説明

流体軸受けおよびステージ装置

【課題】流体軸受けにおける作動流体の利用効率を向上させる。
【解決手段】第一部材および第一部材の表面に沿って移動する第二部材の間隙301に気体を供給する圧送部340と、間隙301から気体を圧送部340に帰還させる帰還部394とを備える。上記帰還部394は、圧送部340から間隙301に供給された気体が、間隙301から外部に向かって流れる過程で、間隙301から気体を帰還させてもよい。上記圧送部340および上記帰還部394は、第二部材に搭載されて、第二部材と共に移動してもよい。上記圧送部340は、加圧された気体を収容したタンクを含んでもよい。上記帰還部394は、第二部材に搭載されて第二部材と共に移動しつつ、第一部材および第二部材の間から漏れ出す気体を吸引して回収する回収部を更に有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受けおよびステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに摺動する部材の間に流体の層を形成して、摺動摩擦を低減する流体軸受けがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−027659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摺動する部材の間の間隙は、少なくとも一端が外部に向かって開放されている。このため、流体軸受けにおける作動流体として当該間隙に供給された流体は、間隙の外部に漏れ出して消尽される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第一態様として、第一部材および第一部材の表面に沿って移動する第二部材の間隙に気体を供給する圧送部と、間隙から気体を圧送部に帰還させる帰還部とを備える流体軸受けが提供される。
【0006】
また、本発明の第二態様として、上記流体軸受けに支持されたステージを備えるステージ装置が提供される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】基板貼り合わせ装置100の平面図である。
【図2】アライナ160の縦断面図である。
【図3】アライナ160の縦断面図である。
【図4】加圧装置130の縦断面図である。
【図5】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図6】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図7】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図8】基板102の状態の遷移を示す断面図である。
【図9】微動部200の縦断面図である。
【図10】微動部200の平面図である。
【図11】エアベアリング300の配管図である。
【図12】エアベアリング駆動部321のレイアウトを示す平面図である。
【図13】エアベアリング駆動部321のレイアウトを示す平面図である。
【図14】エアベアリング300の配管図である。
【図15】エアベアリング駆動部321のレイアウトを示す平面図である。
【図16】エアベアリング駆動部321のレイアウトを示す平面図である。
【図17】エアベアリング300の配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、基板貼り合わせ装置100の全体的な構造を模式的に示す平面図である。基板貼り合わせ装置100は、筐体110と、筐体110に収容された環境ローダ120、大気ローダ121、加圧装置130、ホルダストッカ140、プリアライナ150、アライナ160およびロードロック129を備える。更に、筐体110の外面には、複数のFOUP(Fro nt Opening Unified Pod)111が装着される。
【0011】
FOUP111は、筐体110に対して個別に取り外しでき、各々が複数の基板102を収容する。FOUP111を用いることにより、複数の基板102を一括して基板貼り合わせ装置100に装填できる。また、基板102を貼り合わせて作製した積層基板104を、FOUP111に回収して一括して搬出できる。
【0012】
ここでいう基板102は、シリコン単結晶基板、化合物半導体基板等の半導体基板の他、ガラス基板等でもあり得る。また、貼り合わせに供される基板102は、複数の素子を含む場合、それ自体が既に複数の基板を貼り合わせた積層基板104である場合がある。
【0013】
筐体110は、環境ローダ120、加圧装置130、ホルダストッカ140、プリアライナ150およびアライナ160を包囲する。筐体110の内側は大気と連通して大気環境にある。
【0014】
大気ローダ121は、筐体110の内部においてFOUP111に対向して配される。大気ローダ121は、基板102を搭載するフォーク123を有して、FOUP111に沿って配されたガイドレール125に沿って移動しつつ基板102を搬送する。
【0015】
プリアライナ150は、大気ローダ121の近傍に配され、位置合わせ精度よりも処理速度を重視した位置合わせ機構を有する。プリアライナ150は、大気ローダ121に対する基板102の搭載位置のばらつきを、予め定められた範囲に収まるように調整する。これにより、後述するアライナ160における位置合わせに要する時間を短縮する。
【0016】
ロードロック129は、大気ローダ121を含む大気環境と、真空環境に配された環境ローダ120との間に位置して、大気環境側および真空環境側にそれぞれ面したゲートバルブ212、214を有する。これにより、真空環境の真空を破ることなく、大気環境および真空環境の間で基板102の受け渡しができる。
【0017】
ロードロック129も大気ローダ121の近傍に配される。大気ローダ121は、プリアライナ150で搭載位置を調整された基板102をロードロック129に搬入する。また、大気ローダ121は、後述するアライナ160および加圧装置130で製造された積層基板104をロードロック129から搬出する。
【0018】
環境ローダ120は、ロードロック129に対して、大気ローダ121と反対側に配される、基板102、積層基板104、基板ホルダ108のいずれかを搬送する。環境ローダ120は、フォーク122、落下防止爪124およびフォールディングアーム126を有する。
【0019】
フォールディングアーム126は、一端においてフォーク122および落下防止爪124を支持する。フォールディングアーム126の他端は、筐体110に対して回転可能に支持される。フォールディングアーム126は、それ自体の屈曲と回転とを組み合わせて、フォーク122を任意の位置に移動する。
【0020】
フォーク122は、搭載した基板102または基板ホルダ108を吸着して保持する。これにより、フォーク122および落下防止爪124が上下反転した場合も、環境ローダ120は、基板102または基板ホルダ108をフォーク122の下側に保持する。
【0021】
落下防止爪124は、フォーク122が上下反転した場合に、フォーク122に保持された基板102または基板ホルダ108の下方に差し出される。これにより、基板102または基板ホルダ108の落下を防止する。フォーク122が反転しない場合、落下防止爪124は、フォーク122上の基板102および基板ホルダ108と干渉しない位置まで退避する。
【0022】
環境ローダ120の周囲には、複数の加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160が配される。隣接する加圧装置130、ホルダストッカ140、アライナ160、ロードロック129の間は、気密壁112により気密に封じられる。気密壁112の内側を排気することにより、加圧装置130およびアライナ160は真空環境で稼働する。
【0023】
また、加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160は、環境ローダ120に対してそれぞれ対面して配される。これにより、環境ローダ120は、ロードロック129から取り出した基板102を、加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160のいずれに対しても搬入できる。また、環境ローダ120は、加圧装置130、ホルダストッカ140およびアライナ160から搬出した基板102および基板ホルダ108をロードロック129に搬入できる。
【0024】
ホルダストッカ140は、基板102を保持する基板ホルダ108を複数収容して待機させる。基板ホルダ108は、環境ローダ120により1枚ずつ取り出され、それぞれが基板102を一枚ずつ保持する。ロードロック129に対して環境ローダ120側の真空環境において、基板ホルダ108は基板102と一体的に取り扱われる。これにより、薄く脆弱な基板102を保護して基板102の取り扱いを容易にする。
【0025】
基板ホルダ108は、積層基板104が真空環境から搬出される場合に、積層基板104から分離されてホルダストッカ140に戻される。これにより、少なくとも基板貼り合わせ装置100が稼働している期間は、基板ホルダ108は真空環境に留まる。
【0026】
アライナ160は、それぞれが基板ホルダ108に保持された一対の基板102を相互に位置合わせした後に重ね合わせる。アライナ160の位置合わせ精度は高く、例えば、素子が形成された半導体基板を位置合わせする場合にはサブミクロンレベルの精度が求められる。
【0027】
加圧装置130は、アライナ160において位置合わせして重ね合わされた一対の基板102を加圧して、基板102どうしを接着する。これにより基板102は恒久的に積層された積層基板104となる。作製された積層基板104は、環境ローダ120によりロードロック129に搬送され、更に、大気ローダ121によりロードロック129から搬出されてFOUP111に回収される。
【0028】
図2は、アライナ160の構造と動作を示す模式的な縦断面図である。アライナ160は、枠体162と、枠体162の内側に配された粗動部180、下ステージ170および上ステージ190とを備える。
【0029】
枠体162は、それぞれが水平で互いに平行な底板161および天板165と、底板161および天板165を結合する複数の支柱163とを有する。底板161、支柱163および天板165はそれぞれ高い剛性を有して、アライナ160の動作に伴う反力が作用した場合も変形しない。
【0030】
アライナ160において、底板161の上面には、粗動部180が載置される。粗動部180は、底板161に固定されたガイドレール182に案内されつつX方向に移動するX駆動部184と、X駆動部184の上でY方向に移動するY駆動部186とを有する。これにより、粗動部180は、XY平面上の任意の位置に向かって高速に移動する。
【0031】
Y駆動部186は、顕微鏡171および微動部200を搭載する。微動部200は、ベース部176、重力打消部400および下ステージ170と、複数のアクチュエータ172とを有する。
【0032】
ベース部176は、Y駆動部186から支持されると共に、微動部200の他の部材を支持する。即ち、下ステージ170は、球面座420を介してベース部176上に支持される。下ステージ170は基板102および基板ホルダ108を保持する。なお、下ステージ170の搭載面は、例えば真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、搭載された基板ホルダ108を吸着して保持する。
【0033】
下ステージ170およびベース部176の間には、水平または垂直に配された複数のアクチュエータ172が配される。下ステージ170は、水平に配されたアクチュエータ172の動作によりX方向およびY方向に移動する。また、下ステージ170は、水平に配置した複数のアクチュエータ172を異なる動作量で動作させることにより、鉛直な軸の回りに回転する。
【0034】
更に、下ステージ170は、垂直に配されたアクチュエータ172を動作させることにより昇降する。また更に、下ステージ170は、垂直に配された複数のアクチュエータ172の動作量を相互に変えることにより水平面に対する傾きも変化させる。
【0035】
このように、粗動部180は、下ステージ170を、迅速にX方向またはY方向に移動させる。微動部200は、粗動部180を停止させた状態で、下ステージ170を精密に位置合わせする。
【0036】
顕微鏡171は、ベース部176に搭載されて、微動部200と共にX方向およびY方向に移動する。顕微鏡171および下ステージ170の相対位置は予め正確に知ることができるので、下ステージ170に対向する物の下ステージ170に対する相対位置を、顕微鏡171を用いて正確に検出できる。
【0037】
図示の状態では、上ステージ190に吸着された基板ホルダ108に保持された基板102のアライメントマークMの位置を正確に検出できる。図中では、三角形の記号によりアライメントマークMを表す。ただし、相対位置の検出は、アライメントマークMを用いるとは限らない。例えば、基板102に形成されたパターン等を指標に用いる場合もある。
【0038】
アライナ160において、天板165の下面には、上ステージ190および顕微鏡191が懸下される。上ステージ190および顕微鏡191は、天板165に対して固定されて移動しない。
【0039】
上ステージ190は、水平で下向きの搭載面を有して、基板102を保持した基板ホルダ108を保持する。即ち、上ステージ190は、例えば真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、基板ホルダ108を吸着して保持する。これにより、基板ホルダ108に吸着された基板102と、基板ホルダ108に保持された基板とを対向させることができる。
【0040】
また、上ステージ190および顕微鏡191の相対位置は予め正確に知ることができるので、顕微鏡191を用いて、上ステージ190に対向する物の相対位置を正確に検出できる。この実施形態では、下ステージ170に搭載された基板ホルダ108に保持された基板102のアライメントマークMを観察して、基板ホルダ108に保持された基板102の位置を正確に検出できる。
【0041】
図3は、アライナ160の動作を、図2に対比して示す図である。既に説明した通り、顕微鏡171、191により対向する基板102のアライメントマークMの位置を検出することにより、基板ホルダ108に保持された基板102に対する基板ホルダ108に保持された基板102の正確な相対位置を知ることができる。
【0042】
そこで、基板102相互の相対位置のずれが無くなるように粗動部180および微動部200を順次動作させることにより、一対の基板102を正対させることができる。続いて、垂直なアクチュエータ172を同時に動作させて下ステージ170を上昇させることにより、位置合わせをした状態で一対の基板102を積層して仮接合させることができる。
【0043】
図4は、加圧装置130単独の構造を模式的に示す縦断面図である。加圧装置130は、筐体132の底部から順次積層された定盤138および加熱プレート136と、筐体132の天井面から垂下された圧下部134および加熱プレート136とを有する。加熱プレート136の各々はヒータを内蔵する。また、筐体132の側面のひとつには装入口131が設けられる。
【0044】
加圧装置130には、既に位置合わせして重ね合わされた基板102が、基板ホルダ108および基板ホルダ108と共に搬入される。搬入された基板102および基板ホルダ108は、定盤138の加熱プレート136上面に載置される。
【0045】
加圧装置130は、加熱プレート136を昇温させると共に、圧下部134を降下させて上側の加熱プレート136を押し下げる。これにより、加熱プレート136の間に挟まれた基板102並びに基板ホルダ108および基板ホルダ108が加熱および加圧され、基板102は恒久的に接着される。
【0046】
なお、図示は省いたが、加熱、加圧した後に、基板102を冷却する冷却部を加圧装置130に設けてもよい。これにより、室温までに至らなくても、ある程度冷却した基板102を搬出して、迅速にFOUP111に戻すことができる。
【0047】
図5、図6、図7および図8は、基板貼り合わせ装置100における基板102の状態の変遷を示す図である。以下、図5、図6、図7および図8を参照しつつ、図1に示す基板貼り合わせ装置100の動作を説明する。
【0048】
貼り合わせに供される基板102は、FOUP111に収容された状態で基板貼り合わせ装置100に装填される。基板貼り合わせ装置100においては、まず、大気ローダ121が、ホルダストッカ140から搬出した基板ホルダ108を、プリアライナ150に載置する。
【0049】
次に、大気ローダ121は、FOUP111から1枚ずつ搬出した基板102を、プリアライナ150に置かれた基板ホルダ108に搭載する。搭載された基板102は、静電吸着等により、基板ホルダ108に保持される。
【0050】
基板102を保持した基板ホルダ108は、少なくとも2組用意される。以下の工程において、基板102および基板ホルダ108が一体的に取り扱われる。こうして、図5に示すように、基板102を保持した基板ホルダ108が用意される。
【0051】
環境ローダ120は、基板102を保持した基板ホルダ108を、アライナ160に順次搬送する。例えば、最初に搬送された基板ホルダ108は、環境ローダ120により反転されて上ステージ190に保持される。また、次に搬入された基板ホルダ108は、そのままの向きで下ステージ170に保持される。これら基板ホルダ108に保持された基板102は、図6に示すように、相互に位置合わせして仮接合される。
【0052】
ここで、アライナ160において仮接合された一対の基板102はまだ接着されていないので、図7に示すように、基板ホルダ108の溝109にクリップ204が嵌められる。これにより、アライナ160による位置合わせを保持したまま、位置合わせした基板102を挟んだ一対の基板ホルダ108を一体的に搬送できる。
【0053】
続いて、環境ローダ120は、仮接合された1対の基板102を挟んだ基板ホルダ108を、加圧装置130に搬送する。加圧装置130において加熱、加圧された1対の基板102は恒久的に接着され、図8に示すように、積層基板104となる。
【0054】
更に、環境ローダ120は、基板ホルダ108および積層基板104を分離する。基板ホルダ108はホルダストッカ140に搬送される。また、積層基板104は、FOUP111に回収される。
【0055】
図9は、微動部200の詳細な構造を示す断面図である。なお、図2および図3と共通の要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省く。微動部200はベース部176、上下アクチュエータ702、703、水平アクチュエータ730、下ステージ170、エアベアリング300および重力打消部400を備える。
【0056】
ベース部176は、エアベアリング300が形成するギャップ301を介してY駆動部186から支持される。エアベアリング300は、エアベアリング駆動部321、流体室310およびシール部320を含む。
【0057】
エアベアリング駆動部321は、ベース部176に搭載される。流体室310は、ベース部176の下面に、Y駆動部186に向かって開口して形成される。流体室310には、エアベアリング駆動部321から空気、窒素ガス等の作動流体が供給される。これにより、Y駆動部186の上面とベース部176の下面との間に作動流体の層が形成され、Y駆動部186およびベース部176は直接に摺動しなくなる。従って、ベース部176は、Y駆動部186上を極めて円滑に移動する。
【0058】
シール部320は、真空環境で稼働するエアベアリング300のギャップ301から、作動流体が真空環境に漏出することを防止する。シール部320の構造および作用については、図11を参照して後述する。
【0059】
下ステージ170は、反射鏡178およびテーブル部179を上面に有する。反射鏡178は、微動部200の外部に固定された干渉計から出射されたレーザ光を反射する。これにより、下ステージ170の正確な位置および移動量を検出できる。テーブル部179は、真空吸着、静電吸着等による吸着機構を有して、搭載された基板ホルダ108を保持する。
【0060】
重力打消部400は、球面座420を介して、下ステージ170を下方から支持する。重力打消部400は、下ステージ170の昇降を検出して、下ステージ170およびその搭載物の重量を打ち消すように重力方向に伸縮する。これにより、下ステージ170を移動させる場合の慣性を抑制して正確な位置合わせができる。
【0061】
球面座420は、下ステージ170を揺動可能に支持する。また、球面座420は、流体軸受け等を介して、下ステージ170を低摩擦に支持する。これにより、上下アクチュエータ702、703を個別に動作させた場合、下ステージ170は円滑に揺動する。
【0062】
また、重力打消部400は、ベース部176に対して垂直に配されたシリンダ412と、シリンダ412の内部を垂直に変位するピストン414とを含む垂直駆動部410を有する。シリンダ412およびピストン414の間に作動流体を供給することにより下ステージ170等の重量を打ち消して、下ステージ170を円滑且つ精密に移動させることができる。
【0063】
なお、重力打消部400の下端でもあるシリンダ412の下面は、ベース部176を貫通して、Y駆動部186の上面に、エアベアリング450を介して支持される。また、シリンダ412の側面は、ベース部176の内側に配されたジンバルサポート430により側方から支持される。これにより、重力打消部400は、ベース部176に対して相対的に変位することなく、ベース部176と共にY駆動部186上を水平に移動する。
【0064】
上下アクチュエータ702、703および水平アクチュエータ730のそれぞれは、支持部174を介して下ステージ170側に固定された軸状のマグネット173と、ヨーク175によりベース部176側に固定されたコイル177とを有する。これにより、コイル177に流れる駆動電流を変化させることによりマグネット173が進退して、ベース部176に対する下ステージ170の間隔を、それぞれのアクチュエータが配置された位置において短縮または拡大できる。このように、コイル177を下ステージ170側に配することにより、下ステージ170が移動する場合に、コイル177に駆動電流を供給するケーブルを下ステージ170が引きずることが避けられる。
【0065】
なお、微動部200において、下ステージ170の水平移動量および垂直移動量は小さい。従って、上下アクチュエータ702、703が動作した場合、水平アクチュエータ730のマグネット173はコイル177の内側で変位するに過ぎず、マグネット173およびコイル177が接触することはない。同様に、水平アクチュエータ730が動作した場合に、上下アクチュエータ702、703において、マグネット173およびコイル177が接触することもない。
【0066】
図10は、微動部200の平面図である。この図においても、他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。微動部200は、ベース部176と、ベース部176上に搭載された下ステージ170、複数の水平アクチュエータ710、720、730およびエアベアリング駆動部321とを備える。また、ベース部176と下ステージ170との間には、ベース部176に対して垂直に配された3つの上下アクチュエータ701、702、703を備える。
【0067】
下ステージ170は、反射鏡178を搭載していない周縁部を切りかかれている。これにより、エアベアリング駆動部321を搭載するベース部176上面の一部領域を露出させる。
【0068】
3つの上下アクチュエータ701、702、703は、下ステージ170の重心Gから互いに等しい距離をおいて、単一直線上にない3個所に配される。3つの上下アクチュエータ701、702、703を同時に同方向に動作させた場合は、下ステージ170を垂直に上昇または下降させることができる。また、3つの上下アクチュエータ701、702、703の動作量を相互に変えた場合は、テーブル部179の、水平面に対する傾きが変化する。
【0069】
なお、下ステージ170の重心Gは、下ステージ170と共に変位するテーブル部179および反射鏡178を含む。従って、下ステージ170の重心Gは、テーブル部179およびそこに保持された基板ホルダ108等の重心と一致するとは限らない。
【0070】
ひとつの水平アクチュエータ710は、略水平に配されて、下ステージ170を、図中に矢印で示すY方向に移動させる。他の水平アクチュエータ720、730は、略水平に配されて、水平アクチュエータ710の作用線と交差する方向に下ステージ170を略X方向に移動させる。
【0071】
なお、同じ向きに配された一対の水平アクチュエータ720、730を、同時に同じ動作量で動作させた場合、下ステージ170はX方向に直線移動する。一方、水平アクチュエータ720、730を、互いに異なる動作量で動作させた場合、下ステージ170は鉛直な軸の回りに回転する。
【0072】
図11は、エアベアリング300の配管図である。エアベアリング300は、ベース部176の下面に形成された流体室310と、ベース部176の側面下端に配されたシール部320と、ベース部176に搭載されたエアベアリング駆動部321とを含む。
【0073】
流体室310は、Y駆動部186の上面に向かって開口して、ベース部176の下面に形成される。シール部320は、流体室310に対して、ベース部176およびY駆動部186の間に形成されたギャップ301の外側に配される。シール部320は、流体室310に近い側から順に、帰還溝322、第一回収溝324および第二回収溝326を有する。帰還溝322、第一回収溝324および第二回収溝326は、ベース部176の周囲に環状に形成される。
【0074】
流体室310の内部には、流体源330に連通する給気管392の一端が開口する。給気管392の途中には、コンプレッサ340およびレギュレータ350が配される。これにより、流体源330から供給された作動流体は、コンプレッサ340により加圧された後、レギュレータ350に設定された一定の圧力で流体室310の内部に供給される。
【0075】
流体室310の内部に供給された作動流体は、ベース部176の下面とY駆動部186の上面との間にギャップ301を形成する。これにより、ベース部176およびY駆動部186の直接的な摺動を防止する。
【0076】
帰還溝322の内部には、帰還路394の一端が開口する。これにより、ベース部176およびY駆動部186の間から外部に漏れる作動流体は、帰還溝322および帰還路394を通じて、給気管392におけるコンプレッサ340の上流に帰還される。これにより、ギャップ301から漏出した作動流体は、再び流体室310に戻されてエアベアリング300に使用される。
【0077】
帰還路394の途中には、給気管392から帰還路394に作動流体が流れ込むことを規制するチェックバルブ304を配してもよい。これにより、流体源330から供給された作動流体が帰還溝322に直接に流れ込むことが防止される。
【0078】
第一回収溝324は、大気環境に配されたドライポンプ380に連通する。ドライポンプ380は、第一回収溝324から流体を吸い出す方向に動作して、帰還溝322よりも外側に漏出した低圧の作動流体を吸引する。
【0079】
第二回収溝326は、ターボ分子ポンプ370に連通する。ターボ分子ポンプ370は、第二回収溝326から流体を吸い出す方向に動作して、帰還溝322および第一回収溝324よりも外側に漏出した、より低圧の作動流体を吸い出す。ターボ分子ポンプ370の排気側は、排気管398を介してドライポンプ380に連通する。これにより、ターボ分子ポンプ370が吸い出した作動流体は、ドライポンプ380に吸引される。
【0080】
排気管398は、大気環境まで引き出され、ドライポンプ380に連通する。ドライポンプ380は、排気管398の内部を減圧して、第一回収溝324および第二回収溝326から回収された作動流体を大気環境に放出する。このように、ベース部176およびY駆動部186の間から漏出した作動流体を、段階的に帰還または排出することにより、作動流体の真空環境への漏出が防止される。
【0081】
また、ベース部176およびY駆動部186の間から漏出した作動流体の一部は、帰還溝322および帰還路394を通じてエアベアリング300に再利用される。これにより、流体源330から供給される作動流体の消費が抑制される。
【0082】
更に、コンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370を含むエアベアリング駆動部321が、流体室310およびシール部320に隣接してベース部176に搭載されている。これにより、作動流体の流路が短くなり、エアベアリング300の応答性が高い。
【0083】
上記の例では、互いに反対方向に回転する回転部分を有するコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370を各々1基ずつ搭載した。しかしながら、回転部分の回転方向が互いに反対で、その他の点では同じ仕様を有するコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370を各々1対搭載してもよい。これにより、振動の打ち消し効果がより高くなる。
【0084】
図12は、エアベアリング駆動部321におけるコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370のレイアウトを示す図である。図示のように、ベース部176に垂直に搭載されたコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370は回転部分の回転軸が互いに平行になる。
【0085】
また、コンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370は、各々の回転部分の回転方向が互いに反対になるように、ベース部176に搭載される。これにより、コンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370は、動作に伴って生じる振動を打ち消し合い、ベース部176にコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370を搭載したことに起因する振動が、下ステージ170の位置合わせ精度に及ぼす影響を抑制できる。
【0086】
図13は、エアベアリング駆動部321におけるコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370の他のレイアウトを示す図である。図示のように、ベース部176に水平に搭載されたコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370は、回転部分の回転軸が互いに同一直線上に並ぶ。
【0087】
また、コンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370の各々の、回転部分の回転方向は、互いに反対になる。これにより、コンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370は、動作に伴って生じる振動を打ち消し合う。従って、ベース部176に搭載したコンプレッサ340およびターボ分子ポンプ370の振動が、下ステージ170の位置合わせ精度に及ぼす影響を抑制できる。
【0088】
図14は、エアベアリング300の他の配管図である。以下に説明する部分を除くと、このエアベアリング300は、図11に示したエアベアリング300と共通の構造を有する。そこで、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0089】
エアベアリング300は、エアベアリング駆動部321に実装され、第一回収溝324に連通するドライポンプ380を有する。ドライポンプ380は、第一回収溝324から作動流体を吸引する方向に動作する。また、ドライポンプ380の排気側は、給気管392におけるコンプレッサ340の上流側に作動流体を戻す帰還路391に連通する。
【0090】
また、エアベアリング300は、ターボ分子ポンプ370から、給気管392におけるコンプレッサ340の上流側に作動流体を戻す帰還路393を備える。一方、真空ポンプ360およびターボ分子ポンプ370から外部に作動流体を排出する排気管398と、ドライポンプ380は省かれる。
【0091】
このような構造により、流体室310から漏出してシール部320において回収された作動流体は、すべてコンプレッサ340に帰還され、再び流体室310において利用される。このため、作動流体の消費が少なくなる。
【0092】
また、排気管398およびドライポンプ380が省かれるので、エアベアリング300の装置規模および稼働コストを縮小できる。更に、微動部200に排気管398を結合しなくてもよいので、微動部200を移動させる場合の負荷が軽減される。
【0093】
図15は、エアベアリング駆動部321におけるコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380のレイアウトを示す図である。図示のように、ベース部176に垂直に搭載されたコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380は、回転部分の回転軸が互いに平行になる。
【0094】
また、コンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380の各々の、回転部分の回転方向は、互いに反対になるように、ベース部176に搭載される。これにより、コンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380は、動作に伴って生じる振動を打ち消し合い、ベース部176にコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380を搭載したことに起因する振動が、下ステージ170の位置合わせ精度に及ぼす影響を抑制できる。
【0095】
図16は、エアベアリング駆動部321におけるコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380のレイアウトを示す図である。図示のように、ベース部176に水平に搭載されたコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380は、回転部分の回転軸が互いに同一直線上に並ぶ。
【0096】
また、コンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380の各々の、回転部分の回転方向は、互いに反対になる。これにより、コンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380は、動作に伴って生じる振動を打ち消し合う。従って、ベース部176に搭載したコンプレッサ340、ターボ分子ポンプ370およびドライポンプ380の振動が、下ステージ170の位置合わせ精度に及ぼす影響を抑制できる。
【0097】
図17は、エアベアリング300の配管図である。以下に説明する部分を除くと、このエアベアリング300は、図11および図14に示したエアベアリング300と共通の構造を有する。そこで、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0098】
エアベアリング300は、真空ポンプ360から、給気管392におけるコンプレッサ340の上流側に作動流体を戻す帰還路391を備える。また、エアベアリング300は、第二回収溝326から作動流体を吸引するターボ分子ポンプ370を備える。更に、エアベアリング300は、第一回収溝324およびターボ分子ポンプ370の排気側から、給気管392におけるコンプレッサ340の上流側に作動流体を戻す帰還路393を備える。これらの点において、図14に示したエアベアリング駆動部321と共通の構造を有する。
【0099】
一方、エアベアリング駆動部321は、コンプレッサ340に上流側から連通するタンク332を有する。タンク332は作動流体を圧縮して貯蔵する。図14を参照して既に説明した通り、流体室310から漏出した作動流体は、シール部320を通じてコンプレッサ340に還流する。このため、このエアベアリング300では、シール部320からも漏出した僅かな作動流体しか消尽しない。従って、エアベアリング駆動部321に内蔵させたタンク332により、消尽した作動流体を十分に補うことができる。
【0100】
こうして、微動部200から外部に接続されていた給気管392も省くことができる。従って、微動部200が移動する場合に給気管392から受けていた負荷を取り除くことができる。また、大気環境側に配する流体源330、ドライポンプ380等を省くことができるので、エアベアリング300を含む装置の規模を縮小できる。
【0101】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0102】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を、後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意されたい。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0103】
100 基板貼り合わせ装置、102 基板、104 積層基板、108 基板ホルダ、109 溝、110、132 筐体、111 FOUP、120 環境ローダ、121 大気ローダ、122、123 フォーク、124 落下防止爪、125 ガイドレール、126 フォールディングアーム、129 ロードロック、130 加圧装置、131 装入口、134 圧下部、136 加熱プレート、138 定盤、140 ホルダストッカ、150 プリアライナ、160 アライナ、161 底板、162 枠体、163 支柱、165 天板、420 球面座、400 重力打消部、170 下ステージ、171、191 顕微鏡、172 アクチュエータ、173 マグネット、174 支持部、175 ヨーク、176 ベース部、177 コイル、178 反射鏡、179 テーブル部、180 粗動部、182 ガイドレール、184 X駆動部、186 Y駆動部、190 上ステージ、200 微動部、204 クリップ、212、214 ゲートバルブ、300、450 エアベアリング、301 ギャップ、304 チェックバルブ、310 流体室、320 シール部、321 エアベアリング駆動部、322 帰還溝、324 第一回収溝、326 第二回収溝、330 流体源、332 タンク、340 コンプレッサ、350 レギュレータ、370 ターボ分子ポンプ、380 ドライポンプ、392 給気管、394、391、393 帰還路、398 排気管、400 重力打消部、410 垂直駆動部、412 シリンダ、414 ピストン、701、702、703 上下アクチュエータ、710、720、730 水平アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材および前記第一部材の表面に沿って移動する第二部材の間隙に気体を供給する圧送部と、
前記間隙から前記気体を前記圧送部に帰還させる帰還部と、
を備える流体軸受け。
【請求項2】
前記帰還部は、前記圧送部から前記間隙に供給された前記気体が、前記間隙から外部に向かって流れる過程で、前記間隙から前記気体を帰還させる請求項1に記載の流体軸受け。
【請求項3】
前記圧送部および前記帰還部は、前記第二部材に搭載されて、前記第二部材と共に移動する請求項1または請求項2に記載の流体軸受け。
【請求項4】
前記圧送部は、加圧された前記気体を収容したタンクを含む請求項1から請求項3までのいずれかに記載の流体軸受け。
【請求項5】
前記帰還部は、前記第二部材に搭載されて前記第二部材と共に移動しつつ、前記第一部材および前記第二部材の間から漏れ出す前記気体を吸引して回収する回収部を更に有する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の流体軸受け。
【請求項6】
前記回収部は、前記間隙から前記気体を吸い出すポンプを含む請求項5に記載の流体軸受け。
【請求項7】
前記回収部は、前記帰還部により帰還されることなく前記間隙から外部に向かって流れる過程で、前記間隙から前記気体を吸引する請求項5または請求項6に記載の流体軸受け。
【請求項8】
前記圧送部および前記帰還部は、互いに同じ回転数で互いに逆回転する部分を含む複数のポンプを含む請求項1から請求項7までのいずれかに記載の流体軸受け。
【請求項9】
前記複数のポンプは、互いに平行な回転軸を有する請求項8に記載の流体軸受け。
【請求項10】
前記複数のポンプは、互いに同軸に配される請求項8に記載の流体軸受け。
【請求項11】
真空環境に配された請求項1から請求項10までのいずれかに記載の流体軸受け。
【請求項12】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載された流体軸受けに支持されたステージを備えるステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−75084(P2011−75084A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229920(P2009−229920)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】