説明

浴室リフォーム床材

【課題】柔軟性と耐摩耗性とを備え、しかも加工性にも優れる浴室リフォーム床材を提供する。
【解決手段】前記浴室リフォーム床材20は、合成ゴムと熱可塑性樹脂を主材とする硬化ゴムシートからなり、前記合成ゴム100重量部に対して、前記熱可塑性樹脂10〜50重量部、架橋剤0.2〜5重量部を配合したことを特徴とする。また、前記合成ゴムとして、シンジオタスチック1,2-ポリブタジエンゴムとスチレン-ブタジエン共重合体の配合物を用いており、前記熱可塑性樹脂として、ポリスチレンを用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室のリフォームに使用するのに好適な浴室リフォーム床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室の床をリフォームする際には、再塗装、FRP材の貼り付け、或いは、塩化ビニルシート等の合成樹脂シート床材の貼り付け等が、一般的に行われている。
しかしながら、再塗装では、既設の浴槽等を汚す虞がある。また、FRP材では、硬いため、切断を丸鋸等で行う必要があり、騒音を発生するため集合住宅、病院等で使用するには不向きであり、また、柔軟性がないため、被着体の床面の不陸に対して追従性が悪く接着し難いという問題がある。また、合成樹脂シート床材では、貼着性はよいものの、表面の耐摩耗性が悪く、すぐに傷むという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、柔軟性と耐摩耗性とを備え、しかも加工性にも優れる浴室リフォーム床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、下記の通り解決手段を見出した。
即ち、本発明の浴室リフォーム床材は、請求項1記載の通り、合成ゴムと熱可塑性樹脂を主材とする硬化ゴムシートからなることを特徴とする。
また、請求項2記載の浴室リフォーム床材は、請求項1記載の浴室リフォーム床材において、前記合成ゴム100重量部に対して、前記熱可塑性樹脂10〜50重量部、架橋剤0.2〜5重量部を配合したことを特徴とする。
また、請求項3記載の浴室リフォーム床材は、請求項1または2記載の浴室リフォーム床材において、前記合成ゴムとして、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンゴムとスチレン−ブタジエン共重合体の配合物を用いたことを特徴とする。
また、請求項4記載の浴室リフォーム床材は、請求項1乃至3の何れかに記載の浴室リフォーム床材において、前記熱可塑性樹脂として、ポリスチレンを用いたことを特徴とする。
また、請求項5記載の浴室リフォーム床材は、請求項1乃至4の何れかに記載の浴室リフォーム床材において、D形硬度計による硬度を60〜80としたことを特徴とする。
また、請求項6記載の浴室リフォーム床材は、請求項2乃至5の何れかに記載の浴室リフォーム床材において、前記床材は、更に、フィラー、老化防止剤等の薬品類及び顔料を含み、前記合成ゴム100重量部及び前記熱可塑性樹脂10〜50重量部の合計量に対し、前記フィラーを10〜50重量部、前記老化防止剤等の薬品類を0.5〜10重量部、前記顔料を10重量部以下として配合したことを特徴とする。
また、請求項7記載の浴室リフォーム床材は、請求項6記載の浴室リフォーム床材において、前記フィラーとしてシリカを用いたことを特徴とする。
また、請求項8記載の浴室リフォーム床材は、請求項1乃至7の何れかに記載の浴室リフォーム床材において、厚さを2〜10mmとしたことを特徴とする。
また、請求項9記載の浴室リフォーム床材は、請求項1乃至8の何れかに記載の浴室リフォーム床材において、前記床材の表面を凹凸状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の浴室リフォーム床材は、水回りの床材として要求される水密性はもとより、強度や耐久性等の諸条件を満たすことができ、しかも、接着性がよいために、リフォームの際に、タイル、コンクリート、FRP等の全ての床面に貼着することができる。また、ゴムを主体とした材質で柔軟性があるために、被着面の凹凸や、水勾配のための傾斜面にも追従することができ施工性に優れる。更に、裁断、穿孔、鉋がけが可能であるため、加工性にも極めて優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の浴室リフォーム床材は、合成ゴムと熱可塑性樹脂を主材とする硬化ゴムシートからなるものであり、前記合成ゴム100重量部に対して、前記熱可塑性樹脂10〜50重量部の配合とすることが好ましい。これは、合成ゴムの割合が前記配合より多くなると、硬度が不足して、強度が低下し、耐久性が悪くなり、また、熱可塑性樹脂の割合が前記配合より多くなると硬度が高くなり過ぎ、シートの柔軟性が低下して施工性が悪くなるからである。
【0007】
前記合成ゴムとしては、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等が用いられるが、前記合成ゴムとして、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンゴムとスチレン−ブタジエン共重合体の配合物を、その配合比を1:0.2〜1:1の範囲で用いることが好ましい。これは、この配合比よりスチレン−ブタジエンゴムの割合が大きくなると、浴室リフォーム床材の強度が低下してしまうからである。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられるが、成形加工性、剛性、コスト面より、ポリスチレンが好ましい。
【0008】
また、架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄等が用いられ、この架橋剤の配合は、前記合成ゴム100重量部及び前記熱可塑性樹脂10〜50重量部の合計量に対し、0.2〜5重量部の配合とすることが好ましい。架橋剤の割合が前記配合より少ないと、架橋密度が低下し、浴室リフォーム床材の強度、耐劣化性が低下するからである。また、架橋剤の配合が前記配合より多くなると、架橋密度が増すことで硬くなり、柔軟性が低下して、逆にもろくなってしまうからである。
また、浴室リフォーム床材のD形硬度計による硬度は、60〜80とすることが好ましい。これは、硬度が60未満であると、耐摩耗性が低下し、80を越えると、柔軟性が低下し、下地追従性に劣るからである。
【0009】
尚、更に、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、木分等のフィラーや、ポリエチレングリコール、ステアリン酸系、亜鉛華等や、ベンゾトリアゾール系、ヒンダートアミン系等の老化防止剤等の薬品類、カーボンブラック、酸化チタン、オーカ等の顔料を配合することが好ましい。この場合、前記合成ゴム100重量部及び前記熱可塑性樹脂10〜50重量部の合計量に対し、フィラー10〜50重量部、老化防止剤等の薬品類0.5〜10重量部、顔料10重量部以下とすることが好ましい。
【0010】
尚、前記フィラーとしては、シリカを用いることが好ましい。シリカの補強性により安定した強度が得られるからである。
【0011】
また、浴室リフォーム床材の厚さは、2〜10mmとすることが好ましい。これは、厚み2mm未満であると、剛性及び強度が低下し耐割れ性や耐亀裂性が落ち、厚さが10mmを越えると、裁断等する際の施工性が低下し、重量が増加することで運搬が困難となるからである。尚、厚みを2〜5mmにすれば、更に適切な可撓性が得られ、追従性に優れたものになる。
【0012】
また、前記浴室リフォーム床材の表面を凹凸状に形成することが好ましい。この凹凸状に形成するには、本発明の浴室リフォーム床材では、熱プレスにより行うことができる。また、排水溝を形成するようにすることが更に好ましい。
【実施例】
【0013】
次に、本発明浴室リフォーム床材の一実施例について、比較例と共に説明する。
(実施例1)
合成ゴムとしてシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(JSR−RB)65重量部と、スチレン−ブタジエン共重合体(アサプレン:スチレン含有量48%、ムーニー粘度45(ML1+4 100℃)35重量部、熱可塑性樹脂としてポリスチレン(デンカスチロールQP)20重量部、架橋剤として有機過酸物(1,3−ビス(第三ブチル・ペルオキシ・イソプロピル)ベンゼン)1.5重量部、フィラーとしてシリカ25重量部、老化防止剤等の薬品類としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤及びポリエチレングリコールを計2.5重量部、顔料としてカーボンブラック、酸化チタン、オーカ(イエロー)を1:8:1の割合で計1重量部をニーダー混練機及びロール混練機で混練りし、このコンパウンドを熱プレス成型機にて架橋成型し、厚さ4.0mmの硬化ゴムシートを得た。このゴムシートを幅1000mm、長さ1200mmに裁断加工して、浴室リフォーム床材を得た。
【0014】
(比較例1)
実施例1の浴室リフォーム床材と同寸法に成型され、表面にウレタン塗装がされたFRP製床材(厚さ2mm)を比較例1とした。
【0015】
次に、実施例1及び比較例1の耐摩耗性を評価するために、テーバー摩耗試験機、摩耗輪CS−17を使用し、荷重500g×2000回転、荷重500g×5000回転で試験を行った結果を下記表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
上記試験の結果、比較例1は、摩耗量のバラツキが目立つのに対して、実施例1の摩耗量はバラツキが少なく、床材としての安定性に優れることが分かった。
【0018】
次ぎに、実施例1の浴室リフォーム床材と、比較例1の床材とを、それぞれ50cm×225cm角の試験片に裁断し、JIS A 1454に準拠して、マンドレルに直角となるように各試験片の端面を当接し、一定速度で180°巻き付け、この時の試験片のひび・割れが生じない最小のマンドレル直径を測定することにより、柔軟性試験を行った結果を下記表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
上記試験の結果、比較例1に比べて実施例1は、非常に柔軟性に優れた製品であることがいえる。尚、比較例1は、直径140mmでも、力もかかり、既に軋んだ音が生じていたのに対して、実施例1は、あまり力を加えなくてもスムーズに曲げることが可能であった。
上記の通り、実施例1の浴室リフォーム床材は比較例1の床材に比べて、不陸に対する追従性に優れ、浴室の床をリフォームするのに好適な特性を備えることが確認できた。
【0021】
次に、JIS A 5705に準拠して、実施例1及び比較例1の床材の耐汚染性能について、下記表に示す各薬品を試験片表面に約2ml滴下し、ガラス製シャーレで覆い、24時間経過後濡れたウエスで拭き取り、約1時間経過後の表面状態を目視により評価した。また、L*a*b*表色系(L*:明度、a*b*:色度)による色差ΔEを測定した。その結果を下記表に示す。
【0022】
【表3】


上記表中、総評とは、外観、ΔEの総合評価を2段階で評価したものである。また、ΔEについては、1以下であれば、目視での差は表れない。
表3から、実施例1の浴室リフォーム床材は、ほとんど色の変化はないのに対して、比較例1の床材は、配管洗浄剤1で白色化していた。このため実施例1の浴室リフォーム床材は、浴室の床材として使用するのに好適な耐薬品性・汚染性を備えることが確認できた。
【0023】
次に、実施例1の浴室リフォーム床材の耐劣化性能(耐熱)について、下記のようにして測定、評価した。即ち、試験片を、40℃、60℃、80℃の各温度下に、3日間、7日間及び14日間置いたものを、常温下に取り出し、4時間以上経過した後、一般物性試験方法(1号ダンベル、オートグラフ500mm/分(つかみ間隔60mm))に従って引張強度及び伸び率を測定し、また、JIS−D硬度計による硬度を測定し、その結果を図1に示す。
また、実施例1の浴室リフォーム床材の耐劣化性能(耐温水)について、下記のようにして測定、評価した。即ち、試験片を、20℃、40℃、60℃の各温水に、3日間、7日間及び14日間置いたものを、常温下に取り出し、4時間以上経過した後、一般物性試験方法(1号ダンベル、オートグラフ500mm/分(つかみ間隔60mm))に従って引張強度及び伸び率を測定し、また、JIS−D硬度計による硬度を測定し、その結果を図1に示す。
図1から明らかなように、実施例1の浴室リフォーム床材は、熱及び温水による物性、強度の変化は見られないことから、熱湯などを使用する浴室等の床材として使用するのに好適な耐熱劣化性能を備えることが確認できた。
【0024】
次に、JIS A 5705に準拠して、実施例1及び比較例1の床材の加熱伸縮性について、各床材を300mm×300mm角の試験片を使用して、40℃、60℃、80℃の温度下にそれぞれ1時間経過後、常温下に取り出し、伸縮率を測定した。尚、測定は、各試験片について3回行い、その平均値を求めるようにした。その結果を下記表に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
上記表4から、実施例1の浴室リフォーム床材の寸法変化は、比較例1の床材の寸法変化と比べて、40℃では同等であり、60℃、80℃の場合では、寸法変化が少なく、加熱収縮性に関して良好であることがわかった。
【0027】
次に、JIS A 5705に準拠して、実施例1及び比較例1の床材の吸伸縮性について、各床材を300mm×300mm角の試験片を、20℃の水に浸漬し、1時間経過後、常温下に取り出した後、伸縮率を測定した。尚、測定は、各試験片について3回行い、その平均値を求めるようにした。その結果を下記表に示す。
【0028】
【表5】

【0029】
上記表5から、実施例1の浴室リフォーム床材の寸法変化は、比較例1の床材の寸法変化と同等であり、耐水性について良好であるとことがわかった。
【0030】
次に、前記実施例1の浴室リフォーム床材20と比較例1の床材30を用いて、実際に浴室の床のリフォームを行った。実施例1の浴室リフォーム床材20の場合、カッターで所定の寸法に簡単に切断できた。また、接着剤aを用いて下地11上に敷設しようとしたところ、図2に示すように、前記床材20は浴室10の排水口11aの傾斜にもよく追従し、下地11の上にぴったりと敷設することができた。これに対し、比較例1の床材30の場合、カッターでは切断できないので、電動ノコギリを用いて所定の寸法に切断する必要があった。また、接着剤aを用いて下地11上に敷設しようとしたところ、図3に示すように、前記床材30は浴室10の排水口11aの傾斜に追従しないため、下地11と床材30の間に隙間ができてしまった。このため、前記隙間をモルタル12埋める必要があった。尚、上記図2及び図3中、13は浴槽を示す。
このように、実際のリフォーム作業において、本願発明浴室リフォーム床材が、所定寸法へ切断も容易で、柔軟性に富み、下地への追従性に優れることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明浴室リフォーム床材の耐劣化性能を示す特性線図
【図2】本発明浴室リフォーム床材の一実施例1の施工状態を示す断面図
【図3】比較例1の床材の施工状態を示す断面図
【符号の説明】
【0032】
10 浴室
11 下地
11a 排水口
12 モルタル
13 浴槽
20 浴室リフォーム床材
30 床材
a 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ゴムと熱可塑性樹脂を主材とする硬化ゴムシートからなることを特徴とする浴室リフォーム床材。
【請求項2】
前記合成ゴム100重量部に対して、前記熱可塑性樹脂10〜50重量部、架橋剤0.2〜5重量部を配合したことを特徴とする請求項1記載の浴室リフォーム床材。
【請求項3】
前記合成ゴムとして、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンゴムとスチレン−ブタジエン共重合体の配合物を用いたことを特徴とする請求項1または2記載の浴室リフォーム床材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂として、ポリスチレンを用いたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の浴室リフォーム床材。
【請求項5】
D形硬度計による硬度を60〜80としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の浴室リフォーム床材。
【請求項6】
前記床材は、更に、フィラー、老化防止剤等の薬品類及び顔料を含み、前記合成ゴム100重量部及び前記熱可塑性樹脂10〜50重量部の合計量に対し、前記フィラーを10〜50重量部、前記老化防止剤等の薬品類を0.5〜10重量部、前記顔料を10重量部以下として配合したことを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の浴室リフォーム床材。
【請求項7】
前記フィラーとしてシリカを用いたことを特徴とする請求項6記載の浴室リフォーム床材。
【請求項8】
厚さを2〜10mmとしたことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の浴室リフォーム床材。
【請求項9】
前記床材の表面を凹凸状に形成したことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の浴室リフォーム床材。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−25272(P2008−25272A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201060(P2006−201060)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【Fターム(参考)】