液体付与装置
【課題】
インクジェット記録による画像形成装置において、紙等の媒体に 画質改善処理液を塗布するについて、当該画質改善処理液の付着量を可及的に少なくしながら、塗りムラを防止するように処理液付与装置を工夫することである。
【解決手段】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていること。
インクジェット記録による画像形成装置において、紙等の媒体に 画質改善処理液を塗布するについて、当該画質改善処理液の付着量を可及的に少なくしながら、塗りムラを防止するように処理液付与装置を工夫することである。
【解決手段】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等におけるインクジェット方式を用いた画像形成装置の画質改善処理液の塗布装置、すなわち、記録紙等の記録媒体の記録表面に画質改善処理液を塗布する前処理装置に関するものであり、塗布液膜の凹凸による厚さのムラを解消して均一化することにより、記録媒体の記録面に可及的に薄く、かつ膜厚にムラのない処理液膜を付与することが可能であり、したがって、画質改善処理液の厚さのムラによる画質の低下を確実に解消して、インクジェット方式による画像の画質を向上させることができるものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録技術は、加圧オンデマンド方式や荷電制御方式などを用い、インクを微小ノズルを通して液滴化し、画像情報に応じて紙等の記録媒体に付着させる技術である。このようなインクジェット記録技術は、プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置に好適に用いられている。インクジェット記録技術は、記録媒体に直接インクを付着させ画像を形成できるため、電子写真記録のような感光体を用いた間接記録に比べ、簡便な装置構成で記録ができ、今後記録媒体への画像記録方式として更なる発展が期待されている。
【0003】
ここで、インクジェット記録技術について図面を用いて説明する。
図12の(a)に示すように、水を主成分とするビヒクル61に顔料や染料からなる色材62が分散しているインクジェット用のインク液滴63を用い、インクジェットヘッドにより、インク液滴を飛翔させ上質紙やざら紙のような非塗工紙などの記録媒体64に付着させると、図12の(b)に示すように、ビヒクル61及び色材62は、紙のパルプ繊維目に沿って、紙内部に浸透する。このため、紙表面では、パルプ繊維目に沿ってインクが流れるため、フェザリングと呼ばれるインクドットにジャギーのような横流れが生じる。また、カラー画像のように、紙上に1色目のインク滴層を形成して後、1色目が紙上で乾燥しないうちに2色目の色のインク滴を付着させると2色目インクドット形状が乱れて紙表面でインクが流れ、カラーブリーディングと呼ばれるドットのにじみが生じる。
【0004】
さらに、色材の大部分が紙内部に浸透するため、画像濃度の低下と紙裏側の濃度上昇(これを画像の裏抜けと呼ぶ)が生じる。更に、紙面でインク液滴が紙内部に浸透する前に別のインク滴と接触すると、インク液滴どうしが合体し、ビーディングと呼ばれる所望のドット径よりも2倍以上大きなドットを形成して著しい粒状感を発生する恐れもある。すなわち、紙や樹脂フィルムなどの記録媒体上の付着インク液滴によって媒体の裏側までインクが浸透するという裏抜け、連続印字において、媒体どうしの重ねで媒体裏面にインクが付着する裏移り、フェザリング、ビーディング、カラーブリーディング、媒体上でのインク液滴の濃度ムラであるモトリングが発生してしまう。
【0005】
そこで、従来より、特許文献1〜特許文献3に記載のように、記録媒体である上質紙やざら紙にインク液滴が付着する直前にインクを定着させる機能を有するインク処理液、つまり画質改善処理液を塗布し、フェザリングやカラーブリーディングを防止している。以下、この従来の技術について図面を用いて詳細に説明する。
上質紙や樹脂フィルムを媒体とした場合の、インク液滴飛翔による高画質画像を媒体上に形成するため、図13の(a)に示すように、インク液滴63が付着する前に、予めインクの色材62を固定化する液、いわゆる画質改善処理液65を媒体64の表面に形成する。そして、図13の(b)に示すように、その画質改善処理液層にインク液滴63を付着させると、図13の(c)に示すように、インク中の色材62が凝集・固着してパルブ繊維目を色材が通過できなくなり、紙表面に色材がとどまり、一方、ビヒクルは、紙内部に浸透する。このため、フェザリングやカラーブリーディングや画像濃度低下及び画像の裏抜けを防止できる。また、媒体が樹脂フィルムの場合も同様で、ビヒクルはフィルム表面にとどまるものの色材が凝集しているため動くことができずビーディングを防止できる。
【0006】
このようなインク中の色材を凝集させるためには、まず、インク中の色材が負イオン性もしくは正イオン性に帯電している必要がある。染料は、水中で色材自身が正又は負にイオン化する。顔料の場合、自己分散型顔料では、水中で顔料自身が正又は負にイオン化する。顔料分散剤を用いる場合は、水中で分散剤が顔料に吸着し正又は負にイオン化することで結果的に顔料自身が正または負にイオン化する。一般に、インク中で色材は負イオン性を帯びて分散している。
【0007】
画質改善処理の第一の原理は、図14(a)に示すように、上記の色材が水中で負イオン性を帯びて分散したインクが、図14(b)に示すように、水中で酸性を示し多量のプロトン(正電荷)を含んだ画質改善処理液に接触すると、図14(c)に示すように、画質改善処理液中の多量のプロトンに負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する原理である。
画質改善処理の第二の原理は、図15(a)に示すように、上記の色材が水中で負イオン性を帯びて分散したインクが、図15(b)に示すように、水中で正電荷を有するカチオン性部材を含んだ画質改善処理液に接触すると、図15(c)に示すように、画質改善処理液中のカチオン性部材に負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する原理である。
【0008】
しかし、このような画質改善処理液を記録媒体に塗布するために、従来では画質改善処理液を液滴化する専用のインクジェットヘッドを用いているため、インク処理液中の成分によりインクジェットヘッドのノズル孔が目詰まりする恐れがあり、信頼性に欠ける。また、インクジェットヘッドで液滴化するためには、インク処理液が水程度の低粘度である必要があり、インク処理液に粘度の制限がある。このため、インクにじみに効果があっても液粘度が高くなる部材は利用できない場合や、画質改善処理に効果がある部材の濃度を上げることができない場合など、処理液処方の自由度の幅が狭く、顕著なにじみ防止効果を有するインク処理液を作製することが難しい。
そこで、特許文献4に、画質改善処理液を塗布ローラにて紙全面に塗布する技術が提案されている。この技術によれば、画質改善処理液の粘度の範囲は広く、各種の画質改善処理効果を有する部材を画質改善処理液中に、高濃度で、含有させることが可能となる。
ところで、画質改善処理液の紙等の媒体への付着量は少ないほど、画像形成装置における定着液の消費量を抑えて印字に要するコストを低減でき、更には乾燥時間の短縮による高速記録が可能となる。
【0009】
画質改善処理液の量によって画像を構成するインクの凝集状態が変化し、例えば、ドット形状係数に対して画質改善処理液の量は図16のような関係にある。ここで、ドット形状係数とは、印字後のドットの周囲長を計測し、「真円時の面積」Sを計算する。計測面積=sとした時のS/sであり、1に近いほど、円に近く、大きいほどにじんでいる。画質改善処理液が多い場合にはその量の変動はそれほど大きく影響しないが、少ない場合には塗布ムラによる量の変動が大きく画質に影響する。塗布量を少なくするには、薄層で均一な塗布が必要である。
しかしながら、ローラ間を通過する際にローラ上の液量を計量して塗布する場合、ローラ間を通過した後に2層に分かれる際に引っ張られた痕が表面に残る(図10)。これは、塗工において一般にリブとかリングパターンと呼ばれるもので塗布する場合のムラの原因になる。
【0010】
上記のようなムラをなくする手法として、特許文献5にはドクターブレード法によるセラミックシートの成形方法が記載されている。ギャップを固定したドクターブレードで均一な厚さのシートを形成する場合に生じるバラツキを加振機による低周波振動により抑えている発明であり、固定ブレードによっても均一な層を形成することが困難であり、振動を加えるなどの工夫が必要であることを示している。
リングパターンによるムラは塗布量が多い場合には、このムラによる画像への影響は目立たないが、塗布量を減らした際にはこのムラが画像に影響してそのままムラになってしまう。このパターンは液の特性やローラの構成によって変化するがしかしこれを除去することは困難である。
【0011】
上記リングパターンのピッチが数百μmから数ミリの場合、特にそのムラの影響が画像上で目立ち、これを細かいピッチにすることで目立たなくすることが可能であるが、液の特性によりこれを制御するにはインク処理液の処方に対する制約を受けることになり、十分な機能を発揮できなくなる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の目的は、インクジェット記録による画像形成装置において、紙等の媒体に画質改善処理液を塗布するについて、当該画質改善処理液の付着量を可及的に少なくしながら、塗りムラを防止するように処理液付与装置を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、
表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記処理液付与装置(請求項1)。
【0014】
そして、上記均一化手段の可撓性部材は上記液体搬送手段の外周面に接触する接触面に微細なパターンを有する部材であることが望ましい(請求項2)。
また、上記微細なパターンは、画像の解像度よりも細かいことが望ましく(請求項3)、上記パターンを備えた上記可撓性部材はメッシュであることが望ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果を各請求項に係る発明毎に整理すれば次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明
請求項1に係る発明によれば、その可撓性部材の自由な先端が液体搬送部材(塗布ローラ)外周の液体表面に沿うように撓んで、同液体表面に密着し、部材により液膜表面が液体搬送部材外周面に沿って均一な厚さに均され、かつ、先端部も含めて液体搬送部材外周の液体表面に沿っているので均一化手段の先端部で液膜層が引き剥がされることがないので、均一化手段の先端部を通過した後においても均一な状態を保持し続けることができる。このため、上記液体搬送部材表面の液膜に生じたムラを均一に均すことができ、したがって、記録紙である被塗布物に対してムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0016】
(2)請求項2に係る発明
請求項2に係る発明によれば、均一化手段が微細なパターンを有する部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラを均一化手段の微細なパターンのレベルに均一にすることができ、記録媒体である被塗布物に対してムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0017】
(3)請求項3に係る発明
請求項3に係る発明によれば、均一化手段が、その微細なパターンが画像の解像度よりも細かい部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラを画像の解像度よりも微細なパターンにすることができ、記録媒体である被塗布物に対してさらにムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0018】
(4)請求項4に係る発明
請求項4に係る発明によれば、均一化手段が微細なパターンを有するメッシュ部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラをメッシュの微細パターンのレベルにすることができ、記録媒体である被塗布物に対してさらにムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0019】
なお、請求項5の発明は請求項1〜請求項4の発明について、その利用形態を限定したものであり、請求項6の発明は請求項1の画質改善液付与装置を一般化したものであり(段落「0086」参照)、請求項7の画質改善処理液付与方法の発明、請求項8の液体付与方法の発明の効果は、請求項1、請求項6の発明とそれぞれ同じである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図
【図2】は、同機構部を装置本体上から説明する概略構成図
【図3】は、同機構部を装置本体横から説明する概略構成図
【図4】は、記録ヘッドユニットの説明図
【図5】が、ヘッドユニットを装置正面から見た図
【図6】は、ヘッドユニットを構成するパーツの拡大図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図
【図7】は、液付与手段の構成を概略的に示す側面図
【図8】は、均一化手段の斜視図
【図9】は、均一化手段の均一化部材の先端が塗布ローラ外周に沿って撓んで密着している状態を模式的に示す拡大図
【図10】塗布ローラ外周面の液膜にリング状パターンのムラが生じている状態を模式的に示す斜視図
【図11】は、均一化手段の均一化部材が可撓性を有することによる塗布ローラ外周の液膜に対する膜厚均一化作用の説明用参考図
【図12】(a)は、水を主成分とするビヒクル61に顔料や染料からなる色材62が分散しているインクジェット用のインク液滴63を用い、インクジェットヘッドにより、インク液滴を飛翔させ上質紙やざら紙のような非塗工紙などの媒体64に付着させる様子を模式的に示す説明図、(b)は、ビヒクル61及び色材62は、紙のパルプ繊維目に沿って、紙内部に浸透し、紙表面では、パルプ繊維目に沿ってインクが流れ、フェザリングと呼ばれるインクドットにジャギーのような横流れが生じる様子を模式的に示す説明図
【図13】(a)は、記録媒体が樹脂フィルムであり、インク液滴飛翔による高画質画像を媒体上に形成するとき、インク液滴63が付着する前に、予めインクの色材62を固定化する液、いわゆる画質改善処理液65を媒体64の表面に形成する様子を模式的に示す説明図、(b)は、その画質改善処理液層にインク液滴63を付着させる状態を模式的に示す説明図、(c)は、インク中の色材62が凝集・固着してパルプ繊維目を色材が通過できなくなり、紙表面に色材がとどまり、一方、ビヒクルは、紙内部に浸透する状態を模式的に示す説明図
【図14】は、画質改善処理の第一の原理の説明図であり、(a)はインク中の色材が水中で負イオン性を帯びて分散した状態を模式的に示す図、(b)は、水中で酸性を示し多量のプロトン(正電荷)を含んだ画質改善処理液に接触する状態を模式的に示す図、(c)は、画質改善処理液中の多量のプロトンに負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する様子を模式的に示す図
【図15】は、画質改善処理の第二の原理を示す説明図であり、(a)はインク中の色材が水中で負イオン性を帯びて分散した状態を示す模式的に示す図、(b)は、水中で正電荷を有するカチオン性部材を含んだ画質改善処理液に接触する状態を模式的に示す図、(c)は、画質改善処理液中のカチオン性部材に負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する様子を模式的に示す図
【図16】は、画質改善処理液の量によって画像を構成するインクの凝集状態が変化することを示し、ドット形状係数に対する画質改善処理液の量が関係の一例を示す図
【図17】(a)は、アニロクスローラの平面図、(b)(c)(d)はピラミッド型、格子型、斜線型の一部拡大図
【図18】は、ワイヤーバーの平面図
【図19】は、フイルムによる均一化部材と塗布ローラとの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による液体吐出装置の処理液付与装置を備えた画像形成装置の一例について図1を参照して説明する
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備え、さらに、装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、液体補充手段としての液体保管用タンクであるメインタンク(以下、「インクカートリッジ」という。)10が交換可能に装着され、また、開閉可能な前カバー8を有している。
【0022】
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。
図2において、フレーム21を構成する左右の側板21A,21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図2で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、インクジェットヘッドすなわち、記録液の液滴(インク滴)を吐出するための液滴吐出ヘッドからなる複数の記録ヘッド35を、複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。ここで記録ヘッド35は、例えば、イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド35y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド35m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド35c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド35bとで構成されている。もちろん、この4色以外の色インクを用いることもできる。
【0023】
なお、上記「記録ヘッド35」は、個々の色のインクを吐出する記録ヘッドの総称である。そしてまた、記録ヘッド35の具体的構成については、1又は複数の色の液滴を吐出する1又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1又は複数用いたものにすることもできる。
【0024】
記録ヘッド35を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用することができる。
【0025】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド35にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク34y,34m,34c,34k(色を区別しない場合は「サブタンク34」という。)を搭載している。このサブタンク34には各色の記録液供給チューブ37を介して前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y,10m,10c,10k」という)から記録液を供給するようにしている。
【0026】
ここで、インクカートリッジ10は、図2にも示すように、カートリッジ装填部6に収納され、このカートリッジ装填部6にはインクカートリッジ10内の記録液を送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。また、インクカートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでの記録液供給チューブ37は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。さらに、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
【0027】
一方、図3において、給紙トレイ2の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0028】
そして、この給紙部から給紙された用紙42に対して、画質改善処理液(以下、単に「処理液」ともいう)を塗布乃至は付与するための処理液付与装置170により、その表面に処理液を付与した後に記録ヘッド部へと搬送される。この処理液付与装置170で処理液171を塗布された用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51を備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
ここで、搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図2のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド54による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。このガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ57とテンションローラ58)の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。これにより、搬送ベルト51は印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
【0029】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための本発明に係る液体吐出装置の維持回復装置(以下「サブシステム」ともいう)91を配置している。
【0030】
このサブシステム91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)92a〜92d(区別しないときは「キャップ92」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け94及びこの空吐出受け94に一体形成され、ワイパーブレード93に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。
【0031】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け98を配置し、この空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口99などを備えている。
【0032】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、液付与手段を通して搬送ベルトへ案内される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0033】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33はサブシステム91側に移動されて、キャップ92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0034】
図4に記録ヘッドユニットを拡大して示しており、当該記録ヘッドユニットはキャリッジ33に固定されており、図4ではイエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド35y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド35m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド35c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド35kとで記録ヘッドを構成している。また、各記録ヘッド35にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク34y、34m、34c、34k(色を区別しない場合は「サブタンク34」という。)を搭載している。
【0035】
図5はヘッドユニットを装置正面から見た図である。サブタンク34の両側にはFPC(電気配線)103が装着され、ヘッド35を動作させる信号はこれを介して伝えられる。サブタンク34の上にはインク供給口102が装着され、インクは記録液供給チューブ37を通り、インク供給口102からサブタンク34に補充される。
【0036】
図6はヘッドユニットを構成するパーツの図である。ヘッド先端面にはノズルプレート104がベース部材105の上に貼り付けられており、ノズルプレート104には微細なインク吐出口(ノズル)が多数形成されている。ヘッド35はノズルプレート104とベース105とフレーム106で主に構成されており、ヘッド35のノズルプレート104と逆の面にはサブタンク34が取り付けられている。ヘッド35には電気信号を伝達するFPC103(電気配線)が取り付けられている。
【0037】
〔インクについての説明〕
ついで、インクジェットプリンタでこの発明の画像形成装置のインクジェットプリンタで使用する記録液は、色材として顔料、染料のいずれでも用いることができ、混合して用いることもできる。
【0038】
《顔料》
本発明の記録液に用いる顔料として特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これら顔料は複数種類を混合して用いても良い。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0039】
これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、吐出口の目詰まりやプリンター内のフィルターでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
【0040】
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学製)、Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(以上、コロンビア製)、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
《カラー顔料について》
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
【0042】
色別により具体的には以下のものが挙げられる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
又、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0043】
以上に挙げた顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような有機顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
【0044】
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得られるため好ましい組み合わせである。その理由は明らかでないが、以下のように考えられる。
高分子分散剤を含有することで記録紙への浸透が抑制される。その一方で、高分子分散剤を含有することで自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができる。そのため、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
【0045】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0046】
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には以下のとおりである。
(a)界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法)。
(b)in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)。
(c)液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法);
(d)コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)。
(e)液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)。
(f)融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法)。
(g)気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法)。
(h)スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法)。
(i)酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法)。
(j)転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
【0047】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン。
【0048】
以上の材料の中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0049】
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して1重量%以上20重量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
【0050】
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので本発明にはより好ましい。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適しており、in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。さらに、液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適しており、コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
【0051】
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材との複合物または複合体、あるいは自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0052】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
【0053】
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができる記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
このように樹脂被覆することによって顔料が印刷物にしっかりと付着することにより、印刷物の擦過性を向上させることができる。
【0054】
《染料について》
本発明の記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。これらの着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
【0055】
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
【0056】
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
【0057】
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
【0058】
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
【0059】
《染料・顔料共通の添加剤、物性》
この実施形態において使用する記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例として、次のものが挙げられる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等。
以上の溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
【0060】
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0061】
【化1】
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、k:5〜20)
【0062】
【化2】
(m,nは0〜40)
【0063】
【化3】
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20)
【0064】
【化4】
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
【0065】
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0066】
記録液の表面張力は、20〜60dyne/cmであることが好ましく、被記録材との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50dyne/cmであることがさらに好ましい。
また、記録液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることがさらに好ましい。
さらに、記録液のpHは3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることがさらに好ましい。
【0067】
また、記録液は防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。上記防腐防黴剤としてはベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0068】
記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用可能である。
【0069】
記録液は酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、例えば、次のものがある。
ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト。
【0070】
記録液はpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【0071】
〔処理液付与装置について〕
処理液付与装置170の構成が図7に概略的に示されている。
処理液タンク171T内の処理液(塗布液)171に少なくともその一部分に接するようにして設置された供給ローラ172があり、この供給ローラ172とその回転軸が平行で表面が接触するようにして設置されている塗布ローラ173へ、タンク171T内の処理液(塗布液)をくみ上げて供給している。処理液171は、別に貯蔵タンクを設け、必要に応じて図7の供給部の処理液タンク171Tへ補充するようにすることもできる。
供給ローラ172と塗布ローラ173は、軸方向にほぼ均一な圧力となるように接触し、供給ローラ172によってくみ上げられた処理液の一定量がローラ間のニップを通過して塗布ローラ173上に処理液の液膜を形成する。必要であれば複数本の供給ローラがあっても良いし、例えば、塗布量が過多になる場合などは、塗布ローラ173との間に更に中間ローラを設けてもよい。そうすれば、塗布量が半減するという利点がある。
供給ローラ172と塗布ローラ173の回転は等速であっても線速差を設けても良く、塗布ローラ173上に平均的に均一な量の液膜を形成することが出来るような構成であればよい。
線速差を設けるとよい場合の例と理由
等速な場合は装置構成が簡単であるが、プロセス速度によって速度が決定されてしまう。たとえば高速機では、液たまり中で供給ローラが高速で回転することになるので液を飛散させてしまい、供給が不安定になってしまうようなことが起こる。そこで、このような場合には、供給ローラの速度を塗布ローラに対して遅らせることで対応することができる。
【0072】
塗布ローラ173には、供給ローラ172により供給された液膜の微細な凹凸を平滑化するための均一化手段180があり、塗布ローラ173の回転方向の供給ローラ172より下流側で転写紙に画像改善処理液(処理液)を塗布するために塗布ローラ173に転写紙を押圧する対向ローラ174の間に設けられている。図7では、供給ローラ172と対向ローラ174は塗布ローラ173を挟んで対向する位置に設置されている。供給ローラの位置は、この位置より、塗布ローラの回転方向に対して、上流側や下流側にずらしても問題なく、装置の全体レイアウトに応じてこれらの位置関係は適宜変更することができる。
塗布ローラ173上の画像改善処理液は、ここで均一化された後、対向ローラ174との間を転写紙が通過する際にその表面の塗布液を付与する構成となっている。
【0073】
〔均一化手段〕
均一化手段180は、図8に示すようなフィルム状の均一化部材181によるものであり、均一化部材181の一方の端部eが塗布ローラ173の表面に沿って変形して面接触できるようにフリーであり、もう一方の端部が支持部材182に固定されている。この均一化部材181は、塗布ローラ173の回転と、塗布ローラ173上の塗布液の粘性と表面張力とにより、緊張した状態になっている。転写紙に塗布された処理液の液膜が均一化手段180を通過することで、それまでのその液膜表面の微細な凹凸が均されて均一化される。
さらにいえば、均一化部材181は塗布ローラ173の表面に合わせて変形する程度の可撓性を有し、図9に示すように、塗布された処理液膜との表面張力により、塗布ローラの表面にならって均一化部材181の一端部eが変形して塗布ローラ173上の処理液膜173fと広範囲で面接触し、これによって膜厚が均一化されるのであるから、塗布ローラ173との接触状態にムラがあるとこれがスジムラの発生要因となる。したがって、処理液膜173fとの微弱な密着力で柔軟に変形するように十分に可撓性を有していることが必要である。
例えば、均一化部材181は、その幅が300mmのとき(曲げ変形に対して幅に対する依存はないが長いほどしわを発生させずに保持することが困難になる)、PET製のフィルムで厚さ、30〜200μm程度の可撓性を有していることが望ましい。厚さが30μm未満で余り柔軟性が高すぎるとしわを発生させずに保持することが困難になるという問題がある。
【0074】
塗布される処理液の量は、供給ローラ172と塗布ローラ173のニップ部を通過する処理液(塗布液)の量によって決まり、これが均一にムラなく転写紙表面に付与されるようにするために均一化手段180を備えている。上記ニップ部を通過する処理液の量は、供給ローラ172および塗布ローラ173の表面が平滑であればその処理液の粘度とローラ間ニップの圧力で決まる。処理液の粘度は温度が一定であればその種類によって決まるので、ローラ間ニップの圧力を調整することで通過液量を制御することができる。ニップ間を通過した処理液(塗布液)は、供給ローラ表面と塗布ローラ表面に分かれる。この際、分かれるときに両ローラ表面の液同士が引き合い、この引き合いの強さのバラツキによる影響がムラとなって出現する(図10)。一般的にこのムラはリング状のパターンとなって塗布ローラ表面に現れる。そしてこのリング状パターンのムラがそのまま転写紙に塗布されると、これが転写紙の塗布膜のスジ状のムラとなってしまう。
【0075】
この他、供給ローラ172に均一パターンの溝を設けてこの溝を通して塗布液を塗布ローラに供給する構成で液量を計量するようにすることもできる。このようにする場合は、供給ローラとしてアニロクスローラやワイヤーバーなどのローラを使用することができる(図17、図18参照)。これらのローラでは、表面の溝パターンによって液の供給量が決まるため液の粘度の影響を受けにくいなどの特徴を有する。しかし、微量塗布のためには微細かつ均一な溝パターンを形成する必要があり、一般的に高価なものになってしまう。
なお、アニロクスローラは、均一な微細パターンの彫刻されたローラで正確に付着量を制御できる。表面の溝の形状により、ピラミッド型、格子型、斜線型などがある。ドクターブレードを当接させてすり切って計量するのが一般的であるが、ローラとの隙間で計量することもできる。
また、ワイヤーバーは細いワイヤーを巻き付けたローラであり、細いワイヤーで形成される凹凸により計量することができるようになっている。
【0076】
このように計量された処理液(塗布液)が塗布ローラ上にあるとき、それは平均的な量として一定であるが、しかし、局所的に筋などのムラが存在している。これを均一に均すために均一化部材181による均一化手段180を備えている。図8の均一化手段180ではそこを通過する塗布液膜の平均厚を調整しないで均すことが求められる。このために、上記均一化部材181の一方の端部(先端部)eが塗布ローラ173上の塗布液膜173fに浮いているような状態であって、塗布液膜の見かけの表面張力を大きくすることで同液面の微細な凹凸を均しているものである。
【0077】
処理液膜(塗布液膜ともいう)の膜厚を規制しながら、塗布ローラ173上の液層の平滑化を行うことができればより好ましいが、ドクターブレードなどの剛性の高い材料を当接させ、対向するローラとの間のギャップを幅方向全域に渡って、ミクロンオーダーで一定にすることは、実質的に不可能であり、本発明の処理液付与装置170における均一化手段180のような手段が必要である。
【0078】
塗布ローラ173上で発生したスジ状のムラを何らかの均一化部材で均一化する必要があるが、そのために例えば、剛性の高いブレード等の当接部材185を塗布ローラ173に当接させた場合(図11参照)、塗布ローラ外周の塗布液膜173fが、当接部材185の先端で塗布ローラ側と当接部材185側とに分かれることになり、再度、ムラを発生させることになってしまう(図11)。これに対して、図8の実施例における均一化部材181の一端部eは塗布ローラ173の表面形状にならって柔軟に変形する可撓性を有し、当接部の先端が常に塗布ローラ173の表面に接している状態が維持される。このため、液層が2層に分かれることはなく、したがって、筋状のムラは発生しない。
さらにいえば、上記のように均一化部材181の先端が液に押圧されることなく接触するためには均一化部材181の一端部eが処理液膜173fに浮いているような状態を作り出すことが必要であり、均一化部材181の先端部(一端部)eを含む一部分が塗布ローラ上の処理液膜173fに沿って変形するようにする必要がある。
【0079】
上記のような均一化部材181の変形は、上記処理液膜173fとの表面張力により、塗布ローラの表面に倣って(又は沿って)均一化部材181の一端部eが変形するものでなければ、塗布ローラ173の処理液膜73fとの接触状態にムラが生じ、これがスジムラ発生の要因となるので、均一化部材181については、上記のように非常に弱い力(微力)で変形するのに十分な可撓性を有している必要がある。
【0080】
上記均一化手段180にさらに求められる要件として、画像改善処理液を吸収することのない疎水性を備えていることがある。例えば高分子材料のように素材そのものが疎水性を備えていてもよいし、素材の表面に金属箔や疎水性の樹脂をコートするなどの表面処理によって上記疎水性を備えていてよい。
上記のような所要の柔軟性と、疎水性を備えている材料としては、厚さ200μm以下の疎水性フィルムがある。厚さ200μm以下の疎水性のフィルムを用いることによって、均一化部材181として塗布ローラ173上の塗布液膜173fに接触した際に、その先端eを含む広い面で接触させることが可能であり、処理液膜(塗布液膜)173f上にフィルムが浮いた状態になり、液膜の厚さを調整することなく表面を均一化することが可能である。
【0081】
上記のように、均一化部材181として薄いフィルム状素材を使用した場合、フィルムのエッジのカット精度がスジの原因になることがある。先端にバリ等の傷があるとそこがスジムラとなってしまう。ところが、可撓性のあるものを精度良くカットすることは一般的に難しい。
そこで、請求項2に係る発明の装置では、予め幅方向に粗密が均一に繰り返される微細パターンを有する部材を均一化部材として使用している。この微細パターンの一例は、図19に示すとおりである。この実施例における上記微細パターンの形状、サイズは次の通りである。
すなわち、フィルムの一端に微細な切込みを入れたもので、数十μmピッチで数〜数十ミクロンの深さの均一な切込みが入っている。
この場合、上記微細パターンに応じたスジムラがローラ上の処理液膜にすじ状に反映される。その理由は次のとおりである。
すなわち、切込みのない部分と切込み部では液膜の剥がれ方に差が生じるため、このパターンに応じたスジ状のムラがローラ上の処理液膜に残る。
上記のパターンが十分に細かく、均一であれば、転写紙に付与された後の転写紙内での液の浸透効果(紙の中を面方向に広がって浸透する効果)によって、画像上ではそのムラが目立たなくなる。
そして、上記のような微細パターンを得る構成として、例えば、フィルムの先端に端面に直行する均一なピッチの切れ込みをレーザー光やカッターによって入れたり、同一太さの細い繊維を並べて束ねたブラシを使用することなどが考えられる。
【0082】
この場合、上記微細パターンは細かいほど目立たなくなるが、請求項3のように画像形成時のインクを吐出する解像度程度もしくはそれ以上の細かいパターンであることが望ましい。なぜなら、細かいピッチであればあるほど浸透時の広がりによりムラが目立たなくなり、解像度よりも細かければ、ムラがあっても目立ちにくいからである。
ところが、例えば、均一化部材の微細パターンをブラシで作る場合には、その繊維が長いと結束部より先端側には拘束がないので、ブラシが塗布ローラの軸方向に揺らいでしまうなどしてブラシの繊維レベルでの微細な粗密パターンの均一性が失われる。反対にブラシが塗布ローラの軸方向に揺らぐことがない程度まで繊維が短い場合には、ブラシの繊維が短くローラの表面に沿って変形する程度の可撓性を作り出すことが難しいという問題がある。
そこで、請求項4の発明では、均一な微細パターンを作る均一化部材としてメッシュを使用している。メッシュは細かい繊維が網目構造を作るようになっており、このようにすれば、塗布ローラに沿って変形することができる長さがあっても、均一パターンを形成する縦方向の繊維の並びが、これと直交する横方向の繊維によってその並びが崩れないように拘束されているため、ローラ上に沿っている部分においても均一なパターンを維持することが容易である。さらに細い繊維であるので塗布ローラの表面に応じて曲がる可撓性も容易に得ることができる。
【0083】
上記メッシュの素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの線径20μm〜100μmの樹脂素材の他、金属素材であるステンレスも一般的であるが、金属は繊維であっても剛性が高く、可撓性の点で樹脂素材に劣るので、樹脂素材である方がより好ましい。
例えば、本実施例では、NBC製ポリエステルメッシュT−NO.508Tを用いている。このメッシュは、線径27μmの繊維による508メッシュ/inchであり、容易に微細な粗密パターンを得ることができる。
【0084】
〔画像改善処理液について〕
画像改善処理液は、インクを凝集させる成分を含む処理液であり、被塗布物はインク印字前の記録紙(転写紙)である。このように、インク印字前に画像改善処理液を被塗布物(記録紙)に付与することで、にじみのない高品質な画像を、インクジェット専用紙以外の普通紙を用いても得ることができるようになる。本発明の処理液付与装置を使用することでムラなく均一に処理液を付与することが可能となるので、画像改善処理液のコストの低減が可能であるとともに、当該画像改善処理液の塗布ムラによる、画像ムラを防止することができる。
【0085】
上記のような機能を有する画像改善処理液としては、インク中の顔料成分を凝集させる凝集剤を含有している必要があり、当該凝集剤としては、インク中の色材や分散剤などの樹脂成分に含まれるアニオン性基とイオン的相互作用により瞬時に会合体を形成し得る水溶性物質が好ましく、例えば、多価金属塩、カチオン性基をもつ高分子化合物、水を酸性化する有機酸などがある。多価金属塩としては、反応性や取り扱いの容易さなどの観点から、Ca2+,Mg2+,Sr2+,Al3+などの金属イオンとNO3−やSO3−などの陰イオンで形成される塩が好ましい。また、有機酸は、体内で生産されたり食品に含まれており、人体残留が少なく、また、無臭なものが多く、家庭やオフィスでの画像形成装置として望ましい。具体的には、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などが適する。
【0086】
〔画質改善処理処方について〕
画質改善処理液処方の具体的な一例は次のとおりである。
希釈溶媒:イオン交換水 60wt%
酸性部材:乳酸 20wt%
像粘剤:プロピレングリコール 20wt%
水に全ての材料を混合した後、10分間ゆっくり攪拌し画質改善処理液とする。
以上のように処方した画像改善処理液を上記実施例の装置で記録紙に50mg/A4塗布した後に、インクジェットプリンターIPSIO GX5000(リコー製)のインク吐出部で画像を印字した。その結果、にじみのない高品質な画像をムラなく得ることができた。他方、比較のために上記の均一化手段を備えていない装置で同様にして同じ記録紙に塗布したところ、0.5mmピッチのスジムラが発生してしまった。これは、画像改善処理液の塗布状態にムラがあるので、このムラに応じてにじみがなく画像濃度の高い部分とにじんで画像濃度の低い部分が現れ、これが画像上でスジムラとして認識されてしまうものである。
【0087】
以上、説明した本発明の画像改善処理液付与装置は、塗布ローラでシート材等の被付与物の表面に液体を塗布し、薄い塗布膜を形成し、かつ、当該塗布膜の微小凹凸による厚さムラを均して均一化することができ、この点において新規であり、さらに、微小厚さでかつ厚さが均一な塗布膜を上記被付与物の表面に高精度に形成するのに利用できることは、以上のとおりの本発明の技術的本質から自明である。
したがって、本発明はその他の、被付与物の表面に薄い塗布膜を形成する液体付与装置をその対象とすることができるものである。
請求項6は、本発明を液体付与装置一般に拡大した請求項である。
【符号の説明】
【0088】
61:ビヒクル
62:色材
63:インク液滴
64:記録媒体(印刷紙など)
65、171:処理液
170:処理液付与装置
171T:処理液タンク
172:供給ローラ
173:塗布ローラ
173f:処理液膜(塗布液膜)
174:対向ローラ
180:均一化手段
181:均一化部材
182:支持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2006−205465号公報
【特許文献2】特開2001−301138号公報
【特許文献3】特開昭64−9279号公報
【特許文献4】特開2006−45522号公報
【特許文献5】特開2002−205303号公報
【技術分野】
【0001】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等におけるインクジェット方式を用いた画像形成装置の画質改善処理液の塗布装置、すなわち、記録紙等の記録媒体の記録表面に画質改善処理液を塗布する前処理装置に関するものであり、塗布液膜の凹凸による厚さのムラを解消して均一化することにより、記録媒体の記録面に可及的に薄く、かつ膜厚にムラのない処理液膜を付与することが可能であり、したがって、画質改善処理液の厚さのムラによる画質の低下を確実に解消して、インクジェット方式による画像の画質を向上させることができるものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録技術は、加圧オンデマンド方式や荷電制御方式などを用い、インクを微小ノズルを通して液滴化し、画像情報に応じて紙等の記録媒体に付着させる技術である。このようなインクジェット記録技術は、プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置に好適に用いられている。インクジェット記録技術は、記録媒体に直接インクを付着させ画像を形成できるため、電子写真記録のような感光体を用いた間接記録に比べ、簡便な装置構成で記録ができ、今後記録媒体への画像記録方式として更なる発展が期待されている。
【0003】
ここで、インクジェット記録技術について図面を用いて説明する。
図12の(a)に示すように、水を主成分とするビヒクル61に顔料や染料からなる色材62が分散しているインクジェット用のインク液滴63を用い、インクジェットヘッドにより、インク液滴を飛翔させ上質紙やざら紙のような非塗工紙などの記録媒体64に付着させると、図12の(b)に示すように、ビヒクル61及び色材62は、紙のパルプ繊維目に沿って、紙内部に浸透する。このため、紙表面では、パルプ繊維目に沿ってインクが流れるため、フェザリングと呼ばれるインクドットにジャギーのような横流れが生じる。また、カラー画像のように、紙上に1色目のインク滴層を形成して後、1色目が紙上で乾燥しないうちに2色目の色のインク滴を付着させると2色目インクドット形状が乱れて紙表面でインクが流れ、カラーブリーディングと呼ばれるドットのにじみが生じる。
【0004】
さらに、色材の大部分が紙内部に浸透するため、画像濃度の低下と紙裏側の濃度上昇(これを画像の裏抜けと呼ぶ)が生じる。更に、紙面でインク液滴が紙内部に浸透する前に別のインク滴と接触すると、インク液滴どうしが合体し、ビーディングと呼ばれる所望のドット径よりも2倍以上大きなドットを形成して著しい粒状感を発生する恐れもある。すなわち、紙や樹脂フィルムなどの記録媒体上の付着インク液滴によって媒体の裏側までインクが浸透するという裏抜け、連続印字において、媒体どうしの重ねで媒体裏面にインクが付着する裏移り、フェザリング、ビーディング、カラーブリーディング、媒体上でのインク液滴の濃度ムラであるモトリングが発生してしまう。
【0005】
そこで、従来より、特許文献1〜特許文献3に記載のように、記録媒体である上質紙やざら紙にインク液滴が付着する直前にインクを定着させる機能を有するインク処理液、つまり画質改善処理液を塗布し、フェザリングやカラーブリーディングを防止している。以下、この従来の技術について図面を用いて詳細に説明する。
上質紙や樹脂フィルムを媒体とした場合の、インク液滴飛翔による高画質画像を媒体上に形成するため、図13の(a)に示すように、インク液滴63が付着する前に、予めインクの色材62を固定化する液、いわゆる画質改善処理液65を媒体64の表面に形成する。そして、図13の(b)に示すように、その画質改善処理液層にインク液滴63を付着させると、図13の(c)に示すように、インク中の色材62が凝集・固着してパルブ繊維目を色材が通過できなくなり、紙表面に色材がとどまり、一方、ビヒクルは、紙内部に浸透する。このため、フェザリングやカラーブリーディングや画像濃度低下及び画像の裏抜けを防止できる。また、媒体が樹脂フィルムの場合も同様で、ビヒクルはフィルム表面にとどまるものの色材が凝集しているため動くことができずビーディングを防止できる。
【0006】
このようなインク中の色材を凝集させるためには、まず、インク中の色材が負イオン性もしくは正イオン性に帯電している必要がある。染料は、水中で色材自身が正又は負にイオン化する。顔料の場合、自己分散型顔料では、水中で顔料自身が正又は負にイオン化する。顔料分散剤を用いる場合は、水中で分散剤が顔料に吸着し正又は負にイオン化することで結果的に顔料自身が正または負にイオン化する。一般に、インク中で色材は負イオン性を帯びて分散している。
【0007】
画質改善処理の第一の原理は、図14(a)に示すように、上記の色材が水中で負イオン性を帯びて分散したインクが、図14(b)に示すように、水中で酸性を示し多量のプロトン(正電荷)を含んだ画質改善処理液に接触すると、図14(c)に示すように、画質改善処理液中の多量のプロトンに負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する原理である。
画質改善処理の第二の原理は、図15(a)に示すように、上記の色材が水中で負イオン性を帯びて分散したインクが、図15(b)に示すように、水中で正電荷を有するカチオン性部材を含んだ画質改善処理液に接触すると、図15(c)に示すように、画質改善処理液中のカチオン性部材に負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する原理である。
【0008】
しかし、このような画質改善処理液を記録媒体に塗布するために、従来では画質改善処理液を液滴化する専用のインクジェットヘッドを用いているため、インク処理液中の成分によりインクジェットヘッドのノズル孔が目詰まりする恐れがあり、信頼性に欠ける。また、インクジェットヘッドで液滴化するためには、インク処理液が水程度の低粘度である必要があり、インク処理液に粘度の制限がある。このため、インクにじみに効果があっても液粘度が高くなる部材は利用できない場合や、画質改善処理に効果がある部材の濃度を上げることができない場合など、処理液処方の自由度の幅が狭く、顕著なにじみ防止効果を有するインク処理液を作製することが難しい。
そこで、特許文献4に、画質改善処理液を塗布ローラにて紙全面に塗布する技術が提案されている。この技術によれば、画質改善処理液の粘度の範囲は広く、各種の画質改善処理効果を有する部材を画質改善処理液中に、高濃度で、含有させることが可能となる。
ところで、画質改善処理液の紙等の媒体への付着量は少ないほど、画像形成装置における定着液の消費量を抑えて印字に要するコストを低減でき、更には乾燥時間の短縮による高速記録が可能となる。
【0009】
画質改善処理液の量によって画像を構成するインクの凝集状態が変化し、例えば、ドット形状係数に対して画質改善処理液の量は図16のような関係にある。ここで、ドット形状係数とは、印字後のドットの周囲長を計測し、「真円時の面積」Sを計算する。計測面積=sとした時のS/sであり、1に近いほど、円に近く、大きいほどにじんでいる。画質改善処理液が多い場合にはその量の変動はそれほど大きく影響しないが、少ない場合には塗布ムラによる量の変動が大きく画質に影響する。塗布量を少なくするには、薄層で均一な塗布が必要である。
しかしながら、ローラ間を通過する際にローラ上の液量を計量して塗布する場合、ローラ間を通過した後に2層に分かれる際に引っ張られた痕が表面に残る(図10)。これは、塗工において一般にリブとかリングパターンと呼ばれるもので塗布する場合のムラの原因になる。
【0010】
上記のようなムラをなくする手法として、特許文献5にはドクターブレード法によるセラミックシートの成形方法が記載されている。ギャップを固定したドクターブレードで均一な厚さのシートを形成する場合に生じるバラツキを加振機による低周波振動により抑えている発明であり、固定ブレードによっても均一な層を形成することが困難であり、振動を加えるなどの工夫が必要であることを示している。
リングパターンによるムラは塗布量が多い場合には、このムラによる画像への影響は目立たないが、塗布量を減らした際にはこのムラが画像に影響してそのままムラになってしまう。このパターンは液の特性やローラの構成によって変化するがしかしこれを除去することは困難である。
【0011】
上記リングパターンのピッチが数百μmから数ミリの場合、特にそのムラの影響が画像上で目立ち、これを細かいピッチにすることで目立たなくすることが可能であるが、液の特性によりこれを制御するにはインク処理液の処方に対する制約を受けることになり、十分な機能を発揮できなくなる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の目的は、インクジェット記録による画像形成装置において、紙等の媒体に画質改善処理液を塗布するについて、当該画質改善処理液の付着量を可及的に少なくしながら、塗りムラを防止するように処理液付与装置を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、
表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記処理液付与装置(請求項1)。
【0014】
そして、上記均一化手段の可撓性部材は上記液体搬送手段の外周面に接触する接触面に微細なパターンを有する部材であることが望ましい(請求項2)。
また、上記微細なパターンは、画像の解像度よりも細かいことが望ましく(請求項3)、上記パターンを備えた上記可撓性部材はメッシュであることが望ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果を各請求項に係る発明毎に整理すれば次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明
請求項1に係る発明によれば、その可撓性部材の自由な先端が液体搬送部材(塗布ローラ)外周の液体表面に沿うように撓んで、同液体表面に密着し、部材により液膜表面が液体搬送部材外周面に沿って均一な厚さに均され、かつ、先端部も含めて液体搬送部材外周の液体表面に沿っているので均一化手段の先端部で液膜層が引き剥がされることがないので、均一化手段の先端部を通過した後においても均一な状態を保持し続けることができる。このため、上記液体搬送部材表面の液膜に生じたムラを均一に均すことができ、したがって、記録紙である被塗布物に対してムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0016】
(2)請求項2に係る発明
請求項2に係る発明によれば、均一化手段が微細なパターンを有する部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラを均一化手段の微細なパターンのレベルに均一にすることができ、記録媒体である被塗布物に対してムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0017】
(3)請求項3に係る発明
請求項3に係る発明によれば、均一化手段が、その微細なパターンが画像の解像度よりも細かい部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラを画像の解像度よりも微細なパターンにすることができ、記録媒体である被塗布物に対してさらにムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0018】
(4)請求項4に係る発明
請求項4に係る発明によれば、均一化手段が微細なパターンを有するメッシュ部材であるから、上記液体搬送部材(塗布ローラ)外周面上に生じた処理液膜のムラをメッシュの微細パターンのレベルにすることができ、記録媒体である被塗布物に対してさらにムラのない処理液膜を付与することが可能である。
【0019】
なお、請求項5の発明は請求項1〜請求項4の発明について、その利用形態を限定したものであり、請求項6の発明は請求項1の画質改善液付与装置を一般化したものであり(段落「0086」参照)、請求項7の画質改善処理液付与方法の発明、請求項8の液体付与方法の発明の効果は、請求項1、請求項6の発明とそれぞれ同じである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図
【図2】は、同機構部を装置本体上から説明する概略構成図
【図3】は、同機構部を装置本体横から説明する概略構成図
【図4】は、記録ヘッドユニットの説明図
【図5】が、ヘッドユニットを装置正面から見た図
【図6】は、ヘッドユニットを構成するパーツの拡大図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図
【図7】は、液付与手段の構成を概略的に示す側面図
【図8】は、均一化手段の斜視図
【図9】は、均一化手段の均一化部材の先端が塗布ローラ外周に沿って撓んで密着している状態を模式的に示す拡大図
【図10】塗布ローラ外周面の液膜にリング状パターンのムラが生じている状態を模式的に示す斜視図
【図11】は、均一化手段の均一化部材が可撓性を有することによる塗布ローラ外周の液膜に対する膜厚均一化作用の説明用参考図
【図12】(a)は、水を主成分とするビヒクル61に顔料や染料からなる色材62が分散しているインクジェット用のインク液滴63を用い、インクジェットヘッドにより、インク液滴を飛翔させ上質紙やざら紙のような非塗工紙などの媒体64に付着させる様子を模式的に示す説明図、(b)は、ビヒクル61及び色材62は、紙のパルプ繊維目に沿って、紙内部に浸透し、紙表面では、パルプ繊維目に沿ってインクが流れ、フェザリングと呼ばれるインクドットにジャギーのような横流れが生じる様子を模式的に示す説明図
【図13】(a)は、記録媒体が樹脂フィルムであり、インク液滴飛翔による高画質画像を媒体上に形成するとき、インク液滴63が付着する前に、予めインクの色材62を固定化する液、いわゆる画質改善処理液65を媒体64の表面に形成する様子を模式的に示す説明図、(b)は、その画質改善処理液層にインク液滴63を付着させる状態を模式的に示す説明図、(c)は、インク中の色材62が凝集・固着してパルプ繊維目を色材が通過できなくなり、紙表面に色材がとどまり、一方、ビヒクルは、紙内部に浸透する状態を模式的に示す説明図
【図14】は、画質改善処理の第一の原理の説明図であり、(a)はインク中の色材が水中で負イオン性を帯びて分散した状態を模式的に示す図、(b)は、水中で酸性を示し多量のプロトン(正電荷)を含んだ画質改善処理液に接触する状態を模式的に示す図、(c)は、画質改善処理液中の多量のプロトンに負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する様子を模式的に示す図
【図15】は、画質改善処理の第二の原理を示す説明図であり、(a)はインク中の色材が水中で負イオン性を帯びて分散した状態を示す模式的に示す図、(b)は、水中で正電荷を有するカチオン性部材を含んだ画質改善処理液に接触する状態を模式的に示す図、(c)は、画質改善処理液中のカチオン性部材に負イオン性を帯びた色材どうしが静電的に結合し、色材どうしが凝集する様子を模式的に示す図
【図16】は、画質改善処理液の量によって画像を構成するインクの凝集状態が変化することを示し、ドット形状係数に対する画質改善処理液の量が関係の一例を示す図
【図17】(a)は、アニロクスローラの平面図、(b)(c)(d)はピラミッド型、格子型、斜線型の一部拡大図
【図18】は、ワイヤーバーの平面図
【図19】は、フイルムによる均一化部材と塗布ローラとの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による液体吐出装置の処理液付与装置を備えた画像形成装置の一例について図1を参照して説明する
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備え、さらに、装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、液体補充手段としての液体保管用タンクであるメインタンク(以下、「インクカートリッジ」という。)10が交換可能に装着され、また、開閉可能な前カバー8を有している。
【0022】
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。
図2において、フレーム21を構成する左右の側板21A,21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図2で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、インクジェットヘッドすなわち、記録液の液滴(インク滴)を吐出するための液滴吐出ヘッドからなる複数の記録ヘッド35を、複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。ここで記録ヘッド35は、例えば、イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド35y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド35m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド35c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド35bとで構成されている。もちろん、この4色以外の色インクを用いることもできる。
【0023】
なお、上記「記録ヘッド35」は、個々の色のインクを吐出する記録ヘッドの総称である。そしてまた、記録ヘッド35の具体的構成については、1又は複数の色の液滴を吐出する1又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1又は複数用いたものにすることもできる。
【0024】
記録ヘッド35を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用することができる。
【0025】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド35にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク34y,34m,34c,34k(色を区別しない場合は「サブタンク34」という。)を搭載している。このサブタンク34には各色の記録液供給チューブ37を介して前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y,10m,10c,10k」という)から記録液を供給するようにしている。
【0026】
ここで、インクカートリッジ10は、図2にも示すように、カートリッジ装填部6に収納され、このカートリッジ装填部6にはインクカートリッジ10内の記録液を送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。また、インクカートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでの記録液供給チューブ37は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。さらに、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
【0027】
一方、図3において、給紙トレイ2の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0028】
そして、この給紙部から給紙された用紙42に対して、画質改善処理液(以下、単に「処理液」ともいう)を塗布乃至は付与するための処理液付与装置170により、その表面に処理液を付与した後に記録ヘッド部へと搬送される。この処理液付与装置170で処理液171を塗布された用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51を備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
ここで、搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図2のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド54による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。このガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ57とテンションローラ58)の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。これにより、搬送ベルト51は印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
【0029】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための本発明に係る液体吐出装置の維持回復装置(以下「サブシステム」ともいう)91を配置している。
【0030】
このサブシステム91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)92a〜92d(区別しないときは「キャップ92」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け94及びこの空吐出受け94に一体形成され、ワイパーブレード93に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。
【0031】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け98を配置し、この空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口99などを備えている。
【0032】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、液付与手段を通して搬送ベルトへ案内される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0033】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33はサブシステム91側に移動されて、キャップ92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0034】
図4に記録ヘッドユニットを拡大して示しており、当該記録ヘッドユニットはキャリッジ33に固定されており、図4ではイエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド35y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド35m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド35c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド35kとで記録ヘッドを構成している。また、各記録ヘッド35にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク34y、34m、34c、34k(色を区別しない場合は「サブタンク34」という。)を搭載している。
【0035】
図5はヘッドユニットを装置正面から見た図である。サブタンク34の両側にはFPC(電気配線)103が装着され、ヘッド35を動作させる信号はこれを介して伝えられる。サブタンク34の上にはインク供給口102が装着され、インクは記録液供給チューブ37を通り、インク供給口102からサブタンク34に補充される。
【0036】
図6はヘッドユニットを構成するパーツの図である。ヘッド先端面にはノズルプレート104がベース部材105の上に貼り付けられており、ノズルプレート104には微細なインク吐出口(ノズル)が多数形成されている。ヘッド35はノズルプレート104とベース105とフレーム106で主に構成されており、ヘッド35のノズルプレート104と逆の面にはサブタンク34が取り付けられている。ヘッド35には電気信号を伝達するFPC103(電気配線)が取り付けられている。
【0037】
〔インクについての説明〕
ついで、インクジェットプリンタでこの発明の画像形成装置のインクジェットプリンタで使用する記録液は、色材として顔料、染料のいずれでも用いることができ、混合して用いることもできる。
【0038】
《顔料》
本発明の記録液に用いる顔料として特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これら顔料は複数種類を混合して用いても良い。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0039】
これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、吐出口の目詰まりやプリンター内のフィルターでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
【0040】
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学製)、Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(以上、コロンビア製)、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
《カラー顔料について》
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
【0042】
色別により具体的には以下のものが挙げられる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
又、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0043】
以上に挙げた顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような有機顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
【0044】
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得られるため好ましい組み合わせである。その理由は明らかでないが、以下のように考えられる。
高分子分散剤を含有することで記録紙への浸透が抑制される。その一方で、高分子分散剤を含有することで自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができる。そのため、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
【0045】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0046】
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には以下のとおりである。
(a)界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法)。
(b)in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)。
(c)液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法);
(d)コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)。
(e)液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)。
(f)融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法)。
(g)気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法)。
(h)スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法)。
(i)酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法)。
(j)転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
【0047】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン。
【0048】
以上の材料の中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0049】
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して1重量%以上20重量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
【0050】
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので本発明にはより好ましい。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適しており、in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。さらに、液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適しており、コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
【0051】
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材との複合物または複合体、あるいは自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0052】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
【0053】
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができる記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
このように樹脂被覆することによって顔料が印刷物にしっかりと付着することにより、印刷物の擦過性を向上させることができる。
【0054】
《染料について》
本発明の記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。これらの着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
【0055】
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
【0056】
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
【0057】
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
【0058】
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
【0059】
《染料・顔料共通の添加剤、物性》
この実施形態において使用する記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例として、次のものが挙げられる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等。
以上の溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
【0060】
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0061】
【化1】
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、k:5〜20)
【0062】
【化2】
(m,nは0〜40)
【0063】
【化3】
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20)
【0064】
【化4】
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
【0065】
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0066】
記録液の表面張力は、20〜60dyne/cmであることが好ましく、被記録材との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50dyne/cmであることがさらに好ましい。
また、記録液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることがさらに好ましい。
さらに、記録液のpHは3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることがさらに好ましい。
【0067】
また、記録液は防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。上記防腐防黴剤としてはベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0068】
記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用可能である。
【0069】
記録液は酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、例えば、次のものがある。
ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト。
【0070】
記録液はpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【0071】
〔処理液付与装置について〕
処理液付与装置170の構成が図7に概略的に示されている。
処理液タンク171T内の処理液(塗布液)171に少なくともその一部分に接するようにして設置された供給ローラ172があり、この供給ローラ172とその回転軸が平行で表面が接触するようにして設置されている塗布ローラ173へ、タンク171T内の処理液(塗布液)をくみ上げて供給している。処理液171は、別に貯蔵タンクを設け、必要に応じて図7の供給部の処理液タンク171Tへ補充するようにすることもできる。
供給ローラ172と塗布ローラ173は、軸方向にほぼ均一な圧力となるように接触し、供給ローラ172によってくみ上げられた処理液の一定量がローラ間のニップを通過して塗布ローラ173上に処理液の液膜を形成する。必要であれば複数本の供給ローラがあっても良いし、例えば、塗布量が過多になる場合などは、塗布ローラ173との間に更に中間ローラを設けてもよい。そうすれば、塗布量が半減するという利点がある。
供給ローラ172と塗布ローラ173の回転は等速であっても線速差を設けても良く、塗布ローラ173上に平均的に均一な量の液膜を形成することが出来るような構成であればよい。
線速差を設けるとよい場合の例と理由
等速な場合は装置構成が簡単であるが、プロセス速度によって速度が決定されてしまう。たとえば高速機では、液たまり中で供給ローラが高速で回転することになるので液を飛散させてしまい、供給が不安定になってしまうようなことが起こる。そこで、このような場合には、供給ローラの速度を塗布ローラに対して遅らせることで対応することができる。
【0072】
塗布ローラ173には、供給ローラ172により供給された液膜の微細な凹凸を平滑化するための均一化手段180があり、塗布ローラ173の回転方向の供給ローラ172より下流側で転写紙に画像改善処理液(処理液)を塗布するために塗布ローラ173に転写紙を押圧する対向ローラ174の間に設けられている。図7では、供給ローラ172と対向ローラ174は塗布ローラ173を挟んで対向する位置に設置されている。供給ローラの位置は、この位置より、塗布ローラの回転方向に対して、上流側や下流側にずらしても問題なく、装置の全体レイアウトに応じてこれらの位置関係は適宜変更することができる。
塗布ローラ173上の画像改善処理液は、ここで均一化された後、対向ローラ174との間を転写紙が通過する際にその表面の塗布液を付与する構成となっている。
【0073】
〔均一化手段〕
均一化手段180は、図8に示すようなフィルム状の均一化部材181によるものであり、均一化部材181の一方の端部eが塗布ローラ173の表面に沿って変形して面接触できるようにフリーであり、もう一方の端部が支持部材182に固定されている。この均一化部材181は、塗布ローラ173の回転と、塗布ローラ173上の塗布液の粘性と表面張力とにより、緊張した状態になっている。転写紙に塗布された処理液の液膜が均一化手段180を通過することで、それまでのその液膜表面の微細な凹凸が均されて均一化される。
さらにいえば、均一化部材181は塗布ローラ173の表面に合わせて変形する程度の可撓性を有し、図9に示すように、塗布された処理液膜との表面張力により、塗布ローラの表面にならって均一化部材181の一端部eが変形して塗布ローラ173上の処理液膜173fと広範囲で面接触し、これによって膜厚が均一化されるのであるから、塗布ローラ173との接触状態にムラがあるとこれがスジムラの発生要因となる。したがって、処理液膜173fとの微弱な密着力で柔軟に変形するように十分に可撓性を有していることが必要である。
例えば、均一化部材181は、その幅が300mmのとき(曲げ変形に対して幅に対する依存はないが長いほどしわを発生させずに保持することが困難になる)、PET製のフィルムで厚さ、30〜200μm程度の可撓性を有していることが望ましい。厚さが30μm未満で余り柔軟性が高すぎるとしわを発生させずに保持することが困難になるという問題がある。
【0074】
塗布される処理液の量は、供給ローラ172と塗布ローラ173のニップ部を通過する処理液(塗布液)の量によって決まり、これが均一にムラなく転写紙表面に付与されるようにするために均一化手段180を備えている。上記ニップ部を通過する処理液の量は、供給ローラ172および塗布ローラ173の表面が平滑であればその処理液の粘度とローラ間ニップの圧力で決まる。処理液の粘度は温度が一定であればその種類によって決まるので、ローラ間ニップの圧力を調整することで通過液量を制御することができる。ニップ間を通過した処理液(塗布液)は、供給ローラ表面と塗布ローラ表面に分かれる。この際、分かれるときに両ローラ表面の液同士が引き合い、この引き合いの強さのバラツキによる影響がムラとなって出現する(図10)。一般的にこのムラはリング状のパターンとなって塗布ローラ表面に現れる。そしてこのリング状パターンのムラがそのまま転写紙に塗布されると、これが転写紙の塗布膜のスジ状のムラとなってしまう。
【0075】
この他、供給ローラ172に均一パターンの溝を設けてこの溝を通して塗布液を塗布ローラに供給する構成で液量を計量するようにすることもできる。このようにする場合は、供給ローラとしてアニロクスローラやワイヤーバーなどのローラを使用することができる(図17、図18参照)。これらのローラでは、表面の溝パターンによって液の供給量が決まるため液の粘度の影響を受けにくいなどの特徴を有する。しかし、微量塗布のためには微細かつ均一な溝パターンを形成する必要があり、一般的に高価なものになってしまう。
なお、アニロクスローラは、均一な微細パターンの彫刻されたローラで正確に付着量を制御できる。表面の溝の形状により、ピラミッド型、格子型、斜線型などがある。ドクターブレードを当接させてすり切って計量するのが一般的であるが、ローラとの隙間で計量することもできる。
また、ワイヤーバーは細いワイヤーを巻き付けたローラであり、細いワイヤーで形成される凹凸により計量することができるようになっている。
【0076】
このように計量された処理液(塗布液)が塗布ローラ上にあるとき、それは平均的な量として一定であるが、しかし、局所的に筋などのムラが存在している。これを均一に均すために均一化部材181による均一化手段180を備えている。図8の均一化手段180ではそこを通過する塗布液膜の平均厚を調整しないで均すことが求められる。このために、上記均一化部材181の一方の端部(先端部)eが塗布ローラ173上の塗布液膜173fに浮いているような状態であって、塗布液膜の見かけの表面張力を大きくすることで同液面の微細な凹凸を均しているものである。
【0077】
処理液膜(塗布液膜ともいう)の膜厚を規制しながら、塗布ローラ173上の液層の平滑化を行うことができればより好ましいが、ドクターブレードなどの剛性の高い材料を当接させ、対向するローラとの間のギャップを幅方向全域に渡って、ミクロンオーダーで一定にすることは、実質的に不可能であり、本発明の処理液付与装置170における均一化手段180のような手段が必要である。
【0078】
塗布ローラ173上で発生したスジ状のムラを何らかの均一化部材で均一化する必要があるが、そのために例えば、剛性の高いブレード等の当接部材185を塗布ローラ173に当接させた場合(図11参照)、塗布ローラ外周の塗布液膜173fが、当接部材185の先端で塗布ローラ側と当接部材185側とに分かれることになり、再度、ムラを発生させることになってしまう(図11)。これに対して、図8の実施例における均一化部材181の一端部eは塗布ローラ173の表面形状にならって柔軟に変形する可撓性を有し、当接部の先端が常に塗布ローラ173の表面に接している状態が維持される。このため、液層が2層に分かれることはなく、したがって、筋状のムラは発生しない。
さらにいえば、上記のように均一化部材181の先端が液に押圧されることなく接触するためには均一化部材181の一端部eが処理液膜173fに浮いているような状態を作り出すことが必要であり、均一化部材181の先端部(一端部)eを含む一部分が塗布ローラ上の処理液膜173fに沿って変形するようにする必要がある。
【0079】
上記のような均一化部材181の変形は、上記処理液膜173fとの表面張力により、塗布ローラの表面に倣って(又は沿って)均一化部材181の一端部eが変形するものでなければ、塗布ローラ173の処理液膜73fとの接触状態にムラが生じ、これがスジムラ発生の要因となるので、均一化部材181については、上記のように非常に弱い力(微力)で変形するのに十分な可撓性を有している必要がある。
【0080】
上記均一化手段180にさらに求められる要件として、画像改善処理液を吸収することのない疎水性を備えていることがある。例えば高分子材料のように素材そのものが疎水性を備えていてもよいし、素材の表面に金属箔や疎水性の樹脂をコートするなどの表面処理によって上記疎水性を備えていてよい。
上記のような所要の柔軟性と、疎水性を備えている材料としては、厚さ200μm以下の疎水性フィルムがある。厚さ200μm以下の疎水性のフィルムを用いることによって、均一化部材181として塗布ローラ173上の塗布液膜173fに接触した際に、その先端eを含む広い面で接触させることが可能であり、処理液膜(塗布液膜)173f上にフィルムが浮いた状態になり、液膜の厚さを調整することなく表面を均一化することが可能である。
【0081】
上記のように、均一化部材181として薄いフィルム状素材を使用した場合、フィルムのエッジのカット精度がスジの原因になることがある。先端にバリ等の傷があるとそこがスジムラとなってしまう。ところが、可撓性のあるものを精度良くカットすることは一般的に難しい。
そこで、請求項2に係る発明の装置では、予め幅方向に粗密が均一に繰り返される微細パターンを有する部材を均一化部材として使用している。この微細パターンの一例は、図19に示すとおりである。この実施例における上記微細パターンの形状、サイズは次の通りである。
すなわち、フィルムの一端に微細な切込みを入れたもので、数十μmピッチで数〜数十ミクロンの深さの均一な切込みが入っている。
この場合、上記微細パターンに応じたスジムラがローラ上の処理液膜にすじ状に反映される。その理由は次のとおりである。
すなわち、切込みのない部分と切込み部では液膜の剥がれ方に差が生じるため、このパターンに応じたスジ状のムラがローラ上の処理液膜に残る。
上記のパターンが十分に細かく、均一であれば、転写紙に付与された後の転写紙内での液の浸透効果(紙の中を面方向に広がって浸透する効果)によって、画像上ではそのムラが目立たなくなる。
そして、上記のような微細パターンを得る構成として、例えば、フィルムの先端に端面に直行する均一なピッチの切れ込みをレーザー光やカッターによって入れたり、同一太さの細い繊維を並べて束ねたブラシを使用することなどが考えられる。
【0082】
この場合、上記微細パターンは細かいほど目立たなくなるが、請求項3のように画像形成時のインクを吐出する解像度程度もしくはそれ以上の細かいパターンであることが望ましい。なぜなら、細かいピッチであればあるほど浸透時の広がりによりムラが目立たなくなり、解像度よりも細かければ、ムラがあっても目立ちにくいからである。
ところが、例えば、均一化部材の微細パターンをブラシで作る場合には、その繊維が長いと結束部より先端側には拘束がないので、ブラシが塗布ローラの軸方向に揺らいでしまうなどしてブラシの繊維レベルでの微細な粗密パターンの均一性が失われる。反対にブラシが塗布ローラの軸方向に揺らぐことがない程度まで繊維が短い場合には、ブラシの繊維が短くローラの表面に沿って変形する程度の可撓性を作り出すことが難しいという問題がある。
そこで、請求項4の発明では、均一な微細パターンを作る均一化部材としてメッシュを使用している。メッシュは細かい繊維が網目構造を作るようになっており、このようにすれば、塗布ローラに沿って変形することができる長さがあっても、均一パターンを形成する縦方向の繊維の並びが、これと直交する横方向の繊維によってその並びが崩れないように拘束されているため、ローラ上に沿っている部分においても均一なパターンを維持することが容易である。さらに細い繊維であるので塗布ローラの表面に応じて曲がる可撓性も容易に得ることができる。
【0083】
上記メッシュの素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの線径20μm〜100μmの樹脂素材の他、金属素材であるステンレスも一般的であるが、金属は繊維であっても剛性が高く、可撓性の点で樹脂素材に劣るので、樹脂素材である方がより好ましい。
例えば、本実施例では、NBC製ポリエステルメッシュT−NO.508Tを用いている。このメッシュは、線径27μmの繊維による508メッシュ/inchであり、容易に微細な粗密パターンを得ることができる。
【0084】
〔画像改善処理液について〕
画像改善処理液は、インクを凝集させる成分を含む処理液であり、被塗布物はインク印字前の記録紙(転写紙)である。このように、インク印字前に画像改善処理液を被塗布物(記録紙)に付与することで、にじみのない高品質な画像を、インクジェット専用紙以外の普通紙を用いても得ることができるようになる。本発明の処理液付与装置を使用することでムラなく均一に処理液を付与することが可能となるので、画像改善処理液のコストの低減が可能であるとともに、当該画像改善処理液の塗布ムラによる、画像ムラを防止することができる。
【0085】
上記のような機能を有する画像改善処理液としては、インク中の顔料成分を凝集させる凝集剤を含有している必要があり、当該凝集剤としては、インク中の色材や分散剤などの樹脂成分に含まれるアニオン性基とイオン的相互作用により瞬時に会合体を形成し得る水溶性物質が好ましく、例えば、多価金属塩、カチオン性基をもつ高分子化合物、水を酸性化する有機酸などがある。多価金属塩としては、反応性や取り扱いの容易さなどの観点から、Ca2+,Mg2+,Sr2+,Al3+などの金属イオンとNO3−やSO3−などの陰イオンで形成される塩が好ましい。また、有機酸は、体内で生産されたり食品に含まれており、人体残留が少なく、また、無臭なものが多く、家庭やオフィスでの画像形成装置として望ましい。具体的には、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などが適する。
【0086】
〔画質改善処理処方について〕
画質改善処理液処方の具体的な一例は次のとおりである。
希釈溶媒:イオン交換水 60wt%
酸性部材:乳酸 20wt%
像粘剤:プロピレングリコール 20wt%
水に全ての材料を混合した後、10分間ゆっくり攪拌し画質改善処理液とする。
以上のように処方した画像改善処理液を上記実施例の装置で記録紙に50mg/A4塗布した後に、インクジェットプリンターIPSIO GX5000(リコー製)のインク吐出部で画像を印字した。その結果、にじみのない高品質な画像をムラなく得ることができた。他方、比較のために上記の均一化手段を備えていない装置で同様にして同じ記録紙に塗布したところ、0.5mmピッチのスジムラが発生してしまった。これは、画像改善処理液の塗布状態にムラがあるので、このムラに応じてにじみがなく画像濃度の高い部分とにじんで画像濃度の低い部分が現れ、これが画像上でスジムラとして認識されてしまうものである。
【0087】
以上、説明した本発明の画像改善処理液付与装置は、塗布ローラでシート材等の被付与物の表面に液体を塗布し、薄い塗布膜を形成し、かつ、当該塗布膜の微小凹凸による厚さムラを均して均一化することができ、この点において新規であり、さらに、微小厚さでかつ厚さが均一な塗布膜を上記被付与物の表面に高精度に形成するのに利用できることは、以上のとおりの本発明の技術的本質から自明である。
したがって、本発明はその他の、被付与物の表面に薄い塗布膜を形成する液体付与装置をその対象とすることができるものである。
請求項6は、本発明を液体付与装置一般に拡大した請求項である。
【符号の説明】
【0088】
61:ビヒクル
62:色材
63:インク液滴
64:記録媒体(印刷紙など)
65、171:処理液
170:処理液付与装置
171T:処理液タンク
172:供給ローラ
173:塗布ローラ
173f:処理液膜(塗布液膜)
174:対向ローラ
180:均一化手段
181:均一化部材
182:支持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2006−205465号公報
【特許文献2】特開2001−301138号公報
【特許文献3】特開昭64−9279号公報
【特許文献4】特開2006−45522号公報
【特許文献5】特開2002−205303号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、
表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記画質改善処理液付与装置。
【請求項2】
上記均一化手段の可撓性部材は上記液体搬送手段の外周面に接触する接触面に微細なパターンを有する部材であることを特徴とする請求項1の画質改善処理液付与装置。
【請求項3】
。
上記微細なパターンは、画像の解像度よりも細かいことを特徴とする請求項2の画質改善処理液付与装置。
【請求項4】
上記パターンを備えた上記可撓性部材はメッシュであることを特徴とする請求項2の画質改善処理液付与装置。
【請求項5】
上記画質改質改善処理液は、インクを凝集させる成分を含む画像改善処理液であり、被塗布物すなわち記録媒体はインク印字前の記録紙である、請求項1〜4の処理液付与装置を供えた上記記録媒体の前処理装置。
【請求項6】
塗布ローラで被付与物表面に液体を塗布し、薄い塗布液膜を形成する液体付与装置において、
表面に塗布液膜を保持して上記被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で被付与物に付与する液量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記液体付与装置。
【請求項7】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与方法において、
表面に画質改善処理液膜を液体搬送部材に保持して被付与物まで搬送し、
液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を均一化手段によって幅方向で均一化するものであり、
上記均一化手段の可撓性部材が上記液体搬送部材の表面形状に倣って変形し、
上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触して、上記液体搬送外周面の画質改善処理液膜の回転によって、当該処理液表面液膜表面の凹凸を横方向に均一化させることを特徴とする上記画質改善処理液付与方法。
【請求項8】
塗布ローラで被付与物表面に液体を塗布し、薄い塗布液膜を形成する液体付与方法において、
液体搬送部材表面に塗布液膜を保持して上記被付与物まで搬送し、
均一化手段によって液体搬送部材上で被付与物に付与する液量を幅方向で均一化するものであり、
上記均一化手段の可撓性部材が液体搬送部材の表面形状に倣って変形し、
上記可撓性部材の先端を含む一方の端部が、上記液体搬送部材外周面の液膜の表面に面接触して、上記液体搬送外周面の液膜の回転によって、当該液膜表面の凹凸が横方向に均一化させることを特徴とする上記液体付与方法。
【請求項1】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与装置において、
表面に画質改善処理液膜を保持して被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記画質改善処理液付与装置。
【請求項2】
上記均一化手段の可撓性部材は上記液体搬送手段の外周面に接触する接触面に微細なパターンを有する部材であることを特徴とする請求項1の画質改善処理液付与装置。
【請求項3】
。
上記微細なパターンは、画像の解像度よりも細かいことを特徴とする請求項2の画質改善処理液付与装置。
【請求項4】
上記パターンを備えた上記可撓性部材はメッシュであることを特徴とする請求項2の画質改善処理液付与装置。
【請求項5】
上記画質改質改善処理液は、インクを凝集させる成分を含む画像改善処理液であり、被塗布物すなわち記録媒体はインク印字前の記録紙である、請求項1〜4の処理液付与装置を供えた上記記録媒体の前処理装置。
【請求項6】
塗布ローラで被付与物表面に液体を塗布し、薄い塗布液膜を形成する液体付与装置において、
表面に塗布液膜を保持して上記被付与物まで搬送する液体搬送部材と、液体搬送部材上で被付与物に付与する液量を幅方向で均一化する手段を備えており、当該均一化手段は液体搬送部材の表面形状に倣って変形する可撓性を有する可撓性部材によるものであり、当該可撓性部材は、上記液体搬送部材外周面の液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触するように設置されており、他方の端部が固定部に支持されていることを特徴とする上記液体付与装置。
【請求項7】
インクジェット方式を用いた画像形成装置の記録媒体に画質改善処理液を付与する処理液付与方法において、
表面に画質改善処理液膜を液体搬送部材に保持して被付与物まで搬送し、
液体搬送部材上で記録媒体に付与する画質改善処理液の量を均一化手段によって幅方向で均一化するものであり、
上記均一化手段の可撓性部材が上記液体搬送部材の表面形状に倣って変形し、
上記液体搬送部材外周面の画質改善処理液膜の表面にその先端を含む一方の端部が面接触して、上記液体搬送外周面の画質改善処理液膜の回転によって、当該処理液表面液膜表面の凹凸を横方向に均一化させることを特徴とする上記画質改善処理液付与方法。
【請求項8】
塗布ローラで被付与物表面に液体を塗布し、薄い塗布液膜を形成する液体付与方法において、
液体搬送部材表面に塗布液膜を保持して上記被付与物まで搬送し、
均一化手段によって液体搬送部材上で被付与物に付与する液量を幅方向で均一化するものであり、
上記均一化手段の可撓性部材が液体搬送部材の表面形状に倣って変形し、
上記可撓性部材の先端を含む一方の端部が、上記液体搬送部材外周面の液膜の表面に面接触して、上記液体搬送外周面の液膜の回転によって、当該液膜表面の凹凸が横方向に均一化させることを特徴とする上記液体付与方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−167371(P2010−167371A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12594(P2009−12594)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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