説明

液体吐出装置

【課題】加湿液タンク内における不揮発性成分の量が多くなることによる加湿機能の低下を抑制する。
【解決手段】吐出面10aと対向する吐出空間S1がキャップ40によって封止されている。加湿ポンプ53を正方向に駆動することによって、吐出空間S1内の空気が開口51a、チューブ55,56を介して水タンク54を通過して加湿される。加湿された空気がチューブ57及び開口51bを介して吐出空間S1に流れ込む。水タンク54の不揮発性成分の量が規定量を超えたとき、加湿ポンプ53を逆方向に駆動することで、水タンク54に貯溜された水がチューブ55,56を介して開口51aから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する吐出口を有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのノズル内のインクが増粘するのを防止するために、ノズルが開口するノズル面(吐出面)を気密に封止するキャップ内と、水(加湿液)を貯溜している水タンク(加湿液タンク)と連通させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、水タンクが貯溜する水によって加湿された空気がキャップ内に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術によると、水タンクに補給される水に不揮発性成分(防腐剤の成分)が含まれていると、水タンク内の水の蒸発と水の補給とが繰り返されることによって水タンク内における不揮発性成分の量が多くなる。これにより、水タンク内の不揮発性成分の濃度が高くなって蒸気発生機能が低下し、加湿された空気を効率よく生成することができなくなる。
【0005】
本発明の目的は、加湿液タンク内における不揮発性成分の量が多くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、不揮発性成分を含み外部から補給された加湿液を貯溜する加湿液タンクと、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間に対して封止する封止状態、及び、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態を取り得るキャップ手段と、前記加湿液タンクに貯溜された加湿液により加湿された加湿空気を、前記封止状態となっているときの前記吐出空間に供給する加湿空気供給手段と、前記加湿液タンクに貯溜された加湿液における前記不揮発性成分の量が第1所定量以上になっているか否かを判断する判断手段と、前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断したとき、前記加湿液タンクに貯溜された加湿液の少なくとも一部を外部に排出する排出手段とを備えている。
【0007】
本発明によると、不揮発性成分の量が第1所定量以上となったときに加湿液タンクに貯溜された加湿液の少なくとも一部が外部に排出されるため、加湿液タンク内における不揮発性成分の量が多くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記判断手段は、前記加湿空気供給手段が前記加湿空気を所定量供給する毎に前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると判断し、前記排出手段は、前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断する毎に第2所定量の前記加湿液を排出することが好ましい。これによると、不揮発性成分の量が第1所定量以上になっているか否かを容易に判断することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記加湿液タンクに前記加湿液を補給する補給手段をさらに備えており、前記判断手段は、前記補給手段による前記加湿液の総補給量に基づいて、前記不揮発性成分の量が所定値以上になっているか否かを判断することが好ましい。これによると、不揮発性成分の量を正確に把握することができる。
【0010】
このとき、前記排出手段は、前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断し、且つ、前記補給手段による前記加湿液の補給が開始される直前に前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を外部に排出することがより好ましい。これによると、不揮発性成分が濃縮された状態で加湿液が排出され、排出後に加湿液が補給されるため、補給された加湿液が無駄に排出されるのを抑制することができる。
【0011】
また、本発明において、前記加湿液タンクは、底面近傍に開口した排出口を有しており、前記排出手段は、前記排出口を介して前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を外部に排出することが好ましい。これによると、加湿液タンク内の加湿液を効率よく排出することができる。
【0012】
さらに、本発明においては、前記吐出面又は前記キャップ手段に、前記封止状態となっているときの前記吐出空間と連通する流入口及び流出口が形成されており、前記加湿空気供給手段は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記加湿空気を、前記流入口を介して前記吐出空間に流入させると共に、前記流出口を介して前記吐出空間から流出した前記加湿空気を前記加湿液タンクに帰還させることが好ましい。これによると、加湿空気を循環させることができるため、加湿液の消費量を低減することができる。
【0013】
加えて、本発明において、前記加湿液タンクは、貯溜された加湿液と接する上流口及び当該加湿液と接しない下流口を有しており、前記加湿空気供給手段は、前記下流口から前記加湿空気が排出されるように、前記上流口を介して前記加湿液タンクに強制的に空気を供給するポンプを有していることが好ましい。これによると、簡単な構成で加湿空気を生成及び供給することができる。
【0014】
空気生成手段のポンプを利用して加湿液を加湿液タンク外に排出することができるため、液体吐出装置の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
このとき、前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液が前記排出手段により外部に排出される直前に、前記ポンプが前記加湿液タンクに強制的に空気を供給することが好ましい。また、本発明においては、前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液が前記排出手段により外部に排出される直前に、前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を攪拌する攪拌手段をさらに備えていることが好ましい。これらによると、加湿液タンクの底に堆積した不揮発性成分を効率よく外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、不揮発性成分の量が第1所定量以上となったときに加湿液タンクに貯溜された加湿液の少なくとも一部が外部に排出されるため、加湿液タンク内における不揮発性成分の量が多くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿機構を示す概略図である。
【図6】図5の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図7】図1のプリンタに含まれる全ヘッドと加湿機構との接続形態を示す概略図である。
【図8】図1のプリンタに含まれるコントローラの機能ブロック図である。
【図9】本発明の変形例を説明するための図である。
【図10】本発明のさらなる変形例を説明するための図である。
【図11】本発明のさらなる変形例を説明するための図である。
【図12】本発明のさらなる変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10に対するインク供給源としてのインクカートリッジ39が収容されている。
【0021】
空間Aには、4つのヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット、加湿メンテナンスに用いられる加湿機構50(図5参照)等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ1pが配置されている。
【0022】
コントローラ1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作等を制御する。メンテナンス動作は、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動することにより吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作であり、一部〜全ての吐出口14aにおいて行われるもの)、パージ(ポンプ等によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、ワイピング(フラッシング又はパージの後にワイパにより吐出面10a上の異物を払拭する動作)、加湿メンテナンス(吐出面10aと対向する吐出空間S1(図5参照)内に加湿空気を供給する動作)、水タンククリーニング(後に詳述)等を含む。
【0023】
搬送ユニット21は、プラテン9と、搬送方向に関するプラテン9の両側に配置された搬送ニップローラ5、6等を有する。搬送ニップローラ5、6は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ5によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン9の上面に支持されつつ搬送方向に搬送される。プラテン9の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ6によって搬送力を付与され、プラテン9からさらに搬送方向下流側へと搬送される。
【0024】
4つのヘッド10の下方には、反転機構7が配置されている。反転機構7には、プラテン9とガラステーブル8とが互いに対向するように固定されている。反転機構7は、プラテン9及びガラステーブル8のいずれかを4つのヘッド10(吐出面10a)と対面させるように動作する。例えば、印刷時(図1参照)においては、反転機構7はプラテン9を吐出面10aと対面させている。この状態から後述の加湿メンテナンス又は水タンククリーニングが行われるとき、反転機構7は、プラテン9及びガラステーブル8が吐出面10aと干渉しないように、一旦下方に移動し、ガラステーブル8が吐出面10aと対向するように(図5及び図6参照)回転した後、上方に移動する。
【0025】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図3及び図4参照)が開口した吐出面10aである。印刷に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aがプラテン9に対向し、且つ、吐出面10aとプラテン9との間に印刷に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。また、ヘッドホルダ3には、ヘッド10毎に、吐出面10aの外周を覆う環状のキャップ40が設けられている。ヘッド10及びヘッドホルダ3のより具体的な構成については後に詳述する。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0026】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0027】
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ23は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0028】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した印刷指令に基づいて、コントローラ1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。用紙Pは、その後、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0029】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39、及び、図示しない水タンク54(図5参照)を有する。各カートリッジ39は、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にインクを供給する。
【0030】
次に、図2〜図4及び図7を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0031】
図2〜図4に示すように、ヘッド10は、上下に積層されたリザーバユニット11及び流路ユニット12、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジ39(図1参照)から供給されたインクを一時的に貯溜するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12yから下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0032】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別インク流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、及びアクチュエータユニット17の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0033】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12iを互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0034】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、多数の圧力室16に跨るように延在した複数の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極を含む。電極には、圧力室16毎に設けられた個別電極、及び、圧力室16に共通の共通電極が含まれる。個別電極は、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0035】
コントローラ1p(図1参照)による制御の下、各ヘッド10に設けられた制御基板及びドライバIC(図示せず)が生成した各種駆動信号がアクチュエータユニット17に伝達される。
【0036】
次に、図2、図5、及び図6を参照し、ヘッドホルダ3の構成について説明する。ヘッドホルダ3は、金属等からなるフレームであり、それぞれヘッド10毎に設けられたキャップ40と一対のジョイント51とが取り付けられている。
【0037】
一対のジョイント51は、図5に示すように、加湿機構50の循環流路の一端及び他端をそれぞれ構成するものであり、対応するヘッド10の主走査方向の一端及び他端にそれぞれ近接配置されている。加湿メンテナンスにおいて、一対のジョイント51のうち、一方(図5の左側)のジョイント51の下面の開口(排出口)51aから空気が回収され、他方(図5の右側)のジョイント51の下面の開口(流入口)51bから加湿空気が供給される。なお、開口51a近傍に開口51aを閉塞又は開放するバルブ52aが、開口51b近傍に開口51bを閉塞又は開放するバルブ52bがそれぞれ設けられている(図8参照)。
【0038】
ジョイント51は、図6に示すように、略円筒状であり、基端51x、及び、基端51xから延出した先端51yを含む。基端51xから先端51yに亘って、鉛直方向に沿った円柱状の中空空間51zが貫通している。基端51x及び先端51yの外径は異なり、基端51xの方が先端51yより外径が大きいが、中空空間51zは鉛直方向に沿って一定の径を有する。先端51yは、その上端面の外周に切欠を有し、先細り形状となっている。これにより、先端51yへのチューブ55,57一端の接続が容易である。
【0039】
ジョイント51は、先端51yがヘッドホルダ3の貫通孔3aに貫挿された状態で、ヘッドホルダ3に対して固定されている。貫通孔3aは、ヘッドホルダ3におけるジョイント51の配置位置、即ち、ヘッド10の主走査方向一端及び他端の近傍にそれぞれ形成されている。先端51yの外径は貫通孔3aの直径より一回り小さく、先端51yの外周面とヘッドホルダ3の貫通孔3aを画定する壁面との間に若干の隙間がある。この隙間は、ジョイント51をヘッドホルダ3に固定する際にシール材等が充填されることにより、封止される。
【0040】
キャップ40は、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されており、固定部41cを介してヘッドホルダ3に支持された弾性体41、及び、昇降可能な可動体42を含む。
【0041】
弾性体41は、ゴム等の弾性材料からなり、基部41x、基部41xの下面から下方に突出した断面視逆三角形状の突出部41a、ヘッドホルダ3に固定された断面視T字状の固定部41c、及び、基部41xと固定部41cとを接続する接続部41dを含む。弾性体41は、上記各部を有しつつ、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。固定部41cの上端部分は、接着剤等を介して、ヘッドホルダ3に固定されている。固定部41cはまた、各貫通孔3aの近傍において、ヘッドホルダ3と各ジョイント51の基端51xとの間に挟持されている。接続部41dは、固定部41cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部41xの下端に接続している。接続部41dは、可動体42の昇降に伴って変形可能な程度の撓みを有する。基部41xの上面には、可動体42の下端に嵌合する凹部41bが形成されている。
【0042】
可動体42は、剛材料からなり、また、弾性体41と同様、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。可動体42は、弾性体41を介してヘッドホルダ3に支持されつつ、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に移動可能である。具体的には、可動体42は、複数のギア43と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、昇降モータ44(図8参照)の駆動に伴いギア43が回転することにより、昇降する。このとき、可動体42の下端に弾性体41の凹部41bが嵌合しているため、基部41xも可動体42と共に昇降する。弾性体41は、可動体42が昇降するとき、固定部41cがヘッドホルダ3に固定された状態で、突出部41aを含む基部41xが可動体42と共に昇降する。これにより、突出部41aの先端41a1の吐出面10aに対する鉛直方向の相対位置が変化する。
【0043】
突出部41aは、可動体42の昇降により、先端41a1がガラステーブル8(反転機構7によって吐出面10aと対向する位置に配置されている)の支持面8aに当接する当接位置(図5参照)と、先端41a1が支持面8aから離隔した離隔位置(図6参照)とを選択的に取る。図5に示すように、突出部41aが当接位置にあるとき、吐出面10aと支持面8aとの間に形成される吐出空間S1が外部空間S2から隔離されたキャップ状態(封止状態)となっている。図6に示すように、突出部41aが離隔位置にあるとき、吐出空間S1が外部空間S2と連通した非キャップ状態(非封止状態)となっている。
【0044】
突出部41aは、平面視で、吐出面10a(図2に示すヘッド10の下面)の全周に亘って吐出面10aから離隔している。また、突出部41aは、平面視で、吐出面10aを囲む略長方形となっている。
【0045】
次に、図5及び図7を参照し、加湿機構50の構成について説明する。
【0046】
加湿機構50は、図5に示すように、ジョイント51、チューブ55,56,57、加湿ポンプ53、水タンク54、及び補給機構59を含む。ジョイント51は1つのヘッド10に対して一対(2つずつ)設けられているが、加湿ポンプ53及び水タンク54は、図7に示すように、プリンタ1内に1つずつ、即ち4つのヘッド10に対して1つずつ設けられている。チューブ55,57はそれぞれ、4つのヘッド10に共通の主部55a,57a、及び、主部55a,57aから分岐してジョイント51まで延在した4つの分岐部55b,57bを含む。
【0047】
チューブ55の一端(各分岐部55bの先端)は各ヘッド10に設けられた一方(図5の左側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部55aの分岐部55bと反対側の端部)は加湿ポンプ53に接続されている。即ち、チューブ55は、各ヘッド10に設けられた一方のジョイント51の中空空間51zと加湿ポンプ53とを連通可能に接続している。チューブ56は、加湿ポンプ53と水タンク54とを連通可能に接続している。チューブ57の一端(各分岐部57bの先端)は各ヘッド10に設けられた他方(図5の右側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部57aの分岐部57bと反対側の端部)は水タンク54に接続されている。即ち、チューブ57は、各ヘッド10に設けられた他方のジョイント51の中空空間51zと水タンク54とを連通可能に接続している。
【0048】
水タンク54は、下部空間に水を貯溜し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。チューブ56は、水タンク54内の水面よりも下方に接続し、即ち水タンク54の下部空間と上流口54aを介して連通している。上流口54aは水タンク54の底面近傍に開口している。チューブ57は、水タンク54内の水面よりも上方に接続し、即ち水タンク54の上部空間と連通している。加湿メンテナンスにおいては、キャップ状態で加湿ポンプ53が正回転で駆動されることによって、開口51aから吐出空間S1内の空気が回収される。開口51aから回収された空気は、ジョイント51の中空空間51z及びチューブ55内の空間を通って加湿ポンプ53に至り、さらにチューブ56内の空間を通って水タンク54に至る。当該空気は、上流口54aを介して水タンク54の下部空間(即ち水面下)に供給される。供給された空気は、水タンク54内の水により加湿されて加湿空気となり、水タンク54の上部空間から下流口54b及びチューブ57内の空間を通って開口51bから吐出空間S1に流れ込む。このように、チューブ55,56,57が加湿空気を循環させる循環流路を形成している。なお、加湿ポンプ53は、停止時及び正回転時において、水タンク54内の水を矢印の反対方向に流さない逆止弁として機能する。
【0049】
補給機構59は、水タンク54に貯溜されている水の残量を検出する水残量センサ59aを有しており、水残量センサ59aにより検出された水の残量が所定量以下になると、水タンク54に水を補給する。
【0050】
水タンク54に補給される水には、水が腐敗するのを防止するための防腐剤が添加されている。防腐剤は不揮発性成分を含んでいるため、水の蒸発と水の補給とが繰り返されることによって水タンク54内における不揮発性成分の量が多くなる。不揮発性成分の量が多くなると、水タンク54内の不揮発性成分の濃度が高くなって蒸気発生機能が低下し、加湿された空気を効率よく生成することができなくなる。このため、水タンク54内の防腐剤が規定量(第1所定量)以上になると、水タンク54内の防腐剤を除去する水タンククリーニングが実行される。なお、規定量は、不揮発性成分の濃度が高くなって蒸気発生機能が低下するときの量よりも少なくなっている。水タンククリーニングが実行されると、キャップ状態に移行された後に加湿ポンプ53が一旦正回転で駆動される。これにより、水タンク54内に強制的に供給された空気によって水が攪拌され、底面に堆積した不揮発性成分の堆積物が浮遊する。その後、加湿ポンプ53が逆回転で駆動されることで、不揮発性成分が水と共に開口51aから吐出空間S1内に排出される。本実施形態においては、水タンク54内の水を全て排出させるが、水の一部が水タンク54内に残存するように一定量の水を排出させてもよい。水の排出が完了した直後、補給機構59が水タンク54内にフレッシュな水を補給する。
【0051】
ガラステーブル8には、回収機構80が設置されている。回収機構80は、廃液タンク81と、チューブ82、83と、回収ポンプ84とを有している。チューブ82、83は、廃液タンク81と吐出空間S1とが連通するように、廃液タンク81及びガラステーブル8にそれぞれ接続されている。回収ポンプ84は、チューブ82に設けられている。水タンククリーニングにおいて開口51aから排出された水が吐出空間S1内に貯溜された後に、回収ポンプ84が駆動されることで吐出空間S1内に貯溜された廃液がチューブ82を経由して廃液タンク81に貯溜される。このとき、廃液タンク81内の空気がチューブ83を経由して吐出空間S1内に供給される。これにより、吐出空間S1内に貯溜された廃液をスムーズに回収することができる。
【0052】
次に、コントローラ1pについて説明する。コントローラ1pは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する不揮発性メモリと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。コントローラ1pを構成する各機能部は、これらハードウェアと不揮発性メモリ内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、コントローラ1pは、画像データ記憶部61と、ヘッド制御部62と、メンテナンス制御部64と、搬送制御部65とを有している。
【0053】
画像データ記憶部61は、用紙Pに印刷すべき画像を示す画像データを記憶する。搬送制御部65は、用紙Pが所定の速度で搬送経路に沿って搬送されるように搬送ユニット21を制御する。ヘッド制御部62は、搬送ユニット21に搬送された用紙Pに画像データ記憶部61に記憶された画像データに係る画像が印刷されるように、及び、メンテナンス動作においてフラッシングが行われるようにヘッド10を制御する。
【0054】
メンテナンス制御部64は、加湿メンテナンス又は水タンククリーニングが行われるように、反転機構7、加湿機構50の加湿ポンプ53、可動体42(突出部41aの先端41a1)を昇降させる昇降モータ44及び回収ポンプ84、並びにバルブ52a及びバルブ52bを制御する。また、メンテナンス制御部64は、水残量センサ59aにより検出された水の残量が所定量以下になると、水タンク54に水が補給されるように、補給機構59を制御する。
【0055】
加湿メンテナンスは、キャップ状態にある吐出空間S1内に加湿空気を供給する動作であり、最後に印刷が行われてから所定時間が経過したとき等に開始される。
【0056】
メンテナンス制御部64は、加湿メンテナンスを開始すると、ガラステーブル8の支持面8aが吐出面10aと対向するように反転機構7を制御する。そして、ギア43の回転により可動体42を下方に移動させる。印刷時においては、突出部41aは離隔位置(図6参照)にあるが、当該可動体42の下方への移動に伴い、当接位置(図5参照)に移動する。これにより、吐出空間S1が封止されてキャップ状態となる。なお、メンテナンス制御部64は、印刷時以外の待機状態又は休止状態においては、突出部41aを当接位置に移動させてキャップ状態とする。さらに、メンテナンス制御部64は、バルブ52a、52bにより開口51a、51bを開放させる。
【0057】
その後、メンテナンス制御部64は、加湿ポンプ53を駆動し、一方のジョイント51の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収する。このとき、開口51aから回収された空気は、ジョイント51の中空空間51z及びチューブ55内の空間を通って加湿ポンプ53に至り、さらにチューブ56内の空間を通って水タンク54に至る。当該空気は、上流口54aを介して水タンク54の下部空間(即ち水面下)に供給される。そして、水タンク54内の水により加湿された加湿空気は、下流口54bを介して水タンク54の上部空間から排出される。このとき、水タンク54の上部空間から排出された加湿空気の湿度は100%に近い値となっている。この加湿空気は、チューブ57内の空間を通って、他方のジョイント51の開口51bから吐出空間S1内に供給される。図5中、黒塗りの矢印は加湿前の空気の流れを示し、白抜きの矢印は加湿後の空気の流れを示す。メンテナンス制御部64は、上記の加湿ポンプ53の駆動と共に、図7に示す各分岐部55b,57bに設けられた切換弁等(図示せず)を制御することにより、分岐部55b,57bにおける空気の流れを選択的に調節する。
【0058】
このようにして開口51bから吐出空間S1内に加湿空気が供給されると、吐出空間S1内の湿度が上昇し、吐出口14aの増粘したインクの濃度が低下する。なお、加湿空気の湿度は、平衡状態において、環境湿度以上であればよく、平衡状態において、吐出口14aのインク粘度が適切にインクを吐出することができる粘度となる適正湿度以上であることが好ましい。加湿空気の供給が完了すると、供給時間(加湿ポンプ53の駆動時間に相当)が、加湿履歴記憶部64aに記憶される。以上で、加湿メンテナンスが完了する。
【0059】
メンテナンス制御部64は、印刷指令を受信すると、ギア43の回転により可動体42を上方に移動させ、突出部41aを当接位置から離隔位置へと移動させる。その後、メンテナンス制御部64は、プラテン9が吐出面10aと対向するように反転機構7を制御する。これにより、印刷可能な状態となる。なお、メンテナンス制御部64は、印刷が完了して待機状態又は休止状態となるとき、ガラステーブル8の支持面8aが吐出面10aと対向するように反転機構7を制御すると共に、可動体42を下方に移動させることで突出部41aを離隔位置から当接位置へと移動させ、キャップ状態に移行させる。
【0060】
水タンククリーニングは、排出判断部64bが水タンク54に貯溜されている水に含まれる防腐剤における不揮発性成分の量が規定量以上になっていると判断した後、且つ、水タンク54の水の残量が所定量(好ましくは、水タンク54の総容量の1/4や1/10など)以下となって補給機構59による水の補給が開始される直前に、水タンク54内の不揮発性成分を水と共に排出する動作である。排出判断部64bは、加湿履歴記憶部64aを参照して加湿空気が所定量(所定時間)供給される毎に、水に含まれる不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断する。
【0061】
メンテナンス制御部64は、水タンククリーニングを開始すると、加湿メンテナンスと同様に、ガラステーブル8の支持面8aが吐出面10aと対向するように反転機構7を制御すると共に、ギア43の回転により可動体42を下方に移動させてキャップ状態とする。メンテナンス制御部64は、加湿ポンプ53を正回転で駆動する。これにより、水タンク54内に強制的に供給された空気によって水が攪拌され、底面に堆積した不揮発性成分の堆積物が浮遊する。その後、バルブ52aにより開口51aを開放させると共にバルブ52bにより開口51bを閉塞して、加湿ポンプ53を逆回転で駆動する。これにより、水タンク54内の不揮発性成分の全量が水と共に開口51aから吐出空間S1内に排出される。開口51aから排出された水は、回収機構80によって回収される。メンテナンス制御部64は、開口51aからの水の排出を停止した後に、バルブ52aにより開口51aを閉塞させる。以上で、水タンククリーニングが完了する。なお、この水タンククリーニング時においては、水の移動ができるように、適宜、廃液タンク81や水タンク54、又は、他の流路を大気と連通させる。
【0062】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、不揮発性成分の量が規定量以上となったときに水タンク54に貯溜された水が外部に排出されるため、水タンク54内における不揮発性成分の量が多くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる。
【0063】
また、排出判断部64bが、加湿履歴記憶部64aを参照して加湿空気が所定量供給される毎に、水に含まれる防腐剤における不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断するため、不揮発性成分の量が規定量以上になっているか否かを容易に判断することができる。
【0064】
さらに、排出判断部64bが、不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断した後に、水タンク54の水の残量が所定量以下となって補給機構59による水の補給が開始される直前に、水タンククリーニングが開始されるため、不揮発性成分が濃縮された状態で水が排出され、排出後に水が補給されることになる。これにより、補給された水が無駄に排出されるのを抑制することができる。
【0065】
加えて、水タンク54の底面近傍に開口した上流口54aを介して水タンク54に貯溜された水が外部に排出されるため、水タンク54内の水を効率よく排出することができる。
【0066】
また、加湿メンテナンスにおいて、加湿空気が循環する循環経路が形成されるため、水の消費量を低減することができる。
【0067】
加えて、水タンク54において水と接する上流口54aに空気を強制的に供給するという簡単な構成で加湿空気を生成することができる。
【0068】
また、水タンククリーニングが実行されると、不揮発性成分が水と共に排出される直前に、加湿ポンプ53が一旦正回転で駆動されるため、水タンク54内に強制的に供給された空気によって水が攪拌され、底面に堆積した不揮発性成分の堆積物が浮遊する。これにより、底面に堆積した不揮発性成分を効率よく排出させることができる。
【0069】
<変形例>
本実施形態においては、排出判断部64bが、加湿履歴記憶部64aを参照して加湿空気が所定量供給される毎に、水に含まれる不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断する構成であるが、他の構成により、水に含まれる不揮発性成分の量が規定量以上となっているか否かの判断を行ってもよい。例えば、図9に示すように、メンテナンス制御部164は、水残量センサ59aにより検出された水の残量が所定量以下になると、水タンク54に水が補給されるように、補給機構59を制御する。このとき、補給機構59により水タンク54に補給した水の量が、補給履歴記憶部164aに記憶される。排出判断部154bが、補給履歴記憶部164aを参照して水タンク54への水の総供給量から不揮発性成分の量が規定量以上となっているか否かを判断してもよい。これによると、不揮発性成分の量を正確に把握することができる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断した後、且つ、水タンク54の水の残量が所定量以下となって補給機構59による水の補給が開始される直前に、水タンククリーニングが開始される構成であるが、不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断した後であれば、任意のタイミングで水タンククリーニングが開始されてもよい。例えば、不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断した直後に水タンククリーニングが開始されてもよい。また、不揮発性成分の量が規定量以上となっていると判断してから時間をおいて(例えば、次回の水補給時など)、水タンククリーニングが開始されてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態においては、上流口54aから水タンク54の水が排出される構成であるが、図10のように、水タンク54に設けられた排出通路256より水タンク54の水が排出される構成であってもよい。この場合、排出通路256に設けられた排出弁257がメンテナンス制御部64に制御され、排出弁257を開弁することにより水タンク54の水が排水タンク281に排出される。
【0072】
加えて、上述した実施形態においては、上流口54aが水タンク54の底面近傍に開口する構成であるが、上流口は水に接していれば底面近傍以外の場所に開口してもよい。
【0073】
また、上述した実施形態においては、加湿メンテナンスにおいて、加湿空気が循環する循環経路が形成される構成であるが、吐出空間に排出された加湿空気が循環しない構成であってもよい。
【0074】
なお、上述した実施形態においては、チューブ83が吐出空間S1に開口している構成であるが、チューブ83を設けない構成であってもよい。この場合は、適宜、排出された水の回収がなされるよう、排出された水の回収時に吐出空間S1を大気と連通させる。
【0075】
加えて、上述した実施形態においては、水タンク54の水と接する上流口54aに空気を強制的に供給することで加湿空気を生成する構成であるが、他の機構で加湿空気を生成してもよい。例えば、水をヒータで加熱することによって加湿空気を生成してもよい。つまり、加湿空気を生成する構成については、不揮発性成分が水タンク54に堆積する構成であれば、どのようなものであってもよい。
【0076】
さらに、突出部41aは、上述の実施形態のように移動可能であることに限定されない。例えば、突出部が移動不能にヘッドホルダに固定され、突出部の先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、ヘッドホルダ又は媒体支持部の支持面を昇降させることにより、突出部の先端の吐出面に対する相対位置を変化させ、突出部が当接位置と離隔位置とを選択的に取ることができる。
【0077】
さらに、図11に示すように、キャップ340がヘッド10から独立して形成されていてもよい。この場合、キャップ340は、搬送ユニットを下方に移動させた後に、吐出面10aと対向する位置に配置されてもよい。また、搬送ユニットは、無端の搬送ベルトを用いたものであってもよい。そして、キャップ340は、ヘッド10及びキャップ340の少なくともいずれかを昇降させることによって、キャップ340の端部341aが吐出面10aに当接する当接位置と、端部341aが吐出面10aから離隔する離隔位置とを選択的に取りうる。キャップ340が当接位置にあるとき、吐出空間S201がキャップ340によって封止され(キャップ状態)、キャップ340が離隔位置にあるとき、吐出空間S201が開放される(非キャップ状態)。図11の構成において、加湿機構50がキャップ340に設けられていてもよい。この場合、加湿ポンプ53を逆回転で駆動してキャップ340内に水タンク54に貯留された水を排出すると、チューブ57にこの排出された水が流れ込みやすくなるので、開口51bを閉塞することが有効になる。この場合も、加湿ポンプ53を逆回転で駆動する際、水タンク54の上部に設けられた大気連通弁(図示せず)を開放して水タンク54から排出する分の空気を外部から導入するなどして、加湿ポンプ53の駆動が阻害されないようにする。
【0078】
加えて、上述した実施形態においては、水タンククリーニングが実行されると、不揮発性成分が水と共に排出される直前に、加湿ポンプ53を正回転で駆動させることで水タンク54内に空気を強制的に供給して水を攪拌する構成であるが、図12に示すように、水タンク54内にプロペラなどの攪拌機構454cを設け、この撹拌機構454cを駆動させることで水を攪拌してもよい。これによると、水を確実に攪拌することができる。
【0079】
また、循環流路の流入口及び排出口は、ヘッド、ヘッドホルダ又はキャップに形成され且つ吐出空間に開口する限り、形状や位置は特に限定されない。例えば、一方の開口がヘッド、他方の開口がヘッドホルダに形成されてもよい。キャップの突出部に開口が形成されてもよい。ヘッド又はヘッドホルダの表面に凹部3xを形成せず、吐出面10aと同じレベルに循環流路の一端及び/又は他端の開口を配置してもよい。開口は、平面視で、副走査方向に関して吐出面10a(又は、ヘッドに開口を形成する場合は吐出口群。以下同じ。)を挟む位置に配置されてよい。或いは、開口は、平面視で吐出面10aを挟まない位置(即ち、吐出面10aに対して一方向に関して同じ側)に配置されてよい。
【0080】
なお、上述した実施形態においては、不揮発性成分として防腐剤中の成分があげられているが、不揮発性成分として水タンク54に堆積することで、加湿機能を低下させるものであれば種類は問わない。

【0081】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンタ
7 反転機構
8 ガラステーブル
8a 支持面
9 プラテン
10 インクジェットヘッド
10a 吐出面
14a 吐出口
40 キャップ
50 加湿機構
51 ジョイント
51a、51b 開口
53 加湿ポンプ
54 水タンク
54a 上流口
54b 下流口
55〜57 チューブ
59 補給機構
59a 水残量センサ
64 メンテナンス制御部
64a 加湿履歴記憶部
64b 排出判断部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
不揮発性成分を含み外部から補給された加湿液を貯溜する加湿液タンクと、
前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間に対して封止する封止状態、及び、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態を取り得るキャップ手段と、
前記加湿液タンクに貯溜された加湿液により加湿された加湿空気を、前記封止状態となっているときの前記吐出空間に供給する加湿空気供給手段と、
前記加湿液タンクに貯溜された加湿液における前記不揮発性成分の量が第1所定量以上になっているか否かを判断する判断手段と、
前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断したとき、前記加湿液タンクに貯溜された加湿液の少なくとも一部を外部に排出する排出手段とを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記加湿空気供給手段が前記加湿空気を所定量供給する毎に前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると判断し、
前記排出手段は、前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断する毎に第2所定量の前記加湿液を排出することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記加湿液タンクに前記加湿液を補給する補給手段をさらに備えており、
前記判断手段は、前記補給手段による前記加湿液の総補給量に基づいて、前記不揮発性成分の量が所定値以上になっているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記排出手段は、前記不揮発性成分の量が前記第1所定量以上になっていると前記判断手段が判断し、且つ、前記補給手段による前記加湿液の補給が開始される直前に前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を外部に排出することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記加湿液タンクは、底面近傍に開口した排出口を有しており、
前記排出手段は、前記排出口を介して前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を外部に排出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出面又は前記キャップ手段に、前記封止状態となっているときの前記吐出空間と連通する流入口及び流出口が形成されており、
前記加湿空気供給手段は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記加湿空気を、前記流入口を介して前記吐出空間に流入させると共に、前記流出口を介して前記吐出空間から流出した前記加湿空気を前記加湿液タンクに帰還させることを特徴とする請求項1〜5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記加湿液タンクは、貯溜された加湿液と接する上流口及び当該加湿液と接しない下流口を有しており、
前記加湿空気供給手段は、前記下流口から前記加湿空気が排出されるように、前記上流口を介して前記加湿液タンクに強制的に空気を供給するポンプを有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記排出手段は、前記加湿液タンクに貯溜された加湿液が前記上流口から排出されるように、前記ポンプを駆動させるものであることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液が前記排出手段により外部に排出される直前に、前記ポンプが前記加湿液タンクに強制的に空気を供給することを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液が前記排出手段により外部に排出される直前に、前記加湿液タンクに貯溜された前記加湿液を攪拌する攪拌手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−158070(P2012−158070A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18955(P2011−18955)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】