説明

流路構造体、リアクタ及びリアクタを用いた反応方法

【課題】各流路に流れる流体の流量を均一にしながら、各流路の形状の自由度を向上させる。
【解決手段】第1流路構造体1aの各反応流路2は、第1原料流体が導入される第1導入路10と、第2原料流体が導入される第2導入路12と、第1導入路10と第2導入路12の下流側に繋がり、第1原料流体と第2原料流体を合流させるための合流部14と、この合流部14の下流側に繋がり、第1原料流体と第2原料流体を互いに反応させるための反応路16とを含む。そして、各反応流路2の第2導入路12の流路長がそれぞれ異なるとともに、この各第2導入路12の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、その各第2導入路12の流路長に応じて当該各第2導入路12の各部の相当直径が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造体、リアクタ及びリアクタを用いた反応方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が導入される微小な流路を内部に有する流路構造体が知られている。例えば、下記の特許文献1には、そのような流路構造体を備えたリアクタが示されている。
【0003】
この特許文献1に示されたリアクタでは、その流路構造体内に複数の微小な流路が並列で設けられており、各流路にその端部から第1原料流体と第2原料流体が導入されるように構成されている。そして、この第1原料流体と第2原料流体を各流路の出口側へ流通させながら互いに反応させることにより、所望の生成物が製造されるようになっている。
【特許文献1】特表2005−525229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように流路構造体に複数の流路を設ける場合には、各流路に流れる流体の流量を均一にすることが望まれる。例えば、特開昭64−3496号公報に示されている熱交換器では、各流路の流路長を揃えて各流路の圧力損失を等しくすることにより、各流路に流れる流体の流量を均一にしている。
【0005】
しかしながら、このように各流路の流路長を揃える場合には、各流路の形状が著しく制約を受け、流路の自由な設計が困難になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、各流路に流れる流体の流量を均一にしながら、各流路の形状の自由度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の流路構造体は、流体が導入される複数の流路を形成する流路構造体であって、前記複数の流路は、互いに流路長の異なる流路を含み、前記各流路の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるようにその各流路の流路長に応じて前記各流路の各部の相当直径が設定されている。
【0008】
この流路構造体では、各流路の全体の圧力損失が等しくなるように各流路の流路長に応じて各流路の各部の相当直径が設定されているので、各流路がそれぞれ異なる流路長を有する場合でも、各流路に流れる流体の流量を均一にすることができる。そして、この流路構造体では、各流路の流路長に応じて各流路の各部の相当直径が設定されているため、各流路の流路長及び各流路の各部の相当直径の両方をそれぞれ適切に設定して各流路の全体の圧力損失を均等化し、各流路に流れる流体の流量を均一にすることができる。このため、各流路の流路長を揃えることによって各流路に流れる流体の流量を均一にする場合と比べて、各流路の形状の自由度を向上させることができる。従って、この流路構造体では、各流路に流れる流体の流量を均一にしながら、各流路の形状の自由度を向上させることができる。
【0009】
上記流路構造体において、前記各流路は、所定の相当直径を有する小径部と、その小径部の相当直径よりも大きい相当直径を有する大径部とを含み、前記各流路の全体の圧力損失が均等化されるように、前記各流路の流路長に応じて前記小径部の長さと前記大径部の長さの比率が設定されているのが好ましい。
【0010】
流路長の異なる各流路の圧力損失を均等化する場合には、各流路の全体の相当直径をその各流路の流路長に応じて適切に設定することにより各流路の圧力損失の均等化を図ることも考えられる。しかしながら、この場合には、各流路の流路長に応じて各流路の全体の相当直径を微小な範囲で徐々に変える必要があり、そのように全体の相当直径が微小に異なるように各流路を精度良く形成することは非常に困難である。これに対して、上記構成のように各流路の流路長に応じて小径部と大径部の長さの比率を変えることで各流路の圧力損失を均等化する場合には、各流路の全体の相当直径を微小に変える場合に比べて、各流路の形状の調整が容易となる。このため、上記構成によれば、各流路を全体の圧力損失がそれぞれ等しくなる形状に容易に形成することができる。
【0011】
この場合において、前記各流路は、並列に配置されているとともに、同じ方向に屈曲しており、その屈曲した部分において前記各流路のうち外寄りに配置された流路は、内寄りに配置された流路に比べて大きい流路長を有し、前記屈曲した部分において前記各流路のうち外寄りに配置されたものほど、前記小径部の長さの比率が小さくなるように設定されているのが好ましい。
【0012】
このように構成すれば、各流路が同方向に屈曲しているにもかかわらず、各流路の全体の圧力損失を均等化し、各流路に流れる流体の流量を均一にすることができるとともに、流路形状の自由度を向上することができる。
【0013】
本発明によるリアクタは、第1原料流体と第2原料流体とを反応させるための複数の反応流路を形成する流路構造体を備えたリアクタであって、前記各反応流路は、前記第1原料流体が導入される第1導入路と、前記第2原料流体が導入される第2導入路と、前記第1導入路と前記第2導入路の下流側に繋がり、前記第1原料流体と前記第2原料流体を合流させるための合流部と、この合流部の下流側に繋がり、前記第1原料流体と前記第2原料流体を互いに反応させるための反応路とを含み、前記各反応流路の第1導入路からなるグループまたは前記各反応流路の第2導入路からなるグループのうち少なくとも一方のグループは、互いに流路長の異なる導入路を含み、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、その各導入路の流路長に応じて当該各導入路の各部の相当直径が設定されている。
【0014】
このリアクタでは、各反応流路の第1導入路からなるグループまたは各反応流路の第2導入路からなるグループの少なくとも一方のグループが互いに流路長の異なる導入路を含む場合でも、この流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、その各導入路の流路長に応じて各導入路の各部の相当直径が設定されているので、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路に流れる原料流体の流量を均一にすることができる。そして、このリアクタでは、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路の流路長に応じてその各導入路の各部の相当直径が設定されているため、前記各導入路の流路長及び各部の相当直径の両方をそれぞれ適切に設定して前記各導入路の全体の圧力損失を均等化し、前記各導入路に流れる原料流体の流量を均一にすることができる。このため、各導入路の流路長を揃えることによって各導入路の流量を均一にする場合と比べて、流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路の形状の自由度を向上させることができる。従って、このリアクタでは、流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路に流れる原料流体の流量を均一にしながら、その各導入路の形状の自由度を向上させることができる。
【0015】
この場合において、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路は、所定の相当直径を有する小径部と、その小径部の相当直径よりも大きい相当直径を有する大径部とを含み、前記各導入路の全体の圧力損失が均等化されるように、前記各導入路の流路長に応じて前記小径部の長さと前記大径部の長さの比率が設定されているのが好ましい。
【0016】
流路長の異なる導入路の圧力損失を均等化する場合には、各導入路の全体の相当直径をその各導入路の流路長に応じて適切に設定することにより各導入路の圧力損失の均等化を図ることも考えられる。しかしながら、この場合には、各導入路の流路長に応じて各導入路の全体の相当直径を微小な範囲で徐々に変える必要があり、そのように全体の相当直径が微小に異なるように各導入路を精度良く形成することは非常に困難である。これに対して、上記構成のように各導入路の流路長に応じて小径部と大径部の長さの比率を変えることで各導入路の圧力損失を均等化する場合には、各導入路の全体の相当直径を微小に変える場合に比べて、各導入路の形状の調整が容易となる。このため、上記構成によれば、流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路を全体の圧力損失がそれぞれ等しくなる形状に容易に形成することができる。
【0017】
さらにこの場合において、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路は、並列に配置されているとともに、同じ方向に屈曲しており、その屈曲した部分において前記各導入路のうち外寄りに配置された導入路は、内寄りに配置された導入路に比べて大きい流路長を有し、前記屈曲した部分において前記各導入路のうち外寄りに配置されたものほど、前記小径部の長さの比率が小さくなるように設定されているのが好ましい。
【0018】
このように構成すれば、流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路が同方向に屈曲しているにもかかわらず、その各導入路の全体の圧力損失を均等化し、各導入路に流れる原料流体の流量を均一にすることができるとともに、各導入路の形状の自由度を向上することができる。
【0019】
この場合において、前記各第1導入路と前記各第2導入路は、互いに異なる位置に導入口を有し、この導入口から互いに異なる方向へ延びるとともに、前記合流部に同じ方向から合流し、前記各第1導入路または前記各第2導入路のうち少なくとも一方の各導入路は、その延びる方向を他方の各導入路と同じ方向に変更するための屈曲部を有していてもよい。
【0020】
このように構成すれば、各第1導入路と各第2導入路が互いに異なる位置に導入口を有する場合でも、各第1導入路または各第2導入路のうち少なくとも一方の延びる方向を屈曲部によって変更させることにより、これら各第1導入路と各第2導入路を同じ方向から合流部に合流させることができる。これにより、第1原料流体と第2原料流体を互いに異なる位置から互いに異なる方向へ流しながらも、これら両原料流体を互いに同じ方向に合流させることが可能なリアクタを構成することができる。
【0021】
上記リアクタにおいて、互いに積層された複数の前記流路構造体を備えるのが好ましい。このように構成すれば、リアクタ全体での流路数をより増加させることができるので、反応生成物をより大量生産することができる。
【0022】
また、本発明によるリアクタを用いた反応方法は、上記いずれかのリアクタを用いた反応方法であって、前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路に原料流体を層流となる条件で流すものである。
【0023】
この反応方法のように異なる流路長を有する各導入路に原料流体を層流となる条件で流せば、各導入路の流路長と各導入路の各部の相当直径とが所定の関係を満たす条件下において、各導入路の全体の圧力損失が均等であれば各導入路に流れる原料流体の流量が均一になるという関係を成立させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、各流路に流れる流体の流量を均一にしながら、各流路の形状の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態によるリアクタを構成する流路装置Sの斜視図であり、図2は、流路装置Sを構成する第1流路構造体1aの第1導入路10及び反応路16に沿った断面図である。図3は、第1導入路10のグループと、第2導入路12のグループと、合流部14のグループと、反応路16のグループの位置関係を概略的に示した図である。図4は、第1流路構造体1aの分解斜視図である。図5は、第1流路構造体1aを構成する流路プレート4の表面側の平面図であり、図6は、図5中のA部の拡大図である。図7は、第1流路構造体1aを構成する流路プレート4の裏面側の平面図であり、図8は、図7中のB部の拡大図である。図9は、流路プレート4の図5中のIX−IX線に沿った断面図である。まず、図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態によるリアクタ及びそのリアクタを構成する第1流路構造体1aの構造について説明する。
【0027】
本実施形態によるリアクタは、図1に示すような流路装置Sを備えている。この流路装置Sは、原料流体を流通させる複数の反応流路2を形成する第1流路構造体1aと、熱媒を流通させる複数の熱媒流路30を形成する第2流路構造体1bとが交互に積層されることによって構成されている。なお、この第1流路構造体1aが本発明における流路構造体に対応するものである。
【0028】
そして、本実施形態によるリアクタは、第1流路構造体1a内に設けられた複数の微小な反応流路2に第1原料流体と第2原料流体の2種類の原料流体を流通させながらこの両原料流体を互いに反応させることにより所定の反応生成物を製造するものである。
【0029】
具体的には、第1流路構造体1aは、図4に示すように流路プレート4と一対の封止プレート6,8とからなる。この一対の封止プレート6,8間に前記流路プレート4が挟み込まれた状態でこれら封止プレート6,8及び流路プレート4が一体化されることによって第1流路構造体1aが構成されている。そして、第1流路構造体1a内には、前記複数の反応流路2が当該第1流路構造体1aの幅方向に等間隔で配設されている。各反応流路2は、第1原料流体が導入される第1導入路10と、第2原料流体が導入される第2導入路12と、第1導入路10と第2導入路12の下流側に繋がり、第1原料流体と第2原料流体とを合流させる合流部14と、この合流部14の下流側に繋がり、第1原料流体と第2原料流体とを互いに反応させるための反応路16とによって構成されている。
【0030】
前記各反応流路2は、流路プレート4に形成された溝部の開口が封止されることによって形成されている。すなわち、図5及び図6に示すように、複数の第1導入溝18が流路プレート4の表面に開口するように形成されている一方、図7及び図8に示すように、複数の第2導入溝20及び複数の反応溝22が流路プレート4の裏面に開口するように形成されている。前記各第2導入溝20は、後述する小径部12eを構成する小径溝20aと、その小径溝20aよりも大きい幅を有し、後述する大径部12fを構成する大径溝20bとからなる。また、前記第1導入溝18の下流側端部及び前記第2導入溝20の下流側端部と、反応溝22の上流側端部とを繋ぐ位置に流路プレート4を厚み方向に貫通する貫通孔24が形成されている。
【0031】
そして、図2に示すように流路プレート4の表面に前記封止プレート6が重ねられて第1導入溝18の開口が封止されることにより、前記第1導入路10が形成されている。一方、流路プレート4の裏面に前記封止プレート8が重ねられて第2導入溝20の開口が封止されることにより、前記第2導入路12が形成されているとともに、反応溝22の開口が封止されることにより、前記反応路16が形成されている。また、前記貫通孔24の両開口が前記封止プレート6,8によって封止されることにより前記合流部14が形成されている。
【0032】
そして、第1流路構造体1aにおいて、各反応流路2の第1導入路10からなるグループと、各反応流路2の第2導入路12からなるグループと、各反応流路2の合流部14からなるグループと、各反応流路2の反応路16からなるグループは、図3に示すような位置関係でそれぞれ配置されている。
【0033】
各第1導入路10は、第1流路構造体1aの長手方向の一方端部からその長手方向に第1原料流体を流して各合流部14に流入させる。各第2導入路12は、第1流路構造体1aの幅方向の一方端部からその幅方向に第2原料流体を流した後、途中で流通方向を90°変更させて第2原料流体を前記第1原料流体と同じ第1流路構造体1aの長手方向に流し、その第2原料流体を各合流部14で前記第1原料流体に同方向から合流させる。そして、各反応路16は、各合流部14で合流した第1原料流体と第2原料流体を第1流路構造体1aの長手方向に直線的に流しながら互いに反応させる。
【0034】
具体的には、前記各第1導入路10は、第1流路構造体1aの長手方向の一方端部に導入口10aを有している。そして、各第1導入路10は、その導入口10aから第1流路構造体1aの長手方向に直線的に延び、対応する各合流部14に繋がっている。各第1導入路10の導入口10aには図略の原料供給部が接続され、その原料供給部から第1原料流体が各第1導入路10に配分されて導入される。各第1導入路10は、半円状の断面形状を有しているとともに、その全長にわたって一定の相当直径を有している。
【0035】
そして、各第1導入路10は、第1流路構造体1aの幅方向に等間隔で並列配置されており、これら各第1導入路10は、それぞれ等しい流路長及び等しい相当直径を有している。これにより、各第1導入路10の全体の圧力損失が均等化されている。そして、各第1導入路10の全体の圧力損失が均等化されることによって、前記原料供給部から各第1導入路10に配分されて流れる第1原料流体の流量が均一化されている。
【0036】
前記各第2導入路12は、第1流路構造体1aの幅方向の一方端部に導入口12aを有している。各第2導入路12の導入口12aには、前記第1原料流体を供給する原料供給部とは別の図略の原料供給部が接続され、その原料供給部から第2原料流体が各第2導入路12に配分されて導入される。
【0037】
そして、各第2導入路12は、図8に示すように、前記導入口12aから第1流路構造体1aの幅方向、すなわち前記各第1導入路10と直交する方向に直線的に延びる第1直線部12bと、第1流路構造体1aの長手方向、すなわち前記各第1導入路10に沿って直線的に延び、対応する前記各合流部14に繋がる第2直線部12cと、これら両部分の間で前記各第1導入路10に直交する方向から前記各第1導入路10と同じ方向に導入路の方向を変更するための屈曲部12dとを有する。すなわち、各第2導入路12は、前記各第1導入路10の導入口10aと異なる位置に導入口12aを有し、その導入口12aから前記各第1導入路10と異なる方向に延びた後、屈曲部12dによって方向が変更され、前記各第1導入路10と同じ方向から対応する各合流部14に合流している。
【0038】
また、各第2導入路12は、それぞれ流路長が異なっている。具体的には、各第2導入路12は、第1流路構造体1aの幅方向に等間隔で並列配置されているとともに、屈曲部12dによって同じ方向に屈曲している。この各第2導入路12の屈曲部12dにおいて外寄りに配置された第2導入路12は、内寄りに配置された第2導入路12に比べて大きい流路長を有している。すなわち、各第2導入路12の屈曲部12dにおいて外寄りに配置された第2導入路12ほど、流路長が増加するようになっている。
【0039】
そして、本実施形態では、流路長の異なる各第2導入路12の各部の相当直径が、各第2導入路12の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるようにその各第2導入路12の流路長に応じて設定されている。
【0040】
具体的には、各第2導入路12は、所定の相当直径を有する小径部12eと、この小径部12eよりも大きい相当直径を有する大径部12fとによって構成されている。前記小径部12eは、半円状の断面形状を有しており、この小径部12eは、前記第1直線部12bと、前記屈曲部12dと、前記第2直線部12cのうち前記屈曲部12d側から所定の長さの部分に相当する。前記大径部12fは、半円状の断面形状を有しており、前記第2直線部12cのうち前記小径部12e以外の部分に相当する。そして、小径部12eと大径部12fの接続部は、各第2導入路12の屈曲部12dにおいて外寄りに配置された第2導入路12から内寄りに配置された第2導入路12へ移るに従って前記合流部14側へ徐々に移行するように配置されている。
【0041】
各第2導入路12の全体の圧力損失は、その第2導入路12を構成する小径部12eの圧力損失と大径部12fの圧力損失との和によって求められる。すなわち、小径部12eと大径部12fの長さの比率に応じて各第2導入路12の全体の圧力損失が変化する。そして、本実施形態では、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等化されるように、各第2導入路12の流路長に応じて小径部12eの長さと大径部12fの長さの比率が設定されている。
【0042】
具体的には、小径部12eは、大径部12fに比べて相当直径が小さいことに起因して、小径部12eの圧力損失は、大径部12fの圧力損失よりも大きくなっている。また、上記したように各第2導入路12の屈曲部12dにおいて外寄りに配置された第2導入路12ほど大きい流路長を有しているため、その流路長に比例して前記外寄りに配置された第2導入路12ほど圧力損失が大きくなる。そこで、本実施形態では、各第2導入路12の屈曲部12dにおいて外寄りに配置された第2導入路12ほど、圧力損失の大きい前記小径部12eの長さの比率を小さくすることによって、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等化されている。そして、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等化されることによって、各第2導入路12を流れる第2原料流体の流量が均一化されている。
【0043】
そして、各第2導入路12の小径部12eと大径部12fの形状は、以下の原理に基づいて設定されている。
【0044】
すなわち、流路内を流れる流体の圧力損失Δpは、一般的に、以下のファニングの式で求められる。
【0045】
Δp=4f(ρv/2)(L/D)・・・(1)
ただし、この式(1)において、fは流体摩擦係数、ρは流体の密度、vは流体の流速、Lは流路の流路長、Dは流路の相当直径をそれぞれ表す。
【0046】
また、流体の乱れの状態を表すレイノルズ数Reは、以下の式(2)で表される。
【0047】
Re=ρvD/μ・・・(2)
ただし、この式(2)において、μは流体の粘性係数を表す。
【0048】
そして、後述するように前記各第2導入路12には第2原料流体を層流域にある状態で流す。流体の流れが層流域にあるのは、レイノルズ数ReがRe<2100の範囲にある場合であり、この場合には、流体摩擦係数fが次式(3)のように表される。
【0049】
f=16/Re・・・(3)
この式(3)と上記式(2)を用いて上記式(1)を式変形することにより、流体の流れが層流域にあるときの流路内を流れる流体の圧力損失Δpは、以下の式(4)のように表される。
【0050】
Δp=32μ(L/D)v・・・(4)
ここで、流体の流速vは、流路内を流れる流体の流量Fと流路の相当直径Dを用いて次式(5)のように表せる。
【0051】
v=F/D・・・(5)
この式(5)を用いて上記式(4)は、以下の式(6)のように表せる。
【0052】
Δp=32μ(L/D)F・・・(6)
【0053】
そして、前記第2導入路12の全体の圧力損失をΔpとすると、この圧力損失Δpは、その第2導入路12を構成する小径部12eの圧力損失Δpと大径部12fの圧力損失Δpの和であるので、小径部12eの流路長をL、相当直径をDとし、大径部12fの流路長をL、相当直径をDとすれば、第2導入路12の全体の圧力損失Δpは次式(7)のように表される。
【0054】
Δp=Δp+Δp=32μF(L/D+L/D)・・・(7)
この式(7)において、流体の粘性係数μは定数であるので、L/D+L/Dの値が一定であれば、第2導入路12の全体の圧力損失Δpは、第2原料流体の流量Fに正比例した値となる。すなわち、L/D+L/Dの値が一定であれば、各第2導入路12の全体の圧力損失Δpが等しいとき各第2導入路12を流れる第2原料流体の流量Fが均等になるという関係が成り立つ。
【0055】
そこで、本実施形態では、各第2導入路12の小径部12eの相当直径Dが等しく、かつ、各第2導入路12の大径部12fの相当直径Dが等しいという条件下で、各第2導入路12においてL/D+L/Dの値が一定となるように小径部12eの流路長Lと大径部12fの流路長Lの比率が設定されている。
【0056】
前記各合流部14は、対応する前記第1導入路10及び前記第2導入路12の下流側に連続して設けられているとともに、その第1導入路10及び第2導入路12の第2直線部12cと同方向に直線的に延びている。この合流部14は、第1導入路10を通過した第1原料流体と第2導入路12を通過した第2原料流体とを第1流路構造体1aの長手方向に流しながら合流させる。そして、各合流部14は、図8に示すように、2つの半円が円弧の頂点近傍で互いに結合したような断面形状を有するとともに、前記第1導入路10及び前記第2導入路12の相当直径よりも大きい相当直径を有する。
【0057】
前記各反応路16は、対応する前記合流部14の下流側に連続して設けられているとともに、その合流部14と同方向、すなわち第1流路構造体1aの長手方向に直線的に延びている。この各反応路16は、合流部14で合流させた第1原料流体と第2原料流体を第1流路構造体1aの長手方向に流しながら互いに反応させる。そして、各反応路16は、等しい流路長を有している。また、各反応路16は、半円状の断面形状を有するとともに、前記第2導入路12の大径部12fの相当直径よりも大きい相当直径を有する。
【0058】
前記第2流路構造体1bは、上記したように熱媒を流通させる複数の熱媒流路30を形成するものであり、この第2流路構造体1bは、熱媒用流路プレート26と、その熱媒用流路プレート26の表面上に積層された封止プレート28とによって構成されている。前記複数の熱媒流路30は、図1に示すように、第2流路構造体1b内において当該第2流路構造体1bの幅方向に等間隔で配設されている。各熱媒流路30は、前記第1流路構造体1aの各第1導入路10、各第2導入路12の第2直線部12c、各合流部14及び各反応路16に対応する位置にそれら各部と同方向に直線的に延びるように設けられている。そして、熱媒用流路プレート26の表面に開口するように複数の溝部32が形成されており、この溝部32の開口が封止プレート28で封止されることによって前記熱媒流路30が形成されている。なお、前記封止プレート28は、第1流路構造体1aを構成する封止プレート8と兼用されている。
【0059】
そして、第2流路構造体1bの熱媒流路30に図略の熱媒供給部から熱媒が流されることによって、その熱媒と前記第1流路構造体1aの反応路16を流れる第1原料流体及び第2原料流体との熱交換が行われ、反応路16における第1原料流体と第2原料流体の反応が促進されるようになっている。
【0060】
次に、本実施形態によるリアクタを用いた反応方法について説明する。
【0061】
本実施形態によるリアクタを用いた反応方法では、まず、原料供給部から第1原料流体を各反応流路2の第1導入路10に導入するとともに、前記原料供給部とは別の原料供給部から第2原料流体を各反応流路2の第2導入路12に導入する。この際、第1原料流体を第1導入路10に層流となる条件で流すとともに、第2原料流体を第2導入路12に層流となる条件で流す。第1原料流体は、各第1導入路10の全体の圧力損失が均等化されていることに起因して、各第1導入路10に均一の流量で配分されて流れる。また、第2原料流体は、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等化されていることに起因して、各第2導入路12に均一の流量で配分されて流れる。
【0062】
そして、第1導入路10を通過した第1原料流体と、第2導入路12を通過した第2原料流体とが合流部14で合流し、この合流した第1原料流体と第2原料流体が合流部14から反応路16へ流れるとともに互いに反応することにより所定の反応生成物が製造される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、各反応流路2の第2導入路12の流路長がそれぞれ異なる場合でも、この各第2導入路12の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるようにその各第2導入路12の流路長に応じて各第2導入路12の各部の相当直径が設定されているので、異なる流路長を有する各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量を均一にすることができる。
【0064】
さらに本実施形態では、流路長の異なる各第2導入路12の流路長に応じて各第2導入路12の各部の相当直径が設定されているため、各第2導入路12の流路長及び各第2導入路12の各部の相当直径の両方をそれぞれ適切に設定して各第2導入路12の全体の圧力損失を均等化し、各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量を均一にすることができる。このため、各第2導入路12の流路長を揃えることによって各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量を均一にする場合と比べて、各第2導入路12の形状の自由度を向上させることができる。従って、本実施形態では、流路長の異なる各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量を均一にしながら、その各第2導入路12の形状の自由度を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、各第2導入路12の流路長に応じて小径部12eと大径部12fの長さの比率を変えることにより、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等化されているので、各第2導入路12の全体の相当直径を微小に変えることで各第2導入路12の全体の圧力損失を均等化する場合に比べて、各第2導入路12の形状の調整が容易となる。このため、流路長の異なる各第2導入路12を全体の圧力損失がそれぞれ等しくなる形状に容易に形成することができる。
【0066】
また、本実施形態では、各第2導入路12が屈曲部12dにおいて同じ方向に屈曲しているとともに、その屈曲部12dにおいて各第2導入路12のうち外寄りに配置されたものほど、小径部12eの長さの比率が小さくなるように設定されている。このため、各第2導入路12が同方向に屈曲しているにもかかわらず、その各第2導入路12の全体の圧力損失を均等化し、各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量を均一にすることができるとともに、各第2導入路12の形状の自由度を向上することができる。
【0067】
また、本実施形態では、互いに異なる位置に設けられた導入口10aと導入口12aから各第1導入路10と各第2導入路12が互いに異なる方向へ延びるとともに、各第2導入路12に設けられた屈曲部12dが第2導入路12の延びる方向を対応する第1導入路10と同じ方向に変更しているので、各第1導入路10と各第2導入路12が互いに異なる位置に導入口10a(12a)を有する場合でも、これら各第1導入路10と各第2導入路12を同じ方向から合流部14に合流させることができる。これにより、第1原料流体と第2原料流体を互いに異なる位置から互いに異なる方向へ流しながらも、これら両原料流体を互いに同じ方向に合流させることができる。
【0068】
また、本実施形態のリアクタは、互いに積層された複数の第1流路構造体1aを備えるので、リアクタ全体での流路数をより増加させることができ、反応生成物をより大量生産することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第2原料流体を各第2導入路12に層流となる条件で流すので、各第2導入路12の小径部12eの流路長及び相当直径と大径部12fの流路長及び相当直径とが所定の関係を満たす条件下において、各第2導入路12の全体の圧力損失が均等であれば各第2導入路12に流れる第2原料流体の流量が均一になるという関係を成立させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均一の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
すなわち、第1導入路、第2導入路、合流部及び反応路の形状及び配置は、上記実施形態で示したものに限らず、上記以外の種々の構成で第1導入路、第2導入路、合流部及び反応路を配置してもよい。
【0072】
例えば、図10及び図11に示す上記実施形態の第1変形例のように流路プレート34の表面側に第1導入路36と第2導入路38を両方とも設けるとともに、流路プレート34の裏面側に反応路40を設け、前記第1導入路36の下流側端部と前記第2導入路38の下流側端部と前記反応路40の上流側端部とを繋ぐように合流部42を設けてもよい。
【0073】
具体的には、図10にこの第1変形例による流路プレート34の表面の構造が示されており、図11にその流路プレート34の裏面の構造が示されている。
【0074】
この第1変形例では、流路プレート34の表面に複数の第1導入路36を構成する複数の第1導入溝44と、複数の第2導入路38を構成する複数の第2導入溝46とが形成されている。また、流路プレート34の裏面には、複数の反応路40を構成する複数の反応溝48が形成されている。そして、各第1導入溝44の下流側端部及び各第2導入溝46の下流側端部と、各反応溝48の上流側端部とを繋ぐように合流部42を構成する貫通孔50が設けられている。この貫通孔50は、流路プレート34を厚み方向に貫通するように形成されている。
【0075】
そして、流路プレート34の表面が図略の封止プレートで覆われることにより、第1導入溝44の開口及び第2導入溝46の開口が封止されて第1導入路36及び第2導入路38が形成されている。一方、流路プレート34の裏面が図略の封止プレートで覆われることによって反応溝48の開口が封止されて反応路40が形成されている。また、前記貫通孔50の両開口が前記両封止プレートで封止されることにより合流部42が形成されている。
【0076】
各第1導入路36の導入口36a及び各第2導入路38の導入口38aは、共に第1流路構造体1a(図1参照)の長手方向の一方端部に設けられている。そして、各第1導入路36は、その導入口36aから第1流路構造体1aの長手方向に直線的に延びる第1直線部36bと、第1流路構造体1aの幅方向に直線的に延び、対応する合流部42に繋がる第2直線部36cと、これら両直線部36b,36c間で第1流路構造体1aの長手方向から幅方向に導入路の方向を変更するための屈曲部36dとを有する。また、各第1導入路36は、所定の相当直径を有する小径部36eと、その小径部36eよりも大きい相当直径を有する大径部36fとからなる。小径部36eは、前記第1直線部36bと、前記屈曲部36dと、前記第2直線部36cのうち前記屈曲部36d側から所定の長さの部分を構成し、大径部36fは、前記第2直線部36cのうち前記小径部36e以外の部分を構成する。
【0077】
そして、各第1導入路36は、上記実施形態の第2導入路12と同様、その屈曲部36dにおいて外寄りに配置されたものほど、小径部36eの長さの比率が小さくなるように構成されている。これによって、流路長の異なる各第1導入路36の全体の圧力損失が均等化されるとともに、各第1導入路36を流れる第1原料流体の流量が均一化されている。
【0078】
そして、各第2導入路38は、流路プレート34の幅方向の中心線に対して前記各第1導入路36を反転させた構造を有している。すなわち、各第2導入路38は、前記第1直線部36b、前記第2直線部36c及び前記屈曲部36dに対応する第1直線部38b、第2直線部38c及び屈曲部38dを有する。また、各第2導入路38は、所定の相当直径を有する小径部38eと、その小径部38eよりも大きい相当直径を有する大径部38fとからなり、前記屈曲部38dにおいて外寄りに配置されたものほど、小径部38eの長さの比率が小さくなるように構成されている。これによって、流路長の異なる各第2導入路38の全体の圧力損失が均等化されるとともに、各第2導入路38を流れる第2原料流体の流量が均一化されている。
【0079】
そして、各第1導入路36と各第2導入路38は、対応する合流部42に互いに反対側から合流している。各合流部42は、第1流路構造体1aの幅方向の中心位置に設けられている。すなわち、この第1変形例では、第1流路構造体1aの長手方向の一方端部の導入口36aから各第1導入路36に導入された第1原料流体と、第1流路構造体1aの同端部の導入口38aから各第2導入路38に導入された第2原料流体が、共に第1流路構造体1aの長手方向に流れた後、第1流路構造体1aの幅方向内側へ互いに接近するように流れ、第1流路構造体1aの幅方向の中心位置にある合流部42で合流するようになっている。
【0080】
そして、各合流部42に繋がるように流路プレート34の裏面側に各反応路40が設けられている。従って、前記各合流部42で合流した第1原料流体と第2原料流体は、その合流部42を通って流路プレート34の裏面側の各反応路40へ抜け、この各反応路40を流通しながら互いに反応するようになっている。そして、各反応路40は、複数回屈曲しながら延びており、その導出口40aが第1流路構造体1aの幅方向の側面に設けられている。各反応路40は、その流路長が等しくなるように構成されている。これにより、各反応路40の圧力損失が均等化されるとともに、各反応路40の流量が均一化されている。
【0081】
この第1変形例では、流路長の異なる各第1導入路36の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、各第1導入路36の流路長に応じて小径部36eと大径部36fの長さの比率が設定されているとともに、流路長の異なる各第2導入路38の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、各第2導入路38の流路長に応じて小径部38eと大径部38fの長さの比率が設定されているので、上記実施形態と同様の原理により、各第1導入路36に流れる第1原料流体の流量を均一にしながら、その各第1導入路36の形状の自由度を向上させることができるとともに、各第2導入路38に流れる第2原料流体の流量を均一にしながら、その各第2導入路38の形状の自由度を向上させることができる。
【0082】
この第1変形例における各第1導入路36及び各第2導入路38に関する上記以外の効果は、上記実施形態における第2導入路12に関する効果と同様である。
【0083】
また、この第1変形例の構成に限らず、各第1導入路36または各第2導入路38のいずれか一方の各導入路を第1流路構造体1aの側端部から幅方向に直線的に延びるように構成し、屈曲して延びる他方の各導入路と合流部42で合流させるようにしてもよい。この場合、第1流路構造体1aの幅方向の側端部から直線的に延びる各導入路は、全長にわたって相当直径が均一となるように形成する。
【0084】
また、上記実施形態では、流路プレート4の表面側に設けた各第1導入路10を第1流路構造体1aの長手方向に直線的に延びるように形成するとともに、流路プレート4の裏面側に設けた各第2導入路12を屈曲した形状に形成したが、この構成に限らず、前記各第1導入路10を前記各第2導入路12と同様に屈曲した形状に形成するとともに、小径部と大径部とによって構成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、第1導入路10と第2導入路12を合流部14で合流させる形態の第1流路構造体1aを例にとって説明したが、本発明はこの構成に限らない。すなわち、1つの導入路から他の導入路と合流することなく延びる流路を形成する流路構造体にも本発明を適用することができる。例えば、この形態の一例として図12に上記実施形態の第2変形例による流路構造体61が示されている。
【0086】
この第2変形例による流路構造体61は、流路プレート64と封止プレート66とからなり、流路プレート64の裏面側にのみ複数の流路68が設けられている。各流路68の導入口68aは、流路構造体61の幅方向の一方端部に設けられている。そして、各流路68は、図13に示すように第1直線部68bと、第2直線部68cと、屈曲部68dとを有する。第1直線部68bは、導入口68aから流路構造体61の幅方向に直線的に延びる部分であり、第2直線部68cは、流路構造体61の長手方向に直線的に延びる部分である。そして、屈曲部68dは、第1直線部68bと第2直線部68cとの間で流路構造体61の幅方向から長手方向に流路68の方向を変更するための部分である。
【0087】
また、各流路68は、所定の相当直径を有する小径部68eと、その小径部68eよりも大きい相当直径を有する大径部68fとからなる。小径部68eは、前記第1直線部68bと、前記屈曲部68dと、前記第2直線部68cのうち前記屈曲部68d側から所定の長さの部分を構成し、大径部68fは、前記第2直線部68cのうち前記小径部68e以外の部分を構成する。
【0088】
各流路68の小径部68eは、上記実施形態の各第2導入路12の小径部12eと同様の構造を有している。各流路68の大径部68fは、上記実施形態の各第2導入路12の大径部12fをそのまま下流側に流路構造体61の端部まで直線的に延ばした構造を有している。そして、この第2変形例においても、上記実施形態と同様、各流路68の屈曲部68dにおいて外寄りに配置された流路68ほど、小径部68eの長さの比率が小さくなっており、それによって流路長の異なる各流路68の全体の圧力損失が均等化されている。
【0089】
この第2変形例による流路構造体61の上記以外の構成は、上記実施形態による第1流路構造体1aの構成と同様である。
【0090】
この第2変形例では、流路長の異なる各流路68の全体の圧力損失が等しくなるように各流路68の流路長に応じて小径部68eと大径部68fの長さの比率が設定されており、上記実施形態と同様の原理により、各流路68に流れる流体の流量を均一にしながら、その各流路68の形状の自由度を向上させることができる。
【0091】
この第2変形例における各流路68に関する上記以外の効果は、上記実施形態における第2導入路12に関する効果と同様である。
【0092】
また、上記実施形態では、リアクタに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成に限らない。すなわち、リアクタ以外の流体を扱う各種装置、例えば、熱交換器等に本発明の流路構造体を用いてもよい。この熱交換器の場合には、上記第2変形例による流路構造体61を適用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態によるリアクタを構成する流路装置の斜視図である。
【図2】図1に示した流路装置を構成する第1流路構造体の第1導入路及び反応路に沿った断面図である。
【図3】第1流路構造体における第1導入路のグループと、第2導入路のグループと、合流部のグループと、反応路のグループの位置関係を概略的に示した図である。
【図4】第1流路構造体の分解斜視図である。
【図5】図4に示した第1流路構造体を構成する流路プレートの表面側の平面図である。
【図6】図5中のA部の拡大図である。
【図7】図4に示した第1流路構造体を構成する流路プレートの裏面側の平面図である。
【図8】図7中のB部の拡大図である。
【図9】流路プレートの図5中のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の第1変形例による流路プレートの表面側の平面図である。
【図11】図10に示した第1変形例による流路プレートの裏面側の平面図である。
【図12】本発明の一実施形態の第2変形例による流路構造体の斜視図である。
【図13】図12に示した第2変形例による流路構造体における流路の構造を示した平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1a 第1流路構造体(流路構造体)
2 反応流路
10、36 第1導入路
10a、36a 導入口
12、38 第2導入路
12a、38a 導入口
12d、36d、38d 屈曲部
12e、36e、38e 小径部
12f、36f、38f 大径部
14、42 合流部
16、40 反応路
61 流路構造体
68 流路
68d 屈曲部
68e 小径部
68f 大径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が導入される複数の流路を形成する流路構造体であって、
前記複数の流路は、互いに流路長の異なる流路を含み、
前記各流路の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるようにその各流路の流路長に応じて前記各流路の各部の相当直径が設定されている、流路構造体。
【請求項2】
前記各流路は、所定の相当直径を有する小径部と、その小径部の相当直径よりも大きい相当直径を有する大径部とを含み、
前記各流路の全体の圧力損失が均等化されるように、前記各流路の流路長に応じて前記小径部の長さと前記大径部の長さの比率が設定されている、請求項1に記載の流路構造体。
【請求項3】
前記各流路は、並列に配置されているとともに、同じ方向に屈曲しており、
その屈曲した部分において前記各流路のうち外寄りに配置された流路は、内寄りに配置された流路に比べて大きい流路長を有し、
前記屈曲した部分において前記各流路のうち外寄りに配置されたものほど、前記小径部の長さの比率が小さくなるように設定されている、請求項2に記載の流路構造体。
【請求項4】
第1原料流体と第2原料流体とを反応させるための複数の反応流路を形成する流路構造体を備えたリアクタであって、
前記各反応流路は、前記第1原料流体が導入される第1導入路と、前記第2原料流体が導入される第2導入路と、前記第1導入路と前記第2導入路の下流側に繋がり、前記第1原料流体と前記第2原料流体を合流させるための合流部と、この合流部の下流側に繋がり、前記第1原料流体と前記第2原料流体を互いに反応させるための反応路とを含み、
前記各反応流路の第1導入路からなるグループまたは前記各反応流路の第2導入路からなるグループのうち少なくとも一方のグループは、互いに流路長の異なる導入路を含み、
前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路の全体の圧力損失がそれぞれ等しくなるように、その各導入路の流路長に応じて当該各導入路の各部の相当直径が設定されている、リアクタ。
【請求項5】
前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路は、所定の相当直径を有する小径部と、その小径部の相当直径よりも大きい相当直径を有する大径部とを含み、
前記各導入路の全体の圧力損失が均等化されるように、前記各導入路の流路長に応じて前記小径部の長さと前記大径部の長さの比率が設定されている、請求項4に記載のリアクタ。
【請求項6】
前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路は、並列に配置されているとともに、同じ方向に屈曲しており、
その屈曲した部分において前記各導入路のうち外寄りに配置された導入路は、内寄りに配置された導入路に比べて大きい流路長を有し、
前記屈曲した部分において前記各導入路のうち外寄りに配置されたものほど、前記小径部の長さの比率が小さくなるように設定されている、請求項5に記載のリアクタ。
【請求項7】
前記各第1導入路と前記各第2導入路は、互いに異なる位置に導入口を有し、この導入口から互いに異なる方向へ延びるとともに、前記合流部に同じ方向から合流し、
前記各第1導入路または前記各第2導入路のうち少なくとも一方の各導入路は、その延びる方向を他方の各導入路と同じ方向に変更するための屈曲部を有する、請求項6に記載のリアクタ。
【請求項8】
互いに積層された複数の前記流路構造体を備える、請求項4〜7のいずれか1項に記載のリアクタ。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載のリアクタを用いた反応方法であって、
前記流路長の異なる導入路を含むグループの各導入路に原料流体を層流となる条件で流す、リアクタを用いた反応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−18280(P2009−18280A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184302(P2007−184302)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】