説明

流量制御バルブおよび流量制御方法

【課題】流体の流量を適切に調節する。
【解決手段】バルブ8は、流体が流入する流路を開閉する弁体81と、流路を通過する流体の流量を計測する流量センサ82と、制御装置から出力された操作量を流量に換算する流量換算部83と、流量センサ82によって計測された通過流量が流量換算部83によって換算された流量と一致するように弁体81の開度を調節する開度調節部84とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御システム等に使用される流量制御バルブ、および流量制御バルブにおける流量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調制御システムにおいて室内の温度制御もしくは湿度制御を行う際は、設定温度と室内温度との温度偏差もしくは設定湿度と室内湿度との湿度偏差に基づきPID演算により操作量を決定し、この操作量によってバルブの開度を調節して、空調機に冷温水を供給していた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−211191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空調制御システムでは、空調負荷に見合った容量の空調機、配管、バルブが選定されずに、容量の大きい空調機、配管、バルブが選定されている場合、PID演算の操作量をそのまま用いてバルブの開度を調節すると、空調機に流れる冷温水の流量が過大になってしまうという問題点があった。そして、このような場合、過大な流量による過剰な制御(過剰冷房、過剰暖房)とその過剰な制御を抑制する制御とが交互に起こるハンチングが発生し、また過大な流量により、冷温水を生成する熱源機の運転効率が悪化するという問題点があった。なお、以上の問題点は、空調制御システムに限らず、バルブを用いて流体の流量を制御するシステムであれば同様に起こり得る。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、空調機等の負荷機器を流れる流体の流量を適切に調節することができる流量制御バルブおよび流量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体が流入する流路を開閉する弁体を備え、この弁体の開度に応じて前記流体の流量を調節可能な流量制御バルブであって、制御装置から出力された操作量を流量に換算する流量換算手段と、前記流路を通過する流体の流量を計測する流量計測手段と、この流量計測手段によって計測された通過流量が前記流量換算手段によって換算された流量と一致するように前記弁体の開度を調節する開度調節手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の流量制御方法は、制御装置から出力された操作量を流量に換算する流量換算手順と、前記流路を通過する流体の流量を計測する流量計測手順と、この流量計測手順によって計測された通過流量が前記流量換算手順によって換算された流量と一致するように前記弁体の開度を調節する開度調節手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流量制御バルブが制御装置の操作量出力に見合った流量を演算し、計測した流体の通過流量が演算した流量と一致するように弁体の開度を調節することにより、空調機等の負荷機器を流れる流体の流量を適切に調節することができる。これにより、本発明では、過大な流量による制御のハンチングを劇的に改善することができる。また、本発明の流量制御バルブを空調制御に適用した場合には、冷温水(流体)を生成する熱源機の運転効率の悪化を劇的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
図1において、1は冷水や温水等の熱媒を生成する熱源機、2は熱源機1が生成する冷温水を搬送するポンプ、3は複数の熱源機1からの冷温水を混合する往ヘッダ、4は往水管路、5は往ヘッダ3から往水管路4を介して送られてくる冷温水の供給を受ける空調機、6は還水管路、7は空調機5において熱交換され還水管路6を介して送られてくる冷温水が戻される還ヘッダ、8は往ヘッダ3から空調機5に供給される冷温水の流量を制御するバルブ、9は空調機5から送り出された給気の温度を計測する給気温度センサ、10は空調制御装置、11は空調機5のコイル、12は送風機である。
【0009】
ポンプ2により圧送され熱源機1により熱量が付加された熱媒は、往ヘッダ3において混合され、往水管路4を介して空調機5へ供給され、空調機5を通過して還水管路6により還水として還ヘッダ7に至り、再びポンプ2によって圧送される。このように、熱媒は以上の経路を循環する。例えば、熱源機1を冷凍機とした場合、熱媒は冷水であり、熱源機1を加熱機とした場合、熱媒は温水である。
【0010】
空調機5は、空調制御エリアとなる室内から空調制御システムに戻る空気(還気)と外気との混合気を、冷温水が通過するコイル11によって冷却または加熱し、冷却または加熱した給気を送風機12によって空調制御エリアとなる室内に送り込む。
【0011】
本実施の形態は、バルブ8が流量計測機能を備え、空調制御装置10の操作量出力を受けて、この操作量出力に見合った流量を演算し、計測したバルブ通過流量が演算した流量と一致するように自身の開度を調節することを特徴としている。
図2はバルブ8の構成例を示すブロック図である。バルブ8は、空調機5を通過した冷温水が流入する流路を形成する弁箱80と、流路を開閉する弁体81と、流路を通過する冷温水の流量を計測する流量センサ(流量計測手段)82と、空調制御装置10から出力された操作量を流量に換算する流量換算部83と、流量換算部83が換算した流量値と流量センサ82によって計測された流量値に基づいて弁体81の開度を調節する開度調節部84とを有する。
流量センサ82の例としては、センサ部に流路抵抗を設け、流路前後圧力を計測して差圧から流量を演算する差圧式(オリフィス式等)流量センサや、挿入部の電磁場が流体の流れによって生じる偏差を検出する電磁式流量センサなどがある。
【0012】
以下、本実施の形態の空調制御システムの動作について説明する。図3は空調制御装置10の動作を示すフローチャート、図4はバルブ8の動作を示すフローチャートである。
まず、空調制御装置10は、給気温度センサ9によって計測された給気温度を示す給気温度信号を受信する(図3ステップS1)。
【0013】
そして、空調制御装置10は、給気温度センサ9によって計測された給気温度がオペレータ又は室内の居住者によって設定された温度設定値と一致するように空調機5を制御する。すなわち、空調制御装置10は、温度設定値と給気温度との偏差に基づいて、例えばPID演算によって操作量を算出し(ステップS2)、算出した操作量をバルブ8に出力する(ステップS3)。
【0014】
以上のような図3に示す処理が、空調制御システムが動作停止するまで(図3ステップS4においてYES)、繰り返し行われる。
なお、湿度センサ(不図示)によって給気の湿度を計測し、空調制御装置10が湿度設定値と現在の給気湿度との偏差に基づいて操作量を算出するようにしてもよい。
【0015】
一方、バルブ8の流量換算部83は、空調制御装置10から出力された操作量を示す操作量信号を受信する(図4ステップS10)。そして、流量換算部83は、受信した操作量を流量値に換算する(ステップS11)。流量換算部83の内部には、図5に示すような操作量と流量との関係が例えばテーブルや数式の形で予め登録されている。流量換算部83は、この予め登録された関係に基づいて操作量から流量を演算する。
空調機5等の負荷機器の設計最大流量は、バルブ8が組み込まれる負荷機器の容量、空調をする空間の負荷容量から計算される。この設計最大流量値を操作量100%に割り当てる。そして、操作量と負荷機器の設計流量との関係を示す関数(流量特性)が図5に示すような直線的な関係にあるものとし、前記設計最大流量値と操作量が0%のときの流量値0とを用いて関数を求め、この関数を流量換算部83内の記憶部に予め登録しておけばよい。
【0016】
バルブ8の流量センサ82は、流路を通過する冷温水の流量(バルブ通過流量)を計測し、開度調節部84は、流量センサ82によって計測されたバルブ通過流量を示す流量信号を受信する(ステップS12)。そして、開度調節部84は、流量センサ82によって計測されたバルブ通過流量の値が流量換算部83によって換算された流量値と一致するように弁体81の開度を調節する(ステップS13)。
以上のような図4に示す処理が、空調制御システムが動作停止するまで(図4ステップS14においてYES)、繰り返し行われる。
【0017】
こうして、本実施の形態では、バルブ8が空調制御装置10の操作量出力に見合った流量を演算し、計測したバルブ通過流量が演算した流量と一致するように弁体81の開度を自身で調節することにより、空調機5を流れる冷温水の流量を適切に調節することができる。これにより、本実施の形態では、過大な流量による制御のハンチングと熱源機1の運転効率の悪化を劇的に改善することができ、より良い空調制御を行うことができる。
【0018】
なお、本実施の形態で説明した空調制御装置10は、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。同様に、バルブ8の流量換算部83と開度調節部84とは、コンピュータとプログラムによって実現することができる。これらのコンピュータのCPUは、それぞれの記憶装置に格納されたプログラムに従って、実施の形態で説明した処理を実行する。
【0019】
また、本実施の形態では、流量制御バルブの適用例として空調制御システムを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、流量制御バルブを用いて流体の流量を制御するシステムであれば同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、流量制御バルブに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の空調制御システムにおけるバルブの構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の空調制御システムにおける空調制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1の空調制御システムにおけるバルブの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において操作量と流量との関係の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…熱源機、2…ポンプ、3…往ヘッダ、4…往水管路、5…空調機、6…還水管路、7…還ヘッダ、8…バルブ、9…給気温度センサ、10…空調制御装置、11…コイル、12…送風機、80…弁箱、81…弁体、82…流量センサ、83…流量換算部、84…開度調節部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流路を開閉する弁体を備え、この弁体の開度に応じて前記流体の流量を調節可能な流量制御バルブであって、
制御装置から出力された操作量を流量に換算する流量換算手段と、
前記流路を通過する流体の流量を計測する流量計測手段と、
この流量計測手段によって計測された通過流量が前記流量換算手段によって換算された流量と一致するように前記弁体の開度を調節する開度調節手段とを備えることを特徴とする流量制御バルブ。
【請求項2】
流体が流入する流路を開閉する弁体を備えた流量制御バルブにおいて、前記弁体の開度を調節することにより前記流体の流量を制御する流量制御方法であって、
制御装置から出力された操作量を流量に換算する流量換算手順と、
前記流路を通過する流体の流量を計測する流量計測手順と、
この流量計測手順によって計測された通過流量が前記流量換算手順によって換算された流量と一致するように前記弁体の開度を調節する開度調節手順とを備えることを特徴とする流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−31866(P2009−31866A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192428(P2007−192428)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】