説明

液体収容容器

【課題】気泡排出効果を高めることができる液体収容容器を提供する。
【解決手段】容器本体5に開口させた供給口9からインクがインクジェット式記録装置に供給される液体収容容器1において、貯留しているインクを加圧手段の加圧によって排出口7bから排出するインクパック7と、インクパック7に接続されてインクパック7からのインクの流入量に応じて容積が変化するセンサ室21と、センサ室21の容積変化を検出するインク検出部11と、インクパック7とセンサ室21の間に配置され、インクパック7からセンサ室21へのインクの流入を遮断可能な開閉弁機構12とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器に関し、さらに詳しくは、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等の液体消費装置にインク等の液体を供給する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染装置やマイクロデスペンサ、さらには超高品質での印刷が求められる商業用記録装置等の液体噴射ヘッドは、装置本体に着脱可能な液体収容容器から被吐出液の供給を受けるが、空打ちによる噴射ヘッドの損傷を防止するために容器の液体残量を監視する必要がある。
【0003】
例えば、記録装置に使用される液体収容容器であるインクカートリッジのインク残量を検出する方法はいろいろ提案されているが、外部から供給される加圧流体、通常はエアの圧力によりインクを排出する形式のインクカートリッジにあっては、特許文献1に見られるようにインクを収容する可撓性材料からなるインク袋に対向するように電極を取り付け、インク袋の厚みを検出する方式や、また特許文献2に見られるようにインク袋とインク供給口とを接続する流路の途中に通孔を穿設し、この通孔を封止するように圧力センサを固定し、排出圧を圧力センサにより検出するものなどが存在する。
【特許文献1】米国特許第6,151,039号明細書
【特許文献2】米国特許第6,435,638号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、液体収容容器は、空打ちによる液体消費装置(噴射ヘッド)の損傷を防止するために、種々の方法により容器内の液体残量を監視することが行われている。
しかしながら、従来の液体収容容器は、脱気度の高いインクにより残留気泡を溶解させる思想のため、気泡排出性を向上させる構成を備えるものが少なく、気泡量が多い場合にはインクに溶解しきれない気泡が顕在化する虞があった。
【0005】
そして、顕在化した微細な気泡は、インク中を浮遊し、インク残量検出手段のセンサ表面に付着すれば、インク有無の検出精度を低下させたり、噴射ヘッドに進入すれば、インク滴を吐出させるための圧力が気泡に起因して吸収されてしまい印字不良を引き起こしたり、最悪の場合には、空打ちを生じさせて噴射ヘッドを損傷させる虞があった。
【0006】
これに対し、液体収容容器は、インク封入後の工場出荷前において、インク供給口から液体を吸引することにより、液体収容室からインク供給口までの内部流路に存在する気泡を排除することの行われる場合もあるが、この場合においても、上記のように気泡排出性を向上させる構成を備えないものでは、気泡の排出が確実に行い難いこともあった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、気泡排出効果を高めることができる液体収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、容器本体に開口させた供給口から液体が液体消費装置に供給される液体収容容器であって、
貯留している液体を加圧手段の加圧によって液体排出口から排出する液体収容室と、
前記液体収容室に接続されて該液体収容室からの液体の流入量に応じて容積が変化する液体検出室と、
前記液体検出室の容積変化を検出する検出手段と、
前記液体収容室と前記液体検出室の間に配置され、前記液体収容室から前記液体検出室への液体の流入を遮断可能な開閉弁機構と、
を備えることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0009】
この液体収容容器によれば、液体収容室から液体検出室への液体の流入が開閉弁機構によって遮断され、供給口から液体が吸引されると、液体検出室が負圧状態となり、液体検出室内に存在する微小気泡が膨張して体積が大きくなる。
これにより、供給口から排出される液体流による抵抗が大きくなり、供給口に向かって流れる液体に伴って、気泡が搬送され易くなる。
【0010】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記開閉弁機構は、前記液体収容室に連通する流入口と前記液体検出室に連通する流出口とを連通させる弁室と、前記弁室を区画形成するとともに外力により変形可能なダイヤフラムとを備え、
前記弁室に開口する前記流出口が、前記ダイヤフラムの変形によって閉塞されることが望ましい。
【0011】
このような液体収容容器によれば、外力をダイヤフラムに作用させることで、ダイヤフラムを変形し易くでき、変形させたダイヤフラムと、供給口からの液体の吸引による液体検出室の負圧とによって、弁室に開口する流出口にダイヤフラムを密着させて、流出口の閉塞が確実に行えるようになる。
【0012】
また、上記構成の液体収容容器において、前記開閉弁機構が前記加圧手段による圧力から遮断される領域に配置され、前記供給口から前記液体を吸引して生じさせた前記弁室の負圧による前記ダイヤフラムの変形によって、前記弁室に開口する前記流出口が閉塞されることが望ましい。
【0013】
このような液体収容容器によれば、加圧手段により液体収容室に加えられる圧力が開閉弁機構には作用しないので、供給口から吸引する液体検出室の液体によって、流出口を介して液体検出室と連通する弁室を負圧にし、この負圧によってダイヤフラムを変形させて、流出口を閉塞させることができる。つまり、外力を印加する機構をダイヤフラムに別途設けることがなく、簡単に開閉弁機構を構成できる。
【0014】
さらに、上記構成の液体収容容器において、前記弁室に開口する前記流出口は、前記弁室に開口する前記流入口より開口面積が大きいことが望ましい。
【0015】
このような液体収容容器によれば、大きな吸引力を弁室に作用させて、弁室内を負圧にし、ダイヤフラムの確実な吸引、すなわち流出口の確実な閉塞が可能となる。
【0016】
また、上記構成の液体収容容器において、前記弁室に開口する前記流出口は、前記ダイヤフラムの最大変位部に対面配置されることが望ましい。
【0017】
このような液体収容容器によれば、ダイヤフラムの最大変位部に流出口が対面配置されるため、少ない負圧で確実に流出口を確実に閉塞することができる。また、通常の状態において流出口とダイヤフラム間の距離を大きく設定することが可能となるため、この領域の流路抵抗を小さくすることができる。
【0018】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体検出室は、該液体検出室を形成する部材に設けられた凹状空間の開口を液体収容量に応じて変形可能なフィルムにより封止することで構成されることが望ましい。
【0019】
このような液体収容容器によれば、凹状空間の開口をフィルムで熱溶着して封止する簡単な製造工程で液体検出室を形成することが可能となり、密閉性の高い液体検出室を容易に製造することができる。
【0020】
また、上記構成の液体収容容器において、前記ダイヤフラムは、前記弁室を形成する部材に設けられた凹所の開口を封止する変形可能なフィルムにより構成されることが望ましい。
【0021】
このような液体収容容器によれば、凹所の開口をフィルムで熱溶着して封止する簡単な製造工程で弁室を形成することが可能となり、密閉性の高い弁室を容易に製造することができる。
【0022】
また、上記構成の液体収容容器において、前記検出手段は、前記液体検出室の液体収容量に応動して移動可能に収容された移動部材と、前記液体検出室の液体収容量が所定以下になると該移動部材の一面に協働して検出空間を区画形成する凹部と、該凹部に振動を印加すると共に印加した振動に伴う自由振動状態を検出する圧電型検出手段と、からなることが望ましい。
【0023】
このような液体収容容器によれば、液体検出室における液体収容量が所定以下になると、移動部材が振動作用領域である凹部と協働して検出空間を区画形成するので、圧電型検出手段が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、液体検出室における液体収容量が所定レベルに達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る液体収容容器によれば、液体収容室と液体検出室の間に配置され、液体収容室から液体検出室への液体の流入を遮断可能な開閉弁機構を備えたので、液体収容室から液体検出室への液体の流入を開閉弁機構によって遮断し、供給口から液体を吸引して液体検出室を負圧状態とすることで、液体検出室内に存在する微小気泡を膨張させて体積を大きくすることができる。
【0025】
これにより、供給口から排出される液体流による気泡に対する抵抗を大きくし、供給口に向かって流れる液体に伴わせ、気泡を搬送し易くできる。また、微小気泡を膨張させた状態において、通常の気泡排出のための液体吸引(液体収容室から液体を流入させる)を供給口から行えば、液体排出量を増大させて、一層気泡排出効果を高めることができる。この結果、液体検出室内に存在する気泡の排出を確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明に係る液体収容容器の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図であり、液体検出室の液体収容量が所定以下となった状態を示す。図2は図1に示した液体収容容器の流入口及び流出口の閉塞状態時の縦断面図、図3は加圧手段によって加圧室が加圧された状態の液体収容容器の縦断面図である。
【0027】
本第1実施形態の液体収容容器1は、図示しないインクジェット式記録装置(液体消費装置)のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されて、記録装置に装備された印字ヘッドにインク(液体)を供給するインクカートリッジである。
この液体収容容器1は、図1に示すように、図示しない加圧手段によって加圧される加圧室3を区画形成した容器本体5と、インクを貯留して加圧室3内に収容されて加圧室3の加圧により貯留しているインクを排出口(液体排出口)7bから排出するインクパック(液体収容室)7と、外部の液体消費装置であるインクジェット式記録装置の印字ヘッドにインクを供給するためのインク供給口(供給口)9と、インクパック7とインク供給口9との間に介在してインク残量の検出を行うインク検出部(検出手段)11と、インクパック7とインク検出部11の間に配置され、インクパック7からインク検出部11へのインクの流入を遮断可能な開閉弁機構12と、を備えている。
【0028】
容器本体5は、密閉状態の加圧室3と、この加圧室3に矢印Aで示すように不図示の加圧手段が加圧空気を送給するための加圧気体注入部である加圧口13と、インク検出部11を収容する検出部収容室15と、を備えている。
検出部収容室15は、加圧室3に供給される加圧気体の圧力から遮断された領域である。したがって、加圧手段により加えられる圧力はセンサ室21には作用せず、センサ室21に設けられるインク検出部11及び開閉弁機構12には加圧気体の圧力が作用しない。
【0029】
インクパック7は、可撓性を有する樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層形成されたアルミラミネート複層フィルム相互の周縁部を互いに貼り合わせることにより形成した可撓性袋体7aの一端側に、インク検出部11のインク流入口(液体流入口)11aが接続される筒状の排出口7bを接合したものである。このインクパック7は、アルミラミネート複層フィルムを使用したことで、高いガスバリア性を確保している。
【0030】
インクパック7とインク検出部11は、排出口7bにインク流入路11aを嵌合接続させることで、互いに接続した状態になる。即ち、排出口7bとインク流入路11aとの嵌合を解除することで、互いに分離可能になっている。
なお、排出口7bには、インク流入路11aとの間を気密に接続するためのパッキンが装備されている。そして、インクパック7には、インク検出部11を接続する前に、予め脱気度の高い状態に調整されたインクが充填される。
【0031】
インク検出部11は、インクパック7の排出口7bに接続されるインク流入路11aとインク供給口9に接続されるインク流出路(液体流出口)11bとを連通させた凹状空間19aを有した検出部ケース19と、凹状空間19aの開口を封止してセンサ室(液体検出室)21を区画形成した可撓性フィルム23と、凹状空間19aの底部に装備された圧力検出部25と、この圧力検出部25に対向して可撓性フィルム23に固着された受圧板(移動部材)27と、この受圧板27と検出部収容室15の上壁との間に圧装されてセンサ室21の容積が縮小する方向に受圧板27及び可撓性フィルム23を弾性付勢する圧縮コイルバネ(付勢部材)29と、を備えている。
【0032】
センサ室21は、このセンサ室21を形成する部材である検出部ケース19に設けられた凹状空間19aの開口を可撓性フィルム23により封止することで構成されることが望ましい。可撓性フィルム23は、センサ室21に供給されるインクの圧力に応じて受圧板27に変位を付与するダイヤフラムとして機能する。インクの微少な圧力変化を検出可能にして、検出精度を向上させるためには、可撓性フィルム23には十分な可撓性を持たせると良い。このような構成とすることで、凹状空間19aの開口を可撓性フィルム23で熱溶着して封止する簡単な製造工程でセンサ室21を形成することが可能となり、密閉性の高いセンサ室21を容易に製造することができる。
【0033】
検出部ケース19は、凹状空間19aを区画形成している周壁の一端側に、インク排出路11cが一体形成され、また、このインク排出路11cと対向する周壁に、インク供給口9に連通するインク流出路11bが貫通形成されている。図示していないが、インク供給口9には、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に装着した際に、カートリッジ装着部に装備されているインク供給針の挿入により流路を開く弁機構が装備される。
【0034】
インク検出部11における圧力検出部25は、インクパック7からインク供給口9にインクが導出されない時には、圧縮コイルバネ29の付勢力で受圧板27が密着した状態に当接する底板31と、該底板31に形成された凹部であるインク誘導路33と、インク誘導路33に振動を印加すると共に、前記振動に伴う自由振動の状態を検出する圧電型センサ(圧電型検出手段)35とを備えたものである。
【0035】
この圧電型センサ35は、インク誘導路33が受圧板27により覆われているか否かで、異なる自由振動の状態(残留振動の振幅や周波数の変化)を検出することができる。
そこで、例えばインクジェット式記録装置に設けた制御部は、圧電型センサ35が検出した自由振動の状態に応じて、受圧板27を支持している可撓性フィルム23の変形を検出することで、センサ室21内の容積変化を検出できる。
【0036】
圧縮コイルバネ29の付勢方向は、前述したようにセンサ室21の容積が縮小する方向であると同時に、圧電型センサ35が配置された方向となっている。
底板31に形成された凹部であるインク誘導路33は、図1に示すように受圧板27が底板31に密着した状態では、受圧板27と協働して検出空間を区画形成し、受圧板27が底板31から離れた状態になるとセンサ室21に開放される。受圧板27は、圧電型センサ35の振動面に対向する領域において前記振動面に対して略平行となる面を有する。
【0037】
インク検出部11は、加圧室3に供給される加圧空気によるインクパック7の加圧で、インクパック7からセンサ室21にインクが供給されると、それによるセンサ室21内のインク収容量の変化に相応して、可撓性フィルム23が上方に膨出変形する。この可撓性フィルム23の変形により、センサ室21の隔壁の一部を構成している受圧板27が上方に移動して、受圧板27が底板31から離れる。受圧板27が底板31から離れることにより、インク誘導路33がセンサ室21に開放した状態になると共に、センサ室21を通ってインク供給口9から記録ヘッド側にインクが供給されることになる。
【0038】
加圧室3が所定の加圧状態になっていても、インクパック7に収容されているインクが低減すると、インクパック7からセンサ室21に供給されるインク量が減少する。それにより、センサ室21内の圧力が減少するため、受圧板27がインク誘導路33を有した底板31に近づいてゆく。
つまり、センサ室21における液体収容量が所定以下になると、受圧板27が振動作用領域であるインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成するので、圧電型センサ35が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、センサ室21における液体収容量が所定レベルに達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができるようになっている。本実施形態では、センサ室21内の圧力の減少によって受圧板27が底板31に密着し、インク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが消尽された状態に設定している。
【0039】
開閉弁機構12は、インクパック7とインク検出部11の間に配置され、インクパック7からインク検出部11へのインクの流入を遮断可能としている。開閉弁機構12は、インクパック7に連通する流入口37と、センサ室21に連通する流出口39とを連通させる弁室41を有する。
【0040】
弁室41は、弁室41を形成する部材である検出部ケース19に設けられた凹所43の開口をダイヤフラム45により封止することで構成される。このような構造とすることで、凹所43の開口をダイヤフラム45で熱溶着して封止する簡単な製造工程で弁室41を形成することが可能となり、密閉性の高い弁室41を容易に製造することができる。
【0041】
ダイヤフラム45は、変形可能なフィルムからなる。弁室41に開口する流出口39は、ダイヤフラム45の変形(密着)によって閉塞可能となっている。
本実施形態では、インク供給口9からインクを吸引して生じさせた弁室41の負圧によるダイヤフラム45の変形によって、弁室41に開口する流出口39が閉塞される。すなわち、インク供給口9から吸引するセンサ室21のインクによって、流出口39を介してセンサ室21と連通する弁室41を負圧にし、この負圧によってダイヤフラム45を変形させて、流出口39を閉塞させることができる。
つまり、外力を印加する機構をダイヤフラム45に別途設けることがなく、簡単に開閉弁機構12を構成できるようにしている。
【0042】
また、弁室41に開口する流出口39は、同じく弁室41に開口する流入口37より開口面積が大きいことが望ましい。これにより、大きな吸引力を弁室41に作用させて、弁室41を負圧にし、ダイヤフラム45の確実な吸引、すなわち、流出口39の確実な閉塞が可能となっている。
【0043】
弁室41に開口する流出口39は、ダイヤフラム45の最大変位部(ダイヤフラム45の中央部)に対面配置されている。したがって、少ない負圧で確実にダイヤフラム45を変位させ、流出口39を確実に閉塞することができる。また、通常の状態において流出口39とダイヤフラム45間の距離を大きく設定することが可能となるため、この領域の流路抵抗を小さくすることができる。
【0044】
この液体収容容器1では、センサ室21におけるインク収容量(液体収容量)が所定以下になると、受圧板27がインク誘導路33と協働して振動作用領域である検出空間を区画形成するので、インク誘導路33に相応する音響インピーダンスの周波数が現れる。この周波数は、受圧板27が底板31から離れている時の音響インピーダンスによる周波数よりも低い周波数となり、差異が顕著に出る。そのため、圧電型センサ35が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、センサ室21におけるインク収容量が所定レベルに到達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の液体収容容器1では、センサ室21が、上面に形成された開口部をインク収容量に応じて変形可能な可撓性フィルム23により封止して構成され、圧電型センサ35が、センサ室21の底部に配置される構成である。
このため、センサ室21がインク収容量の変化(圧力変化)に対応して容易に変形し、かつ容易に密閉空間として構成でき、簡単な構造で液体の漏れや蒸発を防止することができる。
【0046】
また、上記実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、可撓性フィルム23に固着され、センサ室21のインク収容量の変化に対応した該可撓性フィルム23の変形によって移動する。そのため、可撓性フィルム23の容易な変形により、受圧板27を液位や圧力にスムーズに追従させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、圧電型センサ35の振動面に対向する領域において前記振動面に対して略平行となる面を有するので、液位に応動して容積を変化させる検出空間を容易に形成することができる。
また、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、弾性部材により構成された付勢手段である圧縮コイルバネ29によって圧電型センサ35を配置した方向に付勢されている。そのため、圧縮コイルバネ29の付勢力を調整することにより、受圧板27がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時期を任意に変更できると共に、検出すべきセンサ室21の内圧(残存液量)を容易に設定することができる。
【0048】
また、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが消尽された状態に設定しているため、上記のようにインクカートリッジとして使用した場合に、インク検出部11の圧電型センサ35を、インクパック7におけるインク残量がゼロになったことを検知するインクエンド検出機構として有効に活用することができる。
【0049】
そして、図2に示すように、インク供給口9から液体が吸引されると、ダイヤフラム45が吸引されて開閉弁機構12が閉じられるので、インクパック7からセンサ室21へのインクの流入が該開閉弁機構12によって遮断され、センサ室21が負圧状態となり、図1に示すセンサ室21に存在する微小気泡51が膨張して図2に示すように、体積の大きな気泡51Aとなる。これにより、インク供給口9から排出されるインク流による抵抗が大きくなり、インク供給口9に向かって流れるインクに伴って、気泡51Aが搬送され易くなる。
【0050】
したがって、以上に説明した本実施形態の液体収容容器1によれば、インクパック7とセンサ室21の間に配置され、インクパック7からセンサ室21へのインクの流入を遮断可能な開閉弁機構12を備えたので、インクパック7からセンサ室21への液体の流入を開閉弁機構12によって遮断し、インク供給口9からインクを吸引してセンサ室21を負圧状態とすることで、センサ室21に存在する微小気泡51を膨張させて体積を大きくすることができる。
【0051】
これにより、インク供給口9から排出されるインク流による気泡51Aに対する抵抗を大きくし、インク供給口9に向かって流れるインクに伴わせ、気泡51Aを搬送し易くできる。
そして、微小気泡51を膨張させた状態において、図3に示すように、加圧室3に供給される加圧空気によるインクパック7の加圧でインクパック7から弁室41にインクを供給すれば、開閉弁機構12が開放されてインクがセンサ室21に流入するので、気泡51Aはインク流と伴にインク供給口9から排出される。この結果、センサ室21内に存在する微小気泡51を確実に排出することができる。
【0052】
図4は、本発明の第2実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
本第2実施形態の液体収容容器61は、図1に示した液体収容容器1の一部を改善したもので、弁室41を区画形成するダイヤフラム45を、流体圧や電磁ソレノイドによってプランジャ63aを駆動する駆動手段63によって可動させるようにしている。
【0053】
すなわち、ダイヤフラム45には、外力が付与されるようになっている。ダイヤフラム45の可動は、駆動手段63のみによるもの、或いは、駆動手段63による外力と上記実施形態のインク供給口9からの吸引力による負圧とを協働させるもののいずれであってもよい。なお、それ以外の構成は、図1に示した液体収容容器1と共通のため、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
本第2実施形態の液体収容容器61によれば、駆動手段63による外力を開閉弁機構12のダイヤフラム45に作用させることで、ダイヤフラム45を変形させることができ、変形させたダイヤフラム45と、インク供給口9からのインクの吸引によるセンサ室21の負圧とによって、弁室41に開口する流入口37と流出口39とにダイヤフラム45を密着させて、開閉弁機構12をより確実に閉塞させることができる。
【0055】
なお、本発明の液体収容容器における液体収容室、液体検出室、検出手段及び開閉弁機構等の構成は、上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、可撓性フィルム23及び受圧板27を圧電型センサ35側に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね29を使用した。
しかしながら、圧縮コイルばね29の代わりに、ゴムその他の弾性部材により構成される付勢手段を使用するようにしても良い。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、受圧板27がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが完全に消尽された状態に設定して、圧電型センサ35をインクパック7におけるインク残量がゼロになったことを検知するインクエンド検出機構として機能させるようにした。
しかしながら、受圧板27がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが略消尽された状態(所定の小量が残っている状態)に設定すれば、圧電型センサ35をインクパック7におけるインク残量がもうすぐゼロになる状態を検知するインクニアエンド検出機構として活用することもできる。
【0057】
また、本発明の液体収容容器において、検出空間を区画形成すると共に圧力検出部が振動を作用させる振動作用領域である凹部は、上記各実施形態に示したようなインク誘導路33に限らない。本発明に係る凹部は、管状の通路ではなく、底板31の上面に開放する単純な切欠き部状に形成するようにしても良い。
【0058】
また、本発明の液体収容容器の用途は、インクジェット記録装置のインクカートリッジに限らない。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。
液体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロデスペンサ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【図2】図1に示した液体収容容器の流入口及び流出口の閉塞状態時の縦断面図である。
【図3】加圧手段によって加圧室が加圧された状態の液体収容容器の縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…液体収容容器、5…容器本体、9…インク供給口(供給口)、7…インクパック(液体収容室)、7b…排出口(液体排出口)、11…インク検出部(検出手段)、12…開閉弁機構、19…検出部ケース(液体検出室を形成する部材、弁室を形成する部材)、19a…凹状空間、21…センサ室(液体検出室)、23…可撓性フィルム(フィルム)、27…受圧板(移動部材)、33…インク誘導路(凹部)、35…圧電型検出手段、37…流入口、39…流出口、41…弁室、43…凹所、45…ダイヤフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に開口させた供給口から液体が液体消費装置に供給される液体収容容器であって、
貯留している液体を加圧手段の加圧によって液体排出口から排出する液体収容室と、
前記液体収容室に接続されて該液体収容室からの液体の流入量に応じて容積が変化する液体検出室と、
前記液体検出室の容積変化を検出する検出手段と、
前記液体収容室と前記液体検出室の間に配置され、前記液体収容室から前記液体検出室への液体の流入を遮断可能な開閉弁機構と、
を備えることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記開閉弁機構は、前記液体収容室に連通する流入口と前記液体検出室に連通する流出口とを連通させる弁室と、前記弁室を区画形成するとともに外力により変形可能なダイヤフラムとを備え、
前記弁室に開口する前記流出口が、前記ダイヤフラムの変形によって閉塞されることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記開閉弁機構が前記加圧手段による圧力から遮断される領域に配置され、前記供給口から前記液体を吸引して生じさせた前記弁室の負圧による前記ダイヤフラムの変形によって、前記弁室に開口する前記流出口が閉塞されることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記弁室に開口する前記流出口は、前記弁室に開口する前記流入口より開口面積が大きいことを特徴とする請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記弁室に開口する前記流出口は、前記ダイヤフラムの最大変位部に対面配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体検出室は、該液体検出室を形成する部材に設けられた凹状空間の開口を液体収容量に応じて変形可能なフィルムにより封止することで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記ダイヤフラムは、前記弁室を形成する部材に設けられた凹所の開口を封止する変形可能なフィルムにより構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記検出手段は、前記液体検出室の液体収容量に応動して移動可能に収容された移動部材と、前記液体検出室の液体収容量が所定以下になると該移動部材の一面に協働して検出空間を区画形成する凹部と、該凹部に振動を印加すると共に印加した振動に伴う自由振動状態を検出する圧電型検出手段と、からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216479(P2007−216479A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38577(P2006−38577)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】