説明

流体継手

【課題】接続と同時に流体が流れる仕様にも用いることができ、しかも、雌側部材への入れ込みが浅くても流路を適切に接続できるようにした流体継手の提供。
【解決手段】雌側部材1の弁装置12は前進位置に常時付勢された状態で支持体14内に保持された可動体13に設けられている。シール部材3は、雄側部材2の入れ込み部21の外面と雌側部材1の受け入れ部11の内面との間を受け入れ部11への入れ込み部21の入れ込みに伴って密封する。雌側部材1の受け入れ部11内に雄側部材2の入れ込み部21を所定位置まで入れ込むことにより雄側部材2の弁体221に雌側部材1の弁体121が突き当たって両弁体121、221共に開弁位置に移動されると共に、可動体13を後退させながらこの所定位置を越えて入れ込み部21を最大入れ込み位置まで入れ込み可能としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雌側流路を持った雌側部材と、雄側流路を持った雄側部材とを有しており、両部材を組み合わせることにより両流路を流体の漏れ出しを生じさせない状態で接続させ合わせて、例えば、雄側部材の備えられたタンクなどの部材に蓄えられた流体を、雌側部材の備えられたこの流体を消費する機構などに送り込むことができるようにする流体継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
弁室に弁座に付勢により押し付けられるボール状の閉止部材を備えた第一継手および第二継手からなる流体用連結器がある。(特許文献1参照)しかるに、かかる連結器にあっては、第一継手と第二継手とを突き合わせたときに両継手の閉止部材が突き当てられてそれぞれ付勢に抗して後退開弁し第一継手の流路と第二継手の流路とが接続されるものであるが、かかる開弁の瞬間においては未だ第一継手の先端面と第二継手の先端面とが突き合わされないため、開弁と同時に流体を流させる仕様には用いることができないものであった。
【特許文献1】特開2003−4191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、雌側流路を持った雌側部材と雄側流路を持った雄側部材とからなる流体継手において、両部材を組み合わせることにより直ちに両流路が接続され合うようにすると共に、この接続と同時に流路に流体が流れる仕様にも不都合なく用いることができ、しかも、雌側部材への雄側部材の入れ込みが浅い場合であっても、前記両流路を適切に接続できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記問題点を解決するために、この発明にあっては、流体継手が以下の(1)〜(7)の構成を備えたものとした。
(1)雌側流路と受け入れ部とを持った雌側部材と、雄側流路と雌側部材の受け入れ部への入れ込み部とを備えた雄側部材と、シール部材とからなり、
(2)雄側部材には、
入れ込み部に形成されて雄側流路中にある弁座と、
この弁座に弁頭を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体とを備えた弁装置が備えられており、
(3)雌側部材には、
雌側流路中にある弁座と、
この弁座に弁頭を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体とを備えた弁装置が備えられており、
(4)雄側部材の弁装置及び雌側部材の弁装置のいずれか一方が、雄側部材の入れ込み部の入れ込み方向に移動可能で、かつ、前進位置に常時付勢された状態で支持体内に保持された可動体に設けられていると共に、
(5)可動体に対するこの付勢力が前記弁装置を構成する弁体に対する付勢力よりも大きくなるようにしてあり、
(6)シール部材は、雄側部材の入れ込み部の外面と雌側部材の受け入れ部の内面との間を受け入れ部への入れ込み部の入れ込みに伴って密封するように設けられており、
(7)雌側部材の受け入れ部内に雄側部材の入れ込み部を所定位置まで入れ込むことにより雄側部材の弁体に雌側部材の弁体が突き当たって両弁体共に開弁位置に移動されると共に、可動体を後退させながらこの所定位置を越えて入れ込み部を最大入れ込み位置まで入れ込み可能としてある。
【0005】
かかる構成によれば、雌側部材と雄側部材とを分離させた状態では、雌側部材の弁装置を構成する弁体、および、雄側部材の弁装置を構成する弁体は共に閉弁位置に位置づけられ、雌側流路及び雄側流路を通じて外部に流体が漏れ出すことはない。
【0006】
雌側部材の受け入れ部に雄側部材の入れ込み部を入れ込むと、先ず、入れ込み部に設けられたシール部材によって雄側部材の入れ込み部の外面と雌側部材の受け入れ部の内面との間から流体が漏れ出さない状態が作り出される。次いで、雄側部材の入れ込み部が所定位置まで入れ込まれると、雌側部材の弁装置を構成する弁体、および、雄側部材の弁装置を構成する弁体は共に付勢に抗して開弁位置に移動される。これにより雌側流路と雄側流路とが接続され合う。
【0007】
また、前記所定位置を越えて最大入れ込み位置まで雌側部材の受け入れ部に雄側部材の入れ込み部を入れ込んだときには、雌側部材の弁装置の弁体および雄側部材の弁装置の弁体を共に開弁位置に位置づけた状態で、可動体が後退位置まで移動される。すなわち、かかる流体継手にあっては、前記入れ込みが前記最大入れ込み位置に至らない場合、つまり、かかる入れ込みが前記所定位置までの浅い場合でも、適切に雌側流路と雄側流路とを接続合わせることができる。
【0008】
前記雄側部材及び雌側部材のいずれか一方を、内部を流路とし弁装置を内蔵した弁構成パーツを、流路を備えた主パーツに、この弁構成パーツの流路を主パーツの流路に連通させるようにして、取り外し可能に組み合わせることにより構成させておくこともある。
【0009】
このようにした場合、雄側部材が流体を蓄えたタンクやカートリッジなどの部材に備えられているときに、かかる部材への流体の充填が必要とされた場合には、弁装置を備えた弁構成パーツを主パーツから取り外して、この取り外しにより開放された主パーツの開口を利用して流体をスムースに充填させることができる。
【0010】
前記雄側部材を、携帯型電子機器の燃料電池を構成する燃料カートリッジ側に接続させ、雌側部材を携帯型電子機器の本体側に接続させるようにしておくこともある。
【0011】
このようにした場合、燃料カートリッジをかかる機器の本体に装填しないときにはかかる燃料を漏れ出させることなく、装填すれば燃料カートリッジの燃料が本体側にワンタッチで流入されるようにでき、さらに、この装填が浅い場合でも、つまり、雄側部材の入れ込み部が雌側部材の受け入れ部に所定位置までしか入れ込まれない状態でこの装填がされている場合でも、燃料カートリッジの燃料が本体側に適切に流入されるようにすることができる。
【0012】
前記雄側部材及び雌側部材における少なくとも流路を構成する部分を、耐メタノール性を有する合成樹脂によって構成させておくこともある。
【0013】
このようにした場合、携帯型電子機器などの燃料電池を利用して動作する装置における燃料として一般的に用いられるメタノールの流路の接続にかかる流体継手を支障なく用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明にかかる流体継手によれば、雌側流路を持った雌側部材と雄側流路を持った雄側部材とを組み合わせることにより直ちに両流路が接続され合うようにすると共に、この接続と同時に流路に流体が流れるようになっているときでもシール部材により接続に先立って雄側部材の入れ込み部と雌側部材の受け入れ部との間を密封させるのでこの流体を漏れ出させることがない。しかも、雌側部材への雄側部材の入れ込みが浅い場合であっても、前進位置に付勢により位置づけられる可動体によって前記両流路を適切に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1ないし図7に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
なお、ここで図1は、流体継手を構成する雄側部材2と雌側部材1とを分離させた状態を、図2は、雄側部材2の入れ込み部21を雌側部材1の受け入れ部11に入れ込み始めた状態を、図3は、かかる入れ込み部21を受け入れ部11に最大入れ込み位置まで入れ込んだ基本接続状態を、図4は、この入れ込みが図3よりもやや浅い場合を、それぞれ示している。図1、図2では雄側部材2および雌側部材1のの弁装置12、22の弁体121、221は閉弁位置にあり、図3、図4では、開弁位置にある。また、図1、図2、図4では、可動体13は前進位置にあり、図3では後退位置にある。また、図5は、雄側部材2の主パーツ24から弁構成パーツ23を取り外した様子を、また、図6および図7は、両パーツ23、24を分離して示している。(両図においては弁構成パーツ23はこれを構成する内筒体235のみを便宜的に表している。)
【0017】
この実施の形態にかかる流体継手は、雌側流路10を持った雌側部材1と、雄側流路20を持った雄側部材2とを有しており、両部材1、2を組み合わせることにより両流路10、20を流体の漏れ出しを生じさせない状態で接続させ合わせて、例えば、雄側部材2の備えられたタンクなどの部材Cに蓄えられた流体を、雌側部材1の備えられたこの流体を消費する機構などを備えた部材Hに送り込むことができるようにすると共に、こうした流体が消費された場合には雌側部材1から雄側部材2を抜き出させることで前記両流路10、20に残存する流体の漏れ出しを生じさせない状態で前記タンクなどの部材Cを前記機構などを備えた部材Hから交換などのために支障なく取り外せるようにできるものである。
【0018】
かかる流体継手は、雌側部材1と、雄側部材2と、シール部材3とから構成されている。図示の例では、雌側部材1および雄側部材2の主要部は合成樹脂によって構成されている。
【0019】
(雄側部材2)
雄側部材2は、雄側流路20と、雌側部材1の後述する受け入れ部11への入れ込み部21とを備えている。
【0020】
また、かかる雄側部材2は、入れ込み部21に形成されて雄側流路20中にある弁座220と、この弁座220に弁頭222を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体221とを備えた弁装置22を備えている。
【0021】
また、この実施の形態にあっては、かかる雄側部材2は、内部を雄側流路20とし弁装置22を内蔵した弁構成パーツ23を、雄側流路20を備えた主パーツ24に、この弁構成パーツ23の雄側流路20を主パーツ24の雄側流路20に連通させるようにして、取り外し可能に組み合わせることにより構成されている。
【0022】
図示の例にあっては、弁構成パーツ23は、筒両端を共に開放させた外筒体230および内筒体235を備えている。
【0023】
外筒体230は、筒下端の内部に筒上端に向けられた第一周回段差面231を有し、この第一周回段差面231を前記弁座220としている。また、外筒体230は、上下方向略中程の位置から上方をこれより下方よりも太径となるように構成されていると共にこの位置の内部に筒上端に向けられた第二周回段差面232を有している。また、外筒体230は、筒上端に外向きに突き出すフランジ233を有している。
【0024】
一方、内筒体235は、筒下端に弁体221の支持筒236を備えている。この支持筒236は、内筒体235の内壁とこの支持筒236の外壁との間に雄側流路20が形成されるように、内筒体235の内壁と支持筒236の外壁との間に亘る連接片237によって内筒体235内に位置づけられている。
【0025】
また、弁体221は、支持筒236内に上下動可能に入れ込まれる脚軸223の軸下端に弁頭222を備えさせて構成されている。
【0026】
図示の例では、この弁体221の弁頭222と内筒体235の筒下端との間に、この弁体221の脚軸223と支持筒236とを内側に納めるようにした圧縮コイルバネ224を介装させた状態で、外筒体230の第二周回段差面232と弁座220との間の空間にこの弁体221を納めさせるようにして、外筒体230と内筒体235とを組み付け合わせている。すなわち、図示の例では、内筒体235の筒下端側に形成された周回フランジ238が第二周回段差面232に突き当てられる位置まで外筒体230の筒上端側からこの外筒体230内に内筒体235を入れ込ませることができるようになっており、この入れ込み状態においてかかる周回フランジ238と第二周回段差面232とを溶着させ合うことにより弁構成パーツ23を構成させるようにしている。
【0027】
弁体221は、弁頭222に形成された周回溝にはめ込まれたシールリング225を前記圧縮コイルバネ224の作用により上方から弁座220に押し付けるようになっており、この状態が弁体221が閉弁位置にある状態となる。(図1)かかる弁体221の弁頭222が外筒体230の筒下端からこの外筒体230内に入り込む後述する雌側部材1の弁体121の突出部124によって上方に押されるとかかる弁体221は前記バネ224の付勢に抗して上方に開弁位置まで移動される。(図3、図4)
【0028】
一方、主パーツ24は、図示の例では、鉛直部240と水平部243とを備えた屈曲管状をなすように構成されている。鉛直部240には外向きに突き出すフランジ241が形成されている。鉛直部240のフランジ241の形成箇所より下方の箇所の内方に弁構成パーツ23の内筒体235の筒上端側が入り込み、かつ、この下方の箇所は外筒体230の筒上端側の内方に納まるようになっている。すなわち、図示の例では、弁構成パーツ23の外筒体230の筒上端側からこの外筒体230内に主パーツ24の鉛直部240を入れ込ませることにより、弁構成パーツ23の雄側流路20と主パーツ24の雄側流路20とが連通されるようになっている。
【0029】
図示の例では、主パーツ24の鉛直部240におけるフランジ241より下方となる箇所において、その直径方向両側に窓穴242が形成されている。また、弁構成パーツ23における内筒体235の周回フランジ238より上方となる箇所において、その直径方向両側に掛合爪239が形成されている。そして、図示の例にあっては、弁構成パーツ23の外筒体230内に主パーツ24の鉛直部240を前記のように入れ込ませることにより、主として主パーツ24の側が弾性変形し、この後、窓穴242に掛合爪239が入り込む位置での弾性復帰によって、この窓穴242に掛合爪239が掛合され、これにより主パーツ24と弁構成パーツ23との組み合わせ状態が維持されるようになっている。また、この組み合わせの後、この組み合わせによって主パーツ24のフランジ241に形成された切欠き部244に入り込んだ弁構成パーツ23の外筒体230のフランジ233の上面に形成された図示しない回り止め突起を折って切除し、この後、主パーツ24に対し弁構成パーツ23を回転又は相対的に回転させると、掛合爪239の側部に形成された傾斜面239aの傾斜によって主として主パーツ24の側を弾性変形させて窓穴242から掛合爪239を抜き出させ、主パーツ24と弁構成パーツ23との組み合わせ状態を解くことができるようになっている。
【0030】
また、図示の例では、雄側部材2は、雄側部材2の取り付けられる部材Cを構成する二枚のパネルCp、Cpの間に弁構成パーツ23の外筒体230のフランジ233と主パーツ24のフランジ241とを重ね合わせた状態で挟み込むようにしてかかる部材Cに取り付けられるようになっている。
【0031】
これにより、この実施の形態にあっては、雄側部材2が流体を蓄えたタンクやカートリッジなどの部材Cに備えられているときに、かかる部材Cへの流体の再充填が必要とされた場合には、弁装置22を備えた弁構成パーツ23を主パーツ24から取り外して、この取り外しにより開放された主パーツ24の開口を利用して流体をスムースに再充填させることができる。かかる充填が済んだ後は、主パーツ24に再び新規の弁構成パーツ23を取り付けることにより所期の状態を容易に作り出させることができる。(図5〜図7)
【0032】
なお、図示の例にあっては、主パーツ24の水平部243にさらにこの水平部243を内側に納めるようにしてソケット25が嵌め付けられるようになっていると共に、流体の移送管T内に入れ込まれたこのソケット25の基部に対してこの移送管Tの外側を覆うカバー26が留め付けられるようになっている。
【0033】
(雌側部材1)
雌側部材1は、雌側流路10と受け入れ部11とを備えている。
【0034】
また、かかる雌側部材1は、雌側流路10中にある弁座120と、この弁座120に弁頭122を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体121とを備えた弁装置12が備えられている。
【0035】
また、この実施の形態にあっては、かかる雌側部材1の弁装置12が、雄側部材2の入れ込み部21の入れ込み方向に移動可能で、かつ、前進位置に常時付勢された状態で支持体14内に保持された可動体13に設けられている。
【0036】
この実施の形態にあっては、支持体14は、筒両端を開放させた筒状をなすように構成されている。支持体14の筒上端には外向きに突き出すフランジ140が形成されており、雌側部材1は、この雌側部材1の取り付けられる部材Hに形成された開口Haの開口縁にこのフランジ140を引っかけるようにしてかかる部材Hに備え付けられるようになっている。
【0037】
支持体14の筒下端には、内向きに突き出す周回鍔141が形成されている。また、支持体14の中間部から上方は内径が大きくなっており、この中間部に上方に向いた周回段差面142が形成されている。また、支持体14の筒上端には、短寸のスリーブ143がはめ込まれており、このスリーブ143の筒上端に形成された内鍔144に可動体13の筒上端が付勢により突き当たるようになっており、このように突き当たった位置が可動体13の前進位置となっている。
【0038】
一方、可動体13は、筒両端を共に開放させた、長筒体130と、この長筒体130の筒下端に組み合わされる短筒体134とを備えている。この両筒体130、134の内部が雌側流路10となるようになっている。
【0039】
長筒体130は、筒下端に下方に向き、かつ、上方に向かうに連れて内方に近づくように傾斜した周回段差面131を有しており、この周回段差面131が前記弁座120として機能するようになっている。また、この長筒体130の筒上端には外向きに突き出すフランジ132が形成されており、支持体14の周回段差面141とこの長筒体130のフランジ132との間に、バネ内側に長筒体130を納め入れるようにして介装された圧縮コイルバネ15によって、可動体13が前記前進位置に位置づけられるようになっている。
【0040】
一方、短筒体134は、支持体14の周回鍔141と周回段差面142との間に略密に納まる外径を有していると共に、その筒上端面に周回立ち上がり部135を有しており、長筒体130の筒下端において弁座120を取り巻くように形成されて下方に突き出す周回突き出し部133をこの周回立ち上がり部135の内側にはめ込むようにしてこの周回突き出し部133に溶着させることにより、長筒体130と組み付け合わされるようになっている。また、この短筒体134は、その内部に弁体121の支持筒136を備えている。この支持筒136は、短筒体134の内壁とこの支持筒136の外壁との間に雌側流路10が形成されるように、短筒体134の内壁と支持筒136の外壁との間に亘る連接片137によって短筒体134内に位置づけられている。
【0041】
また、弁体121は、支持筒136内に上下動可能に入れ込まれる脚軸123の軸下端に弁頭122を備えさせて構成されている。
【0042】
図示の例では、この弁体121の弁頭122と短筒体134の連接片137との間に、この弁体121の脚軸123と支持筒136とを内側に納めるようにした圧縮コイルバネ125を介装させた状態で、長筒体130と短筒体134との間に弁体121を納めてこの長筒体130と短筒体134とを組み付け合わせている。
【0043】
弁体121は、弁頭122に形成された周回溝にはめ込まれたシールリング126を前記圧縮コイルバネ125の作用により下方から長筒体130に形成された弁座120に押し付けるようになっており、この状態が弁体121が閉弁位置にある状態となる。雌側部材1の弁体121は、閉弁位置において弁座120の中心にある雌側流路10を通って上方に突き出す突出部124を有しており、この突出部124が雄側部材2の弁体221の弁頭222に接する位置から先に雌側部材1の受け入れ部11に雄側部材2の入れ込み部21が入れ込まれると、この雌側部材1の弁体121の突出部124によって雄側部材2の弁体221が押され、かつ、雌側部材1の弁体121もこれと反対向きに押され、両弁体121、221はいずれも前記バネ125、224の付勢に抗して開弁位置まで移動されるようになっている。すなわち、雌側部材1の弁装置12を構成する弁体121の付勢力と雄側部材2の弁装置22を構成する弁体221の付勢力は、逆向きではあるがその力を略等しくしている。
【0044】
また、かかる可動体13に対するこの付勢力は弁装置12、22を構成する弁体121、221に対する付勢力よりも大きくなるようにしてある。
【0045】
そして、雌側部材1の受け入れ部11内に雄側部材2の入れ込み部21を所定位置まで入れ込むことにより雄側部材2の弁体221に雌側部材1の弁体121が突き当たって両弁体121、221共に開弁位置に移動されると共に、(図4)この所定位置を越えて入れ込み部21を最大入れ込み位置まで入れ込んだときには可動体13が後退位置まで移動されるようになっている。(図3)すなわち、この実施の形態にあっては、前記所定位置への入れ込みにより雄側部材2の弁構成パーツ23の筒下端が雌側部材1の長筒体130の筒下端にある弁座120を囲う上方に向いた面に突き当たるが、この所定位置では可動体13は前記付勢により前進位置に位置づけられるようになっている。そこからさらにかかる入れ込みをなすと可動体13が付勢に抗して後退位置まで移動されるようになっている。
【0046】
(シール部材3)
シール部材3は、雄側部材2の入れ込み部21の外面と雌側部材1の受け入れ部11の内面との間を受け入れ部11への入れ込み部21の入れ込みに伴って密封するように設けられている。
【0047】
図示の例では、かかるシール部材3は、雄側部材2の弁構成パーツ23における外筒体230の筒下端の外面部に形成された、この外筒体230の筒軸を巡る向きの周回溝234にはめ込まれたシールリング30によって構成されている。
【0048】
(機能)
雌側部材1と雄側部材2とを分離させた状態では、雌側部材1の弁装置12を構成する弁体121、および、雄側部材2の弁装置22を構成する弁体221は共に閉弁位置に位置づけられ、雌側流路10及び雄側流路20を通じて外部に流体が漏れ出すことはない。(図1)
【0049】
雌側部材1の受け入れ部11に雄側部材2の入れ込み部21を入れ込むと、先ず、入れ込み部21に設けられたシール部材3によって雄側部材2の入れ込み部21の外面と雌側部材1の受け入れ部11の内面との間から流体が漏れ出さない状態が作り出される。(図2)次いで、雄側部材2の入れ込み部21が所定位置まで入れ込まれると、雌側部材1の弁装置12を構成する弁体121、および、雄側部材2の弁装置22を構成する弁体221は共に付勢に抗して開弁位置に移動される。これにより雌側流路10と雄側流路20とが接続され合う。(図4)
【0050】
雄側部材2が流体の蓄えられたタンクなどの部材Cに備え付けられており、雌側部材1がこの流体を消費する機構などを備えた部材Hに備え付けられている場合には、流体は移送管Tを通じて、ソケット25、主パーツ24、弁構成パーツ23の内筒体235、外筒体230、雄側部材2の弁座220を経て雌側部材1の雌側流路10に流れ込み、雌側部材1の弁座120、可動体13の短筒体134を経て前記機構に送り込まれることとなる。
【0051】
また、前記所定位置を越えて最大入れ込み位置まで雌側部材1の受け入れ部11に雄側部材2の入れ込み部21を入れ込んだときには、雌側部材1の弁装置12の弁体121および雄側部材2の弁装置22の弁体221を共に開弁位置に位置づけた状態で、可動体13は後退位置まで移動される。(図3)すなわち、かかる流体継手にあっては、前記入れ込みが前記最大入れ込み位置に至らない場合、つまり、かかる入れ込みが前記所定位置までの浅い場合でも、適切に雌側流路10と雄側流路20とを接続合わせることができる。
【0052】
かかる雄側部材2を、ノート型のパーソナルコンピュータなどの携帯型電子機器の燃料電池を構成する燃料カートリッジ(内部に燃料電池の燃料を蓄えたもの)側に接続させ、雌側部材1を携帯型電子機器の本体側に接続させておけば、燃料カートリッジを本体に装填しないときにはかかる燃料を漏れ出させることなく、装填すれば燃料カートリッジの燃料が本体側にワンタッチで流入されるようにでき、さらに、この装填が浅い場合でも、つまり、雄側部材2の入れ込み部21が雌側部材1の受け入れ部11に所定位置までしか入れ込まれない状態でこの装填がされている場合でも、燃料カートリッジの燃料が本体側に適切に流入されるようにすることができる。
【0053】
また、雄側部材2及び雌側部材1における少なくとも流路を構成する部分を、耐メタノール性を有する合成樹脂によって構成させておけば、流体継手の少なくとも一部を合成樹脂によって構成させておきながら、携帯型電子機器などの燃料電池を利用して動作する装置における燃料として一般的に用いられるメタノールの流路の接続にかかる流体継手を支障なく用いることができる。かかる合成樹脂としては、例えば、ポリアセタールなどを用いることができる。
【0054】
なお、図中、符号4で示されるのはいずれもシールリングである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】雄側部材2と雌側部材1とを分離させた状態を示した側断面図
【図2】雄側部材2の入れ込み部21を雌側部材1の受け入れ部11に入れ込み始めた状態を示した側断面図
【図3】雄側部材2の入れ込み部21を雌側部材1の受け入れ部11に最大入れ込み位置まで入れ込んだ基本接続状態を示した側断面図
【図4】図3よりも雄側部材2の入れ込み部21の入れ込みがやや浅い場合を示した側断面図
【図5】雄側部材2の主パーツ24から弁構成パーツ23を取り外した様子を示した側断面図
【図6】同側面図(弁構成パーツ23は内筒体235のみ表す。)
【図7】同側面図(図6の右側から見た図)
【符号の説明】
【0056】
1 雌側部材
10 雌側流路
11 受け入れ部
12 弁装置
120 弁座
121 弁体
122 弁頭
13 可動体
14 支持体
2 雄側部材
20 雄側流路
21 入れ込み部
22 弁装置
220 弁座
221 弁体
222 弁頭
3 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌側流路と受け入れ部とを持った雌側部材と、雄側流路と雌側部材の受け入れ部への入れ込み部とを備えた雄側部材と、シール部材とからなり、
雄側部材には、
入れ込み部に形成されて雄側流路中にある弁座と、
この弁座に弁頭を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体とを備えた弁装置が備えられており、
雌側部材には、
雌側流路中にある弁座と、
この弁座に弁頭を押し付ける閉弁位置に常時付勢される弁体とを備えた弁装置が備えられており、
雄側部材の弁装置及び雌側部材の弁装置のいずれか一方が、雄側部材の入れ込み部の入れ込み方向に移動可能で、かつ、前進位置に常時付勢された状態で支持体内に保持された可動体に設けられていると共に、
可動体に対するこの付勢力が前記弁装置を構成する弁体に対する付勢力よりも大きくなるようにしてあり、
シール部材は、雄側部材の入れ込み部の外面と雌側部材の受け入れ部の内面との間を受け入れ部への入れ込み部の入れ込みに伴って密封するように設けられており、
雌側部材の受け入れ部内に雄側部材の入れ込み部を所定位置まで入れ込むことにより雄側部材の弁体に雌側部材の弁体が突き当たって両弁体共に開弁位置に移動されると共に、可動体を後退させながらこの所定位置を越えて入れ込み部を最大入れ込み位置まで入れ込み可能としてあることを特徴とする流体継手。
【請求項2】
雄側部材及び雌側部材のいずれか一方が、内部を流路とし弁装置を内蔵した弁構成パーツを、流路を備えた主パーツに、この弁構成パーツの流路を主パーツの流路に連通させるようにして、取り外し可能に組み合わせることにより構成されていること特徴とする請求項1記載の流体継手。
【請求項3】
雄側部材が、携帯型電子機器の燃料電池を構成する燃料カートリッジ側に接続され、雌側部材が携帯型電子機器の本体側に接続されていること特徴とする請求項1又は請求項2記載の流体継手。
【請求項4】
雄側部材及び雌側部材における少なくとも流路を構成する部分が、耐メタノール性を有する合成樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の流体継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−220224(P2006−220224A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34518(P2005−34518)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】