説明

液体吐出装置および液体吐出方法

【課題】簡単な構成で、かつ被記録部材や吐出液を浪費することなく確実に吐出不良を検出する。
【解決手段】記録ヘッドをフェイス面側からCCDカメラにより撮影し(ステップ102)、画像処理を行って、撮影した画像から正常な場合の画像を差し引いて差分画像を生成する(ステップ103)。そして、この差分画像に基づいて、流路内の気泡、流路内およびフェイス面の状態を検出し、記録ヘッド内のノズルが吐出不良ノズルか否かを判定する(ステップ104)。そして、その判定結果に基づいて、回復動作や吐出動作、その他の不吐出対応を適宜行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッド等の記録手段から記録媒体等の媒体へ液体を吐出する液体吐出装置および液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、記録情報に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP(Over Head Projector)用シート等の被記録部材(記録媒体)に画像(文字や記号等を含む)を記録していくように構成されている。前記記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることができる。
【0003】
被記録部材の搬送方向(紙送り方向、副走査方向)と交叉する方向に主走査しながら記録するシリアルタイプの記録装置においては、被記録部材に沿って移動するキャリッジ上に搭載した記録手段(記録ヘッド)によって画像を記録(主走査)し、1行分の記録を終了した後に所定量の紙送り(副走査としてのピッチ搬送)を行い、その後に再び停止した被記録部材に対して次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返すことにより、被記録部材全体の記録が行われる。一方、被記録部材の搬送方向の副走査のみで記録するラインタイプの記録装置においては、被記録部材を所定の記録位置にセットし、一括して1行分の記録を行った後、所定量の紙送り(ピッチ送り)を行い、さらに次の行の記録を一括して行なうという動作を繰り返すことにより、被記録部材全体の記録が行われる。
【0004】
そのうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から被記録部材へインクを吐出して記録を行なうものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。中でも、紙幅方向に多数の吐出口を配列したラインタイプの記録手段を使用するライン型の記録装置は、記録の一層の高速化が可能である。
【0005】
インクジェット記録ヘッドの吐出口からインクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いるもの、レーザー等の電磁波を照射して発熱させ、この発熱作用によってインク滴を吐出させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換体によって液体を加熱するものなどがある。その中でも、熱エネルギーを利用してインクを滴として吐出するインクジェット式の記録手段(記録ヘッド)は、吐出口を高密度に配列することができるため高解像度の記録をすることが可能である。
【0006】
特に、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット式の記録手段(記録ヘッド)は、エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体製造プロセスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、液路壁、天板などを形成することにより、高密度の液路配置(吐出口配置)を有するものを容易に製造することができ、一層のコンパクト化を図ることができる。また、IC技術やマイクロ加工技術の長所を活用することにより、記録手段の長尺化や面状化(2次元化)が容易であり、記録手段のフルマルチ化及び高密度実装化も容易である。
【0007】
また、被記録部材の材質に対する要求も様々なものがあり、近年では、これらの要求に対する開発が進み、通常の被記録部材である紙(薄紙や加工紙を含む)や樹脂薄板(OHP等)などの他に、布、皮革、不織布、さらには金属等を被記録部材として用いる記録装置も使用されるようになっている。
【0008】
シリアルタイプのインクジェット記録装置は、一般に、記録を行なう記録手段(記録ヘッド)と、該記録手段を搭載して移動(主走査)するキャリッジ及びその駆動系と、被記録部材を保持搬送するためのプラテン及び搬送(紙送り)系と、記録手段のインク吐出性能を維持回復するための吐出回復処理系と、を備えている。
【0009】
このようなインクジェット記録装置においては、記録動作などで各吐出口からインク滴を吐出する際、被記録部材へ飛翔する主液滴の他に、副次的に発生する微細なインク滴から成るインクミストなどが発生することがある。そして、このインクミストなど、被記録部材に到達しなかったインクが浮遊して記録手段の吐出口面に付着し、この付着インクが結合成長して吐出口面に「濡れ」が生じ、この「濡れ」が吐出口から内部に入り、吐出口内で異なった色のインクが混じり合って混色し、記録された画像品位を劣化させることがある。また、混色は吐出性能を維持するために行なう吸引回復後にも起こりうる。
【0010】
また、記録を続けているうちに、記録ヘッドの温度上昇などにより、吐出口内にインクが供給されなくなるインク落ち現象が発生することがある。インク落ちが発生すると、その吐出口からのインク吐出ができないために画像に白スジが発生し、画像品位を劣化させる。この問題を回避するために、記録ヘッド温度や環境温度、記録ドット数などをモニターして吐出口面のインク滴による濡れの状態及び吐出口や共通液室内の状態などを予測することにより回復動作を実行する発明が数多くなされている。
【0011】
しかしながら、これらの発明は、吐出口面の濡れや吐出口のインク落ちを直接モニターするものではなく、また、濡れやインク落ち自体も吐出口面の汚れや吐出口の吐出安定性に左右されやすく、正確な予測は困難である。また、不吐出の検知として、インク吐出の際の昇温を利用するもの、被記録部材に印字したチェックパターンをセンサ等で読み取る方法が提案されている。しかし、前者は、間接的な検知であり、多吐出口ヘッドにおいて1つの吐出口のみが不吐出であった場合には検知できない場合があり、精度的に劣る。後者では、無駄に被記録部材を浪費したり、手間や時間がかかるという問題点がある。
【0012】
上記課題を解決するために特許文献1に開示されたような方法が提案されている。この特許文献1に開示された方法は、発光素子からの光を記録ヘッドの吐出口内のインクを通過させて受光素子に当てるようにして、この受光素子の出力により吐出口内のインクが正常であるか又は混色やインク落ちなどの異常が発生しているかを検知するものであった。この特許文献1によれば記録手段の吐出不良や混色などの画像品位劣化要因をリアルタイムで検知することができ、画像品位が低下する前に回復動作を行なうことができる。しかし、発光素子と受光素子を各ノズルの流路を横切るように設置するのは非常に複雑な構成となってしまい、製造工程上クリアすべき問題が多い。また、DNA(Deoxyribonucleic Acid)チップ製造装置のようにインクジェット方式を用いてDNAプローブを基板上に吐出するような形態においては1ドットずつが検体の判定に非常に重要な意味を持つため、吐出不良は致命的な欠点となってしまう。そのためにも確実に吐出不良を排除することが要求される。
【特許文献1】特開2000−085148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来のインクジェット記録装置では、吐出不良を検出しようとすると複雑な構成や多くの手間が必要となったり、被記録部材や吐出液を浪費する必要があるという問題点を有していた。
【0014】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構成で、かつ被記録部材や吐出液を浪費することなく確実に吐出不良を検出することができる液体吐出装置および液体吐出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、媒体へ液体を吐出する液体吐出装置であって、
液体を媒体上に吐出するための吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを撮影するための撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された前記吐出ヘッドの画像から、正常な場合の画像を差し引いて差分画像を生成する画像処理手段と、
前記画像処理手段により生成された差分画像に基づいて、前記吐出ヘッドの媒体との対向面であるフェイス面の状態および流路内の状態を検出し、吐出ヘッド内のノズルが吐出不良ノズルか否かを判定する判定手段とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影した吐出ヘッドの画像と正常な場合の画像との差分画像を生成することにより吐出不良ノズルを検出するようにしているので、簡単な構成で、しかも媒体や吐出液を浪費することなく吐出不良ノズルを確実に検出することが可能になり、不良ノズルからの吐出を未然に確実に防止し、回復動作や吐出動作、その他の不吐出対応を適宜行なえるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の説明においては、本発明の実施形態として、インクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体斜視図を示す。
【0019】
定盤59上にはY軸ステージ53およびガイドレール57、58が平行に固定されている。Y軸ステージ53およびガイドレール57、58の可動部分にはX軸ステージ54が取り付けられおり、X軸ステージ54はY方向に移動可能となっている。X軸ステージ54の可動部分にはチャックθステージ55が固定されており、さらにチャックθステージ55上面にはチャック56が固定されている。チャック56は図示しないポンプにチューブによってつながれており、ポンプが空気を吸引することで、被記録部材68はチャック56に吸着される。このチャック56にはCCD(Charge Coupled Device:電荷結合デバイス)カメラ14が取り付けられており記録ヘッド6のフェイス面全域を撮像できるようになっている。また、定盤59上に支柱65、66が固定されており、支柱65、66にはそれぞれブリッジ63、64が固定されている。ブリッジ63と64はステー62で固定されており、支柱65、66とブリッジ63、64の構造物の強度を保っている。さらに、ブリッジ63と64の間にはヘッドθステージ61が固定されており、ヘッドθステージ61には記録ヘッド6が固定されている。また、このインクジェット記録装置には、記録ヘッド6の清掃を行なうための回復ユニット(不図示)も設けられている。
【0020】
図2は記録ヘッド6をフェイス面側から見たものであり、マトリクス状にノズル1が配置されている。ここで、フェイス面とは、記録ヘッド6の被記録部材68との対向面のことである。これらのノズル1はそれぞれ独立した流路を持っており、紙面の裏面方向から吐出液をピペッターや分注装置によって供給できるように開口部を持った構成となっている。図3はノズル1近傍の詳細図であり、図3(a)はフェイス面側から見た図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。ノズル1には、ヒーターボード3、オリフィスプレート4が備えられていて、吐出液はインク供給穴5からノズル1内に供給される。オリフィスプレート4は透明であっても透明でなくてもよい。ただし透明でない場合にはCCDカメラ14によってはフェイス面のみしか撮像できず流路内は撮像できないことになる。
【0021】
図4はノズル1の流路内外に不吐出の原因となりうる気泡、異物が存在している状態を表したものである。図4(a)は流路内に塵埃等の異物が入ってしまった状態、図4(b)はフェイス面に塵埃等の異物が付着してしまった状態、図4(c)は流路内に気泡が存在している場合、図4(d)はフェイス面にワイピングの拭き残り液や増粘した吐出液の滓等の異物が付着してしまった場合を表している。本発明は画像処理を行なうことによって、吐出不良の原因となるこれらの気泡・異物を検出可能としている。
【0022】
図5は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御ブロック図である。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録装置は、図5に示されるように、インクを媒体上に吐出するための記録ヘッド6と、吐出コントローラ12と、CPU10と、CCDカメラ14と、画像処理部13と、操作部17と、メモリ11と、回復ユニット16と、回復コントローラ15とを備えている。
【0024】
装置全体は制御手段であるところのCPU10がメモリ11に格納されたプログラムを実行することによって制御される。CPU10は、ノズル1の流路内外の泡や異物の検出、吐出コントローラ12を介しての記録ヘッド6の制御、回復コントローラ15を介しての回復ユニット16の制御を行なう。図示していないが、CPU10は、記録ヘッド6と被記録部材68の相対運動の制御も行なう。回復ユニット16は、記録ヘッド6の吐出不良を回復させるための回復手段として機能する。また、回復コントローラ15は、CPU10において吐出不良ノズルが検出された場合、この吐出不良ノズルに対して回復ユニット16による回復処理を実施させる回復制御手段として機能する。
【0025】
CCDカメラ14からの出力画像は、画像処理部13に入力されて、所定の画像処理プログラムにより画像処理される。この画像処理部13では、CCDカメラ14によって撮像された記録ヘッド6のフェイス面の画像における所定の範囲(図4中エリアA)の画像から泡・異物のない正常なノズル1のエリアAの画像を差し引き、差分画像を生成している。その結果をCPU10へ出力することによってノズル1の流路内外の泡や異物の検出が行なわれる。つまり、CPU10は、画像処理部13により生成された差分画像に基づいて、記録ヘッド6のフェイス面の状態および流路内の状態を検出し、記録ヘッド内のノズルが吐出不良ノズルであるか否かを判定する判定手段として動作する。操作部17は、オペレータに通知する情報を表示したり、オペレータからの指示を入力するために用いられる。さらに、吐出コントローラ12は、CPU10において吐出ノズルが検出され、回復ユニット16によっても吐出不良が回復されなかった場合、当該ノズルからの吐出を禁止する吐出制御手段として機能する。
【0026】
図6は本実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。なお、ここでは同じ吐出液が複数のノズルに供給されており、そのような吐出液が複数あることを前提としている。
【0027】
描画処理がスタートすると、記録ヘッド6の回復(吸引・ワイプ)を行い(ステップ101)、CCDカメラ14によりノズルを撮像する(ステップ102)。ステップ101の処理は前回に吐出してから所定の時間を経過せずに印字開始した場合には必ずしも行なう必要はない。ステップ102においてCCDカメラ14の解像度が図4中エリアAにおいて泡・異物を検出するに足るものでない場合には撮像エリアを複数に分割する(例えば図2中の点線で示したエリアのように分割撮像する。)。また、記録ヘッド6のフェイス面と流路内の泡・異物をもれなく撮像する場合には、CCDカメラ14の被写界深度が浅い場合にはピントを振って撮像する。その場合オリフィスプレート4は透明である必要がある。
【0028】
次に、画像処理部13では、ステップ102において撮像された画像を各ノズルについてエリアAを切り出し、画像処理が行われ(ステップ103)、CPU10では、この画像処理の結果に基づいて、吐出液が充填されている全てのノズルについて泡・異物があるかどうかを判定、すなわち吐出不良ノズルであるかどうかを判定する(ステップ104)。
【0029】
その結果をもとに、同一液体が入ったノズルのうち吐出を行なうノズルを選択する(ステップ105)。同一液体について2つ以上吐出可能であると判定されたノズルがあった場合にはどちらを選択しても構わない。ステップ105において吐出ノズルが決定した後は、予備吐出(ステップ106)、描画(ステップ107)を行い、印字終了となる。
【0030】
一方、同一液体が入ったノズルの全てが吐出不良であるものがあった場合には、CPU17は、エラーメッセージと吐出不良ノズルのアドレスあるいは/および液種を操作部17に表示させる(ステップ108)。その時点でインクジェット記録装置の動作は途中停止する。次に、ステップ109においてはそのノズル内の液体と同じ液体を予備ノズルにピペッター等によって供給し、必要に応じて回復動作を行なう。その際、操作部17より液体を供給したノズルのアドレスと液種を入力する。ここで入力したノズルのアドレスと液種はステップ105において選択される吐出ノズルに追加され、同液体は被記録部材68上に本来吐出されるべき位置に吐出される。
【0031】
本実施形態のインクジェット記録装置によれば、CCDカメラ14により記録ヘッド6のフェイス面を撮影し、画像処理部13により撮影された画像から正常な場合の画像を差し引いて差分の画像を得ることにより、吐出不良ノズルの有無を判定するようにしている。従って、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、簡単な構成で確実に吐出不良ノズルを検出することが可能となり、検出された吐出不良ノズルの変わりに予備ノズルを使用することにより吐出不良を未然に防ぐことが可能となる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置について説明する。
【0033】
上記で説明した第1の実施形態は画像処理によって検出した吐出不良ノズルからの吐出を未然に防止し、予備ノズルで吐出させるというものであるが、本実施形態は検出した吐出不良ノズルに対して回復を行なうというものである。
【0034】
図7は本実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。なお、ここでは1ノズルにつき1液種が供給されていることを前提としている。
【0035】
描画処理がスタートすると、記録ヘッド6の回復(吸引・ワイプ)を行い(ステップ201)、ノズルを撮像する(ステップ202)。ステップ203の処理は前回に吐出してから所定の時間を経過せずに印字開始した場合には必ずしも行なう必要はない。ステップ202においてCCDカメラ14の解像度が図4中エリアAにおいて泡・異物を検出するに足るものでない場合には撮像エリアを複数に分割する。また、記録ヘッド6のフェイス面と流路内の泡・異物をもれなく撮像する場合には、CCDカメラ14の被写界深度が浅い場合にはピントを振って撮像する。その場合オリフィスプレート4は透明である必要がある。ステップ202において撮像した画像をエリアA内において画像処理することによって(ステップ203)、吐出液が充填されている全てのノズルについて泡・異物があるかどうかを判定、すなわち吐出不良ノズルであるかどうかを判定する。その結果から、吐出不良ノズルがない場合は予備吐(ステップ205)、描画(ステップ206)を行い、印字終了となる。
【0036】
ステップ204において吐出不良ノズルが有ると判定された場合、検出された吐出不良ノズルに対して回復処理が施される(ステップ207)。次にステップ202、203と同様にノズルを撮像し(ステップ208)、画像処理を行なう(ステップ209)。それによって吐出不良ノズルが吐出可能ノズルに回復できたかどうかを判定する(ステップ210)。ここでステップ208においてCCDカメラ14による撮像対象は記録ヘッド6のフェイス面全体である必要はなく、不良ノズルを網羅できていればよい。判定の結果全ての回復後ノズルが吐出可能となっていれば、ステップ205、206へと続く。
【0037】
全ての回復後ノズルが吐出可能となっていなければ、エラーメッセージと吐出不良ノズルのアドレスあるいは/および液種を操作部17に表示させる(ステップ211)。その時点で装置の動作は途中停止する。次にS14においてはそのノズル内の液体と同じ液体を予備ノズルにピペッター等によって供給し、必要に応じて回復動作を行なう。その際、操作部17より液体を供給したノズルのアドレスと液種を入力する。ここで入力したノズルのアドレスと液種はCPU10に入力され、同液体は被記録部材68上に本来吐出されるべき位置に吐出されることになる。続いてステップ205、206へ進み印字終了となる。
【0038】
なお、本実施形態においては回復処理を施すタイミングは描画前であったが、本発明は必ずしもそれだけを想定しているわけではない。例えば、回復処理と次回描画との間に大きなタイムラグがあっても、記録ヘッドの状態変化が吐出に関して問題にならないレベルであるならば、より具体的には、吐出液の増粘や環境中の塵埃、記録ヘッド内における吐出液からの気泡の発生が吐出に関して問題にならないレベルであるならば、記録ヘッド交換後、被記録部材の交換後、あるいは描画後であっても構わない。
【0039】
記録ヘッド交換前のハンドリングの際に、記録ヘッドに塵埃が付着してしまったり、ハンドリングの衝撃によってノズル内のメニスカスが破壊され、フェイス面に吐出液が漏れ出し、描画まで放置しておくことによって増粘・固化してしまうことがある。記録ヘッド交換後に画像処理情報を受けての回復動作を行なうことによって、上記のようなフェイス面の状態から生じうる吐出不良を回避できる。
【0040】
また、被記録部材交換時に、被記録部材から塵埃が発生してしまい、記録ヘッドのフェイス面に付着してしまうことがあるが、被記録部材交換後に画像処理情報を受けての回復動作を行なうことによって、記録ヘッドへの塵埃の付着から発生しうる吐出不良を回避できる。
【0041】
また、描画時に吐出液がミスト等によって記録ヘッドのフェイス面に付着してしまうことがある。それを長時間放置しておくことによって吐出液が増粘・固化してしまう場合がある。描画後に画像処理情報を受けて回復動作を行なうことによって、吐出液がフェイス面上で増粘・固化することがなくなり、次回描画時の吐出不良を回避できる。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態のインクジェット記録装置について説明する。
【0043】
上記で説明した第1、第2の実施形態では観察したノズルについて吐出不良ノズルであるか否かの判定を行なっているだけであり、そのため吐出不良ノズルがあった場合の対応は常に同じであった。それに対して、本実施形態では観察したノズルが吐出不良ノズルであるか否かだけでなく、同じ吐出不良ノズルでもその状態の判定を細分化することによって、ノズルへの対応を適宜選択しながら行なうというものである。それによって、吸引を行なわずに吐出不良ノズルへの対応を行なえる機会ができ、インクを浪費する機会が減ることになる。
【0044】
図8は本実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。なお、ここでは1ノズルにつき1液種が供給されていることを前提としている。
【0045】
描画処理がスタートすると、記録ヘッド6の回復(吸引・ワイプ)を行い(ステップ301)、ノズルを撮像する(ステップ302)。ステップ301の処理は前回に吐出してから所定の時間を経過せずに印字開始した場合には必ずしも行なう必要はない。ステップ302においてCCDカメラ14の解像度が図4中エリアAにおいて泡・異物を検出するに足るものでない場合には撮像エリアを複数に分割する。また、記録ヘッド6のフェイス面と流路内の泡・異物をもれなく撮像する場合には、CCDカメラ14の被写界深度が浅い場合にはピントを振って撮像する。その場合オリフィスプレート4は透明である必要がある。ステップ302において撮像された画像をエリアA内において画像処理することによって(ステップ303)、吐出液が充填されている全てのノズルについて、(1)流路内に異物があるかどうか、(2)流路内に気泡があるかどうか、(3)フェイス面に異物があるかどうか、を判定する。(1)(2)と(3)の区別はピント位置によって判定できる。(1)と(2)の区別は画像処理によって差分を取った後の画像について輪郭の周囲が暗部で内部が明部であるパターンのものは気泡と判定させ(図4(c)参照)、周囲及び内部の全てが暗部であるパターンのものは異物と判定させる(図4(a)参照)。画像処理後の差分画像がエリアAからはみ出してしまい、実際は気泡であってもそのように判定できなかった場合には、(1)のケースと判定して対応する。
【0046】
ステップ304において、流路内に異物があると判定されたノズルがあった場合、エラーメッセージと吐出不良ノズルのアドレスあるいは/および液種を操作部17に表示させる(ステップ305)。その時点で装置の動作は途中停止する。次にステップ306においてはそのノズル内の液体と同じ液体を予備ノズルにピペッター等によって供給し、必要に応じて回復動作を行なう。その際、操作部17より液体を供給したノズルのアドレスと液種を入力する。ここで入力したノズルのアドレスと液種はCPU10に入力され、同液体は被記録部材68上に本来吐出されるべき位置に吐出される。ステップ306に続いてまたはステップ304においてNOであった場合には、ステップ307に進み、流路内に気泡があるノズルがあるかどうかの判定を行なう。そのようなノズルが吐出を予定していたノズルの中に1つでもあれば、吸引およびワイプを行なう(ステップ308)。1つもなければ次にフェイス面に異物があるノズルがあるかどうかを見る(ステップ309)。そこで異物があればワイプのみを行い(ステップ310)、異物が無ければ予備吐(ステップ311)、描画(ステップ312)、印字終了となる。
【0047】
本実施形態では、CPU10において、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出された場合には、回復コントローラ15は、当該ノズルを含む範囲に対して吸引または加圧回復およびワイプ動作を実施するよう回復ユニット16に対して指示を行う。
【0048】
そして、CPU10において、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出されず、かつノズル近傍のフェイス面に異物が存在しているノズルが検出された場合には、回復コントローラ15は、当該ノズルを含む範囲に対してワイプ動作を実施するよう回復ユニット16に対して指示を行う。
【0049】
上記第1から第3の実施形態では、記録ヘッドの印字方式については特に言及していないが、本発明は記録ヘッドの印字方式に限定されるものではなく、熱エネルギーを発生して膜沸騰を生じせしめる電気熱変換体を備えたバブルジェット(登録商標)方式のヘッドや、ノズル内のインク室にピエゾ素子で圧力を加え、インク滴を噴射して記録する方式のヘッドに対しても同じように適用が可能である。
【0050】
さらに、上記第1から第3の実施形態では、記録媒体上にインクを吐出して文字や画像を形成するインクジェット記録装置に対して本発明を適用した場合について説明していたが、本発明は、液体を吐出可能な吐出ヘッドを備えることにより媒体へ液体を吐出する液体吐出装置であれば同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の全体斜視図である。
【図2】記録ヘッド6のフェイス面を表した図である。
【図3】ノズル1の詳細図である。
【図4】気泡、異物が存在しているノズルをフェイス面側から見た図である。
【図5】本発明の第1の実施形態インクジェット記録装置の制御ブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 ノズル
2 ノズル口
3 ヒーターボード
4 オリフィスプレート
5 供給穴
6 記録ヘッド
10 CPU
11 メモリ
12 吐出コントローラ
13 画像処理部
14 CCDカメラ
15 回復コントローラ
16 回復ユニット
17 操作部
53 Y軸ステージ
54 X軸ステージ
55 チャックθステージ
56 チャック
57、58 ガイドレール
59 定盤
61 ヘッドθステージ
63、64 ブリッジ
65、66 支柱
68 被記録部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体へ液体を吐出する液体吐出装置であって、
液体を媒体上に吐出するための吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを撮影するための撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された前記吐出ヘッドの画像から、正常な場合の画像を差し引いて差分画像を生成する画像処理手段と、
前記画像処理手段により生成された差分画像に基づいて、前記吐出ヘッドの媒体との対向面であるフェイス面の状態および流路内の状態を検出し、吐出ヘッド内のノズルが吐出不良ノズルか否かを判定する判定手段と、を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドのフェイス面に設けられたオリフィスプレートが透明である請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記流路内の状態とは、流路内の気泡、流路内の異物の有無であり、前記フェイス面の状態とはフェイス面に付着した異物の有無である請求項1または2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
吐出ヘッドの吐出不良を回復させるための回復手段と、
前記判定手段において吐出不良ノズルが検出された場合、該吐出不良ノズルに対して前記回復手段による回復処理を実施させる回復制御手段と、をさらに備えた請求項1から3のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記判定手段において吐出不良ノズルが検出され、前記回復手段によっても吐出不良が回復されなかった場合、当該ノズルからの吐出を禁止する吐出制御手段をさらに備えた請求項4記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記判定手段において、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出された場合には、前記回復制御手段は、当該ノズルを含む範囲に対して吸引または加圧回復およびワイプ動作を実施するよう前記回復手段に対して指示を行う請求項4記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記判定手段において、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出されず、かつノズル近傍のフェイス面に異物が存在しているノズルが検出された場合には、前記回復制御手段は、当該ノズルを含む範囲に対してワイプ動作を実施するよう前記回復手段に対して指示を行う請求項4記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記吐出ヘッドは、熱エネルギーを発生して膜沸騰を生じせしめる電気熱変換体を備えたバブルジェット(登録商標)方式のヘッドである請求項1から7のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出ヘッドは、ノズル内のインク室にピエゾ素子で圧力を加え、インク滴を噴射して記録する方式のヘッドである請求項1から7のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項10】
媒体へ液体を吐出する液体吐出方法であって、
液体を媒体上に吐出するための吐出ヘッドを撮影するステップと、
撮影された前記吐出ヘッドの画像から、正常な場合の画像を差し引いて差分画像を生成するステップと、
生成された前記差分画像に基づいて、前記吐出ヘッドの媒体との対向面であるフェイス面の状態および流路内の状態を検出し、吐出ヘッド内のノズルが吐出不良ノズルか否かを判定するステップと、を備えた液体吐出方法。
【請求項11】
前記流路内の状態とは、流路内の気泡、流路内の異物の有無であり、前記フェイス面の状態とはフェイス面に付着した異物の有無である請求項10の液体吐出方法。
【請求項12】
吐出不良ノズルが検出された場合、該吐出不良ノズルに対して回復処理を実施するステップをさらに備えた請求項10または11記載の液体吐出方法。
【請求項13】
吐出不良ノズルが検出され、回復処理を実施したにもかかわらず吐出不良が回復されなかった場合、当該ノズルからの吐出を禁止するステップをさらに備えた請求項12記載の液体吐出方法。
【請求項14】
検出された吐出不良ノズルに対して回復処理を実施するステップでは、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出された場合には、当該ノズルを含む範囲に対して吸引または加圧回復およびワイプ動作を実施する請求項12記載の液体吐出方法。
【請求項15】
検出された吐出不良ノズルに対して回復処理を実施するステップでは、吐出を予定していたノズルについて流路内に異物があるノズルが検出されず、かつ流路内に気泡があるノズルが検出されず、かつノズル近傍のフェイス面に異物が存在しているノズルが検出された場合には、前記回復制御手段は、当該ノズルを含む範囲に対してワイプ動作を実施するよう請求項12記載の液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−21910(P2007−21910A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207589(P2005−207589)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】