説明

液体吐出ヘッド及びその製造方法

【課題】 インクによる腐食を防止するために、インク供給口と接続部材との間に一定の距離をとり、接続部材の周囲にはインクを遮断する封止部材を設ける必要があるため、さらなるヘッド基板の縮小化とヘッドの信頼性との両立を行うことは困難であった。
【解決手段】 ヘッド用基板の凹部と支持基板の凸部を嵌合させることでヘッド用基板と支持基板を接合させる。さらに、凹部の導電層と凸部の接続部材とで電気的に接続し、封止部材で導電層と接続部材の周囲を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出して被記録媒体に記録を行う液体吐出ヘッド、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッド用基板(以下、ヘッド用基板とも称する)を支持基板と接合することで設けられた液体吐出ヘッド(以下、ヘッドとも称する)は、液体吐出装置に搭載され、液体吐出ヘッドの吐出口からインク等の液体を吐出することで被記録媒体に記録動作を行う。
【0003】
このようなヘッド用基板と支持基板との電気的な接続を行うために、シリコン基板の表面から裏面に貫通する貫通電極を設ける構成が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されるヘッドを図1に示す。貫通電極を有する記録素子基板H1100と、保持基板H1200とが、電気接続部として用いられるエレキバンプH1105を介して電気的に接続することで実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッド用基板は、半導体製造技術を用いてシリコン基板などに複数のヘッド用基板を同時に形成し、切り分けることで設けられる。そのため個々のヘッド用基板のサイズが大きくなると、一枚のシリコン基板から形成できるヘッド用基板の数が減少し、製造コストが増すことになるため、ヘッド用基板の面積を縮小することが求められている。また、液体吐出ヘッドを搭載する液体吐出装置の小型化を達成する観点からも、ヘッド用基板の小型化が求められている。
【0006】
しかし特許文献1のヘッドの構成では、インクの染み込みを防止するためインク供給口と、エレキバンプH1105との間に一定の距離をとり、エレキバンプH1105の周囲に、インクを遮断する封止剤H1317を設けている。この距離を短くすると、インクが染み込んでエレキバンプH1105が腐食する可能性があるため、距離を短くすることでヘッド基板の面積を縮小することは困難であった。
【0007】
そこで本発明は、液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドにおいて、電気接続部へのインクの染み込み防止と、ヘッド用基板の面積の縮小と、の両立を達成することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するために用いられるエネルギーを発生する素子が複数設けられた第一の面と、凹部が設けられた、前記第一の面の反対の面である第二の面と、前記第一の面と前記第二の面との間を貫通した液体の供給口と、を有する基板と、複数の前記素子と電気的に接続され、前記基板の前記第一の面と前記凹部の内側との間を貫通して設けられた複数の電極と、前記複数の電極に共通に電気的に接続され、前記内側に設けられた導電層と、を有する液体吐出ヘッド用基板と、前記液体吐出ヘッド用基板を前記第二の面の側から支持し、前記凹部の内側に設けられた凸部と、該凸部に設けられ前記導電層と電気的に接続された接続部材と、前記供給口と連通し、前記供給口に液体を供給するための開口と、が設けられた支持基板と、を有し、前記凹部の内側から前記第二の面までの前記液体吐出ヘッド用基板と前記支持基板との間に、前記導電層と前記接続部材とを被覆する樹脂からなる部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
ヘッド用基板に凹部と支持基板に凸部とを設け、凸部に接続部材を設けて電気的接続を行い、凹部と凸部の隙間を封止することで、ヘッド基板を縮小しても接続部材と供給口との距離を、接続部へのインクの染み込みを防止できる距離とすることができる。
【0010】
これにより、接続部材へのインクの染み込みを防止と、液体吐出ヘッド用基板の縮小との両立を達成できる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のヘッドの断面模式図である。
【図2】本発明を用いるヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の一例のヘッド用基板の上面図である。
【図4】本発明の一例のヘッド用基板の断面図である。
【図5】本発明の一例のヘッド用基板の断面図である。
【図6】実施例1に示すヘッド用基板の製造方法を示す断面図である。
【図7】実施例1に示す支持基板の製造方法を示す断面図である。
【図8】実施例1に示すヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図9】実施例2に示す支持基板の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図2は本発明を用いる、液体記録装置に搭載可能な液体吐出ヘッド40(以下、ヘッドとも称する)の上面図である。液体吐出ヘッド用基板41(以下、ヘッド用基板とも称する)は、支持基板に設けられた端子と接続するフレキシブルフィルム配線基板43により、液体記録装置と接続するコンタクトパッド44に導通している。また、ヘッド用基板41は、支持基板に接合されることでヘッド40に支持されされている。ここでヘッド40は、インクタンクと一体化したヘッドの一例を示しているが、インクタンクと分離した分離型とすることも出来る。
【0014】
図3(a)は、1種類のインクを供給するために用いられる複数のインクの供給口10が配列している供給口列を3列有し、3種類のインク(例えばイエロー、マゼンダ、シアン)を使用するヘッドに用いることができるヘッド用基板41を示している。図3(b)は、1種類のインクを供給する複数のインクの供給口10からなる供給口列を1列有し、1種類のインクを用いるヘッド用基板41を示している。
【0015】
ヘッド用基板41には、インクを吐出するためのエネルギーを発生させる素子として用いられる発熱素子1と、発熱素子1に電力を供給する個別電力配線36と、複数の発熱素子1に共通に電力を供給する導電層として用いられる電力配線13と、が設けられている。複数の発熱素子1が配列して構成される素子列は、供給口列の両側に、供給口列に沿って設けられている。さらにヘッド用基板41には、発熱素子1を選択する信号を出力するスイッチング素子として用いられる駆動回路11が設けられている。駆動回路11は、素子列に沿って、供給口列とは反対の側に設けられている。
【0016】
図4(a)は図3(a)のA−A’方向の断面模式図の一例であり、供給口列が複数設けられ、隣接する供給口列の間の領域に、複数の発熱素子1と接続する2本の電力配線13を設けた構成を示している。図4(b)は、1つの供給口列を有するヘッドの図3(a)のC−C’方向の断面模式図の一例を示している。
【0017】
ヘッド用基板41に設けられているインクを発熱素子1に供給する複数の供給口10からなる供給口列は、発熱素子1が設けられた基板の第一の面と反対の面である第二の面に設けられた供給口列の第二の凹部8とインク貫通孔9で構成されている。支持基板の開口30から供給口10を通って供給されるインクは、発熱素子1で発生するエネルギーによって、吐出口4から吐出されることで、被記録媒体への記録動作が行われる。吐出口4と吐出口を連通する流路とは、樹脂からなる流路形成部材3で形成されている。発熱素子1の上部には、インクから保護するために保護層12が設けられており、保護層12の上側に流路形成部材3が設けられている。
【0018】
発熱素子1と接続し、発熱素子1に電流を供給する個別電力配線36は、貫通電極5を介して基板2の第二の面に設けられた第一の凹部7の内側において、共通のGNDH配線やVH配線に用いられる電力配線13と接続している。電力配線13は、素子列に沿って設けられており、1つの電力配線13は、GNDH配線とVH配線のどちらか1方のみと接続されている。GNDH配線とVH配線との両方を第一の凹部7の内側に設ける場合は、2つの電力配線13を設ける必要がある。
【0019】
第一の凹部7の内側には、基板の面に垂直な方向に関して基板の厚さが、第二の面と第一の面との厚さより薄くなるような第三の面が設けられている。電力配線13は、接続部材として用いられるバンプ6を介して支持基板20の実装面21より膜厚が厚い凸部22に設けられ、端子として用いられる電気接続端子14と電気的に接続している。さらにバンプ6と電気接続端子14と電力配線13が設けられた第一の凹部7と凸部22との間は、樹脂などからなる部材を封止部材24として用いてバンプ6と電気接続端子14と電力配線13を被覆するように封止されている。
【0020】
図5は、ヘッドの図3のB−B’方向の断面模式図の一例である。素子列の方向に沿って、複数の発熱素子1其々に設けられた個別電力配線36と接続する複数の貫通電極5が設けられている。複数の貫通電極5は、基板2の凹部7の内側で電力配線13と接続されている。
【0021】
図5(a)では、バンプ6が電力配線13と電気接続端子14の全面に設けられている構成を示しているが、電気的接続が可能であれば図5(b)に示すような2つのバンプ6のみを設けることもできる。このように基板の凹部と、支持基板20の凸部で電気的接続を行い、バンプの周囲をアミン硬化型エポキシ樹脂組成物などからなる樹脂からなる部材を封止部材24として用いて被覆して封止を行っている。封止部材24としては1種類の封止材料のみならず複数の材料を用いて封止しても良い。また、封止材料として接着材料を用いることもできる。
【0022】
以上のように、基板の凹部と支持基板20の凸部とで電気的接続を行い、凹部と凸部の隙間を封止することで、ヘッド基板をさらに縮小してもバンプ6と供給口10との距離を、バンプへのインクの染み込みを防止できるの距離とすることができる。
【0023】
(実施例1)
次に、製造方法を示しながら、本発明の一例について具体的に説明する。本実施例においては、隣接する第一の供給口列と第二の供給口列が設けられている構成を説明する。第一の供給口列と第二の供給口列との間の領域には、第一の供給口列に沿って設けられ、第一の供給口列に対応する第一の素子列と、第二の供給口列に沿って設けられ、第二の供給口に対応する第二の素子列が設けられている。
【0024】
図6は、図4(a)の断面模式図に係るヘッド用基板41の製造方法である。図7は、本実施例のヘッドの支持基板20の製造方法を示している。図8は、ヘッド用基板41と支持基板20とを実装する製造方法を示している。
【0025】
厚さ625nmのシリコンを主成分とする基板2(第一の基板)に、エネルギー発生する素子として用いられる発熱素子1と駆動回路11を第一の面に形成した(図6(a))。さらに、発熱素子1と駆動回路11の、基板の面に垂直な方向に関して上側に保護層12を設けた。次に流路形成部材3となるカチオン重合型エポキシ樹脂等を基板2にスピンコート法等を用いて塗布し、フォトリソグラフィ法を用いて露光・現像を行うにより吐出口4を形成した(図6(b))。
【0026】
フォトリソグラフィ法を用いて基板2の発熱素子1が設けられた面とは反対側の第二の面に第一の凹部7と第二の凹部8に位置する領域を開口したレジストなどからなるマスクを設けた。さらにこの基板2の一部をテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下TMAHと示す)をエッチャントとして用いて結晶異方性エッチングを行い、基板2を深さ425μmの第三の面が露出させた。これにより、第一の凹部7と第二の凹部8を設けた。エッチャントとしては、TMAHのほかにKOH、NaOH等の強アルカリ溶液を用いることも出来る。TMAH等の強アルカリのエッチャントに対するシリコンの結晶方位〈111〉面のエッチングレートは、シリコンの結晶方位〈100〉と比較すると著しく遅いことが知られている。そのため第二の面をシリコンの結晶方位〈100〉面とすると、第一の凹部7と第二の凹部8の側面は、〈111〉面となるようにエッチングされ、第二の面に対して約54.7度の角度の傾斜を設けることができる。これにより第一の凹部7と第二の凹部とは、第二の面と連続し、第二の面から第三の面の位置まで設けられた、第一の斜面が設けられた。
【0027】
電力配線13を設ける第一の凹部7の基板2の開口幅は1000μmと成るように設け、供給口10の第二の凹部8の基板2の開口幅は800μmと成るように設けた。その後、レジストのマスクを剥離液などを用いて剥離し、図6(c)の基板2を設けた。
【0028】
次に、貫通電極5を設ける貫通孔を形成するためのマスクをフォトレジスト法等を用いて形成し、基板2をBoschプロセスなどのドライエッチング等を用いて第一の凹部7からシリコン基板のエッチングを行い貫通電極5を設けるための貫通孔を設けた。その後、レジストのマスクを剥離液などを用いて剥離した。
【0029】
次に、貫通電極5と基板2との絶縁性を確保するための絶縁層(不図示)を、酸化シリコンや窒化シリコンや、パリレン等の樹脂をCVD法で全面に成膜した。その後フォトリソグラフィ技術を用いて、貫通孔の設けられた領域以外の領域を開口させ、RIE等の手法により不要な個所の絶縁層を除去した。さらに貫通孔に金属膜を蒸着法により成膜を行い、フォトリソグラフィ技術等を用いてパターニングを行うことにより、個別電力配線36と電気接続が可能な貫通電極5を形成した。貫通電極5は、十分に低抵抗とするために金属膜を蒸着した後に、電解めっき法により電極内部を導電性材料で充填した。これにより、膜厚を厚く設けることが出来、金属膜蒸着のみによる成膜よりも低抵抗の貫通電極5を設ける事が出来た(図6(d))。
【0030】
次に第一の凹部7と第二の凹部8を設けた基板2の面に、拡散防止層(不図示)として高融点金属材料であるチタンタングステンを成膜した。続いて配線層として優れているめっき用導体層(不図示)を真空成膜等により全面成膜を行った。なお、拡散防止層とめっき用導体金層の密着性を向上するために、拡散防止膜の酸化膜除去してから、めっき用導体金属を成膜することが望ましい。
【0031】
さらにめっき用導体の金層の表面に、フォトレジストをスピンコート法、スリットコート法、或いはスプレー塗布法などの方法を用いて全面に塗布した。このとき、所望とする配線の厚さよりも厚くなるようにフォトレジストを塗布した。さらに、配線を形成する部位のめっき用導体の金層を露出するようにフォトレジストを除去するために、フォトリソグラフィ法にてレジスト露光・現像を行い、めっき用の型材となるマスクを形成した。
【0032】
このマスクを用いて電解めっき法により亜硫酸金塩の電解浴中で、めっき用導体である金に所定の電流を流し、複数の貫通電極5と接続する電力配線13を形成した。その後、レジストのマスクを剥離液などを用いて剥離し、図6(e)のヘッド基板を設けた。
【0033】
その後、Boschプロセスなどのドライエッチング等を用いてシリコン基板2を200μmエッチングし、インク貫通孔9を設け、インク貫通孔9と第二の凹部8からなる供給口10を設けた(図6(f))。
【0034】
本実施例においてはインク貫通孔9と貫通電極5の貫通孔とは別工程で形成を行ったが、同時に形成することも可能である。その際、導電膜となる金属膜を蒸着法によりインク貫通孔9にも成膜し、パターニングを行うことにより、貫通孔にのみ電気接点可能なように形成する。
【0035】
以上のような工程で複数の基板2一括で形成し、ダイシングソーなどにより切断することで、複数のヘッド用基板を設けた。
【0036】
次にヘッドの支持基板の製造方法を説明する。第一の凹部の深さより薄いシリコンを主成分とする基板(第三の基板)に開口幅約900μmとなるようにレジストマスクを設けた。さらに第一の基板と同様にTMAH等の強アルカリをエッチャントとして用い、凸部用部材となる部分以外の部分を結晶異方性エッチングで除去した。このとき用いる第三の基板の面も、シリコンの結晶方位〈100〉面とすることにより基板の面に対して第一の斜面と同じ約54.7度の傾斜角を有する第二の斜面をもつ凸部用部材を設けることができる。
【0037】
さらに、インクを供給する開口30を有するアルミナなどからなる基板(第二の基板)の実装面21に、凸部用部材を接着させることで図6(b)に示す凸部22を有する支持基板20を設けた。さらにこの支持基板20の凸部22に電気接続端子14と金などの導電材料からなるバンプ6を設けた。
【0038】
次に、図6(f)に示すヘッド用基板41の第一の斜面を有する第一の凹部と、図7(b)に示す支持基板20の第二の斜面を有する凸部22を図8に示すように嵌合した。さらに支持基板20の開口30と、ヘッド用基板41の供給口10とが、一致するように設けた。これによりヘッド用基板41の電力配線13と、支持基板20のバンプ6を電気的に接続させることができ、支持基板20の開口30からヘッド用基板41の供給口にインクを供給することができた。
【0039】
その後、バンプ6と電気接続端子14と電力配線13が設けられた第一の凹部7と凸部22との間隙に、アミン硬化型エポキシ樹脂組成物からなる樹脂からなる部材の封止部材24を充填し、被覆することで図4(a)に示すように封止した。
【0040】
以上のように、ヘッド用基板41に第一の凹部7、支持基板20に凸部22を設けてその部分で電気的接続を行い、さらに第一の凹部と凸部との傾斜面を封止部材24で封止した。これによりヘッド基板をさらに縮小してもバンプ6と供給口10との距離を、バンプ6へのインクの染み込みを防止できる距離とすることができた。
【0041】
第一の凹部7の第一の斜面とほぼ平行な凸部22の第二の斜面との間を樹脂などからなる封止部材24で封止することにより、確実に被覆させて封止を行うことができ、インクによる腐食をより効果的に防止することができた。これにより、ヘッド基板をさらに縮小しても、バンプ6と電力配線13へのインクの染み込みを防止できる液体吐出ヘッドを提供することが出来た。
【0042】
(実施例2)
本実施例においては、実施例1とは別の支持基板20の製造方法を示す。ヘッド用基板に関しては実施例1の製造方法を用いて設けた。
【0043】
支持基板20は、耐熱性・耐薬品性に優れるポリサルホン樹脂を用いて、素子列と直交する方向の幅を900μmとし、高さ425μmの凸部22と、インクを供給するための開口30とを有するように射出成型を行った(図9(a))。なお、耐熱性・耐薬品性を有する射出成型が可能な樹脂であれば同様に支持基板20として用いることができ、例えばポリエーテルサルホン樹脂、ポリヘニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリプロピレン樹脂等も用いることができる。
【0044】
このとき、凸部22は、ヘッド用基板の第一の凹部7と同じ傾斜角である第二の斜面を有するように設けた。
【0045】
次に、支持基板20の凸部22に金などの導電材料からなるバンプ6と、電気接続端子14とを形成した(図9(b))。
【0046】
このように形成した図6(f)に示すヘッド用基板41と、図9(b)に示す支持基板20を図7に示すように結合させることで、電気的な接続を行った。なお支持基板20の開口30と、ヘッド用基板41の供給口10とは、一致させるように接着させた。これにより、支持基板20からヘッド用基板41にインクを供給することができた。
【0047】
その後、さらにバンプ6と電気接続端子14と電力配線13が設けられた第一の凹部7と凸部22との約50μmの間隙に、アミン硬化型エポキシ樹脂組成物からなる封止部材24を充填することで図4(a)に示すように封止した。
【0048】
以上のように、ヘッド用基板41に第一の凹部7、支持基板20に凸部22を設けてその部分で電気的接続を行い、さらに第一の凹部と凸部との傾斜面を封止部材24で封止した。これによりヘッド基板をさらに縮小してもバンプ6と供給口10との距離を、バンプ6へのインクの染み込みを防止できる距離とすることができた。
【0049】
さらに、支持基板20を第一の凹部に対応するように、樹脂部材で射出成型することにより第一の斜面とほぼ同じ傾斜角度の傾斜面を有すると支持基板20を設けた。このように、第一の凹部7の第一の斜面と、ほぼ平行な凸部22の第二の斜面と、の間を樹脂などからなる封止部材24で封止することで、より確実にバンプ6と電力配線13を被覆して封止することができる。これにより、ヘッド基板をさらに縮小してもインクの染み込みを防止できる液体吐出ヘッドを提供することが出来た。
【0050】
また、本実施例に示すような射出成型技術を用いることにより、実施例1に示すような凸部のエッチング工程やアルミナ基板を接着させる工程を削減することができ、製造コストの削減を行うこともできた。
【符号の説明】
【0051】
1 素子
2 基板
5 電極
7 凹部
10 供給口
13 電力配線
14 端子
20 支持基板
22 凸部
24 封止部材
40 液体吐出ヘッド
41 液体吐出ヘッド用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するために用いられるエネルギーを発生する素子が複数設けられた第一の面と、凹部が設けられた、前記第一の面の反対の面である第二の面と、前記第一の面と前記第二の面との間を貫通した液体の供給口と、を有する基板と、複数の前記素子と電気的に接続され、前記基板の前記第一の面と前記凹部の内側との間を貫通して設けられた複数の電極と、前記複数の電極に共通に電気的に接続され、前記内側に設けられた導電層と、を有する液体吐出ヘッド用基板と、
前記液体吐出ヘッド用基板を前記第二の面の側から支持し、前記凹部の内側に設けられた凸部と、該凸部に設けられ前記導電層と電気的に接続された接続部材と、前記供給口と連通し、前記供給口に液体を供給するための開口と、が設けられた支持基板と、
を有し、
前記凹部の内側から前記第二の面までの前記液体吐出ヘッド用基板と前記支持基板との間に、前記導電層と前記接続部材とを被覆する樹脂からなる部材が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記供給口は複数設けられており、前記複数の供給口が配列されることで、前記基板に供給口列が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の前記素子が配列されることで構成される素子列が前記供給口列を挟むように、前記第一の面の前記供給口の両側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記凹部は、前記第二の面と連続し、前記第二の面から前記第一の面と前記第二の面との間の位置まで設けられた第一の斜面を有し、
前記凸部は、前記第一の斜面とほぼ平行な第二の斜面を有し、
前記第一の斜面と前記第二の斜面との間に、前記樹脂からなる部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体を吐出するために用いられるエネルギーを発生する素子が複数設けられた第一の面と、凹部が設けられた、前記第一の面の反対の面である第二の面と、前記第一の面と前記第二の面との間を貫通した液体の供給口と、を備える第一の基板と、複数の前記素子と電気的に接続され、前記基板の前記第一の面と前記凹部の内側との間を貫通して設けられた複数の電極と、前記複数の電極に共通に電気的に接続され、前記内側に設けられた導電層と、を備えた液体吐出ヘッド用基板を提供する工程と、
前記導電層と電気的に接続できる接続部材が設けられた凸部と、前記供給口に液体を供給するための開口と、を有する支持基板を、前記凸部が前記液体吐出ヘッド用基板の前記内側の位置となり、前記開口と前記供給口とが連通するように、前記支持基板を提供する工程と、
前記導電層と前記接続部材とを電気的に接続させる工程と、
前記凹部の内側から前記第二の面までの前記液体吐出ヘッド用基板と前記支持基板との間に、前記導電層と前記接続部材とを被覆するように、樹脂からなる部材を設ける工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記支持基板を提供する工程は、
前記開口を有する第二の基板を提供する工程と、
前記凸部を形成するための凸部用部材と前記第二の基板とを接着する工程と、
前記凸部に前記接続部材を設ける工程と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記第一の基板は、シリコンにより形成され、前記凹部は、前記第一の基板の一部を結晶異方性エッチングによって除去することによって得られ、前記凸部用部材は、シリコンの第三の基板を結晶異方性エッチングして前記凸部用部材となる部分以外の部分を除去することによって得られることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記支持基板を提供する工程は、
前記開口と前記凸部とを有する樹脂からなる部材を射出成型により形成する工程と、
前記凸部に前記接続部材を設ける工程と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56807(P2011−56807A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209540(P2009−209540)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】