説明

浮遊性植物生育プラットフォームおよび陸生植物を様々な塩度の塩水中で多目的に生育させる方法

本発明では、汽水または海水中での陸生植物の栽培を行う。軽量の浮遊性生育培地パッケージ(FGMP)、またはその代替として、適当な材質の薄板を用いて、海洋環境における100%海水を含めた様々な塩度の水体表面に浮遊する陸生植物の生育を支持する。FGMPユニットを相互に連結させ、浮遊性の硬質または柔軟な枠組みの中に収容することによって、浮遊性海水栽培プラットフォーム(FSCP)を形成させることができる。この方法を用いて、持続可能な方法で、100%の海水表面に浮遊するFSCP上で、植物を生育および繁茂させることができた。塩生植物であるアクリクリ(ハマミズナ)は、海水中でその苗条および根を再生することができる。したがって、この発見は、我々が海洋農業、すなわち、海上での農業を行うのを可能にするであろう。環境保護から、景観整備、作物生産まで、広範な目的にFSCPを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物農業分野、より詳細には海洋農業分野に関する。本発明の方法を用いて、天然では陸生である植物を、様々な塩度の水性環境において、浮遊性プラットフォーム中で栽培することができる。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
この出願は、2004年4月9日出願の米国特許出願第10/821806号に基づく優先権を主張し、後者は、米国特許法第119条(e)項の下に、2003年4月9日出願の米国特許仮出願第60/461901号に基づく優先権をする。これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。
【0003】
世界中の人々に食糧を供給するのに十分な水と、耕地とを見出すことが、食糧生産における継続中の挑戦である。耕地および淡水の不足は、最も緊急な世界的な問題の1つである。耕地には限界があり、その利用可能性は縮小している。地球における全陸地の43パーセントは、乾燥地または半乾燥地である。さらに、毎年2500万ヘクタールの農地が、土壌の塩化の結果として失われていると推算されている。世界人口の増大が続くのに従って、以前には作物用に使用されていた既存の農地および給水が着実に使い尽くされており、人間が消費する食物および淡水の需要が増大している。
【0004】
耕地の供給源が将来さらに必要となるのに備えて、研究者は、土壌を海水で潅水することによって、作物を生育させることができるかどうか判定しようと試みている。1つの試みは、海水で潅水することによる、耐塩性植物(アッケシソウ(Salicornia)など)の、陸上での海水農耕を開発するものである。しかし、この試みの挑戦は、大部分の陸生植物が高レベルの塩度に耐性をもたないことにある。海水で潅水を行った場合、土壌での塩の蓄積によって、最終的には耐塩性植物さえ枯れる。それは、土壌での塩の蓄積が、最終的には、それらの許容限界を超えるからである。場合によっては、土壌を海水で頻繁に洗い流すことで塩の蓄積が軽減されるが、この方法でもなお、このようにして潅水された植物の根の周囲で土壌の高塩度化を引き起こす。例えば、アッケシソウの根が浸かっている水の塩度は、海洋における正常な塩度の約3倍である約100ppt(千分率)を超える。海水を用いて生育する場合、それは、淡水を用いて生育する従来の作物より、約35パーセント多い水を潅水に必要とする(Glennら、1998年、Sci. Amer.、279号、56〜61頁;この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。アッケシソウの海水農業生産では、根域下の塩を洗い流すために海洋から海水を潅水するためのポンプ送水が主要な費用となる。大規模な塩生植物海水農耕から予測できる別の問題は、未使用の肥料も含有する大量の高塩度排液水によって引き起こされる地下水汚染の可能性であろう。
【特許文献1】米国特許出願第10/821806号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/461901号
【非特許文献1】Glennら、1998年、Sci. Amer.、279号、56〜61頁
【非特許文献2】Brooksら、1979年
【非特許文献3】Brooksら、1978年
【非特許文献4】Brooksら、1981年
【非特許文献5】ReevesおよびBrooks
【非特許文献6】Brownら、1994年
【非特許文献7】BanuelosおよびMeek
【非特許文献8】Kumarら、1995年
【非特許文献9】VeskおよびAllaway、Aquatic Botany、第59巻、33〜44頁(1997)
【非特許文献10】DobereinerおよびDay、「Nitrogen Fixation by Free-Living Microorganisms」、Stewart編集、Cambridge Univ. Press社、英国Cambridge所在、39〜56頁(1975)
【非特許文献11】HabteおよびFox、Plant Soil、第151巻、219〜226頁(1993)
【非特許文献12】Bradleyら、New Phytologist、第91巻、197〜201頁(1982)
【非特許文献13】Pondら、Mycologia、第76巻、74〜84頁(1984)
【非特許文献14】Jindalら、Plant Physiology and Biochemistry、第31巻、475〜481頁(1993)
【非特許文献15】Bethlenfalvay、「Mycorrhizae in sustainable agriculture」、BethlenfalvayおよびLinderman編集、ASA/CSSA/SSSA、ウィスコンシン州Madison所在、1〜27頁(1992)
【非特許文献16】BrodkorbおよびLegger、Applied and Environmental Microbiology、第58(9)巻、3117〜3121頁(1992)
【非特許文献17】BeveridgeおよびFyfe、Can J Earth Sciences、第22巻、1893〜1898頁(1985)
【非特許文献18】Ferrisら、Nature Lond、第320巻、609〜611頁(1986)
【特許文献3】米国特許第5785735号
【特許文献4】米国特許第5876484号
【特許文献5】米国特許第5927005号
【非特許文献19】StephensonおよびLeonard、Marine Pollution Bulletin、第28巻、148〜153頁(1994)
【非特許文献20】Gustavsonら、Hydrobiologia、第1巻、125〜138頁(1999)
【非特許文献21】ClaisseおよびAlzieu、Marine Pollution Bulletin、第26巻、395〜397頁(1993)
【非特許文献22】Nagatomoら、Journal of Shimonoseki University of Fisheries、第41巻、167〜178頁(1993)
【非特許文献23】Sundaら、Estuarine Coastal and Shelf Science、第30巻、207〜222頁(1990)
【非特許文献24】Reichelt-BrushettおよびHarrison、Marine Pollution Bulletin、第38巻、182〜187頁(1999)
【非特許文献25】U.S. Environmental Protection Agency, National Science Foundation, Office of Naval Research and DOD/DOE/EPA Strategic Environmental Research and Development Program, Joint Program on Phytoremediation、http://es.epa.gov/nceqa/rfa/phytore00.html、1〜11頁(2000)
【非特許文献26】Baker、Journal of Plant Nutrition、第3巻、643〜654頁(1981)
【非特許文献27】SaltabasおよびAkcin、Toxicological and Environmental Chemistry、第41巻、131〜134頁(1994)
【非特許文献28】TangおよびWilke、「Heavy metal uptake by Elsholtzia hainchowensis Sun and Commelina communis L. grown on contaminated soils」、Luoら編集、International Conference of Soil Remediation、228〜233頁(2000)
【非特許文献29】Brooks、「Plants that hyperaccumulate heavy metals」、Brookes編集、CAB International社、英国Wallingford所在、55〜94頁(1998)
【非特許文献30】Bakerら、「Phytoremediation of contaminated soil and water」、Terryら編集、Lewis Publishers社、米国フロリダ州Boca Raton所在、85〜107頁(2000)
【非特許文献31】Baker、Biorecovery、第1巻、81〜126頁(1989)
【非特許文献32】Reevesら、Mining Environmental Management、第9巻、4〜8頁(1995)
【非特許文献33】Brooksら、「Remediation of soils contaminated with metals」、Proceedings of a conference on biogeochemistry of trace elements, Taipei, Taiwan、Science Reviews社、米国Northwood所在、123〜133頁(1997)
【非特許文献34】Malaisseら、Science、第199巻、887〜888頁(1978)
【非特許文献35】Merlin、「Hawaiian Coastal Plants」、Pacific Guide Books社、中華民国台湾台北市所在、41頁(1999)
【非特許文献36】VenkatesaluおよびKumar、Journal of Plant Nutrition、第17巻、1635〜1645頁(1994)
【非特許文献37】Banerjiら、Phytochemistry、第10巻、2225〜2226頁(1971)
【非特許文献38】LonardおよびJudd、Journal of Coastal Research、第13巻、96〜104頁(1997)
【特許文献6】中国特許出願第86-106791 19860930号
【特許文献7】国際公開第9404132号
【非特許文献39】StockmおよびCampbell、「Human germline engineering - the prospects for commercial development」、ess.ucla.edu/huge/Stockatc.html (2003)
【非特許文献40】Kurmukovら、Meditsinskii Zhurmal Uzbekistana、第10巻、68〜70頁(1988)
【非特許文献41】Kuz'menko、Ukr Biokhim Zh、第71巻、35〜38頁(1999)
【非特許文献42】SymeおよびTait、2001年、「Earth Pulse: Rising tide of concern」、Natl. Geog、第199:2号
【非特許文献43】Apseら、1999年、Science、第285巻、1256〜1258頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに別の耕地を生み出すことの困難および/または必要な容積の淡水を製造することの困難と、法外な費用とを考慮すると、真剣な検討に値する代替研究は、作物を生育させるには現在実用的でない環境で、植物が繁茂できるようにするであろう革新的な植物遺伝子改変に関するものである。そのような環境の1つが海洋であり、海洋は地球上の水の97パーセントを含む。必要なのは、陸上作物を汽水中または海水中で生育させる方法であり、それによって、周辺にある多くの高塩度の荒地を海水水耕栽培に使用すること、そして、養魚池、湾、および沿岸環境での陸生植物の生育に海水を使用することが可能となるであろう。農業の主要な部分で海水が使用できることは、耕地も淡水もない地域での植物および穀物の耕作が可能となるだけではなく、他の農業および非農業的利用に大いに必要とされている陸地および淡水を解放することにもなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態には、陸生植物を塩水中で生育させる植物栽培システムが含まれる。このシステムは、浮揚性部分を含む植物支持体と、上記植物支持体と接触している少なくとも1つの陸生植物とを含み、上記植物支持体は塩水中で浮揚性を有し、上記植物の少なくとも一部は塩水と接触している。一部の実施形態では、上記塩水が、例えば、海水、汽水、湖水、地下水、池水、または再生、修復、もしくは栽培システム中の水、あるいは同様の水でありうる。上記塩水は、外洋、沿岸地域、河口、デルタ、池、ため池、湖、帯水層、水再生施設、フィトレメディエーション現場、港、海洋農場、淡水化施設、および同様の場所にある水でありうる。上記塩水は、例えば、殺虫薬、有機汚染物質、PCB、炭化水素、金属イオン、窒素、リン、およびカリウムなどの夾雑物をさらに含みうる。一部の実施形態では、上記金属イオンは、例えば、鉛、水銀、カドミウム、ヒ酸塩、銅、亜鉛、および、他の任意の金属イオンでありうる。好ましい実施形態では、上記植物支持体が浮揚性の端部または枠に接触している薄板材料でありえ、かつ/あるいは、上記植物支持体が生育培地または同様のものでありうる。上記生育培地は、少なくとも部分的に容器内に含有されている。上記浮揚性部分は、生育培地、上記容器、またはそれら両方でありうる。
【0007】
本発明の別の実施形態は、陸生植物を塩水中で生育させるための浮揚性プラットフォームを含み、上記プラットフォームは、塩水の水体表面または表面近傍に浮遊できる薄板と、上記薄板に接触している少なくとも1つの浮揚性支持体部材と、上記薄板に接触して配置されている少なくとも1つの陸生植物、植物の部分、または種子と、塩水とを有しうる。浮揚性支持体部材は、上記プラットフォームの支持構造を形成するものでありうる。上記浮揚性支持体部材は、例えば、天然素材、合成繊維、木、竹、プラスチック、ポリプロピレン、鉄鋼、グラスファイバー、フォーム、プラスチック、およびゴムなどのいかなる適当な物質でできたものでもよい。上記薄板は、例えば、遮光布、プラスチック薄膜、網、布、グランドカバー、スクリーン、織布、不織布物質、発泡ビニールシート、および発泡スチロールなどのいかなる適当な物質でできたものでもよい。一部の実施形態では、陸生植物を生育させるための空間が、2つの浮揚性支持体部材の間の領域に存在する。
【0008】
一部の実施形態では、上記浮揚性プラットフォームは、潅水システムも含むことができ、上記潅水システムは、例えば、蒸発水、雨水、蒸散水、および淡水でありうる液体を送り届けることができる。上記潅水システムは、肥料、栄養物、鉱物、および植物生長調節物質をさらに送り届けることができる。上記潅水システムは、上記塩水より塩度が低い潅水用水を収集する手段を含みうる。上記潅水システムは、潅水用水を保存する手段ももちうる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、塩水の水体表面で陸生植物を生育させるための浮揚性プラットフォームを含み、上記プラットフォームは、塩水の水体表面に浮遊させることのできる少なくとも1つの生育培地を有する。上記生育培地は、少なくとも1つの陸生植物、植物部分、または種子と、上記生育培地を支持する少なくとも1つの浮揚性支持体部材とを有しうる。上記生育培地は、ピート、ピートモス、人工土壌成分、自然土壌、土壌改良剤、疎水性粒子、有機肥料、植物成長栄養物、および堆肥のうちの少なくとも1つの物質を有しうる。一部の実施形態では、上記生育培地が容器内に含有されており、上記容器は、例えば、遮光布、プラスチック薄膜、網、布、グランドカバー、スクリーン、織布、不織布物質、発泡ビニールシート、および発泡スチロールでできたものでありうる。一部の実施形態では、上記生育培地のパッケージ上方の表面に、上記生育培地が大気と接触するのを抑制する蒸発保護層が存在しうる。
【0010】
本発明の別の実施形態は、塩水の水体表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、植物体の少なくとも一部が塩水と接触するように、上記プラットフォーム中に植物体を配置し、そして、プラットフォームが塩水中に浮遊している間に、少なくとも1つの植物を上記植物体から生育させることによって、塩水中で陸生植物を生育させる方法を提供する。一部の実施形態では、上記植物体が、例えば、種子、切り枝、根、植物全体、または塊茎でありうる。上記植物体は、例えば、直接的な接触、毛細管現象、および潅水によって塩水と接触させることができる。一部の実施形態では、この方法は、植物全体、植物の部分、花部、果実、花、種子、花粉、葉、根、塊茎、分裂組織、または苗条のうちの少なくとも1つを上記成長プラットフォームから採取することも含む。一部の実施形態では、この方法は、食物、油性抽出物、繊維、燃料、香辛料、薬草製剤、栄養補給食品、医薬品、商業作物、植物塩、バイオレメディエーション、汚染物質隔離、飼料、色素、建築材料、または工業原料などの産物または過程で、採取された植物体を使用することも含む。一部の実施形態では、上記植物は、例えば、アッケシソウ属諸種、リゾホラマングル(Rhizophora mangle)、バチスマリタイム(Batis maritime)、ハマミズナ(Sesuvium portulacastrum L.)、ミオポルムサンドウィケンセ(Myoporum sandwicense)、サキシマハマボウ(Thespesia populanea)、またはクサトベラ(Scaevola taccada)でありうる。上記植物は、栽培作物植物でありうる。
【0011】
本発明の別の実施形態は、望ましくない物質を含有する塩水の水体表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、植物体の少なくとも一部に上記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置し、上記水の存在下に植物体を生育させ、植物体内での上記物質の蓄積を通して、そして、上記水から上記物質を除去することによって、望ましくない物質を含有する塩水体の質を改善する方法を含む。上記物質は、例えば、有機化合物、ディーゼル燃料、ガソリン、金属、殺虫薬、有機汚染物質、PCB、金属イオン、窒素、リン、またはカリウムでありうる。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、望ましくない物質を含有している地表領域の低い地点に、水を含むため池を用意し、塩水の水体表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、植物体の少なくとも一部に上記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置し、上記水の存在下に植物体を生育させ、そして、植物体内での上記物質の蓄積を通して、上記水から上記物質を除去することによって、望ましくない物質を含有する地表領域のバイオレメディエーションの方法を含む。一部の実施形態では、上記地表領域を水で溶脱することによって、上記池に水を加える。一部の実施形態では、植物体を採取することができる。この方法のステップを反復することができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、塩水魚類生息地の水面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、植物体の少なくとも一部に上記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置し、生育中の植物体が上記魚類生息地を改善するのを可能にする条件下で、上記水の存在下に植物体を生育させることによって、塩水魚類生息地を改善する方法を提供する。例えば、食物源を魚に提供すること、避難所を魚に提供すること、上記生息地に有益な生物群集の形成を促進すること、水から望ましくない物質を除去すること、または水中に望ましい物質を蓄積させることなど、少なくとも1つの改良が、植物の生育によって可能となりうる。
【0014】
本発明の別の実施形態は、海岸に隣接した塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、植物体の少なくとも一部に上記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置し、海岸侵食から守るための防御堤を作製するために、上記塩水の存在下に植物体を生育させることによって、海岸侵食から陸を保護する方法を提供する。上記防御堤は、風よけ、波よけ、魚の保護、および景観整備特性などの少なくとも1つの機能を有するものでありうる。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態は、海岸に隣接した塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、イオン蓄積性植物の植物体を、上記植物体の少なくとも一部に上記水が接触できるようにプラットフォーム中に配置し、塩イオンが植物体内に蓄積し、上記塩水から除去されるように、上記塩水の存在下に植物体を生育させることによって、食塩水を脱塩する方法を提供する。上記イオンは、例えば、ナトリウム、リン、カリウム、窒素、硫黄、およびホウ素でありうる。上記イオン蓄積性植物は、例えば、ハマミズナでありうる。
【0016】
本発明の別の実施形態は、塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意し、試験植物品種の植物体に関する少なくとも1つの特性の第1の測定を行い、上記植物体の少なくとも一部に上記塩水が接触できるように、プラットフォーム中に上記植物体を配置し、植物体が生育する期間をおき、上記植物体の上記少なくとも1つの特性の第2の測定を行い、第1の測定および第2の測定の比較に基づいて、塩水中で繁茂する植物体の能力を評価することによって、塩水中で繁茂する能力を有するものを求めて、植物品種をスクリーニングする方法を提供する。上記特性が、バイオマス、サイズ、形、色、タンパク質含有量、糖含有量、成長速度、および発生段階からなる群の少なくとも1つの要素を含む。一部の実施形態では、上記試験植物品種が、生育前または生育中に変異誘発される。
【0017】
本発明の様々な実施形態を本明細書にまとめたが、多数の実施形態の変形形態に、本明細書に列挙した特性の組合せが含まれることが明らかである。したがって、特定のグループの実施形態に関する特性またはそれらに類似した特性に関する記述は、そのような特性が、限定されるものではないが本明細書にまとめられたものを含めた本発明の他の実施形態と併用可能でないことを意味するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
減る一方の淡水源と、貴重な陸地空間とを節約するためのみではなく、海水中の豊富な無機栄養素を開発するためににも、海水を用いて陸生植物を生育させる成功した方法を世界中が必要としている。本明細書に記載の本発明は、汽水中または海水中で繁茂する植物を生育させるための新規なアプローチである。海洋農業は、浮遊性海水栽培プラットフォーム(FSCP)上での陸上作物の直接的耕作であり、陸上での海水農耕の問題を克服する可能性を有するものである。本発明の成功は、陸生の塩生植物が、適当な生育培地中で、海水の正常塩濃度には順応できるが、それよりかなり高い塩濃度には順応できないという知見に基づいている。したがって、海水を用いて陸上の陸生植物に潅水した場合には、塩蓄積によって迅速に失敗に向かうが、浮遊性プラットフォーム上では、海水の塩度を超えた塩濃度にはならないので、植物生育が持続可能なものとなる。さらに、本発明の方法は、現在試みられている塩水潅漑の方法と比較して、植物生産にかかる費用がかなり節約されている。浮遊性栽培プラットフォームおよび生育管理を用いた場合、アッケシソウ商品作物の海洋農業に推算されている費用は、1ポンド(454g)あたり4ドル少なくなり、これは50%を超える節約となる。
【0019】
本発明は、汽水および100%の海水を含めた様々な塩度の水中で陸生植物を生育させる方法を提供する。植物は、その植物の少なくとも一部が塩水と接触できるようになっている浮揚性栽培システム上で生育する。
【0020】
「浮揚性」という用語は、浮遊するのを可能にする性質を指す。「浮揚性栽培システム」は、それが置かれている水の水体表面で浮遊することができる。本発明の一部の実施形態では、浮揚性システム、浮揚性プラットフォーム、浮揚性支持構造、浮揚性の留め具およびロープ、そして、浮揚性の薄板または薄層も企図されている。他の実施形態では、植物自体、またはその生育培地が、システム全体の浮揚性を維持するのに必要な浮力を提供するか、またはそれに寄与することもある。
【0021】
いくつかのタイプの浮揚性栽培システムを用いることができる。例えば、本発明の一部の実施形態では、プラットフォームは、汽水または海水などの塩水の水体表面で浮遊するように用意された任意の適当な物質の単純な薄層でよい。プラットフォームは、植物をそれらに配置する穿孔を有するものでもよい。植物の苗条は、通常、水上に残り、根は、塩水中に浮遊する。
【0022】
(薄板または薄層バージョン)
栽培プラットフォームは、植物を、それが部分的に水に接触するように浮遊させることができる限りいかなるスタイルで作製してもよい。比較的単純な様式では、プラットフォームは、水面に浮遊する単純な薄板または薄層でありうる。例示的な薄板スタイルシステムの作製を、実施例2、3、および6に示す。
【0023】
薄板または薄層は、任意の適当な物質から作製することができる。適当な物質の例には、織布もしくは不織布物質、メッシュ、網、遮光布、プラスチック、布、グランドカバー、スクリーン、金属スクリーン、ナイロン(登録商標)スクリーン、ポリプロピレン製遮光布、ポリカーボネート、ポリビニールブチレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニリデン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、発泡ビニールシート、浮揚性パッケージ充填材物質、複合物、ポリスルホン、グラスファイバー、ポリフッ化ビニリデン、プラスチックス、金属材料、独立気泡ポリマーフォーム、HDPE(高密度ポリエチレン)、再生物質、再利用可能物質、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。薄板は、FSCPが置かれる水の浮力より高い浮力を有する物質から作製されたものが好ましい。
【0024】
薄層は、それ自体で浮遊するものである場合も、プラットフォームが浮遊できるようにする他の物質によって支持されている場合もある。植物は、苗条が空気中にあり、一方、根は液体中で自由に浮遊するように、1つの薄層にある穿孔中に配置することができる。薄板は、単層のものでも、任意の所望の形を形成するように折りたたまれたものでもよい。好ましい実施形態では、その形は、長くて細い袋状のものである。場合によっては、植物自体が、プラットフォームを浮かせておくための浮力を生成することがある。植物が垂直な状態にあり、苗条が水線の上にあることが好ましい。
【0025】
一部の実施形態では(図3を参照)、薄板状の物質が「空のパッケージ」となるように作製し、その上面の穿孔に植物を配置する。植物の根は、部分的にまたは完全に、囲まれた領域の内部で、液体中で成長し、それによって、根を捕食者から保護し、一方、植物の上部は、それを、例えば穿孔を有するスクリーン中に配置することによって、垂直となるように支持されている。薄板または薄層は、様々な物質から作製することができる。好ましい実施形態では、ポリプロピレン製のグランドカバーから、それを折り返し、クリップで止めて、小包状にして、薄板が作製されている。この袋の支持は、いかなる方法で行ってもよい。図3に示す例は、プラットフォームを支持する2本のプラスチックパイプでできた支持構造物であり、この場合、ポリエチレンチューブに空気を吹き込み、その両端を封着することによって、空気パイプが作製されている。一部の実施形態では、(また、図3に示す通り)、構造的な空気チューブによって、生長中の植物が支持されるように、2本の空気チューブの間にある穿孔に植物を挿入する。
【0026】
端部を留めるには、留めクリップ、ケーブルタイ、およびいかなる他の適当な手段も使用できる。各ユニットを隣接しているユニットと、例えば、ケーブルタイ、ロープ、ひも、針金、または他の手段を用いて連結させ、より大規模なプラットフォームを形成させることができる。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、特定の植物品種を1層のグランドカバーで生育させることができる。これらの場合、薄板から袋を形成させ、それに、2本の空気パイプではなく、空気を充満した1本のプラスチックパイプを充填する。この中空スタイルのFSCPは、植物を垂直に保つための補助システムを必要としない匍匐性植物または矮性植物に適している。
【0028】
これは、重量が軽く、かつ費用のかからない、安価かつ携帯性に優れたプラットフォームを提供する。生育期間が終わったときには、空気チューブから空気を抜くことができ、プラットフォームを収納用または移動用に丸く巻くことができる。プラットフォームユニットが巻いてしまえるものであることは、海洋農業工学、例えば機械による植え付けおよび収穫を容易にする。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、プラットフォームの表面に、1層または複数の気泡クッション(包装材料)を用いることができる。好ましい実施形態では、水の表面に浮かべた軽量のポリプロピレンロープによって、気泡薄板を囲いこむ。実施例6は、そのようなプラットフォームを作製する例示的方法を提供する。このプラットフォームの詳細を図10に図示する。このプラットフォームの利点には、それが均等な浮力を有する(植物の一様な生育を可能にする)こと、移植が容易であること、ならびに、機械を用いた生産および操作に適しているということがある。
【0030】
(生育培地パッケージ)
本発明の他の実施形態では、根を成長させるのに適した充填材物質を含有する浮遊性の「生育培地パッケージ」(FGMP)を形成させる(図1)。本発明の好ましい一実施形態では、パッケージが、疎水性ポリマー泡状粒子と天然土壌改良剤との混合物、または充満したプラスチック空気パイプを含有するポリプロピレン製遮光布でできている。保湿用に、そして、低塩度水の層を維持するために、パッケージ上部に巻きつけられている黒いプラスチック薄膜が使用される。塩度を制御するのに、点滴潅水を用いることができる。そのようなFGMPの作製例を実施例3に示す。
【0031】
上記薄板は、いかなる適当な物質でできたものでもよい。適当な物質の例には、織布もしくは不織布物質、メッシュ、網、遮光布、プラスチック、布、グランドカバー、スクリーン、発泡ビニールシート、金属スクリーン、ナイロン(登録商標)スクリーン、ポリプロピレン遮光布、ポリカーボネート、ポリビニールブチレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニリデン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、複合物、ポリスルホン、グラスファイバー、ポリフッ化ビニリデン、プラスチックス、金属材料、独立気泡ポリマーフォーム、HDPE、再生物質、再利用可能物質、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
FGMP用の充填材物質の選択は、広い範囲で様々なものをとりうる。この物質は、構成要素の混合物でもよい。根成長を可能にするいかなる物質も使用できる。例えば、この物質は、独立気泡ポリマーフォーム粒子、疎水性ポリマー泡状粒子、または開放気泡ポリマーフォーム粒子などの合成繊維でできたものでよく、コーティングされていることが好ましい。FGMP用の充填材をそれから作製できる合成繊維の例には、ポリカーボネート、ポリエチレンメタクリレート、ポリビニールブチレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニリデン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、バブルラップ、浮揚性パッケージ充填材物質、複合物、ポリスルホン、グラスファイバー、ポリフッ化ビニリデン、プラスチックス、発泡プラスチック、金属物質、独立気泡ポリマーフォーム、およびHDPEが含まれるが、これらに限定されない。この物質は、再利用可能なプラスチック、タイヤ、および同様のものなど、再生重合物質または再利用可能重合物質から作られたものでもよい。
【0033】
FGMP充填材物質に使用できる物質の追加例には、ピート、木材チップ、樹皮もしくはバーク堆肥、天然素材、有機堆肥、または自然土壌、バーミキュライト、混合物、ポリライ、天然改良剤、パインバーク堆肥、および他の堆肥化された有機物、庭園廃棄物、ココナッツ髄、活性汚泥、動物および/もしくは植物ベースの埋め立て廃棄物;木質およびリグノセルロース誘導体;バーミキュライト;真珠岩、ガラスビーズ;堆肥;有機肥料、ニワトリ肥料、砂;ピート腐植質;農産廃棄物(堆肥化されたものもしくはされていないもの);堆肥化された動物副産物、木質およびリグノセルロース誘導体、再生物質もしくは再利用可能物質、コルク、ならびに同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
一部の実施形態では、実質的な蒸発を防止する保護カバーが、パッケージ表面の上に配置される。
【0035】
(オプション洗浄)
耐塩性でない植物の生育を可能にするために、プラットフォームの領域での密度勾配によって、淡水から低塩度水勾配層を維持することができる。この勾配は、例えば定量点滴潅水によって制御できる。本発明の方法は、例えば、点滴潅水の設計、パッケージ物質、保護カバー、または他の方法によって、この方法を改変することによって、様々なレベルの耐塩性を有する広範な植物を生育させることができるという点で、極めて柔軟なものである。ここに記載した通り、淡水が利用できないか、あるいは高価である状況で、ハワイの塩生植物が100%海水中で良好に生育したことは、極限的な条件下での本発明の実用性を実証する。
【0036】
滴下またはテープ潅水システム(Drip Research Technology社、カリフォルニア州San Diego所在; Drip Works社、カリフォルニア州Willits所在)などの追加潅水システムを追加淡水潅水に用いた場合、耐塩性がそれほど強くない植物の生長を可能にするために、淡水流が増加または減少するようにそれを調節することができる。滴下システムを用いることによって、任意選択で、追加の栄養物、肥料、および植物生長調節物質を添加することができる。滴下システムが、特定の時間動作するようにタイマーを用いることもでき、滴下を一定に保つこともできる。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、プラットフォームに付属した貯蔵領域から、滴下潅水システムのチューブを通して淡水を送水するのに、電池式または太陽電池式のポンプシステムを用いる。このようにして、ポンプシステムまたは時間調節システムを作動させるのに、人力または電気を必要とせずにプラットフォームを潅水することができる。
【0038】
本発明の一部の実施形態では、環境中の淡水を捕捉し、任意選択で貯蔵し、FSCPシステム上で生育している植物に送水できるようにシステムを設計することができる。この方法では、雨水または海洋水の蒸発水に含有されている淡水をシステムが利用できる。プラットフォームの延長に傾斜を有する部分を作り、ホルダー領域まで雨水を流し込むことができる。例えば、そのような傾斜付きプラットフォーム延長部は、プラットフォームの全ての辺から2フィート(60.96cm)超えたところまで伸長し、かつプラットフォームまで下る傾斜を有するように支持されたプラスチックの薄板で作製することができる。この傾斜付き延長部に降った水は、収集装置に向けて、また、貯蔵領域へと滴下する。傾斜付きプラットフォーム延長部の底部に凝集するいかなる水(海洋蒸発水など)も、収集装置を通して、淡水貯蔵領域に滴下できるようしてよい。必要に応じて、蒸散水も、例えば、生育中の植物の上に透明なプラスチックシートをかぶせることによって、再利用することができる。透明なシートは、光の入射を許すが、蒸散水は傾斜を下り、滴下してシステム中に戻るようにする。これらの水の再利用システムは、耐塩性がそれほど強くない植物が、FSCPシステムを用いて、淡水を供給するための人的支援を必要とせずに生育するのを可能にしうる。
【0039】
この軽量のFGMPを、陸生植物を栽培するのに用いることができる。一部の実施形態では、FGMPユニットを相互に連結させ、浮遊性の硬質または柔軟な枠組みの中に収容することによって、浮遊性海水栽培プラットフォーム(FSCP)を形成させることができる。したがって、海洋農業は、従来のスクリーニング、変異誘発、訓練、遺伝子工学、これらの組合せ、および同様のものを介した耐塩性植物の選択によって実現できる。
【0040】
(支持構造物)
FSCP構造を支持するために、支持用の枠組みを用いることができる。浮遊性支持体部材は、その特定のFSCPが置かれるであろう水の中で浮揚性を有する限り、いかなる適当な物質から選択されたものでもよい。支持体物質は、水溶液中で容易に分解せず、かつ、塩水溶液によって腐食されないものが好ましい。構造的枠組みは、いかなる適当な物質からも作製することができる。適当な形態の例には、パイプ、袋、チューブ、気泡クッション、包装材、気球、ブイシステム、浮遊性の足場、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。この構造物は、例えば、独立気泡ポリマーフォームなどの合成繊維から作製することができる。この物質は、例えば、気密性の密封材で覆われた開放気泡ポリマーフォーム(好ましくはコーティングされたもの)形態から形成されたものでもよい。例示的物質には、ポリカーボネート、ポリビニールブチレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニリデン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、バブルラップ、浮揚性パッケージ充填材、複合物、ポリスルホン、グラスファイバー、ポリフッ化ビニリデン、プラスチックス、金属材料、HDPE、再生物質、再利用物質、空気が充満し、端部が封着されているプラスチックチューブ、金属、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。この構造物は、硬質または柔軟なポリマー物質から作製され、かつ耐水性の密封材を備えたものが好ましい。別法では、この支持構造物は、内部が中空の浮遊性金属枠からなる場合がある。
【0041】
支持構造物は、従来の既知な成形法を用いて作製することができる。そのような成形支持構造物を作製する方法の例には、射出成形;Tダイ押出成形、輪郭押出成形、パイプ押出成形、拡張成形などの押出成型法;真空成形、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形、1軸延伸、チューブラー延伸、テンターを用いた逐次または同時2軸延伸、プレス成形、回転成形、熔融紡糸、溶解紡糸、融解物吹きつけ、鋳造、カレンダー掛け、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
支持構造物は、天然素材から作製してもよい。天然素材の例には、再生物質または再利用可能物質、木質およびリグノセルロース誘導体、竹、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。加えて、支持構造物は、構成要素の混合物で作製してもよい。
【0043】
そのような支持枠組みの例を、図2、図6A、および図6Bに図示する。枠組みは、浮遊性FGMPを収納するのに役立ち、浮遊性FGMPは相互に糸でくくられ、枠組みに結びつけられるか、あるいは連結される。枠組みは、FSCPの形および大きさも決定できる。枠組みは、プラットフォームを、有害な気候条件に抵抗できるようにするのに、そして、それを選択された場所に牽引または係留するのにも有用でありうる。
【0044】
好ましい一実施形態では、枠組みを支持するのに、空気を充満させたプラスチックチューブを用いる。これらの空気を充満させたチューブは、軽量かつ経済的であり、さらに、システムから空気を抜き、これを容易に新規の場所または保管場所に輸送するのを可能にする。図3は、陸生植物がその上で生育できる薄板または薄層を支持する、そのような空気を充満させたチューブの使用を提示する。空気を充満させたチューブは、薄板または薄層バージョンのFSCPを支持するのに使用されるのが好ましいが、FGMPバージョンのFSCPがプラットフォームの浮遊を引き起こすのに十分な浮揚性を有する場合には、それを支持するのにも使用できる。
【0045】
植物の根を過度の喫食から保護するのに、任意選択で、捕獲網を用いることができる。この網は、図6Aに図示する通りに枠組みに取り付けてもよく、あるいは、他のいかなる手段で取り付けてもよい。実施例13は、根を喫食から保護するのに、捕獲網が有用であったこと、そして、その結果、バイオマスが増大したことを実証する。
【0046】
個々の薄板またはパッケージは、任意の手段で、いかなる所望のサイズまたは形にも連結することができる。複数の薄板またはパッケージを連結するのに適当な物質には、ロープ、留め具物質、ひも、クリップ、ファスナー、密封装置、クリップ、スナップ、リベット、ピン、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
薄板またはパッケージ中への植物の挿入を可能にするために、好ましい実施形態では、穿孔または空間を提供する。穿孔は、必要に応じていかなる大きさに設計してもよく、任意の適当なパターンで配置することができる。別法では、薄板またはパッケージ中の空間が十分に大きい場合、その物質中に既に存在している空間を通して、植物を直接配置することができる。これは植物の大きさと、薄板またはパッケージ中の空間の大きさとに依存する。
【0048】
FPPシステムが有する維持品目は比較的ごく少数であるが、FPPシステムがどのように機能したかを評価するため、そして、必要に応じて、破損した物質またはFSCP構造を交換または修理するために定期検査が有用である場合がある。暴風雨後の点検は、洪水状態が鎮静したならばすぐに行うことができる。残骸が蓄積するのを防止するため、週に1回、必要に応じてさらに頻繁に清浄することによって、障害となっているいかなる物質も除去することができる。
【0049】
海水中での陸生植物、好ましくは耐塩性植物の栽培は、プラットフォームベースの海洋農業というこの概念が実現可能であることを実証するものである。本発明の実証として、アクリクリ(ハマミズナ)、マイロ(サキシマハマボウ)、ナイオ(ミオポルムサンドウィケンセ)、ビーチナウパカ(クサトベラ)、シーショアパスパラム(サワスズメノヒエ(Paspalum vaginatum Sw))など、ハワイの数種の耐塩性植物が、100%海水中に浮遊する人工栽培培地パッケージ(FGMP)上で持続的に生育できることを見出した(図5A、5B、5C)。但し、これらの植物のうち一部のものは、初期に、希釈された海水中で生育を行う訓練期間を必要とした。本発明の成功は、これら陸生の塩生植物が、適当な生育培地中で、海水の正常塩濃度には順応できるが、それよりかなり高い塩濃度には順応できないという概念による。したがって、海水を用いて陸上の陸生植物に潅水した場合には、蒸発による塩蓄積によって迅速に失敗に向かうが、本発明の浮遊性プラットフォーム上では、海水の塩度を超えた塩濃度にはならないので、植物生育が持続可能なものとなる。これらの植物の根は、生育培地パッケージ中で、土壌中で形成されるものと同様の根圏を形成することができる。さらに、それらの根は、パッケージから突出して、浮遊根塊も形成する(図5A 5B、5C)。初期の実験にはハワイ沿岸の海水を用いたが、実験の大部分は、Crystal Sea (登録商標) Marine Mix (Marine Enterprises International社)から調製された人工海水中で行った。再構成されれば、その組成は海水の組成に極めて類似したものとなる(表1)。選択されたすべての植物が、FSCP上で無期限に生育できる。温室条件下では、アクリクリの場合、6カ月以内に根の長さが1メートルに達する場合がある。アクリクリは、ハワイ州カネオーヘ(Kaneohe)、ヘエイア(Heeia)養魚地において、塩度18.5pptの沿岸海水中で生育することができる(図7、図8A、および図8B)。この植物は、肥料添加なし、現地条件(1.9ppm N、0.2ppm P、および245ppm K)下で、5カ月以内に1平方フィート(930cm2)あたり乾燥重量約25gの根と、乾燥重量50gの苗条とを産生した。
【0050】
(移植方法)
プラットフォームで生育させる植物は、種子、植物体部分、切り枝、または他のいかなる適当な手段に始まるものでもよい。一部の実施形態では、植物がプラットフォーム以外の場所で生育を開始し、それらが特定の大きさに達したときに、プラットフォームに移植される。別法では、種子、植物体部分、切り枝、または他の適当な出発物質がプラットフォーム上で直接栽培され、移植の必要がない。方法の選択は、各植物品種の費用特性および特定の生育特性に依存することがある。
【0051】
植物生育培地は、任意選択で肥料を有するものでもよく、好ましい実施形態では、それは遅延放出肥料である。肥料は、滴下潅水システムを介して添加できる。別法では、いかなる肥料も添加されず、植物は塩水からすべての必要な栄養物を得ることができる。
【0052】
生育方法を増大の選択は、植物の大きさ/形態、植物の耐塩性、収穫方法、風および他の環境要素に対する植物の耐性、病害虫に対する植物の耐性、および同様のものに依存しうる。例えば、一部の植物は、薄板または薄層FSCPシステムを用いることで良好に繁茂するかもしれず、一方、他の植物は、追加の潅水および栄養物を有するFGMPに植えられた場合に、最もよく繁茂するかもしれない。
【0053】
植物体のいかなる部分も採取することができる。そして、それは、植物品種および採取方法の選択によるであろう。採取できる植物体の部分には、植物体全体、植物体部分、花部、果実、花、種子、花粉、葉、粒子、植物根、植物苗条、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の一部の実施形態では、植物体全体を採取することができ、他の実施形態では、特定の植物体部分を採取し、連続的な周期で収穫が得られるように、植物がその部分を再生するのを可能にする。採取された物質は、いかなる望ましい目的にも使用できる。採取された物質は、例えば、食物、餌、種子生産、油、繊維、「植物塩(phytosalt)」、生物燃料、香辛料、ハーブ、栄養補給食品、医薬品、染料、建築材料、工業原料、経済作物、および同様のものに用いることができる。
【0054】
本発明のFSCP上で生育する植物は、単一栽培でよい。別法では、プラットフォーム上で複数の植物を混合して生育させることができる。
【0055】
(使用する植物の選択)
アクリクリなどの耐塩性植物は、本明細書に記載の海洋農業法に特に適当な選択であるが、本発明の浮遊性プラットフォーム上で、ほとんどのタイプの陸生植物を生育できることが想定されている。
【0056】
本明細書で使用される場合、「植物」という用語は、植物体全体、植物体部分、植物細胞、または、例えば植物組織などの、植物細胞の集団を指す。小植物も、「植物」の意味の中に含まれている。被子植物、裸子植物、単子葉植物、および双子葉植物を含めた、本発明の浮遊性プラットフォーム上での生育に適したいかなる植物も、本発明に包含される植物である。
【0057】
単子葉植物の例には、アスパラガス、飼料用トウモロコシおよびスイートコーン、大麦、小麦、米、モロコシ、タマネギ、トウジンビエ、ライ麦、およびカラスムギが含まれるが、これらに限定されない。双子葉植物の例には、トマト、タバコ、ワタ、アブラナ、ソラマメ 、ダイズ、コショウ、レタス、エンドウマメ、アルファルファ、クローバー、アブラナ科植物、もしくはキャベツ(Brassica oleracea) (例えば、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ)、ダイコン、ニンジン、ビート、ナス、ホウレンソウ、キュウリ、カボチャ、メロン、カンタロープ、ヒマワリ、および様々な観賞植物が含まれるが、これらに限定されない。木本植物種の例には、ポプラ、マツ、セコイア、ヒマラヤスギ、ナラ、モミ、ツガ、トネリコ、サクラ、ブドウ、ツルコケモモ、および同様のものが含まれる。
【0058】
使用できる植物の例には、天然の耐塩性植物もしくは部分的に耐塩性の植物、適応により耐塩性となる植物、または耐塩性が増強するように遺伝子操作されているか、もしくは従来の手段で育種された植物が含まれる。さらに、滴下または噴霧機構を用いて上から淡水をプラットフォームに潅水するなど、プラットフォームおよび方法の設計になんらかの改変を加えることによって、通常は比較的に耐塩性が弱いと考えられている植物もプラットフォーム上で生育している間に適応し、繁茂することができる。
【0059】
本発明の一部の実施形態では、FSCPを用いることによって、天然でいくらか耐塩性である植物をより容易に生育させることができる。
【0060】
匍匐性薬用植物であるアクリクリ(ハマミズナ)に加えて、いくつかの耐塩性植物品種を、本発明のFGMPシステムを用いて、温室中の100%海水中で生育させるのに成功した。これらの選択された耐塩性植物は、草本では、シーショアパスパラム(サワスズメノヒエ)、低木では、ナイオ(ミオポルムサンドウィケンセ)、ビーチナウパカ(クサトベラ)、薬用植物では、シーアスパラガス(アッケシソウ属諸種)およびアクリクリカイすなわちピックルウイードすなわちオカヒジキ(saltwort) (バチスマリタイム)、木本では、ミロ(サキシマハマボウ)、およびレッドマングローブすなわちアメリカマングローブ(リゾホラマングル)である。これらの植物の一部、例えば、ナイオおよびナウパカは、初期には、希釈された海水中で生育させる適応期間を必要とすることがある。
【0061】
耐塩性または中程度に耐塩性である他の作物の例には、ビート、ケール、ワタ、ライコムギ、一部のコムギ種、エゾムギ、塩生草、ホウレンソウ、野生コムギ、ジスチクリス諸種(Distichlis spp.)、レンズマメ、カラスムギ、コメ、モロコシ、飼料用トウモロコシ、アマ、ヒマワリ、チョウセンアザミ、アスパラガス、カボチャ、ジカデヌス 、オオムギ、ライムギ、アトリプレックス、エリムス、ヘディサルム、コキア、ミオポルム、ニトラリア、プチネリア(Puccinellia)、ハマベブドウ(Coccoloba uvifera)、アッケシソウ、オカヒジキ、マツナ、アカシア、モクマオウ、ユーカリ、ヘディサルム、スイレン、ウマゴヤシ、メラレウカ、プロソピス、アッケシソウ、ギョリュウ、シカクマメ、チゾフォラ(Thizophora)、アルカリサカトウン(alkali sacaton)、塩生草、ナットールアルカリ草、ギョウギシバ、ガヤナシバ、イヌムギ、クローバー、ハマフダンソウ(Beta maritima)、メッセンブリアンセムム属諸種、サルバドルペルシカ(Salvadora persica)、サルバドルオレオイデス(S.oleoides)、クコ属諸種、サンタルムアキュミナタム(Santalum acuminatum)、カブダチアッケシソウ(Salicornia virginica)、アッケシソウ(Salicornia bigelovii)、リゾホラマングル、バチスマリタイムおよび同様のものが含まれるが、これらに限定されない。これらは耐塩性を有する傾向をもつので、これらの植物はFSCPシステムで繁茂する可能性が特に高い。
【0062】
一部の植物は、初期には塩感受性であるが、その植物を、連続的に塩度がさらに高いレベルの水溶液に徐々に移すことによって、FSCP上で生育するように適応させることができる。塩度適応操作の例を実施例16に記述する。一部の実施形態では、浮遊性プラットフォーム上で生育する植物は、例えば従来の植物育種操作によって、高い耐塩性を有するものとして選択されたものでもよい。
【0063】
さらに、遺伝子工学により、耐塩性が増強されている植物を作出することができる。したがって、一部の実施形態では、FSCP上で使用される植物は、耐塩性が増強するように遺伝子改変または遺伝子操作されたもの、汽水または海水などの塩水中での生産が、操作されていない植物と比較して増大しているものでありうる。
【0064】
したがって、一部の実施形態では、浮遊性プラットフォーム上で生育する植物は、耐塩性が増強されるように遺伝子改変されたものでありうる。本明細書で使用される場合、「遺伝子改変」という用語は、1つまたは複数の植物細胞の中への、1つまたは複数の異種核酸配列の導入を指し、これらの植物細胞は、その後、稔性の生きた植物体全体を作出するのに使用できる。本明細書で使用される場合、「遺伝子改変されている」という用語は、前述の過程で作出された植物を意味する。遺伝子改変されている植物を生育させるためのFSCPの使用例を実施例20および21に示す。
【0065】
一部の植物は、塩度の低い水の中で最も良く生育し、ひいては淡水を潅水する滴下システムを加えることによって最も良く生育するものもある。これらのタイプの植物では、より低いレベルの塩度を有する湾または養魚池にFSCPを置くことができる。
【0066】
本発明の方法は、例えば、浮遊する塩水性観賞植物を生育させることによって、海洋の景観整備に用いることができる。耐塩性の観賞植物を保持するFSCPは、湾または海洋景観整備に有用でありうる。これらは、水路に美しい外観を与えることに加えて、水中に存在しうるディーゼル油、油、気体、またはその他の物質など、一部の濁り物質および汚染物質を除去することによって、水を浄化するという追加の利点を有する場合もある。
【0067】
(使用する塩水の選択)
本発明のFSCPは、いかなる大きさの水体に浮遊させてもよい。水体の例には、天然池、人工池、水族館タンク、養殖池、塩水湖、 養魚場、デルタ、地下水、池水、ラグーン、沼地、湾、ため池、帯水層、水再生施設、淡水化施設、沿岸海洋水域、外洋水域、修復システム、栽培システム、ゴルフ場の池、沼沢地、鹹水、潮湿原、湿地帯、江湾、フィトレメディエーション現場、港、マリーナ、海洋農場、ボート場、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
海水中に存在する溶解塩元素には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、塩素、硫黄、臭素、および他の元素が含まれる。したがって、陸生植物の生育に必要な栄養物の多くは、海水中に既に存在している。最小限の栄養素添加を必要とする場合もあるが、これは、点滴潅水によって投与することができ、あるいは、好ましくは遅延放出肥料として、生育培地パッケージ中に存在する場合もある。用いられる量は、植物生育の速度、栄養必要量、および他の因子に依存しうる。
【0069】
FSCPは、様々な塩度の塩水中で陸生植物を生育させるのに使用できる。「塩度」という用語は、水中に溶解されている塩の量の尺度を意味する。湾、ラグーン、および江湾は、塩性海洋水が淡水と混ざる場所であるので、様々な塩度を示す。塩度の測定値は、通常千分率(ppt)で表される。淡水の塩度は、通常、1000分の0から1(ppt)の範囲にある。汽水は、わずかに塩気があると考えられており、通常約1から約32pptまでの範囲にある。海水の塩度は、通常、30pptを超えた全域である。湾内の塩度レベルは、約20〜30pptでありうる。外洋の塩度は約35pptである。湾口の近傍の海洋塩度レベルは、希釈のため、若干低いものでありうる。そして、湾および江湾の塩度は、通常さらに希釈されている。水体の塩度レベルは、例えば、海流の動き、雨または雪による希釈、そして、風による水の混合によって変動することがある。
【0070】
FSCPは、様々な塩度の塩水の水体に置くことができる。例えば、FSCPは、約3、5、7、9、または10pptから約32、33、34、35、36、37、39、または41pptまでの様々な塩度レベルの塩水中で使用できる。本発明の一部の実施形態では、約12、15、18から約21、24、27、または30pptの塩度レベルで植物を生育させる。
【0071】
「塩水」という用語は、いくらかの塩が存在している水を全般的に指す。通常、「淡水」という用語は、塩が1000ppm未満である水を全般的に指す。「わずかに塩性の水」という用語は、塩が約1000ppmから約3000ppmの水を全般的に指す。「中程度に塩性の水」という用語は、塩が約3000ppmから約10000ppmの水を全般的に指す。「高度に塩性の水」という用語は、塩が約10000ppmから約35000ppmの水を全般的に指す。海洋水は、通常、約35000ppmの塩を含有している。
【0072】
FSCPは、0%海水から100%海水の範囲にある水体中で植物を生育させるのに使用できる。例えば、約0%、5%、10%、または20%から、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%までの海水中で植物を生育させることができる。さらに、約25%、30%、40%から約50%、60%、または65%の海水中で植物を生育させることができる。FSCPは、汽水、塩水混入物で汚染された淡水、塩水養魚池、または天然海水を利用することができ、あるいは、合成海水調製物を利用してもよい。例えば、実験目的には、製造元(Crystal Sea(登録商標) Marinemix; Marine Enterprises International社、メリーランド州Baltimore所在)によって記載されているように合成海水を調製することができる。そのような人工海水の内容物の例を、下記表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
海水は、いかなる所望の濃度に希釈することもできる。例えば、所与の植物品種が塩水溶液で生育する能力を試験するために、人工海水を希釈することができる。人工海水は、プラットフォーム用の人工栽培領域を作製するのに用いることができる。さらに、人工海水を用いて、植物を低塩度の塩水から、より塩度の高い塩水環境にゆっくり適応させることによって、最終的にはFSCPに移植する幼植物を適応させることができる。
【0075】
(利点)
本発明の方法を用いて植物を生育させることにはいくつかの利点がある。第1に、海水塩度に耐性を有する植物には潅水の必要がない。特定の植物品種の生育には、ある程度の淡水潅水が必要でありうるが、その量は、通常、土壌中で生育させた場合に同じ植物品種に潅水するのに通常使用される量よりはるかに少ないであろう。したがって、この方法は、淡水の利用可能性が低い状況で特に有益である。
【0076】
本発明の別の利点は、追加栄養物(肥料)を投与する必要性が最小であることである。必要な栄養物の多くは、汽水または海水それ自体から取得でき、そして、必要な場合には、滴下システムまたは遅延放出肥料を用いて効率的に追加栄養物を投与することができる。
【0077】
本発明の方法のさらなる利点は、移動性が高くなるようにプラットフォームを設計できる点にある。したがって、本発明の一部の実施形態では、例えば、気象の変化、またはプラットフォーム上で生育する作物の季節変化に反応して、プラットフォームを容易に解体し、別の場所に設置することができる。
【0078】
本発明のプラットフォームは、その柔軟性によって、多くのタイプの水体上で、多くのタイプの植物を生育させることが可能となっている。所望の必要性にあうように、プラットフォームのサイズ、形、および寸法を設計することができる。例えば、小さな天然の池、ゴルフ場の池、人工池(養魚池など)で使用するためにプラットフォームを用意することもできるし、ラグーンまたは湾内の設定で使用するために設計することもできる。さらに、沿岸水域または外洋で使用するためにこの方法を設計することもできる。
【0079】
本発明の栽培システムの用途の例には、景観整備用または生産用の装飾作物の生育と、食物、飼料、油、繊維、栄養補給食品、医薬品、建築材料、工業原料、色素、生物燃料、薬および栄養補助食品、ならびに他の経済作物の生産と、魚集団の集密化、淡水化、およびフィトレメディエーションなどの環境の改変と、同様のものとが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
(栽培プラットフォームの様々な使用)
陸上での農業の実践と同様に、海上、または汽水沼地もしくは江湾環境、特に水が比較的穏やかであるところ(例えば、港、ラグーン、および沿岸の養魚池)では、FSCPの潜在的な使用が多数ある。選択、訓練、育種、または遺伝子工学を通して、海水の正常塩濃度以上の塩に対する耐性を獲得したいかなる植物も、海中のFSCP上で生育するのに適しているであろう。生育の最適条件は、植物品種ごとに異なるであろうが、健全な生育に必要な2つの栄養物が窒素およびリン酸である。潅水は必要ではないが、多くの場合、低速度での点滴潅水によって生育が促進され、FSCPシステムに適合性を有する植物の範囲が広がるであろう。
【0081】
FSCPは、塩水体のバイオレメディエーションに用いることもできる。実施例9、10、11、17、22、および23は、FSCPを用いて塩水域のバイオレメディエーションを行う例示的方法を示す。植物を用いたバイオレメディエーションは、土壌から汚染を除去するのに使用されている。この方法は、「フィトレメディエーション」または「フィトエクストラクション」と呼ばれ、これは、殺虫薬、PCB、および重金属などの有機または無機汚染物質を土壌から除去するための、植物の使用である。塩水体中に過剰量の窒素、リン、およびカリウムが存在するのも、汚染問題となりうるが、本発明の方法を用いてこれを改善することができる。
【0082】
一部の植物は、例え高レベルであっても、金属または他の汚染物質を吸収できるようである。そのような植物は、時には、超集積植物またはメタロファイト(metallophytes)と呼ばれる。これらの超集積植物は、本発明の実施形態を用いた塩水体のバイオレメディエーションのための好ましい選択でありうる。特定の植物は、ニッケル(Brooksら、1979年)、コバルトおよび銅(Brooksら、1978年)、マンガン(Brooksら、1981年)、鉛および亜鉛(ReevesおよびBrooks)、亜鉛およびカドミウム(Brownら、1994年)、ならびにセレニウム(BanuelosおよびMeek)を蓄積することが判明している。鉛蓄積植物の例には、インド芥子菜植物であるカラシナ(Brassica juncea) (Kumarら、1995年)がある。
【0083】
バイオレメディエーションは多数の陸上汚染現場および淡水汚染環境で適用に成功しているが、塩濃度が高くなっている河口環境または海洋環境におけるその使用に関しては、利用可能な情報がほとんどない。主な制約は、陸生植物とは異なり、水面下の海草は、バイオレメディエーションが通常起こる大きな根圏を通常もたないことと、ホテイアオイなどの淡水植物に匹敵するいかなる塩水性の水生植物も存在しないことである(VeskおよびAllaway、Aquatic Botany、第59巻、33〜44頁(1997))。
【0084】
FSCPは、根圏内の豊富な微生物集団に根からの滲出を介して養う単一植物群落または混成植物群落を確立するのに使用できる。そして今度は、これらの微生物が、窒素(例えば、根粒菌であるアゾトバクターパスパリ(Azotobacter paspali)) (DobereinerおよびDay、「Nitrogen Fixation by Free-Living Microorganisms」、Stewart編集、Cambridge Univ. Press社、英国Cambridge所在、39〜56頁(1975))、およびリン(例えば菌根) (HabteおよびFox、Plant Soil、第151巻、219〜226頁(1993))の利用可能性を促進することもあれば、高塩度および重金属などの有害な環境条件に対する植物の耐性を強化することも(Bradleyら、The New Phytologist、第91巻、197〜201頁(1982);Pondら、Mycologia、第76巻、74〜84頁(1984);Jindalら、Plant Physiology and Biochemistry、第31巻、475〜481頁(1993);Bethlenfalvay、「Mycorrhizae in sustainable agriculture」、BethlenfalvayおよびLinderman編集、ASA/CSSA/SSSA、Wisconsin州Madison所在、1〜27頁(1992)、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)、汚染物質の分解、キレート化、および輸送を促進することもある(BrodkorbおよびLegger、Applied and Environmental Microbiology、第58(9)巻、3117〜3121頁(1992);BeveridgeおよびFyfe、Can J Earth Sciences、第22巻、1893〜1898頁(1985);Ferrisら、Nature Lond、第320巻、 609〜611頁(1986)、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)。したがって、本発明のFSCPは、選択された植物が確立されたときに、「浮遊性フィトレメディエーションプラットフォーム」(FPP)として機能できる。本発明の一部の実施形態では、FPPが、海洋環境中に戦略的に配置された機能的かつ持続可能なフィトレメディエーション設備である。例えば、配備されている間、FPPは、ボートマリーナの周辺でよく見られる浮遊している油皮膜の石油系炭化水素など、水面にある標的の水汚染物質を吸収および分解することができる。FPPは、汚染物質の吸着/分解能をほとんど恒久的に再生することによって、現在の最新技術である油吸着漏洩制御ブーム(oil-adsorbing spill control boom)より性能の優れたものでありうる。加えて、フィトレメディエーションプラットフォームには、通常、肥料適用の必要がない。植物根および苗条は、生育速度に応じて6〜12カ月毎に手操作または機械操作で採取することができる。バイオマスをどのように利用するかを決定するために、採取前に、商業的分析実験室で、選択された植物組織における微量金属(亜鉛、銅、および鉛)、リン、および窒素の含有量を分析することができる。
【0085】
FSCP法は、海洋環境における重金属のin-situフィトレメディエーションに用いることができる。本明細書で使用される場合、「金属」という用語は、金属含有汚染環境に存在する金属イオンを指すことが好ましい。この用語には、イオン形態にある金属のみではなく、元素金属も含まれることが理解されよう。植物は、1つのタイプの金属を摂取および蓄積するものでも、複数の金属またはいくつかの金属の混合物を摂取および蓄積するものでもよい。本発明の方法に従って蓄積できる金属には、鉛、クロム、水銀、カドミウム、コバルト、バリウム、ニッケル、モリブデン、銅、砒素、セレニウム、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、金、マンガン、銀、タリウム、スズ、ルビジウム、バナジウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、セシウム、ウラン、プルトニウム、およびセリウムなどの安定金属および放射性金属が含まれる。「金属」という用語には、例えば、ニトロフェノール、ベンゼン、アルキルベンジルスルホナート、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、および/またはハロゲン化炭化水素と化合した鉛またはクロムなど、金属と一般的な有機汚染物質との混合物も含まれる。陸生植物によって蓄積できる金属および汚染物質に関するさらに詳細な記述は、米国特許第5785735号、第5876484号、および第5927005号に見出すことができ、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。
【0086】
塩水中の重金属汚染物質の例として、船のペンキから沿岸海洋環境中への銅の遊離は、トリ-n-ブチルチン防汚塗料が銅ベースの船舶用ペンキで置換された結果、有意に増大した(StephensonおよびLeonard、Marine Pollution Bulletin、第28巻、148〜153頁(1994);Gustavsonら、Hydrobiologia、第1巻、125〜138頁(1999);ClaisseおよびAlzieu、Marine Pollution Bulletin、第26巻、395〜397頁(1993)、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)。海生生物に対するこの金属の毒性は、海洋および河口の生態系を脅かす(Sundaら、Estuarine Coastal and Shelf Science、第30巻、207〜222頁(1990);Reichelt-BrushettおよびHarrison、Marine Pollution Bulletin、第38巻、182〜187頁(1999)、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)、世界規模の深刻な問題となった(Nagatomoら、Journal of Shimonoseki University of Fisheries、第41巻、167〜178頁(1993)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。銅および他の海洋金属汚染物質の防止および修復への緊急の必要性があり、また、それに対する関心が増大している(U.S. Environmental Protection Agency, National Science Foundation, Office of Naval Research and DOD/DOE/EPA Strategic Environmental Research and Development Program. Joint Program on Phytoremediation、ハイパーテキスト転送プロトコルhttp://es.epa.gov/nceqa/rfa/phytore00.html、1〜11頁(2000)を参照、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。海水中のFSCP法を成功させることによって、この必要性を満たすことができる。
【0087】
FPPを用いて、ハワイに自生するツルナ科の塩生植物であるアクリクリ(ハマミズナ)が、除銅植物(copper excluder)として同定された(Baker、Journal of Plant Nutrition、第3巻、643〜654頁(1981))。アクリクリは、苗条より高い濃度で重金属を根の中に蓄積する(実施例9および表2)。アクリクリは、まず、FPPプラットフォーム中で大規模な根系を迅速に確立し、その後、プラットフォームを貫いて、海水中に浮遊根塊を形成することができる。根は、この栽培条件下で、6カ月以内に1メートルを超える長さに達した。この根圏(プラットフォーム中)が、浮遊(海水中)根系と共に、銅イオンを海水から効果的に除去した。35mgL-1の銅で修正された海水中に1日間生育させた後に、根、茎、および葉は、1g乾燥質量(DM)あたり、それぞれ4898、35、および18μgの銅を含有していた。これらの値は、既に同定されている全ての陸生除銅植物よりはるかに高い値である。例えば、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes) (SaltabasおよびAkcin、Toxicological and Environmental Chemistry、第41巻、131〜134頁(1994);VeskおよびAllaway、Aquatic Botany、第59巻、33〜44頁(1997))、エルショルチアハイコベンシス(Elsholtzia haichowensis)およびツユクサ(Commelina communis) (TangおよびWilke、「Heavy metal uptake by Elsholtzia hainchowensis Sun and Commelina communis L. grown on contaminated soils」、Luoら編集、 International Conference of Soil Remediation、228〜233頁(2000)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)、または、重金属を苗条に極めて高い濃度、すなわち>1000mg kg-1で蓄積できる銅超蓄積植物(Brooks、「Plants that hyperaccumulate heavy metals」、Brookes編集、Wallingford, UK:CAB International社、55〜94頁(1998);Bakerら、「Phytoremediation of contaminated soil and water」、Terryら編集、Lewis Publishers社、米国Florida州Boca Raton所在、85〜107頁(2000))、例えば、ハウマニアストラムロベリチ(Haumaniastrum robertti) (Baker、Biorecovery、第1巻、81〜126頁(1989);Reevesら、Mining Environmental Management、第9巻、4〜8頁(1995))、ハウマニアストラムカタンゲンセ(Haunaniastrum katangense) (Brooksら、「Remediation of soils contaminated with metals」、Proceedings of a conference on biogeochemistry of trace elements, Taipei, Taiwan、Science Reviews社、米国Northwood州所在、123〜133頁(1997)、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)より高い値であるが、例外として、エオランツスビフォルムフォリアスデワイルド(Aeollanthus biformifoliiums De Wild)という植物は、球茎、葉、花茎中に、それぞれ1g DMあたり13700、2600、および3500μgの銅を含有している(Malaisseら、Science、第199巻、 887〜888頁(1978)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。堆積層近くの層からの金属に富んだ底層水を、ポンプでFPPに送水することができ、汚染物質は、垂直な根圏濾過(rhizofiltration)を通して除去される。その後、金属を搭載したFPPを簡潔に収集することができ、焼却することによって重金属が濃縮される。この方法は、広く採用されているex situフィトレメディエーションアプローチよりも処理しやすく、かつ費用対効果に優れている。この方法は、掘削、輸送、および植物生育のための汚泥の再調整の手間を除き、かつ、土壌から金属に富んだ細根を除去するという、しばしば不可能な問題を経済的に解決する。
【0088】
上述したFPP技術は、例えば汚染地域の低い地点にため池を作ることによって、土壌のバイオレメディエーションにも適用される可能性がある。金属イオンなどの水溶性汚染物質は、雨または人工の連続潅水によって、ため池へと洗い流すことができる。FPPが汚染物質の濃縮器として役立つであろう。
【0089】
本発明のFSCP法は、システムの設計に応じて、あらゆるサイズの植物を生育させるのに使用できる。多年生、草本、一年生植物、矮性植物、主穀、および副作物の生育、そして樹木の生育さえ可能である。FSCPは、景観整備または生産用に装飾作物を生育させるのに使用できる。FSCPは、美的価値を有する植物の混成栽培を支持することができる。
【0090】
(食物および他の用途)
FSCPは、食物、油、繊維、生物燃料、香辛料、薬用植物もしくは栄養補給食品、医薬品、および他の経済作物を生育させるのに使用できる。食物を生育させるためのFSCPの使用の例は、実施例7、12、14、18、19、および20に示す。例えば、ハマミズナは、食物および分子農業に利用可能な作物であると考えることができる。ハマミズナの多肉質の茎は、野菜として生で、あるいは煮て食べることができる(Merlin、「Hawaiian Coastal Plants」、Pacific Guide Books社、中華民国台湾台北市所在、41頁(1999)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。ハマミズナの多肉質の葉は、多量の塩、タンパク質、無機栄養素、および栄養補助物質を蓄積している。葉の中のナトリウムの濃度は、栽培用水の塩度と共に上昇する(実施例14および表4)。
【0091】
100%海水で栽培されたハマミズナ植物は、葉乾物量の15%を超えるナトリウムイオンを含有している(実施例14および表4)。したがって、ハマミズナ葉の粉末は、「植物塩」としての潜在的用途を有する。表に示す通り、採取されたハマミズナ組織は、塩の蓄積に加えて、多数の栄養物を含有している。
【0092】
ハマミズナの苗条は、栄養補助物質であるプロリンを乾燥重量の0.85%を超えるまで蓄積する(VenkatesaluおよびKumar、Journal of Plant Nutrition、第17巻、1635〜1645頁(1994))。ハマミズナの植物全体は、エクジステロンに富んでいる(3.5g/kg乾物量) (Banerjiら、Phytochemistry、第10巻、 2225〜2226頁(1971)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)が、エクジステロンは、非ホルモン性のタンパク同化栄養補給剤として市販されている。エクジステロンは、昆虫の脱皮を刺激し、したがって、害虫の生物的防除における化学不妊剤としての潜在的用途を有する(LonardおよびJudd、Journal of Coastal Research、第13巻、96〜104頁(1997)、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)。加えて、エクジステロンは化粧品に使用されている(Linらに交付された中国特許出願第86-106791 19860930号;および国際公開第9404132号、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)。最近、エクジステロンは、前立腺癌に対する抗腫瘍活性(StockmおよびCampbell、「Human germline engineering - the prospects for commercial development」、リンクess.ucla.edu/huge/Stockatc.html (2003)におけるワールドワイドウェブから入手した)、抗炎症活性(Kurmukovら、Meditsinskii Zhurmal Uzbekistana(英語の要約を有するロシア語で書かれた雑誌)、第10巻、68〜70頁(1988))、および抗酸化活性(Kuz'menko、Ukr Biokhim Zh(英語の要約を有するロシア語で書かれた雑誌)、第71巻、35〜38頁(1999))など、様々な医学的機能を有することが判明している。これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。
【0093】
本発明のFSCPの別の有用な目的は、沿岸の魚類生息地を改善することにある。FSCPは、周囲の水体に定常的に、光合成産物、捕食者に対する防御、および日陰を提供し、水生植物および動物に食物源および生息地として役立つ。
【0094】
本発明のFSCP法は、海岸を侵食から保護するための風よけおよび波よけを作製するのに使用することもできる。例えば、大規模なプラットフォームを設計し、戦略的な場所に構築して海岸を保護することができる。海岸侵食から陸を保護するのに加えて、風よけまたは波よけプラットフォームは、魚の保護を提供することができ、さらに、景観整備の目的に用いることもできる。浸食からの防御を行うこの方法は、地球温暖化のため、温度上昇が現行の速度で進んだ場合、200年以内に海面が3フィート(91.44cm)高くなるであろうという予測を考慮した場合に特に重要である(SymeおよびTait、2001年、「Earth Pulse: Rising tide of concern」、Natl. Geog、第199:2号)。
【0095】
浮遊性プラットフォームは、淡水化の目的にも使用することができる。アクリクリは、ナトリウム蓄積植物であることが示されている。塩度が上昇している湖沼群では、アクリクリなどのイオン蓄積植物を伴ったFSCPを淡水化に用いることができる。蓄積できるイオンの例には、ナトリウム、リン、カリウム、窒素、硫黄、ホウ素、塩素、および同様のイオンが含まれるが、これらに限定されない。脱塩された水は、その後、潅水用、飲料水、または他の水利用の必要性などの多くの目的に、直接用いるか、あるいはさらに処理を施すことができる。さらに、海洋上で浮遊する透明プラスチックドーム内で迅速に生育する植物を確立することによって、植物の蒸散作用を通して携帯用の飲料水を産生する装置が得られる。この装置は、干ばつの影響を受けやすい島々で特に貴重なものとなりうる。本発明の方法を用いた池の淡水化の例を実施例22に示す。
【0096】
上記の開示は、本発明を一般的に説明するものである。より完全な理解は、下記の特異的な実施例を参照することによって得られる。本明細書において、実施例は例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【0097】
(実施例)
(実施例1)
(浮力を得るために空気の充満した袋を備えた薄板スタイルFSCPの作製例)
沿岸水域または暴風雨状態中の水域など、水域が穏やかでなければ穏やかでないほど、その水域では、硬質な枠組みで起こりうる破損問題を、システムがより柔軟であることによって回避することができる。したがって、空気が充満しているプラスチックパイプと、ポリプロピレン製グランドカバーとを使用し、以下の方法を用いてFSCPを作製した。この方法は、それに加えて、組立および輸送の容易さ、ならびに低価格であるという利点も有する。薄板スタイルのFSCPを作製した。それは、1層のポリプロピレングランドカバーで構成されており、それが折り込まれて、伸長するプラットフォームに沿って特定の間隔(例えば11インチ(27.9cm))で細くて長い袋を形成している。袋のそれぞれが、プラットフォームを支持する2本のプラスチックパイプを含有していた。空気パイプは、ポリエチレンチューブに空気を送り込み、両端を封着させることによって作製した。植物茎を2本の空気パイプの間に入れて支持し、袋の中の空間の間で根を成長させ、グランドカバーを通して突出するようにした。プラットフォームのそれぞれ端は、プラスチック製の留めクリップ(Easy Gardener社、テキサス州Waco所在)で10フィート(304.8cm)毎に留めた。留めクリップを通した長いナイロン(登録商標)製のロープでプラットフォームユニットを引き延ばし、両端で係留した。その後、各プラットフォームユニットをケーブルタイで並列に連結して、大規模なFSCPを形成させた。
【0098】
(実施例2)
(堅い構造的枠組みを作るのにPVCパイプを用いた薄板スタイルFSCPの作製例)
アクリクリは匍匐性草本なので、水上でのその生育を支持するのに、1層の遮光布と、PVCパイプ枠組みの上にかぶせたグランドカバーとを備えた薄板スタイルプラットフォームシステムで十分であった。薄板スタイルプラットフォームは、上記実施例で記載した通りに作製したが、PVCパイプでできた構造的枠組みを使用した点が異なっていた。枠組みは、長さ5フィート(152.4cm)のPVCパイプ(直径1.5インチ(3.81cm))2本と、長さ10フィート(304.8cm)のPVCパイプ2本とを標準的方法で連結することによって組み立てた。PVCパイプ(直径1.5インチ)の小片の1側面を通して切り込み、遮光布をPVCパイプに接続するのを容易にするのに用いた。遮光布/グランドカバーはできるだけきつく引き伸ばし、長さ8インチ(20.32cm)のナイロン(登録商標)ケーブルを用いてPVCの枠組みに結びつけた。
【0099】
(実施例3)
(浮遊性生育培地パッケージングFGMPの作製およびFGMPを用いた様々な生育培地の試験)
浮遊性海水栽培プラットフォーム上でのアクリクリまたは他の植物を生育させる1つの標準的手順は以下の通りである。図2に図示されている典型的なFGMPを、ポリプロピレン(70%または100%)製遮光布袋(長さ3フィート(91.44cm)、幅1.5フィート(45.72cm)、そして厚さ5インチ(12.7cm))で作製した。ポリライト発泡ポリスチレン(EPS)薄片(ポリライト; Pacific Allied Products社、ハワイ州Kapolei所在)などの固形栽培培地を、枕様の袋に入れた。いっぱいになった袋は、ミシンを用いて密封した。実験目的には、小型のFGMPを円筒型(直径1フィート(30.48cm)、高さ5インチ(12.7cm))に作製した(図.5A、5B、5C、6B、9A、および9Bに示す)。3種類の培地を試験した。すなわち、1.ピートモスとポリライトとの1:1混合物;2.真珠岩とポリライトの1:1混合物;および、3.ポリライトのみである。FGMPに、アクリクリ、マイロ、およびナイオを植え、数カ月間生育させた。7カ月後には、これらの3種類の生育培地中でのアクリクリ、マイロ、およびナイオの生育に有意差がなかった。したがって、100%のポリライトを栽培培地に用いた。苗が移植できるように、遮光布の上に小さい穴(直径1/2インチ(1.27cm))を切り込んだ。各植物の間の空間は6インチ(15.24cm)×12インチ(30.48cm)であった。支持PVCパイプ枠組みは、長さ5フィート(152.4cm)のPVCパイプ(直径1.5インチ)2本と、長さ10フィート(304.8cm)のPVCパイプ2本とを標準的方法で連結することによって組み立てた。
【0100】
(実施例4)
(苗の用意およびシステムへの移植)
少なくとも1つの節と、2枚の葉とを含有するアクリクリ切り枝を、#1 Sunshine培養土(Sun Gro Horticulture社、ワシントン州Bellevue所在)を含有するプラスチック製増殖ポット内で生育させた。ポットには、10分間毎に2秒間の噴霧で潅水した。1カ月間生育させた後、塩に順化させるために、苗ポットを備えた増殖ポットを、32から35ppt(千分率)塩度の人工海水中に1週間浸漬させた。その後、苗を、海水または汽水中のFGMPに移植した。6本植えられているFGMPを、FSCPユニット内部に配置し、PVC枠組みにケーブルタイで結びつけて、FGMPユニットさせた。移植された苗の生存率を、1週間生育させた後に測定した。移植ショックから回復しなかった苗は置換した。
【0101】
(実施例5)
(FSCPへのFGMPの設置)
移植されたFGMPを、次にFSCPシステムに設置した。根を魚の喫食から保護するために、魚網(サイズ3/8インチ(0.95cm))を各FSCPユニットの枠組みの下で接続した。ユニットは、それぞれ約270ポンド(122.6kg)を保持できる2本の2フィート(60.96cm)ナイロン(登録商標)ケーブルタイで連結した。システムの位置が移動するのを防止するために、FSCPシステム全体を両側で20フィート(609.6cm)毎にアンカーまたは傘立てに固定した。
【0102】
(実施例6)
(高耐性ポリエチレン薄板および気泡クッションを用いた浮遊性海水栽培プラットフォーム)
1層の気泡クッション(包装材)を高耐性ポリエチレン薄板の下部側面にポリカーボネートまたはポリエチレンの鳩目を用いて装着させた。水面に浮遊する軽量のポリプロピレンロープを、HDPE薄板を囲むのに用いる。これは、プラットフォームの端部および魚網の支持物質として役立つ。25フィート(762cm)毎に薄板に補強ポリエチレン薄板を追加し、補強HDPEを、すべての角と、補強ポリエチレンシートに沿って追加した。そこでは、ナイロン(登録商標)製のロープがアンカーに引っかけられて、接続されている。各プラットフォームの全長は100フィート(30.48m)である。約800株の植物が、6×12インチの間隔で鳩目の中に分布していた。プラットフォームの幅は、4から6フィート(121.9〜182.9cm)まで変化する。この薄板スタイルのプラットフォームはアクリクリを生育させるのに適当である。アッケシソウなどの小さな低木の生育は、口(外径1.25cm)付きのプラスチックチューブおよび1インチステップの使用によって収容することができる。アッケシソウの苗は、スポンジの薄層で覆い、チューブの中を通した。このプラットフォームの詳細を図10に図示する。
【0103】
(実施例7)
(アクリクリを生育させるためのFSCPの使用)
温室条件下に、10ガロン(約40L)の水槽あたり5gの調節放出肥料Nutricote (13N-13P-13K) (Nutricote社、ハワイ州所在)を添加して、アクリクリ植物を生育させた。植物は、5カ月間でft2(938.8cm2)あたり乾燥重量14.2gの根物質および205gの苗条物質を産生した(表3)。加えて、アクリクリ植物は、100%海水中(データは示されていない)および汽水中(図9Aおよび9B)のFGMP表面で切られた後に、迅速に苗条および根を再生させた。
【0104】
(実施例8)
(マングローブ木を生育させるためのFGMPの使用)
FGMPシステムは実施例3に従って用意した。このシステムにはアメリカマングローブ(リゾホラマングル)を植えた。マングローブは、温室内の100%海水中で3.5年生育して、高さ5フィート(152.4cm)に達した。
【0105】
(実施例9)
(FSCPを用いた塩生の陸生植物による海水からの銅の抽出)
アクリクリ(ハマミズキ)は除銅植物であり(Baker、Journal of Plant Nutrition、第3巻、643〜654頁(1981))、苗条より高い濃度で重金属を根の中に蓄積する(表2)。アクリクリは、まず、FPPプラットフォーム中で大規模な根系を迅速に確立し、その後、プラットフォームを貫いて、海水中に浮遊根塊を形成することができる。温室条件下で6カ月海水上のプラットフォームで育成された植物の根を、35ppmの銅で修正された海水中に24時間浸漬した。24時間のうち、約11時間は、最大光度約600μmol m-2s-1の昼間そして、13時間は夜間であった。余分な銅を除去するために、根を浸漬した植物を手によって水道水(処置溶液と同じ500mL)で3回穏やかに洗浄した。植物組織を、浸漬された根、茎、および葉に切り離し、真空オーブン中、70℃で24時間乾燥させた。金属は原子吸光分析によって測定した。アクリクリ根系は銅イオンを海水から効果的に除去し、以前に同定されている陸生除銅植物より高いレベルで銅を蓄積した。
【0106】
【表2】

【0107】
(実施例10)
(汚染されている汽水のバイオレメディエーションを行うためのFSCPの使用)
ボートマリーナは、定常的なボート利用によって、生成される化学物質で強度に汚染されていることが知られている。この水域におけるある領域を、ボートの交通から遮断している。ハマミズナなどの耐塩性の匍匐性植物を用いて薄板スタイルのFSCPを用意する。1カ月後には、水の汚染が低下しており、マリーナの同様に汚染されている別の場所にFSCP(植物も含まれる)を牽引する。そして、FSCPは新規の領域を浄化する。浄化と、FSCPを新規の領域に牽引することとのサイクルを必要なだけ続ける。
【0108】
(実施例11)
(重金属で汚染されている高塩度土壌のフィトレメディエーションを行うためのFSCPの使用)
塩土のフィトレメディエーションは、ほとんどの植物がそのような土壌で良く生育しないので、特別の問題となっている。しかし、この方法では、耐塩性植物であるハナミズキ植物を使用し、除去されるべき汚染物質が集まるようにため池を設計する。月齢1ヶ月のハナミズキ植物50株を含有するFSCPを用意する。重金属で汚染されている土壌領域の低い地点に人工的に作製したため池に、このプラットフォームを配置する。ハナミズキ植物が汚染物質を摂取し、2カ月後に、植物を採取し、それに続いて焼却して、重金属汚染物質を回収する。
【0109】
(実施例12)
(ハマミズナのバイオマス生産)
ハマミズナのバイオマス生産は、ハワイ州カネオーヘ、ヘエイア養魚池からの堆積物および汽水を含有している10ガロン水槽中で、温室条件下に測定した。各水槽を、5gの調節放出肥料(13N-13P-13K) (Nutricote社、ハワイ州所在)で修正した。初期の総溶解窒素および溶解リンはそれぞれ1.9および0.2mg/Lであった。144日間の実験の後、植え付けられたタンク内の総溶解Nおよび溶解Pは、それぞれ0.027および0.20mg/Lであった。タンクの水面の半分は、中心の1株の植物を有する円形の浮遊性海水栽培プラットフォーム(直径11インチ(27.94cm))で覆われていた。値は3つ複製の平均である。括弧内の数は標準偏差である。
【0110】
【表3】

【0111】
(実施例13)
(捕獲網は根および苗条のバイオマスを改善する)
植物の根の下に追加した網層(根を食べる捕食者から保護するための)が植物の生育に有意な影響を与えるかどうか判定するために、アクリクリ植物を、ハワイ州ヘエイア養魚池の沿岸海水中にある、捕獲網層有りまたは無しのFSCP上に配置した。植物を5カ月間生育させ、その後採取して、根および苗条の生育を比較した。結果(図8Aおよび8B)は、捕獲網が、魚および海洋動物による喫食から根を有意に保護し、網の外の植物と比較して、根および苗条のバイオマスが増加したことを実証する。
【0112】
(実施例14)
(「植物塩」を調製するためにハマミズナの組織を採取することができる)
ハマミズナの苗条および根を採取することによって、栄養価の高い「植物塩」を調製できるかどうかを判定するため、ハマミズナの組織の栄養素量を測定した。植物は、温室内の汽水中および100%海水(塩水)中で育成させた。苗条および根の乾燥重量は、それぞれ生体重の約19.7%および11.2%である。採取されたハマミズナの根および苗条の栄養素量を下記表4に示す。海水中で生育させた場合、葉物質が高レベルのNa+を蓄積できたことに留意されたし。
【0113】
【表4】

【0114】
(実施例15)
(植物品種がFSCPシステムで繁茂するかどうか判定する方法)
人工海水を調製する。最初に、週齢6週間のトマト試験植物の重量を量り、その後、25%、50%、75%、および100%人工海水に希釈されている人工海水の容器中にあるFMGPスタイルのFSCPに移植する。2週間、1カ月、2カ月、および3カ月の間隔で、植物を採取し、重量を再計量する(または測定する)。生育の判定を行う。重量またはサイズが増大した植物は、海水システムで繁茂することができる。
【0115】
(実施例16)
(植物品種がFSCPシステムに適応できるかどうか判定する方法)
状況によっては、FSCPシステムの高塩度塩水環境に突然置かれると、植物は生き残らないかもしれないが、高塩度環境にゆっくり適応させたならば、生き残って、繁茂できるかもしれない。植物をより高い塩度の環境に適応させる方法を下記に記述する。
【0116】
カボチャ植物の種子を正常な土壌中に植え、植物栄養溶液で2カ月間潅水する。その後、植物を土壌から取り出し、FMGP中に慎重に移植する。FMGPを1%の人工海水中に1週間置き、その次の週には5%の人工海水に置き、その次の週には10%の人工海水に置き、その次の週には20%の人工海水に置き、それに続いて毎週10%ずつ増加させる。この過程を生き残り、繁茂する植物は高塩度に適応することができ、FSCP栽培に用いることができる。50%海水では生き残れるが、100%海水では生き残れない植物は湾または河口に位置したFSCP用の候補として選択され、一方、100%の海水で生育できる植物は、沿岸海水または外洋に配置することができる。一部の試験植物には、栄養溶液および点滴潅水を提供して、その方法がそれらの生存を助けるか、あるいは、それらが生き残ることのできる海水の塩度を上昇させるかどうか判定する。
【0117】
(実施例17)
(汽水の水体中に浮遊している粒子状物質を浄化するためのFSCPの使用)
汽水の混濁度を計測する。PVC支持構造物に共に接続されている9個の1'x1'FGMPパッケージのそれぞれに3株のハマミズナ植物を配置する。このFSCPを、混濁している汽水中に1カ月間置く。水の混濁度を1週間に2回測定する。この方法を用いることで、汽水の混濁度が50%低下する。
【0118】
(実施例18)
(食物および装飾作物を生育させるためのFSCPの使用)
ヒマワリ植物の栽培を土壌中で開始し、塩度が約15pptである穏やかな湾内で生育しているFMGPに移植する。これらの植物に、栄養物を含有する補足点滴潅水を与える。プラットフォームから水線の3フィート上にまで昇る軽量の針金足場を追加することによって、茎をさらに支持する。花は、花市場用に採取し、種子は食用に採取する。
【0119】
(実施例19)
(野菜および果実を生育させるためのFSCPの使用)
1/2鉢植え用土、および1/2樹皮チップで満たしたFMGPに、ズッキーニカボチャ種子と耐塩性のメロン種子とを直接植える。遅延放出肥料をパッケージに添加する。FMGPを共に連結させてFSCPを形成させ、空気が充満したチューブを用いて、構造物の浮遊した状態に維持する。このFSCPは、湾口の近傍の、塩度約28pptの沿岸海水中に配置されている。太陽電池付きのポンプシステムを用いて、プラットフォームに取り付けてある貯蔵領域から、滴下潅水システムのチューブを通して、淡水を送水する。このようにして、ポンプシステムまたは時間調節システムを動作させるのに、人力または外部からの電気を必要とせずにプラットフォームを潅水することができる。降雨に含有されている淡水を有利に利用するために、プラットフォームの延長に傾斜を有する部分を作り、ホルダー領域まで雨水を流し込む。ズッキーニおよびメロンは、それらが熟したときに採取する。
【0120】
(実施例20)
(耐塩性を付与する遺伝子を過剰発現する遺伝子改変植物を生育させるためのFSCPの使用)
Gisbert、2000年(Plant Physiol.、第123巻、393〜402頁)の方法に従って、酵母HAL1遺伝子を発現するように遺伝子操作されたトマト実生を、温室内のFSCP上で生育する1カ月の期間にわたって18pptの塩度にまで適応させる。その後、樹皮チップス、真珠岩、ピート、および庭園廃棄物を含有する、20個のFGMP(1個のFGMPあたり1株の植物)に植物を移植する。FGMPを連結させて、野外用FSCP1個を形成させ、それを、ハワイ州カネオーヘ、ヘエイア養魚地に配置する。肥料を補足した点滴潅水を用いて、植物に潅水する。トマト果実は、ほぼ熟したとき、それらを採取する。
【0121】
(実施例21)
(耐塩性が強化されており、塩水体のバイオレメディエーションに使用できる遺伝子改変植物を生育させるためのFSCPの使用)
Apseら、1999年(Science、第285巻、1256〜1258頁)の方法に従って、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)遺伝子AtNHX1を過剰発現するように、野生のカラシナ植物を遺伝子操作する。AtNHX1は、シロイヌナズナ耐塩性を付与することが判明している。2週間の期間をかけて、植物を50%海水池に適応させ、その後、それを、肥料で汚染された野外の、約50%海水の塩度を有する汽水池の中に配置する。その植物が繁茂して、水質を改善する能力を、遺伝子操作されていない野生のカラスナ植物と比較して、そして、ハマミズナなどの耐塩性の種と比較して測定する。この方法を用いて、野生のカラシナ植物は、一部の汚染物質を除去して、水質を改善することができる。
【0122】
(実施例22)
(塩水池を淡水化するためのFSCPの使用)
アクリクリなどの特定の耐塩性植物は、それらの組織に塩を蓄積することができる。これは、池から過剰な塩を除去する手段として用いることができる。汽水池中のFSCP上で、最小限の栄養素添加を用いてアクリクリ植物を生育させる。塩に富む組織を2カ月毎に採取する。1年後に、池の塩度を測定する。この方法の使用によって、この池の塩度が低下する。その後、塩度の低下した水を、例えば、ゴルフ場の芝生または作物を潅水するのに用いることができる。
【0123】
(実施例23)
(緑色の汽水池から余分な窒素および他の汚染物質を除去するためのFSCPの使用)
近傍の農場からの流出液から、過剰の肥料汚染物質が流入している塩度8pptの汽水池がある。高窒素および他の肥料成分によって、池が微細藻類で緑色に変色している。一層の汚染を防止して、池を浄化するため、FSCPプラットフォームを作製し、その上には、ナトールアルカリ草およびカナダ野生ライムギが植えられている。プラットフォームは、過剰の窒素および他の栄養物を除去することによって、池を浄化する。さらに、FSCPプラットフォームは、アレロパシーを介して藻類成長を抑制する。6カ月以内に、池はもはや緑色でない。さらに、FSCP上の草類は、美観の強化と、いくつかの鳥類種の生息地とを提供する。まとめると、FSCP法を用いたことによって、池からの汚染物質の除去と、池領域の改善とがもたらされた。
【0124】
上記の文面がいかに詳細に示されていても、本発明は、様々な方法で実施できることが理解されよう。したがって、本発明は特定の好ましい実施形態に関して記述したが、本明細書の開示に照らして、当業者には明らかであろう他の実施形態も本発明の範囲に包含される。したがって、本発明の範囲は、添付されている特許請求の範囲およびその任意の等価物を参照することのみによって定義されるものである。本明細書に引用された各文献を、その全体として参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ポリライトEPS薄片などの疎水性合成泡状粒子と、ピートモスおよびピートなどの天然土壌改良物とを含有する密封ポリプロピレン遮光布袋でできた浮遊性生育培地パッケージ(FGMP)を示す図である。FGMPの大きさおよび形状は、必要に応じて様々でありうる。
【図2】硬質PVCパイプの枠組みの中に収容された浮遊性生育培地パッケージ(FGMP)の典型的な構成を示す図である。ユニットは、相互に結びつけられ、枠組みにロープで固定されている。この浮遊性海水栽培プラットフォーム(FSCP)が、選択された塩抵抗性植物の生育を持続可能な方法で支持する。側面図は、根がFGMPから突出して、海水中に浮遊していることも示している。フィトレメディエーションを行うことのできる植物をFSCPに植え付けた場合、このシステムは、浮遊性フィトレメディエーションプラットフォーム(FPP)と呼ばれる。
【図3】グランドカバーおよび膨らんだプラスチックパイプを用いた浮遊性海水栽培プラットフォームを示す図である。植物は、2本の空気パイプの間に保持され、グランドカバーを通して根が突出している。
【図4A】市販の培養土に植えたビーチナウパカ(クサトベラ)を示す図である。淡水で毎日潅水した場合(L)には健康な生育を示したが、海水での潅水を始めてから2カ月後に枯れた(R)。
【図4B】市販の培養土に植えたミロ(サキシマハマボウ)を示す図である。淡水で毎日潅水した場合(L)健康な生育を示したが、海水での潅水を始めてから2カ月後に枯れた(R)。
【図5A】100%海水中の浮遊性生育培養パッケージ上で8カ月間生育しているミロ(サキシマハマボウ)を示す図である。パッケージから根を突出している。
【図5B】100%海水中の浮遊性生育培養パッケージ上で8カ月間生育しているナイオ(ミオポルムサンドウィケンセ)を示す図である。パッケージから根を突出している。
【図5C】100%海水中の浮遊性生育培養パッケージ上で8カ月間生育しているアクリクリ(ハマミズナ)を示す図である。パッケージから根を突出している。
【図6A】2インチポリ塩化ビニルパイプでできた浮遊性の枠を示す図である。植物残骸が拡散するのと、魚による根の喫食を防止するために、ナイロン(登録商標)捕獲網が設置されている。
【図6B】浮遊性海水栽培プラットフォーム(FSCP)の実例を示す図である。植物は、左から右の方向に、アクリクリ(ハマミズナ)、ナイオ(ミオポルムサンドウィケンセ)、ミロ(サキシマハマボウ)である。
【図7】ハワイ州カネオーヘ(Kaneohe)、ヘエイア(Heeia)養魚地における沿岸海水中での浮遊性海水栽培プラットフォームの実例を示す図である。ハマミズナ植物を、塩度18.5pptの汽水中、FSCP上、追肥なしで5カ月間栽培した。左側の捕獲網内の植物を、右側の網外の植物と比較した。
【図8A】5カ月後におけるヘエイア養魚地でのハマミズナの苗条産生を示す図である。左側が網内、右側が網外である。捕獲網による保護がないと、苗条の成長が抑制されている。
【図8B】5カ月後におけるヘエイア養魚地でのハマミズナの根形成を示す図である。左側が網内、右側が網外である。捕獲網による保護がないと、根の成長が抑制されている。
【図9A】古い根を残しながら、FGMPの上面で苗条を切った後、汽水中に3カ月おいた後で再生している、ハマミズナの苗条を示す図である。
【図9B】FGMPの底面で根を切った後、若い芽を成長させながら、汽水中に2週間おいた後で再生している、ハマミズナの根を示す図である。
【図10】高耐久性のポリエチレン薄板および気泡クッションを用いた浮遊性海水栽培プラットフォームを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸生植物を塩水中で生育させる植物栽培システムであって、
浮揚性部分を含む植物支持体と、
前記植物支持体と接触している少なくとも1つの陸生植物と
を含み、前記植物支持体が塩水中で浮揚性を有し、かつ、前記植物の少なくとも一部が塩水と接触している植物栽培システム。
【請求項2】
前記塩水が、海水、汽水、湖水、地下水、池水、および再生、修復、または栽培システム中の水からなる群から選択された水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記塩水が、外洋、沿岸地域、河口、デルタ、池、ため池、湖、帯水層、水再生施設、フィトレメディエーション現場、港、海洋農場、および淡水化施設からなる群から選択された場所にある、請求項1から2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記塩水が、殺虫薬、有機汚染物質、PCB、炭化水素、金属イオン、窒素、リン、およびカリウムからなる群から選択された夾雑物をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記金属イオンが、鉛、水銀、カドミウム、ヒ酸塩、銅、および亜鉛からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記植物支持体が、浮揚性の端部または枠に接触している薄板物質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記植物支持体が生育培地を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記生育培地が、少なくとも部分的に容器内に含有されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記浮揚性部分が、生育培地および容器からなる群のうちの少なくとも1つから選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
塩水の水体表面または表面近傍に浮遊できる薄板と、
前記薄板に接触している少なくとも1つの浮揚性支持体部材と、
前記薄板に接触して配置されている少なくとも1つの陸生植物、植物体部分、または種子であって、前記陸生植物、植物体部分、または種子の少なくとも一部が塩水とも接触するように配置されている陸生植物、植物体部分、または種子と
を含む、陸生植物を塩水中で生育させるための浮揚性プラットフォーム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの浮揚性支持体部材が、前記プラットフォームの支持構造物を形成する、請求項10に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項12】
前記浮揚性支持体部材が、天然素材、合成繊維、木、竹、プラスチック、ポリプロピレン、鉄鋼、グラスファイバー、フォーム、プラスチック、およびゴムからなる群から選択された物質を含む、請求項10から11のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項13】
前記薄板が、遮光布、プラスチック薄膜、網、布、グランドカバー、スクリーン、織布、不織布物質、発泡ビニールシート、および発泡スチロールからなる群から選択された物質を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項14】
陸生植物を生育させるための空間が、2つの浮揚性支持体部材の間の領域に存在する、請求項10から13のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項15】
潅水システムをさらに含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項16】
前記潅水システムが、蒸発水、雨水、蒸散水、および淡水からなる群の少なくとも1つの要素を含む液体を送り届ける、請求項15に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項17】
前記潅水システムが、肥料、栄養物、鉱物、および植物生長調節物質からなる群から選択された少なくとも1種類の物質をさらに送り届ける、請求項15から16のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項18】
前記潅水システムが潅水用水を収集する手段をさらに含み、前記潅水用水が前記塩水より低塩度である、請求項15から17のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項19】
前記潅水システムが潅水用水を貯蔵する手段をさらに含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項20】
塩水の水体表面で陸生植物を生育させるための浮揚性プラットフォームであって、
塩水の水体表面に浮遊させることのできる少なくとも1つの生育培地と、
前記生育培地を支持する少なくとも1つの浮揚性支持体部材と
を含み、前記生育培地が少なくとも1つの陸生植物、植物体部分、または種子を含む浮揚性プラットフォーム。
【請求項21】
前記生育培地が、ピート、ピートモス、人工土壌成分、自然土壌、土壌改良剤、疎水性粒子、有機肥料、植物成長栄養物、および堆肥からなる群から選択された少なくとも1つの物質を含む、請求項20に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項22】
前記生育培地が容器内に含有され、前記容器が、遮光布、プラスチック薄膜、網、布、グランドカバー、スクリーン、織布、不織布物質、発泡ビニールシート、および発泡スチロールからなる群から選択された物質を含む、請求項20または21に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項23】
前記生育培地のパッケージ上方の表面に、前記生育培地が大気と接触するのを抑制する蒸発保護層が設けられている、請求項20から22のいずれか一項に記載の浮揚性プラットフォーム。
【請求項24】
塩水中で陸生植物を生育させる方法であって、
塩水の水体表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
植物体の少なくとも一部が塩水と接触するように、前記プラットフォーム中に植物体を配置するステップと、
プラットフォームが塩水中に浮遊している間に、少なくとも1つの植物を前記植物体から生育させるステップと
を含む方法。
【請求項25】
前記植物体が、種子、切り枝、根、植物全体、および塊茎からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記植物体が、直接的な接触、毛細管現象、および潅水からなる群のうちの少なくとも1つによって塩水と接触している、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
植物全体、植物の部分、花部、果実、花、種子、花粉、葉、根、塊茎、分裂組織、および苗条からなる群より選択された少なくとも1つのものを前記生育プラットフォームから採取するステップをさらに含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
食物、油性抽出物、繊維、燃料、香辛料、薬草製剤、栄養補給食品、医薬品、商業作物、植物塩、バイオレメディエーション、汚染物質隔離、飼料、染料、建築材料、および工業原料からなる群より選択された産物または過程で、採取された植物体を使用することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記植物が、アッケシソウ属諸種、リゾホラマングル、バチスマリタイム、ハマミズナ、ミオポルムサンドウィケンセ、サキシマハマボウ、およびクサトベラからなる群から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記植物が栽培作物植物である、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
望ましくない物質を含有する塩水体の質を改善する方法であって、
望ましくない物質を含有する塩水体の表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
植物体の少なくとも一部に水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置するステップと、
前記水の存在下に植物体を生育させるステップと、
植物体内での前記物質の蓄積を通して、前記水から前記物質を除去するステップと
を含む方法。
【請求項32】
前記物質が、有機化合物、ディーゼル燃料、ガソリン、金属、殺虫薬、有機汚染物質、PCB、金属イオン、窒素、リン、またはカリウムを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
望ましくない物質を含有する地表領域のバイオレメディエーションの方法であって、
望ましくない物質を含有している地表領域の低い地点に、水を含むため池を用意するステップと、
前記ため池の表面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
植物体の少なくとも一部に前記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置するステップと、
前記水の存在下に植物体を生育させるステップと、
植物体内での前記物質の蓄積を通して、前記水から前記物質を除去するステップと
を含む方法。
【請求項34】
前記地表領域を水で溶脱することによって、前記池に水を加える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記植物体が採取される、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法のステップが反復される、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
塩水魚類生息地を改善する方法であって、
塩水魚類生息地の水面に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
植物体の少なくとも一部に前記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置するステップと、
生育中の植物体が前記魚類生息地を改善するのを可能にする条件下で、前記水の存在下に植物体を生育させるステップと
を含む方法。
【請求項38】
植物の生育が、食物源を魚に提供すること、避難所を魚に提供すること、前記生息地に有益な生物群集の形成を促進すること、望ましくない物質を水から除去すること、および望ましい物質を水中に蓄積させることからなる群から選択された少なくとも1つの改良を可能にする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
海岸侵食から陸を保護する方法であって、
海岸に隣接した塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
植物体の少なくとも一部に前記水が接触できるように、プラットフォーム中に植物体を配置するステップと、
海岸侵食から守るための防御堤を作製するために、前記塩水の存在下に植物体を生育させるステップと
を含む方法。
【請求項40】
前記防御堤が、風よけ、波よけ、魚の保護、および景観整備特性からなる群から選択された少なくとも1つの機能を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
塩水を脱塩する方法であって、
海岸に隣接した塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
イオン蓄積性植物の植物体を、前記植物体の少なくとも一部に前記水が接触できるようにプラットフォーム中に配置するステップと、
塩イオンが植物体内に蓄積し、前記塩水から除去されるように、前記塩水の存在下に植物体を生育させるステップと
を含む方法。
【請求項42】
前記イオンが、ナトリウム、リン、カリウム、窒素、硫黄、およびホウ素からなる群の少なくとも1つの要素である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記イオン蓄積性植物がハマミズナである、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
塩水中で繁茂する能力を有するものを求めて、植物品種をスクリーニングする方法であって、
塩水中に浮遊できる浮揚性生育プラットフォームを用意するステップと、
試験植物品種の植物体に関する少なくとも1つの特性の第1の測定を行うステップと、
前記植物体の少なくとも一部に前記塩水が接触できるように、プラットフォーム中に前記植物体を配置するステップと、
植物体が生育する期間をおくステップと、
その後、前記植物体の前記少なくとも1つの特性の第2の測定を行うステップと、
第1の測定および第2の測定の比較に基づいて、塩水中で繁茂する植物体の能力を評価するステップと
を含む方法。
【請求項45】
前記特性が、バイオマス、サイズ、形、色、タンパク質含有量、糖含有量、成長速度、および発生段階からなる群の少なくとも1つの要素を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記試験植物品種の植物体が、生育前または生育中に変異誘発される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
実質的に本明細書に記載通りの、陸生植物を塩水中で生育させる新規の植物栽培システム。
【請求項48】
実質的に本明細書に記載通りの、陸生植物を塩水中で生育させるための浮揚性プラットフォーム。
【請求項49】
実質的に本明細書に記載通りの、望ましくない物質を含有する塩水体の質を改善する方法。
【請求項50】
実質的に本明細書に記載通りの、望ましくない物質を含有する地表領域のバイオレメディエーションの方法。
【請求項51】
実質的に本明細書に記載通りの、塩水中で繁茂する能力を有するものを求めて、植物品種をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図7】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−532109(P2007−532109A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507296(P2007−507296)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/032031
【国際公開番号】WO2005/102030
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501052498)ユニヴァーシティー オブ ハワイ (2)
【Fターム(参考)】