説明

液体供給システム

【課題】圧送ポンプの増設または削減による使い勝手を向上し、塗布時における離型剤の流量が微小な場合での供給誤差を無くし、適正量の供給管理を可能とする。
【解決手段】液体供給源(Q)から複数の液体供給先(P)に液体を供給する圧送ポンプ1を備え、該圧送ポンプ1の流量制御を周波数の調整切替えにより可能とした周波数発振装置2を備える。圧送ポンプ1、周波数発振装置5は、複数の液体供給先(P)に対応してそれぞれ毎に設ける。また、周波数発振装置5は、サイリスタを使用した発振回路部6と、圧送ポンプ1における流量表示を可能とする流量表示部7と、表示によって周波数を調整するボリューム6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダイカストマシンにおいて離型剤を金型面に噴霧塗布するために供給するとき、その離型剤の噴霧量の設定範囲外の供給を防止し、適正量の供給管理を可能にしたオープンループ制御による液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からダイカストマシンによる鋳物製品等の成型には、形成素材であるアルミニウム溶湯物をダイカストマシンに注入し、所定圧力の下で成型が終了したときに成型品を取出す。その取出し後には金型面に成型品の剥離、取出しを容易にするために、離型剤タンク等の液体供給源に蓄えられている液状の離型剤を例えば圧送ポンプの作動による液体供給装置で液体噴霧装置に供給して金型面に満遍なく噴霧塗布している。
【0003】
ただ、従来の液体供給システムとして、複数の液体供給先毎にそれぞれ備え付けられた圧送ポンプは、全てが分離不可能な一体型となって構成されている。しかもこれらの圧送ポンプは全てがクローズドループ制御すなわち閉回路となって構成された所謂フィードバック制御によって自動完備的に操作されるものが殆どである。例えば特許文献1に示す例えば離型剤の供給用の流体供給装置がある。これは、圧送ポンプとなるシリンダ筐体内に設けられた貯留供給室内にスライド自在に配装した供給ピストンロッドによって、貯留供給室に接続してある導入部を経て導入した液体を、同じく貯留供給室に接続してある導出部を経て所定の供給先に供給すると共に、ピストンロッドの移動量を磁気的に検出するセンサーヘッドを配装した構成となっている。
【特許文献1】特願2005−094101
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの流体供給装置によると、例えば離型剤を供給するときの供給の有無、供給量の大小を検出可能でも、供給量を制御するには適当ではなかった。一方、従来の圧送ポンプは分離不可能な一体型となって構成されているため、例えば液体噴霧装置それぞれに対応した該圧送ポンプ自体の増設または削減が困難であり、これによって使い勝手も悪く且つコストも高くなってしまう。
【0005】
また、圧送ポンプはクローズドループ制御によって自動制御されるため、当該圧送ポンプを作動させるための出力信号が初期値から過剰に積算されてしまうことがあり、そうすると、特に離型剤の塗布使用量が例えば0.6〜3cc/min等のように微小な場合には、約2倍の供給誤差を生じてしまうという問題点を有していた。
【0006】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、圧送ポンプの増設または削減による使い勝手を向上させることで低コストでシステムを構成でき、さらに塗布時における離型剤の流量が微小な場合での供給誤差を無くして適正量の供給管理を可能にしたオープンループ制御による液体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、液体供給源(Q)から液体供給先(P)に液体を供給する圧送ポンプ1を備え、該圧送ポンプ1の流量制御を周波数の調整切替えにより可能とした周波数発振装置5を備える。
また、複数の液体供給先(P)に対応してそれぞれの複数の圧送ポンプ1を備え、各圧送ポンプ1毎に周波数発振装置5を備える。
さらに、周波数発振装置5は、サイリスタを使用した発振回路部6と、圧送ポンプ1における流量表示を可能とする流量表示部7と、表示によって周波数を調整するボリューム8とを備えた構成とする。
【0008】
以上のように構成された本発明に係る液体供給システムにあって、周波数発振装置5は、周波数調整用のボリューム8の流量設定操作の調整によって、サイリスタを使用した発振回路部6から当該調整設定値に対応した周波数による出力信号を圧送ポンプ1側に送信させる。圧送ポンプ1では、その出力信号に対応した吐出供給量で液体供給先(P)に例えば離型剤等の液体を供給する。
また、複数の液体供給先(P)に対応する圧送ポンプ1毎に備え付けられた周波数発振装置2は、各圧送ポンプ1毎に対しそれぞれで独立した周波数を送信させ、個別に供給量を設定させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体供給先(P)に所定の液体例えば離型剤を供給する圧送ポンプ1につき、その増設または削減による使い勝手を向上させ、且つ低コストでシステム構成できる。しかも塗布時における離型剤等の流量が微小な場合での供給誤差を無くして適正量の供給管理を可能にする。
【0010】
すなわちこれは本発明において、液体供給源(Q)から液体供給先(P)に液体を供給する圧送ポンプ1を備え、該圧送ポンプ1の流量制御を周波数の調整切替えにより可能とした周波数発振装置2を備えたからである。そのため、例えば離型剤の塗布時における微小適正量の供給管理が可能となる。
【0011】
また、複数の液体供給先(P)に対応してそれぞれの複数の圧送ポンプ1を備え、各圧送ポンプ1毎に周波数発振装置5を備えたので、圧送ポンプ1それぞれに独立した周波数を送信させることで、各圧送ポンプ1に応じてオープンループ制御による離型剤の微小適正量の供給管理を可能にする。これにより、液体供給先(P)毎に、それぞれに対応して圧送ポンプ1の増設または削減等を可能にし、使い勝手を向上できる。しかも従来の自動フィードバック機構によるクローズドループ制御に比して低コストで製作できる。
【0012】
さらに、周波数発振装置5は、サイリスタを使用した発振回路部6と、圧送ポンプ1における流量表示を可能とする流量表示部7と、表示によって周波数を調整するボリューム8とを備えたので、液体である離型剤の流量が例えば0.6〜3cc/min等の微小な場合であっても、設定初期値からの供給積算によって発生する供給誤差を未然に防止できる。
【0013】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々において付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、図面中の符号によって示された構造・形状等に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。図において示される符号1は、液体例えば油性もしくは水性等の離型剤等を微小流量で安定移送させるための例えばソレノイドタイプの圧送ポンプである。該圧送ポンプ1は、図1に示すように、液体供給源である例えば離型剤保管タンクQから分岐した状態で複数が並列となって配設され、圧送ポンプ1自体の増設または削減が可能となるようにしてある。また、この圧送ポンプ1は、吐出負荷を20kPaに設定した場合に、例えば周波数10Hz、通電時間4,4msecで吐出流量が10.2ml/minとなるものを使用できる。
【0015】
圧送ポンプ1は電磁プランジャポンプのものであり、流入側から供給される所定の液体のほぼ所定値に規制された静的圧力を重疊して、電磁コイル2には断続パルス電流を付勢して電磁プランジャ3を作動させることにより、これを加圧し、波状衝撃的脈動を与えて、吐出側から噴流吐出させる構成となっている。断続パルス電流は、後述の周波数発信装置5による所定の周波数のものであり、生成出力される周波数に対応して与える脈動によって液体を所定量で吐出する。
【0016】
そして、これらの複数の圧送ポンプ1それぞれには液体供給パイプ10が接続されている。この液体供給パイプ10は、液体供給先例えばダイカストマシンにおける金型面に離型剤を圧搾気体の高速気流で攪拌しながら微細化例えばミクロンサイズに微粒化させた霧状にして噴射させるためのノズル筐体Pにおいて、このノズル筐体Pにおける圧搾気体用外管内に二重管状にして配される供給液体用内管に接続される。尚、図中符号Rは圧搾気体供給パイプである。
【0017】
また、各圧送ポンプ1は、複数の液体供給先であるノズル筐体Pに対応して設けられている。各圧送ポンプ1には、当該圧送ポンプ1の流量制御を周波数の調整切替えにより可能とした周波数発振装置5がリード線によってそれぞれ接続されている。これら個々の周波数発振装置5から圧送ポンプ1それぞれに対し独立に設定した周波数を送信させることで、圧送ポンプ1内における電磁コイル2を印可して電磁プランジャ3に所定数の脈動を与える。このように周波数の数値により調整された脈動数によって液体である例えば離型剤の適正流量が、個々のノズル筐体Pから独立して噴射される。
【0018】
尚、本実施の形態においては、周波数発振装置5は圧送ポンプ1と別体に構成されているが、この周波数発振装置5を圧送ポンプ1自体に内蔵させても良い。
【0019】
周波数発振装置5の具体的な構造例は、例えばサイリスタ等を使用した発振回路部6を備え、圧送ポンプ1に出力する周波数に対応する圧送ポンプ1からの吐出量の対応表示を可能とする流量表示部7と、表示によって周波数(流量)を調整するボリューム8とが構成されている。尚、周波数発振装置2自体には、例えば使用電圧がAC100V用のコンセント(図示せず)に接続されるよう差込プラグを備えている。
【0020】
周波数発振装置2におけるボリューム6の周囲には発振回路部3からの出力周波数に対応した例えばアナログ式の表示値例えば0cc/min〜3cc/minまでを例えば0.1刻みで設定可能とした流量表示部7が表示されている。もとより、この流量表示はアナログ式に限らず、デジタル表示式であっても良い。
【0021】
本実施の形態における圧送ポンプ1を使用した圧力流量特性の検査結果によれば、図2に示すように、吸入揚程マイナス150mm、入力電源DC24V、周波数30Hz、通電時間10msec、密閉圧力0.8kgf/平方cmという検査条件において、圧力0kgf/平方cmの流量266ml/minから、圧力0.7kgf/平方cmの流量8ml/minに至るまで略二次曲線的に減少するという特性を有している。
【0022】
次に、以上のように構成された最良の形態についての使用、動作の一例について説明する。先ず、液体供給源である離型剤保管タンクQから分岐させた状態で、並列配置させてある複数の圧送ポンプ1を接続し、これら各圧送ポンプ1それぞれにノズル筐体Pを接続する。各圧送ポンプ1毎にリード線を介して周波数発振装置2を接続する。
【0023】
ノズル筐体Pによって金型面に離型剤を塗布するに際し、周波数発振装置2におけるボリューム6を設定値に対応する目盛りに合わせる。このとき、サイリスタを使用した発振回路部3から当該設定値に対応した周波数による出力信号が圧送ポンプ1側に送信される。所定周波数が送信された圧送ポンプ1はこの周波数に対応した波状衝撃的脈動(断続パルス電圧力動作)を与えて、吐出側から所定量の離型剤を噴流吐出させる。このようにして離型剤の微小適正量を離型剤保管タンクQからノズル筐体Pに供給する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における概略構成図である。
【図2】同じく圧送ポンプの圧力流量特性の検査結果をグラフ曲線で示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
P…液体供給先(ノズル筐体) Q…液体供給源(離型剤保管タンク)
R…圧搾気体供給パイプ
1…圧送ポンプ 2…電磁コイル
3…電磁プランジャ
5…周波数発振装置 6…発振回路部
7…流量表示部 8…ボリューム
10…液体供給パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源から液体供給先に液体を供給する圧送ポンプを備え、該圧送ポンプの流量制御を周波数の調整切替えにより可能とした周波数発振装置を備えたことを特徴とする液体供給システム。
【請求項2】
複数の液体供給先に対応してそれぞれの複数の圧送ポンプを備え、各圧送ポンプ毎に周波数発振装置を備えた請求項1記載の液体供給システム。
【請求項3】
周波数発振装置は、サイリスタを使用した発振回路部と、圧送ポンプにおける流量表示を可能とする流量表示部と、表示によって周波数を調整するボリュームとを備えて成る請求項1または2記載の液体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−162541(P2007−162541A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358622(P2005−358622)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(399027015)ロボテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】