説明

消音装置

【課題】外装ルーバの通気口を通じて壁体の一方にある騒音源から他方へ伝わる騒音音波を低減させる消音ルーバにおいて、通気性を確保しながら同時に遮音性を備えた消音ルーバを提供する。
【解決手段】壁面等に形成した通気口に羽根体を傾斜させて取り付けたルーバにおいて、羽根体の内部に消音室を設けると共に通気口と対向する面に開口を設け、この開口に曲面形状を有する第1の反射板と、平面形状を有する第2の反射板とを取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋、事務所、工場、等の構造物の壁面に設ける外装ルーバに関するもので、特に、外装ルーバの通気口を通じて壁体の一方にある騒音源から他方へ伝わる騒音音波を低減させる消音ルーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、工事現場、その他の騒音源から発生する騒音を防ぐ手段の一つとして防音壁が良く知られている。透光性の樹脂板や金属部材からなる壁体を道路脇や工事現場の周囲に設置し、壁の片側で発生する騒音が他方の側へ直接伝わらないようにするものであり、壁の高さを高くするほど遮音効果が上がるとされ、その高さはますます高まる傾向にある。
【0003】
ところで、騒音源の種類には上記の他にも産業機械、空調室外機など建物構造物に付随する形で固定設置されるものがあり、そのような騒音源の多くは外気に対する通気性や換気性を確保し、騒音源たる機械装置の稼働に伴って発生する熱を放熱させる必要がある。防音の点を最優先すれば、本来は、騒音源が置かれた側とそうでない側とを完全に分離する壁体を採用するのが望ましいのであるが、放熱の点を無視することはできないため、周囲を囲う防音用の壁体に通気口を設けると共に、その通気口に目隠しの羽根体を斜めに取り付けた鎧戸構造の外装ルーバを採用し、遮音作用と通気作用の両方を兼ね備えるようにしている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、壁面、扉、ダクト等の連通開口部に横方向に配置される羽根を上下方向に複数本設け、羽根を空気の流れに対して傾斜させて水平貫通路を形成しないように所定間隔をおいて配置されたルーバにおいて、羽根の間に形成される通風路の入口もしくは出口に風圧により開放する遮音板を設けたルーバが開示されている。この先行例によれば、風の流れがない状態においては遮音板が閉じて建屋内の騒音が通風路を通って外へ漏れるのを防ぎ、また風の流れが生じた場合には風圧によって遮音板が開放し、外気を通す機能を損なわないようにしている。
【特許文献1】特開昭60−223587号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行例によれば、風の流れがないときには遮音板が閉じられているので、建屋内の騒音が外へ漏れ出るのを防ぐことができる。しかし、風の流れが発生したときにはその風圧によって遮音板が開いて外気を建屋内に取り入れるので、遮音性を保持させることができなくなり、建屋内の騒音は外へ漏れ出すことになるのである。
【0006】
本発明は上記先行例が抱える問題点に対処してなされたものであり、外装ルーバの通気口を通じて壁体の一方にある騒音源から他方へ伝わる騒音音波を低減させる消音ルーバにおいて、通気性を確保しながら同時に遮音性を備えた消音ルーバを提供できないかという点を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、壁面等に形成される通気口の縁部に沿って庇状に傾斜させた羽根体を取り付け、通気口を通じて放射される騒音音波の音圧を低減する消音ルーバにおいて、前記羽根体は、内部に所定容積の空間を備える本体ケーシングと、前記本体ケーシング内側にグラスウール等の繊維質材または多孔質材を収容してなる消音室と、前記通気口と対向する本体ケーシングの一面に形成する開口と、曲面形状を有する板状部材からなり、前記開口の縁部から消音室内側方向に取り付ける第1の反射板と、平面形状を有する板状部材からなり、前記第1の反射板の曲面と対向して前記開口の縁部から消音室内側方向に取り付ける第2の反射板と、を備え、前記通気口を通じて放射される騒音音波を、前記羽根体の前記開口に取り付けた前記第1の反射板および第2の反射板を介して前記消音室内に導入し、消音室内において繰り返し反射させることで音圧を低減することを特徴とする消音ルーバを提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、壁面等に形成した通気口に羽根体を傾斜させて取り付けたルーバにおいて、羽根体の内部に消音室を設けると共に通気口と対向する面に開口を設け、この開口に曲面形状を有する第1の反射板と、平面形状を有する第2の反射板とを取り付けたので、騒音源から放射された騒音音波の内の通気口を通じて羽根体が取り付けられた側に到達する騒音音波を、羽根体の開口で捕らえることができる。特に、通気口から放射された騒音音波の内の直接波を第1の反射板によって消音室内へ反射させ、また、通気口から放射された後に羽根体の開口に当たって回折現象を起こす騒音音波を第2の反射板の表面に沿って消音室内へと導くので、効率良く騒音音波を捕捉することができ高い消音効果を得ることができる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0009】
図1は本発明実施例に関わる消音ルーバの外観を示す説明図である。本発明の消音ルーバ1は、フレーム体2と、このフレーム体2に複数設けられる通気口3と、それぞれの通気口3を覆うように先端を下側にして斜めに取り付けた羽根体4とを備えている。このように構成される消音ルーバの要部構造について図2の断面説明図を基にして説明する。図に示すように、通気口3が設けられるフレーム体2の片面側には、通気口3の上部位置から斜め下側に向かって通気口を覆う羽根体4が固定されており、フレーム体2の片側から通気口を通じてもう片側を見通すことができないよう目隠しをしながら、通気性は確保するように構成されている。
【0010】
次に羽根体4の構造について説明する。5は金属材料からなる羽根体ケーシングであり、中空のハウジング構造を備える略板状の全体形状を有している。6は取付穴であり、フレーム体2に固設されるブラケット7に対してこの取付穴とビス8を利用して羽根体4全体を固定保持するようにしている。9は羽根体ケーシングに設けられる開口であり、フレーム体2に形成する通気口3と対向する側の面に設けられ、この開口9を介して羽根体ケーシング5内側の中空ハウジングをケーシング外側に臨ませるようにしている。羽根体ケーシング5の中空ハウジングには、その内壁にグラスウールやロックウール等の繊維質材または多孔質材からなる吸音材10が貼付されて消音室11が構成され、通気口3を通じて騒音源から到来する騒音音波をこの消音室11に導入し、騒音エネルギーを低減させる構造となっている。そして、開口9には、開口の縁部分から消音室11内側へ向かって第2の反射板たる音波導入板12が設けられており、騒音源から到達し通気口3を通じて羽根体4が取り付けられた側に放射される騒音音波を、音波導入板12の回折エッジ12aにおいて回折させ、そのまま音波導入板12の表面に沿わせて音波導入口13から消音室11内部へと導くようにしている。また、音波導入板12の表面と向き合う位置でかつ開口9の縁部分から消音室11内側へ向かって第1の反射板たる反射板14が備えられており、通気口3を通じて直接的に到達する騒音音波を音波導入口13へ向けて反射させることで消音室11内部へと導いたり、あるいは、音波導入板12の回折エッジ12aにおける回折で捕らえきれなかった音波をこの反射板14によって反射させ、消音室内部へ捕らえるようにしている。
【0011】
ところで反射板14は、その断面形状が楕円曲線を描くよう曲面形状に形成されており、その楕円形状の焦点位置を基準にして音波導入板12の位置決めを行っている。具体的には、反射板14の(楕円の)第1の焦点の位置に音波導入板12の一方の端部が位置するようにし、それと同時に、反射板14の第2の焦点の位置に音波導入板12の他方の端部が位置するようにしている。この場合、第1の焦点位置に合わせた音波導入板12の端部が回折エッジ12aに相当し、また、反射板14の第2の焦点位置に合わせた音波導入板12の端部が、前記音波導入口13の位置に相当する。
【0012】
次に、本発明実施例に関わる消音装置の動作について説明する。騒音源から到達した騒音音波が通気口3を経て開口9に到達すると、既に説明した通り、到達した音波の内の一部が回折エッジ12aを回折点として回折現象を起こし、音波導入板12の表面を伝わって音波導入口13より消音室11の内部へと入り込む。また、反射板14に直接当たった騒音音波は音波導入口13へ向けて反射を起こし、やはり消音室11の内部へと入り込む。そのようにして開口9と音波導入口12を経て消音室11内に入り込んだ騒音音波は、消音室内で乱反射を繰り返すことによって反射波同士がエネルギーを打ち消し合ったり、あるいは吸音材10の作用で音波の持つエネルギーが低減される結果、騒音音波のエネルギーが大幅に減少して消音効果が得られるのである。もちろん、通気口3から放射される音波の全てを羽根体4で捕捉することはできず、捕捉しきれなかった騒音音波は防音対象の区域へと漏れていくが、騒音源が放った騒音のエネルギーは大幅に低減されるため、消音効果は十分に得られる。
【0013】
本発明は以上のように構成されるが、上記実施例や図示の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の実施が可能である。例えば、羽根体4の開口6に取り付ける音波導入板や反射板の枚数は図2に示した以外の枚数にしてもよい。また、反射板14の断面形状を本実施例では楕円曲線としているが、放物線や双曲線など他の曲線にすることも可能であり、その場合、焦点を音波導入口13の位置に合わせるよう設定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例に関わる消音ルーバの外観を示す説明図である。
【図2】本発明実施例に関わる消音ルーバの要部構造を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 消音ルーバ本体
2 フレーム体
3 通気口3
4 羽根体
5 羽根体ケーシング
9 開口
10 吸音材
11 消音室
12 第2の反射板たる音波導入板
13 音波導入口
14 第1の反射板たる反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面等に形成される通気口の縁部に沿って庇状に傾斜させた羽根体を取り付け、通気口を通じて放射される騒音音波の音圧を低減する消音ルーバにおいて、
前記羽根体は、
内部に所定容積の空間を備える本体ケーシングと、
前記本体ケーシング内側にグラスウール等の繊維質材または多孔質材を収容してなる消音室と、
前記通気口と対向する本体ケーシングの一面に形成する開口と、
曲面形状を有する板状部材からなり、前記開口の縁部から消音室内側方向に取り付ける第1の反射板と、
平面形状を有する板状部材からなり、前記第1の反射板の曲面と対向して前記開口の縁部から消音室内側方向に取り付ける第2の反射板と、を備え、
前記通気口を通じて放射される騒音音波を、前記羽根体の前記開口に取り付けた前記第1の反射板および第2の反射板を介して前記消音室内に導入し、消音室内において繰り返し反射させることで音圧を低減することを特徴とする消音ルーバ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−25233(P2008−25233A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199639(P2006−199639)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】