説明

流量計測装置、流量計測システムおよび流量計測装置用プログラム

【課題】流量計測装置におけるゼロ点補正をより正確なものとし、かつユーザーの流体の不正使用を抑制する。
【解決手段】流量計測装置としてのガスメータ装置100において、流路13に沿って計測部15の下流にバルブ14が配置される。また、ガスメータ装置100は、ガスの使用可能量に対応した度数を記憶したICカード300を読み取り可能なICカードリーダライタ装置300から度数を受信する。当該度数がゼロのときにおいて、ゼロでない流量を演算した場合、流量演算部27はユーザーに対し、表示部34またはブザー36によって警告を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスなどの流体の流量を測定する流量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体や液体の如き流体の流量や流速を測定する装置には多くの方式が知られている。特にエレクトロニクス技術の進歩により信頼性の高い超音波を利用する流速・流量測定装置の開発が目覚しい。そして超音波を利用した流速・流量測定装置は燃料ガスのメータ(ガスメータ)、工業用計測器、医療用の血流計、海洋や大気中の流速の測定など多方面にわたる活用分野がある。この超音波を利用する流速・流量測定装置には直接超音波を利用する場合のみならず、他の測定原理に基づく測定装置の検出部として間接的に利用する場合がある。
【0003】
また、超音波利用流速・流量測定装置に限らず流速・流量測定装置には流量センサ、抵抗値センサ、温度センサ、電圧センサなど多くのセンサが利用されている。そしてこれらの電気信号を発信するセンサは、外部の条件に影響されて感度が変化したりすることがある。そのため燃料ガスのメータ等に使用される流量測定装置は僅かな流量変化、例えば3リットル/時のような微小変化でもこれを測定することが要求されている。この様な微小変化を正確に把握することができる為には測定のゼロ点補正を行うことができる測定装置としなければならない。
【0004】
以上の観点から、特許文献1、特許文献2には、ゼロ点補正実行の是非を所定時間間隔で判断する技術、複数の流路毎に弁を設け、当該弁が閉止されている流路のゼロ値補正を行なう技術が提示されている。
【0005】
また、流量計測装置、特にガスメータの分野においては、ガスのユーザーから確実にガス料金を収受するためのプリペイドシステムが採用されている(特許文献3参照)。このシステムは、従来の検査、記録、請求という段取りのガス経営方法を改変し、ユーザー預金でガスを購入し自動計量を行い、有効的にガスの盗用、請求不当を防ぐシステムである。ガスを使用する場合、ユーザーはICカード(プリペイドカード)を持ち、ガス経営部門から一定量のガスを購入する。コンピューターガス経営端末は暗証コードによる方法で予約で購入したガスの容量に対応した度数をICカードに書き込む。ユーザーはこのカードをガスメータに挿入してガスを利用できる。予約で購入した度数が少なくなると、ガスメータは警報を鳴らしユーザーにガスの購入を知らせる。購入した度数が無くなると、メータは自動的にガスを遮断し、新たにガスの容量が残っているICカードが挿入された時点で流路を開放しガスの供給を行う。
【特許文献1】特開平8−271307号公報
【特許文献2】特表00−70312号公報
【特許文献3】特開平9−180053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼロ点補正を行なうに際し、流量計測装置内の圧力を安定させることは正確な補正を行なうためにも重要である。従って、弁を閉止した後の圧力をより安定化させる技術が求められている。
【0007】
また、プリペイドシステムを採用した流量計測装置においては、ICカードの度数がゼロとなった後でもユーザーが無理にバルブをこじ開けたり、バルブを改造したりするなどしてガスを不正使用する事態が後を絶たない。このような不正使用を防止するための技術も求められている。
【0008】
本発明はゼロ点補正を容易にかつ正確に実行することの可能な流量計測装置を提供する。また、本発明は流体の使用料金を確実に回収可能とする流量計測装置をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体が通過する流路と、前記流路内に配置され、前記流路を通過する流体の流速を計測する計測部と、前記流路に沿って前記計測部の下流に配置され、前記流路を開閉する開閉部と、前記計測部によって計測された流体の流速に基づき、流体の流量を演算する流量演算部と、前記開閉部によって前記流路が閉じられているときに、前記計測部のゼロ値を検出しゼロ値補正を行うゼロ点補正部と、を備える流量計測装置を提供する。
【0010】
上記構成においては、開閉部が、計測部の下流側に設けられているため、流量計測装置の内部が負圧になることが防止され得る。従って、当該流量計測装置においては、ゼロ点補正をより正確に実行することが可能となる。
【0011】
また、流量計測装置には、流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置から、前記度数を受信する送受信部と、当該度数がゼロのときにおいて、前記流量演算部がゼロでない流量を演算した場合、ユーザーに対し所定の通知を行なう通知部を更に設けてもよい。
【0012】
上記構成において、度数がゼロとなった後にユーザーが流体を不正使用する場合、ユーザーに所定の通知を行なう。このような動作により、ユーザーの不正使用を抑制することが可能となる。
【0013】
また、流量計測装置には、流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置から、前記度数を受信する送受信部と、当該度数が所定の値になったときにおいて、ユーザーに対し所定の通知を行なう通知部を更に設けてもよい。所定の値としてはゼロでも良い。
【0014】
上記構成においては、所定の値がゼロでない場合、ユーザーが、度数がゼロになる前に度数を記憶した記憶媒体を購入でき、使用途中でガスの供給が停止されるという不具合を防止することが可能となる。所定の値がゼロである場合、もはやガス供給が不能であることをユーザーに通知することができる。
【0015】
さらに、前記流路と、前記計測部と、前記開閉部を複数組備え、前記開閉部によって閉止される流路に対応する開閉部を選択する開閉駆動部を更に設け、前記ゼロ点補正部が、前記開閉駆動部によって選択された開閉部の流路が閉じられているときに、当該流路に対応する計測部のゼロ値を検出しゼロ値補正を行なうようにしてもよい。
【0016】
上記構成においては、流体の流れが途切れない装置においても、流体の流量の計測を行うことが可能になる。
【0017】
また、本発明は、流体の流量を計測する流量計測装置と、流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置と、を備え、前記度数がゼロのときにおいて、前記流量計測装置がゼロでない流量を計測した場合、前記流量計測装置がユーザーに対し所定の通知を行なう流量計測システムを提供する。
【0018】
上記構成においては、度数がゼロとなった後にユーザーが流体を不正使用する場合、ユーザーに所定の通知を行なう。このような動作により、ユーザーの不正使用を抑制することが可能となる。
【0019】
前記記憶媒体は、例えばユーザーが予め購入したプリペイドカードである。この場合、本発明は、広く利用されている流体のプリペイドシステムに適用されることとなる。
【0020】
さらに本発明は、流体の流量を計測する流量計測装置を作動するプログラムであって、流体の使用可能量に対応した度数を読み取る手順と、流体の流量を計測する手順と、読み取られた度数がゼロのときにおいてゼロでない流量が計測された場合、ユーザーに対し所定の通知を行なう手順と、を前記流量計測装置に実行させるプログラムをも提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、流量計測装置におけるゼロ点補正をより正確にすることが可能になるとともに、ユーザーの流体の不正使用を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の流量計測装置の実施形態であるガスメータ装置及び当該ガスメータ装置を含むガス料金プリペイドシステムの概要を示すブロック図である。ガス料金プリペイドシステム(流量計測システム)は、ガスメータ装置100と、ICカード(プリペイドカード)300を抜き差し可能なICカードリーダライタ(R/W)装置(記憶媒体読取装置)200とを含む。
【0023】
ガスメータ装置100は、図示したように各家庭のガス供給管の入り口部分に設置され、家庭内のガス器具において使用される被計測流体たるガスの流量、使用量を計測するものである。ICカードリーダライタ(R/W)装置200は、ガスメータ装置100と有線又は無線通信によって接続され、ユーザーが予め購入したICカード300からその度数を読み取ると共に、ガスメータ装置100からガスの使用量を読み取り、当該使用量に相当する度数をICカード300から差し引くものである。
【0024】
図2に示されるように、ガスメータ装置100は、流路13と、バルブ14と、計測部15と、ゼロ点補正部40と、流量演算部27と、流量積算部30と、送受信部32と、通知部38と、開閉駆動部45とを備える。
【0025】
流路13は、各家庭のガス供給管に接続された流入路1と、家庭内のガス器具に接続された流出路2との間に設けられている。そして、流路13の途中には、流路13を流れるガスの速度(流速)を計測する計測部15と、流路13を開閉する開閉部を構成するバルブ14とが接続されている。バルブ14は電磁弁やモータ弁等通常の弁装置によって構成されうる。
【0026】
ゼロ点補正部40は、バルブ14によって流路13が閉じられているときに、計測部15のゼロ値を検出しゼロ値補正を行う。流量演算部27は、計測部15によって計測されたガスの流速と、流路13の断面積に基づき、ガスの流量を演算する。流量積算部30は、所定の期間におけるガスの流量の積算値を算出し、蓄積する。送受信部32は、ICカードリーダライタ装置200との間で、ケーブル3を介して積算流量等の情報の送受信を行なう。
【0027】
通知部38は表示部34とブザー36を含む。表示部34は液晶表示装置等により構成され、種々の情報を視覚可能に表示する。ブザー36は異常使用時に所定の警告音を発する。表示部34、ブザー36両方とも、後述するように、ICカード300の度数がゼロのときにおいて、流量演算部27がゼロでない流量を演算したとき、ユーザーに対し所定の通知(警告)を行なう。開閉駆動部45はバルブ14を駆動し、流路13を開閉する。特に開閉駆動部45は、ゼロ点補正時のタイミングにおいて、バルブ14を閉じ、流路13中のガスの流れを遮断する。
【0028】
図3は、ガスメータ装置100の計測部15の一部の構成を示す。図3の白抜矢印Aは、流路13においてガス(流体)が流れる方向を示す。計測部15は、流路13に設けられた第1振動子21と第2振動子22とを含む。第1振動子21と第2振動子22とは、流路13を流れる流体を介して相対するように配置されている。第1振動子21および第2振動子22は、超音波信号を送受信する。
【0029】
図4は、図2、図3に示される計測部15および計測部15に接続されたガスメータ装置100の一部の構成を示すブロック図である。計測部15は、第1振動子21と第2振動子22とに周期的な駆動信号を送出する送信部23と、受信された超音波信号を増幅する増幅部24と、増幅部24から出力される信号と基準信号とを比較する比較部29と、比較部29から出力される信号を受け取り、基準信号以上の信号が検出されたとき繰り返し回数を設定し、その設定された繰り返し回数だけ第1振動子21と第2振動子22との間で超音波伝達を繰り返す繰り返し部46と、その繰り返し時に超音波伝達を遅延させる遅延部10と、計時部25とを含む。
【0030】
基準信号以上の信号が増幅部24から出力されたことが比較部29によって検出された場合には、比較部29は、受信信号が到達したことを示す信号を繰り返し部46に出力する。繰り返し部46は、比較部29から出力された信号を受け取り、この信号を受けた回数が予め設定された繰り返し回数に達したか否かを判定する。この信号を受けた回数が予め設定された繰り返し回数に達した場合には、繰り返し部46は、信号を一定時間だけ遅延させる遅延部10を介して、送信部23から超音波信号が送信されるように送信手段23を制御する。このようにして、送信部23から超音波信号が繰り返し送信される。
【0031】
切り替え部26は、第1振動子21および第2振動子22の送受信を切り替える。すなわち、上流側の第1振動子21が超音波信号を送信し、下流側の第2振動子22がその超音波信号を受信するという超音波伝達が設定された回数だけ繰り返された後、下流側の第2振動子22が超音波信号を送信し、上流側の第1振動子21がその超音波信号を受信するという超音波伝達が設定された回数だけ繰り返される。
【0032】
計時部25は、第1振動子21から第2振動子22への超音波伝達を設定された回数だけ繰り返すのに要した時間(第1伝達時間)と、第2振動子22から第1振動子21への超音波伝達を設定された回数だけ繰り返すのに要した時間(第2伝達時間)とを求め、二つの時間の時間差を求める。計時部25は、例えば、タイマカウンタである。
【0033】
流量演算部27は、計時部25が求めた流体の速度と、流路13の断面積に基づいて流量を求める。このように計測部に超音波を用いることにより流体の流れを乱すことなく流量を測定することができる。
【0034】
バルブ14が閉止している場合には、流路13には流体が流れていない。この場合、計測部15によって計測される流量(流速)は0のはずである。しかし、温度などの外部からの影響や流量演算部27の温度変化、経年変化等によって計測部15のゼロ点がずれていることもある。この場合には、計測部15によって計測される流量は必ずしも0にはならない。
【0035】
例えば、第1振動子21、第2振動子22は温度などの外部からの影響や経年変化などでオフセットが生じてしまうことがある。このため流体が流れていなくても受信信号によっては流れていると誤って検出してしまう場合も想定される。このような現象を防止するためにゼロ点補正部40が流量の無い時に計測部15のゼロ点を補正しておく。この操作を行なうことにより次にバルブ14が開いた時に計測部15ではすぐに計測操作を行なうことが可能となる。
【0036】
ゼロ点補正部40は、流量演算部27の値に基づいてバルブ14が閉止している流路13に設けられている計測部15のゼロ値を検出しゼロ値補正を行う。このセロ値補正は、例えば、バルブ14を閉止した状態において計測部15によって計測された値を基本値(流量ゼロの場合の値、すなわちゼロ値)とし、バルブ14が次に開いた時に計測部15によって計測された値に対してその基本値を増減することによって達成される。
【0037】
この際、ゼロ点が大きくずれてしまっている場合等は表示部34、ブザー36を用いてユーザーにその異常を知らせることも有効である。さらに送受信部32やその他外部機器との接続部を利用して外部の管理者に報知するとさらに異常状態の復旧を早く行うことが可能になり有用である。
【0038】
ゼロ点補正部40は、例えば、記憶部(図示せず)と増減部(図示せず)とを含む。バルブ14を閉止した状態において計測部15によって計測された値が基本値(流量ゼロの場合の値、すなわち、ゼロ値)として記憶部に記憶される。増減部は、バルブ14が次に開き、流路13に流体が実際に流れた時に計測部15によって計測された値に対して記憶部に記憶された基本値を増減する。
【0039】
例えば、バルブ14を閉止した状態において計測部15によって計測された値(ゼロ値)が5リットルであり、かつ、バルブ14が次に開成し、流路13に流体が実際に流れた時に計測部15によって計測された値が15リットルである場合には、増減部は、15−5=10という減算を実行する。また、例えば、バルブ14を閉止した状態において計測部15によって計測された値(ゼロ値)が−5リットルであり、かつ、バルブ14が次に開成し、流路13に流体が実際に流れた時に計測部15によって計測された値が15リットルである場合には、増減部は、15−(−5)=15+5=20という加算を実行する。
【0040】
このようにして、ゼロ点補正部40は、計測部15のゼロ値を検出し、検出されたゼロ値に基づいて計測部15によって計測された値を補正するゼロ値補正を行う。
【0041】
ところで、ゼロ点補正を行なうに際し、ガスメータ装置100内の圧力を安定化させることは重要であり、バルブ14を閉止した後の圧力はなるべく安定していることが好ましい。
【0042】
しかしながら、ガスメータ装置100内においてバルブ14が上流側にある場合、残りの下流の空間部分に存在するガスは使用されるため、ガスメータ装置100の内部は全体として負圧になりやすい。このような状況下ではガスメータ装置100内部の圧力を安定化させることは難しくなる。そして、ガスの流量(流速)を計測する計測部15がバルブ14の下流にあると、ゼロ点補正を正確に実行することは難しくなる。
【0043】
しかしながら、本発明においては、実施形態に示すようにバルブ14が、計測部15の下流側に設けられている。そのため、バルブ14が閉じられても、計測部15においてガスが多少なりとも残留することとなり、ガスメータ装置100の内部が負圧になることが防止され得る。従って、本実施形態のガスメータ装置においては、ゼロ点補正をより正確に実行することが可能となる。
【0044】
図5は、ICカードリーダライタ(R/W)装置200のブロック図を示す。ICカードリーダライタ装置200は、信号送受信部209と、度数読み取り部210と、度数削減部211と、流量遮断判定部212と、ICカード挿入部213と、制御部214とを含む。
【0045】
信号送受信部209は、ガスメータ装置100の送受信部32と信号の送受信を行う。度数読み取り部210は、ICカード(記憶媒体)300に書き込まれている度数を読み取り、度数削減部211は、ガスの使用量に応じてICカードの度数を削減する。流量遮断判定部212は、流量の遮断または開放の判定を行う。ICカード挿入部213は、ICカード300が抜き差しされる部分である。制御部214はICカードリーダライタ装置200の全体制御を行なう。
【0046】
次にガスのユーザーによる、ICカード300、ICカードリーダライタ装置200の使用態様を説明する。
【0047】
まず、ガスのユーザーはガス会社のショールーム、その他の場所で販売されているICカード300を購入する。ICカード300は、予めガスの使用量に対応した度数が書き込まれた記憶媒体であり、いわゆるプリペイドカードである。この度数はガスをどれだけ利用できるかを表すもので、ICカード300の購入金額によって書き込まれている度数の大きさが異なる。ICカード300を購入したユーザーが、ICカード300を自分の家にあるICカードリーダライタ装置200に挿入することによってガスの利用が可能となる。
【0048】
ユーザーがICカード300をICカード挿入部213に挿入すると、そのICカード300に書き込まれている度数を度数読み取り部210が読み取る。そして、その読み取られた度数の情報を、信号送受信部209がガスメータ装置100に送る。ガスメータ装置200の送受信部32は、度数の情報を受信する。当該受信した度数情報に基づき、開閉駆動部45はバルブ14を開け、ガスが流路13を流れる。この一連の制御により、ガスの使用が可能となる。
【0049】
上述したように、流路13を流れるガスの流量はガスメータ装置100内の流量演算部27で演算される。そして、演算されたガスの流量は流量積算部30に送られ、積算される。流量積算部30で積算された流量は送受信部32を通じてICカードリーダライタ装置200に送られる。ICカードリーダライタ装置200の信号送受信部209はガスメータ装置100から送られてきた流量積算値を受信し、その積算値は度数削減部211に送られる。度数削減部211はその積算値に基づいて度数読み取り部210で読み取った度数を削減する。
【0050】
つまり、度数削減部211は使用したガスの流量に応じて度数残高を減らす。このような動作を繰り返した結果、度数読み取り部210が読み取った度数が0になった場合、度数削減部211はその旨の信号を流量遮断判定部212に出力する。流量遮断判定部212は度数削減部211からの度数が0になった旨の信号を受け、さらにガスの流れを遮断する旨の信号を信号送受信部209がガスメータ装置100に対して送信する。ガスメータ装置100の送受信部32は、ガスを遮断する旨を示す遮断信号をICカードリーダ装置200から受信すると、その信号を開閉駆動部45に送る。開閉駆動部45は、遮断信号を受けて流路13を閉じ、ガスの流れを遮断する。ユーザーはガスが遮断されガス機器が停止したことを確認することにより、ICカードの度数が0になったことを把握し、新しいICカードをICカードリーダライタ装置200に挿入する。このようにICカードに予め書き込まれている度数分だけガスを利用できるようにすることで、ガスの盗用を防ぐことができガスの安定供給をすることができる。
【0051】
一方、ガスが遮断された後でも、ユーザーが無理にバルブをこじ開け、ガスを不正使用する場合がある。このような問題は、特にICカードの如きプリペイドカードを利用したプリペイドシステムのガス供給システムにおいて見られる問題である。
【0052】
このような不正使用下では、開閉駆動部45が流路を閉じた後、度数が更新されていないにも拘わらず流量演算部27が所定量(ゼロではない)のガスの流量を算出する。そこで、流量演算部27は、警告通知信号を表示部24及び/またはブザー36に送る。このとき、表示部24がガス使用不可である旨のメッセージを表示し、当該ユーザーにガスの使用を停止する旨を促す。また、表示部24の代わりに、または表示部24のこのような動作と共に、ブザー36が、ガス使用不可である旨の警告音を発し、当該ユーザーにガスの使用を停止する旨を促す。このような動作により、ユーザーの不正使用を抑制することが可能となる。
【0053】
図6は、ガスメータ装置100及びICカードリーダライタ装置200を含むガス料金プリペイドシステムの動作を説明するフローチャート図である。ここでは、ICカード300の度数がゼロとなった後、バルブ14が不正に開かれ(破壊され)、その後新しいICカード300がシステムに組み込まれた状況での動作を説明する。
【0054】
まず、所定のタイミングにおいて、度数読み取り部210がICカード300に書き込まれている度数を読み取る(ステップS101)。所定のタイミングの例として、ユーザーがICカード300をICカード挿入部213に挿入したときや、ガスメータ装置100、ICカードリーダライタ装置200の電源がオンとなったときがある。また、所定の時間間隔で、度数読み取り部210がICカード300に書き込まれている度数を読み取ってもよい。
【0055】
信号送受信部209、送受信部32を介して送られた度数情報を、開閉駆動部45が受信し、当該度数がゼロであるか否か判定する(ステップS102)。度数がゼロでない場合(ステップS102;NO)、開閉駆動部45はバルブ14の開閉を判定する(ステップS103)。バルブ14が開いていると判定した場合(ステップS103;YES)、開閉駆動部45はバルブの状態をそのまま維持し、再びステップS101に戻って度数情報が読み取られる。一方、バルブ14が閉じていると判定した場合(ステップS103;NO)、開閉駆動部45はバルブ14を開き(ステップS104)、再びステップS101に戻って度数情報が読み取られる。
【0056】
ステップS104で度数がゼロと判定された場合(ステップS102;YES)、開閉駆動部45はバルブ14の開閉を判定する(ステップS105)。バルブ14が開いていると判定した場合(ステップS105;NO)、開閉駆動部45はバルブ14を閉じる(ステップS106)。ステップS105でバルブ14が閉じていると判定した場合(ステップS105;YES)、開閉駆動部45はバルブの状態をそのまま維持する。
【0057】
そして、バルブ14が閉じられた後、ゼロ点補正部40は計測部15のゼロ点補正を行なう(ステップS107)。しかしながら、バルブ14が閉じられているにも拘わらず、バルブ14の破壊などユーザーの不正使用により、計測部15が何らかのガスの速度(ゼロでない)を検出し、流量演算部27がゼロでないガス流量を演算すると(ステップS108)、流量演算部27は警告通知信号を表示部24及びブザー36に送る。そして表示部24がガス使用不可である旨のメッセージを表示し、ブザー36が、ガス使用不可である旨の警告音を発する(ステップS109)。ただし、表示部24とブザー36のいずれかのみを動作させてもよい。
【0058】
ステップS109における警告通知を受けたにも拘わらず、ユーザーがガスの使用を停止せず、流量演算部27がガス流量=0を演算しない場合(ステップS110;NO)、表示部24、ブザー36は警告を続ける。一方、ステップS109における警告通知を受け、ユーザーがガス器具の停止などによりガスの使用を停止し、流量演算部27がガス流量=0を演算した場合(ステップS110;YES)、警告は停止される。
【0059】
その後、(バルブを破壊した場合はバルブを修理した上で)ユーザーが度数が充填された新しいICカード300を購入し、ICカード挿入部213に挿入すると、当該度数の情報が、度数読み取り部210、制御部214、信号送受信部209を介してガスメータ装置100に送られ、度数情報を受信した送受信部32が、当該受信した度数情報をゼロ点補正部40に送る(ステップS111)。ゼロでない度数を受信したゼロ点補正部40は再び計測部15のゼロ点補正を行う(ステップS112)。その後、開閉駆動部45がバルブ14を開く(ステップS104)。これによりガスが再び流路13を流れるようになる。その後ステップS101以降の制御が再び続行される。
【0060】
上述した手順をガスメータ装置100に実行させるプログラムも本発明に含まれる。このようなプログラムは、ガスメータ装置100の全体を制御する図示せぬ制御部の記憶領域などに記憶されている。
【0061】
また、上述の実施形態では、単一の流路13に対し、単一の計測部15、バルブ14が設けられている。ただし、ガスメータ装置100には複数組の流路、計測部、バルブを設けることができる。図7はそのような例を示し、ガスメータ装置100は、3本の流路13(13a〜13c)と流路13に設けられているバルブ14(14a〜14c)と計測部15(15a〜15c)とを有している。流路13aにはバルブ14aと計測部15aとが取り付けられている。流路13bにはバルブ14bと計測部15bとが取り付けられている。流路13cにはバルブ14cと計測部15cとが取り付けられている。そして、開閉駆動部45は、バルブ14a〜14cを各々個別に開閉することが可能である。尚、流量演算部27、ゼロ点補正部40、開閉駆動部45以外の部分の図示は省略されている。
【0062】
複数の流路13a〜13cのすべてを開くことにより大流量の流体を流すことが可能となり、かつそれを計測することが可能となる。複数の流路13a〜13cのうち1つの流路のみを開くことにより小流量の流体を流すことが可能である。このように、開閉駆動部45により個々に開閉することが可能な複数のバルブ14a〜14cを用いることによって流量等に応じた流路選択を容易にし流量域の広い範囲で計測を可能にできる。
【0063】
なお、流路13は均等な断面積の流路を複数本組み合わせることで汎用性を高めメンテナンスを容易にしてもよいし、また断面積を異なるようにし流量等によってその流路の最適な選択を行う構成としてもよい。本発明では流路を3本としているが別に取りたてて数字に意味があるわけでもない。2本以上であれば何本でも良い。
【0064】
流量演算部27は、計測部15a〜15cによって流路ごとに計測された流量を合計する演算を行う。流量演算部27によって求められる総合流量をQ、バルブ14が開成している流路13a、13b、13cに設置した計測部15a、15b、15cによって求められる流量をそれぞれqa、qb、qcとすると、Q=qa+qb+qc=Σqである。
【0065】
閉止される流路13、及び対応するバルブ14の選択は、開閉駆動部45が行なう。開閉駆動部45がバルブ14aを閉止している場合には、流路13aには流体が流れていない。このため計測部15aで流体流量を計測しても本来の流量計測に支障はない。従って、ガスなどの流体の流れが途切れない装置においても、流体の流量の計測を行うことが可能になる。このためこの流路を開放するときには測定系の安定度が良く、ゼロ点のずれのない計測を可能にし、精度が不安定になることを防止することができる。
【0066】
尚、上記説明では計測部に超音波素子を用いているが、これに限定するものでは無い。たとえば計測部として、流路に設けられた電力を駆動源とする発熱部と流量によって生じる温度変化を検出する少なくとも1つ以上の感温部と、前記感温部の信号変化に基づいて流量を算出する流量演算部とを備えるようにしても同様の流量計測が可能である。
【0067】
また、図6の制御の例では、ICカード300の度数がゼロとなり(ステップS102)、かつ流量がゼロでない場合(ステップS108)、所定の警告通知を行なうこととした(ステップS109)。しかしながら、度数がゼロでかつ流量がゼロでないときに初めて通知を行なうことは必須ではなく、単に度数が所定の値(以下)になったときにおいて、ユーザーに対し所定の通知を行なってもよい。所定の値がゼロでない場合、ユーザーは、度数がゼロになる前に度数を記憶した記憶媒体を購入でき、使用途中でガスの供給が停止されるという不具合を防止することが可能となる。所定の値がゼロである場合、もはやガス供給が不能であることをユーザーに通知することができる。
【0068】
上述した流量計測装置の実施形態としてガスメータ装置を例に挙げたが、本発明は、ガス以外の他の流体の流量計測装置にも適用可能である。また、実施形態ではガスメータ装置とICカードリーダライタ装置は各々別体の装置として構成したが、両者を一体の装置に構成することも可能である。この場合ケーブル3は不要となる。また、ケーブル3を用いた有線通信のかわりに、各種方式の無線通信を用いることもできる。
【0069】
本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ゼロ点補正を容易にかつ正確に実行することが可能であり、流体の使用料金を確実に回収可能とする流量計測装置の実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態のガスメータ装置を含むガス料金プリペイドシステムの概要を示すブロック図
【図2】ガスメータ装置の構成を示すブロック図
【図3】ガスメータ装置の計測部の構成を模式的に示す図
【図4】ガスメータ装置の計測部および他の部分の構成を示すブロック図
【図5】ICカードリーダライタ装置の構成を示すブロック図。
【図6】ガス料金プリペイドシステムの動作を説明するフローチャート図
【図7】複数の流路をもつガスメータ装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0072】
13 流路
14 バルブ
15 計測部
27 流量演算部
30 流量積算部
32 送受信部
34 表示部
36 ブザー
40 ゼロ点補正部
45 開閉駆動部
100 ガスメータ装置
200 ICカードリーダライタ装置
209 信号送受信部
210 度数読み取り部
211 度数削減部
212 流量遮断判定部
213 ICカード挿入部
214 制御部
300 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する流路と、
前記流路内に配置され、前記流路を通過する流体の流速を計測する計測部と、
前記流路に沿って前記計測部の下流に配置され、前記流路を開閉する開閉部と、
前記計測部によって計測された流体の流速に基づき、流体の流量を演算する流量演算部と、
前記開閉部によって前記流路が閉じられているときに、前記計測部のゼロ値を検出しゼロ値補正を行うゼロ点補正部と、
を備える流量計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量計測装置であって、
流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置から、前記度数を受信する送受信部と、
当該度数がゼロのときにおいて、前記流量演算部がゼロでない流量を演算した場合、ユーザーに対し所定の通知を行なう通知部を更に備える流量計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流量計測装置であって、
流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置から、前記度数を受信する送受信部と、
当該度数が所定の値になったときにおいて、ユーザーに対し所定の通知を行なう通知部を更に備える流量計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流量計測装置であって、
前記所定の値がゼロである流量計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の流量計測装置であって、
前記流路と、前記計測部と、前記開閉部を複数組備え、
前記開閉部によって閉止される流路に対応する開閉部を選択する開閉駆動部を更に備え、
前記ゼロ点補正部は、前記開閉駆動部によって選択された開閉部の流路が閉じられているときに、当該流路に対応する計測部のゼロ値を検出しゼロ値補正を行う流量計測装置。
【請求項6】
流体の流量を計測する流量計測装置と、
流体の使用可能量に対応した度数を記憶した記憶媒体を読み取り可能な記憶媒体読取装置と、を備え、
前記度数がゼロのときにおいて、前記流量計測装置がゼロでない流量を計測した場合、前記流量計測装置がユーザーに対し所定の通知を行なう流量計測システム。
【請求項7】
請求項6に記載の流量計測システムであって、
前記記憶媒体が、ユーザーが予め購入したプリペイドカードである流量計測システム。
【請求項8】
流体の流量を計測する流量計測装置を作動するプログラムであって、
流体の使用可能量に対応した度数を読み取る手順と、
流体の流量を計測する手順と、
読み取られた度数がゼロのときにおいてゼロでない流量が計測された場合、ユーザーに対し所定の通知を行なう手順と、
を前記流量計測装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−82799(P2008−82799A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261729(P2006−261729)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】