説明

海水淡水化方法および海水淡水化装置

【課題】 有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を活用しつつ、淡水等の浄化水を効率良く得ることができる海水淡水化方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化する海水淡水化方法であって、
有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として、塩濃度が1.0〜8.0質量%である海水に混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理工程とを実施して海水を淡水化することを特徴とする海水淡水化方法を提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水淡水化方法および海水淡水化装置に関し、例えば、逆浸透膜装置を用いたろ過によって海水を淡水化する海水淡水化方法および海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等により雨が局所的に若しくは短時間に降ってしまい水資源が地理的若しくは時間的に偏在してしまうことや、林業衰退や森林伐採等により山間部の保水力が低下しまうこと等により、水資源を安定的に確保することが難しいという問題がある。
【0003】
水資源を安定的に確保すべく、例えば、臨海地域では、逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化する海水淡水化方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−55317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の海水淡水化方法では、海水を逆浸透膜装置でろ過処理するのに海水を加圧してポンプ等で逆浸透膜装置に圧送する必要があり、海水の塩濃度が高いほど多大なエネルギーが必要となってしまうという問題がある。
【0006】
ところで、上記の海水とは別に、例えば下水に代表される有機物を含有する廃水(以下、「有機性廃水」ともいう。)は、通常、生物処理されている。しかるに、この有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水は、現状では、海洋や河川に放出されてしまい、ほとんど有効利用されていないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を活用しつつ、淡水等の浄化水を効率良く得ることができる海水淡水化方法および海水淡水化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化する海水淡水化方法であって、
有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として海水に混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理工程とを実施して海水を淡水化することを特徴とする海水淡水化方法にある。
【0009】
斯かる海水淡水化方法によれば、海水よりも塩濃度が低い生物処理水を希釈水として海水に混合することにより得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理することにより、該逆浸透膜装置に混合水を圧送するための圧力を海水を圧送する場合に比して抑制することができるため、得られる淡水の単位量当たりにおける圧送に必要なエネルギー量を抑制できる。また、逆浸透膜装置の膜の透過流束(フラックス)を大きくすることができ、ろ過水量を増加させることができる。さらに、膜への負荷(海水中の塩による化学的負荷、及び圧力による物理的負荷)も抑制することができ、該膜の寿命を延ばし得る。また、生物処理水を有効に活用することができる。
【0010】
また、本発明に係る海水淡水化方法においては、好ましくは、有機性廃水を生物処理して生物処理水を得、更に、精密ろ過膜及び限外ろ過膜の少なくとも何れかを有する除濁装置を用いてろ過処理し透過水を得、該透過水を逆浸透膜装置を用いたろ過処理により透過水たる浄化水と濃縮水とを得る廃水処理工程を実施し、前記混合工程では、前記濃縮水たる生物処理水を前記希釈水として用いる。
【0011】
斯かる海水淡水化方法によれば、前記廃水処理工程において浄化水を回収することができ、より一層効率良く浄化水を回収し得るという利点がある。
【0012】
前記廃水処理工程を備えてなる海水淡水化方法においては、好ましくは、前記廃水処理工程で、生物処理するための生物処理槽内の液面下に除濁装置を浸漬膜として設置してろ過処理する。
【0013】
斯かる海水淡水化方法によれば、生物処理で活性汚泥を用いる場合、浸漬膜を通して活性汚泥を含む生物処理水から活性汚泥をほとんど含まないろ過水のみを得ることができるため、容易に生物処理槽内の生物濃度を高めることができ、生物処理槽の容積をコンパクト化できるという利点がある。また、除濁装置を生物処理槽外に設置する場合に比して、海水淡水化方法で用いる装置をより一層コンパクト化でき、更に、除濁装置で濃縮された汚泥を生物処理槽に返送する経路も不要となるという利点がある。
【0014】
さらに、本発明に係る海水淡水化方法においては、好ましくは、前記混合水処理工程で逆浸透膜装置を用いてろ過処理する前に精密ろ過膜及び限外ろ過膜の少なくとも何れかを有する除濁装置を用いて混合水をろ過処理する。
【0015】
斯かる海水淡水化方法によれば、混合水処理工程で用いる逆浸透膜装置の膜面に有機性固形物質が付着してしまうのを抑制することができ、より一層効率よく淡水を得るという利点がある。また、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点もある。
【0016】
前記混合水処理工程で逆浸透膜装置を用いてろ過処理する前に、前記除濁装置を用いて混合水をろ過処理する海水淡水化方法においては、好ましくは、前記混合水処理工程で除濁装置を用いて混合水をろ過する前に混合水を生物処理する。
【0017】
斯かる海水淡水化方法によれば、混合水中の溶解性有機物濃度が低減されるので、除濁装置と逆浸透膜装置との間で発生する微生物の増殖を抑えることができ、混合水処理工程で用いる逆浸透膜装置の膜面に微生物等の有機性固形物質が付着してしまうのを抑制することができ、より一層効率よく淡水を得ることができるという利点がある。また、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点もある。
【0018】
また、本発明に係る海水淡水化方法においては、好ましくは、前記混合工程で海水と希釈水との混合体積比を海水1に対して希釈水0.1以上とする。
【0019】
斯かる海水淡水化方法によれば、得られる淡水の量当たりにおける、海水を淡水化するのに必要なエネルギー量を確実に抑制できるとともに、混合工程や混合水処理工程に用いられる機器の腐食を抑制できるという利点がある。また、混合水処理工程に生物処理を実施する場合は、生物処理が良好に行われるという利点もある。
【0020】
さらに、本発明に係る海水淡水化方法においては、好ましくは、除濁装置を用いて海水をろ過処理し、前記混合工程では、該ろ過処理された海水と希釈水とを混合する。
【0021】
斯かる海水淡水化方法によれば、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点がある。また、希釈水としての生物処理水がろ過処理された場合には該希釈水に含まれる固形物質濃度が小さくなり、また、希釈水に混合される海水に含まれる固形物質濃度が抑制されているので、より一層効率良く淡水を得ることができるという利点がある。
【0022】
また、本発明は、逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化するように構成されてなる海水淡水化装置であって、
有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として海水に混合し、該混合により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理部を備えてなることを特徴とする海水淡水化装置にある。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を活用しつつ、淡水等の浄化水を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図2】他実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図3】他実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図4】他実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図5】他実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図6】他実施形態に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図7】第2生物処理槽及び該槽内の概略図。
【図8】試験例1に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図9】試験例1の結果。
【図10】実施例1に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【図11】比較例1に係る海水淡水化装置の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、本実施形態に係る海水淡水化装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態の海水淡水化装置の概略ブロック図である。
本実施形態の海水淡水化装置1は、図1に示すように、有機性廃水Bを生物種により生物処理する生物処理部3と、該生物処理部3より得られる生物処理水を希釈水として海水Aに混合し該混合により得られた混合水を第1逆浸透膜装置23に供給してろ過処理し透過水たる淡水Cと濃縮水Dとを得る混合水処理部2と、前記生物処理部3で生物処理により増殖した生物種を発酵させてメタンを得るメタン発酵部4とを備えてなる。
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、海水Aを混合水処理部2に、有機性廃水Bを生物処理部3に、生物処理水を混合水処理部2に、増殖した生物種をメタン発酵部4に、前記濃縮水Dを濃縮水貯留槽(図示せず)に移送するように構成されてなる。
さらに、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記透過水たる淡水Cを回収するように構成されてなる。
【0028】
生物処理は、細菌、原生動物、後生動物等の生物種によって水に含まれる有機物を分解する処理である。具体的には、活性汚泥を用いた曝気処理等を挙げることができる。
【0029】
海水Aは、塩を含む水であり、例えば、塩濃度が1.0〜8.0質量%程度の水であり、より具体的には、塩濃度が2.5〜6.0質量%である。
本明細書において、海水Aは、海に存在する水に限定されず、塩濃度が1.0質量%以上の水であれば、湖(塩湖、汽水湖)の水、沼水、池水等の陸に存在する水も含む。
【0030】
有機性廃水Bは、有機物を含む廃水であり、例えば、有機物濃度の指標としてのBOD(生物化学的酸素要求量)が2000mg/L以下の廃水であり、より具体的には、200mg/L程度の廃水である。また、有機性廃水Bは、海水よりも塩濃度が低い水である。有機性廃水Bは、例えば、海水Aの塩濃度に対する有機性廃水Bの塩濃度の比が0.1以下のもの、より具体的には、海水Aの塩濃度に対する有機性廃水Bの塩濃度の比が0.01以下のものである。
有機性廃水Bとしては、下水(生活廃水や雨水が下水道に流れた水等)や、工業廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場から排出される廃水)等が挙げられる。
【0031】
混合水処理部2は、生物処理部3より得られる生物処理水を希釈水として海水Aに混合するように構成されてなる。
また、混合水処理部2は、該混合により得られた混合水を生物処理する第1生物処理槽21と、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有し且つ第1生物処理槽21で生物処理された混合水をろ過処理により除濁して第1透過水及び第1濃縮水を得る第1除濁装置22と、第1透過水たる混合水をろ過処理して第2透過水たる淡水C及び第2濃縮水を得る第1逆浸透膜装置23とを備えてなる。
また、混合水処理部2は、生物処理部3より得られる生物処理水を希釈水として海水に混合し該混合により得られた混合水を第1生物処理槽21に移送して第1生物処理槽21により生物処理し、該生物処理された混合水を第1除濁装置22に移送して第1除濁装置22によりろ過処理し第1透過水及び第1濃縮水を得、第1濃縮水を濃縮水貯留槽(図示せず)に移送し、第1透過水たる混合水を第1逆浸透膜装置23に移送して第1逆浸透膜装置23によりろ過処理し第2透過水たる淡水C及び第2濃縮水を得るように構成されてなる。
尚、本明細書に於いて、除濁とは逆浸透膜ろ過よりも粗いろ過、即ち、逆浸透膜装置でろ過処理する前に実施され、逆浸透膜で分離するよりも粗い不純物(例えば、固形物質等)を除去することを意味する。
【0032】
本実施形態における海水淡水化装置1は、第2透過水たる淡水Cを回収するように構成されてなる。
【0033】
第1逆浸透膜装置23は、圧力容器に逆浸透膜(RO膜)が収容されたタイプのものである。
【0034】
混合水処理部2は、第1透過水を加圧して第1逆浸透膜装置23に圧送する第1ポンプ24を備え、第1透過水を第1ポンプ24を介して第1逆浸透膜装置23に圧送することにより第1逆浸透膜装置23から第2濃縮水を圧送するように構成されてなる。
【0035】
混合水処理部2は、スケール防止剤(RO膜に生じ得るスケールを抑制し得る薬剤)が含有されるスケール防止薬液を第1逆浸透膜装置23のRO膜に供給する第1スケール防止薬液供給手段(図示せず)が備えられてなる。
前記スケール防止剤としては、例えば、カルボン酸重合物、カルボン酸重合物配合品、ホスホン酸塩等が挙げられる。
【0036】
また、混合水処理部2は、膜洗浄剤(膜に付着され得る付着物の原因物質を溶解し得る薬剤)が含有される膜洗浄薬液を第1逆浸透膜装置23のRO膜に供給する第1膜洗浄薬液供給手段(図示せず)が備えられてなる。
前記膜洗浄剤は、特に限定されるものではないが、該膜洗浄剤としては、例えば、酸、アルカリ、酸化剤、キレート剤、界面活性剤等の薬品が挙げられる。酸としては、例えば、有機酸(クエン酸、シュウ酸等)、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
また、該膜洗浄薬液としては、2種以上の膜洗浄剤が混合された混合液(例えば、水酸化ナトリウムと界面活性剤とが混合されたもの)も用いることができる。
【0037】
混合水処理部2は、第1逆浸透膜装置23から圧送された第2濃縮水の圧力で動力を得る水力タービン25を備え、第1逆浸透膜装置23から圧送された第2濃縮水を水力タービンに移送し第2濃縮水の圧力で水力タービン25を駆動して動力を得るように構成されてなる。
【0038】
本実施形態の海水淡水化装置1は、水力タービン25を駆動するのに用いられた第2濃縮水を濃縮水貯留槽(図示せず)に移送するように構成されてなる。
【0039】
第1除濁装置22は、第1生物処理槽21外に設置されるタイプのものである。
【0040】
混合水処理部2は、前記膜洗浄薬液を第1除濁装置22の膜に供給する第2膜洗浄薬液供給手段(図示せず)が備えられてなる。
【0041】
生物処理部3は、有機性廃水を生物処理して生物処理水を得る第2生物処理槽31と、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有し且つ第2生物処理槽31で得られた生物処理水をろ過処理して第3透過水及び第3濃縮水を得る第2除濁装置32と、第3透過水たる生物処理水をろ過処理して第4透過水たる浄化水E及び第4濃縮水たる生物処理水を得る第2逆浸透膜装置33とを備えてなる。
【0042】
第2除濁装置32は、第2生物処理槽31の液面下に浸漬膜として設置されてなる。
【0043】
生物処理部3は、前記膜洗浄薬液を第2生物処理槽31の膜に供給する第4膜洗浄薬液供給手段(図示せず)が備えられてなる。
【0044】
本実施形態の海水淡水化装置1は、有機性廃水Bを第2生物処理槽31に移送するように構成されてなる。
【0045】
生物処理部3は、該移送された有機性廃水Bを第2生物処理槽31により生物処理して生物処理水を得、且つ該生物処理水を第2除濁装置32を用いたろ過処理により第3透過水と第3濃縮水とを得、且つ第3透過水を第2逆浸透膜装置33に移送し、且つ第3透過水を第2逆浸透膜装置33を用いたろ過処理により第4透過水たる浄化水Eと第4濃縮水たる生物処理水とを得るように構成されてなる。
【0046】
本実施形態の海水淡水化装置1は、第3濃縮水をメタン発酵部4に、第4濃縮水たる生物処理水を希釈水として混合水処理部2に移送し、第4透過水を浄化水Eとして回収するように構成されてなる。
【0047】
第2逆浸透膜装置33は、圧力容器に逆浸透膜が収容されたタイプのものである。
尚、本実施形態の該第2逆浸透膜装置33のRO膜には、ナノろ過膜(NF膜)も含まれる。
【0048】
生物処理部3は、第3透過水を第2ポンプ34を介して加圧してから第2逆浸透膜装置33に供給するように構成されてなる。
【0049】
生物処理部3は、前記スケール防止薬液を第2逆浸透膜装置33のRO膜に供給する第2スケール防止薬液供給手段(図示せず)を備えてなる。
【0050】
また、生物処理部3は、前記膜洗浄薬液を第2逆浸透膜装置33のRO膜に供給する第3膜洗浄薬液供給手段(図示せず)が備えられてなる。
【0051】
本実施形態の海水淡水化装置1は、膜洗浄剤が酸、アルカリ、キレート剤、界面活性剤等の場合には、第1生物処理槽21及び第2生物処理槽31の少なくとも何れか一方の生物処理槽に、膜の洗浄に用いられた膜洗浄薬液(「使用済み膜洗浄薬液」ともいう。)が移送されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、必要に応じて、使用済み膜洗浄薬液が生物処理槽に移送される前に該使用済み膜洗浄薬液を中和させる膜洗浄薬液中和手段(図示せず)が備えられてなる。該膜洗浄薬液中和手段は、該使用済み膜洗浄薬液に酸若しくはアルカリを加え混合し、該使用済み膜洗浄薬液を中和するように構成されてなる。該膜洗浄薬液中和手段は、中和された膜洗浄薬液のpHが、好ましくは、5〜9、より好ましくは、6〜8となるように構成されてなる。
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、膜洗浄剤が酸化剤の場合には、必要に応じて、使用済み膜洗浄薬液と第3濃縮水とが混合され且つ脱水され、脱水により生成された固形物質が第3濃縮水としてメタン発酵部4に移送され、脱水により生成された水溶液(脱離液)が生物処理水として第2生物処理槽31に移送されるように構成されてなる。
【0052】
メタン発酵部4は、前記生物処理部3で生物処理により増殖した生物が濃縮された水たる第3濃縮水に含まれる生物種を酸生成菌、メタン菌等の嫌気性微生物によって発酵しメタンを得るように構成されてなる。
【0053】
本実施形態の海水淡水化装置1は、メタン発酵部4で得られたメタンを燃焼することにより蒸気発電を行う蒸気発電部(図示せず)を備えてなる。
本実施形態の海水淡水化装置1は、蒸気発電部で生成される蒸気等の廃熱により、生物処理槽内の生物処理水が昇温されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、該廃熱により、膜処理されるために膜装置に移送される被処理水が昇温されるように構成されてなる。
【0054】
本実施形態の海水淡水化装置1は、第2濃縮水の塩の濃度と第3透過水の塩の濃度との差を利用して発電する濃度差発電部5を備えてなる。
【0055】
濃度差発電部5は、槽51と、槽51内を2つに区画する半透膜54とを備えてなる。
また、濃度差発電部5は、第3透過水を収容する第3透過水収容部52と第2濃縮水を収容する第2濃縮水収容部53とを備えてなる。
【0056】
第3透過水収容部52と第2濃縮水収容部53とは、槽51内が半透膜54により2つに区画されることにより形成されてなる。
【0057】
本実施形態の海水淡水化装置1は、第3透過水の一部を第3透過水収容部52に、第2濃縮水を濃縮水貯留槽(図示せず)する前に第2濃縮水収容部53に移送するように構成されてなる。
【0058】
濃度差発電部5は、第2濃縮水の塩の濃度と第3透過水の塩の濃度との差により、第2濃縮水の水分のみが半透膜54を介して第3透過水収容部52に移送されて第3透過水収容部52の水面が高まることによる水面の高低差を利用して発電するように構成されてなる。
【0059】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、濃度差発電部5で用いられた第2濃縮水及び半透膜54を介して移送された第3透過水の水分を濃縮水Dとして濃縮水貯留槽(図示せず)に移送し、濃度差発電部5で用いられ且つ第3透過水収容部52に留まった第3透過水を工業用水Fとして回収するように構成されてなる。
尚、濃度差発電部5は、第3透過水に代えて、浄化水Eあるいは淡水Cを用いて発電するように構成されてもよい。即ち、濃度差発電部5は、第3透過水収容部52の代わりに、浄化水Eを収容する浄化水収容部あるいは淡水Cを収容する淡水収容部を備えてもよい。この場合、本実施形態の海水淡水化装置1は、浄化水Eあるいは淡水Cを濃度差発電部5に移送するように構成されてなる。
【0060】
次に、本実施形態の海水淡水化方法について説明する。
本実施形態の海水淡水化方法は、有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として海水に混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合水を逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理工程とを実施して海水を淡水化する方法である。
【0061】
詳しくは、本実施形態の海水淡水化方法は、有機性廃水を第2生物処理槽31内で生物処理して生物処理水を得、更に、該生物処理水を第2除濁装置32を用いてろ過処理し第3透過水及び第3濃縮水を得、そして、第3透過水たる生物処理水を第2逆浸透膜装置33を用いたろ過処理により第4透過水と第4濃縮水たる生物処理水とを得る廃水処理工程と、第4濃縮水たる生物処理水を前記希釈水として海水Aに混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合水を第1生物処理槽21内で生物処理して生物処理水を得、更に、第1除濁装置22を用いてろ過処理し第1透過水及び第1濃縮水を得、そして、第1透過水たる混合水を第1逆浸透膜装置23を用いたろ過処理により第2透過水と第2濃縮水とを得る混合水処理工程とを実施して海水を淡水化する方法である。
【0062】
混合工程では、希釈効果を明確にさせるために、海水Aと希釈水との混合体積比を、好ましくは、海水1に対して希釈水0.1以上とし、より好ましくは、海水1に対して希釈水1以上とする。
【0063】
本実施形態の海水淡水化方法は、海水Aと希釈水との混合体積比を海水1に対して希釈水0.1以上とすることにより、塩濃度を下げることができ、得られる淡水の単位量当たりにおける、海水を淡水化するのに必要なエネルギー量を確実に抑制できるとともに、混合工程や混合水処理工程に用いられる機器の腐食を抑制できるという利点がある。また、混合水処理工程における生物処理が良好に行われるという利点もある。
【0064】
また、本実施形態の海水淡水化方法は、混合水の塩濃度を3.0質量%以下にすることが好ましく、1.8質量%以下にすることがより好ましい。また、本実施形態の海水淡水化方法は、希釈水の塩濃度を、希釈水で希釈される海水Aの塩濃度の1/3以下にすることが好ましく、希釈水で希釈される海水Aの塩濃度の1/10以下にすることがより好ましい。本実施形態の海水淡水化方法は、希釈水の塩濃度を、希釈水で希釈される海水Aの塩濃度の1/3以下にすることにより、より一層純度の高い純度の高い淡水を得ることができるという利点がある。
【0065】
本実施形態の海水淡水化装置、及び本実施形態の海水淡水化方法は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0066】
即ち、本実施形態の海水淡水化方法は、海水よりも塩濃度が低い生物処理水を希釈水として海水に混合する混合工程と該混合工程により得られた混合水を第1逆浸透膜装置23に供給してろ過処理する混合水処理工程とを実施して海水を淡水化することにより、第1逆浸透膜装置23に混合水を圧送するための圧力を海水を圧送する場合に比して抑制することができるため、得られる淡水の単位量当たりにおける圧送に必要なエネルギー量を抑制できる。また、逆浸透膜装置の膜の透過流束(フラックス)を大きくすることができ、ろ過水量を増加させることができる。また、第1逆浸透膜装置23の膜への負荷(海水中の塩による化学的負荷、及び圧力による物理的負荷)も抑制することができ、該膜の寿命を延ばし得る。また、生物処理水を有効に活用することができる。
【0067】
また、本実施形態の海水淡水化方法は、混合水処理工程で第1逆浸透膜23を用いてろ過処理する前に第1除濁装置22を用いて混合水をろ過処理することにより、第1逆浸透膜装置23の膜面に有機性固形物質や塩が付着してしまうのを抑制することができ、より一層効率よく淡水を得るという利点がある。また、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点もある。
【0068】
さらに、本実施形態の海水淡水化方法は、混合水処理工程で第1除濁装置22を用いて混合水をろ過処理する前に混合水を生物処理することにより、混合水中の溶解性有機物濃度が低減されるので、第1除濁装置22と第1逆浸透膜装置23との間で発生する微生物の増殖を抑えることができ、第1逆浸透膜装置23の膜面に微生物等の有機性固形物質が付着してしまうのを抑制することができ、より一層効率良く淡水を得るという利点がある。また、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点もある。
【0069】
また、本実施形態の海水淡水化方法は、有機性廃水を第2生物処理槽31内で生物処理して生物処理水を得、更に、該生物処理水を第2除濁装置32を用いてろ過処理し第3透過水と第3濃縮水とを得、そして、第3透過水を第2逆浸透膜装置33を用いたろ過処理により第4透過水と第4濃縮水とを得る廃水処理工程を実施することにより、前記廃水処理工程において浄化水Eを回収することができ、より一層効率よく良く浄化水を回収し得るという利点がある。
【0070】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、第2除濁装置32が第2生物処理槽31の液面下に浸漬膜として設置されてなることにより、生物処理で活性汚泥を用いる場合、浸漬膜を通して活性汚泥を含む生物処理水から活性汚泥をほとんど含まないろ過水のみを得ることができるため、容易に第2生物処理槽31内の生物濃度を高めることができ、第2生物処理槽31の容積をコンパクト化できるという利点がある。また、第2除濁装置32を生物処理槽外に設置する場合に比して、海水淡水化装置1をより一層コンパクト化でき、更に、第2除濁装置32で濃縮された汚泥を第2生物処理槽31に返送する経路も不要となるという利点がある。
【0071】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、第1透過水を第1ポンプ24を介して加圧してから第1逆浸透膜装置23に供給して第2濃縮水を得、第2濃縮水の圧力で水力タービン25を駆動して動力を得るように構成されてなることにより、エネルギーを得ることができるという利点がある。また、この得られたエネルギーを海水や下水から浄化水を得る工程で利用すれば、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点もある。
【0072】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置1は、生物処理部3で生物処理により増殖した生物種を発酵してメタンを得るメタン発酵部4を備えてなることにより、エネルギーを得ることができるという利点がある。また、この得られたエネルギーを海水や下水から浄化水を得る工程で利用すれば、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点もある。また、余剰の生物種を有効利用しつつ処分することができるという利点がある。
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記蒸気発電部を備え、該蒸気発電部で生成される蒸気等の廃熱により、生物処理槽内の生物処理水が昇温されるように構成されてなることにより、特に冬期のように気温が低く活性汚泥における生物種の活性が低下している場合に、生物種の活性が高い温度に生物処理槽内の生物処理水を昇温することができるため、得られたエネルギーを有効利用しつつ、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点もある。
さらに、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記蒸気発電部を備え、該蒸気発電部で生成される蒸気等の廃熱により、該廃熱により、膜処理されるために膜装置に移送される被処理水が昇温されるように構成されてなることにより、該被処理水の粘度が低下されて該被処理水の透過流束が上がりやすくなるため、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点もある。
【0073】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、混合水よりも塩濃度が高い第2濃縮水の塩の濃度と第3透過水の塩の濃度との差を利用して発電する濃度差発電部5を備えてなることにより、エネルギーを得ることができるという利点がある。また、この得られたエネルギーを海水や下水から浄化水を得る工程で利用すれば、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点もある。
【0074】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置1は、第1スケール防止薬液供給手段および第2スケール防止薬液供給手段を備えてなることにより、第1逆浸透膜装置23の逆浸透膜および第2逆浸透膜装置33の逆浸透膜に生じ得るスケールが抑制され得るため、より一層効率よく浄化水を回収し得るという利点がある。
【0075】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、膜洗浄剤が酸、アルカリ、キレート剤、界面活性剤の場合には、生物処理槽に使用済み膜洗浄薬液が移送されるように構成されてなることにより、使用済み膜洗浄薬液内に含まれる有機物を生物処理槽内で分解させることができ、該使用済み膜洗浄薬液の有機物を別途分解させる必要がなくなるという利点がある。
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、膜洗浄剤が酸化剤の場合には、使用済み膜洗浄薬液と第3濃縮水とが混合され且つ脱水され、脱水により生成された固形物質が第3濃縮水としてメタン発酵部4に移送され、脱水により生成された水溶液(脱離液)が生物処理水として第2生物処理槽31に移送されるように構成されてなることにより、酸化剤によって生物種を死滅させてしまうことを抑制しつつ、使用済み膜洗浄薬液内に含まれる有機物を生物処理槽内で分解させることができ、該使用済み膜洗浄薬液の有機物を別途分解させる必要がなくなるという利点がある。
【0076】
尚、本実施形態の海水淡水化装置、及び本実施形態の海水淡水化方法は、上記の利点を有するものであるが、本発明の海水淡水化装置、及び本発明の海水淡水化方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0077】
例えば、本実施形態の海水淡水化装置1は、第2除濁装置32が第2生物処理槽31の液面下に浸漬膜として設置されてなるが、図2に示すように、第2除濁装置32が第2生物処理槽31外に設置されるタイプのものであってもよい。この場合には、本発明の海水淡水化装置は、第2生物処理槽31で生物処理された生物処理水を第2除濁装置32に移送するように構成されてなる。
また、本実施形態の海水淡水化装置は、第1除濁装置22が第1生物処理槽21外に設置されるタイプのものであるが、第1除濁装置22が第1生物処理槽21の液面下に浸漬膜として設置されるタイプのものであってもよい。
【0078】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、第1スケール防止薬液供給手段および第2スケール防止薬液供給手段を備えてなるが、第1スケール防止薬液供給手段を備えずに第2スケール防止薬液供給手段のみを備え、該第2スケール防止薬液供給手段によって第2逆浸透膜装置33に供給されたスケール防止薬液が第4濃縮水として第2逆浸透膜装置33から排出され、該スケール防止薬液が第1逆浸透膜装置23に供給されるように構成されてもよい。
本実施形態の海水淡水化装置1は、このように構成されてなることにより、前記スケール防止剤が逆浸透膜を透過し難いため、第2逆浸透膜装置33で使用されたスケール防止薬液を第1逆浸透膜装置23でも利用でき、また、スケール防止薬液を供給するための動力も抑制することができるため、より一層効率良く浄化水を回収し得るという利点がある。
また、この場合には、本発明の海水淡水化装置1は、第4濃縮水として第2逆浸透膜装置33から排出されたスケール防止薬液が、第1生物処理槽21や第1除濁装置22を介して第1逆浸透膜装置23に供給されるように構成されてもよく、該スケール防止薬液が、第1生物処理槽21や第1除濁装置22を介さずに直接第1逆浸透膜装置23に供給されるように構成されてもよい。特に、本発明の海水淡水化装置1は、該スケール防止薬液が、第1生物処理槽21や第1除濁装置22を介さずに直接第1逆浸透膜装置23に供給されるように構成されてなることにより、該スケール防止薬液が、第1生物処理槽21や第1除濁装置22で希釈されてしまうことが抑制され、第1逆浸透膜装置23にスケール防止薬液が効率良く供給されるため、より一層効率良く浄化水を回収し得るという利点がある。
【0079】
また、本実施形態の海水淡水化方法では、混合水処理工程において、第1逆浸透膜装置23を用いてろ過処理する前に、第1生物処理槽21を用いて混合水を生物処理し、第1除濁装置22を用いて生物処理された混合水をろ過処理したが、本発明の海水淡水化方法では、混合水の第1生物処理槽21による生物処理及び第1除濁装置22によるろ過処理を行わない態様であってもよい。
このような態様の場合、本発明の海水淡水化方法は、好ましくは、図3、4に示すように、海水と希釈水としての第4濃縮水たる生物処理水とを混合する前に、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有する第3除濁装置10を用いて海水をろ過処理して第5透過水と第5濃縮水を得、第5透過水たる海水と希釈水とを混合して混合水を生成する。
斯かる海水淡水化方法によれば、より一層純度の高い淡水を得ることができるという利点がある。また、希釈水としての生物処理水がろ過処理された場合には該希釈水に含まれる固形物質濃度が小さくなり、また、希釈水に混合される海水に含まれる固形物質濃度が抑制されているので、より一層効率良く淡水を得ることができるという利点がある。
また、本発明の海水淡水化方法は、第1濃縮水と同様な濃縮水として第5濃縮水を扱うことができる。
【0080】
さらに、本実施形態の海水淡水化方法では、廃水処理工程において、第2逆浸透膜装置33を用いて第2除濁装置32から得た第3透過水をろ過処理したが、第2逆浸透膜装置33による第3透過水のろ過処理を行わない態様であってもよい。
このような態様の場合、本発明の海水淡水化方法は、好ましくは、図5、6に示すように、海水と希釈水としての第3透過水たる生物処理水とを混合する前に、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有する第3除濁装置10を用いて海水をろ過処理し、該第3除濁装置10を用いてろ過処理された海水と希釈水としての第3透過水たる生物処理水を混合して混合水を生成する。
【0081】
さらに、本実施形態の海水淡水化方法は、生物処理部3で生物処理により増殖した生物種をメタン発酵部4により発酵してメタンを得たが、本発明の海水淡水化方法は、該生物種に対して脱水等の他の処理を行う方法であってもよい。
【0082】
また、本実施形態に於いて、第1除濁装置22は、第1除濁装置22に移送される混合水が精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてなるが、砂ろ過器を有する砂ろ過手段により該混合水がろ過処理されるように構成されてもよい。本実施形態は、このように構成されてなることにより、低動力で多量の水の濁質を除去できるという利点がある。
また、第1除濁装置22は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過が1段で行われるように構成されてもよく、砂ろ過が2段以上で行われるように構成されてもよい。
尚、砂ろ過の段とは、砂ろ過器が直列に接続された台数を意味する。
また、第1除濁装置22は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過されたろ過処理された混合水が、更に、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてもよい。
尚、第1除濁装置22が砂ろ過である場合は、砂ろ過層を洗浄するための洗浄手段(図示せず)が備えられてなる。
【0083】
また、本実施形態に於いて、第2除濁装置32は、第2除濁装置32に移送される生物処理水が精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてなるが、該生物処理水が沈殿池で固液分離され該固液分離された生物処理水が砂ろ過手段によりろ過処理されるように構成されてもよい。
また、第2除濁装置32は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過が1段で行われるように構成されてもよく、砂ろ過が2段以上で行われるように構成されてもよい。
また、第2除濁装置32は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過されたろ過処理された生物処理水が、更に、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてもよい。
また、本実施形態では、第2除濁装置32は、生物処理水が沈殿池で固液分離され該固液分離された生物処理水が精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてもよい。
尚、第2除濁装置32が砂ろ過である場合は、砂ろ過層を洗浄するための洗浄手段(図示せず)が備えられてなる。
【0084】
また、本実施形態が第3除濁装置10を備える態様の場合、本実施形態において、第3除濁装置10は、第3除濁装置10に移送される海水が精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてなるが、該海水が砂ろ過手段によりろ過処理されるように構成されてもよい。
また、第3除濁装置10は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過が1段で行われるように構成されてもよく、砂ろ過が2段以上で行われるように構成されてもよい。
また、第3除濁装置10は、砂ろ過が行われる態様の場合、砂ろ過されたろ過処理された海水が、更に、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れか一方によりろ過処理されるように構成されてもよい。
尚、第3除濁装置10が砂ろ過である場合は、砂ろ過層を洗浄するための洗浄手段(図示せず)が備えられてなる。
【0085】
さらに、本実施形態では、自然エネルギー(波力、潮力、風力、太陽光、地熱等)を利用して発電し、本実施形態の海水淡水化装置のポンプ等の駆動電力として自然エネルギーから得られる電力を利用してもよい。本実施形態は、自然エネルギーから得られる動力を利用することにより、CO2等の環境に影響を与え得るガスを抑制したり、化石燃料の枯渇を抑制したり、原子力事故等のリスクを避けることができるという利点がある。
【0086】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、混合水処理部2に水力タービン25を備えてなるが、水力タービン25の代わりに、第1逆浸透膜装置23から圧送された第2濃縮水の圧力を、直接(電気を介さず)混合水が第1逆浸透膜装置23に移送されるための圧力に変換する圧力変換装置(圧力回収装置)を備えてもよい。
本実施形態の海水淡水化装置は、前記圧力変換装置を備える場合、第1逆浸透膜装置23から圧送された第2濃縮水が前記圧力変換装置に移送され、該圧力変換装置で用いられた第2濃縮水が濃縮水貯留槽に移送されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、混合水が第1ポンプを介する前に前記圧力変換装置に移送され、該圧力変換装置で圧力が得られた混合水が第1ポンプを介して第1逆浸透膜装置23に移送されるように構成されてなる。
本実施形態の海水淡水化装置1は、このように構成されてなることにより、第1ポンプの動力を抑制することができるという利点がある。
【0087】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置1は、第3濃縮水がメタン発酵部4に移送されるように構成されてなるが、薬剤(アルカリ、酸、酸化剤等)、超音波、熱、汚泥可溶化能を有する微生物等によって、第3濃縮水に含まれる生物種(生物種が活性汚泥に含まれたものである場合には、活性汚泥も含めたものを意味する。)を分解し溶解して可溶化させる可溶化手段が備えられてもよい。
本実施形態の海水淡水化装置1は、前記可溶化手段を備えてなる場合、第3濃縮水が可溶化手段に移送され、該可溶化手段により可溶化された可溶化処理液たる第3濃縮水がメタン発酵部4に移送されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、薬剤により可溶化する場合、必要に応じて、可溶化処理液が中性付近にpH調整され(例えば、pH6〜8)、該pH調整された可溶化処理液たる第3濃縮水がメタン発酵部4に移送されるように構成されてなる。
本実施形態は、このように構成されてなることにより、前記可溶化手段によって生物種が分解されるため、該生物種が嫌気性微生物(メタン菌等)にとって分解されやすいものとなるという利点がある。
前記可溶化手段で用いられる薬剤としては、逆浸透膜等の膜の洗浄に使用された薬剤(アルカリ、酸、酸化剤)が好ましい。本実施形態に於いて、前記可溶化手段で用いられる薬剤が該洗浄に使用された薬剤であることにより、該使用された薬剤が別途無害化処理される必要性が抑制されるという利点がある。
【0088】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、第3濃縮水の生物種がメタン発酵部4でメタン発酵されて生成されたメタン発酵消化液を脱水ケーキと脱離液とに分離する脱水機と、該該脱水ケーキを焼却する焼却施設とが備えられてもよい。
本実施形態の海水淡水化装置1は、前記脱水機と前記焼却施設が備えられてなる場合、前記メタン発酵消化液が前記脱水機に移送され、前記脱水ケーキが前記焼却施設に移送され、前記脱離液が生物処理水として第2生物処理槽31に移送されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記可溶化手段を備え、前記可溶化手段で可溶化処理液たる第3濃縮水がメタン発酵部4に移送されるように構成されてなることが好ましい。本実施形態の海水淡水化装置1は、このように構成されてなることにより、生物種が前記可溶化手段により分解されて嫌気性微生物(メタン菌等)により分解されやすいものとなるため、嫌気性微生物による生物種の分解効率が向上する。従って、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記メタン発酵消化液に含まれる固形分の量が抑制され、その結果、焼却施設で焼却すべき脱水ケーキの量が抑制されるため、焼却施設における焼却コストが抑制されるという利点がある。
【0089】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、前記可溶化手段を備えてなる場合、可溶化処理液が生物処理水として第2生物処理槽31に移送されるように構成されてもよい。
【0090】
また、本実施形態の海水淡水化装置1は、第2生物処理槽31内において活性汚泥を用いて生物処理が実施されるように構成されてなる場合、図7に示すように、前記第2生物処理槽31内に活性汚泥を凝集させる担体35が配されてもよい。
本実施形態の海水淡水化装置1は、第2生物処理槽31内に前記担体35が配されてなる場合、担体35によって凝集され担体35から分離された活性汚泥たる凝集汚泥体が形成され、更に、該凝集汚泥体と有機性廃水とが混合されて生物処理水が生成されるように構成されてなる。また、本実施形態の海水淡水化装置1は、該第2生物処理槽31内を曝気する曝気手段36が備えられてなる。
本実施形態の海水淡水化装置1は、該担体35を備えてなることにより、活性汚泥が凝集されて沈降速度が高まる。従って、活性汚泥の沈降分離性が高まるため、生物処理水の膜分離性が向上するという利点がある。
【0091】
前記担体35は、前記活性汚泥が付着される付着体35aと該付着体35aを支持する支持部35bとを備えてなる。また、前記担体35は、前記曝気手段36による曝気によって生じる水流で前記付着体35aが揺動するように構成されてなる。
【0092】
前記支持部35bは、糸状に形成されてなる。また、前記支持部35bは、該糸の軸が生物処理槽31内における水面に対して略垂直となるように設けられてなる。さらに、支持部35bは、第2生物処理槽31内に固定されてなる。
前記支持部35bを構成する材料は、該付着体35aを支持するものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、炭素繊維等が挙げられる。
【0093】
前記付着体35aは、糸状に形成されてなる。
前記付着体35aを構成する材料は、前記活性汚泥が付着しやすいものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、炭素繊維等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0095】
(試験例1)
図8に示すように、有機性廃水Bとしての下水を生物処理した生物処理水たる希釈水Gと海水Aとを表1の量で混合し、該混合により得られた混合水を第1逆浸透膜装置23にポンプ24を介して供給してろ過処理し透過水たる淡水Cと濃縮水Dとを得た。ろ過処理時における第1ポンプ24から第1逆浸透膜装置23への混合水の供給圧力(ata)、第1ポンプ24の消費電力(W)、透過水たる淡水C及び濃縮水Dの量(L)を試算した。これらの試算結果を表1、図9に示す。
尚、表1における単位動力比とは、生物処理水で希釈していない海水Aをろ過処理するのに消費した透過水量当たりの電力を100とした時における各混合水の透過水量当たりの電力の比を示す。また、混合水の塩濃度の単位である%は、質量%を意味する。
【0096】
【表1】

【0097】
表1や図9に示すように、海水を生物処理水で希釈するほど、単位動力比を小さくすることができることが分かる。また、海水1に対して希釈水0.1以上にすることで、消費電力の低減の効果があることが分かる。
【0098】
(試験例2)
実施例1
実施例1では、図10に示す海水淡水化装置を用い以下のようにして下水を生物処理した生物処理水を用いて海水A(塩濃度:3.5質量%)を淡水化した。
まず、100,000トン/dで有機性廃水Bとしての下水を生物処理部3に移送し、該下水を生物処理部3の第2生物処理槽31内で生物処理して生物処理水を生成し、該生物処理水を精密ろ過膜を有し且つ浸漬膜である第2除濁装置32を用いてろ過処理して透過水を得、該透過水を第2ポンプ34を介して第2逆浸透膜装置33に移送して第2逆浸透膜装置33を用いて透過水たる浄化水E及び濃縮水たる生物処理水を得た。浄化水Eは、70,000トン/dで得られ、該濃縮水たる生物処理水は、30,000トン/dで得られた。
次ぎに、該浄化水Eを回収し、該濃縮水たる生物処理水を希釈水として混合水処理部2に移送した。
そして、30,000トン/dで海水Aを混合水処理部2に移送し、前記濃縮水たる生物処理水を希釈水として海水Aに混合して混合水(塩濃度:1.8質量%)を得、該混合水を第1ポンプ24を介してを第1逆浸透膜装置23に移送して第1逆浸透膜装置23を用いて透過水たる淡水C及び濃縮水Dを得た。該淡水Cたる浄化水は、36,000トン/dで得られ、該濃縮水Dは、24,000トン/dで得られた。
従って、浄化水(淡水Cも含む)は、106,000トン/dで得られた。
【0099】
比較例1
比較例2では、図11に示す海水淡水化装置を用い以下のようにして海水A(塩濃度:3.5質量%)を淡水化した。
まず、100,000トン/dで有機性廃水Bとしての下水を生物処理槽7に移送し、該下水を生物処理槽7内で生物処理して生物処理水Hを生成した。この生物処理水Hは放流した。
そして、250,000トン/dで海水Aを第1ポンプ8を介してを逆浸透膜装置9に移送して逆浸透膜装置9を用いて透過水たる淡水I及び濃縮水Jを得た。該淡水Iたる浄化水は、100,000トン/dで得られ、該濃縮水は、150,000トン/dで得られた。
【0100】
実施例1及び比較例1の海水淡水化方法で消費した電力(消費電力)、得られた浄化水の量等の結果を表2に示す。
尚、得られた浄化水の量は、淡水の量も含めた量である。合計消費電力は、第1ポンプ及び第2ポンプを駆動するのに消費された電力とした(比較例1では、第2ポンプを使用していないため第1ポンプを駆動するのに消費された電力のみとした)。年間消費電力量は、年間の稼働時間を330×24時間として算出した。年間CO2排出量は、CO2排出原単位量を0.41kg−CO2/kWhとして算出した。
【0101】
【表2】

【0102】
本発明の範囲内である実施例1の海水淡水化方法によって得られた浄化水の量と、海水を希釈せずに淡水化した比較例1の海水淡水化方法によって得られた浄化水の量とは略同程度であるにも関わらず、実施例1の合計消費電力は、比較例1のものに比してかなり低い値を示した。また、実施例1の年間のCO2排出量も、比較例1のものに比してかなり低い値を示した。
【符号の説明】
【0103】
1:海水淡水化装置、2:混合水処理部、3:生物処理部、4:メタン発酵部、5:濃度差発電部、7:生物処理槽、8:第1ポンプ、9:逆浸透膜装置、10:第3除濁装置、21:第1生物処理槽、22:第1除濁装置、23:第1逆浸透膜装置、24、第1ポンプ、25:水力タービン、31:第2生物処理槽、32:第2除濁装置、33:第2逆浸透膜装置、34:第2ポンプ、35:担体、35a:付着体、35b:支持部、36:曝気手段、A:海水、B:有機性廃水、C:淡水、D:濃縮水、E:浄化水、F:工業用水、G:希釈水、H:生物処理水、I:淡水、J:濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化する海水淡水化方法であって、
有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として、塩濃度が1.0〜8.0質量%である海水に混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理工程とを実施して海水を淡水化することを特徴とする海水淡水化方法。
【請求項2】
有機性廃水を生物処理して生物処理水を得、更に、精密ろ過膜、限外ろ過膜、及び砂ろ過手段の少なくとも何れかを有する除濁装置を用いてろ過処理し透過水を得、該透過水を逆浸透膜装置を用いたろ過処理により透過水たる浄化水と濃縮水とを得る廃水処理工程を実施し、前記混合工程では、前記濃縮水を前記希釈水として用いる請求項1記載の海水淡水化方法。
【請求項3】
前記廃水処理工程では、生物処理するための生物処理槽内の液面下に前記除濁装置を浸漬膜として設置してろ過処理する請求項2記載の海水淡水化方法。
【請求項4】
前記混合水処理工程では、逆浸透膜装置を用いてろ過処理する前に、精密ろ過膜、限外ろ過膜、及び砂ろ過手段の少なくとも何れかを有する除濁装置を用いて混合水をろ過処理する請求項1〜3の何れかに記載の海水淡水化方法。
【請求項5】
前記混合水処理工程では、除濁装置を用いて混合水をろ過処理する前に、混合水を生物処理する請求項4記載の海水淡水化方法。
【請求項6】
前記混合工程では、海水と希釈水との混合体積比を海水1に対して希釈水0.1以上とする請求項1〜5の何れかに記載の海水淡水化方法。
【請求項7】
除濁装置を用いて海水をろ過処理し、前記混合工程では、該ろ過処理された海水と希釈水と混合する請求項1〜3の何れかに記載の海水淡水化方法。
【請求項8】
逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化するように構成されてなる海水淡水化装置であって、
有機性廃水を生物処理して得られる生物処理水を希釈水として、塩濃度が1.0〜8.0質量%である海水に混合し、該混合により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理部を備えてなることを特徴とする海水淡水化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−149123(P2010−149123A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58881(P2010−58881)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2009−31819(P2009−31819)の分割
【原出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】