説明

流路切換弁

【課題】弁ハウジング1内を2つのピストン2,2により主弁室11Aとその両側の副弁室12A,12Aに仕切り、一方の副弁室12Aを減圧することにより主弁室11A内の冷媒圧力との差圧により、ピストン2及び主弁体5を移動し、冷凍サイクルの冷媒の流路を切り換える流路切換弁10において、ピストン2の移動後に、主弁室11Aと副弁室12Aとを速やかに均圧し、ピストン2の耐久性を確保する。
【解決手段】ピストン2の中央に均圧通路を設け、この均圧通路内に副弁25を配設する。ピストン2がキャップ部12側に移動したとき、副弁25により副弁座部122の抽排気通路12a開口を閉塞し、かつ、均圧通路を導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルに用いられ、冷媒の流路を切り換える流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機等においては冷凍サイクルの冷媒の流路を切り換えることで冷房運転と暖房運転とが切り換えられる。このような冷凍サイクルでは、圧縮機と、凝縮器又は蒸発器として用いられる二つの熱交換器と、これら圧縮機と二つの熱交換器との間の冷媒の流れる流路を切り換える流路切換弁が用いられる。
【0003】
この種の流路切換弁として、例えば特開2009−68695号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この流路切換弁は、筒状の弁ハウジング(弁本体)内に、2つのピストンと主弁体とを連結したピストン本体を収容し、主弁体を弁ハウジング内の弁座に対して軸線方向に摺動させて複数の配管に流れる冷媒の流路を切り換えるものである。この流路の切換時には、2つのピストン間の主弁室の冷媒の圧力と、ピストンの外側の副弁室の冷媒の圧力との差圧によりピストン本体を移動させるものである。
【0004】
また、この特許文献1の流路切換弁は、ピストン本体を移動させたとき、ピストンに配置した第2弁体(玉)を、弁ハウジングの端部キャップに設けられた弁座に接触させ、この弁座に設けた抽排気管を塞ぐことにより、高圧側の主弁室と低圧側の副弁室とを均圧し、ピストンのパッキンに作用する差圧を低減するようにしている。これにより、特に流体がCO2 のような超高圧の冷媒の場合にも、ピストンの耐久性を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−68695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の流路切換弁においては、ピストンのパッキンの周囲に環状の傾斜部を備えており、その断面形が弁ハウジングの端に向かうにしたがって徐々に弁ハウジングの内面に近づく方向に傾斜した形状となっている。そして、主弁室側が高圧の状態、副弁室側が低圧の状態で、第2弁体により抽排気管を塞いだ後、主弁室と副弁室とが均圧するとき、主弁室側の高圧の冷媒がパッキンの傾斜部と弁ハウジングの内面との間から副弁室に漏れ出すように構成されている。このため、主弁室と副弁室とをスムーズに均圧するのが困難であり、改良の余地を残している。
【0007】
本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたものであり、筒状の弁ハウジング内に、2つのピストンと主弁体とを連結して収容し、ピストンの内側の主弁室とピストンの外側の副弁室との冷媒の差圧により主弁体を弁座に対して摺動させて複数の配管に流れる冷媒の流路を切り換える流路切換弁において、主弁体の移動後に主弁室と副弁室とを確実に均圧させ、ピストンの耐久性を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の流路切換弁は、筒状の弁ハウジング内に該弁ハウジングの軸線上に配置され互いに連結された2つのピストンを収容し、前記2つのピストンにより、前記弁ハウジング内を高圧側配管が接続される中央部の主弁室と該主弁室の両側の2つの副弁室とに仕切り、低圧側配管と2つの切換側配管に接続される主弁座を前記主弁室内に配置するとともに、前記主弁座に対して前記軸線方向に摺動可能な主弁体を前記ピストンに連結して配置し、前記2つの副弁室の何れか一方に高圧冷媒を導入するとともに、他方の副弁室を減圧することで、該減圧された副弁室内と前記主弁室内との差圧により前記ピストン及び主弁体を該副弁室側に移動して、該主弁体の凹部により前記低圧側配管を前記2つの切換側配管の何れか一方に択一的に連通させるとともに他方の切換側配管を前記主弁室を介して前記高圧側配管に連通し、冷媒の流れを切り換える流路切換弁において、前記弁ハウジング内部の両端に、前記主弁室側に突出する副弁座部であって前記冷媒の通路となる抽排気通路を弁ハウジング内に開口させた副弁座部が形成され、前記各ピストンに、前記副弁座部に対応する前記軸線上に、前記主弁室と前記副弁室とを連通可能にした均圧通路が形成されるとともに、該均圧通路内に配設された副弁であって該均圧通路に対する前記軸線方向の移動により当該均圧通路の導通と閉塞とを切り換える副弁が配設され、前記ピストンが前記減圧された副弁室側に移動し終わったとき、該ピストンの前記副弁が、該副弁室側の前記副弁座部の開口を閉塞し、かつ、該副弁座部が該副弁に当接することにより前記均圧通路を導通して、該均圧通路を介して前記減圧された副弁室と前記主弁室とを均圧するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の流路切換弁は、請求項1に記載の流路切換弁であって、前記ピストンが、前記弁ハウジングの内面に接触するパッキンを有し、該パッキンの外周に弁ハウジングの中央部側に環状に延びる傾斜部が形成され、該傾斜部はその断面形が前記弁ハウジングの中央部に向かうにしたがって徐々に弁ハウジングの内面に近づく方向に傾斜した形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の流路切換弁によれば、ピストンが減圧された副弁室側に移動し終わったとき、ピストンの副弁が副弁室側の副弁座部の開口を閉塞するので、この副弁室の減圧が停止されるとともに、副弁座部が副弁に当接して均圧通路を導通し、均圧通路を介して主弁室から副弁室に冷媒が流れるので、主弁室と副弁室との均圧がスムーズに行われる。このように、移動していないときのピストンのシール部材にかかる圧力負荷が無くなり、シール部材のクリープ変形を防ぐことができる。また、ピストンを構成する部材の応力変形も防ぐことができる。したがって、CO2 冷媒のような超高圧冷媒を使用する流路切換弁として特に適している。
【0011】
請求項2の流路切換弁によれば、請求項1の効果に加えて、副弁室側が減圧されたとき、この減圧された副弁室と高圧の主弁室との間にあるピストンにおいて、主弁室側の高圧の冷媒がパッキンの傾斜部を弁ハウジングの内面側に押圧するように作用するので、このパッキンにより減圧された副弁室と高圧の主弁室とを確実に封止することができ、ピストン及び主弁体の移動動作が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の流路切換弁、パイロット弁及び冷凍サイクルを示す図である。
【図2】実施形態の流路切換弁の要部断面図である。
【図3】実施形態の流路切換弁の要部作用説明図である。
【図4】実施形態におけるパイロット弁の要部断面図である。
【図5】実施形態におけるパイロット弁の駆動例を示すタイミングチャートである。
【図6】実施形態における流路切換弁のピストンの他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態の流路切換弁、パイロット弁及び冷凍サイクルを示す図である。この実施形態の流路切換弁10は四方切換弁であり、この流路切換弁10は配管によりパイロット弁20に接続されている。流路切換弁10において、弁ハウジング1は筒状の形状であり、円筒形状の円筒部11と円板形状の2つのキャップ部12,12とで構成されている。キャップ部12,12はそれぞれ円筒部11の端部を塞ぐように円筒部11に溶接等により取り付けられており、円筒部11及びキャップ部12,12の中心軸が弁ハウジング1の軸線L1となっている。キャップ部12,12の円筒部11側には薄型の円形凹部121が形成されている。
【0014】
弁ハウジング1内には、弁ハウジング1の軸線L上に配置され連結部材3により互いに連結された2つのピストン2,2が収容されている。これにより、円筒部11の内側とキャップ部12,12の円形凹部121,121で構成される弁ハウジング1の内部は、2つのピストン2,2により、中央部の主弁室11Aと主弁室11Aの両側の2つの副弁室12A,12Aとに仕切られている。
【0015】
主弁室11A内の中間部には主弁座4が配設され、主弁座4上には弁ハウジング1の軸線L1方向に摺動する主弁体5が配設されている。主弁座4には、弁ハウジング1の軸線L1方向に一直線上に並んでEポート4a、Sポート4b及びCポート4cが形成されており、これらEポート4a、Sポート4b、Cポート4cには、それぞれE継手管13a、S継手管13b、C継手管13cが取り付けられている。また、円筒部11の中間部の主弁座4と対向する位置には、Dポート11aが形成されており、このDポート11aにはD継手管13dが取り付けられている。なお、E継手管13a及びC継手管13cは「切換側配管」に相当し、S継手管13bは「低圧側配管」に相当し、D継手管13dは「高圧側配管」に相当する。これにより、主弁室11Aには高圧側配管としてのD継手管13dが接続され、主弁座4は低圧側配管と2つの切換側配管に接続されている。
【0016】
連結部材3の中央には弁体嵌合孔3aが形成され、その両側には透孔3b,3cが形成されている。弁体嵌合孔3a内には主弁体5が嵌め込まれ、この主弁体5は連結部材3に対して軸線L方向に僅かに遊びを持って保持されている。そして、主弁体5は、ピストン2,2が移動すると連結部材3に連動して主弁座4上を摺動し、予め定められた左右の位置で停止する。
【0017】
主弁体5は、お椀状の金属板51を樹脂製の部材52と共にインサート成型したものであり、この金属板51の内側により主弁凹部5Aが形成されている。そして、主弁体5は、図1の左側の端部位置において、Sポート4bとEポート4aとを主弁凹部5Aにより連通する。このとき、Cポート4cは主弁室11A内で主に透孔3cを介してDポート11aに連通する。また、主弁体5は、図1の右側の端部位置において、Sポート4bとCポート4cとを主弁凹部5Aにより連通する。このとき、Eポート4aは主弁室11A内で主に透孔3bを介してDポート11aに連通する。
【0018】
S継手管13bは低圧管14aにより圧縮機30の吸入口に接続され、D継手管13dは高圧管14bにより圧縮機30の吐出口に接続されている。C継手管13cは導管14cにより室外機40に接続され、E継手管13aは導管14dにより室内機50に接続されている。室外機40と室内機50は絞り装置60を介して導管14eにより接続されている。このC継手管13cから室外機40、絞り装置60、室内機50及びE継手管13aからなる経路と、S継手管13bから圧縮機30及びD継手管13dからなる経路とにより、冷凍サイクルが構成されている。
【0019】
そして、後述のようにパイロット弁20により流路切換弁10の主弁体5の位置が切り換えられる。圧縮機30で圧縮された高圧の冷媒はD継手管13dからDポート11aを介して主弁室11A内に流入し、図1の冷房運転の状態では、高圧冷媒はCポート4cから室外機40に流入される。また、主弁体5を切り換えた暖房運転の状態では、高圧冷媒はEポート4aから室内機50に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機30から吐出される冷媒はC継手管13c→室外機40→絞り装置60→室内機50→E継手管13aと循環し、室外機40が凝縮器(コンデンサ)、室内機50が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内機50が凝縮器、室外機40が蒸発器として機能し、暖房がなされる。なお、Cポート4c及びEポート4aの「C」,「E」は冷房運転を基準に付けた名前である。
【0020】
各キャップ部12,12には、円形凹部121の中央(軸線L1上)に内側に突出する副弁座部122が形成されている。また、キャップ部12,12には、側部から副弁座部122の端部122aまで貫通する抽排気通路12aが形成されており、この抽排気通路12a,12aには導管15f,15gがそれぞれ接続されている。
【0021】
図1において、パイロット弁20は2つの電磁アクチュエータを備えている。このパイロット弁20は、ブロック状の弁ハウジング61を有しており、この弁ハウジング61には、2つのプランジャケース62,62が気密に固定され、さらにプランジャケース62,62の端部には、吸引子63,63が気密に固定されている。また、プランジャケース62,62の内部にはプランジャ65が配設されている。吸引子63,63およびプランジャケース62,62の外周部には、ボビン71,71に巻回された電磁コイル72,72が設けられている。そして、電磁コイル72の励磁により、吸引子63の内側端面がプランジャ65に対する磁気吸着面となる。
【0022】
弁ハウジング61には、高圧継手管64d、低圧継手管64b及び2つの切換継手管64a,64cが取り付けられている。高圧継手管64dは導管14fにより四方切換弁10のD継手管13dに(高圧側)接続され、低圧継手管64bは導管14gにより四方切換弁10のS継手管13b(低圧側)に接続されている。また、切換継手管64a,64cは導管14h,14iによりそれぞれ四方切換弁10の導管15f,15gに接続されている。なお、高圧継手管64d、低圧継手管64b、切換継手管64a,64cと、導管14f,14g,14h,14iとをそれぞれ同じ部材で構成することも可能である。
【0023】
図4はパイロット弁20の要部詳細を示す断面図である。弁ハウジング61には円筒状のパイロット弁室61Aが形成されており、このパイロット弁室61Aの両端に前記プランジャケース62,62が軸線L2に対して同軸に嵌め込まれている。プランジャケース62,62は円筒形状である。また、パイロット弁室61A内でプランジャケース62,62の間にはパイロット弁座66が取り付けられており、このパイロット弁座66の上には、プランジャケース62,62の軸線L2方向に摺動するパイロット弁体67を備えている。パイロット弁座66には、軸線L2方向に一直線上に並んでパイロット切換ポート61a、パイロット低圧ポート61b及びパイロット切換ポート61cが形成されており、これらパイロット切換ポート61a、パイロット低圧ポート61b、パイロット切換ポート61cには、前記切換継手管64a、低圧継手管64b、切換継手管64cが取り付けられている。また、弁ハウジング61の中間部のパイロット弁座66と反対側の位置には、パイロット高圧ポート61dが形成されており、このパイロット高圧ポート61dには前記高圧継手管64dが取り付けられている。
【0024】
プランジャケース62,62内には、パイロット弁室61Aを貫通するように、前記プランジャ65が配設されている。プランジャ65は略円柱状であり、中央の径の小さな小径部651と、プランジャケース2,2の内面に整合して小径部651の両側に径の大きな大径部652,652とを有している。また、プランジャ65は軸線L2と平行に一部カットされたDカット面65aを有しており、このDカット面65aがパイロット弁座66に対向している。小径部651の中央にはDカット面65a側から切削により弁体保持孔65bが形成されるとともに、こ弁体保持孔65bからDカット面65aと反対側に連通する連通孔65cが形成されている。弁体保持孔65b内にはパイロット弁体67とコイルばね68が配設されている。
【0025】
パイロット弁体67には、パイロット弁座66側にパイロット凹部67aが形成されている。そして、パイロット弁体67は、図4の左側の端部位置において、パイロット切換ポート61aとパイロット低圧ポート61bとをパイロット凹部67aにより連通する。このとき、パイロット切換ポート61cはパイロット弁室61A及び小径部651の周囲を介してパイロット高圧ポート61dに連通する。また、パイロット弁体67は、図4の右側の端部位置において、パイロット切換ポート61cとパイロット低圧ポート61bとをパイロット凹部67aにより連通する。このとき、パイロット切換ポート61aはパイロット弁室61A及び小径部651の周囲を介してパイロット高圧ポート61dに連通する。
【0026】
このように、パイロット弁20は、電磁コイル72への通電によりプランジャ65を吸引子63に吸着させてパイロット弁体67を軸線L2に沿って直線運動させる。これにより、パイロット切換ポート61aから四方切換弁10の左側の副弁室12Aに高圧冷媒を供給するとともに右側の副弁室12Aを減圧する状態と、パイロット切換ポート61cから四方切換弁10の右側の副弁室12Aに高圧冷媒を供給するとともに左側の副弁室12Aを減圧する状態とを切り換え、冷凍サイクルの流路を切り換える。
【0027】
なお、パイロット弁体67は、コイルばね68によりパイロット弁座663に押圧され、パイロット弁体67とパイロット弁座66との間のシール性が高められる。また、パイロット弁座66は金属製の部材であり、パイロット弁体67は樹脂製の部材である。このため、パイロット弁体67の樹脂可塑性により、パイロット弁体67とパイロット弁座66との間のシール性がさらに高められる。この高いシール性は、冷媒として超高圧CO2を用いる場合に特に有効である。
【0028】
図5は2つの電磁コイル72,72への通電制御の例を示すタイミングチャートである。図1において左側の電磁コイル72を「コイルA」、右側の電磁コイル72を「コイルB」とする。図5(A) のように、コイルAに通電しているとき(ONのとき)、コイルBを非通電(OFF)とする。これにより、パイロット弁体67の位置が左側(通電した電磁コイル72側)に位置する。そして、パイロット高圧ポート61dとパイロット切換ポート61cが連通し、パイロット切換ポート61aとパイロット低圧ポート61bが連通する。コイルAを非通電(OFF)しても、パイロット弁体67の位置はそのまま保持される。次に、コイルAが非通電の状態で、コイルBに通電(ON)すると、パイロット弁体67の位置が右側(通電した電磁コイル72側)に位置する。そして、パイロット高圧ポート61dとパイロット切換ポート61aが連通し、パイロット切換ポート61cとパイロット低圧ポート61bが連通する。コイルBを非通電(OFF)しても、パイロット弁体67の位置はそのまま保持される。なお、図5(B) のように、電磁コイル72への通電を行ってパイロット弁体67の位置を切り換え、その後、次の切り換えまでの間、保持電圧を印加し、保持電流を流すようにしてもよい。
【0029】
この実施形態のパイロット弁20は、弁ハウジング61に同軸に取り付けた2つのプランジャケース62,62内に、パイロット弁体67を保持するプランジャ65が配設され、パイロット弁体67は複数の継手に接続されたパイロット弁座66上でプランジャ65と共に軸線L2方向に摺動自在とされ、プランジャケース62,62の端部に吸引子63,63が気密に固定されるとともに、吸引子63,63およびプランジャケース62,62の外周部に電磁コイル72,72がそれぞれ設けられ、該電磁コイル72,72の何れか一方に通電し、他方を非通電とすることにより、通電した電磁コイル72の励磁により吸引子63にプランジャ65を吸着させて、パイロット弁体67により、複数の配管の冷媒の流れを切り換えるようにしている。
【0030】
この実施形態のパイロット弁20は、例えば特開平8−170865号公報に開示されているパイロット弁よりも優れている。この従来のパイロット弁は、一つの電磁アクチュエータへの通電によりパイロット弁体を一方に移動し、電磁アクチュエータへの通電を遮断して、ばねの付勢力によりパイロット弁体を他方に移動するようにしている。このため、パイロット弁体に作用する冷媒の高差圧のため、このパイロット弁体を駆動するためには、電磁アクチュエータの駆動力とばね力を大きくしなければならなかった。また、ばね力が電磁アクチュエータの発生する力を阻害し、吸引力の効率を落としていた。
【0031】
これに対し、実施形態のパイロット弁20では、ばねを無くして、対向する2つの電磁アクチュエータを備え、この2つの電磁アクチュエータを相互に切り換えて駆動させることで、ばね力による効率低下が無く、小型で安価な電磁アクチュエータで高差圧が作用するパイロット弁体を駆動することができる。また、パイロット弁体に差圧が発生している状態では、コイルの通電をOFFしてもパイロット弁体の位置が変わらないため、無電圧のラッチ機構が可能となり、省エネ性を向上させることができる。さらに、従来のものでは、弱い電圧で吸着力が低下した場合に、ばね力とのバランスにより磁気音が発生していたが、実施形態のパイロット弁20では、ばねが無いために磁気音の発生を低減することができる。
【0032】
このようにパイロット弁20は高圧継手管64dから流入する高圧冷媒を切換継手管64aまたは切換継手管64cから流出し、この高圧冷媒は四方切換弁10において左側の副弁室12Aまたは右側の副弁室12Aに供給される。このとき、四方切換弁10の右側の副弁室12A,または左側の副弁室12Aは低圧継手管64bを介して低圧側に導通される。これにより、パイロット弁20により、四方切換弁10において、一方の副弁室12Aが高圧になるとともに、他方の副弁室12Aが減圧される。なお、主弁室11Aには常に高圧冷媒が供給されている。したがって、減圧された副弁室12Aの圧力と主弁室11Aの高圧の圧力との差圧が減圧された副弁室12A側のピストン2に加わり、主にこの差圧によりピストン2及び主弁体5が減圧された副弁室12A側に移動し、この主弁体5の位置が切り換えられる。
【0033】
ここで、各ピストン2,2は、図1において鏡映対称な構造になっている。以下、図2に基づいて左側のピストン2を例に詳細構造を説明する。ピストン2は、連結部材3に固定される固定円板21と、板ばね22と、パッキン23と、円板状のストッパ板24と、副弁25と、コイルばね26とを備えており、これらの部材は軸線L1を中心として同軸に配置されている。
【0034】
板ばね22は、弾性変形自在な薄手の板金で構成され、円板状の円板部221と傾斜付勢部222とを一体に備えている。円板部221は、その外径が、固定円板21と略同径である。傾斜付勢部222は、円環状に形成され、かつ円板部221の外縁の全周に亘って設けられている。傾斜付勢部222は、円板部221の外縁から円筒部11(弁ハウジング1)の中央側に向かって延在している。即ち、傾斜付勢部222は、その断面形が弁ハウジング1の中央側に向かうにしたがって徐々に弁ハウジング1の内面に近づく方向に、軸線L1の方向と径方向との双方に対して傾斜している。
【0035】
パッキン23は合成樹脂で構成され、円板状の円板部231と傾斜部232とを一体に備えている。円板部231は、その外径が固定円板21と略同径である。傾斜部232は、円環状に形成され、かつ円板部231の外縁の全周に亘って設けられている。傾斜部232は、円板部231の外縁から円筒部11(弁ハウジング1)の中央側に向かって延在している。即ち、傾斜部232は、その断面形が弁ハウジング1の中央側に向かうにしたがって徐々に弁ハウジング1の内面に近づく方向に、軸線L1の方向と径方向との双方に対して傾斜している。
【0036】
このように、板ばね22とパッキン23は略同形状とされ、板ばね22はパッキン23の内側に配置され、円板部221,231の部分で固定円板21とストッパ板24との間に挟まれて、それぞれ固定されている。板ばね22は、傾斜付勢部222の円板部221から離れた側の端が、パッキン23の傾斜部232を介して、この傾斜部232が弁ハウジング1の内面に摺接するように、弾性変形自在となっている。また、板ばね22は、弁ハウジング1の内面から離れるパッキン23の傾斜部232を、弁ハウジング1の内面に向かって付勢する弾性復元力を生じる。そして、板ばね22は、弁ハウジング1(円筒部11)に組み込まれた状態では、傾斜付勢部222の円板部221から離れた側の端が、パッキン23の傾斜部232を弁ハウジング1の内面に向かって押圧している。これにより、主弁室11A内の高圧冷媒に対してパッキン23は円筒部11の内周面で確実にシールする。
【0037】
各ピストン2において、固定円板21、板ばね22、パッキン23及びストッパ板24には、中心にそれぞれ円形の孔21a、22a、23a及び24aが形成されている。また、連結部材3の固定円板21側には円形の孔3dが形成されており、この連結部材3の孔3dは通路3eを介して前記透孔3b(右側においては透孔3c)に連通している。このうち、連結部材3の孔3d、固定円板21の孔21a、板ばね22の孔22a及びパッキン23の孔23aは略同径になっており、ストッパ板24の孔24aはこれより小さな径になっている。これらの孔21a、22a、23a、24a及び3dは「均圧通路」を構成しており、この孔21a、22a、23a、24a及び3d内に、副弁25がその外周に隙間を設けて配設されている。
【0038】
副弁25は、円柱状の大径部251と、円柱状の小径部252と、円柱状のボス部253とから構成され、大径部251は孔21a,22a,23a内に、小径部252は孔24a内に挿通されている。また、コイルばね26が連結部材3の孔3d内でボス部253に嵌め込まれ、副弁25はこのコイルばね26によりキャップ部12側に付勢されている。大径部251と小径部252はその境界により段差端面25aを形成している。
【0039】
この副弁25の作用は以下のようになる。一方の副弁室12Aに低圧を導入して、主弁室11Aと副弁室12Aとの圧力差が発生するに伴い、副弁25を含んだピストン2全体が低圧側副弁室12A(キャップ部12)に向かって移動を始め、ストッパ板24がキャップ部12に当接するとピストン2は停止する。このピストン2の移動過程で、まず副弁25の端部(小径部252)が副弁座部122に接する。このとき、副弁室12Aに設けられている抽排気通路12aが閉塞される。副弁25の端部が副弁座部122に接した後も、主弁室11Aと副弁室12Aとの圧力差がコイルばね26の付勢力に打ち勝ってピストン2がさらに移動し、キャップ部12にピストン2を構成するストッパ板24が当接するまで移動を続ける。この移動区間においては、常に副弁25の段差端面25aとストッパ板24との間に隙間を生じるため、この隙間を通って主弁室11Aから副弁室12Aに向かって冷媒が流れることで均圧に近づいていく。ピストン2は、主弁室11Aと副弁室12Aとが均圧になった時点で、コイルばね26による押し戻し力と、ピストン2と円筒部11の内周との摩擦力等の力のバランスが保たれた位置で静止する。なお、この状態で反対側の副弁室12Aが減圧されて、ピストン2がキャップ部12から離れると、コイルばね26の付勢力により副弁25は弁座122に接触した状態でストッパ板24が段差端面25aに当接し、その後、副弁25を含むピストン2の移動が続けられる。
【0040】
図3は副弁25及び孔21a、22a、23a、24a及び3dで構成される均圧通路の作用を説明する図である。図3(A) は副弁25が副弁座部122から離間した状態であり、図1において主弁体5が右側に移動する過程、または主弁体5が弁ハウジング1の中央側から左側に移動する過程に対応している。このときは、副弁25の段差端面25aがストッパ板24に当接しており、ストッパ板24の孔24aと、パッキン23の孔23a及び固定円板21の孔21aとの導通を遮断している。すなわち、均圧通路が閉塞された状態である。
【0041】
図3(B) は副弁25が副弁座部122に当接した前記図2の状態に対応している。このときは、副弁25の小径部252が副弁座部122の抽排気通路12aを閉塞し、かつ、ストッパ板24が副弁25の段差端面25aから離間して、ストッパ板24の孔24a、パッキン23の孔23a、固定円板21の孔21a及び連結部材3の孔3dが導通している。すなわち、均圧通路が導通された状態である。これにより、図3(B) に破線の矢印で示したように、主弁室11A内の高圧冷媒が、連結部材3の透孔3b(図2)、通路3e、孔3d、固定円板21の孔21a、板ばね22の孔22a、パッキン23の孔23a及びストッパ板24の孔24aを介して、副弁室12A内に流入する。そして、副弁座部122の抽排気通路12aを閉塞されているので、主弁室11Aと副弁室12Aとの圧力が均圧し、この冷媒の流入は停止する。
【0042】
このように、均圧通路を介して主弁室11Aと副弁室12Aとの均圧が速やかに行われるので、パッキン23への冷媒圧力が影響しない状態に速やかに移行することができる。また、この実施形態では、パッキン23の傾斜部232が、円板部231の外縁から円筒部11の中央側に向かって延在し、その断面形が弁ハウジング1の中央側に向かうにしたがって徐々に弁ハウジング1の内面に近づく方向に傾斜しているので、主弁室11Aの高圧を確実に保持することができる。
【0043】
図6はピストンの他の実施形態を示し、図2と同じ要素には同符号を付記してその説明は省略する。このピストン2′は、円板状のストッパ板27を連結部材3に固定するとともにストッパ板27の外周に、円筒部11の内面に摺接するリング状のパッキン28を嵌め込んだものである。また、ストッパ板27の中心に副弁25の大径部251に対応する大孔27aと、小径部252に対応する小孔27bを形成し、この大孔27a及び小孔27b内に、副弁25が隙間を設けて配設されている。この大孔27a及び小孔27bは「均圧通路」を構成している。そして、副弁25が副弁座部122に当接し、ストッパ板27がキャップ部12に当接するまで移動すると、この移動過程で、大孔27aと小孔27bとの境界の端面が副弁25の段差端面25aから離間して上記均圧通路を導通状態とする。また、この状態から、ストッパ板27がキャップ部12から離れると、ストッパ板27が段差端面25aに当接し、上記均圧通路を閉塞状態とする。この副弁25及び均圧通路の作用は前記実施形態と同様である。
【0044】
前述した実施形態は、冷媒(流体)として使用圧力の高い二酸化炭素の場合特に有効であるが、HCFC(ハイドロ・クロロフルオロ・カーボン)やHFC(ハイドロ・フルオロ・カーボン)等の各種冷媒を用いても良い。また、本発明では、副弁25について、前述した実施形態以外に、玉(球)状に形成してもよく、副弁25を付勢しているコイルばね26についても、これの代わりに板ばねを用いてもよい。
【0045】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 弁ハウジング
2 ピストン
3 連結部材
4 主弁座
5 主弁体
5A 主弁凹部
11 円筒部
11A 主弁室
12 キャップ部
12A 副弁室
12 主弁座
12a 抽排気通路
122 副弁座部
13a E継手管
13b S継手管
13c C継手管
13d D継手管
25 副弁
21a 孔(均圧通路)
22a 孔(均圧通路)
23a 孔(均圧通路)
24a 孔(均圧通路)
10 流路切換弁
20 パイロット弁
30 圧縮機
40 室外機
50 室内機
60 絞り装置
L1 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弁ハウジング内に該弁ハウジングの軸線上に配置され互いに連結された2つのピストンを収容し、前記2つのピストンにより、前記弁ハウジング内を高圧側配管が接続される中央部の主弁室と該主弁室の両側の2つの副弁室とに仕切り、低圧側配管と2つの切換側配管に接続される主弁座を前記主弁室内に配置するとともに、前記主弁座に対して前記軸線方向に摺動可能な主弁体を前記ピストンに連結して配置し、前記2つの副弁室の何れか一方に高圧冷媒を導入するとともに、他方の副弁室を減圧することで、該減圧された副弁室内と前記主弁室内との差圧により前記ピストン及び主弁体を該副弁室側に移動して、該主弁体の凹部により前記低圧側配管を前記2つの切換側配管の何れか一方に択一的に連通させるとともに他方の切換側配管を前記主弁室を介して前記高圧側配管に連通し、冷媒の流れを切り換える流路切換弁において、
前記弁ハウジング内部の両端に、前記主弁室側に突出する副弁座部であって前記冷媒の通路となる抽排気通路を弁ハウジング内に開口させた副弁座部が形成され、
前記各ピストンに、前記副弁座部に対応する前記軸線上に、前記主弁室と前記副弁室とを連通可能にした均圧通路が形成されるとともに、該均圧通路内に配設された副弁であって該均圧通路に対する前記軸線方向の移動により当該均圧通路の導通と閉塞とを切り換える副弁が配設され、
前記ピストンが前記減圧された副弁室側に移動し終わったとき、該ピストンの前記副弁が、該副弁室側の前記副弁座部の開口を閉塞し、かつ、該副弁座部が該副弁に当接することにより前記均圧通路を導通して、該均圧通路を介して前記減圧された副弁室と前記主弁室とを均圧するようにしたことを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記ピストンが、前記弁ハウジングの内面に接触するパッキンを有し、該パッキンの外周に弁ハウジングの中央部側に環状に延びる傾斜部が形成され、該傾斜部はその断面形が前記弁ハウジングの中央部に向かうにしたがって徐々に弁ハウジングの内面に近づく方向に傾斜した形状であることを特徴とする流路切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−241870(P2011−241870A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112976(P2010−112976)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】