説明

液体吐出装置の制御方法および液体吐出装置

【課題】ノズルから吐出される液滴および記録紙等の媒体の無駄な消費を抑制しつつ、クリーニングを開始するための操作手段を操作することで、液滴吐出動作の不具合を解消することが可能な液体吐出装置の制御方法を提案する。
【解決手段】液体吐出装置は、液体吐出ヘッドのクリーニングを開始する操作手段が操作されると、ドット抜けが発生しているか否かを判別し、ドット抜けが発生していないと、前回の液滴吐出動作終了時から所定時間が経過する以前に操作手段が操作されたか否かを判別する。ドット抜けが発生している場合、および、ドット抜けは発生していないが所定時間が経過する以前に操作手段が操作された場合には、ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行い、ドット抜けが発生しておらずかつ所定時間が経過した後に操作手段が操作された場合には、通常クリーニングよりもノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出用の複数のノズルが配列される液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置の制御方法、および、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、インク滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドを備えており、印刷ヘッドは、複数のノズルが配列されるノズル形成面が下向きになるようにキャリッジに搭載されている。また、インクジェットプリンターの中には、マニュアル操作によって印刷ヘッドのクリーニングを開始するためのマニュアルクリーニングボタンを備えているものがあり、このインクジェットプリンターでは、マニュアルクリーニングボタンが押されると、各ノズルから一定量のインク滴を吐出させるフラッシング動作や、ノズルからインクを吸引するインク吸引動作、ノズル形成面を拭き取るためのワイピング動作等が実施される。
【0003】
マニュアルクリーニングボタンは、本来、インクの混色による色の不具合、インク滴の着弾位置のずれ、および/または、ドット抜け等の印刷不具合が発生してクリーニングが必要な場合に押されるべきものである。しかしながら、実際には、クリーニングが不要であるにもかかわらず、たとえば、毎朝のインクジェットプリンターの起動時に、不慣れなオペレーターが慣習的にマニュアルクリーニングボタンを押してクリーニングが実施されることもある。この場合には、クリーニングが不要であるにもかかわらず、所定量のインクが吐出されるため、インクを無駄に消費してしまう。
【0004】
そこで、インクの無駄な消費を抑制できる印刷ヘッドのクリーニング方法が本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のクリーニング方法では、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過する前にマニュアルクリーニングボタンが押されると、所定量のインク液をノズルから吐出させながら吸引を行う通常クリーニングを実施し、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過した後にマニュアルクリーニングボタンが押されると、通常クリーニングと比較してノズルから吐出させるインク液量を低減させた擬似クリーニングを実施している。
【0005】
すなわち、このクリーニング方法では、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過する前にマニュアルクリーニングボタンが押されたときには、オペレーターがノズルチェックパターン印刷等を行って実際に印刷不具合があることを確認した上で、マニュアルクリーニングボタンを押したものと推定して、通常クリーニングを実施し、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過した後にマニュアルクリーニングボタンが押されたときには、実際に印刷不具合があるか否かをオペレーターが確認せずに、マニュアルクリーニングボタンを押したものと推定して、擬似クリーニングを実施している。このクリーニング方法によれば、たとえば、毎朝のインクジェットプリンターの起動時に、マニュアルクリーニングボタンが押されても、擬似クリーニングが実施されるため、インクの無駄な消費を抑制することができる。
【0006】
なお、従来、ドット抜けが発生しているか否か(すなわち、目詰まりを起こしているノズルがあるか否か)を検査するインク滴吐出検査装置を備えるインクジェットプリンターが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のインクジェットプリンターでは、印刷ヘッドに対峙するヘッドキャップの中の吸収材にノズルから吐出される帯電インクが着弾する際の電流変化に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かの検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−50525号公報
【特許文献2】特開2009−190282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のクリーニング方法では、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過した後にマニュアルクリーニングボタンが押されると、擬似クリーニングが実施される。そのため、前回の印刷処理の終了時点から所定時間が経過した後に印刷を行う場合であって、ドット抜け等の印刷不具合を発生させる状況が印刷ヘッドに生じている場合には、マニュアルクリーニングボタンを押しても、印刷不具合を発生させないように印刷ヘッドをクリーニングすることができない場合が生じうる。この場合には、ノズルチェックパターン印刷等の印刷処理を行った後にマニュアルクリーニングボタンを押せば、通常クリーニングが実施されるため、印刷不具合を発生させないように印刷ヘッドをクリーニングすることが可能であるが、ノズルチェックパターン印刷等の印刷処理を行うと、記録紙を無駄に消費してしまう。
【0009】
そこで、本発明の課題は、ノズルから吐出される液滴の無駄な消費および記録紙等の媒体の無駄な消費を抑制しつつ、マニュアル操作でクリーニングを開始するための操作手段を操作することで、液滴吐出動作の不具合を解消することが可能な液体吐出装置の制御方法、および、液体吐出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の液体吐出装置の制御方法は、液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドのクリーニングをマニュアル操作で開始するための操作手段が操作されたときに、液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けが発生しているか否かを検査して、前記ドット抜けが発生しているか否かを判別するドット抜け判別ステップと、前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していないと判別された場合に、前回の液滴吐出動作終了時から所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたか否かを判別する経過時間判別ステップと、前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していると判別された場合、および、前記経過時間判別ステップで、前記所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたと判別された場合に、前記ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行う通常クリーニングステップと、前記経過時間判別ステップで、前記所定時間が経過した後に前記操作手段が操作されたと判別された場合に、前記通常クリーニングよりも前記ノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行う擬似クリーニングステップとを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の液体吐出装置の制御方法では、液体吐出ヘッドのクリーニングをマニュアル操作で開始するための操作手段が操作されたときに、ドット抜け判別ステップでドット抜けが発生していると判別されると、ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行っている。そのため、前回の液滴吐出動作終了時から操作手段が操作されるまでに所定時間が経過している場合であっても、記録紙等の媒体を消費することなく、ドット抜けを解消することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、ドット抜け判別ステップでドット抜けが発生していないと判別された場合であっても、経過時間判別ステップで所定時間が経過する以前に操作手段が操作されたと判別されると、通常クリーニングを行っている。この場合には、ドット抜けは発生していないが、オペレーターがノズルチェックパターン印刷等を行って、液滴の着弾位置のずれ等の液滴吐出動作の不具合が実際にあることを確認した上で、操作手段を操作したものと推定されるため、通常クリーニングを行うことで、液滴吐出動作の不具合を解消することが可能になる。
【0013】
さらに、本発明では、ドット抜け判別ステップでドット抜けが発生していないと判別された場合であって、かつ、経過時間判別ステップで所定時間が経過した後に操作手段が操作されたと判別された場合には、通常クリーニングよりもノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行っている。この場合には、ドット抜けは発生しておらず、かつ、液滴の着弾位置のずれ等の不具合が実際にあることをオペレーターが確認せずに操作手段を操作したものと推定され、クリーニングが不要であると推定されるため、擬似クリーニングを行うことで、ノズルから吐出される液滴の無駄な消費を抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、前記液体吐出ヘッドは、インク滴吐出用の複数の前記ノズルを有するインクジェットヘッドであり、前記経過時間判別ステップで、前回の印刷終了時から前記所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたか否かを判別している。この場合には、インクジェットヘッドを有する液体吐出装置において、ノズルから吐出されるインク滴の無駄な消費および記録紙の無駄な消費を抑制しつつ、マニュアル操作でクリーニングを開始するための操作手段を操作することで、印刷の不具合を解消することが可能になる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明の液体吐出装置は、液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドをクリーニングするクリーニング機構と、マニュアル操作で前記クリーニング機構を起動して前記クリーニングを開始するための操作手段と、前記操作手段が操作されたときに、複数の前記ノズルの中に液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けが発生しているか否かを検査する液滴吐出検査機構と、前回の液滴吐出動作終了時から前記操作手段が操作されるまでの経過時間を計測する計時手段と、前記液滴吐出検査機構での検査によって前記ドット抜けが検出されたとき、および、前記ドット抜けは検出されていないが前記計時手段で計測された前記経過時間が所定時間内であるときに、前記ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行うように前記クリーニング機構を制御し、かつ、前記液滴吐出検査機構での検査によって前記ドット抜けが検出されずかつ前記計時手段で計測された前記経過時間が前記所定時間を超えているときに、前記通常クリーニングよりも前記ノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行うように前記クリーニング機構を制御するクリーニング機構制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の液体吐出装置では、クリーニング機構制御手段は、操作手段が操作されたときに実行される液滴吐出検査機構での検査によってドット抜けが検出されると、通常クリーニングを行うようにクリーニング機構を制御している。そのため、前回の液滴吐出動作終了時から所定時間経過している場合であっても、記録紙等の媒体を消費することなく、ドット抜けを解消することが可能になる。また、本発明では、クリーニング機構制御手段は、ドット抜けは検出されていないが前回の液滴吐出動作終了時から操作手段が操作されるまでの経過時間が所定時間内であるときに、通常クリーニングを行うようにクリーニング機構を制御している。この場合には、ドット抜けは発生していないが、オペレーターがノズルチェックパターン印刷等を行って、液滴の着弾位置のずれ等の液滴吐出動作の不具合が実際にあることを確認した上で、マニュアルクリーニングボタンを押したものと推定されるため、通常クリーニングを行うことで、液滴吐出動作の不具合を解消することが可能になる。さらに、本発明では、クリーニング機構制御手段は、ドット抜けが検出されずかつ前回の液滴吐出動作終了時から操作手段が操作されるまでの経過時間が所定時間を超えているときに、擬似クリーニングを行うようにクリーニング機構を制御している。この場合には、ドット抜けは発生しておらず、かつ、液滴の着弾位置のずれ等の不具合が実際にあることをオペレーターが確認せずにマニュアルクリーニングボタンを押したものと推定され、クリーニングが不要であると推定されるため、擬似クリーニングを行うことで、ノズルから吐出される液滴の無駄な消費を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】インクジェットプリンターのプリンター機構部を示す概略斜視図。
【図3】ヘッドメンテナンスユニットを取り出して示す斜視図。
【図4】(A)はフラッシング動作時のインクジェットヘッドとヘッドキャップとの関係を示す図、(B)はインク吸引動作時のインクジェットヘッドとヘッドキャップとの関係を示す図。
【図5】ワイピング動作時のインクジェットヘッドとヘッドワイパーとの関係を示す図。
【図6】インク滴吐出検査時のインクジェットヘッドとヘッドキャップの関係を示す図。
【図7】インクジェットプリンターの制御部の一部を示す概略ブロック図。
【図8】操作スイッチが押されたときのクリーニング制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の液体吐出装置の実施の形態に係るインクジェットプリンター1およびその制御方法を詳細に説明する。
【0019】
(インクジェットプリンターの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンター1の外観斜視図である。図2は、インクジェットプリンター1の、プリンターケース2で覆われているプリンター機構部10を示す概略斜視図である。
【0020】
インクジェットプリンター1は、複数種類のカラーインクを用いてロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2を備えている。プリンターケース2の前面中央部分には、ロール紙装着用の開口部3が形成されている。開口部3は、上端に記録紙排出ガイド4が取り付けられた開閉蓋5によって封鎖されている。記録紙排出ガイド4とプリンターケース2の開口部3の上縁部分との間には、記録紙排出口6が形成されている。不図示のロックを解除して、記録紙排出ガイド4に指を掛けて手前に引くと開閉蓋5を図示の閉位置から、下端を中心として前方に倒れた開位置まで開けることができる。
【0021】
プリンターケース2の前面における開閉蓋5の右側部分には電源スイッチ7a、紙送りスイッチ7b、複数個の動作状態表示ランプ7cなどが配列されている。また、この部分には、後述のインクジェットヘッド14のクリーニングをマニュアル操作で開始するための操作手段としての操作スイッチ7dが配置されている。プリンターケース2の前面における開閉蓋5の左側部分には、プリンター前後方向に延びる縦長の長方形断面のインクカートリッジ装着部8の装着口8aが開口しており、このインクカートリッジ装着部8にインクカートリッジ9が装着されている。不図示のボタンを操作すると、ロックが解除されてインクカートリッジ9がばね力によって前方に押し出され、インクカートリッジ9を引き抜くことが可能となっている。
【0022】
プリンターケース2の内部に配置されるプリンター機構部10は、図2に示すように、金属製の底板11a、左右の側板11b、11cなどから構成されているプリンター本体フレーム11を備えている。プリンター本体フレーム11におけるプリンター前側の中央部分には、ロール紙収納部12が形成されている。開閉蓋5を開けると、ロール紙収納部12が前方に開口し、ロール紙の交換を行うことができる。
【0023】
ロール紙収納部12の上側には、プリンター幅方向にプラテン13が水平に架け渡されている。プラテン13の上側には、インク滴(液滴)吐出用の複数のノズル(インクノズル)が形成されたインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)14が配置されている。インクジェットヘッド14は、複数のインクノズルが配列されるノズル面14a(図4参照)を下側に向けた状態でキャリッジ15に搭載されている。
【0024】
キャリッジ15は、プリンター幅方向に水平に架け渡されたキャリッジガイド軸15aに沿ってプリンター幅方向に往復移動可能となっている。具体的には、キャリッジ15は、プラテン13から右側に外れた図2において実線で示すホームポジション15Aから、プラテン13の左側に外れた図2において二点鎖線で示す左端位置15Bまでの間を移動可能となっている。キャリッジ15には、モーターや、ベルトおよびプーリからなる伝達機構等で構成される駆動機構が連結されている。
【0025】
キャリッジ15には、カラーインクのインクポンプ、たとえば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクポンプ16a〜16dが搭載されている。各インクポンプ16a〜16dには、可撓性インクチューブ17a〜17dの一端がそれぞれに接続されている。可撓性インクチューブ17a〜17dの他端は、インクカートリッジ装着部8の後端側の部位に配置されている上下方向に延びる4本のインク供給路(図示省略)のそれぞれに接続されている。インク供給路のそれぞれは、インクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ9の側に連通している。インクカートリッジ9には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクを貯留しているインク袋が収納されており、これらのインク袋に貯留されている各色のインクが可撓性インクチューブ17a〜17dを介してインクポンプ16a〜16dに供給される。また、インクポンプ16a〜16dに供給されたインクがインクジェットヘッド14に供給されて、インクノズルから吐出される。
【0026】
ロール紙収納部12の右側の部位には、ヘッドメンテナンスユニット20が組み込まれている。キャリッジ15がホームポジション15Aに位置すると、キャリッジ15に搭載されているインクジェットヘッド14のノズル面14aがヘッドメンテナンスユニット20に対して上側から対峙した状態になる。ヘッドメンテナンスユニット20の詳細については、後述する。
【0027】
インクジェットプリンター1は、通常の印刷動作において、ロール紙収納部12に収納されているロール紙から繰り出される記録紙を不図示の搬送機構によってプラテン13の表面に沿って記録紙排出口6の側に搬送し、この搬送に同期させて、インクジェットヘッド14を左右に往復移動させながら記録紙上に印刷を行う。
【0028】
(ヘッドメンテナンスユニットの構成)
図3は、ヘッドメンテナンスユニット20を取り出して示す斜視図である。図4(A)は、フラッシング動作時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図であり、図4(B)は、インク吸引動作時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図である。図5は、ワイピング動作時のインクジェットヘッド14とヘッドワイパー25との関係を示す図である。図6は、インク滴吐出検査時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図である。
【0029】
ヘッドメンテナンスユニット20は、図3に示すように、全体としてプリンター前後方向に細長い直方体形状をしたユニットケース21を備えている。ユニットケース21の前側部分の上端には、2個のヘッドキャップ22a、22bを備えたヘッドキャップユニット22が配置されている。ヘッドキャップ22a、22bは、キャリッジ走査方向に隣接配置されている。また、ヘッドキャップ22a、22bの上方は開口しており、この開口部分は、ホームポジション15Aに配置されたインクジェットヘッド14のノズル面14aに対峙している。ヘッドキャップ22a、22bの内部には、インク吸収体23が配置されている。なお、本形態のインクジェットプリンター1は、図4に示すように、インクジェットヘッド14として、キャリッジ走査方向に並列配置された一対のインクジェットヘッド14A、14Bを備えている。
【0030】
ヘッドキャップユニット22の下側には、これらを昇降させるヘッドキャップ昇降機構(図示省略)が組み込まれている。また、ユニットケース21におけるヘッドキャップ昇降機構の後側の部分には、チューブポンプ(図示省略)およびチューブポンプ駆動用のモーター(図示省略)が組み込まれている。
【0031】
図4(B)に示すように、インクジェットヘッド14のノズル面14aをヘッドキャップ22a、22bが下側からキャッピングするキャッピング位置22Aでは、チューブポンプによって各インクノズルからインクを吸引するインク吸引動作が行われる。インク吸引動作で吸引された廃インクは、チューブポンプによって廃インクチューブ24を通って送り出される。廃インクチューブ24は、インクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ9に連通しており、インクカートリッジ9内の廃インク収納部に廃インクが回収される。また、図4(A)に示すように、ヘッドキャップ22a、22bがキャッピング位置22Aよりも下方に退避したフラッシング位置22Bでは、インク吸収体23に向けて各インクノズルから一定量のインク滴を吐出させるフラッシング動作が行われる。
【0032】
また、ヘッドメンテナンスユニット20には、インクジェットヘッド14のノズル面14aに付着している余剰のインクや紙粉などの付着物を拭き取るヘッドワイパー25を備えるワイピング機構26が搭載されている。ヘッドワイパー25は、ゴムなどの可撓性素材によって矩形の薄板状に形成されており、ユニットケース21におけるヘッドキャップユニット22の後側に配置されている。ヘッドワイパー25の前面は、ノズル面14aからインクを拭き取る拭取り面25aとなっている。ヘッドワイパー25の前後両側には、ノズル面14aからインクを拭き取ったときにヘッドワイパー25に付着したインクを吸収するフェルトやスポンジ等の液体吸収体が配置されている。また、ヘッドワイパー25には、ヘッドワイパー25を前後方向に往復移動させるヘッドワイパー駆動機構27が連結されている。
【0033】
ヘッドワイパー駆動機構27は、ヘッドワイパー25を保持する前後方向に長いワイパーケース28の裏面に前後方向に延びるように形成されたラックや、このラックに噛み合うピニオン、このピニオンに駆動源からの回転力を伝達する歯車列等を備えている。なお、ヘッドワイパー駆動機構27の駆動源は、チューブポンプ駆動用のモーターである。
【0034】
ヘッドワイパー25は、ヘッドメンテナンスユニット20のユニットケース21の上端縁部分に沿って、プリンター前後方向へ往復移動可能となっている。インクジェットヘッド14がホームポジション15Aにあるときに、ヘッドワイパー25がヘッドキャップユニット22の後側から前側に移動すると、図5に示すように、ヘッドワイパー25が後方に反った状態に撓みながら一対のインクジェットヘッド14A、14Bの一方のノズル面14aを摺動して、ノズル面14aを拭き取るワイピング動作が行われる。
【0035】
また、本形態のヘッドメンテナンスユニット20は、インクジェットヘッド14が有する複数のインクノズルの中にインク滴を吐出していない故障ノズルが存在する(すなわち、目詰まりを起こしているインクノズルが存在する)ドット抜けが発生しているか否かを検査する機能を兼ね備えている。
【0036】
図6に示すように、ヘッドキャップ22a、22bの内部には、インク吸収体23に導通可能な状態の金属棒31が配置されており、金属棒31の下端には、リード線32が接続されている。インクジェットヘッド14のインクノズルから帯電したインク滴が吐出され、帯電したインク滴がインク吸収体23に着弾すると、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流に変化が生じる。また、この電流の変化に基づいて、各インクノズルからインク滴が吐出されているか否かを判別することができる。ヘッドメンテナンスユニット20では、このように、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流の変化に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かを検査するインク滴吐出検査が行われる。本形態では、インク吸収体23、金属棒31およびリード線32等によってドット抜けが発生しているか否かを検査するインク滴吐出検査機構(液滴吐出検査機構)33が構成されている。
【0037】
(制御部の概略構成)
図7は、インクジェットプリンター1の制御部36の一部を示す概略ブロック図である。インクジェットプリンター1の制御部36は、ヘッドメンテナンスユニット20を制御するためのヘッドメンテナンスユニット制御部37を備えている。ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ROMやRAM等のメモリー(図示省略)およびCPU(図示省略)等を備えている。ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、インク滴吐出検査機構33が接続されており、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流の変化に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かを判別する。
【0038】
制御部36には、ドット抜け等の印刷の不具合を解消するためのクリーニングを行うクリーニング機構39が接続されている。クリーニング機構39は、インクポンプ16a〜16d等のフラッシング動作を行うための機構、チューブポンプおよびチューブポンプ駆動用のモーター等のインク吸引動作を行うための機構、および、ワイピング動作を行うためのワイピング機構26によって構成されている。ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、クリーニング機構39を駆動するクリーニング機構駆動回路40が接続されている。また、ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、操作スイッチ7dが接続されており、操作スイッチ7dが押されると所定の信号がヘッドメンテナンスユニット制御部37に入力される。
【0039】
また、ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、前回の印刷動作終了時(液滴吐出動作終了時)から操作スイッチ7dが押されるまでの経過時間を計測する計時手段としてのタイマー41が接続されている。タイマー41は、インクジェットヘッド14による印刷動作が終了した時点で経過時間の計測を開始し、操作スイッチ7dが押されると経過時間の計測を終了する。なお、インクジェットヘッド14による印刷には、記録紙への通常印刷の他、オペレーターが記録紙への印刷状態を確認するためのノズルチェックパターン印刷も含まれる。
【0040】
(操作スイッチ操作時のクリーニング制御)
図8は、操作スイッチ7dが押されたときのクリーニング制御の流れを示すフローチャートである。インクジェットプリンター1では、操作スイッチ7dが押されると、インク滴吐出検査が行われる。また、インク滴吐出検査が行われた後に、所定の条件下で、通常クリーニングまたは擬似クリーニングが実施される。本形態の通常クリーニングでは、インクノズルから所定量のインク滴を吐出させるフラッシング動作、インクノズルからインクを吸引するインク吸引動作およびヘッドワイパー25でノズル面14aを拭き取るワイピング動作が行われ、擬似クリーニングでは、通常クリーニングでの吐出量よりも少ない極微量のインク滴をインクノズルから吐出させる動作が行われる。以下、図8を参照しながら、操作スイッチ7dが押されたときのクリーニング制御の流れを説明する。
【0041】
オペレーターによって、操作スイッチ7dが押されると、制御部36は、ホームポジション15Aにおいて、インクジェットヘッド14のインクノズルから帯電したインク滴を吐出させて、インク滴吐出検査を実施し(ステップS1)、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ドット抜けが発生しているか否かを判別する(ステップS2)。
【0042】
ステップS2で、ドット抜けが発生していると判別された場合には、ドット抜けを解消するため、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、クリーニング機構駆動回路40を介してクリーニング機構39を制御して、通常クリーニングを実施する(ステップS3)。すなわち、クリーニング機構39は、フラッシング動作、インク吸引動作およびワイピング動作を行う。通常クリーニングが実施されると、クリーニング制御は終了する。
【0043】
一方、ステップS2で、ドット抜けが発生していないと判別された場合には、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、操作スイッチ7dが押される前の所定時間以内に前回の印刷が実施されていたか否かを判別する(ステップS4)。すなわち、ステップS4で、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、前回の印刷動作終了時から予め設定された所定時間が経過する以前に操作スイッチ7dが押されたか否かを判別する。具体的には、ステップS4で、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、タイマー41で計測された時間が所定時間を超えているか否かを判別する。
【0044】
ステップS4で、前回の印刷動作終了時から所定時間が経過する以前に操作スイッチ7dが押されたと判別された場合には、ドット抜けは発生していないが、オペレーターがノズルチェックパターン印刷を記録紙に行って、あるいは、記録紙への通常印刷を行って、インクの混色による色の不具合やインク滴の着弾位置のずれ等の印刷の不具合が実際にあることを確認した上で、操作スイッチ7dを押したものと推定される。そのため、この場合には、インク滴の着弾位置のずれ等の不具合を解消するため、ステップS3へ進んで、通常クリーニングを実施する。ここで、ステップS4における所定時間は、前回の印刷動作終了後にオペレーターが記録紙の印刷状態を確認して、操作スイッチ7dを押すまでの十分な時間であれば良く、たとえば、1時間であるが、30分や2時間であっても良い。
【0045】
ステップS4で、前回の印刷動作終了時から所定時間が経過した後に操作スイッチ7dが押されたと判別される場合には、着弾位置のずれ等の印刷の不具合が実際にあるか否かをオペレーターが確認せずに、操作スイッチ7dを押したものと推定される。そのため、この場合には、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、クリーニング機構駆動回路40を介してクリーニング機構39を制御して、擬似クリーニングを実施する(ステップS5)。すなわち、通常クリーニングでの吐出量よりも少ない極微量のインク滴をインクノズルから吐出させる。擬似クリーニングが実施されると、クリーニング制御は終了する。
【0046】
本形態では、ステップS1、S2は、ドット抜け判別ステップであり、ステップS4は、経過時間判別ステップであり、ステップS3は、通常クリーニングステップであり、ステップS5は、擬似クリーニングステップである。また、本形態では、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ドット抜けが検出されたとき、および、ドット抜けは検出されていないがタイマー41で計測された経過時間が所定時間内であるときに、通常クリーニングを行うようにクリーニング機構39を制御し、かつ、ドット抜けが検出されずかつタイマー41で計測された経過時間が所定時間を超えているときに、擬似クリーニングを行うようにクリーニング機構39を制御するクリーニング機構制御手段である。
【0047】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、操作スイッチ7dが押されると、インク滴吐出検査が実施され、このインク滴吐出検査の結果に基づいて、ドット抜けが発生していると判別されると、通常クリーニングを行っている。そのため、前回の印刷動作終了時から操作スイッチ7dが押されるまでに所定時間が経過している場合であっても、記録紙を消費することなく、ドット抜けを解消することが可能になる。また、インク滴吐出検査の結果に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かを判別しているため、ノズルチェックパターン印刷を行ってドット抜けが発生しているか否かを判別する場合と比較して、ドット抜けの発生有無の確認時間を短縮することが可能になる。
【0048】
また、本形態では、インク滴吐出検査の結果に基づいて、ドット抜けが発生していないと判別された場合であっても、前回の印刷動作終了時から予め設定された所定時間が経過する以前に操作スイッチ7dが押されたと判別されると、通常クリーニングを行っている。そのため、インク滴吐出検査では検出できないインク滴の着弾位置のずれ等の不具合を解消することが可能になる。さらに、本形態では、インク滴吐出検査の結果に基づいて、ドット抜けが発生していないと判別された場合であって、かつ、前回の印刷動作終了時から予め設定された所定時間が経過した後に操作スイッチ7dが押されたと判別された場合に、擬似クリーニングを行っている。そのため、インクノズルから吐出されるインク滴の無駄な消費を抑制することができる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態では、擬似クリーニングで、通常クリーニングでの吐出量よりも少ない極微量のインク滴をインクノズルから吐出させているが、擬似クリーニングで、インクノズルからインク滴を吐出させなくても良い。また、通常クリーニングでの吐出量よりもインクの消費量が少なくなるのであれば、擬似クリーニングで、インク吸引動作が行われても良い。また、擬似クリーニングで、極微量のインク滴をインクノズルから吐出させる代わりにワイピング動作を実施しても良い。すなわち、擬似クリーニングでは、通常クリーニングよりもインクノズルから吐出されるインク滴が低減されていれば良い。また、上述した形態では、通常クリーニングで、フラッシング動作とインク吸引動作とが行われているが、通常クリーニングでフラッシング動作のみが行われても良いし、インク吸引動作のみが行われても良い。また、通常クリーニングで、フラッシング動作が行われなくても良い。
【0050】
上述した形態では、インクジェットプリンター1を例に本発明の液体吐出装置の実施の形態を説明したが、本発明の構成が適用される液体吐出装置は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(面発ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材や色材等の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、精密ピペットとして試料をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置などであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 インクジェットプリンター(液体吐出装置)、7d 操作スイッチ(操作手段)、14 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)、33 インク滴吐出検査機構(液滴吐出検査機構)、37 ヘッドメンテナンスユニット制御部(クリーニング機構制御手段)、39 クリーニング機構、41 タイマー(計時手段)、S1・S2 ドット抜け判別ステップ、S3 通常クリーニングステップ、S4 経過時間判別ステップ、S5 擬似クリーニングステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドのクリーニングをマニュアル操作で開始するための操作手段が操作されたときに、液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けが発生しているか否かを検査して、前記ドット抜けが発生しているか否かを判別するドット抜け判別ステップと、
前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していないと判別された場合に、前回の液滴吐出動作終了時から所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたか否かを判別する経過時間判別ステップと、
前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していると判別された場合、および、前記経過時間判別ステップで、前記所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたと判別された場合に、前記ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行う通常クリーニングステップと、
前記経過時間判別ステップで、前記所定時間が経過した後に前記操作手段が操作されたと判別された場合に、前記通常クリーニングよりも前記ノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行う擬似クリーニングステップとを有していることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドは、インク滴吐出用の複数の前記ノズルを有するインクジェットヘッドであり、
前記経過時間判別ステップで、前回の印刷終了時から前記所定時間が経過する以前に前記操作手段が操作されたか否かを判別することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項3】
液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドをクリーニングするクリーニング機構と、
マニュアル操作で前記クリーニング機構を起動して前記クリーニングを開始するための操作手段と、
前記操作手段が操作されたときに、複数の前記ノズルの中に液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けが発生しているか否かを検査する液滴吐出検査機構と、
前回の液滴吐出動作終了時から前記操作手段が操作されるまでの経過時間を計測する計時手段と、
前記液滴吐出検査機構での検査によって前記ドット抜けが検出されたとき、および、前記ドット抜けは検出されていないが前記計時手段で計測された前記経過時間が所定時間内であるときに、前記ノズルから所定量の液滴を吐出させる通常クリーニングを行うように前記クリーニング機構を制御し、かつ、前記液滴吐出検査機構での検査によって前記ドット抜けが検出されずかつ前記計時手段で計測された前記経過時間が前記所定時間を超えているときに、前記通常クリーニングよりも前記ノズルから吐出させる液滴を低減させた擬似クリーニングを行うように前記クリーニング機構を制御するクリーニング機構制御手段を備えることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−201155(P2011−201155A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71027(P2010−71027)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】