載の噴射装置(7)。
【請求項3】
前記中間ボディ(331)が、(a)前記軸(AB)に直交する方向に、少なくとも1つの単方向断面を有する第1ボディ(3310)、(b)前記軸(AB)に直交する方向に、少なくとも1つの二方向固体断面を有する第2ボディ(3311)、(c)前記軸(AB)に直交する方向に、少なくとも1つの二方向中空断面を有する第3ボディ(3312)のうちの1つであることを特徴とする、請求項2に記載の噴射装置(7)。
【請求項4】
前記中間ボディ(331)が穿孔されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の噴射装置(7)。
【請求項5】
ピストン(330)と空洞(20)との間に半径方向に挿入されるシール手段(4)を備えることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の噴射装置(7)。
【請求項6】
少なくとも1つのニードル(5)を備えることと、積層構造が、第2横断面(32)の位置でニードル(5)に軸方向に接続される、増幅部(34)として知られる少なくとも1つの部分(34)を含んでおり、電気活性部分(30)及びニードル(5)が、軸方向に沿って増幅部(34)の各側に配置されることとを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の噴射装置(7)。
【請求項7】
積層構造が、後方質量部(35)として知られる少なくとも1つの他の部分(35)を含んでおり、増幅部(34)及び後方質量部(35)が、軸方向に沿って電気活性部分(30)の各側に配置されることと、後方質量部(35)が、電気活性部分(30)とは軸方向に反対側の端部に壁を有し、前記壁が、積層構造の第1横断面(31)に一致することとを特徴とする、請求項6に記載の噴射装置(7)。
【請求項8】
積層構造がアクチュエータ(3)に一致することと、増幅部(34)、電気活性部分(30)、及び後方質量部(35)が、予荷重付与手段(36)によって一括して締め付けられており、且つ電気活性部分(30)の振動によって開始される音響波を通過させるように設計されていることとを特徴とする、請求項7に記載の噴射装置(7)。
【請求項9】
ノズル(6)を備え、ノズル(6)が、前記軸(AB)に沿って、噴射孔(60)とシート部(61)とを含み、且つ反対側の端部でハウジング(2)に接続されていることと、ニードル(5)が、前記軸(AB)に沿って、シート部(61)との接触領域にバルブを画定する自由端(50)を有し、反対側の端部でアクチュエータ(3)の積層構造に接続されており、アクチュエータ(3)がこのニードル(5)を振動させて、ニードルの端部(50)とノズル(6)のシート部(61)との間に、バルブを交互に開閉させることができる相対運動移動を生じさせることとを特徴とする、請求項6ないし8のいずれか一項に記載の噴射装置(7)。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の加圧流体(1)噴射装置(7)を使用する内燃機関(8)。

【図1】
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【図2】
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【図3−5】
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【図6−9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−503129(P2012−503129A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526532(P2011−526532)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051525
【国際公開番号】WO2010/031936
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】