説明

流量を制御するための弁

自動車の暖房及び/又は冷房システム内で媒体の流量を制御するための弁(100)であって、少なくとも1つの第1の通路(140)を備えた弁ハウジング(110)と、前記第1の通路(140)を開閉するための調整ディスク(170)とを有している。この場合、調整ディスク(170)は、回転可能に支承された駆動軸(180)の第1の端部に配置されており、前記駆動軸(180)が、前記調整ディスク(170)から、前記弁ハウジング(110)の軸方向開口(160)を通って、前記弁ハウジング(110)内に配置されたばね室(230)内に延在している。前記ばね室(230)内に配置された、駆動軸(180)の第2の端部が平歯車(190)を有している。さらに、前記ばね室(230)内にばね(240)が配置されていて、該ばね(240)の第1の端部が前記弁ハウジング(110)に支えられ、前記ばね(240)の第2の端部が前記平歯車(190)に支えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された、自動車の暖房及び/又は冷房システム内で媒体の流量を制御するための弁に関する。
【0002】
従来の技術
自動車の冷房若しくは暖房システムは、一般的に冷却しようとする熱源例えば自動車エンジンを含んでおり、該自動車エンジンは、冷却媒体を用いて自由対流又は強制対流によって冷却される。この場合、暖房若しくは冷房システムは、冷却媒体流の流量の大きさに基づいている。
【0003】
冷却媒体によって熱源から導出された熱は、同時に車室を暖房するために用いられる。このために、最近の自動車の暖房回路及び冷房回路は、一般的に様々な部分回路例えばクーラ分岐部、バイパス分岐部及び/又はヒータユニット分岐部を有している。この場合、冷房回路及び暖房回路の様々な分岐部への冷却媒体流の分割は、少なくとも1つの弁を介して制御される。このような弁は、例えばドイツ連邦共和国特許公開第102006053307号明細書により公知である。この公知の弁においては、一方側の圧力負荷によって、液圧力が弁体を伝動装置カバーに向かって軸方向で摺動させ、それによって摩擦力が高まり、ひいては、弁体の運動が困難になる。
【0004】
発明の開示
本発明の課題は、自動車の暖房及び/又は冷房システム内で媒体の流量を制御するための改善された弁を提供することである。この課題は、請求項1の特徴部に記載した弁によって解決された。有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0005】
自動車暖房及び/又は冷房システム内で媒体の流量を制御するための、本発明による弁は、少なくとも1つの第1の通路を備えた弁ハウジングと、前記第1の通路を開閉するための調整ディスクとを有している。この場合、調整ディスクは、回転可能に支承された駆動軸の第1の端部に配置されており、前記駆動軸が、前記調整ディスクから、前記弁ハウジングの軸方向開口を通って、前記弁ハウジング内に配置されたばね室内に延在している。前記ばね室内に配置された、駆動軸の第2の端部が平歯車を有している。さらに、前記ばね室内にばねが配置されていて、該ばねの第1の端部が前記弁ハウジングに支えられ、前記ばねの第2の端部が前記平歯車に支えられている。
【0006】
この場合、有利な形式で、比較的なだらかなばね特性曲線を有するばねが使用される。これによって、組み込まれた構成部材の公差が比較的大きくても、弁のシール機能が保証される。しかも、調整ディスクと通路との間の比較的一定な摩擦モーメントは、調整ディスクの両側の圧力負荷及び弁の貫流方向に依存することなく、得られる。
【0007】
有利な形式で、ばねはコイルばねとして構成されており、このコイルばねのコイルの中を通って駆動軸が同軸的に延在している。これによって駆動軸は、ばね力によって左右対称に負荷される。
【0008】
有利には、ばねは、5N/mm〜25N/mmのばね定数を有している。有利な形式で、このような比較的低いばね定数によって、調整ディスクと第1の通路のシールとの間の比較的一定な摩擦モーメントが得られる。
【0009】
弁の有利な実施態様によれば、平歯車の端面側が環状の溝を有しており、該環状の溝内に環状のスラストワッシャが配置されている。この場合、ばねの第2の端部が前記スラストワッシャに支えられている。これによって、ばねと平歯車との間で発生する摩擦力が減少される。
【0010】
弁の追加的な実施態様によれば、第1の通路の、前記調整ディスクに向いた端部に第1のシールブシュが配置されており、該第1のシールブシュが第1のシールリングを介して前記弁ハウジングに支えられている。この場合、調整ディスクがばねによって第1のシールブシュに押し付けられる。これによって、第1の通路の安価で確実なシールが得られる。
【0011】
また有利には、第1のシールリングは十字形横断面を有している。これによって、シールリングは、弁が調整ディスク側から圧力負荷される場合も、また通路側から圧力負荷される場合も、シールを行う。それによって、弁は両流れ方向のために適している。
【0012】
有利な形式で、ばねは、調整ディスクと第1のシールブシュとの間で、0.1N/mm〜0.5N/mmの面圧を生ぜしめる。これによって本発明によれば、第1の通路の確実なシールが得られると共に、調整ディスクの容易な回転性も得られる。
【0013】
弁の実施態様によれば、軸方向開口内に軸受ブシュが配置されており、該軸受ブシュを通って駆動軸がガイドされている。
【0014】
有利には、弁ハウジングは、前記調整ディスクによって閉鎖可能な、前記第1の通路と外部のハウジングとの間の媒体のための搬送経路が得られるように、前記外部のハウジングに接続可能である。これによって、弁は、別の通路を有する外部のハウジングに接続されるか、又は冷却しようとする熱源例えば自動車エンジンのハウジングに直接接続される。
【0015】
弁の有利な実施態様によれば、弁ハウジングは第2の通路を有しており、調整ディスクは、第1の通路及び/又は第2の通路を開閉するために設けられている。この場合、弁は、暖房及び/又は冷蔵システムの様々な分岐部に媒体を分配するために使用される。
【0016】
有利な形式で、第2の通路の、前記調整ディスクに向いた端部に第2のシールブシュが配置されており、該シールブシュが、第2のシールリングを介して前記弁ハウジングに支えられている。この場合、前記調整ディスクは、ばねによって前記第2のシールブシュに押し付けられる。前記第1のシールリングと第2のシールリングとが、同じ材料より成っていて、ほぼ同じ高さを有している。
【0017】
以下に本発明を図面に示した実施例を用いて具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】弁100の概略図である。
【図2】調整ディスクの概略図である。
【0019】
実施例
図1は、弁100の概略的な断面図である。弁100は、自動車の冷房及び/又は暖房システムにおける媒体の貫流を制御するために用いられる。媒体は、有利な形式で、高い熱容量を有する液体例えば水である。暖房及び/又は冷房システムは、自動車の熱源例えば自動車エンジンを冷却し、かつ/または自動車の車室を暖めるために用いられる。
【0020】
弁100は弁ハウジング110を有しており、該弁ハウジング110は、第1の通路140と第2の通路150とを有している。第1の通路140と第2の通路150とは、暖房及び/又は冷房システムの、媒体が循環する管路を接続するために用いられる。2つの通路140,150のうちの一方は省いてもよい。
【0021】
また、弁ハウジング110は連結接続部130を有しており、この連結接続部130は、図示の実施例では、環状のフランジとして形成されている。連結接続部130を介して、弁110は外部のハウジングに例えば接着又はねじ結合によって、気密に接続することができる。外部のハウジングは、弁ハウジング110に適合する、別の冷却通路を有するハウジングカバーであってよい。外部のハウジングは、冷却しようとする熱源のハウジング例えば自動車エンジンのハウジングであってもよい。媒体は、外部のハウジングから第1の通路140及び/又は第2の通路150に、又は第1の通路140及び/又は第2の通路150から外部のハウジングに流入する。
【0022】
連結接続部130内に調整ディスク170が配置されており、該調整ディスク170は、有利には円形横断面を有していて、外部のハウジングと第1の通路140及び第2の通路150との接続を開閉する。図2は調整ディスク170の概略的な平面図を示す。調整ディスク170は複数の調整開口171を有している。調整ディスク170の軸回りの回転角度に応じて、調整開口171のうちのいずれか一方が、外部のハウジングと第1の通路140との間、若しくは外部のハウジングと第2の通路150との間に配置されている。つまり、調整ディスク171を回転させることによって、外部のハウジングと第1の通路140及び/又は第2の通路150との間の接続が開閉される。また、調整ディスク170を回転させることによって、開放横断面をその都度変化させることができる。開放横断面を変えることによって、媒体の貫流量を制御することができる。
【0023】
また弁ハウジング110は、軸方向開口160を有しており、該軸方向開口160は、調整ディスク170から、第1の通路140と第2の通路150との間に位置する、弁ハウジング110の外側面まで、弁ハウジング110を通って延在している。調整ディスク170に向いた、軸方向開口160の部分内に、シリンダジャケット形の軸受ブシュ210が配置されている。軸方向開口160の、調整ディスク170とは反対側の部分は、ばね室230に向かって広がっている。第1の通路140と第2の通路150との間に配置された、弁ハウジング110の外側において、ばね室230を形成する軸方向開口160は、伝動装置カバー220によって閉鎖されている。ほぼ円筒形の駆動軸180は、調整ディスク170から軸受ブシュ210を通って、ばね室230内に延在している。調整ディスク170に向いた、駆動軸180の端部は、調整ディスク170の中央を垂直に貫通して、調整ディスク170に堅固に結合されている。駆動軸180を該駆動軸180の長手方向軸線を中心として回転させることによって、調整ディスク170が、該調整ディスク170の中心軸線を中心として回転運動せしめられる。
【0024】
ばね室230内に配置された、駆動軸180の端部に平歯車190が設けられている。平歯車190は、弁ハウジング110に配置されたウォーム200に噛み合い、該ウォーム200は、駆動機構例えばモータに接続されている。ウォーム200及び平歯車190を介して、駆動軸180はその長手方向軸線を中心にして回転せしめられる。
【0025】
軸受ブシュ210に向いた側の、平歯車190の端面側に、駆動軸180を取り囲む環状の溝260が設けられている。この溝260内に環状のスラストワッシャ270が配置されている。さらにばね室230内に、有利にはコイルばねとして構成されたばね240が配置されている。駆動軸180は、ばね240を貫通して軸方向に延在している。ばね240の第1の端部は、軸受ブシュ210を包囲する、弁ハウジング110の区分で支えられている。ばね240の第2の端部は、スラストワッシャ270を介して平歯車190で支えられている。ばね240は、伝動装置カバー220に向かって作用する力を駆動軸180に加え、該駆動軸180によって、調整ディスク170が第1の通路140及び第2の通路150に向かって押し付けられる。スラストワッシャ270は、駆動軸180がその長手方向軸線を中心にして回転する際に発生する、ばね240と平歯車190との間の摩擦を減少させるために働く。スラストワッシャ270及び溝260は省くことができる。この場合、ばね240の第2の端部は平歯車190に直接支えられている。
【0026】
調整ディスク170に向いた側の、第2の通路150の端部は、シリンダジャケット形のシールブシュ280を有しており、該シールブシュ280は、環状のシールリング290を介して、第2の通路150を形成する、弁ハウジング110の区分で支えられている。ばね240によって駆動軸180に加えられる力によって、調整ディスク170はシールブシュ280に押し付けられ、該シールブシュ280はシールリング290を介して、弁ハウジング110で支えられている。シールブシュ280及びシールリング290は、第2の通路150と調整ディスク170との間の移行領域のシールを行う。第1の通路140の、調整ディスク170に向いた側の端部は、シールリング290を介して支持されたシールブシュ280を有しており、該シールブシュ280によって、第1の通路140と調整ディスク170との間の移行領域がシールされる。調整ディスク170と第1の通路140若しくは第2の通路150との間の移行領域を均一にシールするために、第1の通路140及び第2の通路150のシールリング290及びシールブシュ280は、軸方向でそれぞれ同じ高さを有している。有利な形式で、2つのシールブシュ280と2つのシールリング290とは、それぞれ同じ材料より製造されていて、同じ硬さを有している。特に有利には、2つのシールブシュ280と2つのシールリング290とは、それぞれ同じ工具で製造される。
【0027】
ばね240は、有利には、5N/mm〜25N/mmのばね定数を有する比較的なだらかなばね特性曲線を有している。これによって、調整ディスク170をシールブシュ280に押し付ける力の変動が、ばね240の軸方向の構造スペースを規定する構成部分の公差に基づいて、できるだけ小さいという利点が得られる。またこれによって、シールブシュ280に対して必要とされる、調整ディスク170の比較的一定なトルクが得られ、ひいては、モータの比較的一定な駆動モーメントが得られる。
【0028】
有利には、ばねは、調整ディスク170とシールブシュ280との間で、0.1N/mm〜0.5N/mmの面圧を生ぜしめる。
【0029】
有利な形式で、シールリング290は、弁を2つの貫流方向で使用できるようにするために、内圧によっても外圧によっても支持されるように、構成されている。このようにして、シールリング290は、第1の通路140と調整ディスク170との間の移行領域、若しくは第2の通路150と調整ディスク170との間の移行領域の確実なシールを、第1の通路140及び第2の通路150が、調整ディスク170の、外部のハウジングに向いた側よりも高い圧力で負荷された場合のためにも、また第1の通路140及び第2の通路150が、調整ディスク170の、外部のハウジングに向いた側よりも低い圧力で負荷された場合のためにも、行うことができる。これは例えば、十字形横断面を有するシールリング290を使用することによって、得られる。
【符号の説明】
【0030】
100 弁、 110 弁ハウジング、 130 連結接続部、 140 第1の通路、 150 第2の通路、 160 軸方向開口、 170 調整ディスク、 180 駆動軸、 190 平歯車、 210 軸受ブシュ、 220 伝動装置カバー、 230 ばね室、 240 コイルばね、 260 溝、 270 スラストワッシャ、 280 シールブシュ、 290 シールリング、 280 シールブシュ、 290 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の暖房及び/又は冷房システム内で媒体の流量を制御するための弁(100)であって、
少なくとも1つの第1の通路(140)を備えた弁ハウジング(110)と、前記第1の通路(140)を開閉するための調整ディスク(170)とを有しており、
前記調整ディスク(170)が、回転可能に支承された駆動軸(180)の第1の端部に配置されており、
前記駆動軸(180)が、前記調整ディスク(170)から、前記弁ハウジング(110)の軸方向開口(160)を通って、前記弁ハウジング(110)内に配置されたばね室(230)内に延在しており、
前記ばね室(230)内に配置された、駆動軸(180)の第2の端部が平歯車(190)を有している形式のものにおいて、
前記ばね室(230)内にばね(240)が配置されていて、該ばね(240)の第1の端部が前記弁ハウジング(110)に支えられ、前記ばね(240)の第2の端部が前記平歯車(190)に支えられていることを特徴とする、自動車の暖房及び/又は冷房システム内の媒体の流量を制御するための弁(100)。
【請求項2】
前記ばね(240)がコイルばねとして構成されており、該コイルばねのコイルの中を通って前記駆動軸(180)が延在している、請求項1記載の弁(100)。
【請求項3】
前記ばね(240)が、5N/mm〜25N/mmのばね定数を有している、請求項1又は2記載の弁(100)。
【請求項4】
平歯車(190)の端面側が環状の溝(260)を有しており、該環状の溝(260)内に環状のスラストワッシャ(270)が配置されており、該スラストワッシャ(270)に前記ばね(240)の第2の端部が支えられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁(100)。
【請求項5】
前記第1の通路(140)の、前記調整ディスク(170)に向いた端部に第1のシールブシュ(280)が配置されており、該第1のシールブシュ(280)が第1のシールリング(290)を介して前記弁ハウジング(110)に支えられており、前記調整ディスク(170)がばね(240)によって第1のシールブシュ(280)に押し付けられる、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁(100)。
【請求項6】
前記第1のシールリング(290)が十字形横断面を有している、請求項5記載の弁(100)。
【請求項7】
前記ばね(240)が、前記調整ディスク(170)と前記第1のシールブシュ(280)との間で、0.1N/mm〜0.5N/mmの面圧を生ぜしめる、請求項5又は6記載の弁(100)。
【請求項8】
前記軸方向開口(160)内に軸受ブシュ(210)が配置されており、該軸受ブシュ(210)を通って前記駆動軸(180)がガイドされている、請求項1から7までのいずれか1項記載の弁(100)。
【請求項9】
前記弁ハウジング(110)は、前記調整ディスク(170)によって閉鎖可能な、前記第1の通路(140)と外部のハウジングとの間の媒体のための搬送経路が得られるように、外部のハウジングに接続可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の弁(100)。
【請求項10】
前記弁ハウジング(110)が第2の通路(150)を有しており、前記調整ディスク(170)が、前記第1及び/又は第2の通路(140,150)を開閉するために設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の弁(100)。
【請求項11】
前記第2の通路(150)の、前記調整ディスク(170)に向いた端部に第2のシールブシュが配置されており、該第2のシールブシュが、第2のシールリングを介して前記弁ハウジング(110)に支えられており、前記調整ディスク(170)が、前記ばね(240)によって前記第2のシールブシュ(280)に押し付けられ、前記第1のシールリング(290)と前記第2のシールリングとが、同じ材料より成っていて、ほぼ同じ高さを有している、請求項10記載の弁(100)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524874(P2012−524874A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506436(P2012−506436)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054680
【国際公開番号】WO2010/121911
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】