説明

流体継手

【課題】形式が異なる流体継手の製品開発において、プラグやソケット、バルブの形状を共通化することで、流体継手の開発効率を向上すると共に、流路断面積を一定に保ち圧力損失を一定化させる。
【解決手段】挿通孔14を有し、第1開口端16と、第1開口端16と反対側の第2開口端17がそれぞれ形成されたプラグ12とソケット13の内部に、バルブ32と、バルブホルダ42と、スプリング41とを有する標準化された流体継手に対して、当接面33の径、および第1開口端16の径と、第1開口端側傾斜面34の径、およびプラグ12とソケット13の内周面の径と、最大径部37の径、およびプラグ12とソケット13の内周面の径とを共通にし、第2開口端側傾斜面38の軸方向寸法、および第2開口端側傾斜面38に対向するプラグ12とソケット13の直線形状の内周面の軸方向寸法を変化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソケットとプラグからなる流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、図4および図5に示すように、バルブホルダとスプリングの形状が異なる2種類の流体継手を提案している。
図4は、特願2010−103866の流体継手11である。図4の上半分は流体継手11のプラグ12とソケット13を接合する途中の状態、下半分はプラグ12とソケット13の接合完了状態の断面図を示す。この流体継手11において、プラグ12およびソケット13は、内面に挿通孔14が形成された筒状の形状を有する。また、プラグ12およびソケット13は、対向するように形成された第1開口端16を介して互いに液密に接合される。第1開口端16の反対側の端部には、流路の入口または出口を規定する第2開口端17がそれぞれ、形成されている。
【0003】
プラグ12の第2開口端17の内面には雌ねじ18が形成され、ここに一方の配管がねじ結合により接続される。プラグ12の外周の中央には鋼球係止外周溝19が形成されている。
【0004】
ソケット13は図4において右側の本体部21と、左側のプラグ挿入部22とで構成されている。本体部21にはプラグ12と対称的に、第2開口端17の内面に雌ねじ23が設けられ、ここに他方の配管がねじ結合により接続される。
【0005】
ソケット13のプラグ12側端部近傍には、外面にストッパー24が配設されるとともに、複数の孔26に鋼球27が収容されている。この鋼球27が鋼球係止溝19に嵌り込むことで、ソケット13にプラグ12を接合する。プラグ挿入部22の外周面にはスリーブ30が嵌挿され、スプリング31により開放端(図4において左端)に向かって付勢されている。ソケット13にプラグ12を接合すると、このスリーブ30の内周面が鋼球27を鋼球係止溝19に付勢する。
【0006】
以下、プラグ12内部のバルブ32、バルブホルダ42、スプリング41について説明するが、ソケット13内部のものもプラグ12側と同一形状で、対称に配置されるので、同一符号を付して説明を省略する。また、流体は図4中の矢印方向にプラグ12及びソケット13の内部を流れると仮定するが、逆の方向に流れてもよい。
【0007】
プラグ12の内部に収容されたバルブ32は、ソケット13のバルブ32に当接する小径の当接面33と、当接面33から第2開口端17に向かって拡径する円錐状の第1開口端側傾斜面34と、第1開口端側傾斜面34の端部にシール部材35を介して形成され、プラグ12の弁座36に当接する最大径部37と、最大径部37から第2開口端17に向かって縮径する円錐状の第2開口端側傾斜面38とを備えている。また、バルブ32の第2開口端側傾斜面38の端部には、内方に突出するスプリング装着穴39が形成されている。
【0008】
スプリング41を介しバルブ32を保持するバルブホルダ42は、正面視が略長方形状の基部43と、この基部43から突出する突起44とを備えている。基部43はプラグ12の段部46に流路と直交するように掛け渡されている。突起44はスプリング41を軸周りに保持している。
【0009】
スプリング41は、バルブ32のスプリング装着穴39に嵌挿され、最大径部37が弁座36に当接するように付勢している。
【0010】
図5は、特許文献1に記載された流体継手である。図5の上半分は流体継手51のプラグ52とソケット53を接合する途中の状態、下半分はプラグ52とソケット53の接合が完了した状態の断面図を示す。
この流体継手51において、図4に示す流体継手11と実質的に同一である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
バルブ55の第2開口端側傾斜面38の端部には、第2開口端17に向かって延びる円柱形状のバルブガイド56が設けられている。
【0012】
バルブホルダ57は段部46に係止する脚部58からなり、この脚部58の内周面にバルブ55のバルブガイド56が挿入されて、バルブ55を軸方向に摺動可能に支持している。
【0013】
スプリング59は、バルブ55とバルブホルダ57の間に、プラグ52のバルブ55とソケット53のバルブ55が互いに当接してスプリング59が圧縮されたときに、バルブ55の外径部とバルブホルダ57の外径部とを結ぶ線に沿った円錐状の外径を有する。
【0014】
以上のように、バルブホルダなどの形式が異なる流体継手において、バルブ先端部の形状、およびプラグやソケットの流路形状を変化させているのが一般的である。無理なく流量を確保し流路抵抗を低減するには、ソケットのバルブとプラグのバルブとの接合点を中心とした流れ方向の変化が大きい部分を最適化することが最も重要である。
【0015】
しかし、形式が異なる製品毎にバルブ先端部の流路構成を変更することは、製品の開発効率的にも非常に大きなロス発生を招くことになると共に、得られる流量(発生する抵抗)に差が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009-097714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、形式が異なる流体継手の製品開発において、プラグやソケット、バルブの形状を共通化することで、流体継手の開発効率を向上すると共に、流路断面積を一定に保ち圧力損失を一定化させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、
挿通孔を有し、互いに液密に接合される第1開口端と、該第1開口端と反対側の端部に流路の入口または出口を規定する第2開口端がそれぞれ形成されたプラグとソケットの内部に、
第1開口端側に形成された小径の当接面と、該当接面から前記第2開口端に向かって拡径する第1開口端側傾斜面と、該第1開口端側傾斜面の端部に形成された最大径部と、該最大径部から前記第2開口端に向かって縮径する第2開口端側傾斜面とからなるバルブと、
前記バルブよりも第2開口端側に設けられたバルブホルダと、
前記バルブホルダに係止し、前記バルブを前記ソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢すると共に、前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとの当接面が互いに当接することで後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するスプリングと、
を有する標準化された流体継手に対して、
前記バルブの当接面の径、および前記プラグとソケットの第1開口端の径と、
前記バルブの第1開口端側傾斜面の径、および該第1開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの内周面の径と、
前記バルブの最大径部の径、および該最大径部に対向する前記プラグとソケットの内周面の径とを共通にし、
前記第2開口端側傾斜面の軸方向寸法、および第2開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの直線形状の内周面の軸方向寸法を変化させたものである。
【0019】
上記構成により、標準化された流体継手に対し形式の異なる流体継手を設計する際に、流体継手の共通化された部分を再度、設計する必要がなく、変化させる部分のみを設計すればよい。従って、流体継手の開発コストを削減することができる。また、形式の異なる流体継手のバルブの第1開口端側傾斜面付近において、標準化された流体継手と同等の流量を確保することができる。
【0020】
挿通孔を有し、互いに液密に接合される第1開口端と、該第1開口端と反対側の端部に流路の入口または出口を規定する第2開口端がそれぞれ形成されたプラグとソケットの内部に、
第1開口端側に形成された小径の当接面と、該当接面から前記第2開口端に向かって拡径する第1開口端側傾斜面と、該第1開口端側傾斜面の端部に形成された最大径部と、該最大径部から前記第2開口端に向かって縮径する第2開口端側傾斜面とからなるバルブと、
前記バルブよりも第2開口端側に設けられたバルブホルダと、
前記バルブホルダに係止し、前記バルブを前記ソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢すると共に、前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとの当接面が互いに当接することで後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するスプリングと、
を有する標準化された流体継手に対して、
前記バルブの第1開口端側傾斜面および最大径部と、該第1開口端側傾斜面および最大径部に対向する前記プラグとソケットの内周面で構成される区間の流路断面を共通にし、
前記第2開口端側傾斜面の軸方向寸法、および第2開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの直線形状の内周面の軸方向寸法を変化させることが好ましい。
【0021】
上記構成により、標準化された流体継手に対し形式の異なる流体継手を設計する際に、バルブの第1開口端側傾斜面付近の流路抵抗を一定にして、圧力損失を一定化することができる。従って、形式の異なる流体継手のバルブの第1開口端側傾斜面付近において、標準化された流体継手と同等の流量を確保することができる。
【0022】
前記第1開口傾斜面と最大径部との間に、前記弁座に当接するシール部材を設け、該シール部材を共通にすることが好ましい。
これにより、シール性能などの評価をその都度行う必要がない点で、標準化された流体継手に対し形式の異なる流体継手の開発速度を早め、開発の省力化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、形式の異なる流体継手において、標準化された流体継手のバルブとソケットおよびプラグの挿通孔の一部形状を共通化することで、流体継手の開発コストを低減すると共に、バルブ先端部付近の流量を一定に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明の実施形態による流体継手の断面図、(B)は(A)のバルブの部分拡大断面図、(C)は(A)の挿通孔の直線部分の拡大断面図。
【図2】(A)はISO規格に準拠した流体継手の断面図、(B)は(A)のバルブの部分拡大断面図、(C)は(A)の挿通孔の直線部分の拡大断面図。
【図3】本実施形態による流体継手、およびISO規格に準拠した流体継手の流量と圧力損失との関係を示す。
【図4】従来の流体継手の断面図。
【図5】従来の他の流体継手の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態によるISO規格に準拠しない流体継手11aを示し、図2は、ISO規格に準拠した流体継手11bを示す。いずれも、図4のタイプの流体継手と同一であり、対応する部分には同符号を付して説明を省略する。
図1(A),図2(A)の上半分は、流体継手11a,11bのプラグ12とソケット13の接合途中の状態、下半分はプラグ12とソケット13の接合完了状態の断面図を示す。
【0027】
図1(A)において、プラグ12及びソケット13は、バルブ32および挿通孔14の一部形状を除いて、図2(A)に示すISO規格に準拠した流体継手11bと実質的に同一であり、対応する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
流体継手11aは、図2(A)の流体継手11bに比べて軸方向に短くしているが、バルブ32および挿通孔14のL区間の形状を共通化している。ここでL区間は当接する一対のバルブ32の当接面33、第1開口端側傾斜面34、シール部材35、最大径部37およびこれらと流路を形成する挿通孔14の一部を包含する領域を指している。つまり、当接面33の径と第1開口端16の挿通孔14の径とを共通にすることで、第1開口端16の流路断面積S1を一体に保っている。また、第1開口端側傾斜面34の径とこれに対向する挿通孔14の内周面の径とを共通にすることで、第1開口端側傾斜面34と挿通孔14の内周面とで形成される流路断面積S2を一定に保っている。同様に、最大径部37の径と、これに対向する挿通孔14の内周面の径とを共通にすることで、最大径部37と挿通孔14の内周面とで形成される流路断面積S3を一定に保っている。従って、流体継手11bよりも軸方向に短い流体継手11aを開発する際に、バルブ32および挿通孔14のL区間を再度、設計する必要がなく、開発コストを削減することができる。L区間の形状を共通化することで、流体継手11aと11bのバルブ32先端部近傍の流路抵抗を一定に保ち、流体継手11aにおいてもISO規格に準拠した流体継手11bと同等の流量を確保することができる。また、シール部材35を共通化しているため、シール性能などの評価をその都度行う必要がない点で、開発速度を早め、開発の省力化に寄与することができる。
【0029】
軸方向長さを短くするため、具体的には、図1(B)および図2(B)に示すように、バルブ32の第2開口端側傾斜面38の軸方向長さをL1からL2に短くすると共に、L1からL2に短くしたのと同じ比率で挿通孔14の内周面のうち、直線部分48の長さをL3からL4に短くしている(図1(C),図2(C)参照)。従って、バルブ32の第2開口端側傾斜面38の軸方向長さ、および挿通孔14の直線部分48の長さを変えるだけで、簡単に流体継手11bの長さを変更することができる。
【0030】
また、バルブ32の第2開口端側傾斜面38を短くすることで、水平方向となす角度がθ1からθ2に大きくなるため、流路抵抗が増大する。しかし、図3に示すように、軸方向に短くした本実施形態による流体継手11aとISO規格に準拠した流体継手11bとの圧力損失を比較すると、流路抵抗を低減するために最も重要なL区間の形状を共通化しているため、流路抵抗が増大することによる圧力損失の増大が抑えられている。
【0031】
本実施形態では、ISO規格に準拠したプラグ12とソケット13とを接合し、軸方向に短いプラグ12とソケット13とを接合しているが、L区間を共通にしているため、軸方向に短いプラグ12をISO規格に準拠したソケット13に接合することができ、また、ISO規格に準拠したプラグ12を軸方向に短いソケット13に接合することができる。これにより、流体継手の設置スペースに合わせて、最適な軸方向長さの流体継手を選択することができる。
【符号の説明】
【0032】
11a 流体継手
11b 流体継手
12 プラグ
13 ソケット
14 挿通孔
16 第1開口端
17 第2開口端
32 バルブ
33 当接面
34 第1開口端側傾斜面
35 シール部材
37 最大径部
38 第2開口端側傾斜面
41 スプリング
42 バルブホルダ
51 流体継手
52 プラグ
53 ソケット
55 バルブ
57 バルブホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有し、互いに液密に接合される第1開口端と、該第1開口端と反対側の端部に流路の入口または出口を規定する第2開口端がそれぞれ形成されたプラグとソケットの内部に、
第1開口端側に形成された小径の当接面と、該当接面から前記第2開口端に向かって拡径する第1開口端側傾斜面と、該第1開口端側傾斜面の端部に形成された最大径部と、該最大径部から前記第2開口端に向かって縮径する第2開口端側傾斜面とからなるバルブと、
前記バルブよりも第2開口端側に設けられたバルブホルダと、
前記バルブホルダに係止し、前記バルブを前記ソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢すると共に、前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとの当接面が互いに当接することで後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するスプリングと、
を有する標準化された流体継手に対して、
前記バルブの当接面の径、および前記プラグとソケットの第1開口端の径と、
前記バルブの第1開口端側傾斜面の径、および該第1開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの内周面の径と、
前記バルブの最大径部の径、および該最大径部に対向する前記プラグとソケットの内周面の径とを共通にし、
前記第2開口端側傾斜面の軸方向寸法、および第2開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの直線形状の内周面の軸方向寸法を変化させたことを特徴とする流体継手。
【請求項2】
挿通孔を有し、互いに液密に接合される第1開口端と、該第1開口端と反対側の端部に流路の入口または出口を規定する第2開口端がそれぞれ形成されたプラグとソケットの内部に、
第1開口端側に形成された小径の当接面と、該当接面から前記第2開口端に向かって拡径する第1開口端側傾斜面と、該第1開口端側傾斜面の端部に形成された最大径部と、該最大径部から前記第2開口端に向かって縮径する第2開口端側傾斜面とからなるバルブと、
前記バルブよりも第2開口端側に設けられたバルブホルダと、
前記バルブホルダに係止し、前記バルブを前記ソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢すると共に、前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとの当接面が互いに当接することで後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するスプリングと、
を有する標準化された流体継手に対して、
前記バルブの第1開口端側傾斜面および最大径部と、該第1開口端側傾斜面および最大径部に対向する前記プラグとソケットの内周面とで構成される区間の流路断面を共通にし、
前記第2開口端側傾斜面の軸方向寸法、および第2開口端側傾斜面に対向する前記プラグとソケットの直線形状の内周面の軸方向寸法を変化させたことを特徴とする流体継手。
【請求項3】
前記第1開口端側傾斜面と最大径部との間に、前記弁座に当接するシール部材を設け、該シール部材を共通にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の流体継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117618(P2012−117618A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268452(P2010−268452)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(308037797)長堀工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】