説明

流路開閉弁

【課題】ボールバルブを弁閉状態から切り換える際、流体を迅速に流通させると共に、ボールバルブの作動量に応じた流量で制御可能なバルブを提供する。
【解決手段】流路開閉弁10を構成するボディ本体12の内部にボールバルブ14が回動自在に設けられ、ボールバルブ14の外周面には、貫通孔42と略平行に切り欠かれた第1及び第2切欠部52a、52bが形成される。この第1及び第2切欠部52a、52bは、ボールバルブ14が回動した弁閉状態において、第1バルブシート16に臨むように配置され、ボールバルブ14が回動し始めるとほぼ同時に、第1及び第2切欠部52a、52bと第1及び第2バルブシート16、18との間に間隙62a、62bが生じ、間隙62a、62bを通じて排気ガスが下流側へ流通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通する流路を開閉することにより該流体の流通状態を切り換える流路開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を切り換えることによって前記流体の流通状態を制御する流路開閉弁が知られている。
【0003】
このような流路開閉弁は、弁本体の内部にボール弁が設けられ、該ボール弁の内部には、一直線状に貫通した貫通孔が形成される。そして、ボール弁の貫通孔が、弁本体に形成された一対の通路と直交し、該ボール弁の外周面が、前記通路の端部にそれぞれ設けられた弁座部材に当接することによって流体の流通が遮断された弁閉状態となり、一方、前記ボール弁が回転駆動し、その貫通孔が通路と一直線上となることにより、前記通路が互いに連通した弁開状態となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−9512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような流路開閉弁では、一方の通路と他方の通路とがボール弁によって閉塞された弁閉状態から弁開状態とするためにボール弁を回動させる際、前記ボール弁を回動させ始めてから貫通孔と前記通路とが連通するまでに時間差が生じるため、前記貫通孔を通じて流体が前記通路を流通し始めるまでに所定時間を要することとなり、しかも、前記流体が所望流量に到達するまでにも時間を要するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ボールバルブを弁閉状態から切り換える際、流体を迅速に流通させ始めることができ、しかも、前記ボールバルブの作動量に応じた流体の流量を得ることが可能な流路開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体の供給及び排出される一対のポートを有したボディと、前記ボディの室内に回動自在に設けられるボールバルブと、前記ボディに設けられ前記ボールバルブの外周面が当接するシート部材とを有し、前記ボールバルブを回動させることによって一方のポートと他方のポートとの連通状態を切り換える流路開閉弁において、
前記ボールバルブには、該ボールバルブの中心を貫通する流路と、
前記外周面に対して窪んで形成され、一方のポートと他方のポートとの連通が遮断された弁閉状態において、前記流体が供給され上流側となる一方のポートに臨む第1切欠部と、
前記流体が排出され下流側となる他方のポートに臨む第2切欠部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ボールバルブの外周面に、該外周面に対して窪んだ第1及び第2切欠部を設け、前記ボールバルブによって一方のポートと他方のポートとの連通が遮断された弁閉状態で、前記ボールバルブの外周面が当接するシート部材に臨み、且つ、前記流体が供給され上流側となる一方のポートに第1切欠部が臨み、下流側となる他方のポートに第2切欠部が臨むように配置している。そして、弁閉状態からボールバルブを回動させた際、ボールバルブの貫通孔がポートと連通する前、又は、該貫通孔と前記ポートとが連通するのと同時に、前記第1及び第2切欠部とシール部材との間に形成される間隙を通じて前記流体を一方のポートから他方のポートへと流通させることができる。
【0009】
従って、ボールバルブを弁閉状態から回動させ始め、貫通孔が連通する前、又は、該貫通孔と連通するのと同時に、前記第1及び第2切欠部によって形成された間隙を通じて流体を下流側へと徐々に流通させることができ、しかも、前記ボールバルブの作動量に応じて徐々に前記流体の流量を増加させることが可能となる。その結果、ボールバルブを回動させた際に、流体を迅速に下流側へと流通させ始めることができると共に、前記ボールバルブの作動量に応じた流量で流体を高精度に流通させることができる。
【0010】
また、第1切欠部と第2切欠部とを、ボールバルブの中心に対して対称となる形状で形成するとよい。
【0011】
さらに、第1及び第2切欠部は、ボールバルブの外周面を平面状に切り欠いて形成するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、ボールバルブの外周面に、該外周面に対して窪んだ第1及び第2切欠部を設け、前記第1及び第2切欠部を、前記ボールバルブによって一方のポートと他方のポートとの連通が遮断された弁閉状態で、前記ボールバルブの外周面が当接するシート部材に臨み、且つ、前記流体が供給される上流側となる一方のポート及び下流側となる他方のポートにそれぞれ臨むように配置することにより、ボールバルブを回動させる際、前記貫通孔がポートと連通する前、又は、該貫通孔と前記ポートとが連通するのと同時に、前記第1及び第2切欠部とシール部材との間に形成される間隙を通じて前記流体を一方のポートから他方のポートへと流通させることができる。その結果、ボールバルブを弁閉状態から回動させた際に、流体を迅速に下流側へと流通させ始めることができると共に、前記ボールバルブの作動量に応じた流量で流体を高精度に流通させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る流路開閉弁の全体縦断面図である。
【図2】図2Aは、図1のIIA−IIA線に沿った断面図であり、図2Bは、図2Aのボールバルブが所定角度だけ回動した状態を示す拡大横断面図である。
【図3】図3Aは、図2Bのボールバルブが、さらに所定角度だけ回動した状態を示す拡大横断面図であり、図3Bは、図3Aのボールバルブがさらに回動した全開状態を示す拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る流路開閉弁について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る流路開閉弁を示す。なお、ここでは、流路開閉弁10が、自動車等の内燃機関から排出された排気ガスを該内燃機関に対して再循環させるためのEGR用切換バルブとして用いられる場合について説明する。
【0017】
この流路開閉弁10は、図1〜図3に示されるように、ボディ本体12と、該ボディ本体12の内部に回動自在に設けられるボールバルブ14と、前記ボールバルブ14の外周面に当接する第1及び第2バルブシート16、18と、前記ボディ本体12の上部に設けられ、前記ボールバルブ14に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構20とを含む。
【0018】
このボディ本体12の下側には、例えば、排気ガス(流体)Eの供給されるガス流入口(ポート)22と、その反対側に設けられ、前記排気ガスEを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口(ポート)24が設けられている。なお、ボディ本体12において、ガス流入口22とガス流出口24とは略一直線上に設けられる。また、ボディ本体12には、ガス流入口22とガス流出口24との間に連通室26が形成され、この連通室26の内部に略球状のボールバルブ14が回動自在に配設される。
【0019】
この連通室26とガス流入口22との間には、第1バルブシート(シート部材)16が設けられ、前記第1バルブシート16は、小径部28と、該小径部28と一体的且つ同軸な大径部30とからなる。そして、小径部28が、ボディ本体12において、ガス流入口22に臨み、大径部30が前記ボールバルブ14に臨むように配設される。また、大径部30には、ボディ本体12との間にウェーブワッシャ32が設けられ、前記ウェーブワッシャ32の弾発力によって第1バルブシート16は常にボールバルブ14側(矢印A方向)へと付勢され、前記大径部30によって前記ボールバルブ14がシートされている。
【0020】
第1バルブシート16には、中心部にガス流入口22と連通する第1連通孔34が形成され軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通すると共に、該第1バルブシート16の一端面には、ボールバルブ14の当接する第1シート面36が形成される。
【0021】
一方、連通室26とガス流出口24との間には、リング状の第2バルブシート(シート部材)18が設けられ、前記第2バルブシート18は、ガス流出口24と連通室26との間に形成された環状の装着溝に装着されている。
【0022】
第2バルブシート18は、その一端面が連通室26に臨んでボールバルブ14の外周面に当接し、他側面がガス流出口24に臨むように配設されている。なお、第2バルブシート18は、連通室26を中心として第1バルブシート16と同軸上に設けられる。
【0023】
この第2バルブシート18には、中心部にガス流出口24と連通する第2連通孔38が形成され、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通している。また、第2バルブシート18の一端面は、ボールバルブ14の当接する第2シート面40が形成される。なお、第1及び第2シート面36、40は、ボールバルブ14の外周面に対応して半径外方向に向かって窪んだ断面円弧状に形成される。
【0024】
ボールバルブ14は、中心軸に直交するように一方の曲面と他方の曲面が取り除かれ、該中心軸に沿って一方の面から他方の面へと貫通する貫通孔(流路)42の形成された球体である。そして、貫通孔42と直交する頂部には、平面長方形状の凹部44が形成され、後述するシャフト軸46の端部46aが挿入される。
【0025】
また、貫通孔42は、ボールバルブ14の弁開状態において、ガス流入口22に臨む第1開口部48と、ガス流出口24に臨む第2開口部50とを有し、前記第1開口部48から第2開口部50へと直線状に形成される。
【0026】
一方、ボールバルブ14の外周面には、貫通孔42と略平行に切り欠かれた第1及び第2切欠部52a、52bが形成される。この第1及び第2切欠部52a、52bは、ボールバルブ14において、凹部44の設けられる頂部に対して側方となる部位にそれぞれ形成され、外周面に対して中心側(貫通孔42側)に向かって所定深さで切り欠かれた平面状で、且つ、互いに平行に形成される。換言すれば、第1及び第2切欠部52a、52bは、ボールバルブ14の中心、若しくは、貫通孔42を中心として対称となる位置及び形状で形成される。
【0027】
そして、ボールバルブ14がガス流入口22とガス流出口24との連通を遮断した弁閉状態において、第1切欠部52aが第1バルブシート16に臨み、第2切欠部52bが第2バルブシート18に臨むように設けられる(図2A参照)。
【0028】
詳細には、図1及び図2Aに示されるように、ボールバルブ14の貫通孔42が、第1及び第2バルブシート16、18と直交した弁閉状態において、該第1バルブシート16の第1シート面36に当接する前記ボールバルブ14のシール部14aから貫通孔42の第1開口部48までの領域に該シール部14aを加えた範囲(図2A中、D1参照)を第1非連通領域(範囲)S1とする。一方、ボールバルブ14の貫通孔42が、第1及び第2バルブシート16、18と直交した弁閉状態において、該第2バルブシート18の第2シート面40に当接する前記ボールバルブ14のシール部14bから貫通孔42の第2開口部50までの領域に該シール部14bを加えた範囲(図2A中、D2参照)を第2非連通領域(範囲)S2とする。
【0029】
そして、ボールバルブ14は、第1切欠部52aと貫通孔42との間における外周面である第1非連通領域S1が、第1バルブシート16の第1シート面36に対して当接し、第2切欠部52bと貫通孔42との間における外周面である第2非連通領域S2が、第2バルブシート18の第2シート面40に対して当接する。
【0030】
換言すれば、第1及び第2切欠部52a、52bは、ボールバルブ14の外周面において、環状の第1及び第2非連通領域S1、S2に対して第1及び第2バルブシート16、18側となる断面円弧状の部位がそれぞれ切り欠かれて形成される。
【0031】
駆動力伝達機構20は、ボールバルブ14の頂部に連結されるシャフト軸46と、前記シャフト軸46の上端部に連結される回転ヨーク54と、ボディ本体12の上部に連結され、前記回転ヨーク54を介して前記シャフト軸46を回転駆動させる駆動源(図示せず)とを含む。
【0032】
シャフト軸46は、ボディ本体12の内部に設けられた一組の軸受58a、58bによって回転自在に支持され、その下端部が断面長方形状に形成され連通室26内においてボールバルブ14の凹部44に挿入される。また、シャフト軸46の上端部は、回転ヨーク54の略中央部に挿通されてナット60を締め付けることによって固定されている。なお、シャフト軸46の端部46aは、ボールバルブ14の貫通孔42の延在方向と直交方向に幅広な断面長方形状に形成される(図2A参照)。
【0033】
駆動源は、例えば、通電作用下に回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなり、その回転駆動力が回転ヨーク54を介してシャフト軸46へと伝達されることにより、前記シャフト軸46に連結されたボールバルブ14が所定方向に回動動作する。
【0034】
本発明の実施の形態に係る流路開閉弁10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1及び図2Aに示されるように、ボールバルブ14の貫通孔42がガス流入口22及びガス流出口24に対して直交する位置となり、第1及び第2バルブシート16、18の第1及び第2連通孔34、38がいずれも該ボールバルブ14によって閉塞された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0035】
この場合、図2Aに示されるように、シャフト軸46の端部46aが、ボディ本体12においてガス流入口22とガス流出口24とを結ぶ中心線Lと一直線上となっている。
【0036】
上述した初期位置では、排気ガスEがガス流入口22へと供給されているが、第1切欠部52aが第1バルブシート16に対峙し、第2切欠部52bが第2バルブシート18に対峙し、しかも、前記第1及び第2バルブシート16、18の第1及び第2シート面36、40にボールバルブ14が当接しているため、該第1及び第2バルブシート16、18を通じて前記排気ガスEの連通室26内への流通が遮断されている。
【0037】
詳細には、ボールバルブ14における第1及び第2非連通領域S1、S2の一部が、第1及び第2バルブシート16、18の第1及び第2シート面36、40に対してそれぞれ当接した状態にある(図2A参照)。
【0038】
先ず、駆動源が付勢されることによって回転ヨーク54を介してシャフト軸46に回転駆動力が伝達され、貫通孔42の第1及び第2開口部48、50がそれぞれガス流入口22及びガス流出口24に接近するようにボールバルブ14が回動する。
【0039】
この際、図2Bに示されるように、ボールバルブ14が、例えば、シャフト軸46側から見て時計回り(矢印C方向)に所定角度θ1だけ回動すると、第1切欠部52aが第1連通孔34から離間するように徐々に移動すると共に、第2切欠部52bが第2連通孔38から離間するように徐々に移動していく。第1切欠部52aを挟んで第1開口部48側となる第1非連通領域S1及び第2切欠部52bを挟んで第2開口部50側となる第2非連通領域S2が、それぞれ第1及び第2バルブシート16、18に近接するように移動し、一方、前記第1切欠部52aを挟んで第2開口部50側となる第1非連通領域S1及び第2切欠部52bを挟んで第1開口部48側となる第2非連通領域S2が、それぞれ第1及び第2バルブシート16、18から離間する方向へと移動していく。
【0040】
これにより、第1切欠部52aの一部が、第1シート面36に臨むと共に、第2切欠部52bの一部が、第2シート面40に臨むこととなり、前記第1切欠部52aと第1シート面36との間、前記第2切欠部52bと第2シート面40との間にそれぞれ間隙62a、62bが生じ、ガス流入口22に供給されている排気ガスEが、前記間隙62a、62bを通じて連通室26へと導入される。
【0041】
この際、第1及び第2切欠部52a、52bは、ボールバルブ14の中心、若しくは、貫通孔42に対して対称となる位置及び形状で形成され、しかも、第1及び第2バルブシート16、18における第1及び第2シート面36、40も対称形状で形成されているため、前記第1切欠部52aによって形成される間隙62aと、前記第2切欠部52bによって形成される間隙62bとは、同一の流路断面積となる。そのため、間隙62aから連通室26へと流入する排気ガスの流量と、前記連通室26から間隙62bを通じて流出する排気ガスの流量とが略同等となる。
【0042】
なお、この時点では、第1切欠部52aを中心として第1開口部48側となる第1非連通領域S1が第1バルブシート16に当接し、第2切欠部52bを挟んで第2開口部50側となる第2非連通領域S2が第2バルブシート18に当接した状態にあるため、貫通孔42を構成する第1開口部48が、未だ第1連通孔34と連通しておらず、前記第2開口部50が、未だ第2連通孔38と連通していない状態にある。すなわち、貫通孔42を通じた第1連通孔34と第2連通孔38との連通が遮断され、ガス流入口22から供給された排気ガスEは、貫通孔42を通ることなく間隙62a、62b及び連通室26を通じてのみガス流出口24へと流通する。
【0043】
そして、図3Aに示されるように、ボールバルブ14がさらに時計回り(矢印C方向)に所定角度θ2だけ回動することによって第1開口部48側となる第1非連通領域S1の一部が第1シート面36から離間し、第1開口部48の一部が第1連通孔34と連通すると同時に、第2開口部50側となる第2非連通領域S2の一部が第2シート面40から離間し、第2開口部50の一部が第2連通孔38と連通する。そして、ボールバルブ14の第1及び第2開口部48、50が徐々に第1及び第2シート面36、40に対して略平行となっていく。これによって間隙62aの断面積が大きくなり、該間隙62aを通じて連通室26へと流入する排気ガスEの流量が徐々に増加すると同時に、間隙62bの断面積が大きくなり、該間隙62bを通じて前記連通室26から流出する排気ガスEの流量が徐々に増加する。
【0044】
その結果、ボールバルブ14が所定角度θ2だけ回動した状態において、貫通孔のみを通じて流体を下流側へと流通させている従来技術に係る流路開閉弁と比較し、間隙62a、62bを通じて排気ガスEを流通させることができるため、前記貫通孔42及び間隙62a、62bを通じてより多くの流量で排気ガスEを下流側へと流通させることができる。
【0045】
また、この際、ガス流入口22から第1連通孔34へと流通した排気ガスEは、第1及び第2切欠部52a、52bからなる間隙62a、62bを通じて前記ガス流入口22からガス流出口24へと流通すると同時に、新たに連通した貫通孔42を通じて第2連通孔38及び前記ガス流出口24へと流通することとなる。
【0046】
そして、図3Bに示されるように、ボールバルブ14がさらに時計回り(矢印C方向)に回動することによって第1開口部48が第1バルブシート16の第1連通孔34に臨み、且つ、第2開口部50が第2バルブシート18に臨んで貫通孔42がガス流入口22及びガス流出口24と一直線上となる。これにより、貫通孔42を通じてガス流入口22とガス流出口24とが連通した弁開状態となる。その結果、ガス流入口22に供給されている排気ガスEが、ボールバルブ14の貫通孔42を通じてガス流出口24側へと流通して図示しない内燃機関へと導入される。
【0047】
この際、第1及び第2切欠部52a、52bは、連通室26において、第1バルブシート16と第2バルブシート18との間となる位置へと移動し、第1及び第2非連通領域S1、S2が前記第1及び第2バルブシート16、18の一部にそれぞれ当接しているため、前記第1及び第2切欠部52a、52bを通じて排気ガスEが流通することがない。すなわち、第1及び第2切欠部52a、52bと第1及び第2バルブシート16、18との間にそれぞれ画成されていた間隙62a、62bがなくなり、該間隙62a、62bを通じた排気ガスEの流通がなくなる。
【0048】
一方、流路開閉弁10を弁開状態から再び弁閉状態とする場合には、図示しない駆動源を前記とは反対方向に付勢させることによってシャフト軸46を介してボールバルブ14が反時計回りに回動する。これにより、貫通孔42を構成する第1及び第2開口部48、50が、徐々に第1及び第2バルブシート16、18の第1及び第2シート面36、40に臨むように移動すると共に、第1及び第2切欠部52a、52bがそれぞれ前記第1及び第2シート面36、40に臨んで間隙62a、62bが再び形成されることとなる。その結果、貫通孔42を通じて流通する排気ガスEの流量が徐々に減少し始めると共に、前記間隙62a、62bを介して排気ガスEが下流側へと流通する(図3A参照)。
【0049】
そして、さらにボールバルブ14が反時計回りに回動することにより、第1及び第2非連通領域S1、S2の一部が、第1及び第2シート面36、40に当接するため、貫通孔42の第1開口部48とガス流入口22との連通が遮断され、前記貫通孔42を通じた排気ガスEの流通が停止する。すなわち、排気ガスEは、間隙62a、62bを通じてのみ下流側へと流通している(図2B参照)。
【0050】
最後に、ボールバルブ14がさらに反時計回りに回動し、第1及び第2切欠部52a、52bが第1及び第2連通孔34に臨み、且つ、第1及び第2非連通領域S1、S2が第1及び第2シート面36、40に当接することにより、間隙62a、62bを通じた排気ガスEの流通が遮断され、ガス流入口22からガス流出口24への前記排気ガスEの流通が完全に遮断された弁閉状態となる(図2A参照)。
【0051】
次に、上述したボールバルブ14の開度(回動量)と排気ガスEの流量との関係について簡単に説明する。
【0052】
ここでは、ボールバルブ14が弁閉状態から弁開状態に向かって回動していくことにより、排気ガスEが、先ず、間隙62a、62bを通じて下流側へと流通し、その後、貫通孔42が連通することによって、前記間隙62a、62bを通じて流通する排気ガスEに加えて前記貫通孔42を流通する排気ガスEが下流側へと流通することとなる。そのため、本願発明に係る流路開閉弁10では、弁閉状態から弁開状態となるまで排気ガスEの流量が前記ボールバルブ14の開度(回動量)に比例して緩やかに増加していることが諒解される。一方、流路開閉弁10を弁開状態から再び弁閉状態とする場合には、ボールバルブ14を回動させると徐々に排気ガスEの流量が減少していき、弁閉状態において流通が遮断されて流量が0となることが諒解される。
【0053】
これに対して、従来技術に係る流路開閉弁では、ボール弁を回動させ弁閉状態から弁開状態へと切り換える際、該ボール弁が回動し始めてもしばらくの間は排気ガスEの流量が増加せず、前記弁閉状態と弁開状態との中間となる開度(回動量)まで回動して初めて前記流量が徐々に増加し始めることが諒解される。また、ボール弁を弁開状態から弁閉状態へと切り換える場合には、前記弁閉状態と弁開状態との中間となる開度(回動量)において排気ガスEの流通が遮断され、その流量が0となった流通停止状態であることが諒解される。
【0054】
すなわち、従来技術に係る流路開閉弁においては、ボール弁の回動動作に伴って排気ガスEの流量が変化することがない範囲(不感帯)が存在しており、その結果、排気ガスEが流通し始めてから弁開状態となるまでの時間、前記弁開状態から前記排気ガスEの流通が遮断されるまでの時間がいずれも短く、流路開閉弁において前記排気ガスEの流量が急激に増減することとなる。
【0055】
本願発明に係る流路開閉弁10においては、ボールバルブ14の回動し始めから、第1及び第2切欠部52a、52bによって形成された間隙62a、62bを通じて排気ガスEをいち早く下流側へと流通させることができるため、前記排気ガスEを流通させ始めるタイミングを早くすることができると共に、前記排気ガスEが貫通孔42を通じて流通し始めた際に、前記間隙62a、62bを通じて同時に該排気ガスEを流通させることができるため、前記排気ガスEの流量をボールバルブ14の開度(回動量)に比例するように増加させ流通させることができる。
【0056】
換言すれば、従来技術に係る流路開閉弁と比較し、本願発明では、排気ガスEが流通し始めてから弁開状態となるまでの時間、前記弁開状態から前記排気ガスEの流通が遮断される弁閉状態となるまでの時間がいずれも長いため、流路開閉弁10において前記排気ガスEの流量を緩やかに増減させることができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態では、ボールバルブ14の外周面に貫通孔42と平行な第1及び第2切欠部52a、52bを設け、前記第1及び第2切欠部52a、52bを、前記ボールバルブ14によってガス流入口22とガス流出口24との連通が遮断された弁閉状態で、前記ガス流入口22側に配置された第1バルブシート16と前記ガス流出口24側に配置された第2バルブシート18にそれぞれ臨むように配置している。そして、ボールバルブ14を弁閉状態から回動させた際に、貫通孔42が前記第1バルブシート16の第1連通孔34と連通する前に、前記第1及び第2切欠部52a、52bと前記第1及び第2バルブシート16、18の間の間隙62a、62bを通じて排気ガスEを先行して下流側となるガス流出口24側(矢印A方向)へと流通させることができる。
【0058】
そのため、ボールバルブ14を弁閉状態から回動させ始めると略同時に、該ボールバルブ14と第1バルブシート16との間の間隙62aを通じて排気ガスEを下流側へと徐々に流通させることができ、しかも、前記ボールバルブ14の開度(回動量)に応じて徐々に前記排気ガスEの流量を増加させることが可能となる。すなわち、ボールバルブ14の開度(回動量)と排気ガスEの流量とのリニアリティが得られる。
【0059】
また、シャフト軸46及びボールバルブ14の開度(回動量)に応じて流量で排気ガスEをガス流入口22からガス流出口24へと流通させることが可能となる。
【0060】
さらに、ボールバルブ14の外周面に対する第1及び第2切欠部52a、52bの深さ、貫通孔42に対する傾斜角度を自在に設定することにより、前記第1及び第2切欠部52a、52bを通じて流通する排気ガスEの流量及び流通し始めるタイミングを自在に調整することができる。すなわち、第1及び第2切欠部52a、52bの深さは、第1及び第2非連通領域S1、S2の範囲外となるように設定すればよい。
【0061】
なお、本発明に係る流路開閉弁は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
10…流路開閉弁 12…ボディ本体
14…ボールバルブ 16…第1バルブシート
18…第2バルブシート 20…駆動力伝達機構
22…ガス流入口 24…ガス流出口
26…連通室 34…第1連通孔
36…第1シート面 38…第2連通孔
40…第2シート面 42…貫通孔
46…シャフト軸 48…第1開口部
50…第2開口部 52a…第1切欠部
52b…第2切欠部 62a、62b…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給及び排出される一対のポートを有したボディと、前記ボディの室内に回動自在に設けられるボールバルブと、前記ボディに設けられ前記ボールバルブの外周面が当接するシート部材とを有し、前記ボールバルブを回動させることによって一方のポートと他方のポートとの連通状態を切り換える流路開閉弁において、
前記ボールバルブには、該ボールバルブの中心を貫通する流路と、
前記外周面に対して窪んで形成され、一方のポートと他方のポートとの連通が遮断された弁閉状態において、前記流体が供給され上流側となる一方のポートに臨む第1切欠部と、
前記流体が排出され下流側となる他方のポートに臨む第2切欠部と、
を備えることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉弁において、
前記第1切欠部と前記第2切欠部とが、前記ボールバルブの中心に対して対称となる形状で形成されることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流路開閉弁において、
前記第1及び第2切欠部は、前記ボールバルブの外周面が平面状に切り欠かれて形成されることを特徴とする流路開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67882(P2012−67882A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214696(P2010−214696)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】