説明

液体を噴霧することによる、移動する金属ベルトを冷却する方法及びセクション

金属ストリップの均一冷却を達成する。
金属ストリップに液体又はガス及び液体からなる混合物を噴霧する、連続処理ラインの冷却セクションにおいて、移動する金属ストリップの冷却を調節する方法であって、当該冷却は温度、速度、及び冷却液の流れの特性を含むパラメータに依存しており、冷却のパラメータが、蒸気膜の局部消失が熱間金属ストリップの表面で起こりうる又は起こり、当該金属ストリップの再湿を生じさせる、1又はそれ以上の区域を決定し、かつ、上記決定された1又はそれ以上の区域の冷却パラメータとして、熱間金属ストリップと接触する冷却液の伝熱現象に起因して、上記金属ストリップの表面で蒸気膜を使った冷却を維持又は回復させるために、再湿が起こりうる又は起こる区域で当該温度が上昇するように、少なくとも冷却液の温度を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップ、特には、焼きなましされた金属ストリップ、亜鉛メッキされた金属ストリップ、あるいは、すず金属ストリップを連続処理するラインの冷却セクションの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ストリップの連続処理のラインは、連続した熱処理ステーション、特に、加熱、温度維持、冷却、時効硬化などのセクションから構成されている。
【0003】
本発明は、連続処理のラインの冷却セクション、詳しくは、金属ストリップに液体を噴霧して急速冷却するセクションに関する。
【0004】
該冷却液は、通常、水であり、この水は、例えば、溶存酸素やミネラルを予め除去されたり、熱交換の向上や金属ストリップの酸化防止のために添加剤が含まれることがある。
【0005】
水を用いた冷却によれば、ガス冷却で得られるよりも高い、非常に高い冷却スロープを得ることができる。
【0006】
金属ストリップの冷却は、また、ガスと液体からなる混合物を金属ストリップに噴霧することで行うこともできる。この場合、該ガスは、通常、液体を微粒化し、金属ストリップに噴霧するキャリヤーガスとして存在する。使用されるガスは、一般に、窒素であるが、窒素と水素の混合物、又は他のガスも使用される。
【0007】
上記液体は、ミストの状態、あるいは、より大きなサイズの小滴に微粒化された状態、あるいは、連続液体の状態で噴霧される。
【0008】
実際に行われる熱サイクルにおいては、金属ストリップの冷却は、当該金属ストリップが高温、例えば、750℃になったときに開始される。当該金属ストリップの温度が冷却液の沸点よりもかなり高くなると、膜沸騰すなわち蒸気膜状態となる。この現象は伝熱現象(calefaction)と呼ばれる。蒸気の層は、当該金属ストリップと水との間の熱移動に対するバリアをもたらす。その結果、水による冷却の効果を低下させる。
【0009】
例えば水の場合、沸点は100℃に近い温度である。その温度は、水の組成及びその中に含まれる添加物の質により数度は変動しうる。
【0010】
要するに、蒸気膜(膜沸騰)の状態において、上記問題は、水を用いて仮想壁(imaginary wall)を100℃に冷却することで低減させることができる。そのとき、微粒化した水の温度は、冷却密度を調節するための一次パラメータ、□=h(100℃−水T℃)となる。
【0011】
伝熱現象についていえば、リンデンフロスト(lindenfrost)温度と呼ばれる金属ストリップの臨界温度がある。この臨界温度より高いと、冷却は蒸気膜を伴い、それゆえ、冷却は非効果的であるが、比較的非常に均一である。それより低い、臨界温度に近い温度では、冷却の効果は非常に高いが、かなり無秩序である。この場合、非常に高い熱移動を伴って、蒸気層が一部消失する(以後、用語「再湿(redampening)」を使用する。)。金属ストリップの幅方向に急な温度勾配が結果として生じる。これは当該金属ストリップの塑性変形、例えば、折り重ねの出現を招き、あるいは、金属ストリップの幅方向に不均一な機械特性をもたらす。
【0012】
この臨界温度は、微粒化の特徴、微粒化した液体の温度、及び冷却された表面の温度を含む、数多くのパラメータに依存している。
【0013】
主たるファクターは、この臨界温度に対する冷却液体の温度及び微粒化のパラメータ、例えば、小滴の速度や粒径の影響である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、特に金属ストリップの均一冷却を達成すること、詳しくは、折り重ねの形成、つまりは、幅方向及び/又は長さ方向にわたって機械的特性の点で実質的な違いが生じることを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、金属ストリップに液体又はガス及び液体からなる混合物を噴霧する、連続処理ラインの冷却セクションにおいて、移動する金属ストリップの冷却を調節する方法であって、当該冷却は温度、速度、及び冷却液の流れの特性を含むパラメータに依存しており、
冷却のパラメータが、蒸気膜の局部消失が熱間金属ストリップの表面で起こりうる又は起こり、当該金属ストリップの再湿を生じさせる、1又はそれ以上の区域を決定し、かつ、
上記決定された1又はそれ以上の区域の冷却パラメータとして、熱間金属ストリップと接触する冷却液の伝熱現象に起因して、上記金属ストリップの表面で蒸気膜を使った冷却を維持又は回復させるために、再湿が起こりうる又は起こる区域で当該温度が上昇するように、少なくとも冷却液の温度を調節することを特徴とする方法である。
【0016】
したがって、本発明は、熱間金属ストリップと接触した冷却液の伝熱現象に起因して、金属ストリップの表面で蒸気膜を用いた冷却を維持するために、液体又はガス及び液体からなる混合物を金属ストリップに噴霧する連続処理ラインにおいて移動する金属ストリップの冷却を調節する方法であり、
金属ストリップの表面で蒸気膜を使って冷却を保持又は回復させるために、蒸気膜の局部消失に起因して、再湿が起こりうる又は起こる区域の冷却液の温度を上昇させることを含む。
【0017】
他の調整された冷却パラメータは、関連する1つ又は複数の区域において、冷却液の小滴の速度及び/又は冷却液の小滴の径によって形成される微粒化のパラメータであることが好ましい。
【0018】
上記冷却方法が、金属ストリップが移動する方向に配置された複数の連続した冷却ユニットをもつ冷却セクションを含む場合、冷却液の温度は、冷却セクションの2つの連続した冷却ユニット間で異なるように調整することができる。
【0019】
金属ストリップから出された熱流を調節できるように、冷却液の温度と流量を組み合わせた調節を実施することができる。
【0020】
冷却液の温度は、金属ストリップの幅方向に調整することができる。冷却液を噴霧する多数のユニットを金属ストリップの幅方向に分布させることができる。また、各噴霧ユニットの冷却液の温度及び流量は金属ストリップの幅方向に調整することができる。
【0021】
加熱又は前の温度の維持に比較して、冷却に起因する温度スロープの変動を限定するために、冷却液の温度は、冷却の最初に調節することができる。
【0022】
冷却液の温度は、冷却液の流量の変動を限定するために、目的とする冷却容量に基づいて調節することができる。
【0023】
熱間金属ストリップの表面において、蒸気膜の局部消失が起こりうる又は起こり、金属ストリップの再湿を引き起こす冷却パラメータである、冷却セクションの1又はそれ以上の区域を決定するために、
以下の内容の事前試験を行う。
操作条件を変更する、
冷却セクションにおいて金属ストリップの再湿が起こるときを観察する、及び、
他の全ての操作条件はそのままで、再湿を排除して検討中の区域に蒸気膜が存在する状態を回復するために必要な冷却液の温度を定めることができるようにするため、冷却液の温度は、再湿が起こる区域で次第に上昇させる。
【0024】
冷却セクション全体にわたって蒸気膜を保持するため、又は、それが可能でないときは、再湿の開始を低い温度に遅らせるため、該試験は、金属ストリップが移動する方向の後続の区域で繰り返される。
【0025】
再湿が起こる時及び区域を定めるため、蒸気膜が存在していない冷却に起因する、金属ストリップの横方向の温度勾配の急な上昇の出現及び冷却スロープの顕著な不連続を、再湿が起こりそうな区域の金属ストリップの温度を測定する装置を使って決定することが好ましい。
【0026】
該試験は、金属ストリップの温度が450℃と250℃の間にある金属ストリップの端部に沿って配置されている区域及び、温度の大きな変化を検出するため、金属ストリップの幅方向の複数のポイントで行うのが好ましい。
【0027】
また、本発明は、上述方法を実施するための連続処理ラインの冷却セクションに関する。当該セクションは金属ストリップに液体又はガス及び液体からなる混合物を噴霧する装置を有する。当該セクションは、金属ストリップに冷却液を噴霧する少なくとも1つの装置に対し、冷却水と温水を供給するための2つの分離した回路を含む、冷却液を供給するシステムを有する。各回路には調整バルブが備えられており、同じ出口のダクトに接続している。当該出口のダクトに供給される上記混合物の流量のコントローラー、及び上記混合物の温度のコントローラーも備えられている。
【0028】
該供給システムは、所望する温度の液体の全体的目標流量を得るために、冷水と温水の流量の割合を調節することを可能とするレギュレータを備えることができる。このことは、各噴霧装置にあてはまる。
【0029】
本発明においては、冷却液の温度は、所望する熱流束及び金属ストリップの温度の関数として調節することができる。
【0030】
このように、例えば、700℃の金属ストリップの温度に対して冷却を開始した直後に、0℃付近の冷水を噴霧し、しかし、金属ストリップが低い温度、例えば、450℃に達したときは、蒸気膜の状態(膜沸騰)を維持するため、当該冷水の温度を高くする必要がある。
【0031】
冷却の最後における温水(例えば、冷却の開始は35℃で、冷却の最後は80℃)を用いて、本発明は、より長い間蒸気膜を保持しつつ、冷却の調節を維持することを可能とする。金属ストリップの幅方向の水の流量の調節と組み合わせうる、この水の温度の調節により、金属ストリップの幅方向を均一な温度とすることができる。
【0032】
ライデンフロスト(Lindenfrost)温度を計算して決定することは非常に困難である。多くのパラメータが影響を及ぼしているからである。微粒化のパラメータは非常に重要である。すなわち、小滴のサイズ、小滴間の距離、小滴の速度、液体の微粒化温度、微粒化ガスの比率及び温度は、ライデンフロスト温度に影響する。また、金属ストリップの温度、表面粗さ、及び放射率も影響を及ぼす。金属ストリップによる交換される熱の流れも決定要素である。実際、ライデンフロスト温度は、液体の小滴がその気化温度に達するときの速度に依存している。これが速いほど、ライデンフロスト温度は低くなる。
【0033】
上記現象が複雑であるため、臨界温度、又はライデンフロスト温度の決定は、主に実験でなされ、理想的にはそれが取り付けられるプラントに対して直接行う実験でなされる。
【0034】
該試験においては、各種手段により、再湿が起こる時間と再湿が起こる区域のポイントを特定することができる。
【0035】
再湿が起こると、金属ストリップの横軸温度勾配が急激に上昇し、また、蒸気膜の不存在のため、より強度の冷却に起因して、冷却スロープの顕著な不連続性をもたらす。最も簡単な方法は、再湿が起こりそうな区域、例えば、金属ストリップの温度が450℃と250℃の間にある金属ストリップの端部に沿って配置された区域において、及び金属ストリップの幅方向の複数の場所において、金属ストリップの温度を測定する装置を配置することである。
【0036】
上記試験から表を作成することができる。当該表には、ラインの各生産タイプに対して、金属ストリップの再湿を防止又は遅らせるために、各区域で必要とされる冷却液の温度が記載される。
【0037】
次いで、これらの表は、プラントのコントロール及びコマンドシステムに組み込まれる。それにより、各区域において、ラインの生産タイプに対応する冷却液の適当な参照温度を自動的に考慮する。
【0038】
上述したように、金属ストリップの再湿に影響する多数のパラメータは、当該再湿は予期しない区域のラインの通常の生産において起こることを意味する。本発明においては、問題となっている区域のオペレータが、冷却液の温度を上昇させる。これにより、後続の区域まで再湿を遅らせる。この再湿が起こる区域に基づき、前もって、オペレータは、再湿の開始をさらに遅らせるために、後続の1つ又は複数の区域の冷却液の温度を上昇させることができる。
適用される温度の上昇(例えば、5℃)は、設定試験の間に、前もって規定される。当該温度の上昇は、オペレータによって調節することもできる。
【0039】
区域における冷却液の温度上昇には、ライン速度を減少させることなく、金属ストリップの目標温度スロープを維持するため、微粒化パラメータに関する調節を伴うことができる。例えば、冷却液の流量はこの区域で上昇することができる。冷却液の流量の上昇は、ラインのコントロール及びコマンドシステムにより、これが冷却区域に存在するとき、金属ストリップの参照温度に達するように、自動的に行うことができる。最適な設定は、ラインが取り付けられ、あるいは、作業中、試行を行うことによって決定される。
【0040】
本発明の上記説明は、蒸気膜を保持するための、冷却液の温度調節に該当する。これと同様の効果を、一定の液体温度で得るための他の手段は、小滴のサイズ及び小滴が金属ストリップに衝突する速度を変更することを含む。
【0041】
冷却液がガスで微粒化される場合、小滴の速度及び径は、ガスの比率を変更することで調節できる。
【0042】
冷却液がガスで微粒化される場合、小滴の速度及び径は、液体を微粒化するためのオリフィスのノズルを機械的に調整することにより調節することができる。
【0043】
冷却液の温度を最適化するための上述したのと同様の作業は、微粒化パラメータを、試験を行って実験的に決定するために使用される。
【0044】
上記膜の状態を維持するために、種々の冷却液の温度と微粒化パラメータを組み合わせることが可能であることは容易に理解できる。
【0045】
本発明の方法によれば、冷却液の温度と微粒化パラメータ、例えば、小滴の速度及び径は、金属ストリップの表面において蒸気膜の存在下で冷却を維持又は回復するために、蒸気膜の局部消失に起因して再湿が起こりうる又は起こる区域において調節することが可能である。
【0046】
水を噴霧して冷却するプラントにおいて、冷却を制御する主たるパラメータは通常、水の流量密度(kg/m2/s)である。噴霧媒体としてガスを使用する場合、ガスの流量を調節することは必須ではない。噴霧装置に関しては、ガスの流量は水の流量と当然一致する。本発明の他の態様では、ガスの流量は一定に維持される。
【0047】
上述したもののほか、本発明は、添付した図面を参照して、より詳しく後述するいくつかの他の態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、冷却液を噴霧する装置を供給するための、本発明に係る構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る冷却セクションを示す立面の遠近図である。
【図3】図3は、図2と同様、金属ストリップの幅方向に広がる冷却装置の他の態様を示す図である。
【図4】図4は、図3と同様、金属ストリップの幅方向に広がる冷却装置の他の態様を示す図である。
【図5】図5は、冷却セクションの1例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明において、冷却液を供給するシステムAの1態様の例を示す図であり、垂直下向き方向に移動している冷却されるべき金属ストリップBに液体を噴霧するDI〜DIIIを有する。DI〜DIIIの各ユニットはシステムAに関与する。
【0050】
システムAは、冷却水の流量と温度を管理する。システムAの構成は、冷水1と温水2を供給するための2つの別個の回路を含む。それらには、それぞれCV1、CV2の調整バルブが備えられており、同じ排出管3に接続している。混合物の温度コントローラーTEと同様に、混合物の流速コントローラーCDは排出管3の上に設けられる。レギュレータRは、冷水と温水の流量の割合を調節して、所望する温度の液体の全体的な目標とする流量にし、また、冷却ユニットDI、DII、DIIIとも呼ばれる各噴霧ユニット(図2)に対しても同様である。
【0051】
図2〜図5においては、各冷却ユニットで微粒化された液体の小滴は、全体としてプリズムシートの形で示している。小滴の底部は、金属ストリップの上に置かれ、一方、反対の端部は、冷却装置の液体排出ノズルに対応している。
【0052】
本発明においては、微粒化した水の温度の管理及び/又は微粒化パラメータの管理は、微粒化した水の流量を管理する付加的手段を構成する。これらの手段は冷却の適応性を高め、均一に行うことができるようにする。
【0053】
本発明においては、冷却液の温度及び/又は微粒化パラメータは、金属ストリップが移動する方向の2つの連続した冷却ユニットDI、DII、DIII(図2)の間で異なるように調節される。
【0054】
本発明に係る装置によれば、冷却セクションの長さ方向に、冷却装置を長さ方向に冷却区域I、II、III(図2)に分割することにより、微粒化した水の温度及び/又は微粒化パラメータを調節することが可能となる。各区域では、金属ストリップの各側に冷却ユニットが設けられる。各冷却ユニットは、液体の温度調節及び/又は他の区域からの排出管の分離したノズルの調節手段を有する。
【0055】
また、本発明に係る装置によれば、図3に示したように、幅方向に冷却装置を分離した冷却ユニットDIa、DIb・・・、DIeに分離させることにより、微粒化した水の温度を冷却セクションの幅方向に制御することができる。上記各冷却ユニットは、他の区域から分離された上記液体の温度を調節する手段を有する。
【0056】
本発明の一例の態様としては、システムAを形成する温度調節手段は、温水ネットワーク及び冷水ネットワークから供給される温水/冷水の混合給水栓が挙げられる。該混合給水栓は、設定の温度に基づき、温水及び冷水の流量の割合を調節する。
【0057】
本発明の他の一例の態様としては、温度調節手段は、冷却液と他の流体、例えば、空気又は水、の熱交換器が挙げられる。
【0058】
金属ストリップの幅方向にわたって熱を均一に作用させるため、横方向にして、微粒化した水の温度及び/又は微粒化パラメータを管理することも可能である。微粒化した水の温度及び/又は微粒化パラメータは、例えば、金属ストリップの全体の幅方向の上に蒸気膜が維持され、熱交換の程度が制御されるよう、液体の流量を一定にするため、金属ストリップの幅方向にわたって調節される。
【0059】
図3は、この横方向にして、冷却液の温度を調節する本発明の他の態様を示す図である。図3には、金属ストリップの幅方向にわたって5つの分離した冷却ユニットが示されている。
【0060】
図4に示すように、この横方向の冷却液の温度調節は、冷却セクションの全ての位置で金属ストリップの冷却パラメータを調整することにより、より適応性の高い調節を行うため、金属ストリップの幅方向にわたって実施することができる。
【0061】
本発明は、また、冷却セクションにおいて金属ストリップの幅方向の各位置で、冷却曲線が目標とする曲線となるような冷却方法に関する。
【0062】
水の温度を調節によって、冷却の開始において形成される折り重ね(クールバックル)のリスクを限定することも可能となる。このリスクは、金属ストリップが加熱セクション又は熱保持セクションから急速冷却セクションに通過するときに、金属ストリップの熱経路の傾きにおいて顕著な不連続性があることに起因している可能性がある。フランス特許2802552(あるいは米国特許6464808)には、この問題について詳しく述べられている。
【0063】
冷却の一番最初において水の温度例えば80℃に上げることにより、本発明は金属ストリップの最初の冷却を制限し、これにより前記傾きにおける不連続性が小さくなるため、折り重ね(クールバックル)の形成のリスクを限定することができる。
【0064】
本発明は、また、金属ストリップに液体又はガスと液体の混合物を噴霧する連続処理ラインにおいて、冷却に起因する温度スロープの変化を限定するため、冷却の最初に液体の温度を調節して、前記温度で加熱又保持することに比べて優れている、移動する金属ストリップの冷却を調節する方法に関する。
【0065】
本発明では、冷却液の同じ流量に対し、その温度を上昇させる、例えば、40℃から60℃にすることにより、少ない流れで冷却が可能となり、小さな冷却の傾きをもつサイクルを可能とし、冷却セクションの適応性を上昇させる。
【0066】
冷却液の温度と流量を組み合わせて調節することにより、金属ストリップから得られる熱流を調整することができる。
【0067】
本発明では、図4に示すように、冷却液の温度と流量は、金属ストリップの冷却の速度を広い範囲で調節することから利益を得ることにより、プラントの適応性を高めるため、金属ストリップの幅及び長さ方向で調節される。冷却ユニットは幅(横)の方向に分割され(接尾辞a、・・・e)また、長さ(縦)の方向に(ローマ数字接尾辞I、II、III)、個々のユニットDIa、・・・DIIIeに分割される。
【0068】
本発明では、幅方向の金属ストリップの冷却能力の調整に起因する幅方向の金属ストリップの温度プロファイルを制御すると、金属ストリップの中心に比較して長い又は短い端部を作成することにより、移動ローラの上の金属ストリップの案内を向上させることができる。
【0069】
幅方向の金属ストリップの冷却能力の調整に起因する幅方向の金属ストリップの温度プロファイルを制御して、金属ストリップの中心に比較して端部の長さを調整することにより、金属ストリップの平坦度を向上させることができる。
【0070】
幅方向の金属ストリップの冷却能力の調整に起因する幅方向の金属ストリップの温度プロファイルを制御して、金属ストリップの中心に比較して端部の長さを調整することにより、金属ストリップの安定性を向上させることができる。
【0071】
長さ方向の冷却システム及び幅方向の金属ストリップの冷却能力の調整は、冷却セクション及びそこから下流に配置されたセクションにおける金属ストリップとその環境の間の熱交換の進展を考慮した数学モデルを使用した計算機を利用して、ラインのコントロール及びコマンドシステム(図示せず)によりリアルタイムに行われる。上記計算機は、異なるシステムAの調節バルブCV1、CV2に命令を与える。
【0072】
また、本発明は、図4に示すように、金属ストリップの幅及び長さ方向に沿って、冷却装置は複数のユニットに分割される。各ユニットには、他のユニットに独立して、冷却液の温度と流量及び/又は微粒化パラメータを変更するのに必要な装置が備えられる。
【0073】
冷却ユニットDI・・・DIIIのサイズは、伝熱現象が不安定になる冷却セクションの部分で、該現象をより良く制御するために、冷却セクションに沿って小さなサイズに変更することができる。この部分においては、冷却ユニットの長さを金属ストリップが移動する方向に小さくすることができる。冷却ユニットの幅は、金属ストリップの幅に比較して、そこで減少させることができる。
【0074】
ガスと液体からなる混合物を利用して冷却する場合、各ユニットは、ガス及び液体の流量の変更を可能にする2つのコントロール手段を備えることができる。
【0075】
また、各ユニットは、伝熱現象に影響を及ぼし、冷却能力を変更するため、ガス、液体あるいはガスと液体からなる混合物の温度の変更を可能にする装置を備えることができる。この冷却媒体の温度の変更は、プラントの適応性を高めるため、一定の流量の冷却媒体に対して又は冷却媒体の流量の変更と組み合わせて、達成される。
【0076】
連続ラインの生産能力は、金属ストリップのサイズ、特にその厚さ、及び熱サイクルに応じて大きな範囲内で変わる。
【0077】
したがって、生産レベルに基づいて、噴霧された水の流量は大きく異なる。このことは、流量を制御する手段の限定された適応性のため、多くの流量及び少ない流量に対する制御を困難にする。水の流量の調整の精度を高めるため、本発明は、水の流量の変化の振幅を制限するよう、冷却液の温度の変更を含む。
【0078】
このように、本発明は、非常に多くの冷却流を必要とする大規模生産に対し、冷水は、水の流量を制限するため、微粒化される。しかし、小規模生産、例えば小さな厚みに対しては、必要な水の流量をわずかに上昇させるため、わずかに熱い温水を微粒化する。
【0079】
また、本発明は、金属ストリップに、冷却液の流量の変動を制限するため、目的とする冷却能力に基づき調節される液体の温度で、液体又はガスと液体からなる混合物を噴霧する連続処理ラインにおいて移動する金属ストリップの冷却を調節する方法に関する。
【0080】
本発明は、図5及び下記の要約に示す1例の態様においては、冷却水の温度の変動をもたらす。
冷却の開始において(区域DI、D’I)、金属ストリップ上に形成される折り重ね(クールバックル)のリスクを限定するため、金属ストリップは750℃であり、微粒化した水は80℃である。
次に、金属ストリップの温度がライデンフロスト温度よりも顕著に高くなる区域全体(DII、DIII、DIV;D’II、D’III、D’IV)に急速冷却を得るため、微粒化した水は40℃である。
次に、金属ストリップの温度がライデンフロスト温度付近となる臨界区域(DV、DV’)すなわち遷移区域においては、可能な限り長く蒸気膜を保持するため、水の温度は80℃にする。
最後に、金属ストリップの温度がライデンフロスト温度よりも低い区域(DVI、DV’I)においては、冷却の最後に、金属ストリップの必要とする温度(60℃)に早く達するように、水の温度は40℃に戻される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップに液体又はガス及び液体からなる混合物を噴霧する、連続処理ラインの冷却セクションにおいて、移動する金属ストリップ(B)の冷却を調節する方法であって、当該冷却は温度、速度、及び冷却液の流れの特性を含むパラメータに依存しており、
冷却のパラメータが、蒸気膜の局部消失が熱間金属ストリップの表面で起こりうる又は起こり、当該金属ストリップの再湿を生じさせる、1又はそれ以上の区域を決定し、かつ、
上記決定された1又はそれ以上の区域の冷却パラメータとして、熱間金属ストリップと接触する冷却液の伝熱現象に起因して、上記金属ストリップの表面で蒸気膜を使った冷却を維持又は回復させるために、再湿が起こりうる又は起こる区域で当該温度が上昇するように、少なくとも冷却液の温度を調節することを特徴とする方法。
【請求項2】
冷却パラメータとして、冷却液の小滴の速度及び/又は冷却液の小滴の径によって形成される微粒化のパラメータが調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属ストリップが移動する方向に配置された複数の連続した冷却ユニット(DI、DII、DIII)を用いる請求項1又は2に記載の方法であって、冷却液の温度が、冷却セクションの2つの連続した冷却ユニットの間で異なるように調節されることを特徴とする方法。
【請求項4】
金属ストリップから出された熱流を調節できるように、冷却液の温度と流量を組み合わせた調節をすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
冷却液の温度を、金属ストリップの幅方向に調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
冷却液を噴霧する多数のユニット(DIa・・・DIe)を金属ストリップの幅方向に分布させ、各噴霧ユニットの冷却液の温度及び流量を金属ストリップの幅方向に調整することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱又は前の温度の維持に比較して、冷却に起因する温度スロープの変動を限定するために、冷却液の温度を冷却の最初に調節することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
冷却液の流量の変動を限定するために、冷却液の温度を目的とする冷却容量に基づいて調節することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
熱間金属ストリップの表面において、蒸気膜の局部消失が起こりうる又は起こり、金属ストリップの再湿を引き起こす冷却パラメータである、冷却セクションの1又はそれ以上の区域を決定するために、以下の内容の事前試験を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
操作条件を変更する、
冷却セクションにおいて金属ストリップの再湿が起こるときを観察する、及び、
再湿を排除して検討中の区域に蒸気膜が存在する状態を回復するために必要な冷却液の温度を定めることができるようにするため、他の全ての操作条件はそのままで、冷却液の温度を再湿が起こる区域で次第に上昇させる。
【請求項10】
冷却セクション全体にわたって蒸気膜を保持するため、又は、それが可能でないときは、再湿の開始を低い温度に遅らせるため、該事前試験は、金属ストリップが移動する方向の後続の区域で繰り返すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
再湿が起こる時及び区域を定めるため、蒸気膜が存在していない、より強度の冷却に起因する、金属ストリップの横方向の温度勾配の急な上昇の出現及び冷却スロープの顕著な不連続を、再湿が起こりそうな区域の金属ストリップの温度を測定する装置を使って決定することを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
温度の大きな変動を検出するために、金属ストリップの温度が450℃と250℃の間にある金属ストリップの端部に沿って配置された区域において、及び金属ストリップの幅方向の複数の場所において事前試験を行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
金属ストリップに液体又はガス及び液体からなる混合物を噴霧するユニット(DI、DII、DIII)を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を実施するための、連続処理ラインの冷却セクションであって、
金属ストリップに冷却液を噴霧する少なくとも1つのユニットに対し、冷水(1)と温水(2)を供給するための2つの分離した回路を含むシステム(A)を有し、
該各回路には調整バルブ(CV1、CV2)が備えられており、同じ出口のダクトに接続しており、
当該出口のダクト(3)に供給される上記混合物の流量(CD)のコントローラー、及び上記混合物の温度(TE)のコントローラーも備えられている冷却セクション。
【請求項14】
供給システム(A)は、冷水と温水の流量の割合を調節して、所望する温度の液体の全体的な目標とする流量にするレギュレータを有し、各噴霧ユニット(DI、DII、DIII)も同様のレギュレータを有することを特徴とする請求項13に記載の冷却セクション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514694(P2012−514694A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544956(P2011−544956)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050049
【国際公開番号】WO2010/079452
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(593054206)
【Fターム(参考)】