説明

流水検知装置

【課題】 流水検知装置が設置された配管上に、常時開放状態の制御弁が設置されており、該制御弁は電気信号によって開閉制御が可能であり、火災感知器が作動した際に出力される火災信号と、流水検知装置が作動した際に出力される流水信号とを制御装置内で信号処理をして前記制御弁に信号が出力され制御弁の開閉制御が可能なスプリンクラー設備に設置される流水検知装置において、スプリンクラーヘッドの誤作動時には水損被害を最低限に抑えることが可能であり、二次側配管内の減圧によって流水検知装置内の弁体が僅かに開いた場合には流水信号が出力されない流水検知装置を提供する。
【解決手段】 流水検知装置内の弁体の開放動作による変位によってスイッチから信号が出力される構造であり、所定範囲以上変位した際に速やかに信号を出力する第1のスイッチと、遅延時間経過後に信号を出力する第2のスイッチとが併設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備の配管途中に設置される流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流水検知装置は、スプリンクラー設備の配管途中に設置されているものであり、一次側は水源に通じており、二次側にはスプリンクラーヘッドが設けられている。
【0003】
流水検知装置は、二次側に設置されたスプリンクラーヘッドが火災の熱によって作動した際に、二次側配管内の消火水が外部へ流れ出ることを検知して、流水信号を出力するものである。該流水信号によってポンプが起動され、水源に蓄えられている消火水が汲み上げられて作動したスプリンクラーヘッドに連続して消火水を供給する。作動したスプリンクラーヘッドからは消火水が散布されて火災が消し止められる。
【0004】
流水検知装置の構造は、スイング式の逆止弁構造をしており、弁体は常時閉止状態であり弁座に着座している。弁座付近には外部に通じる警報水路が穿設されており、常時は弁体によって警報水路が閉鎖されている。警報水路の外部側には圧力スイッチが接続されており、弁体が開いて警報水路に消火水が流入してきた際に、消火水の圧力によって圧力スイッチが起動され、流水信号が外部に出力されるものである。
【0005】
上記構造による従来の流水検知装置の一例として、特許文献1に記載されているものがある。
【0006】
ところで、近年、IT化の流れによりオフィスビルや商業施設内等にはパソコン等のOA機器が数多く設置されている。万が一に非火災時にスプリンクラーヘッドが誤作動して消火水を散布した場合、OA機器や商品等の水損被害額は甚大なものとなるおそれがあることから、図7に示すようにスプリンクラーヘッドHの付近に火災感知器Kを設置して、火災感知器Kの信号と流水検知装置の流水信号により火災の早期発見・消火およびスプリンクラーヘッドの誤作動を早期に判断し水損被害を低減可能なスプリンクラー設備がいくつか考えられている。
【0007】
例えば、流水検知装置の流水信号が出力されたときに、火災感知器からの火災信号が出力されていない場合を、スプリンクラーヘッドの誤作動と判断して、制御弁Vを閉止してスプリンクラーヘッドHへの給水を停止するスプリンクラー設備(特開平10−5365号公報)や、それに加えて二次側配管内の消火水を排水するスプリンクラー設備(特開2000−51385号公報)、あるいは二次側配管内の消火水を吸引して排出するスプリンクラー設備(特開2000−140148号公報)等が考えられている。
【0008】
【特許文献1】実公平6−14780号公報 (第2−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のスプリンクラー設備に限らず、スプリンクラー設備全般において、配管内に充填されている消火水は、時間の経過とともに微量ずつ減圧していくものである。二次側配管内の消火水が減圧して一次側配管内の消火水の圧力が二次側配管内の圧力を上回ると、弁体が僅かに開いて二次側配管内に一次側配管内の消火水が流入される。一次側配管側の圧力と、二次側配管側の圧力が等しくなると弁体は閉止して元の状態に戻る。このときの僅かに弁体が開放された状態において流水信号が出力されないように、一般の流水検知装置は遅延手段によって弁体の開放が所定時間継続された場合に流水信号が出力されるようにしている。
【0010】
先に説明したスプリンクラー設備に設置される流水検知装置は、スプリンクラーヘッドの誤作動による水損被害を最低限に抑えるように、流水検知装置の弁体が開放されたら直ちに信号を出力することが望ましい。しかしながら、弁体が開放されたら直ちに流水信号を出力する流水検知装置を設置した場合、二次側配管内が減圧する度に制御弁が閉止制御されてしまい、それにかかる消費電力は相当なものとなる。
【0011】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドの誤作動時には水損被害を最低限に抑えることが可能であり、二次側配管内の減圧によって流水検知装置内の弁体が僅かに開いた場合には流水信号が出力されない流水検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、流水検知装置が設置された配管上に、常時開放状態の制御弁が設置されており、該制御弁は電気信号によって開閉制御が可能であり、火災感知器が作動した際に出力される火災信号と、流水検知装置が作動した際に出力される流水信号とを制御装置内で信号処理をして前記制御弁に信号が出力され制御弁の開閉制御が可能なスプリンクラー設備に設置される流水検知装置において、流水検知装置内の弁体の開放動作による変位によってスイッチから信号が出力される構造であり、所定範囲以上変位した際に速やかに信号を出力する第1のスイッチと、遅延時間経過後に信号を出力する第2のスイッチとが併設されている流水検知装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記流水検知装置内の弁体の開放動作による変位において、第1のスイッチが作動される弁体の変位量と、第2のスイッチが作動する弁体の変位量とが異なる請求項1記載の流水検知装置である。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記流水検知装置は、スイング式の逆止弁構造をしており、変位量として弁体の回動動作による回動角度を用いている請求項1記載の流水検知装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、流水検知装置の流水信号を弁体の変位量によって検出することで、流水が所定量以上流れた場合のみ流水信号が出力される構造となり、従来品を用いた場合のように弁体が僅かに開いた際に流水信号が出力されることが無くなる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、弁体の変位により速やかに第1のスイッチが作動される弁体の変位量と、遅延時間経過後に信号を出力する第2のスイッチが作動する弁体の変位量とが異なることで、例えば第1のスイッチが作動される流量が、第2のスイッチが作動される流量よりも少ない場合、スプリンクラーヘッドが誤作動した際により早く制御弁を閉止することによって水損被害を抑えることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、流水検知装置の構造をスイング式の逆止弁構造としたことで、流路がS字形状をした流水検知装置と比較して圧力損失が少なくなるという効果を有する。
【実施例】
【0018】
以下、この発明の実施例を図1から図5を参照して説明する。図1は本発明の流水検知装置の縦断面図である。図2は図1のX−X断面である。図3は、弁体とカムを接続する部品の分解組立図である。図4は本発明の流水検知装置の弁体回動検出手段である。図5はリミットスイッチと弾発体の位置関係を説明する図である。
【0019】
図1から図5に示す流水検知装置は、本体1、弁体2、弁体回動検出手段3から構成される。
【0020】
本体1は、筒状で上下に配管と接続するためのフランジ4、4を有しており、内部は隔壁5によって一次側Iと二次側IIに分けられる。本体1の二次側IIにはメンテナンス用に開口が設けられており、該開口はカバー1Aによって塞がれている。
【0021】
隔壁5には連通口6が穿設されており、連通口6には円筒形状のシートリング7が設置されている。シートリング7の上面は弁座7Aとなっており弁体2が載置される。弁体2の周縁の一部には円筒部8が形成されており、該円筒部8にはヒンジピン9Bが挿通され、弁体2が回動自在な構造となっている。
【0022】
弁体2の弁座接触面にはゴム板やOリング等のシール部材が設けられ、またシール面の内側にはスカート10が設置されてシール部材を挟持している。スカート10は一次側Iに先細りのテーパー状に突出して設置され、これによりシートリング7内を通って一次側Iから二次側IIへ流れる流体の通過面積を小さくすることで、微量な流水が生じた場合でも弁体2が大きく回動するようにしたものである。また、スカート10を先細りのテーパー上にしたことで、弁体2が開くに従いシートリング7の内壁とスカート10との隙間が大きくなるので、流水時に配管内に存在する塵が該隙間に挟まりにくくなっている。
【0023】
弁体2の円筒部8の一端には係合部である縦溝11が刻設されており、ヒンジピン9Aの一端に該縦溝11との係合手段として形成された二平面12が接合され、弁体2の回動動作によってヒンジピン9Aが駆動する。ヒンジピン9Aの他端は、本体1を貫いて外部に突出されており、外部に突出した側の端にヒンジピン9Aの動きを伝達するカム13が設置されている。
【0024】
円筒部8の縦溝11が形成された側と反対の端には、ヒンジピン9Bが挿通される。ヒンジピン9Bは円筒部8の内径より小径であり、本体1の外側から穴14を貫いて弁体2の円筒部8内に挿通される。ヒンジピン9Bを円筒部8に挿入した状態において、ヒンジピン9Bと円筒部8の内径には隙間が生じた状態である。ヒンジピン9Bは中間部分に牡ネジ15を有しており、穴14に刻設された牝ネジ16と螺合され、着脱可能な構成となっている。
【0025】
上記のように、弁体2の縦溝11とヒンジピン9Aの二平面12との係合構造、およびヒンジピン9Bと円筒部8の内径に隙間が生じていることによって、閉弁時において弁体2が縦方向に変位することが可能となり、弁体2の一次側Iと二次側IIの受圧面積の差により、弁体2が弁座に対して垂直に押圧されるので弁座接触面に設けたシール部材が偏りなく均一に押し潰され止水性能が向上する。
【0026】
また、メンテナンス時に弁体2を取外す際にも、ヒンジピンBを本体1から引抜くのみで弁体2を取外すことが可能となる。さらに一度取外した弁体2を再設置する場合においても弁体2とヒンジピン9Aを係合するだけで接続および位置合わせを容易に行なうことができる。
【0027】
上記より、弁体2の取外しおよび再設置において、弁体回動検出手段3に触れることなくメンテナンス作業が可能である。
【0028】
次に弁体回動検出手段3について説明する。弁体回動検出手段3は、カム13、レバー17、遅延機構18、リミットスイッチ19、26から構成される。
【0029】
カム13は、中心に長穴が穿設されており、略同断面形状を有するヒンジピン9Aの一端20が挿通され、ヒンジピン9Aの先端に刻設された牡ネジとナット20Aが螺合してカム13が固定設置される。カム13は円盤を切欠いた形状をしており、円弧部21Aの両端には直線部21Bが形成されている。
【0030】
円弧部21の下端には穴が穿設され、弾発体22Aが接続される。弾発体22Aはカム13を時計回りに付勢するもので、ヒンジピン9Aを介して、弁体2を弁座7Aに押圧する作用を有する。
【0031】
カム13の近傍にはカムストッパー13Aが設けられている。該カムストッパー13Aは、メンテナンス時において弁体2を取外した際に、ヒンジピン9Aがカム13の自重および弾発体22Aの復元力によって回転することを阻止し、ヒンジピン9Aの二平面12が略垂直状態に位置されるようにしている。
【0032】
それにより、弁体2を本体1内に組み込む際には、ヒンジピン9Aの二平面12が略垂直状態となっているので、弁体2の縦溝11を容易に二平面12へ係合させることができる。
【0033】
レバー17は、平板を折り曲げた「L」字状であり、屈曲部分が軸支され回動可能な状態となっている。水平部23はカム13の直線部21Bと接触しており弾発体22Bによって下方に付勢されている。垂直部24は、弾発体22Bの作用によって遅延機構18の起動手段であるプッシュロッド25を常に押圧している。
【0034】
上記においては、カム13およびレバー17の付勢手段として弾発体22A、22Bを用いているが、錘や磁石等に置き換えたり、併用することも可能である。
【0035】
遅延機構18は、内部がエアダンパー構造となっている。エアダンパーについては一例として、特開平7−265454号に構造が記載されているので説明は省略する。レバー17の回動によりプッシュロッド25からレバー17の垂直部24が離れると、エアダンパー内部に空気が流入して、プッシュロッド25がリミットスイッチ19側にゆっくり移動し、リミットスイッチ19を作動させる。
【0036】
上記以外の遅延手段として、オイルダンパーや、ゼンマイ、電子タイマーを用いることも可能である。
【0037】
リミットスイッチ19は、常時においてスイッチがOFF状態のものを用いているが、弁体回動検出手段3の構成を変更して常時ON状態のものを使用することも可能である。
【0038】
カム13の動作から遅れて信号を出力するリミットスイッチ19に対して、カム13の動作と略同時に信号を出力するリミットスイッチ26が、カム13の近傍に設けられている。
【0039】
リミットスイッチ26は、常時において接点が導通しているb接点仕様のものを用いており、カム13の円弧21Aの端にリミットスイッチ26のアクチュエーターが接した状態で設置されている。カム13の回動によってリミットスイッチ26のアクチュエーターがカム13より離れ、リミットスイッチ26から信号が出力されるものである。
【0040】
リミットスイッチ26を設置する際、図5に示すように弾発体22Aとの干渉を防ぐために、カム13の弾発体22Aを係止する穴にロッド27を設置して該ロッド27の先に弾発体22Aの上端を係止し、また弾発体22Aの下端側が係止されるロッド28の長さを伸ばして、リミットスイッチ26と弾発体22Aの設置位置を離すと好ましい。
【0041】
続いて、上記実施例の作動について説明する。図6は流水検知装置が作動状態のときの弁体回動検出手段を表す。図7は本発明の流水検知装置が設置されたスプリンクラー設備の系統図である。
【0042】
本発明の流水検知装置は、図7に示すように一次側Iが水源Wおよび給水装置Pと接続され、二次側IIにはスプリンクラーヘッドH、H、・・・が接続される。常時において配管内は充水されており、一次側Iおよび二次側IIは同圧で、流水検知装置の弁体2は閉じた状態にある。
【0043】
火災が発生して、スプリンクラーヘッドHが作動すると二次側IIに接続された配管内の水が作動したスプリンクラーヘッドHから流出して、二次側IIの圧力が降下する。二次側IIの圧力が下がると、一次側Iの圧力による弁体2を押し上げる力によって弁体2が回動して、一次側Iより二次側IIに流水が生じる。
【0044】
一次側Iから二次側IIへの流水により弁体2が回動することでヒンジピン9Aおよびカム13が回動し、カム13の回動によってカム13の直線部21Bと接していたレバー17の水平部23には円弧部21Aが接触するので、水平部23が押し上げられ垂直部24がプッシュロッド25から離れる。また、カム13と接しているリミットスイッチ26のアクチュエーターがカム13から離れ、リミットスイッチ26から信号が出力される。
【0045】
リミットスイッチ26から信号が出力された際にスプリンクラーヘッドHの近傍に設置された火災感知器Kが作動している場合、制御弁Vは開放状態のままであるが、スプリンクラーヘッドHが火災感知器Kより先に作動した場合、制御弁Vは閉止される。その後、火災感知器Kが火災を検知して火災信号を出力すると制御弁Vの閉止は解除される。
【0046】
弁体2の開放状態が維持されていると、プッシュロッド25が遅延機構18によってゆっくりリミットスイッチ19側に移動し、リミットスイッチ19を作動させる。リミットスイッチ19から発生した信号によって給水装置Pが起動され、水源Wより作動したスプリンクラーヘッドHに水が供給される。作動したスプリンクラーヘッドHからは連続して水が散布され、火災を消し止めるものである。

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の流水検知装置の縦断面図
【図2】図1のX−X断面
【図3】弁体とカムを接続する部品の分解組立図
【図4】本発明の流水検知装置の弁体回動検出手段
【図5】リミットスイッチと弾発体の位置関係を説明する図
【図6】流水検知装置が作動状態のときの弁体回動検出手段
【図7】非火災時にスプリンクラーヘッドからの放水を停止可能なスプリンクラー設備の系統図
【符号の説明】
【0048】
1 本体 2 弁体 3 弁体回動検出手段 7 弁座 8 弁体の円筒部 9A、9B ヒンジピン 10 スカート 11 溝 12 二平面 13 カム 17 レバー 18 遅延装置 19、26 リミットスイッチ 22A、22B 弾発体 25 プッシュロッド




【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水検知装置が設置された配管上に、常時開放状態の制御弁が設置されており、該制御弁は電気信号によって開閉制御が可能であり、火災感知器が作動した際に出力される火災信号と、流水検知装置が作動した際に出力される流水信号とを制御装置内で信号処理をして前記制御弁に信号が出力され制御弁の開閉制御が可能なスプリンクラー設備に設置される流水検知装置において、流水検知装置内の弁体の開放動作による変位によってスイッチから信号が出力される構造であり、所定範囲以上変位した際に速やかに信号を出力する第1のスイッチと、遅延時間経過後に信号を出力する第2のスイッチとが併設されていることを特徴とする流水検知装置。

【請求項2】
前記流水検知装置内の弁体の開放動作による変位において、第1のスイッチが作動される弁体の変位量と、第2のスイッチが作動する弁体の変位量とが異なることを特徴とする請求項1記載の流水検知装置。

【請求項3】
前記流水検知装置は、スイング式の逆止弁構造をしており、変位量として弁体の回動動作による回動角度を用いていることを特徴とする請求項1記載の流水検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−50067(P2007−50067A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236475(P2005−236475)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】