説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】 大型化を抑制した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 液体噴射ヘッドは、複数の圧電素子300に共通する共通電極と、前記圧電素子毎に設けられた個別電極と、前記共通電極及び前記個別電極間に設けられた圧電体層70とを有する複数の圧電素子が並設されて圧電素子列301を構成している液体噴射ヘッドであって、個別電極に電気的に接続される個別配線基板と、共通電極に電気的に接続される共通配線基板とを備え、共通配線基板は、圧電素子の並設方向における圧電素子列の列方向の外側の第2領域において、共通電極と前記流路形成基板上で接続され、共通配線基板と共通電極との各接続領域の面積は、個別配線基板と個別電極との各接続領域の面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。このインクジェット式記録ヘッドとしては、例えばノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接合されて圧電素子を保持するための圧電素子保持部を有する保護基板とを具備したものが知られている。ここで、保護基板上には、圧電素子を駆動するための駆動回路であるICが載置されている。また、駆動回路と圧電素子とは、圧電素子の一方の電極から引き出されたリード電極を介して導電性ワイヤーからなる接続配線によりワイヤーボンディング法により接続されている。
【0003】
保護基板は、相対向する2列の圧力発生室に対応させて配設した2列の圧電素子を保護するものもあり、この種の保護基板にはその中央部に前記接続配線が挿通される貫通孔が形成してある。かかるインクジェット式記録ヘッドでは、前記貫通孔部分で前記リード電極と接続配線とを接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合、ワイヤーボンディング法により駆動回路と圧電素子とを接続しているので、コストの高騰を招来する場合もある。そこで、貫通孔に接続配線が設けられたCOF(Chip on Film)基板を挿通させてリード電極と接続配線とを接続することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−148813号公報
【特許文献2】特開2009−208462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイアス電力を供給するためのバイアス配線と共通電極とを接続するために、同一のCOF基板にバイアス配線も設ける必要があるので、液体噴射ヘッドが圧電素子の並設方向において大型化するという問題がある。この問題は、さらにノズル開口の高密度化が進んだ場合に問題となる。
【0007】
なお、このような問題はインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、大型化を抑制した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドは、液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子を備え、前記圧電素子は、複数の前記圧電素子に共通する共通電極と、前記圧電素子毎に設けられた個別電極と、前記共通電極及び前記個別電極間に設けられた圧電体層とを有し、複数の前記圧電素子が並設されて圧電素子列を構成している液体噴射ヘッドであって、前記個別電極に電気的に接続される個別配線基板と、前記共通電極に電気的に接続される共通配線基板とを備え、前記個別配線基板は、前記圧電素子の並設方向における圧電素子列に重なる第1領域において、前記個別電極と前記流路形成基板上で接続され、前記共通配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列の列方向の外側の第2領域において、前記共通電極と前記流路形成基板上で接続され、前記共通配線基板と前記共通電極との各接続領域の面積は、前記個別配線基板と前記個別電極との各接続領域の面積よりも大きいことを特徴とする。本発明においては、共通配線基板を備え、この共通配線基板と前記共通電極との各接続領域の面積は、前記個別配線基板と前記個別電極との各接続領域の面積よりも大きいことで、液体噴射ヘッドをその圧電素子の並設方向において小型化することが可能である。
【0010】
ここで、前記共通電極と電気的に接続され、かつ、前記圧電素子列の列方向と交差する方向に前記圧電素子列とは離間して設けられた拡張電極を前記流路形成基板上に備え、該拡張電極の、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列に重なる第1領域において、さらに共通配線基板が接続されていることが好ましい。このように拡張電極及び共通配線基板を設けることで、液体噴射ヘッドをその圧電素子の並設方向において小型化すると共に電圧降下を抑制できる。
【0011】
本発明の別の液体噴射ヘッドは、液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子を備え、前記圧電素子は、複数の前記圧電素子に共通する共通電極と、前記圧電素子毎に設けられた個別電極と、前記共通電極及び前記個別電極間に設けられた圧電体層とを有し、複数の前記圧電素子が並設されて圧電素子列を構成している液体噴射ヘッドであって、前記個別電極に電気的に接続される個別配線基板と、前記共通電極に電気的に接続される共通配線基板と、前記共通電極と電気的に接続され、かつ、前記圧電素子列の列方向と交差する方向に前記圧電素子列とは離間して設けられた拡張電極とを備え、前記個別配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列に重なる第1領域において、前記個別電極と前記流路形成基板上で接続し、前記共通配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記第1領域において、前記拡張電極に前記流路形成基板上で接続し、該共通配線基板と該共通電極との各接続領域の面積は、前記個別配線基板と前記個別電極との各接続領域の面積よりも大きいことを特徴とする。本発明においては、このように拡張電極及び共通配線基板を設けることで、液体噴射ヘッドをその圧電素子の並設方向において小型化すると共に電圧降下を抑制できる。
【0012】
液体噴射装置は、前記いずれかの液体噴射ヘッドを有することを特徴とする。その圧電素子の並設方向において小型化する液体噴射ヘッドを用いることで、本発明の液体噴射装置も小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】従来の記録ヘッドの平面図である。
【図5】図4のCOF基板を抽出して示す正面図及び斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るCOF基板及びFPC基板を示す正面図である。
【図7】本発明の実施形態2にかかる記録ヘッドの平面図である。
【図8】本発明の実施形態3にかかる記録ヘッドの平面図である。
【図9】本発明にかかるインクジェット式記録装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
まず、液体噴射ヘッドについて図1〜図3を参照して詳細に説明する。なお、図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図であり、図2は、液体噴射ヘッドの平面図であり、図3は、図2のA−A′断面図である。
【0015】
図示するように、液体噴射ヘッド1を構成する流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0016】
流路形成基板10には、壁部11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設された列が2列設けられている。また、各列の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のリザーバー部31と連通して圧力発生室12の列毎に共通のインク室となるリザーバー100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、圧力発生室12の幅方向両側の壁部11を連通部13側に延設してインク供給路14と連通部13との間の空間を区画することで形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12の幅方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の幅方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の壁部11により区画されて設けられている。
【0017】
また、流路形成基板10の弾性膜50が形成された面と反対側の面には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。本実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12が並設された列を2列設けたため、1つの液体噴射ヘッド1には、ノズル開口21の並設されたノズル列が2列設けられている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
【0018】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが順次積層形成されて、本実施形態のアクチュエーター装置である圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、流路形成基板10側の第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としている。なお、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。圧電素子300は、本実施形態においては、流路形成基板10に圧力発生室12が並設された列を2列設けたため、圧力発生室12の幅方向(圧電素子300の幅方向)に2列並設されている。即ち、複数の圧電素子300が列設されてなる圧電素子列301及び302が絶縁体膜55上に互いに離間して形成されている。また、本実施形態では、液体噴射ヘッド1の平面視において、図2に示すように、圧電素子300の並設方向(圧電素子列301、302の長手方向)において、圧電素子列301、302と重なる領域を第1領域とし、圧電素子300の並設方向において圧電素子列301、302の外側の領域を第2領域とする。
【0019】
共通電極である第1電極60は、圧電素子列301、302の長手方向に亘って形成されると共に、圧電素子列301、302の両端において、さらに各圧電素子300の長手方向に延設されている。即ち、第1電極60は、圧電素子300の並設方向において第1領域に重なる共通第1領域部61と、圧電素子300の並設方向において第2領域に重なる共通第2領域部62とを備えており、二つの共通第1領域部61の両端部を共通第2領域部62が接続している。このように上面視において矩形状である共通電極としての第1電極60には、詳しくは後述するバイアス電圧を印加するための配線部材が接続され、これにより液体噴射ヘッド1を従来よりも小型化している。
【0020】
なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0021】
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でもペロブスカイト構造の強誘電体材料からなる。圧電体層70は、ペロブスカイト構造の結晶膜を用いるのが好ましく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。
【0022】
また、圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、絶縁体膜55上まで延設された例えば、金(Au)等からなるリード電極90(接続端子)が接続されている。リード電極90は、一端部が第2電極80に接続されていると共に、他端部側が圧電素子列301と圧電素子列302との間に延設されて、詳しくは後述するフレキシブル配線部材であるCOF基板と接続されている。
【0023】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。リザーバー100は、圧力発生室12に並設された列に対して1つずつ、合計2つ設けられている。そして、各リザーバー100は、それぞれノズル開口21の並設されたノズル列に連通して設けられている。なお、本実施形態では、流路形成基板10にリザーバー100となる連通部13を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバーとしてもよい。また、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバーと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0024】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する保持部である圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。なお、本実施形態では、圧電素子300が並設された列が2列設けられているため、圧電素子保持部32を圧電素子300の並設された各列に対応してそれぞれ設けるようにした。すなわち、保護基板30には、圧電素子保持部32が並設された圧電素子300の列が並ぶ列設方向に2つ設けられている。
【0025】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミックス材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0026】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する開口が設けられている。開口は、本実施形態では、保護基板30の長手方向に沿うように設けられ、2つの圧電素子保持部32の間に設けられている第1貫通孔33と、第1貫通孔33の両端部に、第1貫通孔33と連通し第1貫通孔33よりも幅広に設けられた第2貫通孔34とからなる。即ち、開口は上面視においてH字状である。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、第1貫通孔33内に露出するように設けられている。また、第2貫通孔34内には、圧電素子300の共通電極である共通第2領域部62が露出している。
【0027】
圧電素子300を駆動するための駆動回路200は、可撓性を有する可撓性ケーブルであるCOF基板410に実装してある。ここで、COF基板410は、下端部がリード電極90に接続されるとともにほぼ垂直に立ち上げられている。
【0028】
さらに詳言すると、本実施形態に係る液体噴射ヘッド1では、上述のように圧力発生室12、圧電素子300及びリード電極90の2列が相対向して設けられたものである。そして、2枚のCOF基板410の下端部が第1貫通孔33に挿入されて、各COF基板410のそれぞれの下端部が圧電素子300の各列のリード電極90の端部に接続されると共に、COF基板410の上端部側がほぼ垂直に立ち上げられている。本実施形態では、各圧電素子列301、302にそれぞれ1枚のCOF基板410を設けるようにしたが、勿論これに限定されず、圧電素子300の1列に対して複数枚のCOF基板を用いるようにしてもよい。
【0029】
なお、可撓性を有する可撓性ケーブルであるCOF基板410は、単体で起立させようとしてもたわみ変形して自立させるのが困難である場合もあるので、このような場合には例えば、COF基板410を剛性部材である支持部材に接合してもよい。これにより、単体では自立し難いCOF基板410を支持部材によって支持させることができる。なお、支持部材としては、2枚のCOF基板410の間に設けられて、両側面にそれぞれCOF基板410が接合される板状部材等を用いることができる。
【0030】
COF基板410の下端部とリード電極90とは、半田等の金属材料を溶融させて両者を接続している。もちろん、COF基板410の下端部とリード電極90との接続は、半田等に限定されず、例えば、導電性粒子(例えば、異方性導電膜(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの異方性導電材に含有されるもの)で電気的に接続されるようにしてもよい。
【0031】
ところで、駆動回路200からの駆動電圧をリード電極90に印加する場合に、同時に第1電極60にバイアス電圧を印加する必要がある。本実施形態においては、第1電極60にバイアス電圧を印加するための別の可撓性ケーブルであるFPC(Flexible Print Cable)基板420を各共通第2領域部62においてそれぞれ2つずつ、その下端部が第1電極60に接続されるとともにほぼ垂直に立ち上げられている。このようにバイアス電圧を印加するためのFPC基板420を設けていることで、本実施形態においては、図4、5に示す従来の液体噴射ヘッド1よりも液体噴射ヘッド1を小型化することができる。以下、詳細に説明する。
【0032】
図4に示す従来の液体噴射ヘッド1において、各圧電素子列301、302に亘って設けられた従来の第1電極60の共通第1領域部63は、さらに第2領域側まで圧電素子300の並設方向に延設されている。そして、この延設された第1電極60の第2領域に重なる従来の共通第2領域部64には、圧電素子列301と圧電素子列302との間に向かって接続部65が延設されている。この接続部65は、圧電素子300の並設方向における圧電素子300の間隔Lと同一になるように形成されている。また、従来の液体噴射ヘッド1におけるCOF基板411は、それぞれ各接続部65及び各リード電極90に接続している。
【0033】
この従来のCOF基板411について図5も用いて詳細に説明すると、COF基板411は、駆動回路200を備えると共に、入力配線201と、駆動配線202と、バイアス配線203とを備える。入力配線201は、図示しない入力回路に接続すると共に駆動回路200に接続される。駆動配線202は、COF基板411の下端部にまで延設されており、駆動回路200に接続すると共にCOF基板411の下端部でリード電極90(図4参照)に接続される。バイアス配線203は、図示しない入力回路に接続すると共に、COF基板411の下端部まで延設されており、この下端部で接続部65に接続される。そして、駆動回路に入力配線201を介して電力が供給され、駆動回路200から駆動電力が駆動配線202を介して、各リード電極90に供給される。また、バイアス電力がバイアス配線203を介して第1電極60に供給される。
【0034】
ここで、第1電極60に十分なバイアス電力を供給するためには、第1電極60とバイアス配線203との接続領域の面積を大きくする必要がある。しかしながら、COF基板411を各接続部65及び各リード電極90に接続する場合には、例えば半田等の金属を溶融したものを用いて接続するので、加熱時の熱分布の偏りが生じるのを抑制する必要がある。そのため、第1電極60とバイアス配線203との接続領域の面積を大きくしようとしても、リード電極90と駆動配線202との接続領域と同一幅の同一面積の小さな接続領域しか形成できない。他方で、合計の接続領域面積を増やすべく接続領域を複数形成しようとすれば、加熱時の熱分布の偏りが生じるのを抑制すべく、第1電極60とバイアス配線203との接続領域間の距離を、圧電素子300間の間隔Lと同一の間隔としなければならない。なお、リード電極90と駆動配線202との接続領域の面積や間隔を変更して圧電素子300に供給される駆動電力を変更するとなれば、大幅な設計変更が必要であるので、リード電極90と駆動配線202との接続領域の面積や間隔を変更することは好ましくない。
【0035】
従って、従来では、駆動電力よりも大きな電力を供給しなければならないにもかかわらず、第1電極60とバイアス配線203との各接続領域の面積は、リード電極90と駆動配線202との接続領域と同一幅でなければならず、また、第1電極60とバイアス配線203との各接続領域間の間隔も間隔Lと同一でないと接続できない。そのため、所望の第1電極60とバイアス配線203との接続領域の面積を得るためには、圧電素子300の並設方向においてバイアス配線203とを接続するための接続部65を間隔Lをあけて複数形成する必要があった。これにより、液体噴射ヘッド1が圧電素子300の並設方向において長くなってしまい、大型化してしまうという問題があった。
【0036】
これに対し、本実施形態においては、図6に示すように、COF基板410には入力配線201、駆動回路200、駆動配線202のみを設け、バイアス電力を供給するバイアス配線203はFPC基板420に設けている。なお、バイアス配線203については、駆動回路200を介する必要がないために、COF基板410とは別体とすることが可能である。即ち、COF基板410とは別にFPC基板420を用いているので、バイアス配線203と第1電極60との接続領域の面積を、リード電極90と駆動配線202との接続領域の幅、面積によらずに大きくすることができる。この結果、バイアス配線203と第1電極60との接続領域を、図2に示すように、共通第2領域部62内において圧電素子300の長手方向に長くすることで、共通第2領域部62を圧電素子300の並設方向において長くする必要がなく、第1電極60の圧電素子300の並設方向における長さを短くし、従来よりも液体噴射ヘッド1を小型化することができる。
【0037】
このように、本実施形態では、バイアス配線203と第1電極60との接続領域を一つとし、この接続領域の面積を大きくとることができ、従来よりも液体噴射ヘッド1を小型化している。例えば、従来の共通第2領域部64は、それぞれ3つの接続部65を間隔Lの幅で設けるために、本実施形態の共通第2領域部62よりも少なくとも6L分(両端でそれぞれ3L分長くなっているため)長くなっている。
【0038】
また、従来の液体噴射ヘッド1においては、このような接続部65の数は、液体噴射ヘッド1のノズル開口21が高密度化すればするほどより多くなるものであり、液体噴射ヘッド1のノズル開口21の高密度化によりさらに液体噴射ヘッド1が圧電素子300の並設方向において大型化してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッド1の構造を採用すれば、バイアス配線203が設けられたFPC基板420をCOF基板410とは別体にし、接続領域の面積を増やした上で共通第2領域部62に設ければよいので、液体噴射ヘッド1が圧電素子300の並設方向において大型化する問題が生じない。
【0039】
また、図3に示すように、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、ステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0040】
さらに、コンプライアンス基板40上には、保持部材であるヘッドケース110が設けられている。ヘッドケース110には、インク導入口44に連通してカートリッジ等の貯留手段からのインクをリザーバー100に供給するインク導入路111(図3参照)が設けられている。また、ヘッドケース110には、開口部43に対向する領域に凹形状の逃がし部(図示せず)が形成され、開口部43のたわみ変形が適宜行われるようになっている。さらに、ヘッドケース110には、保護基板30に設けられた第1貫通孔33及び第2貫通孔34と連通する配線部材保持孔113が設けられており、COF基板410及びFPC基板420は、配線部材保持孔113内に挿通された状態で、COF基板410の下端部がリード電極90と接続されている。そして、ヘッドケース110の配線部材保持孔113に挿通されたCOF基板410は、ヘッドケース110と接着剤120を介して接着されている。これにより、COF基板410が、ヘッドケース110の配線部材保持孔113内で直立することができる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2について、図7を用いて説明する。図7に示す実施形態2は、第1電極60における電圧降下を抑制するために、第1電極60に電気的に接続する拡張電極66を備えるものであり、その他の構成は実施形態1と同様であるので詳細は省略する。
【0042】
本実施形態では、拡張電極66は、圧電素子列301、302と、圧電素子300の長手方向に離間して設けられており、圧電素子300と並設方向において第1領域と重なる拡張第1領域部67と、圧電素子300と並設方向において第2領域と重なる拡張第2領域部68とからなる。拡張第2領域部68は、第1電極60の共通第2領域部62から延設されている。拡張第1領域部67は、共通第1領域部61から接続電極69を介して延設されている。接続電極69は、3個の圧電素子300毎に、圧電素子300間で、共通第1領域部61と拡張第1領域部67とを接続している。そして、各拡張第1領域部67には、2つのFPC基板420が接続されている。
【0043】
このように拡張電極66を設けた場合には、第2領域においてFPC基板420を接続しなくても、第1領域においてFPC基板420を接続することが可能であり、この場合もFPC基板420をCOF基板410とは別体とすることで、バイアス配線203と拡張電極66との接続領域の面積を十分に得ることができることができる。これにより、第1電極60及び拡張電極66を圧電素子300の並設方向において長くする必要がなく、液体噴射ヘッド1が大型化することを抑制できる。
【0044】
即ち、実施形態1及び実施形態2においてはFPC基板420を別体とし、バイアス配線203と第1電極60(又は拡張電極66)との各接続領域の面積を、駆動配線202とリード電極90との各接続領域の面積より大きくすることができる。かつ、別体であるから、第1電極60及び拡張電極66の任意の場所に圧電素子300と並設方向において小型化できるように設けることができる。この場合には、圧電素子300と並設方向において小型化できれば、自由にその位置を変えることができる。
【0045】
また、実施形態1と比較して、本実施形態では、拡張電極66を設けているために、第1電極60における電圧降下を抑制できる。即ち、実施形態1では、第1電極60の両端部である共通第2領域部62にFPC基板420を接続していることから、第1電極60において電圧降下が問題となる可能性があったが、本実施形態では、拡張電極66を設けていることで、電圧降下を抑制できる。さらに、拡張電極66に直接FPC基板420を接続し、接続電極69により各圧電素子300にバイアス電力をより均一に供給することができるため、より電圧降下を抑制できる。これにより液体噴射ヘッド1の吐出特性をより均一化することができる。
【0046】
なお、ヘッドケース110をはじめとして流路形成基板10上に設けられる各基板には、FPC基板420を拡張電極66に接続するための貫通穴114を設けて、拡張電極66の拡張第1領域部67の一部を露出している。
【0047】
この場合において、さらに共通第2領域部62にFPC基板420を接続するように構成することももちろん可能である。また、さらに拡張第2領域部62にFPC基板420を接続することももちろん可能である。接続箇所を増やすことで、十分なバイアス電力を第1電極60に供給することができる。さらにまた、拡張第2領域部62にFPC基板420を接続することももちろん可能である。
【0048】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態2とは拡張電極66の形成領域が異なる。図8に示すように、本実施形態においては、拡張電極66Aは、圧電素子列301、302間に設けられており、第1領域と重なる拡張第1領域部67Aからなる。拡張第1領域部67Aは、第1電極60の共通第2領域部62から延設されると共に、接続電極69Aを介して共通第1領域部62からも延設されている。そして、拡張第1領域部67Aには、2つのFPC基板420が接続されている。これにより、本実施形態においても液体噴射ヘッド1を小型化することができる。この場合には、拡張電極66Aを設けることで、実施例2と同様に電圧降下を抑制することができる。さらに、COF基板410の間に拡張第1領域部67Aが形成され、この拡張第1領域部67AにFPC基板420が接続されているから、実施形態2に比べて新たに貫通穴114を設ける必要がない。
【0049】
このように、実施形態3においても、実施形態1及び実施形態2と同様に、FPC基板420を別体とし、バイアス配線203と拡張電極66Aとの各接続領域の面積を、駆動配線202とリード電極90との各接続領域の面積より大きくすることができ、かつ、別体であるから、第1電極60及び拡張電極66の任意の場所に圧電素子300と並設方向において小型化できるように設けることができる。この場合には、圧電素子300と並設方向において小型化できれば、自由にその位置を変えることができる。
【0050】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の構造は上述したものに限定されるものではない。
【0051】
上述した各実施形態では、FPC基板420を所定間隔をあけて複数枚設けたが、FPC基板420の数はこれに制限されない。例えば、実施形態2において一枚のFPC基板420のみを拡張第1領域部67に設けることも可能である。また、上述した実施形態1では、FPC基板420とCOF基板410とはそれぞれ配線が形成された配線面を異なる方向に向けて第1貫通孔33及び第2貫通孔34に挿入しているが、FPC基板420とCOF基板410とはそれぞれ配線面を同一方向に向けて第1貫通孔33及び第2貫通孔34に挿通するように構成してもよい。また、上述した実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12が並設された列を2列設けたものであるが、この場合の列数には特別な制限はない。
【0052】
また、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッド1にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0053】
なお、上述した実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図示するように、上記実施の形態に係るインクジェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0054】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。また、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置にも勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 液体噴射ヘッド、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 32 圧電素子保持部、 33 第1貫通孔、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 110 ヘッドケース(保持部材)、 200 駆動回路、 201 入力配線、 202 駆動配線、 203 バイアス配線、 300 圧電素子(圧力発生素子)、 410 COF基板、 420 FPC基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子を備え、
前記圧電素子は、複数の前記圧電素子に共通する共通電極と、前記圧電素子毎に設けられた個別電極と、前記共通電極及び前記個別電極間に設けられた圧電体層とを有し、複数の前記圧電素子が並設されて圧電素子列を構成している液体噴射ヘッドであって、
前記個別電極に電気的に接続される個別配線基板と、前記共通電極に電気的に接続される共通配線基板とを備え、
前記個別配線基板は、前記圧電素子の並設方向における圧電素子列に重なる第1領域において、前記個別電極と前記流路形成基板上で接続され、
前記共通配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列の列方向の外側の第2領域において、前記共通電極と前記流路形成基板上で接続され、
前記共通配線基板と前記共通電極との各接続領域の面積は、前記個別配線基板と前記個別電極との各接続領域の面積よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記共通電極と電気的に接続され、かつ、前記圧電素子列の列方向と交差する方向に前記圧電素子列とは離間して設けられた拡張電極を前記流路形成基板上に備え、
該拡張電極の、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列に重なる第1領域において、さらに共通配線基板が接続されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子を備え、
前記圧電素子は、複数の前記圧電素子に共通する共通電極と、前記圧電素子毎に設けられた個別電極と、前記共通電極及び前記個別電極間に設けられた圧電体層とを有し、複数の前記圧電素子が並設されて圧電素子列を構成している液体噴射ヘッドであって、
前記個別電極に電気的に接続される個別配線基板と、前記共通電極に電気的に接続される共通配線基板と、
前記共通電極と電気的に接続され、かつ、前記圧電素子列の列方向と交差する方向に前記圧電素子列とは離間して設けられた拡張電極とを備え、
前記個別配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記圧電素子列に重なる第1領域において、前記個別電極と前記流路形成基板上で接続し、
前記共通配線基板は、前記圧電素子の並設方向における前記第1領域において、前記拡張電極に前記流路形成基板上で接続し、
該共通配線基板と該共通電極との各接続領域の面積は、前記個別配線基板と前記個別電極との各接続領域の面積よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載した液体噴射ヘッドを有することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−161694(P2011−161694A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24868(P2010−24868)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】