液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置
【課題】液体噴射ヘッドを位置精度良く取り付けることを可能にする液体噴射ヘッドユニットを提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドがスペーサー32を介在させて固定されるサブキャリッジとを備えたヘッドユニットであって、スペーサー32は、スペーサー本体部64と、スペーサー本体部64から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列方向に関する前記フランジ部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とを有し、各基準面突起部74は、その表面が、前記フランジ部が当接されてサブキャリッジ26に対する前記記録ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、各後端側突起部67は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように一体的に形成され、各先端側突起部78は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように一体的に形成されている。
【解決手段】液体を噴射するノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドがスペーサー32を介在させて固定されるサブキャリッジとを備えたヘッドユニットであって、スペーサー32は、スペーサー本体部64と、スペーサー本体部64から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列方向に関する前記フランジ部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とを有し、各基準面突起部74は、その表面が、前記フランジ部が当接されてサブキャリッジ26に対する前記記録ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、各後端側突起部67は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように一体的に形成され、各先端側突起部78は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように一体的に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関し、特に、ヘッド固定部材に対して複数の液体噴射ヘッドを着脱可能に取り付けることが可能な液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べて固定したものを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある。そして、サブキャリッジに対して各記録ヘッドが位置決めされた状態でネジ留めされる構成においては、位置決めの後、ネジ留めの前に、記録ヘッドをサブキャリッジに対して接着剤(例えば、瞬間接着剤)によって仮留することが行われている。これにより、ネジ留めにより本固定するときにネジ留め時の回転モーメントにより記録ヘッドの位置がずれることが防止される。このような接着剤による仮留を採用する場合、一旦サブキャリッジに固定された記録ヘッドを修理或いは交換するために取り外すことが困難となる。このような問題に対し、記録ヘッドとサブキャリッジの間にスペーサーと呼ばれる仲介部材を介在させる構成も提案されている(例えば、特許文献1)。この構成によれば、記録ヘッドにスペーサーをネジ留めにより予め固定しておき、スペーサーとサブキャリッジとの間を接着剤で仮留してからスペーサーとサブキャリッジとをネジ留めにより本固定することで、サブキャリッジに一旦固定された記録ヘッドは、スペーサーとの間のネジの締結を解除することにより、スペーサー及びサブキャリッジから取り外すことができる。これにより、記録ヘッドの交換や修理等による記録ヘッドの着脱が容易になる。
【0004】
ところで、スペーサーを介在させて記録ヘッドをサブキャリッジに固定する上述の如き構造において、前記記録ヘッドは、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ突出するフランジ部を有しており、各フランジ部を介してヘッド本体をスペーサーに固定した状態でサブキャリッジに固定している。ここで、記録ヘッドのノズル面はサブキャリッジから所定の高さ位置を高精度に維持する必要があるが、かかる高さ位置は、前記フランジ部が当接するスペーサーのサブキャリッジからの高さ位置により保証するようになっている。そこで、記録ヘッドのノズル列方向に直交する幅方向におけるスペーサーの両端部には、サブキャリッジに当接されるベース面からフランジ部に向けて立ち上がる凸部である基準面突起部が形成されており、前記両端部の基準面突起部の表面を高さ位置の基準面として利用している。すなわち、基準面は所定の高さ位置となるように高精度に加工されており、前記両端部の基準面にフランジ部を当接させて記録ヘッドをスペーサーに固定することでサブキャリッジに対するノズル列の高さ位置が高精度に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスペーサーにおいて、基準面突起部に隣接して一体的に形成された同様の凸部である後端側突起部は有するものの、基準面突起部よりも先端側には凸部が存在しない。この結果、スペーサーを樹脂成型した場合、基準面突起部の先端部に成型時のガス残りによる樹脂の充填不足に起因する樹脂だれが発生する。この結果、基準面突起部の基準面としての機能が阻害されてしまう。すなわち、フランジ部を当接させてこれを安定的に所定の高さ位置に保持するための充分な面積が得られない等の不都合を生起する。一方、樹脂だれを見越して基準面突起部の基準面を予め広く形成する場合にはその高さ位置の精度を均一に高精度に加工することが面倒である。すなわち、高精度の金型調整が必要になり、定期メンテナンスの頻度も増えるため、コストアップにつながる。また、スペーサーのサイズが大きくなることで、サブキャリッジおよびキャリッジサイズが大きくなって液体噴射装置のサイズが大きくなる結果、商品価値が低下する。
【0007】
なお、このような問題は、インクを噴射する記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、上記サブキャリッジのようなヘッド固定部材に対してスペーサー等の仲介部材を介在させて液体噴射ヘッドを固定する構成を採用する、他の液体噴射ヘッドユニット、及びこれを備える液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドを位置精度良く取り付けることを可能にする仲介部材の構造を工夫した液体噴射ヘッドユニット、及びこれを備える液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の態様は、液体を噴射するノズルを複数列設して成るノズル列が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが仲介部材を介在させた状態で固定されるヘッド固定部材と、を備えた液体噴射ヘッドユニットであって、前記液体噴射ヘッドは、前記仲介部材が固定される仲介部材固定部を、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ有し、前記仲介部材は、前記ヘッド固定部材に当接させられるベース面を有する仲介部材本体部と、前記ヘッド固定部材側から前記仲介部材固定部側に向けて前記仲介部材本体部から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列方向に関する前記仲介部材固定部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部とを有し、前記各基準面突起部は、その表面が、前記仲介部材固定部が当接されて前記ヘッド固定部材に対する前記液体噴射ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、前記各後端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成され、前記各先端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
本態様によれば、基準面突起部に隣接して後端側突起部のみならず先端側突起部も基準面突起部に連続させて一体的に形成されているので、仲介部材を樹脂成型により形成した場合でも、前記基準面突起部における成型時のガス残りによる樹脂の充填不足に起因するその基準面の先端部で樹脂ダレを生起することはない。従来のように、基準面突起部が行き止まりの場合、成型時にガス残りが発生しやすいが、本態様においては、基準面突起部におけるガス残りを未然に防止し得るからである。
【0010】
このことにより、基準面突起部において高精度の高さ位置を維持した平面である必要十分な面積の基準面を確保することができる。ちなみに、単に基準面を広くした場合には、その全域を高精度に均一な面に加工することが面倒な作業となる。詳細には、高精度の金型の調整および高頻度の定期メンテナンスが必要になり、コストアップにつながる。これに対し本態様によれば、必要十分な面積の基準面を介して液体噴射ヘッドのノズル形成面のヘッド固定部材からの高さ位置を高精度に位置決めした状態で液体噴射ヘッドをヘッド固定部材に固定することができる。
【0011】
上記構成において、前記後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部で囲まれた内側の空間がナットを収納する凹部となっていることが望ましい。
上記構成によれば、先端側突起部も凹部の剛性向上に寄与させることができるので、その分ナット締結時の締付力に対する剛性が向上する。
【0012】
上記構成において、前記仲介部材の前記ベース面の周囲に接着剤注入のための面取り部を設けるとともに、前記先端側突起部の先端側において前記仲介部材固定部側から前記面取り部側に向かう切欠部が形成されているのが望ましい。
上記構成によれば前記仲介部材をヘッド固定部材に接着剤で固定する際、接着剤を面取り部を介してベース面の周囲に充填することができるので、かかる接着剤の充填作業を容易且つ的確に行うことができる。ここで、面取り部に対する接着剤の充填作業の際には切欠部を利用することで途中に接着工具と干渉する障害物が存在しない状態とすることができるので、当該充填作業を的確且つ容易に行うことができる。
【0013】
上記構成において、前記先端側突起部の表面には、射出成型時のエジェクターピン(Ejector Pin)の先端が当接されることが望ましい。
上記構成によれば、前記仲介部材の射出成型時に先端側突起部にエジェクターピンを当接させることができるので、エジェクターピン部分からガスを抜くことができる。ちなみに、基準面突起部は高精度の高さ位置が必要なため、エジェクターピンを当接させてガス抜きを行うことはできない。エジェクターピンの先端を基準面に当接させてエジェクターピンで突き出すと基準面の精度が低下するからである。このように、本態様では基準面突起部から連続的に隣接している先端側突起部から基準面突起部のガスを抜けやすくする効果がある。
【0014】
上記構成において、前記各仲介部材固定部には、前記幅方向の中心部に、前記仲介部材を取り付ける仲介部材取付穴がそれぞれ設けられると共に、前記幅方向の中心線上から外れた位置に、前記仲介部材に対する位置決めの基準となるヘッド側位置決め穴がそれぞれ設けられ、前記各仲介部材には、前記各仲介部材固定部の前記ヘッド側位置決め穴に対応する位置に、前記仲介部材固定部に対する位置決めの基準となる仲介部材側位置決め穴がそれぞれ設けられ、前記両側の仲介部材固定部には、前記ヘッド側位置決め穴に対して前記仲介部材側位置決め穴の位置を合わせて位置決めされた状態で前記仲介部材が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定された構造とするのが望ましい。
上記構成によれば、液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部にそれぞれ固定される仲介部材を同一形状とすることができる。この結果、ヘッド固定部材に位置決めされた液体噴射ヘッドの傾きを可及的に抑制することができる。特に、各仲介部材には、それぞれ、液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部のヘッド側位置決め穴に対応して合計2箇所に仲介部材側位置決め穴が設けられるので、仲介部材を可及的に小型化した上で仲介部材取付穴を仲介部材固定部の中心部に設ける関係から、やむを得ず、仲介部材固定部において幅方向の中心線上から外れた位置に位置決め穴を設ける構成においても、両側の仲介部材の共通化が可能となる。これにより、仲介部材の形状・寸法のばらつきが低減される。
【0015】
上記構成において、前記仲介部材における前記ノズル列に直交する方向の幅は、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成される構成を採用することが望ましい。
上記構成によれば、仲介部材におけるノズル列に直交する方向の幅が、液体噴射ヘッドにおけるノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されるので、ヘッド固定部材に液体噴射ヘッドを複数並べて配置した場合に、隣り合う液体噴射ヘッド間で仲介部材が干渉することが防止される。これにより、各液体噴射ヘッド間のピッチを狭めることができ、液体噴射ヘッドユニットの小型化に寄与することができる。
【0016】
上記構成において、前記液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部の各ヘッド側位置決め穴は、前記中心線から前記ノズル列に直交する方向の一方側にそれぞれ同じ距離だけ外れた位置に設けられる構成を採用することが望ましい。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドユニットを搭載したことを特徴とする液体噴射装置にある。
本態様によれば、液体噴射ヘッドのノズル形成面の仲介部材からの高さ位置が高精度に位置決めされた状態でヘッド固定部材に固定された液体噴射ヘッドユニットを搭載しているので、ノズル面の高さ位置を高精度に一致させることができ、液体の着弾ばらつきを除去し得る。この結果印刷品質の向上等に有効に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの内部構成の一部を示す平面図である。
【図3】キャリッジの上面図である。
【図4】キャリッジの右側面図である。
【図5】キャリッジの下面図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【図7】ヘッドユニットの斜視図である。
【図8】ヘッドユニットの上面図である。
【図9】ヘッドユニットの正面図である。
【図10】ヘッドユニットの下面図である。
【図11】ヘッドユニットの下面側の斜視図である。
【図12】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図13】記録ヘッドの構成を説明する上面図である。
【図14】記録ヘッドの構成を説明する下面図である。
【図15】記録ヘッドの構成を説明する正面図である。
【図16】記録ヘッドの構成を説明する右側面図である。
【図17】(a)は図13における領域Aの拡大図、(b)は図13における領域Bの拡大図である。
【図18】図15における領域Cの拡大図である。
【図19】図16における領域Dの拡大図である。
【図20】図16における領域Eの拡大図である。
【図21】スペーサーの構成を説明する図である。
【図22】図21における領域F、G、Hの拡大図である。
【図23】フランジ部におけるスペーサー固定部分の拡大図である。
【図24】図23におけるA−A線断面図である。
【図25】記録ヘッドに対するスペーサーの位置決め工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0020】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の平面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム等の記録媒体(着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジ3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジ3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図4参照。)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0021】
フレーム2の背面側であって主走査方向の一端側(図2における右端部)には、キャリッジ3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向における反対側(図2における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジ3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジ3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向に移動する。
【0022】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向に沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジ3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず。)。このリニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジ3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターの制御部(図示せず)は、エンコーダーパルスに基づいてキャリッジ3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向の一端側のホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0023】
図2に示すように、キャリッジ3には、ヘッドユニット17(図3参照)の各記録ヘッド18(図5参照)に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部、待機状態の記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)をキャッピングするキャッピング部等が設けられている。
【0024】
図3はキャリッジ3の平面(上面)図、図4はキャリッジ3の右側面図、図5はキャリッジ3の底面(下面)図である。また、図6は図3におけるA−A線断面図である。なお、図3は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジ3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面53を露出させるための底部開口19が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0025】
図7はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図8はヘッドユニット17の上面図、図9はヘッドユニット17の正面図(流路部材24が外された状態)、図10はヘッドユニット17の下面図、図11はヘッドユニット17の下面側の斜視図である。
【0026】
ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種)と、流路部材24と、を備えている。サブキャリッジ26は、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した起立壁部26bと、から上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26bとから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、キャリッジ本体12やキャリッジカバー13と比較して剛性が高められている。なお、サブキャリッジ26の材料としては、金属には限られず、合成樹脂を採用することも可能である。
【0027】
サブキャリッジ26のベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28(図10参照)が開設されている。このためベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。このベース部26aの下面には、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、止着穴29が開設されている(図24参照)。本実施形態において、止着穴29は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対して、ヘッド挿通開口28を間に挟んでノズル列方向に対応する方向(ヘッド列設方向に直交する方向)の両側の辺部に、後述するスペーサー32のサブキャリッジ用挿通穴69(図24参照)に対応してそれぞれ2つずつ、合計4箇所設けられている。
【0028】
本実施形態においては、図10に示すように、第1の記録ヘッド18a、第2の記録ヘッド18b、第3の記録ヘッド18c、第4の記録ヘッド18d、及び第5の記録ヘッド18eの合計5つの記録ヘッド18が、後述するサブタンク37をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部内に収容し、且つ、ベース部26aとの間にそれぞれスペーサー32を介在させた状態で、ノズル列に直交する方向に横並びで、ベース部26aにそれぞれ固定される。
【0029】
図7,8等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aのヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着することで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0030】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面(サブキャリッジ26に固定される側の面とは反対側の面)には、チューブ接続部34が設けられている。図8に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。また、流路部材24の下面において各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には図示しない接続流路が設けられている。各接続流路は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。さらに、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。
【0031】
図12は記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。図13は記録ヘッド18の上面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図14は記録ヘッド18の下面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図15は記録ヘッド18の正面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図16は記録ヘッド18の右側面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。
【0032】
また、図17(a)は図13における領域Aの拡大図、図17(b)は図13における領域Bの拡大図である。図18は図15における領域Cの拡大図であり、図19は図16における領域Dの拡大図である。そして、図20は図16における領域Eの拡大図である。なお、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。
【0033】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)をヘッドケース52に備えている。本実施形態における記録ヘッド18は、平面視においてノズル列方向に長尺である一方、ノズル列に直交する幅方向に短尺な形状に形成されている。そして、この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面53には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列56(ノズル群)が構成され、このノズル列56がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列56は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズルから成る。
【0034】
ヘッドケース52は、中空箱体状部材であり本発明におけるヘッド本体の一部である。このヘッドケース52の先端側には、ノズル形成面53を露出させた状態で流路ユニットが固定されている。また、ヘッドケース52の内部に形成された収容空部内には圧力発生手段などを収容し、先端面とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。また、ヘッドケース52の上面側におけるノズル列方向の両側には、側方に向けて突出したフランジ部57(本発明における仲介部材固定部に相当)がそれぞれ形成されている。このフランジ部57には、図17に示すように、スペーサー32のヘッド用挿通穴68(図21参照)に対応して、スペーサー取付穴54(本発明における仲介部材取付穴に相当)がそれぞれ開設されている。両側のフランジ部57にスペーサー32をそれぞれ取り付ける際に、このスペーサー取付穴54にスペーサー固定ボルト27aの軸部が挿通される。
【0035】
このスペーサー取付穴54は、フランジ部57において、両側のフランジ部57の並び方向に直交する方向(スペーサー32との締結箇所同士の並び方向またはノズル列に直交する方向)であるフランジ幅方向の中央部に、フランジ部57の厚さ方向を貫通した状態で形成されている。両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方(図13(a)における左側)のスペーサー取付穴54は、図17(a)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、この一方のスペーサー取付穴54は、スペーサー固定ボルト27aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。これに対し、他方(図13(a)における右側)のスペーサー取付穴54は、図17(b)に示すように平面視において各スペーサー取付穴54の並び方向(ノズル列方向)に長尺な長穴となっている。この他方のスペーサー取付穴54の取付穴並び方向の内径(長径)はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも大きく設定されており、取付穴並び方向に直交するフランジ幅方向の内径(短径)は一方のスペーサー取付穴54の内径に揃えられている。このように、両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方を丸穴とし、他方を長穴とすることにより、両フランジ部57にそれぞれ固定された各スペーサー32をサブキャリッジ26のヘッド取付部に対してネジ留めする際に、サブキャリッジ26側の止着穴29の間隔とスペーサー取付穴54の間隔との誤差が、長穴の長径の範囲内で許容される。
【0036】
各スペーサー取付穴54の開口周縁部61は、フランジ部57のスペーサー固定面63(仲介部材固定面)よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。この開口周縁部61は、スペーサー取付穴54の開口周囲を囲繞する状態で形成された土手状の突起である。また、フランジ部57のスペーサー固定面63において、スペーサー取付穴54よりもフランジ幅方向の両外側には、平面視円形状の当接凸部62がそれぞれ形成されている。本実施形態においては、両側のフランジ部57の外側の隅角部にそれぞれ当接凸部62が設けられている。この当接凸部62は、フランジ部57のスペーサー固定面63よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。
【0037】
さらに、両側のフランジ部57のスペーサー固定面63のうちの一方のフランジ部57a(図13(a)における左側)には、後述するスペーサー32の位置決め穴77aに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76a(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。同様に、他方のフランジ部57b(図13(a)における右側)には、スペーサー32の位置決め穴77bに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる長穴76b(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。
【0038】
丸穴76aは、図17(a)に示すように、フランジ部57aにおいて、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一方側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57aの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この丸穴76aは、平面視において丸穴形状の開口を持つ貫通穴であり、その内径は後述する位置決め治具79(図25参照)の位置決めピン80aの外径よりも僅かに大きく設定されている。また、長穴76bは、図17(b)に示すように、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一方側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57bの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この長穴76bは、平面視において位置決め穴並設方向に長尺な長円形状の開口を持つ貫通穴である。この長穴76bの位置決め穴並設方向の内径(長径)は、位置決め治具79の位置決めピン80bの外径よりも十分に大きく設定されており、長穴76bのフランジ幅方向の内径(短径)は丸穴76aの内径に揃えられている。なお、位置決め治具79によるフランジ部57に対するスペーサー32の位置決めについては後述する。
【0039】
本実施形態においては、これらの丸穴76aと長穴76bとは、フランジ幅方向の中心線Oに対してフランジの幅方向の一方側(図中下側)にそれぞれ同じ距離(図中に符号xで示す)だけ外れた位置に設けられている。即ち、丸穴76aのフランジ幅方向の中心線Oからの距離と、長穴76bのフランジ幅方向の中心線Oからの距離とが、等しくなるように設定されている。
【0040】
ヘッドケース52の先端面側には、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を記録紙等の接触から保護するカバー部材58が取り付けられる。このカバー部材58は、ステンレス鋼などの導電性を有する薄手の金属板で作製されている。本実施形態におけるカバー部材58は、中央部分に開口窓部59が開設された額縁状のフレーム部58aと、ヘッドケース52への取付け状態でフレーム部58aのノズル列方向両側の縁部からヘッドケース52の側面に沿ってそれぞれ延出した側板部58bと、により概略構成されている。各側板部58bの先端部は、フランジ部57に沿う形となるように外側に向けて屈曲されており、カバー止着ネジ60によってフランジ部57にネジ留めされている。このカバー部材58は、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を保護する機能以外に、ノズル形成面53を接地電位に調整する機能も有している。
【0041】
上記サブタンク37は、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38には図示しないリング状のパッキンが嵌め込まれており、このパッキンにより流路部材24との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板が設けられている(図示せず)。サブタンク37の後端面の中央部の開口内には、当該駆動基板にフレキシブルケーブル(配線部材の一種。図示せず)を電気的に接続するコネクター49が配設されている。
【0042】
図21は、スペーサー32(仲介部材の一種)の構成を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は下面図である。図22は図21(c)、(d)における領域F、G、Hの拡大図である。また、図23はフランジ部57におけるスペーサー32の取り付け位置の拡大平面図(図10における領域Xの拡大図)であり、図24は図23におけるA−A線断面図である。
【0043】
本実施形態におけるスペーサー32は、合成樹脂から成る部材、すなわち樹脂成型により形成される部材であり、1つの記録ヘッド18に対して両側のフランジ部57のスペーサー固定面63(サブタンク37側の面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる。これらのスペーサー32は、同一形状となっている。そして、記録ヘッド18は、スペーサー32を介してサブキャリッジ26のベース部26aに取り付けられる。このため、スペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに対して高さ方向(ノズル形成面に垂直な方向)の位置を規定する部材である。したがって、スペーサー32のベース面65から、後述する基準面突起部74の表面(先端面)までの寸法に関してより高い精度が要求される。
【0044】
これらのスペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに配置されるベース面65を有するスペーサー本体部64と、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とを有している。ここで、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78は、サブキャリッジ26側からフランジ部57に向けて前記スペーサー本体部64から立ち上がる凸部であり、ノズル列56(図12参照)に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列56方向に関するフランジ部57の先端部に向けてそれぞれ形成されている。
【0045】
さらに、基準面突起部74は、その表面が、フランジ部57が当接されてサブキャリッジ26(図24参照)に対する記録ヘッド18の高さ位置を規定する基準面となっている。後端側突起部67は、その表面の高さ位置が基準面突起部74の基準面以下となるように基準面突起部74に対しノズル列56方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成されている。先端側突起部78は、その表面の高さ位置が基準面突起部74の基準面以下となるように基準面突起部74に対しノズル列56方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されている。さらに、後端側突起部67と先端側突起部78には、スペーサー32の射出成型時のエジェクターピンの先端が当接されるようになっている。この結果、本実施形態によればスペーサー32の射出成型時に後端側突起部67と先端側突起部78にエジェクターピンを当接させることができるので、エジェクターピン部分からガスを抜くことができる。
【0046】
スペーサー32には、図22に明示するようにベース面65の周囲に接着剤注入のための面取り部(以下、C面ともいう)81a,81b,83及びC面81a,81bに連続する段部82a,82bが形成してある。
【0047】
さらに、本実施形態におけるスペーサー32は、そのスペーサー本体部64の幅方向(フランジ部57に取り付けられた状態におけるフランジ幅方向に相当)の中央部に形成された中央隆起部66を有しており、後端側突起部67は中央隆起部66に対して幅方向の両側に離隔して形成されている。平面視において、このスペーサー32の幅方向の寸法はフランジ部57の幅方向の寸法に概ね揃えられている。また、このスペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態では、中央隆起部66の一部(後述)が、フランジ部57の突出端面よりも少し側方に突出する。
【0048】
中央隆起部66は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から隆起している。この中央隆起部66の幅方向両側の側面には、平面視においてヘッド固定ナット43b(図23等参照。)の各辺の形状に倣った切欠が設けられている。この切欠は、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78の内壁面と共にヘッド固定ナット43bの平面方向の姿勢(即ち、締結時の回転)を規制するヘッド固定ナット用切欠70である。即ち、スペーサー本体部64と、ヘッド固定ナット用切欠70と、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とによって、ヘッド固定ナット43bを収容する凹部であるヘッド固定ナット収容部72が区画されている。そして、スペーサー32がフランジ部57に固定される前の段階で、各ヘッド固定ナット収容部72にヘッド固定ナット43bがそれぞれ嵌め込まれる。ここで、先端側突起部78の先端側においてフランジ部57側からベース面65側に向かう切欠部84が形成されている。
【0049】
中央隆起部66の奥行き方向の一方(フランジ部57に取り付けた状態においてサブタンク37側とは反対側)の部分は、スペーサー本体部64から側方に突出している。この突出した部分には、奥行き方向の一方から他方に向けて次第に幅狭となる平面視略三角形状の治具用切欠71が形成されている。この治具用切欠71には、記録ヘッド18をサブキャリッジ26のヘッド取付部に位置決めする際において、ヘッド保持用の治具が嵌合される。
【0050】
中央隆起部66の幅方向の中央部分には、記録ヘッド18におけるフランジ部57のスペーサー取付穴54に対応してヘッド用挿通穴68が開設されている。このヘッド用挿通穴68は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴である。このヘッド用挿通穴68の内径は、スペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されており、スペーサー取付穴54の内径に揃えられている。ヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73は、中央隆起部66の突出端面よりも、取り付け状態におけるフランジ部57側に突出している。この挿通穴周縁部73は、平面視においてヘッド用挿通穴68の開口周囲を囲繞する土手状の突起であり、フランジ部57の開口周縁部61に対応する位置に設けられている。
【0051】
中央隆起部66の両側に設けられたヘッド固定ナット収容部72には、サブキャリッジ26のベース部26aに設けられた止着穴29に対応して、サブキャリッジ用挿通穴69がそれぞれ開設されている。これらのサブキャリッジ用挿通穴69は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はヘッド固定ボルト43aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、サブキャリッジ用挿通穴69は、ヘッド固定ボルト43aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。このように、1つのスペーサー32には、1つのヘッド用挿通穴68と2つのサブキャリッジ用挿通穴69が各々設けられている。即ち、スペーサー32とサブキャリッジ26とのヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによる締結箇所は、スペーサー32とフランジ部57との締結箇所よりも幅方向の外側となる。
【0052】
スペーサー32の幅方向両端部にそれぞれ設けられている後端側突起部67は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から突出した壁であり、スペーサー本体部64の幅方向両側面と一連に形成されている。この後端側突起部67の突出端面は、中央隆起部66の突出端面と同一面上に揃えられている。また、後端側突起部67の突出端面には、当該端面から取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けて基準面突起部74が突設されている。この基準面突起部74は、スペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態(スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結された状態)において当接凸部62に当接可能な位置に設けられている。この基準面突起部74の表面は、本発明における基準面として機能する。
【0053】
スペーサー32のベース面65側において、幅方向の中央部には、スペーサー固定ナット収容部75が形成されている。このスペーサー固定ナット収容部75は、平面視においてスペーサー固定ナット27bの一部の形状に倣った窪みであり、ベース面65からスペーサー32の厚さ方向の途中まで窪んでいる。スペーサー固定ナット収容部75にスペーサー固定ナット27bが嵌め込まれて窪みの底部に着座した状態では、このスペーサー固定ナット収容部75の内壁面によってスペーサー固定ナット27bの平面方向の姿勢が規制される。即ち、スペーサー固定ボルト27aとの締結時のスペーサー固定ナット27bの回転が防止される。また、このスペーサー固定ナット収容部75の窪みの底部には、ヘッド用挿通穴68が開口している。さらに、スペーサー32における中央隆起部66と後端側突起部67との間であって、ヘッド固定ナット収容部72から外れた位置には、スペーサー32の厚さ方向を貫通した状態で位置決め穴77が合計2箇所開設されている。これらの位置決め穴77a,77bは、スペーサー32の幅方向中心部に対して左右対称となる位置に形成されている。
【0054】
本実施形態における位置決め穴77は、平面視円形の貫通穴である。一対の位置決め穴77のうちの一方の位置決め穴77a(図21(b)における左側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57aに取り付けられた状態における丸穴76aに対応する位置に設けられている。これに対して、他方の位置決め穴77b(図21(b)における右側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57bに取り付けられた状態における長穴76bに対応する位置に設けられている。即ち、各スペーサー32には、フランジ部57aの丸穴76aに対応する位置決め穴77aと、フランジ部75bの長穴76bに対応する位置決め穴77bと、がそれぞれ開設されている。
【0055】
次に、図25の模式図を参照して、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bにそれぞれ上記のスペーサー32を位置決めする工程について説明する。このスペーサー位置決め工程では、まず、位置決め治具79に記録ヘッド18がセットされる。位置決め治具79には、一対の位置決めピン80a,80bが立設されており、一方の位置決めピン80aをフランジ部75aの丸穴76aに挿通すると共に、他方の位置決めピン80bをフランジ部75bの長穴76bに挿通することで、位置決め治具79に対する記録ヘッド18の平面方向(ノズル形成面に平行な面方向)の位置が規定される。ここで、長穴76bの位置決め穴並設方向の内径は、位置決めピン80の外径よりも大きく設定されているので、丸穴76aと長穴76bとの間隔と、位置決めピン80a,80bの間隔との間の誤差が、位置決めピン80bと長穴76bとの間に生じる間隙の範囲内で許容される。
【0056】
記録ヘッド18を位置決め治具79にセットしたならば、当該記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに、それぞれスペーサー32が配置される。各スペーサー32は、挿通穴周縁部73をフランジ部57の開口周縁部61に対向させると共に、治具用切欠71を互いに反対側(外側)に向けて、ヘッド本体を中心として対称な姿勢(即ち、180°回転した姿勢)でフランジ部57にそれぞれ配置される。このとき、一方のフランジ部57aに配置されるスペーサー32は、フランジ部75aの丸穴76aから突出した一方の位置決めピン80aが位置決め穴77aに挿入されることで、当該フランジ部57aに対して位置決めされる。なお、位置決め穴77aを中心としたスペーサー32の回転については、図示しない他の治具によって規制される。同様に、他方のフランジ部57bに配置されるスペーサー32は、フランジ部75bの長穴76bから突出した他方の位置決めピン80bが位置決め穴77bに挿入されることで、当該フランジ部57bに対して位置決めされる。そして、各スペーサー32は、位置決めされた状態でスペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってフランジ部57に締結される。このようにして、各フランジ部57a,57bに対してスペーサー32が互いに対称となる向きで位置決めされて固定される。
【0057】
ここで、フランジ部57にスペーサー32を配置し、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結する前の状態では、フランジ幅方向において当該締結箇所から可及的に離れた両端部で当接凸部62と基準面突起部74とが当接する一方で、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所(締結予定箇所)、即ち、スペーサー取付穴54の開口周縁部61とヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73との間において間隙G(図24参照)が生じる。これにより、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってスペーサー32をフランジ部57に締結した後の状態では、当接凸部62と基準面突起部74とは、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所およびスペーサー32とサブキャリッジ26の締結箇所よりもフランジ幅方向の外側において他の部分よりも優先的に当接する。これらの当接凸部62と基準面突起部74との当接により、フランジ部57に対するスペーサー32の高さ方向の位置および姿勢が規制される。このような構成を採用することにより、記録ヘッド18とスペーサー32との間で、両側のフランジ部57の締結箇所同士を結ぶ仮想線に直交する方向、本実施形態においては、記録ヘッド18の短尺方向において傾きが生じることが抑制される。したがって、記録ヘッド18を、スペーサー32を介在させてサブキャリッジ26に取り付けた状態においても、サブキャリッジ26に対して記録ヘッド18が短尺方向に傾くことが抑制される。
【0058】
記録ヘッド18の両側のフランジ部57にそれぞれスペーサー32が固定されたならば、次に、サブキャリッジ26のヘッド取付部に対する記録ヘッド18の位置決めが行われる。この位置決め工程では、例えば、サブキャリッジ26のベース部26aにおけるヘッド取付部にセットされた記録ヘッド18のノズル形成面53をCCDカメラ等の撮像手段を用いて観察しながら、当該ノズル形成面53の予め定められた複数(少なくとも2箇所)の特定のノズル51が規定位置に位置付けられるように、ベース部26a上における記録ヘッド18の位置が調整される。取り付け対象の記録ヘッド18が位置決めされたならば、続いて、当該記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32がベース部26aに対して接着剤によって仮固定される。この仮固定は、接着剤をベース面65の周囲に形成するC面81a,81b及び段部82a,82bに接着剤を充填することにより行う。また、この仮固定に用いられる接着剤としては、シアノアクリレートを主成分とした所謂瞬間接着剤が好適であるが、完全に硬化した状態でサブキャリッジ26に対して記録ヘッド18がガタつくことなく固定される程度の剛性を発揮するものであれば、任意の接着剤を用いることができる。例えば、紫外線硬化型の接着剤を採用することも可能である。この場合、スペーサー32又はサブキャリッジ26を、透光性を有する素材で作製することが望ましい。そして、接着剤が硬化した後、ヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによってスペーサー32とベース部26aとが締結されて、記録ヘッド18aがベース部26aの規定位置に本固定される。
【0059】
このような手順でサブキャリッジ26に対して各記録ヘッド18が取り付けられる。その後、流路部材24がサブキャリッジ26に固定される。上述したように、流路部材24は、流路止着ネジ45によってサブキャリッジ26に対して固定される。この際、流路部材24の接続流路40が各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結される。なお、流路部材24は、各記録ヘッド18がサブキャリッジ26に取り付けられる前の段階で、サブキャリッジ26に固定されるようにしても良い。
【0060】
以上の工程を経てヘッドユニット17が完成する。このヘッドユニット17は、上述したように、キャリッジ本体12の底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53を露出させた状態で、キャリッジ本体12の内部に収容され、キャリッジ本体12に対するヘッドユニット17の位置や傾きなどの姿勢が調整された後、ヘッドユニット固定ネジ22によりネジ留めされて固定される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のヘッドユニット17のスペーサー32は、基準面突起部74に隣接して後端側突起部67のみならず先端側突起部78も基準面突起部74に連続させて一体的に形成されているので、スペーサー32を樹脂成型した場合でも、基準面突起部74における樹脂の充填不足に起因するその基準面の先端部で樹脂ダレを生起することはない。すなわち、基準面突起部74において高精度の高さ位置を維持した平面である必要十分な面積の基準面を確保することができる。この結果、必要十分な面積の基準面を介してノズル形成面53のサブキャリッジ26からの高さ位置を高精度に位置決めした状態で記録ヘッド18をサブキャリッジ26に固定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78で囲まれた内側の空間がナット43bを収納する凹部となっているので、先端側突起部78も凹部の剛性向上に寄与させることができ、その分ナット締結時の締付力に対する凹部の剛性が向上する。さらに、スペーサー32のベース面65の周囲には接着剤注入のためのC面81a,81bが設けられているので、スペーサー32をサブキャリッジ26に接着剤で仮固定する際、接着剤をC面81a、81bを介してベース面65の周囲に充填することで、かかる接着剤の充填作業を容易且つ的確に行うことができる。また、かかる接着剤の充填作業に際し、切欠部84を利用することで途中に接着工具と干渉する障害物が存在しない状態とすることができ、当該充填作業を的確且つ容易に行うことができる。
【0063】
さらに、上記実施形態においては、記録ヘッド18におけるスペーサー32が固定されるフランジ部57を、ヘッドケース52を間に挟んで両側にそれぞれ有し、各フランジ部57a,57bには、記録ヘッド18におけるノズル列56に直交する幅方向の中心部に、スペーサー32を取り付けるスペーサー取付穴54がそれぞれ設けられると共に、幅方向の中心線O上から外れた位置に、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76aと長穴76bとがそれぞれ設けられ、各スペーサー32には、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応する位置に、フランジ部57a,57bに対する位置決めの基準となる位置決め穴77a,77bがそれぞれ設けられ、両側のフランジ部57a,57bには、丸穴76aと長穴76bに対して位置決め穴77a,77bの位置を合わせて位置決めされた状態でスペーサー32が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定される構成を採用するので、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに固定されるスペーサー32の部品の共通化、形状・寸法管理の共通化が可能となる。これにより、スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。この結果、スペーサー32の形状・寸法のばらつきに起因するサブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを可及的に抑制することができる。特に、各スペーサー32には、それぞれ、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応して合計2箇所に位置決め穴77a,77bが設けられるので、スペーサー32を可及的に小型化した上でスペーサー取付穴54をフランジ部57の中心部に設ける関係から、やむを得ず、フランジ部57において幅方向の中心線上から外れた位置に丸穴76aと長穴76bを設ける構成においても、各スペーサー32の共通化が可能となる。これにより、各スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。
【0064】
また、スペーサー32におけるノズル列56に直交する方向の幅は、記録ヘッド18におけるノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されるので、複数の記録ヘッド18を並べて配置場合に、隣り合う液体噴射ヘッド間で仲介部材が干渉することが防止される。これにより、サブキャリッジ26における各記録ヘッド18間のピッチを狭めることができる。その結果、ヘッドユニット17の小型化が可能となる。
【0065】
なお、少なくとも、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32は、同一の金型によって作製されたものを使用することが望ましい。これにより、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の寸法・形状を可及的に揃えることができる。これにより、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きをより確実に防止することができる。
【0066】
また、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の基準面突起部74の先端面に対し、研磨して平坦化するラッピング処理が同時に施される構成を採用することが望ましい。このように構成することにより、各スペーサー32の寸法・形状をより確実に揃えることができる。特に、スペーサー32のベース面65から基準面突起部74の先端面までの高さ方向の寸法を、各スペーサー32の間でより高い精度で揃えることができるので、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを一層確実に防止することができる。
【0067】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記各実施形態では、記録媒体に対して記録ヘッド18を往復移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド18の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド18に対して記録媒体を移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。
【0069】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンター、17 ヘッドユニット、18 記録ヘッド、26 サブキャリッジ、32 スペーサー、51 ノズル、52 ヘッドケース、53 ノズル形成面、54 スペーサー取付穴、56 ノズル列、57 フランジ部、74 基準面突起部、78 先端側突起部、77a,77b 位置決め穴、81a,81b 面取り部(C面)、84 切欠部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関し、特に、ヘッド固定部材に対して複数の液体噴射ヘッドを着脱可能に取り付けることが可能な液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べて固定したものを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある。そして、サブキャリッジに対して各記録ヘッドが位置決めされた状態でネジ留めされる構成においては、位置決めの後、ネジ留めの前に、記録ヘッドをサブキャリッジに対して接着剤(例えば、瞬間接着剤)によって仮留することが行われている。これにより、ネジ留めにより本固定するときにネジ留め時の回転モーメントにより記録ヘッドの位置がずれることが防止される。このような接着剤による仮留を採用する場合、一旦サブキャリッジに固定された記録ヘッドを修理或いは交換するために取り外すことが困難となる。このような問題に対し、記録ヘッドとサブキャリッジの間にスペーサーと呼ばれる仲介部材を介在させる構成も提案されている(例えば、特許文献1)。この構成によれば、記録ヘッドにスペーサーをネジ留めにより予め固定しておき、スペーサーとサブキャリッジとの間を接着剤で仮留してからスペーサーとサブキャリッジとをネジ留めにより本固定することで、サブキャリッジに一旦固定された記録ヘッドは、スペーサーとの間のネジの締結を解除することにより、スペーサー及びサブキャリッジから取り外すことができる。これにより、記録ヘッドの交換や修理等による記録ヘッドの着脱が容易になる。
【0004】
ところで、スペーサーを介在させて記録ヘッドをサブキャリッジに固定する上述の如き構造において、前記記録ヘッドは、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ突出するフランジ部を有しており、各フランジ部を介してヘッド本体をスペーサーに固定した状態でサブキャリッジに固定している。ここで、記録ヘッドのノズル面はサブキャリッジから所定の高さ位置を高精度に維持する必要があるが、かかる高さ位置は、前記フランジ部が当接するスペーサーのサブキャリッジからの高さ位置により保証するようになっている。そこで、記録ヘッドのノズル列方向に直交する幅方向におけるスペーサーの両端部には、サブキャリッジに当接されるベース面からフランジ部に向けて立ち上がる凸部である基準面突起部が形成されており、前記両端部の基準面突起部の表面を高さ位置の基準面として利用している。すなわち、基準面は所定の高さ位置となるように高精度に加工されており、前記両端部の基準面にフランジ部を当接させて記録ヘッドをスペーサーに固定することでサブキャリッジに対するノズル列の高さ位置が高精度に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスペーサーにおいて、基準面突起部に隣接して一体的に形成された同様の凸部である後端側突起部は有するものの、基準面突起部よりも先端側には凸部が存在しない。この結果、スペーサーを樹脂成型した場合、基準面突起部の先端部に成型時のガス残りによる樹脂の充填不足に起因する樹脂だれが発生する。この結果、基準面突起部の基準面としての機能が阻害されてしまう。すなわち、フランジ部を当接させてこれを安定的に所定の高さ位置に保持するための充分な面積が得られない等の不都合を生起する。一方、樹脂だれを見越して基準面突起部の基準面を予め広く形成する場合にはその高さ位置の精度を均一に高精度に加工することが面倒である。すなわち、高精度の金型調整が必要になり、定期メンテナンスの頻度も増えるため、コストアップにつながる。また、スペーサーのサイズが大きくなることで、サブキャリッジおよびキャリッジサイズが大きくなって液体噴射装置のサイズが大きくなる結果、商品価値が低下する。
【0007】
なお、このような問題は、インクを噴射する記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、上記サブキャリッジのようなヘッド固定部材に対してスペーサー等の仲介部材を介在させて液体噴射ヘッドを固定する構成を採用する、他の液体噴射ヘッドユニット、及びこれを備える液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドを位置精度良く取り付けることを可能にする仲介部材の構造を工夫した液体噴射ヘッドユニット、及びこれを備える液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の態様は、液体を噴射するノズルを複数列設して成るノズル列が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが仲介部材を介在させた状態で固定されるヘッド固定部材と、を備えた液体噴射ヘッドユニットであって、前記液体噴射ヘッドは、前記仲介部材が固定される仲介部材固定部を、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ有し、前記仲介部材は、前記ヘッド固定部材に当接させられるベース面を有する仲介部材本体部と、前記ヘッド固定部材側から前記仲介部材固定部側に向けて前記仲介部材本体部から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列方向に関する前記仲介部材固定部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部とを有し、前記各基準面突起部は、その表面が、前記仲介部材固定部が当接されて前記ヘッド固定部材に対する前記液体噴射ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、前記各後端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成され、前記各先端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
本態様によれば、基準面突起部に隣接して後端側突起部のみならず先端側突起部も基準面突起部に連続させて一体的に形成されているので、仲介部材を樹脂成型により形成した場合でも、前記基準面突起部における成型時のガス残りによる樹脂の充填不足に起因するその基準面の先端部で樹脂ダレを生起することはない。従来のように、基準面突起部が行き止まりの場合、成型時にガス残りが発生しやすいが、本態様においては、基準面突起部におけるガス残りを未然に防止し得るからである。
【0010】
このことにより、基準面突起部において高精度の高さ位置を維持した平面である必要十分な面積の基準面を確保することができる。ちなみに、単に基準面を広くした場合には、その全域を高精度に均一な面に加工することが面倒な作業となる。詳細には、高精度の金型の調整および高頻度の定期メンテナンスが必要になり、コストアップにつながる。これに対し本態様によれば、必要十分な面積の基準面を介して液体噴射ヘッドのノズル形成面のヘッド固定部材からの高さ位置を高精度に位置決めした状態で液体噴射ヘッドをヘッド固定部材に固定することができる。
【0011】
上記構成において、前記後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部で囲まれた内側の空間がナットを収納する凹部となっていることが望ましい。
上記構成によれば、先端側突起部も凹部の剛性向上に寄与させることができるので、その分ナット締結時の締付力に対する剛性が向上する。
【0012】
上記構成において、前記仲介部材の前記ベース面の周囲に接着剤注入のための面取り部を設けるとともに、前記先端側突起部の先端側において前記仲介部材固定部側から前記面取り部側に向かう切欠部が形成されているのが望ましい。
上記構成によれば前記仲介部材をヘッド固定部材に接着剤で固定する際、接着剤を面取り部を介してベース面の周囲に充填することができるので、かかる接着剤の充填作業を容易且つ的確に行うことができる。ここで、面取り部に対する接着剤の充填作業の際には切欠部を利用することで途中に接着工具と干渉する障害物が存在しない状態とすることができるので、当該充填作業を的確且つ容易に行うことができる。
【0013】
上記構成において、前記先端側突起部の表面には、射出成型時のエジェクターピン(Ejector Pin)の先端が当接されることが望ましい。
上記構成によれば、前記仲介部材の射出成型時に先端側突起部にエジェクターピンを当接させることができるので、エジェクターピン部分からガスを抜くことができる。ちなみに、基準面突起部は高精度の高さ位置が必要なため、エジェクターピンを当接させてガス抜きを行うことはできない。エジェクターピンの先端を基準面に当接させてエジェクターピンで突き出すと基準面の精度が低下するからである。このように、本態様では基準面突起部から連続的に隣接している先端側突起部から基準面突起部のガスを抜けやすくする効果がある。
【0014】
上記構成において、前記各仲介部材固定部には、前記幅方向の中心部に、前記仲介部材を取り付ける仲介部材取付穴がそれぞれ設けられると共に、前記幅方向の中心線上から外れた位置に、前記仲介部材に対する位置決めの基準となるヘッド側位置決め穴がそれぞれ設けられ、前記各仲介部材には、前記各仲介部材固定部の前記ヘッド側位置決め穴に対応する位置に、前記仲介部材固定部に対する位置決めの基準となる仲介部材側位置決め穴がそれぞれ設けられ、前記両側の仲介部材固定部には、前記ヘッド側位置決め穴に対して前記仲介部材側位置決め穴の位置を合わせて位置決めされた状態で前記仲介部材が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定された構造とするのが望ましい。
上記構成によれば、液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部にそれぞれ固定される仲介部材を同一形状とすることができる。この結果、ヘッド固定部材に位置決めされた液体噴射ヘッドの傾きを可及的に抑制することができる。特に、各仲介部材には、それぞれ、液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部のヘッド側位置決め穴に対応して合計2箇所に仲介部材側位置決め穴が設けられるので、仲介部材を可及的に小型化した上で仲介部材取付穴を仲介部材固定部の中心部に設ける関係から、やむを得ず、仲介部材固定部において幅方向の中心線上から外れた位置に位置決め穴を設ける構成においても、両側の仲介部材の共通化が可能となる。これにより、仲介部材の形状・寸法のばらつきが低減される。
【0015】
上記構成において、前記仲介部材における前記ノズル列に直交する方向の幅は、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成される構成を採用することが望ましい。
上記構成によれば、仲介部材におけるノズル列に直交する方向の幅が、液体噴射ヘッドにおけるノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されるので、ヘッド固定部材に液体噴射ヘッドを複数並べて配置した場合に、隣り合う液体噴射ヘッド間で仲介部材が干渉することが防止される。これにより、各液体噴射ヘッド間のピッチを狭めることができ、液体噴射ヘッドユニットの小型化に寄与することができる。
【0016】
上記構成において、前記液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部の各ヘッド側位置決め穴は、前記中心線から前記ノズル列に直交する方向の一方側にそれぞれ同じ距離だけ外れた位置に設けられる構成を採用することが望ましい。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドユニットを搭載したことを特徴とする液体噴射装置にある。
本態様によれば、液体噴射ヘッドのノズル形成面の仲介部材からの高さ位置が高精度に位置決めされた状態でヘッド固定部材に固定された液体噴射ヘッドユニットを搭載しているので、ノズル面の高さ位置を高精度に一致させることができ、液体の着弾ばらつきを除去し得る。この結果印刷品質の向上等に有効に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの内部構成の一部を示す平面図である。
【図3】キャリッジの上面図である。
【図4】キャリッジの右側面図である。
【図5】キャリッジの下面図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【図7】ヘッドユニットの斜視図である。
【図8】ヘッドユニットの上面図である。
【図9】ヘッドユニットの正面図である。
【図10】ヘッドユニットの下面図である。
【図11】ヘッドユニットの下面側の斜視図である。
【図12】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図13】記録ヘッドの構成を説明する上面図である。
【図14】記録ヘッドの構成を説明する下面図である。
【図15】記録ヘッドの構成を説明する正面図である。
【図16】記録ヘッドの構成を説明する右側面図である。
【図17】(a)は図13における領域Aの拡大図、(b)は図13における領域Bの拡大図である。
【図18】図15における領域Cの拡大図である。
【図19】図16における領域Dの拡大図である。
【図20】図16における領域Eの拡大図である。
【図21】スペーサーの構成を説明する図である。
【図22】図21における領域F、G、Hの拡大図である。
【図23】フランジ部におけるスペーサー固定部分の拡大図である。
【図24】図23におけるA−A線断面図である。
【図25】記録ヘッドに対するスペーサーの位置決め工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0020】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の平面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム等の記録媒体(着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジ3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジ3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図4参照。)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0021】
フレーム2の背面側であって主走査方向の一端側(図2における右端部)には、キャリッジ3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向における反対側(図2における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジ3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジ3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向に移動する。
【0022】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向に沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジ3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず。)。このリニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジ3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターの制御部(図示せず)は、エンコーダーパルスに基づいてキャリッジ3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向の一端側のホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0023】
図2に示すように、キャリッジ3には、ヘッドユニット17(図3参照)の各記録ヘッド18(図5参照)に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部、待機状態の記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)をキャッピングするキャッピング部等が設けられている。
【0024】
図3はキャリッジ3の平面(上面)図、図4はキャリッジ3の右側面図、図5はキャリッジ3の底面(下面)図である。また、図6は図3におけるA−A線断面図である。なお、図3は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジ3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面53を露出させるための底部開口19が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0025】
図7はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図8はヘッドユニット17の上面図、図9はヘッドユニット17の正面図(流路部材24が外された状態)、図10はヘッドユニット17の下面図、図11はヘッドユニット17の下面側の斜視図である。
【0026】
ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種)と、流路部材24と、を備えている。サブキャリッジ26は、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した起立壁部26bと、から上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26bとから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、キャリッジ本体12やキャリッジカバー13と比較して剛性が高められている。なお、サブキャリッジ26の材料としては、金属には限られず、合成樹脂を採用することも可能である。
【0027】
サブキャリッジ26のベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28(図10参照)が開設されている。このためベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。このベース部26aの下面には、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、止着穴29が開設されている(図24参照)。本実施形態において、止着穴29は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対して、ヘッド挿通開口28を間に挟んでノズル列方向に対応する方向(ヘッド列設方向に直交する方向)の両側の辺部に、後述するスペーサー32のサブキャリッジ用挿通穴69(図24参照)に対応してそれぞれ2つずつ、合計4箇所設けられている。
【0028】
本実施形態においては、図10に示すように、第1の記録ヘッド18a、第2の記録ヘッド18b、第3の記録ヘッド18c、第4の記録ヘッド18d、及び第5の記録ヘッド18eの合計5つの記録ヘッド18が、後述するサブタンク37をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部内に収容し、且つ、ベース部26aとの間にそれぞれスペーサー32を介在させた状態で、ノズル列に直交する方向に横並びで、ベース部26aにそれぞれ固定される。
【0029】
図7,8等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aのヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着することで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0030】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面(サブキャリッジ26に固定される側の面とは反対側の面)には、チューブ接続部34が設けられている。図8に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。また、流路部材24の下面において各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には図示しない接続流路が設けられている。各接続流路は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。さらに、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。
【0031】
図12は記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。図13は記録ヘッド18の上面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図14は記録ヘッド18の下面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図15は記録ヘッド18の正面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図16は記録ヘッド18の右側面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。
【0032】
また、図17(a)は図13における領域Aの拡大図、図17(b)は図13における領域Bの拡大図である。図18は図15における領域Cの拡大図であり、図19は図16における領域Dの拡大図である。そして、図20は図16における領域Eの拡大図である。なお、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。
【0033】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)をヘッドケース52に備えている。本実施形態における記録ヘッド18は、平面視においてノズル列方向に長尺である一方、ノズル列に直交する幅方向に短尺な形状に形成されている。そして、この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面53には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列56(ノズル群)が構成され、このノズル列56がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列56は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズルから成る。
【0034】
ヘッドケース52は、中空箱体状部材であり本発明におけるヘッド本体の一部である。このヘッドケース52の先端側には、ノズル形成面53を露出させた状態で流路ユニットが固定されている。また、ヘッドケース52の内部に形成された収容空部内には圧力発生手段などを収容し、先端面とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。また、ヘッドケース52の上面側におけるノズル列方向の両側には、側方に向けて突出したフランジ部57(本発明における仲介部材固定部に相当)がそれぞれ形成されている。このフランジ部57には、図17に示すように、スペーサー32のヘッド用挿通穴68(図21参照)に対応して、スペーサー取付穴54(本発明における仲介部材取付穴に相当)がそれぞれ開設されている。両側のフランジ部57にスペーサー32をそれぞれ取り付ける際に、このスペーサー取付穴54にスペーサー固定ボルト27aの軸部が挿通される。
【0035】
このスペーサー取付穴54は、フランジ部57において、両側のフランジ部57の並び方向に直交する方向(スペーサー32との締結箇所同士の並び方向またはノズル列に直交する方向)であるフランジ幅方向の中央部に、フランジ部57の厚さ方向を貫通した状態で形成されている。両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方(図13(a)における左側)のスペーサー取付穴54は、図17(a)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、この一方のスペーサー取付穴54は、スペーサー固定ボルト27aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。これに対し、他方(図13(a)における右側)のスペーサー取付穴54は、図17(b)に示すように平面視において各スペーサー取付穴54の並び方向(ノズル列方向)に長尺な長穴となっている。この他方のスペーサー取付穴54の取付穴並び方向の内径(長径)はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも大きく設定されており、取付穴並び方向に直交するフランジ幅方向の内径(短径)は一方のスペーサー取付穴54の内径に揃えられている。このように、両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方を丸穴とし、他方を長穴とすることにより、両フランジ部57にそれぞれ固定された各スペーサー32をサブキャリッジ26のヘッド取付部に対してネジ留めする際に、サブキャリッジ26側の止着穴29の間隔とスペーサー取付穴54の間隔との誤差が、長穴の長径の範囲内で許容される。
【0036】
各スペーサー取付穴54の開口周縁部61は、フランジ部57のスペーサー固定面63(仲介部材固定面)よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。この開口周縁部61は、スペーサー取付穴54の開口周囲を囲繞する状態で形成された土手状の突起である。また、フランジ部57のスペーサー固定面63において、スペーサー取付穴54よりもフランジ幅方向の両外側には、平面視円形状の当接凸部62がそれぞれ形成されている。本実施形態においては、両側のフランジ部57の外側の隅角部にそれぞれ当接凸部62が設けられている。この当接凸部62は、フランジ部57のスペーサー固定面63よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。
【0037】
さらに、両側のフランジ部57のスペーサー固定面63のうちの一方のフランジ部57a(図13(a)における左側)には、後述するスペーサー32の位置決め穴77aに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76a(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。同様に、他方のフランジ部57b(図13(a)における右側)には、スペーサー32の位置決め穴77bに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる長穴76b(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。
【0038】
丸穴76aは、図17(a)に示すように、フランジ部57aにおいて、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一方側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57aの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この丸穴76aは、平面視において丸穴形状の開口を持つ貫通穴であり、その内径は後述する位置決め治具79(図25参照)の位置決めピン80aの外径よりも僅かに大きく設定されている。また、長穴76bは、図17(b)に示すように、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一方側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57bの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この長穴76bは、平面視において位置決め穴並設方向に長尺な長円形状の開口を持つ貫通穴である。この長穴76bの位置決め穴並設方向の内径(長径)は、位置決め治具79の位置決めピン80bの外径よりも十分に大きく設定されており、長穴76bのフランジ幅方向の内径(短径)は丸穴76aの内径に揃えられている。なお、位置決め治具79によるフランジ部57に対するスペーサー32の位置決めについては後述する。
【0039】
本実施形態においては、これらの丸穴76aと長穴76bとは、フランジ幅方向の中心線Oに対してフランジの幅方向の一方側(図中下側)にそれぞれ同じ距離(図中に符号xで示す)だけ外れた位置に設けられている。即ち、丸穴76aのフランジ幅方向の中心線Oからの距離と、長穴76bのフランジ幅方向の中心線Oからの距離とが、等しくなるように設定されている。
【0040】
ヘッドケース52の先端面側には、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を記録紙等の接触から保護するカバー部材58が取り付けられる。このカバー部材58は、ステンレス鋼などの導電性を有する薄手の金属板で作製されている。本実施形態におけるカバー部材58は、中央部分に開口窓部59が開設された額縁状のフレーム部58aと、ヘッドケース52への取付け状態でフレーム部58aのノズル列方向両側の縁部からヘッドケース52の側面に沿ってそれぞれ延出した側板部58bと、により概略構成されている。各側板部58bの先端部は、フランジ部57に沿う形となるように外側に向けて屈曲されており、カバー止着ネジ60によってフランジ部57にネジ留めされている。このカバー部材58は、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を保護する機能以外に、ノズル形成面53を接地電位に調整する機能も有している。
【0041】
上記サブタンク37は、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38には図示しないリング状のパッキンが嵌め込まれており、このパッキンにより流路部材24との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板が設けられている(図示せず)。サブタンク37の後端面の中央部の開口内には、当該駆動基板にフレキシブルケーブル(配線部材の一種。図示せず)を電気的に接続するコネクター49が配設されている。
【0042】
図21は、スペーサー32(仲介部材の一種)の構成を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は下面図である。図22は図21(c)、(d)における領域F、G、Hの拡大図である。また、図23はフランジ部57におけるスペーサー32の取り付け位置の拡大平面図(図10における領域Xの拡大図)であり、図24は図23におけるA−A線断面図である。
【0043】
本実施形態におけるスペーサー32は、合成樹脂から成る部材、すなわち樹脂成型により形成される部材であり、1つの記録ヘッド18に対して両側のフランジ部57のスペーサー固定面63(サブタンク37側の面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる。これらのスペーサー32は、同一形状となっている。そして、記録ヘッド18は、スペーサー32を介してサブキャリッジ26のベース部26aに取り付けられる。このため、スペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに対して高さ方向(ノズル形成面に垂直な方向)の位置を規定する部材である。したがって、スペーサー32のベース面65から、後述する基準面突起部74の表面(先端面)までの寸法に関してより高い精度が要求される。
【0044】
これらのスペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに配置されるベース面65を有するスペーサー本体部64と、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とを有している。ここで、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78は、サブキャリッジ26側からフランジ部57に向けて前記スペーサー本体部64から立ち上がる凸部であり、ノズル列56(図12参照)に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列56方向に関するフランジ部57の先端部に向けてそれぞれ形成されている。
【0045】
さらに、基準面突起部74は、その表面が、フランジ部57が当接されてサブキャリッジ26(図24参照)に対する記録ヘッド18の高さ位置を規定する基準面となっている。後端側突起部67は、その表面の高さ位置が基準面突起部74の基準面以下となるように基準面突起部74に対しノズル列56方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成されている。先端側突起部78は、その表面の高さ位置が基準面突起部74の基準面以下となるように基準面突起部74に対しノズル列56方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されている。さらに、後端側突起部67と先端側突起部78には、スペーサー32の射出成型時のエジェクターピンの先端が当接されるようになっている。この結果、本実施形態によればスペーサー32の射出成型時に後端側突起部67と先端側突起部78にエジェクターピンを当接させることができるので、エジェクターピン部分からガスを抜くことができる。
【0046】
スペーサー32には、図22に明示するようにベース面65の周囲に接着剤注入のための面取り部(以下、C面ともいう)81a,81b,83及びC面81a,81bに連続する段部82a,82bが形成してある。
【0047】
さらに、本実施形態におけるスペーサー32は、そのスペーサー本体部64の幅方向(フランジ部57に取り付けられた状態におけるフランジ幅方向に相当)の中央部に形成された中央隆起部66を有しており、後端側突起部67は中央隆起部66に対して幅方向の両側に離隔して形成されている。平面視において、このスペーサー32の幅方向の寸法はフランジ部57の幅方向の寸法に概ね揃えられている。また、このスペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態では、中央隆起部66の一部(後述)が、フランジ部57の突出端面よりも少し側方に突出する。
【0048】
中央隆起部66は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から隆起している。この中央隆起部66の幅方向両側の側面には、平面視においてヘッド固定ナット43b(図23等参照。)の各辺の形状に倣った切欠が設けられている。この切欠は、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78の内壁面と共にヘッド固定ナット43bの平面方向の姿勢(即ち、締結時の回転)を規制するヘッド固定ナット用切欠70である。即ち、スペーサー本体部64と、ヘッド固定ナット用切欠70と、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78とによって、ヘッド固定ナット43bを収容する凹部であるヘッド固定ナット収容部72が区画されている。そして、スペーサー32がフランジ部57に固定される前の段階で、各ヘッド固定ナット収容部72にヘッド固定ナット43bがそれぞれ嵌め込まれる。ここで、先端側突起部78の先端側においてフランジ部57側からベース面65側に向かう切欠部84が形成されている。
【0049】
中央隆起部66の奥行き方向の一方(フランジ部57に取り付けた状態においてサブタンク37側とは反対側)の部分は、スペーサー本体部64から側方に突出している。この突出した部分には、奥行き方向の一方から他方に向けて次第に幅狭となる平面視略三角形状の治具用切欠71が形成されている。この治具用切欠71には、記録ヘッド18をサブキャリッジ26のヘッド取付部に位置決めする際において、ヘッド保持用の治具が嵌合される。
【0050】
中央隆起部66の幅方向の中央部分には、記録ヘッド18におけるフランジ部57のスペーサー取付穴54に対応してヘッド用挿通穴68が開設されている。このヘッド用挿通穴68は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴である。このヘッド用挿通穴68の内径は、スペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されており、スペーサー取付穴54の内径に揃えられている。ヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73は、中央隆起部66の突出端面よりも、取り付け状態におけるフランジ部57側に突出している。この挿通穴周縁部73は、平面視においてヘッド用挿通穴68の開口周囲を囲繞する土手状の突起であり、フランジ部57の開口周縁部61に対応する位置に設けられている。
【0051】
中央隆起部66の両側に設けられたヘッド固定ナット収容部72には、サブキャリッジ26のベース部26aに設けられた止着穴29に対応して、サブキャリッジ用挿通穴69がそれぞれ開設されている。これらのサブキャリッジ用挿通穴69は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はヘッド固定ボルト43aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、サブキャリッジ用挿通穴69は、ヘッド固定ボルト43aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。このように、1つのスペーサー32には、1つのヘッド用挿通穴68と2つのサブキャリッジ用挿通穴69が各々設けられている。即ち、スペーサー32とサブキャリッジ26とのヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによる締結箇所は、スペーサー32とフランジ部57との締結箇所よりも幅方向の外側となる。
【0052】
スペーサー32の幅方向両端部にそれぞれ設けられている後端側突起部67は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から突出した壁であり、スペーサー本体部64の幅方向両側面と一連に形成されている。この後端側突起部67の突出端面は、中央隆起部66の突出端面と同一面上に揃えられている。また、後端側突起部67の突出端面には、当該端面から取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けて基準面突起部74が突設されている。この基準面突起部74は、スペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態(スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結された状態)において当接凸部62に当接可能な位置に設けられている。この基準面突起部74の表面は、本発明における基準面として機能する。
【0053】
スペーサー32のベース面65側において、幅方向の中央部には、スペーサー固定ナット収容部75が形成されている。このスペーサー固定ナット収容部75は、平面視においてスペーサー固定ナット27bの一部の形状に倣った窪みであり、ベース面65からスペーサー32の厚さ方向の途中まで窪んでいる。スペーサー固定ナット収容部75にスペーサー固定ナット27bが嵌め込まれて窪みの底部に着座した状態では、このスペーサー固定ナット収容部75の内壁面によってスペーサー固定ナット27bの平面方向の姿勢が規制される。即ち、スペーサー固定ボルト27aとの締結時のスペーサー固定ナット27bの回転が防止される。また、このスペーサー固定ナット収容部75の窪みの底部には、ヘッド用挿通穴68が開口している。さらに、スペーサー32における中央隆起部66と後端側突起部67との間であって、ヘッド固定ナット収容部72から外れた位置には、スペーサー32の厚さ方向を貫通した状態で位置決め穴77が合計2箇所開設されている。これらの位置決め穴77a,77bは、スペーサー32の幅方向中心部に対して左右対称となる位置に形成されている。
【0054】
本実施形態における位置決め穴77は、平面視円形の貫通穴である。一対の位置決め穴77のうちの一方の位置決め穴77a(図21(b)における左側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57aに取り付けられた状態における丸穴76aに対応する位置に設けられている。これに対して、他方の位置決め穴77b(図21(b)における右側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57bに取り付けられた状態における長穴76bに対応する位置に設けられている。即ち、各スペーサー32には、フランジ部57aの丸穴76aに対応する位置決め穴77aと、フランジ部75bの長穴76bに対応する位置決め穴77bと、がそれぞれ開設されている。
【0055】
次に、図25の模式図を参照して、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bにそれぞれ上記のスペーサー32を位置決めする工程について説明する。このスペーサー位置決め工程では、まず、位置決め治具79に記録ヘッド18がセットされる。位置決め治具79には、一対の位置決めピン80a,80bが立設されており、一方の位置決めピン80aをフランジ部75aの丸穴76aに挿通すると共に、他方の位置決めピン80bをフランジ部75bの長穴76bに挿通することで、位置決め治具79に対する記録ヘッド18の平面方向(ノズル形成面に平行な面方向)の位置が規定される。ここで、長穴76bの位置決め穴並設方向の内径は、位置決めピン80の外径よりも大きく設定されているので、丸穴76aと長穴76bとの間隔と、位置決めピン80a,80bの間隔との間の誤差が、位置決めピン80bと長穴76bとの間に生じる間隙の範囲内で許容される。
【0056】
記録ヘッド18を位置決め治具79にセットしたならば、当該記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに、それぞれスペーサー32が配置される。各スペーサー32は、挿通穴周縁部73をフランジ部57の開口周縁部61に対向させると共に、治具用切欠71を互いに反対側(外側)に向けて、ヘッド本体を中心として対称な姿勢(即ち、180°回転した姿勢)でフランジ部57にそれぞれ配置される。このとき、一方のフランジ部57aに配置されるスペーサー32は、フランジ部75aの丸穴76aから突出した一方の位置決めピン80aが位置決め穴77aに挿入されることで、当該フランジ部57aに対して位置決めされる。なお、位置決め穴77aを中心としたスペーサー32の回転については、図示しない他の治具によって規制される。同様に、他方のフランジ部57bに配置されるスペーサー32は、フランジ部75bの長穴76bから突出した他方の位置決めピン80bが位置決め穴77bに挿入されることで、当該フランジ部57bに対して位置決めされる。そして、各スペーサー32は、位置決めされた状態でスペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってフランジ部57に締結される。このようにして、各フランジ部57a,57bに対してスペーサー32が互いに対称となる向きで位置決めされて固定される。
【0057】
ここで、フランジ部57にスペーサー32を配置し、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結する前の状態では、フランジ幅方向において当該締結箇所から可及的に離れた両端部で当接凸部62と基準面突起部74とが当接する一方で、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所(締結予定箇所)、即ち、スペーサー取付穴54の開口周縁部61とヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73との間において間隙G(図24参照)が生じる。これにより、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってスペーサー32をフランジ部57に締結した後の状態では、当接凸部62と基準面突起部74とは、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所およびスペーサー32とサブキャリッジ26の締結箇所よりもフランジ幅方向の外側において他の部分よりも優先的に当接する。これらの当接凸部62と基準面突起部74との当接により、フランジ部57に対するスペーサー32の高さ方向の位置および姿勢が規制される。このような構成を採用することにより、記録ヘッド18とスペーサー32との間で、両側のフランジ部57の締結箇所同士を結ぶ仮想線に直交する方向、本実施形態においては、記録ヘッド18の短尺方向において傾きが生じることが抑制される。したがって、記録ヘッド18を、スペーサー32を介在させてサブキャリッジ26に取り付けた状態においても、サブキャリッジ26に対して記録ヘッド18が短尺方向に傾くことが抑制される。
【0058】
記録ヘッド18の両側のフランジ部57にそれぞれスペーサー32が固定されたならば、次に、サブキャリッジ26のヘッド取付部に対する記録ヘッド18の位置決めが行われる。この位置決め工程では、例えば、サブキャリッジ26のベース部26aにおけるヘッド取付部にセットされた記録ヘッド18のノズル形成面53をCCDカメラ等の撮像手段を用いて観察しながら、当該ノズル形成面53の予め定められた複数(少なくとも2箇所)の特定のノズル51が規定位置に位置付けられるように、ベース部26a上における記録ヘッド18の位置が調整される。取り付け対象の記録ヘッド18が位置決めされたならば、続いて、当該記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32がベース部26aに対して接着剤によって仮固定される。この仮固定は、接着剤をベース面65の周囲に形成するC面81a,81b及び段部82a,82bに接着剤を充填することにより行う。また、この仮固定に用いられる接着剤としては、シアノアクリレートを主成分とした所謂瞬間接着剤が好適であるが、完全に硬化した状態でサブキャリッジ26に対して記録ヘッド18がガタつくことなく固定される程度の剛性を発揮するものであれば、任意の接着剤を用いることができる。例えば、紫外線硬化型の接着剤を採用することも可能である。この場合、スペーサー32又はサブキャリッジ26を、透光性を有する素材で作製することが望ましい。そして、接着剤が硬化した後、ヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによってスペーサー32とベース部26aとが締結されて、記録ヘッド18aがベース部26aの規定位置に本固定される。
【0059】
このような手順でサブキャリッジ26に対して各記録ヘッド18が取り付けられる。その後、流路部材24がサブキャリッジ26に固定される。上述したように、流路部材24は、流路止着ネジ45によってサブキャリッジ26に対して固定される。この際、流路部材24の接続流路40が各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結される。なお、流路部材24は、各記録ヘッド18がサブキャリッジ26に取り付けられる前の段階で、サブキャリッジ26に固定されるようにしても良い。
【0060】
以上の工程を経てヘッドユニット17が完成する。このヘッドユニット17は、上述したように、キャリッジ本体12の底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53を露出させた状態で、キャリッジ本体12の内部に収容され、キャリッジ本体12に対するヘッドユニット17の位置や傾きなどの姿勢が調整された後、ヘッドユニット固定ネジ22によりネジ留めされて固定される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のヘッドユニット17のスペーサー32は、基準面突起部74に隣接して後端側突起部67のみならず先端側突起部78も基準面突起部74に連続させて一体的に形成されているので、スペーサー32を樹脂成型した場合でも、基準面突起部74における樹脂の充填不足に起因するその基準面の先端部で樹脂ダレを生起することはない。すなわち、基準面突起部74において高精度の高さ位置を維持した平面である必要十分な面積の基準面を確保することができる。この結果、必要十分な面積の基準面を介してノズル形成面53のサブキャリッジ26からの高さ位置を高精度に位置決めした状態で記録ヘッド18をサブキャリッジ26に固定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、後端側突起部67、基準面突起部74及び先端側突起部78で囲まれた内側の空間がナット43bを収納する凹部となっているので、先端側突起部78も凹部の剛性向上に寄与させることができ、その分ナット締結時の締付力に対する凹部の剛性が向上する。さらに、スペーサー32のベース面65の周囲には接着剤注入のためのC面81a,81bが設けられているので、スペーサー32をサブキャリッジ26に接着剤で仮固定する際、接着剤をC面81a、81bを介してベース面65の周囲に充填することで、かかる接着剤の充填作業を容易且つ的確に行うことができる。また、かかる接着剤の充填作業に際し、切欠部84を利用することで途中に接着工具と干渉する障害物が存在しない状態とすることができ、当該充填作業を的確且つ容易に行うことができる。
【0063】
さらに、上記実施形態においては、記録ヘッド18におけるスペーサー32が固定されるフランジ部57を、ヘッドケース52を間に挟んで両側にそれぞれ有し、各フランジ部57a,57bには、記録ヘッド18におけるノズル列56に直交する幅方向の中心部に、スペーサー32を取り付けるスペーサー取付穴54がそれぞれ設けられると共に、幅方向の中心線O上から外れた位置に、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76aと長穴76bとがそれぞれ設けられ、各スペーサー32には、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応する位置に、フランジ部57a,57bに対する位置決めの基準となる位置決め穴77a,77bがそれぞれ設けられ、両側のフランジ部57a,57bには、丸穴76aと長穴76bに対して位置決め穴77a,77bの位置を合わせて位置決めされた状態でスペーサー32が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定される構成を採用するので、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに固定されるスペーサー32の部品の共通化、形状・寸法管理の共通化が可能となる。これにより、スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。この結果、スペーサー32の形状・寸法のばらつきに起因するサブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを可及的に抑制することができる。特に、各スペーサー32には、それぞれ、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応して合計2箇所に位置決め穴77a,77bが設けられるので、スペーサー32を可及的に小型化した上でスペーサー取付穴54をフランジ部57の中心部に設ける関係から、やむを得ず、フランジ部57において幅方向の中心線上から外れた位置に丸穴76aと長穴76bを設ける構成においても、各スペーサー32の共通化が可能となる。これにより、各スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。
【0064】
また、スペーサー32におけるノズル列56に直交する方向の幅は、記録ヘッド18におけるノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されるので、複数の記録ヘッド18を並べて配置場合に、隣り合う液体噴射ヘッド間で仲介部材が干渉することが防止される。これにより、サブキャリッジ26における各記録ヘッド18間のピッチを狭めることができる。その結果、ヘッドユニット17の小型化が可能となる。
【0065】
なお、少なくとも、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32は、同一の金型によって作製されたものを使用することが望ましい。これにより、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の寸法・形状を可及的に揃えることができる。これにより、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きをより確実に防止することができる。
【0066】
また、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の基準面突起部74の先端面に対し、研磨して平坦化するラッピング処理が同時に施される構成を採用することが望ましい。このように構成することにより、各スペーサー32の寸法・形状をより確実に揃えることができる。特に、スペーサー32のベース面65から基準面突起部74の先端面までの高さ方向の寸法を、各スペーサー32の間でより高い精度で揃えることができるので、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを一層確実に防止することができる。
【0067】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記各実施形態では、記録媒体に対して記録ヘッド18を往復移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド18の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド18に対して記録媒体を移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。
【0069】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンター、17 ヘッドユニット、18 記録ヘッド、26 サブキャリッジ、32 スペーサー、51 ノズル、52 ヘッドケース、53 ノズル形成面、54 スペーサー取付穴、56 ノズル列、57 フランジ部、74 基準面突起部、78 先端側突起部、77a,77b 位置決め穴、81a,81b 面取り部(C面)、84 切欠部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを複数列設して成るノズル列が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが仲介部材を介在させた状態で固定されるヘッド固定部材と、を備えた液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドは、前記仲介部材が固定される仲介部材固定部を、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ有し、
前記仲介部材は、前記ヘッド固定部材に当接させられるベース面を有する仲介部材本体部と、前記ヘッド固定部材側から前記仲介部材固定部側に向けて前記仲介部材本体部から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列方向に関する前記仲介部材固定部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部とを有し、
前記各基準面突起部は、その表面が、前記仲介部材固定部が当接されて前記ヘッド固定部材に対する前記液体噴射ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、
前記各後端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成され、
前記各先端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部で囲まれた内側の空間がナットを収納する凹部となっていることを特徴する請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記仲介部材の前記ベース面の周囲に接着剤注入のための面取り部を設けるとともに、前記先端側突起部の先端側において前記仲介部材固定部側から前記面取り部側に向かう切欠部が形成されていることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
前記先端側突起部の表面には、射出成型時のエジェクタピンの先端が当接されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
前記各仲介部材固定部には、前記幅方向の中心部に、前記仲介部材を取り付ける仲介部材取付穴がそれぞれ設けられると共に、前記幅方向の中心線上から外れた位置に、前記仲介部材に対する位置決めの基準となるヘッド側位置決め穴がそれぞれ設けられ、
前記各仲介部材には、前記各仲介部材固定部の前記ヘッド側位置決め穴に対応する位置に、前記仲介部材固定部に対する位置決めの基準となる仲介部材側位置決め穴がそれぞれ設けられ、
前記両側の仲介部材固定部には、前記ヘッド側位置決め穴に対して前記仲介部材側位置決め穴の位置を合わせて位置決めされた状態で前記仲介部材が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定されたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
前記仲介部材における前記ノズル列に直交する方向の幅は、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部の各ヘッド側位置決め穴は、前記中心線から前記ノズル列に直交する方向の一方側にそれぞれ同じ距離だけ外れた位置に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットを搭載したことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射するノズルを複数列設して成るノズル列が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが仲介部材を介在させた状態で固定されるヘッド固定部材と、を備えた液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドは、前記仲介部材が固定される仲介部材固定部を、ヘッド本体を間に挟んで両側にそれぞれ有し、
前記仲介部材は、前記ヘッド固定部材に当接させられるベース面を有する仲介部材本体部と、前記ヘッド固定部材側から前記仲介部材固定部側に向けて前記仲介部材本体部から立ち上がる凸部であり、前記ノズル列に直交する幅方向の両端部に、前記ノズル列方向に関する前記仲介部材固定部の先端部に向けてそれぞれ形成された後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部とを有し、
前記各基準面突起部は、その表面が、前記仲介部材固定部が当接されて前記ヘッド固定部材に対する前記液体噴射ヘッドの高さ位置を規定する基準面となっており、
前記各後端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する基端部側で隣接されて一体的に形成され、
前記各先端側突起部は、その表面の高さ位置が前記基準面以下となるように前記各基準面突起部に対し前記ノズル列方向に関する先端部側で隣接されて一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記後端側突起部、基準面突起部及び先端側突起部で囲まれた内側の空間がナットを収納する凹部となっていることを特徴する請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記仲介部材の前記ベース面の周囲に接着剤注入のための面取り部を設けるとともに、前記先端側突起部の先端側において前記仲介部材固定部側から前記面取り部側に向かう切欠部が形成されていることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
前記先端側突起部の表面には、射出成型時のエジェクタピンの先端が当接されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
前記各仲介部材固定部には、前記幅方向の中心部に、前記仲介部材を取り付ける仲介部材取付穴がそれぞれ設けられると共に、前記幅方向の中心線上から外れた位置に、前記仲介部材に対する位置決めの基準となるヘッド側位置決め穴がそれぞれ設けられ、
前記各仲介部材には、前記各仲介部材固定部の前記ヘッド側位置決め穴に対応する位置に、前記仲介部材固定部に対する位置決めの基準となる仲介部材側位置決め穴がそれぞれ設けられ、
前記両側の仲介部材固定部には、前記ヘッド側位置決め穴に対して前記仲介部材側位置決め穴の位置を合わせて位置決めされた状態で前記仲介部材が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定されたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
前記仲介部材における前記ノズル列に直交する方向の幅は、前記液体噴射ヘッドにおける前記ノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドの両側の仲介部材固定部の各ヘッド側位置決め穴は、前記中心線から前記ノズル列に直交する方向の一方側にそれぞれ同じ距離だけ外れた位置に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットを搭載したことを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−148412(P2012−148412A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6494(P2011−6494)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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