説明

流量計及び流量計測方法

【課題】標準流量等を安定して正確に計測可能な流量計及び流量計測方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る超音波流量計10は、第1と第2の超音波送受波器14,15を用いて、計測管13内の気体の流速Vと温度T1とを計測し、静圧計17を用いて計測管13内の気体の静圧P1を計測している。そして、流速Vから気体の動圧P2と、静圧P1と動圧P2の和で全圧P3を演算している。そして、これら計測又は演算した実際の流速V、実際の温度T1及び実際の全圧P3と、ボイルシャルルの法則に基づく関係式とを使用して、実際の流速Vを、予め定めた標準温度T0及び標準全圧P0で計測管13内の単位面積に流れる気体の標準単位流量Qxと、その標準単位流量Qxに計測管13の内側断面積を乗じた標準流量Qとを演算して出力している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測管内を任意の温度及び圧力で流れる気体の流速を、ボイル・シャルルの法則に基づく関係式を使用して、予め定めた標準温度及び標準圧力で流れる標準流量等に変換して計測する流量計及び流量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流量計として、温度センサー及び圧力センサーにて検出した温度及び圧力と流量計本体にて計測した流速とをボイル・シャルルの法則に基づく関係式に代入して標準流量に演算するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187506号公報(段落[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の流量計を、例えば都市ガスの配管網の複数位置に取り付けると、ガス供給元で検出した標準流量と配管網の末端部分の複数位置で検出した標準流量との総和にずれが生じる場合があった。即ち、上述した従来の流量計では、標準流量が正確に計測できていなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、標準流量等を安定して正確に計測可能な流量計及び流量計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の流量計の計測誤差を解析したところ流速が増すに従って計測誤差が大きくなることが判明した。この点から、流速の影響を考慮した演算を行って標準流量等を計測する以下の発明を完成するに至った。
【0007】
請求項1の発明は、計測管内の気体の流速を検出可能な流速検出部と、計測管内の気体の静圧を検出可能な静圧検出部と、流速から気体の動圧を演算する動圧演算部と、静圧及び動圧の和で全圧を演算する全圧演算部と、計測管内の気体の温度を検出可能な温度検出部と、流速検出部、温度検出部及び全圧演算部にて検出した実際の流速、実際の温度及び実際の全圧と、ボイル・シャルルの法則に基づく関係式とを使用して、実際の流速を、予め定めた標準温度及び標準全圧で計測管内の単位面積に流れる気体の標準単位流量に変換するか、又は、標準単位流量に計測管の内側断面積を乗じた標準流量に変換する標準変換部とを備えたことを特徴とする流量計である。
【0008】
請求項2の発明は、標準温度をT0、標準全圧をP0、標準温度T0及び標準全圧P0下の気体の密度である標準密度をρ0、実際の温度をT1、静圧をP1、動圧をP2、実際の温度T1及び実際の全圧下の気体の密度である計測時密度をρ1、実際の流速をVとすると、動圧演算部は、下記式(1),(2)に基づいて計測時密度ρ1及び動圧P2を演算することを特徴とする請求項1に記載の流量計である。
【0009】
【数1】

【0010】
請求項3の発明は、流速検出部は、計測管の軸方向の異なる2位置に配置され、双方向で超音波を送受波可能な第1と第2の超音波送受波器と、第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測する伝播時間計測部とを備えて、第1と第2の超音波送受波器の間の計測管の軸方向における距離をL、第1伝播時間をt1、第2伝播時間をt2とすると、下記式(3)に基づいて流速Vを演算するように構成されると共に、超音波の音速をCとすると、下記式(4)に基づいて超音波の音速Cを演算する音速演算部と、音速Cに基づいて計測管内を流れる気体の種類に応じた標準密度を特定する標準密度特定部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の流量計である。
【0011】
【数2】

【0012】
請求項4の発明は、流速検出部は、計測管の軸方向の異なる2位置に配置され、双方向で超音波を送受波可能な第1と第2の超音波送受波器と、第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測する伝播時間計測部とを備え、第1と第2の超音波送受波器の間の計測管の軸方向における距離をL、第1伝播時間をt1、第2伝播時間をt2、実際の流速をVとすると、上記式(3)に基づいて流速Vを演算するように構成されると共に、超音波の音速をCとすると、上記式(4)に基づいて超音波の音速Cを演算する音速演算部と、気体の温度とその温度に応じた音速とを対応させた音速・温度データテーブルを備え、温度計測部は、音速演算部にて演算した音速Cに基づいて音速・温度データテーブルから実際の温度を特定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の流量計である。
【0013】
請求項5の発明は、計測管内の気体の流速、静圧、動圧及び温度を検出し、それら検出した実際の静圧と実際の動圧との和である実際の全圧と実際の流速と実際の温度とボイル・シャルルの法則に基づく関係式とを使用して、実際の流速を、予め定めた標準温度及び標準全圧で計測管内の単位面積に流れる気体の標準単位流量に変換するか、又は、標準単位流量に計測管の内側断面積を乗じた標準流量に変換して計測することを特徴とする流量計測方法である。
【0014】
請求項6の発明は、標準温度をT0、標準全圧をP0、標準温度T0及び標準全圧P0下の気体の密度である標準密度をρ0、実際の温度をT1、静圧をP1、動圧をP2、実際の全圧をP3、実際の温度T1及び実際の全圧P3下の気体の密度である計測時密度をρ1、実際の流速をVとすると、上記式(1),(2)に基づいて計測時密度ρ1及び動圧P2を演算することを特徴とする請求項5に記載の流量計測方法である。
【0015】
請求項7の発明は、計測管の軸方向の異なる2位置に第1と第2の超音波送受波器を配置して、第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測し、第1と第2の超音波送受波器の間の計測管の軸方向における距離をL、第1伝播時間をt1、第2伝播時間をt2、超音波の音速をCとすると、上記式(3)に基づいて流速Vを演算すると共に、上記式(4)に基づいて超音波の音速Cを演算し、音速Cに基づいて計測管内を流れる気体の種類に応じた標準密度を特定することを特徴とする請求項6に記載の流量計測方法である。
【0016】
請求項8の発明は、計測管の軸方向の異なる2位置に第1と第2の超音波送受波器を配置して、第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測し、第1と第2の超音波送受波器の間の計測管の軸方向における距離をL、第1伝播時間をt1、第2伝播時間をt2、実際の流速をV、超音波の音速をCとすると、上記式(3)に基づいて流速Vを演算すると共に、上記式(4)に基づいて超音波の音速Cを演算し、気体の温度とその温度に応じた音速とを対応させた音速・温度データテーブルを備えておき、音速演算部にて演算した音速Cに基づいて音速・温度データテーブルから実際の温度を特定することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1の請求項に記載の流量計測方法である。
【0017】
なお、本発明の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲における「温度」は、摂氏と表記するか「℃」を付記しない限り、「絶対温度」を意味するものとする。
【発明の効果】
【0018】
[請求項1及び5の発明]
請求項1及び5の発明によれば、流速の大小によって変化する動圧と静圧との和である全圧を使用して標準単位流量又は標準流量を演算しているので、流速の大小にかかわらず、標準単位流量及び標準流量を安定して正確に計測することができる。また、請求項1の発明に係る流量計では、流速を利用して動圧を演算するので、動圧を求めるために動圧計測用のピトー管のような機器を別途設けた構成に比べて、流量計がコンパクトになる。
【0019】
[請求項2及び6の発明]
請求項2及び6の発明では、動圧の演算において、上記式(1)の通り全圧を使用して気体の計測時密度ρ1を演算するので、計測時密度ρ1の精度も高くなり、その計測時密度ρ1を使用して上記式(2)の通り動圧を演算するので、正確に動圧を演算することができる。
【0020】
[請求項3及び7の発明]
請求項3及び7の発明では、流速を検出するための第1と第2の超音波送受波器を利用して超音波の音速を演算し、その音速の演算結果と、計測管を通過し得る気体の種類に応じた音速と、気体の種類に応じた標準密度とを対応させた音速・密度データテーブルとから標準密度を決定することができるので、計測管に異なる種類の気体が流れ得る場合も、標準単位流量及び標準流量を安定して正確に計測することができる。
【0021】
[請求項4及び8の発明]
請求項4及び8の発明では、流速を検出するための第1と第2の超音波送受波器を利用して超音波の音速を演算し、その音速の演算結果と、計測管を通過し得る気体の温度とその温度に応じた音速とを対応させた音速・温度データテーブルとから実際の温度を特定するので、温度計を別途設けた構成に比べて、流量計がコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波流量計のブロック図
【図2】コントローラのブロック図
【図3】音速と温度の関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明を超音波流量計に適用した実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の超音波流量計10は、計測本体部11とコントローラ20とからなる。計測本体部11は、例えば、ガス管12の途中に取り付けられる円筒状の計測管13を有し、その計測管13の内側面に第1と第2の超音波送受波器14,15を備えている。それら第1と第2の超音波送受波器14,15は、計測管13の中心軸に対して斜めに交差する直線上に配置されている。なお、本実施形態の超音波流量計10が接続されるガス管12には、空気、都市ガス、LPガスの何れかが流れるようになっている。
【0024】
計測管13には、その内側の静圧を検出するための静圧計17が一体に設けられている。具体的には、計測管13の軸方向における第1と第2の超音波送受波器14,15の間の中央位置から、軸方向と直交する側方に向けて分岐路16が延ばされ、分岐路16の末端に静圧計17が接続されている。また、静圧計17は、計測管13内の静圧に応じて変形する例えば図示しないダイヤフラムを内蔵し、そのダイヤフラムの変形量を電気信号に変えて出力する。
【0025】
コントローラ20には、送受波制御回路21と静圧検出回路25と信号処理部30とが備えられている。静圧検出回路25は、静圧計17が出力した電気信号を静圧の検出値に変換して出力する。なお、本実施形態では、静圧計17と静圧検出回路25とから本発明に係る「静圧検出部」が構成されている。
【0026】
送受波制御回路21は、本発明の「伝播時間計測部」に相当し、所定周期でパルスを出力する発振回路(図示せず)と、第1と第2の超音波送受波器14,15に超音波を出力させる送波回路(図示せず)と、第1と第2の超音波送受波器14,15が超音波を受信したことを検出する受波回路(図示せず)とを備えている。そして、第1超音波送受波器14を送波回路に接続する一方、第2超音波送受波器15を受波回路に接続にして、第1超音波送受波器14に超音波を出力させてから、その超音波を第2超音波送受波器15が受信する迄の間に発振回路が出力したパルス数を超音波の第1伝播時間として計測すると共に、第1超音波送受波器14を受波回路に接続する一方、第2超音波送受波器15を送波回路に接続した状態に切り替えて、第2超音波送受波器15に超音波を出力させてから、その超音波を第1超音波送受波器14が受信する迄の間に発振回路が出力したパルス数を超音波の第2伝播時間として計測する。
【0027】
信号処理部30には、CPU21A、ROM21B、RAM21Cが備えられ、ROM21Bに記憶された図示しないデータ処理プログラムを実行することで、信号処理部30が図2のブロック図に示した制御系として機能する。
【0028】
図2の制御系のうち符号31で示した周波数和演算部は、送受波制御回路21で計測した第1伝播時間の逆数と、第2伝播時間の逆数との和を演算し、符号32で示した周波数差演算部は、第1伝播時間の逆数から第2伝播時間の逆数を減算した値を演算する構成になっている。ここで、第1と第2の超音波送受波器14,15の間の計測管13の軸方向(即ち、気体が流れる方向)における距離をL、第1伝播時間をt1、第2伝播時間をt2、計測管13内を流れる気体の実際の流速をV、超音波の音速をCとし、第1超音波送受波器14が第2超音波送受波器15より上流側に配置されているとすると、下記式(5),(6)の等式が成立する。
【0029】
【数3】

【0030】
従って、周波数和演算部31は、第1と第2の伝播時間の逆数の和を演算することで、上記式(5)に示すように音速Cの代用値として(2C/L)を演算している。即ち、周波数和演算部31は、定数(2/L)を乗じた実質的な音速Cxを演算している。また、周波数差演算部32は、第1と第2の伝播時間の逆数の差を演算することで、上記式(6)に示すように、流速Vの代用値として(2V/L)を演算している。即ち、周波数差演算部32は、定数(2/L)を乗じた実質的な流速Vxを演算している。
【0031】
図2の制御系のうち符号33で示した流速演算部は、周波数差演算部32の演算結果にL/2を乗じて代用値ではない真の流速Vを演算する。なお、本実施形態では、これら周波数差演算部32及び流速演算部33と、前述した送受波制御回路21と第1と第2の超音波送受波器14,15とから、本発明に係る「流速検出部」が構成されている。
【0032】
図2の制御系のうち符号34で示したガス種特定部は、周波数和演算部31が演算した実質的な音速Cxに基づいて、計測管13を流れる気体が、空気、都市ガス、LPガスの何れであるかを特定する。ここで、超音波が気体を伝播する際の音速は、その気体の種類によって異なると共に温度によっても異なる。また、本実施形態では、ガス管12を流れる気体の温度が、低くても253.1[K](−20[℃])以上であり、高くても333.1[K](60[℃])以下になっている。さらには、図3には、−20〜60[℃]の温度に対する音速の変化が、空気、都市ガス、LPガス毎に示されている。同図に示すように、253.1〜333.1[K](−20〜60[℃])の範囲では、空気、都市ガス、LPガスの間で音速の値が同一になることはない。そこで、ガス種特定部34は、図3に示した特性に基づいて、第1の下限判定値及び上限判定値と、第2の下限判定値及び上限判定値と、又は、第3の下限判定値及び上限判定値とが設定されていて、実質的な音速Cxが、上記第1〜第3の下限判定値及び上限判定値のうち何れかの下限判定値及び上限判定値の間に収まっているかに基づいて、計測管13を流れる気体が、空気、都市ガス、LPガスの何れであるかを特定するようになっている。
【0033】
図2の制御系のうち符号35で示した温度特定部は、ガス種特定部34から計測管13を流れる気体のガス種の情報を取得すると共に、周波数和演算部31から実質的な音速Cxの演算値を取得し、それらに基づいて気体の温度を特定する。具体的には、コントローラ20のROM21B(図1参照)には、空気の温度とその温度に応じた実質的な音速Cxとを対応させた第1の音速・温度データテーブル41と、都市ガスの温度とその温度に応じた実質的な音速Cxとを対応させた第2の音速・温度データテーブル42と、LPガスの温度とその温度に応じた実質的な音速Cxとを対応させた第3の音速・温度データテーブル43とが記憶されている。そして、温度特定部35は、ガス種の情報に基づき、計測管13を流れる気体の種類に応じた第1〜第3の何れかの音速・温度データテーブル41,42,43にアクセスし、実質的な音速Cxに基づいて音速・温度データテーブルから気体の温度を特定する。
【0034】
図2の制御系のうち符号36で示した標準密度特定部は、温度特定部35から気体のガス種の情報を取得し、その気体のガス種の情報に基づいて、予め設定された標準温度及び標準全圧下における気体の密度としての標準密度を特定する。ここで、本実施形態の超音波流量計10では、標準温度として273.1[K](摂氏0[℃])、標準全圧として101.3[kPa](1気圧)が予め設定され、それら標準温度273.1[K]、標準全圧101.3[kPa]のデータが前記した図示しないデータ処理プログラム中に組み込まれてROM21B(図1参照)に記憶されている。また、ROM21Bには、ガス種の情報と空気、都市ガス、LPガスの標準密度とを対応させた密度データベース44が記憶されている。そして、標準密度特定部36は、気体のガス種の情報に基づいてROM21Bの密度データベース44から計測管13内を流れる気体の標準密度を取得する。
【0035】
また、標準密度特定部36は、流速演算部33から気体の流速の演算結果を取得すると共に、静圧検出回路25から静圧の検出結果を取得し、下記式(1),(2)を利用して、計測管13内の実際の温度及び実際の全圧下の気体の密度である計測時密度を演算する。即ち、標準温度をT0、標準全圧をP0、標準密度をρ0、実際の温度をT1、静圧をP1、動圧をP2、計測時密度をρ1、実際の流速をVとすると、以下の式(1),(2)が成立する。
【0036】
【数4】

【0037】
具体的には、標準密度特定部36は、まず、式(1)においてP2=0として計測時密度ρ1を演算する。次に、計測時密度ρ1と式(2)から動圧P2を演算し、得られた動圧P2と式(1)から再び計測時密度ρ1を演算する。このように式(1),(2)を繰り返し用いて、計測時密度ρ1を演算する。
【0038】
なお、式(1),(2)を変形すると下記式(7)になる。標準密度特定部36はこの式(7)から計測時密度ρ1を演算してもよい。
【0039】
【数5】

【0040】
また、標準密度特定部36は、式(1)においてP2=0として、即ち、式(1),(2)の繰り返し用いないで計測時密度ρ1を簡易的に演算してもよい。
【0041】
図2の制御系のうち符号37で示した動圧演算部は、標準密度特定部36から計測時密度ρ1を取得すると共に、流速演算部33から流速Vを取得して、上記式(2)から気体の動圧P2を演算する。
【0042】
図2の制御系のうち符号38で示した全圧演算部は、動圧演算部37から動圧P2を取得すると共に、静圧検出回路25から静圧P1を取得して、静圧P1及び動圧P2の和で全圧P3(=P1+P2)を演算する。
【0043】
図2の制御系のうち符号39で示した標準単位流量演算部は、全圧演算部38から全圧P3を取得し、流速演算部33から流速Vを取得し、温度特定部35から温度T1の情報を取得して、ボイル・シャルルの法則に基づいた下記式(8)から標準単位流量Qxを演算する。ここで、標準単位流量Qxは、任意の温度及び圧力で流れる気体の実際の流速を、前記した標準温度及び標準全圧で、計測管13内の単位面積に流れる気体の流量である。つまり、標準単位流量Qxは、標準温度及び標準全圧下で計測管13内を流れる気体の流速でもある。
【0044】
【数6】

【0045】
図2の制御系のうち符号40で示した標準流量演算部は、標準単位流量演算部39から標準単位流量Qxを取得し、その標準単位流量Qxに計測管13の内側断面積を乗じて、標準流量Qを演算する。そして、これら標準単位流量Qx及び標準流量Qが信号処理部30から図1に示したコントローラ20の出力回路22に付与され、その出力回路22から超音波流量計10外に出力される。
【0046】
上記したように本実施形態の超音波流量計10では、気体の流速Vの大小によって変化する動圧P2と静圧P1との和である全圧を使用して標準単位流量Qx及び標準流量Qを演算しているので、流速Vの大小にかかわらず、標準単位流量Qx及び標準流量Qを安定して正確に計測することができる。しかも、第1と第2の超音波送受波器14,15が計測管13全体を横切るように超音波を送受波して流速Vを検出しているので、計測管13全体の平均した流速Vが検出され、この点においても、標準単位流量Qx及び標準流量Qを正確に計測することができる。さらには、全圧P3を使用して気体の計測時密度ρ1を演算するので計測時密度ρ1の精度も高くなり、その計測時密度ρ1を使用して動圧P2を演算するので、この点においても高い精度で動圧P2を演算することができる。
【0047】
また、流速Vを検出するための第1と第2の超音波送受波器14,15を利用して超音波の音速Cを演算し、その音速Cから計測管13内を流れる気体の種類を特定するので、計測管13に異なる種類の気体が流れ得る場合も、標準単位流量Qx及び標準流量Qを安定して正確に計測することができる。また、流速Vを利用して動圧P2を演算するので、動圧P2を求めるために例えば動圧計測用のピトー管のような機器を別途設けた構成に比べて、超音波流量計10がコンパクトになる。さらには、音速Cの演算結果から実際の温度T1を特定するので、温度計を別途設けた構成に比べて超音波流量計10がコンパクトになる。
【0048】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)前記実施形態では、音速Cの演算結果から実際の温度T1を特定していたが、実際の温度T1を温度計により計測してもよい。このような構成であっても、流速Vの大小にかかわらず、標準単位流量Qx及び標準流量Qを安定して計測することができる。
【0050】
(2)前記実施形態において、実質的な音速Cxが第1〜3の下限判定値及び上限判定値の何れの下限判定値及び上限判定値の間にも属さない場合にアラームなどの警報を発する警報装置を備えた構成としてもよい。これにより、空気、都市ガス、LPガス以外のガス混入検知を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 超音波流量計
14 第1超音波送受波器
15 第2超音波送受波器
17 静圧計
21 送受波制御回路
25 静圧検出回路
33 流速演算部
34 ガス種特定部
35 温度特定部
36 標準密度特定部
37 動圧演算部
38 全圧演算部
39 標準単位流量演算部
40 標準流量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測管内の気体の流速を検出可能な流速検出部と、
前記計測管内の気体の静圧を検出可能な静圧検出部と、
前記流速から前記気体の動圧を演算する動圧演算部と、
前記静圧及び前記動圧の和で全圧を演算する全圧演算部と、
前記計測管内の気体の温度を検出可能な温度検出部と、
前記流速検出部、前記温度検出部及び前記全圧演算部にて検出した実際の流速、実際の温度及び実際の全圧と、ボイル・シャルルの法則に基づく関係式とを使用して、前記実際の流速を、予め定めた標準温度及び標準全圧で前記計測管内の単位面積に流れる気体の標準単位流量に変換するか、又は、前記標準単位流量に前記計測管の内側断面積を乗じた標準流量に変換する標準変換部とを備えたことを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記標準温度をT0、前記標準全圧をP0、前記標準温度T0及び前記標準全圧P0下の気体の密度である標準密度をρ0、前記実際の温度をT1、前記静圧をP1、前記動圧をP2、前記実際の温度T1及び前記実際の全圧下の気体の密度である計測時密度をρ1、前記実際の流速をVとすると、
前記動圧演算部は、
【数1】

、の式に基づいて前記計測時密度ρ1及び前記動圧P2を演算することを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記流速検出部は、前記計測管の軸方向の異なる2位置に配置され、双方向で超音波を送受波可能な第1と第2の超音波送受波器と、前記第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と前記第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測する伝播時間計測部とを備えて、
前記第1と第2の超音波送受波器の間の前記計測管の軸方向における距離をL、前記第1伝播時間をt1、前記第2伝播時間をt2とすると、
【数2】

、の式に基づいて前記流速Vを演算するように構成されると共に、前記超音波の音速をCとすると、
【数3】

、の式に基づいて前記超音波の音速Cを演算する音速演算部と、前記音速Cに基づいて前記計測管内を流れる気体の種類に応じた前記標準密度を特定する標準密度特定部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の流量計。
【請求項4】
前記流速検出部は、前記計測管の軸方向の異なる2位置に配置され、双方向で超音波を送受波可能な第1と第2の超音波送受波器と、前記第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と前記第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測する伝播時間計測部とを備え、
前記第1と第2の超音波送受波器の間の前記計測管の軸方向における距離をL、前記第1伝播時間をt1、前記第2伝播時間をt2、前記実際の流速をVとすると、

【数4】

、の式に基づいて前記流速Vを演算するように構成されると共に、前記超音波の音速をCとすると、
【数5】

、の式に基づいて前記超音波の音速Cを演算する音速演算部と、前記気体の温度とその温度に応じた音速とを対応させた音速・温度データテーブルを備え、
前記温度計測部は、前記音速演算部にて演算した音速Cに基づいて前記音速・温度データテーブルから前記実際の温度を特定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の流量計。
【請求項5】
計測管内の気体の流速、静圧、動圧及び温度を検出し、それら検出した実際の静圧と実際の動圧との和である実際の全圧と実際の流速と実際の温度とボイル・シャルルの法則に基づく関係式とを使用して、前記実際の流速を、予め定めた標準温度及び標準全圧で前記計測管内の単位面積に流れる気体の標準単位流量に変換するか、又は、前記標準単位流量に前記計測管の内側断面積を乗じた標準流量に変換して計測することを特徴とする流量計測方法。
【請求項6】
前記標準温度をT0、前記標準全圧をP0、前記標準温度T0及び前記標準全圧P0下の気体の密度である標準密度をρ0、前記実際の温度をT1、前記静圧をP1、前記動圧をP2、前記実際の温度T1及び前記実際の全圧下の気体の密度である計測時密度をρ1、前記実際の流速をVとすると、
【数6】

、の式に基づいて前記計測時密度ρ1及び前記動圧P2を演算することを特徴とする請求項5に記載の流量計測方法。
【請求項7】
前記計測管の軸方向の異なる2位置に第1と第2の超音波送受波器を配置して、前記第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と前記第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測し、
前記第1と第2の超音波送受波器の間の前記計測管の軸方向における距離をL、前記第1伝播時間をt1、前記第2伝播時間をt2、前記超音波の音速をCとすると、
【数7】

、の式に基づいて前記流速Vを演算すると共に、
【数8】

、の式に基づいて前記超音波の音速Cを演算し、前記音速に基づいて前記計測管内を流れる気体の種類に応じた前記標準密度を特定することを特徴とする請求項6に記載の流量計測方法。
【請求項8】
前記計測管の軸方向の異なる2位置に第1と第2の超音波送受波器を配置して、前記第1から第2の超音波送受波器への超音波の第1伝播時間と前記第2から第1の超音波送受波器への超音波の第2伝播時間とを計測し、
前記第1と第2の超音波送受波器の間の前記計測管の軸方向における距離をL、前記第1伝播時間をt1、前記第2伝播時間をt2、前記実際の流速をV、前記超音波の音速をCとすると、
【数9】

、の式に基づいて前記流速Vを演算すると共に、
【数10】

、の式に基づいて前記超音波の音速Cを演算し、前記気体の温度とその温度に応じた音速とを対応させた音速・温度データテーブルを備えておき、
前記音速演算部の演算結果に基づいて前記音速・温度データテーブルから前記実際の温度を特定することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1の請求項に記載の流量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−256075(P2010−256075A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103998(P2009−103998)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】