説明

液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法

【課題】インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】液体を収容する圧力室31と、圧力室31に連通して液体を噴射するノズル17と、圧力室31に連通して液体を供給する供給路70と、供給路70の他端70aに連通して第1液体を供給する第1供給路71と、供給路70の他端70aに連通して第1液体よりも濡れ性の高い、第2液体を供給する第2供給路72と、第1供給路71を開閉する第1バルブ61と、第2供給路72を開閉する第2バルブ62と、を備え、第1バルブ61を閉塞し、かつ、第2バルブ62を開放した状態でノズル17から第2液体が吸引された後に、第1バルブ61を開放し、かつ、第2バルブ62を閉塞した状態でノズル17から第1液体が吸引されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の一種としてインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という)がある。このプリンターは、キャリッジに搭載された液体噴射ヘッド(以下、「ヘッド」という)の複数のノズルからプラテン上に配置された媒体(記録用紙)にインク(液体)を噴射することで印刷を行っている。
【0003】
このようなプリンターにあっては、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として媒体に吐出させて印刷を行っている。この関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するための技術が検討されており、例えば、特許文献1では、ノズル開口から充填液を流入させた後にインク吐出回復動作を行っている。これにより、ノズル内部に侵入した充填液が圧力室内のインクと混合することで、圧力室内のインクと隔壁との濡れ性が大きくなるため、圧力室内に残留する気泡が動きやすい状態となる。そして、この状態で吸引パージを実行することにより、ノズル開口からインクを吸引しインク流路内の気泡や塵埃とともに排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−196229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術にあっては、ノズル開口から充填液を流入させた後にインク吐出回復動作を行うことによってインク流路内の気泡や塵埃を排出してインク経路の清浄化を図ることができると考えられる。
しかしながら、特許文献1では、インク流路内の気泡や塵埃とともに吸引されたインクはそのまま廃棄されるため、資源を無駄に費やすこととなる。また、充填液としてインクの溶媒液と同じ主成分の液体を使用しているため、消費される液体は高価なものとなる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の液体噴射ヘッドは、液体を収容する圧力室と、前記圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルと、前記圧力室に連通して液体を供給する供給路と、前記供給路の他端に連通して第1液体を供給する第1供給路と、前記供給路の他端に連通して前記第1液体よりも濡れ性の高い、第2液体を供給する第2供給路と、前記第1供給路を開閉する第1バルブと、前記第2供給路を開閉する第2バルブと、を備え、前記第1バルブを閉塞し、かつ、前記第2バルブを開放した状態で前記ノズルから前記第2液体が吸引された後に、前記第1バルブを開放し、かつ、前記第2バルブを閉塞した状態で前記ノズルから前記第1液体が吸引されることを特徴とする。
【0009】
この液体噴射ヘッドによれば、第1液体(例えばインク)よりも濡れ性の高い第2液体(例えば送品液)は、第1バルブを閉塞しかつ第2バルブを開放することにより、第2供給路、供給路、圧力室(インク流路)を経由してノズルから噴射される。つまり、第2液体がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われる。これにより、インク流路内の気泡や塵埃を排出することができるとともにインク流路の濡れ性を高くすることができる。このとき、第1バルブが液体噴射ヘッドの内部に配置されているので、液体噴射ヘッドの外部に配置される場合に比べて第1液体の排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。そして、第2液体による予備浸潤の後に、第2バルブを閉塞しかつ第1バルブを開放することにより、第1液体はスムーズにインク流路に供給されることとなる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射ヘッドが提供できる。
【0010】
また、上記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1バルブは、前記ノズルに近接して配置されていてもよい。
【0011】
この液体噴射ヘッドによれば、第1バルブがノズルから遠く離間して配置される場合に比べて第1液体の排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。
【0012】
本発明の液体噴射装置は、上述した液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能な開口部を有するキャップと、前記キャップが前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記液体を吸引する吸引部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この液体噴射装置によれば、上述した液体噴射ヘッドを備えているので、第1バルブを閉塞しかつ第2バルブを開放してキャップがノズル形成面を封止した状態で吸引部による吸引動作により吐出回復動作が行われる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置が提供できる。
【0014】
本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、液体を収容する圧力室と、前記圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルと、前記圧力室に連通して液体を供給する供給路と、前記供給路の他端に連通して第1液体を供給する第1供給路と、前記供給路の他端に連通して前記第1液体よりも濡れ性の高い、第2液体を供給する第2供給路と、前記第1供給路を開閉する第1バルブと、前記第2供給路を開閉する第2バルブと、を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能な開口部を有するキャップと、前記キャップが前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記液体を吸引する吸引部と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記第1バルブを閉塞し、かつ、前記第2バルブを開放して、前記キャップで前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記第2液体を吸引する第1の工程と、前記第1バルブを開放し、かつ、前記第2バルブを閉塞して、前記キャップで前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記第1液体を吸引する第2の工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
この液体噴射装置のメンテナンス方法によれば、第1の工程により、第1液体(例えばインク)よりも濡れ性の高い第2液体(例えば送品液)は、第2供給路、供給路、圧力室(インク流路)を経由してノズルから噴射される。つまり、第2液体がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われる。これにより、インク流路内の気泡や塵埃を排出することができるとともにインク流路の濡れ性を高くすることができる。このとき、第1バルブが液体噴射ヘッドの内部に配置されているので、液体噴射ヘッドの外部に配置される場合に比べて第1液体の排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。そして、第2液体による予備浸潤の後、第2の工程により、第1液体はスムーズにインク流路に供給されることとなる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る液体噴射装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】液体噴射ヘッドのノズル形成面におけるノズル配列状態を示す図である。
【図3】液体噴射ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【図4】液体噴射ヘッドのキャッピング状態を示す模式図である。
【図5】液体噴射装置のメンテナンス方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置の概略構成を示す斜視図である。以下、液体噴射装置としてシリアル型のインクジェット式プリンターを例に挙げて説明する。
【0019】
液体噴射装置1は、プラテン50に支持された記録用紙(媒体)Pにインク(第1液体)を噴射することで記録用紙Pに所定の情報や画像を印字する記録処理を行うものである。この液体噴射装置1は、複数のノズル17(図2参照)からインクを記録用紙Pに向けて噴射する液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10を搭載して走査移動するキャリッジ40と、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aを封止可能な開口部を有するキャップ53と、キャップ53がノズル形成面21Aを封止した状態でノズル17からインクを吸引する吸引部80(図4参照)と、を備えて構成されている。
【0020】
以下、図1に示したXYZ直交座標系に基づいて説明する。このXYZ直交座標系において、X方向及びY方向がプラテン50の面方向と平行となっており、Z方向がプラテン50の面方向と直交している。実際には、XY平面が水平面に平行な面に設定されており、Z方向が鉛直上方向に設定されている。ここでは、記録用紙Pの搬送方向がY方向、液体噴射ヘッド10の走査方向がX方向に設定されている。
【0021】
図1に示すように、液体噴射装置1は、平面視矩形状をなすフレーム42を備えている。このフレーム42内には、プラテン50が架設されている。このプラテン50は、記録用紙Pを吸引する複数の吸引孔(図示略)を備えている。記録用紙Pは複数の吸引孔に作用する吸引力によってプラテン50の上面に保持される。これにより、記録用紙Pのコックリングやカールが抑えられる。
【0022】
また、プラテン50上には、フレーム42の背面に設けられた紙送りモーター44を有する紙送り機構により記録用紙Pが+Y方向側から給送される。これにより、記録用紙PがY方向に延びる搬送路に沿って搬送されるようになっている。また、フレーム42内におけるプラテン50の上方には、プラテン50の長手方向(X方向)と平行な棒状のガイド部材45が架設されている。
【0023】
ガイド部材45には、キャリッジ40がガイド部材45の長手方向(X方向)に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ40は、フレーム42内の後面に設けられた一対のプーリ47a間に張設されたタイミングベルト47を介してフレーム42の背面に設けられたキャリッジモーター48に連結されている。キャリッジ40は、キャリッジモーター48の駆動によりガイド部材45に沿って往復移動される。
【0024】
キャリッジ40の下面には、液体噴射ヘッド10が設けられている。液体噴射ヘッド10の下面は、複数のノズル17が形成されたノズル形成面21Aとなっている(図2参照)。また、キャリッジ40における液体噴射ヘッド10の上側には、インクカートリッジ41及び送品液収容容器141が着脱可能に搭載されている。インクカートリッジ41内には、インクがそれぞれ液体噴射ヘッド10に供給可能に収容されている。また、送品液収容容器141内には、送品液(第2液体)が液体噴射ヘッド10に供給可能に収容されている。このように、本実施形態に係る液体噴射装置1は、インクカートリッジ41がキャリッジ40に搭載される、いわゆるオン・キャリッジタイプのものである。
【0025】
また、フレーム42内の右端部(X方向端部)に位置する非液体噴射領域には、非印刷時に液体噴射ヘッド10のメンテナンス(例えば、吐出回復動作、クリーニングやフラッシング等)を行うためのメンテナンスユニット52が設けられている。メンテナンスユニット52は、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aを封止可能な上側(+Z方向側)が開口したキャップ53を備えている。
【0026】
ところで、従来の液体噴射ヘッドにおいては、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として媒体に吐出させて印刷を行っている関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題があった。
【0027】
そこで、本発明に係る液体噴射ヘッド10では、インクを供給する第1供給路に第1バルブが設けられ、インクよりも濡れ性の高い送品液(第2液体)を供給する第2バルブが設けられた構造としている。このため、第1バルブを閉塞しかつ第2バルブを開放することにより、送品液がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われ、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能にしている。以下、図2及び図3を参照して液体噴射ヘッド10の構成について説明する。
【0028】
図2は、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。図3は、液体噴射ヘッド10の内部構成を示す部分断面図である。
【0029】
図2に示すように、ノズル17はノズル形成面21Aにおいて記録用紙Pの搬送方向(Y方向)に沿って複数設けられ、ノズル列16を形成している。このノズル列16は、液体噴射ヘッド10の走査方向(X方向)に沿って計5列設けられている。ノズル列16Y、16M、16C、16K1、16K2は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K1)、顔料ブラック(K2)の各色に応じたインクを噴射する構成となっている。なお、液体噴射ヘッド10どうしをノズル17間のピッチの半分だけ左右方向にずらして配置してもよい。これにより、記録用紙Pに対して印字する解像度を向上させることができる。
【0030】
図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、液体を収容する圧力室31と、圧力室31に連通して液体を噴射するノズル17と、圧力室31に連通して液体を供給する供給路70と、供給路70の他端70aに連通してインクを供給する第1供給路71と、供給路70の他端70aに連通してインクよりも濡れ性の高い送品液を供給する第2供給路72と、第1供給路71を開閉する第1バルブ61と、第2供給路72を開閉する第2バルブ62と、を備えている。また、インクはインクカートリッジ41に収容されており、第1バルブ61の切換により第1供給路71を介してインク流路に供給可能になっている。また、送品液は送品液収容容器141に収容されており、第2バルブ62の切換により第2供給路72を介してインク流路に供給可能になっている。
【0031】
ここで、「送品液」とは、インクよりも粘度の高い液体である。この送品液は、例えば、液体噴射ヘッド10の振動等からインク流路を保護するために装填されるものであり、保湿性と不凍性とを高めるために多量のグリセリンを含有している。
【0032】
また、第1バルブ61は、ノズル17に近接して配置されている。具体的には、第1バルブ61は、第1供給路71において、インクカートリッジ41よりも供給路70に近い位置に配置されている。
【0033】
また、液体噴射ヘッド10は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備える。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えるとともに、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26とともに駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路(供給路70、第1供給路71及び第2供給路72)とが形成される。
【0034】
上記構成の液体噴射ヘッド10によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向(−Z方向)及び圧力室31から離れる方向(+Z方向)に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17からインクが噴射される。
【0035】
このようにして、インクカートリッジ41内のインクは、液体噴射ヘッド10内に各ノズル17と対応するように備えられた圧電素子25の駆動により、液体噴射ヘッド10へと供給される。さらに、各ノズル17からプラテン50上に給送された記録用紙Pに向けてインクが噴射されることにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0036】
図4は、液体噴射ヘッドのキャッピング状態を示す模式図である。図4に示すように、キャップ53は、上面が開口されたキャップケース53aと、キャップケース53a内に収納された、ゴム材料等の可撓性材料からなるキャップ部材53bと、キャップ部材53bの内底部に収納された、多孔質材料により形成されたインク吸収材53cと、を備えている。なお、キャップ部材53bは、その上側部がキャップケース53aよりも突出している。
【0037】
キャップケース53aの下底部には、キャップケース53a及びキャップ部材53bをそれぞれ貫通して、吸引口54及び大気開放口55が形成されている。キャップケース53aの吸引口54には、チューブ74を介して吸引部(例えば吸引ポンプ)80が接続されており、この吸引部80の排出側には廃液タンク81に接続されている。一方、キャップケース53aの大気開放口55には、チューブ73を介して大気開放バルブ63が接続されている。以下、図5を用いて、本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法(吐出回復動作方法)について一例(インク流路の洗浄時)を挙げて説明する。
【0038】
(液体噴射装置のメンテナンス方法)
図5は、液体噴射装置のメンテナンス方法(吐出回復動作方法)を示すフローチャートである。本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、第1バルブ61を閉塞し、かつ、第2バルブ62を開放して、キャップ53でノズル形成面21Aを封止した状態でノズル17から送品液を吸引する第1の工程と、第1バルブ61を開放し、かつ、第2バルブ62を閉塞して、キャップ53でノズル形成面21Aを封止した状態でノズル17からインクを吸引する第2の工程と、を有する。
【0039】
具体的には、この液体噴射装置のメンテナンス方法は、インク(第1液体)及び送品液(第2液体)の吸引時間を設定する工程(ステップST1)と、キャップ53でノズル形成面21Aを封止し大気開放バルブ63を閉塞する工程(ステップST2)と、第1バルブ61を閉塞しかつ第2バルブ62を開放する工程(ステップST3)と、吸引部80を駆動し送品液を吸引する工程(ステップST4)と、送品液の吸引時間が経過したか否かを判定する工程(ステップST5)と、第1バルブ61を開放しかつ第2バルブ62を閉塞する工程(ステップST6)と、インクを吸引する工程(ステップST7)と、インクの吸引時間が経過したか否かを判定確認する工程(ステップST8)と、吸引部80を停止する工程(ステップST9)と、大気開放バルブ63を開放しキャップ53を外してノズル形成面21Aを開放する工程(ステップST10)と、を有する。なお、液体噴射装置1を構成する各種構成部品は、不図示のシーケンス制御装置からの駆動信号により駆動されるものとする。
【0040】
先ず、インク及び送品液の吸引時間を設定する(ステップST1)。ここで、インク及び送品液の吸引時間は予め実験により得られた各種データを基に設定される。これらインク及び送品液の吸引時間は、信頼性のある所定のN数により算出されたものとなっている。例えば、インクの吸引時間は、少なくとも圧力室31にインクを充填することが可能な吸引時間(例えば30秒程度)となっている。一方、送品液の吸引時間は、少なくともインク流路内の気泡や塵埃を排出することが可能であり、かつ、インク流路の濡れ性を高くすることが可能な吸引時間(例えば60秒程度)となっている。
【0041】
次に、キャリッジ40に搭載された液体噴射ヘッド10は、ホームポジションに走査移動される。そして、キャップ53は液体噴射ヘッド10側に上昇し、キャップ部材53bがノズル形成面21Aを封止する。このとき、キャップケース53aの大気開放口55に接続された大気開放バルブ63が閉塞状態とされる(ステップST2)。
【0042】
次に、第1バルブ61を閉塞し、かつ、第2バルブ62を開放する(ステップST3)。これにより、送品液収容容器141に収容された送品液が、第2供給路72を介してインク流路に供給可能となる。
【0043】
次に、吸引部80を駆動する。これにより、キャップ部材53bの内部空間に負圧が印加される。そして、送品液収容容器141に収容された送品液が吸引される(ステップST4)。すると、送品液は第2供給路72を介してインク流路に供給される。
【0044】
次に、送品液の吸引時間が経過したか否かを判定する(ステップST5)。ここで、送品液の吸引時間は予め実験により得られた各種データを基に設定されている。このため、設定された送品液の吸引時間(例えば60秒程度)に基づいて、不図示のシーケンス制御装置からの駆動信号により第1バルブ61の開閉及び第2バルブ62の開閉が制御されることとなる。例えば、送品液の吸引時間が設定時間に達するまで、第1バルブ61を閉塞し、かつ、第2バルブ62を開放した状態とされる。
【0045】
そして、送品液は、第2供給路72、供給路70、圧力室31(インク流路)を経由してノズル17から噴射される。すると、ノズル17から噴射された送品液は、インク流路内の気泡や塵埃とともにチューブ74を介して廃液タンク81に排出される。つまり、送品液がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われる。これにより、インク流路内の気泡や塵埃を排出することができるとともにインク流路の濡れ性を高くすることができる。
【0046】
また、第1バルブ61は、ノズル17に近接して配置されている(図3、図4参照)ので、第1バルブ61がノズルから遠く離間して配置される場合(例えば、第1バルブ61が第1供給路71において、供給路70よりもインクカートリッジ41に近い位置に配置される場合)に比べてインクの排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。
【0047】
送品液の吸引時間が設定時間に達した後、第1バルブ61を開放し、かつ、第2バルブ62を閉塞する(ステップST6)。このとき、吸引部80の駆動によりキャップ部材53bの内部空間に負圧が印加されたままとなっている。これにより、インクカートリッジ41に収容されたインクが吸引される(ステップST7)。すると、インクは第1供給路71を介してインク流路に供給される。
【0048】
次に、インクの吸引時間が経過したか否かを判定する(ステップST8)。ここで、インクの吸引時間は予め実験により得られた各種データを基に設定されている。このため、設定されたインクの吸引時間(例えば30秒程度)に基づいて、不図示のシーケンス制御装置からの駆動信号により第1バルブ61の開閉及び第2バルブ62の開閉が制御されることとなる。例えば、インクの吸引時間が設定時間に達するまで、第1バルブ61を開放し、かつ、第2バルブ62を閉塞した状態とされる。
【0049】
そして、インクは、第1供給路71、供給路70を経由して圧力室31に充填される。このように、送品液によるインク流路の予備浸潤の後に、インクが吸引されることにより、インクはスムーズに圧力室31に供給されることとなる。
【0050】
インクの吸引時間が設定時間に達した後、吸引部80を停止する(ステップST9)。次いで、第1バルブ61を閉塞し、かつ、第2バルブ62を閉塞する。そして、キャップケース53aの大気開放口55に接続された大気開放バルブ63を開放状態とし、液体噴射ヘッド10からキャップ53を外してノズル形成面21Aを開放する(ステップST10)。以上の工程により、液体噴射装置のメンテナンス(吐出回復動作)が終了する。
【0051】
本発明の液体噴射ヘッド10によれば、インクよりも濡れ性の高い送品液は、第1バルブ61を閉塞しかつ第2バルブ62を開放することにより、第2供給路72、供給路70、圧力室31(インク流路)を経由してノズル17から噴射される。つまり、送品液がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われる。これにより、インク流路内の気泡や塵埃を排出することができるとともにインク流路の濡れ性を高くすることができる。このとき、第1バルブ61が液体噴射ヘッド10の内部に配置されているので、液体噴射ヘッド10の外部に配置される場合に比べてインクの排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。そして、送品液による予備浸潤の後に、第2バルブ62を閉塞しかつ第1バルブ61を開放することにより、インクはスムーズにインク流路に供給されることとなる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射ヘッド10が提供できる。
【0052】
また、この構成によれば、第1バルブ61は、ノズル17に近接して配置されているので、第1バルブ61がノズル17から遠く離間して配置される場合に比べてインクの排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。
【0053】
本発明の液体噴射装置1によれば、上述した液体噴射ヘッド10を備えているので、第1バルブ61を閉塞しかつ第2バルブ62を開放してキャップ53がノズル形成面21Aを封止した状態で吸引部80による吸引動作により吐出回復動作が行われる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置1が提供できる。
【0054】
本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法によれば、第1の工程により、インクよりも濡れ性の高い送品液は、第2供給路72、供給路70、圧力室31(インク流路)を経由してノズル17から噴射される。つまり、送品液がインク流路を流れることによるメンテナンス(吐出回復動作)が行われる。これにより、インク流路内の気泡や塵埃を排出することができるとともにインク流路の濡れ性を高くすることができる。このとき、第1バルブ61が液体噴射ヘッド10の内部に配置されているので、液体噴射ヘッド10の外部に配置される場合に比べてインクの排出経路が短くなる。このため、吐出回復動作においてインクが無駄に廃棄されることが抑えられる。そして、送品液による予備浸潤の後、第2の工程により、インクはスムーズにインク流路に供給されることとなる。したがって、インクが無駄に消費されることを抑えるとともにインク流路を清浄化して高品質な印字を記録することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態では、キャップがノズル形成面を封止した状態で吸引部を駆動することによりノズルから液体を吸引しているが、これに限らない。例えば、キャップや吸引部を用いずに加圧によりノズルから液体を吸引してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、インク及び送品液の吸引時間を設定し、設定された吸引時間に基づいて、第1バルブの開閉及び第2バルブの開閉を制御しているが、これに限らない。例えば、吸引部に接続されたチューブの色を透明にし、インク及び送品液をそれぞれ異なる色に着色し、チューブの近傍に色識別センサーを配置することにより、インクあるいは送品液の吸引時間が経過したか否かを判定してもよい。すなわち、インク及び送品液を視覚的に区分けして、第1バルブの開閉及び第2バルブの開閉を制御してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、インク流路の洗浄時における液体噴射装置のメンテナンス方法(吐出回復動作方法)について例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、使用済みのインクカートリッジを新品のインクカートリッジに交換した後、初めて使用するとき、あるいは長期間使用しないときなどに行う初期充填時においても適用可能である。
【0058】
また、本実施形態では、液体噴射装置としてシリアル型のインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ライン型のインクジェット式プリンターにおいても適用可能である。
【0059】
また、本実施形態では、インクカートリッジがキャリッジに搭載されるオン・キャリッジタイプの液体噴射装置を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、インクカートリッジがキャリッジではない部分に搭載される装置(オフ・キャリッジタイプ)においても適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…液体噴射装置、10…液体噴射ヘッド、21A…ノズル形成面、17…ノズル、53…キャップ、61…第1バルブ、62…第2バルブ、70…供給路、71…第1供給路、72…第2供給路、80…吸引部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する圧力室と、
前記圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルと、
前記圧力室に連通して液体を供給する供給路と、
前記供給路の他端に連通して第1液体を供給する第1供給路と、
前記供給路の他端に連通して前記第1液体よりも濡れ性の高い、第2液体を供給する第2供給路と、
前記第1供給路を開閉する第1バルブと、
前記第2供給路を開閉する第2バルブと、を備え、
前記第1バルブを閉塞し、かつ、前記第2バルブを開放した状態で前記ノズルから前記第2液体が吸引された後に、前記第1バルブを開放し、かつ、前記第2バルブを閉塞した状態で前記ノズルから前記第1液体が吸引されることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1バルブは、前記ノズルに近接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能な開口部を有するキャップと、
前記キャップが前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記液体を吸引する吸引部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
液体を収容する圧力室と、
前記圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルと、
前記圧力室に連通して液体を供給する供給路と、
前記供給路の他端に連通して第1液体を供給する第1供給路と、
前記供給路の他端に連通して前記第1液体よりも濡れ性の高い、第2液体を供給する第2供給路と、
前記第1供給路を開閉する第1バルブと、
前記第2供給路を開閉する第2バルブと、を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能な開口部を有するキャップと、
前記キャップが前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記液体を吸引する吸引部と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法において、
前記第1バルブを閉塞し、かつ、前記第2バルブを開放して、前記キャップで前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記第2液体を吸引する第1の工程と、
前記第1バルブを開放し、かつ、前記第2バルブを閉塞して、前記キャップで前記ノズル形成面を封止した状態で前記ノズルから前記第1液体を吸引する第2の工程と、
を有することを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−194779(P2011−194779A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65850(P2010−65850)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】