説明

液体吐出装置

【課題】別途粘度計などを設けることなく液体の粘度を正確に算出する。
【解決手段】インクジェットヘッド1が、互いに連通しているインク流入流路72と第1排気流路73とを有している。サブタンク80が、インク供給管82を介してインク流入流路72と連通していると共に、第1インク帰還管83を介して第1排気流路73と連通している。インク供給管82には、ポンプ86が設けられており、第1インク帰還管83には第1バルブ87が設けられている。第1バルブ87を開いた状態で、ポンプ86を駆動することによって、サブタンク80、インク供給管82、インク流入流路72及び第1排気流路73の順にインクを循環させる。エンコーダ89によってポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数からインク粘度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から記録液体を吐出する記録液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、インクの粘度が、インク供給や吐出性能に大きく影響することが知られている。インクの粘度は温度依存性が高いため、温度を測定することによりインク粘度を推定して制御に用いることが多い。例えば、粘度を一定とするために温度一定とする装置が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、温度からインク粘度を推定する方法では、インクの経時劣化やインク組成の異なる複数のインクの混入に等を考慮したインク粘度の推定が困難となり、インク粘度を用いた正確な制御が困難であるという問題がある。一方、インク供給流路に毛管粘度計、落球粘度計、回転粘度計などの粘度計を設置し、インク粘度を直接測定する記録装置も開示されている(特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−50537号公報
【特許文献2】特開2009−172932号公報
【特許文献3】特開2002−67347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、毛管粘度計、落球粘度計、回転粘度計などを製品のインク流路に設けることは装置の大型化につながる。
【0005】
本発明の目的は、別途粘度計などを設けることなく液体の粘度を正確に算出することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、記録液体を貯溜するタンクと、流入口及び流出口を有する内部流路と、前記内部流路から記録液体を吐出する複数の吐出口に至る複数の個別記録液体流路とを含む記録液体吐出ヘッドと、前記流入口と前記タンクとを連通する供給流路と、前記流出口と前記タンクとを連通する帰還流路と、前記帰還流路における記録液体の流量を調整するバルブと、駆動により、前記タンクの記録液体を、前記供給流路を介して前記内部流路に供給するポンプと、前記ポンプを制御するポンプ制御手段と、前記バルブを制御するバルブ制御手段と、前記ポンプの駆動状態を検出する検出手段と、前記記録液体の粘度を算出する算出手段とを有している。前記算出手段は、前記バルブ制御手段が前記帰還流路に記録液体が流れるよう前記バルブを制御した状態において、前記ポンプ制御手段が前記ポンプを駆動することによって、前記タンクの記録液体を、前記供給流路、前記内部流路及び前記帰還流路の順に還流させているときの、前記検出手段が検出した前記ポンプの駆動状態に基づいて、記録液体の粘度を算出する。
【0007】
本発明によると、帰還流路を有する液体吐出装置において、液体を還流させているときのポンプの駆動状態から液体の粘度を算出するため、別途粘度計などを設けることなく液体の粘度を正確に算出することができる。
【0008】
本発明においては、前記ポンプは容積型のポンプであり、前記検出手段は、前記ポンプ制御手段が前記ポンプに所定の電力を供給した時の前記ポンプの回転数を検出する回転計であることが好ましい。これによると、容積型ポンプは作動流体の漏れ損失が少なく、インクの粘度とポンプの回転数の相関が明確に把握し易いので、簡易且つ正確にインク粘度を計測することができる。
【0009】
または、前記検出手段が、前記ポンプ制御手段が記録液体を単位時間当り所定流量で供給するように前記ポンプを駆動している時の前記ポンプに供給される電力を検出することが好ましい。これによると、検出手段をポンプの駆動回路内に組み込むなどにより小型化を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明においては、前記算出手段が記録液体の粘度を算出した後に、当該算出により得られた記録液体の粘度に基づいて、前記ポンプが供給する記録液体の単位時間当りの流量を、前記算出手段が記録液体の粘度を算出するときに還流させた記録液体の単位時間当りの流量よりも多く、且つ、前記吐出口から記録液体が漏れ出さない範囲になるように、前記ポンプ制御手段が前記ポンプを制御して記録液体を還流させる循環パージを行うことが好ましい。ここで循環パージとは内部流路に蓄積される異物や気泡を除去するために記録液体の還流を行う行為であり、吐出口から記録液体を漏れ出させることなく迅速に循環パージを行うことが理想的とされている。これによると、比較的低い流量で記録液体を還流させて記録液体の粘度を計測し、得られた粘度に基づいて吐出口から記録液体を漏れ出させることがない領域の高い流量で循環パージを行うため、記録液体を無駄に排出することなく記録液体吐出ヘッド内の異物除去や気泡除去を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0011】
このとき、前記算出手段による記録液体の粘度の算出と、前記循環パージが連続的に行われることがより好ましい。これによると、算出した記録液体の粘度をすぐに循環パージに用いることができるため、循環パージをより効率よく行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、内部流路が、複数の前記流出口を有しており、複数の前記帰還流路が、互いに異なる前記流出口に接続されており、前記バルブ制御手段が前記複数の帰還流路の中から選択した前記帰還流路に記録液体が流れるよう前記バルブを制御し、前記ポンプ制御手段が、前記バルブ制御手段が選択した前記帰還流路及び前記記録液体の粘度に基づいて前記ポンプを制御することが好ましい。これによると、内部流路の循環を効率的になすために複数の流出口を設け、選択した帰還流路に関する流路の流路抵抗と記録液体の粘度とに応じてポンプが制御されるため、効率よく内部流路の循環パージを行うことができる。
【0013】
さらに、本発明においては、前記記録液体吐出ヘッドが、前記吐出口から記録液体を吐出させる吐出エネルギーを記録液体に付与する複数のアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動手段とを備えており、前記駆動手段は、前記算出手段が算出した記録液体の粘度に基づいて、前記アクチュエータを駆動することが好ましい。これによると、現在の記録液体の粘度に基づいてアクチュエータの制御を行うため、当該粘度に適した吐出制御が可能となる。
【0014】
このとき、前記駆動制御手段は、前記算出手段が算出した記録液体の粘度が高くなるに連れて、記録液体に付与する吐出エネルギーが大きくなるように、前記アクチュエータを駆動することがより好ましい。これによると、現在の記録液体の粘度によって吐出エネルギーを調整することによって、記録液体の吐出特性を安定させることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記算出手段が、記録液体の還流が開始されて所定時間を経過した後に記録液体の粘度を算出することが好ましい。これによると、還流開始直後においては異物や乱流の影響により記録液体の流れが安定せず粘度の算出値がばらつくことがあるが、還流が安定した状態で記録液体の粘度の算出を行うことで、粘度の算出誤差を少なくすることができる。
【0016】
さらに、本発明においては、前記記録液体吐出ヘッドが、一方向に沿って前記複数の吐出口が配列されたライン式のヘッドであってもよい。ライン式のヘッドでは内部流路が複雑となり、インク供給や吐出制御においてインク粘度を用いた制御が必要となる場合が多い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、帰還流路を有する液体吐出装置において、液体を還流させているときのポンプの駆動状態から液体の粘度を算出するため、別途粘度計などを設けることなく液体の粘度を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッド及びインク供給ユニットの縦断面図である。
【図3】図2に示すインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図4】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図5】(a)図2に示すインクジェットヘッド及び供給ユニットについて第1インク循環が行われたときのインクの流れを示した図である。(b)図2に示すインクジェットヘッド及び供給ユニットについて第2インク循環が行われたときのインクの流れを示した図である。
【図6】図4に示す制御装置によるメンテナンス動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】変形例に係る制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、図1上方から下方に向かって用紙Pを搬送する搬送ユニット20と、搬送ユニット20によって搬送された用紙Pに、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1にインクを供給する4つのインク供給ユニット10と、制御装置16とを有している。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0021】
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1下方へと搬送される。
【0022】
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向にインク滴が吐出される複数の吐出口が配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。
【0023】
搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0024】
次に、図2を参照しつつ、インクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、リザーバユニット71と、ヘッド本体2とを有している。
【0025】
リザーバユニット71は、ヘッド本体2の上面に固定された、ヘッド本体2にインクを供給する流路形成部材である。また、リザーバユニット71は、その内部に、インク流入流路72、インク流出流路75、第1排気流路73及び第2排気流路74が形成されている。
【0026】
インク流入流路72は、リザーバユニット71の下面に開口する流入口72aを有している。インク供給ユニット10からのインクが流入口72aからインク流入流路72内に流入する。インク流入流路72は、流入したインクを一時的に貯溜するインクリザーバとしての機能を有する。インク流入流路72の内壁面にはリザーバユニット71の上外壁面まで貫通する穴72bが形成されている。穴72bは、可撓性を有する樹脂フィルム76により、リザーバユニット71の外側から封止されている。樹脂フィルム78は、インク流入流路72の内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム76は、インク流入流路72におけるインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。樹脂フィルム76を用いることによって、ダンパー機能を安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム76はインク流入流路72内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の外壁面には、樹脂フィルム76を覆うように板形状の規制部材77が固定されており、樹脂フィルム76がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、インク流入流路72のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム76が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材77には、大気連通孔77aが形成されており、規制部材77と樹脂フィルム76との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム76が変位し易くなっている。
【0027】
インク流出流路75は、フィルタ75aを介してインク流入流路72と連通していると共に、ヘッド本体2に連通している。通常印刷時においては、インク供給ユニット10からのインクが、インク流入流路72及びインク流出流路75を通過して、ヘッド本体2に供給される。
【0028】
第1排気流路73は、フィルタ75aの上流側においてインク流入流路72と連通していると共に、リザーバユニット71の下面に形成された第1流出口73aを介してインク供給ユニット10に接続されている。第1排気流路73の下方側内壁面にはリザーバユニット71の下外壁面まで貫通する穴73bが形成されている。穴73bは、可撓性を有する樹脂フィルム78により、リザーバユニット71の外側から封止されている。樹脂フィルム78は、第1排気流路73の内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム78は、第1排気流路73のインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。樹脂フィルム78を用いることによって、ダンパー機能を安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム78は第1排気流路73内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の下外壁面には、樹脂フィルム78を覆うように板形状の規制部材79が固定されており、樹脂フィルム78がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、第1排気流路73のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム78が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材79には、大気連通孔79aが形成されており、規制部材79と樹脂フィルム78との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム78が変位し易くなっている。後述の第1インク循環時においては、インク供給ユニット10からのインクが、インク流入流路72及び第1排気流路73を通過して、流出口73aからインク供給ユニット10に還流する(図5(a)参照)。
【0029】
第2排気流路74は、ヘッド本体2に連通していると共に、リザーバユニット71の下面に形成された第2流出口74aを介してインク供給ユニット10に接続されている。後述の第2インク循環時においては、インク供給ユニット10からのインクが、インク流入流路72、インク流出流路75、及び、ヘッド本体2を通過した後に、第2排気流路74を通過して、インク供給ユニット10に還流する(図5(b)参照)。
【0030】
図3に示すように、ヘッド本体2は、流路ユニット9と、アクチュエータユニット21とを有している。流路ユニット9は、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレートが互いに位置合わせしつつ積層された積層体であり、リザーバユニット71のインク流出流路75及び第2排気流路74と連通する共通インク室105a、及び、共通インク室105aに連通する複数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面には、主走査方向に配列された吐出口108が開口する吐出面2aが形成されている。個別インク流路132は、共通インク室105aからアパーチャ112及び圧力室110を経由して吐出口108に至る。
【0031】
アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる図示しない3枚の圧電シートから構成されているユニモフル型のアクチュエータである。最上層の圧電シートはその厚み方向に分極されており、その圧電シートの上面には、複数の個別電極が形成されている。分極された最上層の圧電シートとその下側の圧電シートとの間にはシート全面に形成された共通電極が介在している。このように、各圧力室110に対応する複数の個別電極と共通電極とが分極された圧電シートを挟持している。個別電極を共通電極と異なる電位にして最上層の圧電シートに分極方向の電界が印加されると、当該圧電シートにおける電界印加部分が圧電効果により歪む駆動活性部として働く。これにより、圧力室110内のインクに吐出口108からインク滴を吐出させる吐出エネルギーが付与される。
【0032】
通常印刷時においては、リザーバユニット71のインク流出流路75から供給されたインクが、共通インク室105aから各個別インク流路132に流れ込み吐出口108に至る。また、後述の第2インク循環時においては、リザーバユニット71のインク流出流路75から供給されたインクが、共通インク室105aから図示しない排出口を介してリザーバユニット71の第2排気流路74に流れ込む(図5(b)参照)。なお、リザーバユニット71と共通インク室105a間にインク流出流路75と第2排気流路74に接続するバイパス流路を設け、このバイパス通路の複数の箇所に共通インク室105aに連通する流路を設けることにより共通インク室105aへのインク供給を安定化するとともに、後述の第2インク循環時においてバイパス流路に記録液体を還流させるようにしても良い。
【0033】
インク供給ユニット10は、インクジェットヘッド1の下面の図1左方端部近傍に接続されており、接続されたインクジェットヘッド1にインクを供給する。インク供給ユニット10について詳細に説明する。図2に示すように、インク供給ユニット10は、サブタンク80と、サブタンク80に接続されたインク補給管81、インク供給管82、第1インク帰還管83及び第2インク帰還管84と、インク供給管82に設けられたポンプ86と、ポンプ86に設けられたエンコーダ89と、第1インク帰還管83に設けられた第1バルブ87と、第2インク帰還管84に設けられた第2バルブ88とを有している。
【0034】
サブタンク80は、インクジェットヘッド1に供給されるインクを貯溜する貯溜室を有しており、供給口81a、流出口82a、流入口83a、流入口84aが形成されている。供給口81aにはインク補給管81が、流出口82aにはインク供給管82が、流入口83aには第1インク帰還管83が、流入口84aには第2インク帰還管84がそれぞれ接続されている。
【0035】
インク供給管82は、一端において流出口82aを介してサブタンク80と連通しており、他端において流入口72aを介してリザーバユニット71と連通している。サブタンク80に貯溜されたインクが、インク供給管82を介してリザーバユニット71のインク流入流路72に供給される。ポンプ86は、サブタンク80に貯溜されたインクを、インク供給管82を介してリザーバユニット71に強制的に供給する供給手段として機能するダイヤフラムポンプ(容積型ポンプ)である。また、ポンプ86は、インク供給管82からサブタンク80にインクが流れるのを防止する逆止弁として機能する。エンコーダ89は、ポンプ86の回転数を制御装置16に出力する回転計である(図4参照)。
【0036】
第1インク帰還管83は、一端において流入口83aを介してサブタンク80と連通しており、他端において第1流出口73aを介してリザーバユニット71と連通している。第1バルブ87は、第1インク帰還管83におけるインク流量を調整する調整弁である。
【0037】
第2インク帰還管84は、一端において流入口84aを介してサブタンク80と連通しており、他端において第2流出口74aを介してリザーバユニット71と連通している。第2バルブ88は、第2インク帰還管84におけるインク流量を調整する調整弁である。
【0038】
制御装置16は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、図4に示すように、ヘッド制御部61と、バルブ制御部62と、ポンプ制御部63と、搬送制御部67と、粘度算出部64と、粘度記憶部65と、パージ制御部66とを有している。ヘッド制御部61は、各インクジェットヘッドのアクチュエータユニット21の駆動を制御することによって、吐出口108からのインク滴の吐出を制御する。このとき、ヘッド制御部61は、粘度記憶部65に記憶された各インクジェットヘッド1内のインク粘度(後述)が高くなるに連れて、圧力室110に付与される吐出エネルギーが高くなるように、つまり、アクチュエータユニット21の個別電極に供給される駆動電圧が高くなるように制御する。
【0039】
バルブ制御部62は、第1バルブ87及び第2バルブ88の駆動を制御する。ポンプ制御部63は、PWM(Pulse Width Modulation)信号を出力することによってポンプ86の駆動を制御する。搬送制御部67は、搬送ユニット20を制御する。印刷時においては、ポンプ制御部63がポンプ86を停止させ、バルブ制御部62が、第1バルブ87及び第2バルブ88を閉じる。この状態で、搬送制御部67が、用紙Pが所定の速度で搬送されるように搬送ユニット20を制御しつつ、搬送された用紙Pが各インクジェットヘッド1の下方を通過するときに、用紙Pに画像が形成されるタイミングで各吐出口108からインク滴が吐出されるように、ヘッド制御部61が各インクジェットヘッド1を制御する。なお、ポンプ86が停止している場合であっても、サブタンク80のインクは、インク供給管82を流れてリザーバユニット71に供給可能となっている。
【0040】
粘度算出部64は、各インクジェットヘッド1内のインク粘度を算出する粘度算出処理を行う。粘度算出処理は、インクジェットプリンタ101が起動されたとき、起動後一定時間を超えたとき、後述のメンテナンス動作が行われるとき、及び、ユーザから指示があったときに開始される。
【0041】
粘度算出処理が開始されると、粘度算出部64は、図5(a)に示すように、バルブ制御部62により第1バルブ87を開くと共に第2バルブ88を閉じた後に、ポンプ制御部63により所定の指令回転数でポンプ86を駆動する。これにより、ポンプ86に所定の電力が供給される。これにより、サブタンク80に貯溜されたインクが、単位時間当り所定流量でインク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給される。このとき、第1バルブ87が開いているため、インク流入流路72から第1排気流路73及び第1インク帰還管83を通過してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、インク流入流路72からインク流出流路75及び共通インク室105aを経由して各吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、インク流入流路72に供給されたインクが、インク流出流路75に流れ込みにくく、第1排気流路73及び第1インク帰還管83を順に通過してサブタンク80に帰還(還流)する第1インク循環が行われる。但し、ポンプ86によるインク供給量が多すぎる場合はインク流入流路72のインク圧力が高くなりすぎて、インク流入流路72に供給されたインクが、インク流出流路75に流れ込み、各吐出口108からインクが漏れ出すことになるので、後述するインク供給量の調整が必要となる。
【0042】
インク粘度が高くになるに連れて、ポンプ制御部63からのポンプ86への入力電力(低速回転に必要な電圧値)に対するポンプ86の出力(実際の回転数)が低下する。ここで、ポンプ86への入力電力は、PWM信号に関する平均デューティーで表される。粘度算出部64は、第1インク循環が開始されて所定時間経過してインクの流れが安定した後に、エンコーダ89により第1インク循環を行っているときのポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86への入力電力によりインク粘度を算出する。インク粘度の算出においては、第1インク循環を行う場合の流路系の流れ抵抗を加味したインク粘度とポンプ86への入力電力との関係を表した所定の式によってポンプ86の回転数とポンプ86への入力電力からインク粘度を算出してもよいし、予め記憶されたポンプ86の回転数とインク粘度との関係が示されたテーブルを参照してインク粘度を決定してもよい。粘度記憶部65は、粘度算出部64が算出したインク粘度を記憶する。なお、粘度算出部64は、検出したポンプ86の回転数が所定範囲を超えた場合には、ポンプ86に異常が発生したと判断し、粘度算出処理を中断して異常内容をユーザに通知する。また、粘度算出部64は、算出したインク粘度が所定範囲を超えた場合には、インクの破棄を促す内容をユーザに通知する。
【0043】
パージ制御部66は、各インク供給ユニット10のポンプ86、第1バルブ87及び第2バルブ88を、ポンプ制御部63及びバルブ制御部62により制御することによって、インクジェットヘッド1内の気泡除去及び異物除去を行う循環パージを実行するものである。図5を参照しつつ、循環パージについて説明する。循環パージが開始されると、第1循環動作及び第2循環動作が順に実行される。
【0044】
第1循環動作が開始されると、図5(a)に示すように、パージ制御部66は、バルブ制御部62により第1バルブ87を開くと共に第2バルブ88を閉じた後に、ポンプ制御部63によりポンプ86を駆動する。これにより、サブタンク80に貯溜されたインクが、単位時間当りの所定流量でインク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給される。これにより、インク流入流路72に供給されたインクが、インク流出流路75に流れ込むことなく、第1排気流路73及び第1インク帰還管83を順に通過してサブタンク80に還流する第1インク循環が行われる。このとき、ポンプ86に対する指令回転数(入力電力:インクの単位時間当りの所定流量に相当)は、第1インク循環の経路に関する流路抵抗及び粘度記憶部65に記憶されたインク粘度に基づいて、上述の粘度算出部64による粘度算出処理におけるポンプ86に対する指令回転数(入力電力)よりも高く、且つ、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲のうち最も高い回転数に決定される。吐出口108に形成されたインクのメニスカス耐圧はインク粘度と共に高くなるため、第2インク循環に係るポンプ86の回転数は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度が高くなるに連れて高くなるように決定される。
【0045】
第1インク循環が行われることによって、インク流入流路72内に滞留している気泡や異物、特にフィルタ75a上に滞留している気泡や異物が、インクと共に第1排気流路73及び第1インク帰還管83を順に通過してサブタンク80にトラップされる。
【0046】
なお、第1インク循環を行っているときは、印刷時と比較してインク流入流路72及び第1排気流路73内のインク圧が高くなるため、インク流入流路72の樹脂フィルム76が規制部材77に密着すると共に、第1排気流路73の樹脂フィルム78が規制部材79に密着する。パージ制御部66は、第1インク循環が所定時間行われると、ポンプ制御部63を介してポンプ86を停止し、その後、バルブ制御部62を介して第1バルブ87を閉じる。以上で、第1循環動作が完了する。なお、第1インク循環が実行される時間は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度が高くなるに連れて長くする。
【0047】
続いて、第2循環動作が開始されると、制御装置16は、図5(b)に示すように、バルブ制御部62により第1バルブ87を閉じると共に第2バルブ88を開いた後に、ポンプ制御部63によりポンプ86を駆動する。これにより、サブタンク80に貯溜されたインクが、単位時間当り所定流量でインク供給管82、インク流入流路72及びインク流出流路75を介してヘッド本体2の共通インク室105aに強制的に供給される。このとき、第2バルブ88が開いているため、共通インク室105aから第2排気流路74及び第2インク帰還管84を経由してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、共通インク室105aから各個別インク流路132を経由して吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、共通インク室105aに供給されたインクが、各個別インク流路132に流れ込むことなく、第2排気流路74及び第2インク帰還管84を順に通過してサブタンク80に帰還する第2インク循環が行われる。このとき、第2インク循環に係るポンプ86に対する指令回転数(インクの単位時間当りの所定流量に相当)は、第2インク循環の経路に関する流路抵抗及び粘度記憶部65に記憶されたインク粘度に基づいて、上述の粘度算出部64による粘度算出処理におけるポンプ86に対する指令回転数よりも高く、且つ、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲のうち最も高い回転数に決定される。吐出口108に形成されたインクのメニスカス耐圧はインク粘度と共に高くなるため、第2インク循環に係るポンプ86の回転数は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度が高くなるに連れて高くなるように決定される。
【0048】
第2インク循環が行われることによって、インク流出流路75及び共通インク室105a内に滞留している気泡及び異物が、インクと共に第2排気流路74及び第2インク帰還管84を順に通過してサブタンク80にトラップされる。
【0049】
なお、第2インク循環を行っているときは、インク流入流路72内のインク圧が高くなるため、インク流入流路72の樹脂フィルム76が規制部材77に密着する。パージ制御部66は、第2インク循環が所定時間行われると、ポンプ制御部63によりポンプ86を停止し、その後、バルブ制御部62により第2バルブ88を閉じる。以上で、第2循環動作が完了する。なお、第1インク循環と同様に、第2インク循環が実行される時間は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度が高くなるに連れて長くする。以上で循環パージが完了する。
【0050】
次に、図6を参照しつつメンテナンス動作について説明する。メンテナンス動作は、インクジェットヘッド1における異物除去及び気泡除去を行う動作であり、インクジェットプリンタ101が起動されたとき、待機時間が一定時間を超えたとき、及び、ユーザから指示があったときに開始される。図6に示すように、メンテナンス動作が開始されると、粘度算出処理及び循環パージが連続して行われる。粘度算出処理が開始されると、粘度算出部64が、バルブ制御部62により第1バルブ87を開くと共に第2バルブ88を閉じる第1インク循環の準備を行う(ステップS101:以下、S101と称す他のステップも同様)。粘度算出部64が、ポンプ制御部63によりポンプ86を低速回転で駆動して第1インク循環を開始し(S102)。粘度算出部64は、第1インク循環に係るインクの流れが安定する所定時間が経過するまで第1インク循環を継続する(S103)。ここで、ポンプ86の低速回転は、予想される全てのインクの粘度範囲において、インクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲の回転であって、その範囲で比較的高回転となるように設定されることが望ましい。粘度算出部64は、インクの流れが安定した後に、エンコーダ89を介して第1インク循環を行っているときのポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86への入力電力からインク粘度を算出すると共に、算出したインク粘度を粘度記憶部65に記憶する(S104)。
【0051】
続いて、パージ制御部66が、循環パージを行うために、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度に基づいて、第1インク循環及び第2インク循環に関するポンプ86の回転数をそれぞれ決定し、ポンプ制御部63により、決定した回転数に係る高速回転でポンプ86を駆動して第1インク循環を行う(S106)。ここで、ポンプ86の高速回転は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度と第1インク循環に係る流路抵抗より把握されるインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲の回転であって、その範囲で比較的高回転となるように設定される。さらに望むべきはその範囲で上限となる回転に設定される。パージ制御部66は、第1インク循環に係る気泡除去及び異物除去が完了する所定時間が経過するまで第1インク循環を継続する(S107)。パージ制御部66は、所定時間が経過した後にポンプ86を停止する(S108)。
【0052】
さらに、パージ制御部66は、バルブ制御部62により第2バルブ87を開くと共に第1バルブ88を閉じる第2インク循環の準備を行う(S109)。パージ制御部66が、ポンプ制御部63により、先に決定した回転数に係る高速回転でポンプ86を駆動して第2インク循環を行う(S110)。ここで、ポンプ86の高速回転は、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度と第2インク循環に係る流路抵抗より把握されるインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲の回転であって、その範囲で比較的高回転となるように設定される。さらに望むべきはその範囲で上限となる回転に設定される。パージ制御部66は、第2インク循環に係る気泡除去及び異物除去が完了する所定時間が経過するまで第2インク循環を継続する(S111)。パージ制御部66は、所定時間が経過した後にポンプ86を停止する(S112)。以上で、メンテナンス動作を完了する。
【0053】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、粘度算出部64が、粘度算出処理において、第1インク循環を行っているときのポンプ86の駆動状態からインク粘度を算出するため、別途粘度計などを設けることなくインク粘度を正確に算出することができる。これにより、インクジェットプリンタ101の小型化を図ることができる。
【0054】
また、ポンプ86が容積型ポンプであり、粘度算出部64は、エンコーダ89を介して第1インク循環を行っているときのポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86への入力電力からインク粘度を算出するため、簡易且つ正確にインク粘度を計測することができる。
【0055】
また、循環パージにおける第1インク循環に係るポンプ86への入力電力が、粘度算出処理におけるポンプ86への入力電力よりも高く、且つ、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲に決定される。このため、インクを無駄に排出することなくインクジェットヘッド1内の異物除去や気泡除去を効率的に行うことができる。粘度算出処理と循環パージが連続的に行われることにより、算出した記録液体の粘度をすぐに循環パージに用いるので循環パージをより効率よく行うことができる。
【0056】
さらに、循環パージを第1インク循環及び第2インク循環に分割して行うため、第1インク循環及び第2インク循環それぞれに応じた回転数でポンプ86を回転させることによって、インクジェットヘッド1内の気泡除去及び異物除去を効率的に行うことができる。
【0057】
加えて、ヘッド制御部61が、粘度記憶部65に記憶された各インクジェットヘッド1内のインク粘度が高くなるに連れて、圧力室110のインクに付与する吐出エネルギーが高くなるように、アクチュエータユニット21の個別電極に供給される駆動電圧を制御する。このように、現在のインク粘度によって吐出エネルギーが調整されるため、インクの吐出特性を安定させ、高品質な画像を印刷することができる。
【0058】
さらに、粘度算出部64が、第1インク循環が開始されて所定時間経過してインクの流れが安定した後に、ポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86への入力電力からインク粘度を算出する。第1インク循環開始直後においては異物や乱流の影響によりインクの流れが安定せずインク粘度の算出値がばらつくことがあるが、インクの流れが安定した状態でインク粘度の算出を行うため、インク粘度の算出誤差を少なくすることができる。
【0059】
<変形例>
上述の実施形態においては、粘度算出部64が、エンコーダ89を介して第1インク循環を行っているときのポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86への入力電力からインク粘度を算出する構成であるが、ポンプ86の駆動状態を他の手段によって検出し、その検出結果に基づいてインク粘度を算出してもよい。例えば、図7に示すように、エンコーダ89の替りに、ポンプ86に供給される電力、すなわち、ポンプ86が消費する電力を検出する電力検出装置189を設け、粘度算出部164が、電力検出装置189が検出した電力からポンプ86のトルクを測定し、測定したトルクに基づいてインク粘度を算出してもよい。このとき、粘度算出部164は、ポンプ86の回転が安定した状態において電力検出装置189が検出した電力からインク粘度を算出してもよいし、ポンプ86が回転を開始するときの電力検出装置189が検出した電力の立ち上がりカーブからインク粘度を算出してもよい。なお、ポンプ86は容積型以外のポンプ(例えば、インペラポンプ)を使用してもよい。また容積型のポンプはチューブポンプでもよい。
【0060】
これによると、機械的な動作を行わない電力検出装置189を用いるため、装置の小型化を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、循環パージにおける第2インク循環に係るポンプ86への入力電力が、粘度算出処理におけるポンプ86への入力電力よりも高く、且つ、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲のうち最も高い回転数に決定される構成であるが、循環パージにおける第2インク循環に係るポンプ86に対する指令回転数は、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて吐出口108からインクが漏れ出さない範囲であればいずれの回転数に決定されてもよい。または、循環パージにおける第2インク循環に係るポンプ86への入力電力は、インク粘度によらず一定であってもよい。
【0062】
また、上述の実施形態においては、循環パージを第1インク循環及び第2インク循環に分割して行う構成であるが、第1バルブ87及び第2バルブ88を共に開き、第1インク循環及び第2インク循環を同時に行う構成であってもよい。また、インクジェットヘッドの内部流路の構成によって、1つの循環流路を形成可能な構成とし、当該循環流路のみで循環パージを行う構成であってもよいし、3以上の循環流路を形成可能な構成とし、これら循環流路を選択的に切り替えて循環パージを行う構成であってもよい。
【0063】
加えて、上述の実施形態においては、ヘッド制御部61が、粘度記憶部65に記憶されたインク粘度に基づいて、圧力室110に付与される吐出エネルギーを調整する構成であるが、ヘッド制御部が、インク粘度に応じて、アクチュエータユニット21を駆動する駆動信号の出力タイミングや駆動信号の波形を変化させる構成であってもよい。または、ヘッド制御部が、インク粘度に応じてアクチュエータユニット21の制御内容を変化させない構成であってもよい。
【0064】
また、上述の実施形態においては、粘度算出部64は、算出したインク粘度が所定範囲を超えた場合には、インクの破棄を促す内容をユーザに通知する構成であるが、算出したインク粘度が所定範囲を超えた場合には、新鮮なインクをサブタンク80に供給する構成であってもよい。または、サブタンク80のインクの温度をコントロールする装置を有していれば、算出したインク粘度が許容値より高い場合には、サブタンク80のインクの温度を高くし、算出したインク粘度が許容値より低い場合には、サブタンク80のインクの温度を低くしてもよい。さらには、算出したインク粘度が許容値より高い場合には、サブタンク80のインクに希釈液を注入する構成であってもよい。
【0065】
さらに、上述の実施形態においては、粘度算出部64が、第1インク循環が開始されて所定時間経過してインクの流れが安定した後に、ポンプ86の回転数を検出し、検出した回転数とポンプ86に対する指令回転数との差からインク粘度を算出する構成であるが、インク粘度の算出タイミングは任意のものであってよい。例えば、第1インク循環が開始された直後にインク粘度を算出してもよい。
【0066】
加えて、上述の実施形態では、第1インク循環及び第2インク循環の切り替えにおいて、第1バルブ87及び第2バルブ88を開くとは、当該バルブを全開にすることを意味しているが、第1バルブ87及び第2バルブ88を開くときに、当該バルブを半開にしてインク流量を調整する構成であってもよい。
【0067】
また、上述の実施形態においては、アクチュエータユニット21がユニモフル型の圧電アクチュエータとなっているが、アクチュエータユニットは、バイモルフ型の圧電アクチュエータであってもよいし、発熱素子を備えたサーマル方式のアクチュエータなど、他の方式のアクチュエータであってもよい。
【0068】
本発明は、インク以外の液滴を吐出する他の液体吐出装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェットヘッド
16 制御装置
21 アクチュエータユニット
61 ヘッド制御部
62 バルブ制御部
63 ポンプ制御部
64、164 粘度算出部
65 粘度記憶部
66 パージ制御部
67 搬送制御部
72 インク流入流路
72a 流入口
73 排気流路
73a 流出口
74 排気流路
74a 流出口
75 インク流出流路
80 サブタンク
81 インク補給管
82 インク供給管
83 第1インク帰還管
84 第2インク帰還管
86 ポンプ
87 第1バルブ
88 第2バルブ
89 エンコーダ
101 インクジェットプリンタ
108 吐出口
110 圧力室
132 個別インク流路
189 電力検出装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液体を貯溜するタンクと、
流入口及び流出口を有する内部流路と、前記内部流路から記録液体を吐出する複数の吐出口に至る複数の個別記録液体流路とを含む記録液体吐出ヘッドと、
前記流入口と前記タンクとを連通する供給流路と、
前記流出口と前記タンクとを連通する帰還流路と、
前記帰還流路における記録液体の流量を調整するバルブと、
駆動により、前記タンクの記録液体を、前記供給流路を介して前記内部流路に供給するポンプと、
前記ポンプを制御するポンプ制御手段と、
前記バルブを制御するバルブ制御手段と、
前記ポンプの駆動状態を検出する検出手段と、
前記記録液体の粘度を算出する算出手段とを有し、
前記算出手段は、前記バルブ制御手段が前記帰還流路に記録液体が流れるよう前記バルブを制御した状態において、前記ポンプ制御手段が前記ポンプを駆動することによって、前記タンクの記録液体を、前記供給流路、前記内部流路及び前記帰還流路の順に還流させているときの、前記検出手段が検出した前記ポンプの駆動状態に基づいて、記録液体の粘度を算出することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ポンプは容積型のポンプであり、
前記検出手段は、前記ポンプ制御手段が前記ポンプに所定の電力を供給した時の前記ポンプの回転数を検出する回転計であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記ポンプ制御手段が記録液体を単位時間当り所定流量で供給するように前記ポンプを駆動している時の前記ポンプに供給される電力を検出することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記算出手段が記録液体の粘度を算出した後に、当該算出により得られた記録液体の粘度に基づいて、前記ポンプが供給する記録液体の単位時間当りの流量を、前記算出手段が記録液体の粘度を算出するときに還流させた記録液体の単位時間当りの流量よりも多く、且つ、前記吐出口から記録液体が漏れ出さない範囲になるように、前記ポンプ制御手段が前記ポンプを制御して記録液体を還流させる循環パージを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記前記算出手段による記録液体の粘度の算出と、前記循環パージが連続的に行われることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記内部流路は、複数の前記流出口を有しており、
複数の前記帰還流路が、互いに異なる前記流出口に接続されており、
前記バルブ制御手段が前記複数の帰還流路の中から選択した前記帰還流路に記録液体が流れるよう前記バルブを制御し、
前記ポンプ制御手段が、前記バルブ制御手段が選択した前記帰還流路及び前記記録液体の粘度に基づいて前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記記録液体吐出ヘッドが、
前記吐出口から記録液体を吐出させる吐出エネルギーを記録液体に付与する複数のアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する駆動手段とを備えており、
前記駆動手段は、前記算出手段が算出した記録液体の粘度に基づいて、前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記駆動制御手段は、前記算出手段が算出した記録液体の粘度が高くなるに連れて、記録液体に付与する吐出エネルギーが大きくなるように、前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記算出手段は、記録液体の還流が開始されて所定時間を経過した後に記録液体の粘度を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記記録液体吐出ヘッドは、一方向に沿って前記複数の吐出口が配列されたライン式のヘッドであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−110863(P2011−110863A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270529(P2009−270529)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】