説明

液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法

【課題】異なる色材を含む液体を着弾対象に着弾させる際の濃度ムラを簡単な構成で低減させることが可能な液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法を提供する。
【解決手段】記録ヘッドは、当該記録ヘッドと記録紙との主走査方向に交差する副走査方向に染料インクを噴射するノズルを列設したノズル列と、当該ノズル列に対して平行に顔料インクを噴射するノズルを列設したノズル列とを、主走査方向に並べて配置し、記録紙における染料インクD1と顔料インクD2との着弾順序に応じて駆動信号COMを変更させて、染料インクまたは顔料インクのうち少なくとも一方の噴射量を調整する制御部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルに連通する圧力室に圧力変動を与えて、圧力室内の液体をノズルから噴射させる液体噴射ヘッドを備えるインクジェット式プリンター等の液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を噴射(吐出)可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液滴状のインクを記録紙等の記録媒体(噴射対象)に対して噴射・着弾させることで画像等の記録を行うインクジェット式プリンター(以下、単にプリンターという。)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、或いはFED(面発光ディスプレイ)等のディスプレイ製造装置においては、色材や電極等の液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域等に対して噴射するためのものとして、液体噴射装置が用いられている。
【0003】
ところで、上記したプリンターには、色材に染料を含む染料系インクを噴射する複数のノズルを主走査方向に交差する方向に列設した染料系インク用のノズル列と、色材に顔料を含む顔料系インクを噴射する複数ノズルを、染料系インク用のノズル列に対して平行に列設した顔料系インク用のノズル列と、を主走査方向に並べて配置させた記録ヘッドを有したものがある。このように構成されたプリンターは、記録紙に対して記録ヘッドを往復走査させながら、記録媒体、特に、記録紙に画像等を記録・印刷すると、走査方向の往路と復路とで、記録紙における染料系インクと顔料系インクとの着弾順序が異なる。このため、記録紙上で染料インクと顔料インクが重なって着弾する場合には、記録紙に対するインクの浸透量の違いやインク同士の干渉により記録画像が滲んだりする虞がある。特に、滲みにより異なる色同士が混色した場合には、記録画像の画質が低下する虞がある。
【0004】
このような問題に対応すべく、染料系インク用のノズル列の走査方向の下流側に顔料系インク用ノズル列を配置させたノズル列の組を、記録ヘッドにおける走査方向の中央を挟んで両側にそれぞれ配置することで、往路と復路との何れの走査方向においても顔料系インクよりも先に染料系インクを記録媒体に着弾させるように構成し、これにより、異なる色材を含むインクが記録媒体に着弾する際の浸透速度の違いによる濃度ムラ(色ムラ)を低減させることが可能なプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−261205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したように記録ヘッドにおける走査方向の中央を挟んで両側にノズル列の組みを有するプリンターにおいては、ノズル列の数が増すばかりでなく、それに伴って各ノズルに連通する圧力室や、この圧力室の容積を変動させる圧力発生手段などの数も増してしまい、プリンターが大型化し、またプリンターの構成が複雑になってしまう不都合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる色材を含む液体を着弾対象に着弾させる際の濃度ムラを簡単な構成で低減させることが可能な液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置は、染料系の色材を含む第1の液体を噴射する第1ノズルと、顔料系の色材を含む第2の液体を噴射する第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第1圧力発生手段および前記第2ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第2圧力発生手段を駆動することで前記ノズルから液体を噴射して着弾対象に着弾させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動する駆動パルスを含む駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記着弾対象と前記液体噴射ヘッドとを相対的に移動させる走査機構と、を備えた液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドは、当該液体噴射ヘッドと前記着弾対象との相対移動方向に交差する方向に前記第1ノズルを並べて配置した第1ノズル群と、当該第1ノズル群に対して平行に前記第2ノズルを並べて配置した第2ノズル群とを、前記相対移動方向に並べて配置し、
前記着弾対象における前記第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて前記駆動信号を変更させて、前記第1の液体または前記第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整する調整部を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、液体噴射ヘッドは、液体噴射ヘッドと着弾対象との相対移動方向に交差する方向に第1ノズルを列設した第1ノズル群と、第1ノズル群に対して平行に第2ノズルを列設した第2ノズル群とを、相対移動方向に並べて配置し、着弾対象における第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて駆動信号を変更させて、第1の液体または第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整する調整部を備えたので、異なる色材を含む液体同士の着弾順序が相対移動方向における往路と復路とで異なっても、着弾対象に対する液体の浸透速度の差に起因する濃度ムラを簡単な構成で低減させることができ、着弾対象に形成された画像等の画質の低下を抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記調整部は、前記着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第1の相対移動方向において、前記着弾対象に対して先に第1の液体が着弾した後に第2の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定し、又は、前記第2の相対移動方向において、前記第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定することが望ましい。
【0011】
この構成によれば、調整部は、着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第1の相対移動方向において、着弾対象に対して先に第1の液体が着弾した後に第2の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定し、又は、第2の相対移動方向において、第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定するので、第1の相対移動方向と第2の相対移動方向との何れの相対移動方向においても、着弾順の違いによる着弾液体の濃度差を抑えることができる。
【0012】
上記構成において、前記調整部は、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整することが望ましい。
なお、「駆動電圧」とは、駆動パルスの最低電位から最高電位までの電位差を意味する。
【0013】
この構成によれば、調整部は、圧力発生手段に印加する駆動信号に含まれる駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整するので、液体の噴射重量を容易に調整できる。
【0014】
上記構成において、前記調整部は、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整することが望ましい。
【0015】
この構成によれば、調整部は、圧力発生手段に印加する駆動信号に含まれる駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整するので、駆動パルスの駆動電圧を変更する場合と比べ、液体の噴射重量の調整量を広げることができる。
【0016】
また、本発明の液体噴射装置の制御方法は、染料系の色材を含む第1の液体を噴射する第1ノズルと、顔料系の色材を含む第2の液体を噴射する第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第1圧力発生手段および前記第2ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第2圧力発生手段を駆動することで前記ノズルから液体を噴射して着弾対象に着弾させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動する駆動パルスを含む駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記着弾対象と前記液体噴射ヘッドとを相対的に移動させる走査機構と、を備えた液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体噴射ヘッドと前記着弾対象との相対移動方向に交差する方向に前記第1ノズルを列設した第1ノズル群と、当該第1ノズル群に対して平行に前記第2ノズルを列設した第2ノズル群とを、前記相対移動方向に並べて配置した前記液体噴射ヘッドの各ノズルから前記液体を噴射する際に、前記着弾対象における前記第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて前記駆動信号を変更させて、前記第1の液体または前記第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、液体噴射ヘッドと着弾対象との相対移動方向に交差する方向に第1ノズルを列設した第1ノズル群と、第1ノズル群に対して平行に第2ノズルを列設した第2ノズル群とを、相対移動方向に並べて配置した液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する際に、着弾対象における第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて駆動信号を変更させて、第1の液体または第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整するので、異なる色材を含む液体同士の着弾順序が相対移動方向における往路と復路とで異なっても、着弾対象に対する液体の浸透速度の差に起因する濃度ムラを簡単な構成で低減させることができ、着弾対象に形成された画像等の画質の低下を抑制することができる。
【0018】
上記構成において、前記着弾対象に対して先に第1の液体が着弾した後に第2の液体が着弾する第1の相対移動方向において、前記着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定し、又は、前記第2の相対移動方向において、前記第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定することが望ましい。
【0019】
この構成によれば、着弾対象に対して先に第1の液体が着弾した後に第2の液体が着弾する第1の相対移動方向において、着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定し、又は、第2の相対移動方向において、第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定するので、第1の相対移動方向と第2の相対移動方向との何れの相対移動方向においても、着弾順の違いによる着弾液体の濃度差を抑えることができる。
【0020】
上記構成において、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整することが望ましい。
【0021】
この構成によれば、圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整するので、液体の噴射重量を容易に調整できる。
【0022】
上記構成において、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整することが望ましい。
【0023】
この構成によれば、圧力発生手段に印加する駆動信号に含まれる駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整するので、駆動パルスの駆動電圧を変更する場合と比べ、液体の噴射重量の調整量を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリンターの概略構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。
【図3】ノズルプレートの平面図である。
【図4】プリンターの電気的な構成を説明するブロック図である。
【図5】基本駆動信号の構成を説明する波形図である。
【図6】基本駆動信号に含まれる駆動パルスの構成を説明する波形図である。
【図7】記録紙上におけるインクの着弾状態を説明する模式図であって、(a)は往路の状態であり、(b)は復路の状態である。
【図8】往路用駆動信号の構成を説明する波形図である。
【図9】往路用駆動信号の変形例の構成を説明する波形図である。
【図10】他の実施形態における記録紙上におけるインクの着弾状態を説明する模式図であって、(a)は往路の状態であり、(b)は復路の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式記録装置(以下、プリンターと略記する)に適用した場合を例示する。
【0026】
図1はプリンター1の構成を説明する斜視図、図2は上記の記録ヘッド2の要部断面図である。このプリンター1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、インク(本発明における液体の一種)を貯留するインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、記録ヘッド2が搭載されたキャリッジ4を記録紙6(本発明における着弾対象に相当)の紙幅方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7(本発明における走査機構に相当)と、紙幅方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8等を備えて概略構成されている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向(図1中に符号Xで示す相対移動方向)であり、紙送り方向とは、副走査方向(図1中に符号Yで示す相対移動に直交する方向)である。
【0027】
キャリッジ4は、主走査方向Xに架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向Xに移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向Xの位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、検出信号が位置情報として制御部56(図4参照)に送信される。これにより、制御部56はこのリニアエンコーダー10からの位置情報に基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作(噴射動作)等を制御することができる。
【0028】
キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側(図1における右側)の端部領域には、走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面(ノズルプレート32:図2,3参照)を封止するキャッピング部材12と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材13とが配置されている。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4(記録ヘッド2)が移動する往動時における往路方向(図1中に符号X1で示す。本発明における第1の相対移動方向に相当)と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時における復路方向(図1中に符号X2で示す。本発明における第2の相対移動方向に相当)との双方向で記録紙6上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録が可能に構成されている。
【0029】
本実施形態における記録ヘッド2は、図2に示すように、圧電振動子群22、固定板23、及び、フレキシブルケーブル24等をユニット化した振動子ユニット25と、この振動子ユニット25を収納可能なヘッドケース26と、リザーバー(共通インク室)36から圧力室38を通りノズル35に至る一連のインク流路を形成する流路ユニット27とを備えて構成される。
【0030】
まず、振動子ユニット25について説明する。圧電振動子群22を構成する圧電振動子30(本発明における圧力発生手段の一種)は、縦方向に細長い櫛歯状に形成されており、数十μm程度の極めて細い幅に切り分けられている。そして、この圧電振動子30は縦方向に伸縮可能な縦振動型の圧電振動子として構成されている。各圧電振動子30は、固定端部を固定板23上に接合することにより、自由端部を固定板23の先端縁よりも外側に突出させて所謂片持ち梁の状態で固定されている。そして、各圧電振動子30における自由端部の先端は、後述するように、それぞれ流路ユニット27におけるダイヤフラム部42を構成する島部44に接合される。フレキシブルケーブル24は、固定板23とは反対側となる固定端部の側面で圧電振動子30と電気的に接続されている。また、各圧電振動子30を支持する固定板23は、圧電振動子30からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板材によって構成される。本実施形態では、厚さが1mm程度のステンレス鋼板によって作製されている。
【0031】
ヘッドケース26は、例えば、エポキシ系樹脂により作製された中空箱体状部材であり、その先端面(下面)には流路ユニット27を固定し、ケース内部に形成された収容空部28内には、アクチュエーターの一種である振動子ユニット25を収容している。また、ヘッドケース26の内部には、その高さ方向を貫通してケース流路29が形成されている。このケース流路29は、インクカートリッジ3側からのインクをリザーバー36に供給するための流路である。
【0032】
次に、流路ユニット27について説明する。流路ユニット27は、ノズルプレート32、流路形成基板33、及び振動板34から構成され、ノズルプレート32を流路形成基板33の一方の表面に、振動板34をノズルプレート32とは反対側となる流路形成基板33の他方の表面にそれぞれ配置して積層し、接着等により一体化することで構成されている。
【0033】
図3は、ノズルプレートの平面図である。
流路ユニット27の底部に配置されるノズルプレート32は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば、180dpi)で複数のノズル35を副走査方向Yに沿って開設した薄い金属板である。本実施形態では、例えば、180個のノズル35を列状に開設し、これらのノズル35によってノズル列39(本発明におけるノズル群に相当)を構成している。そして、本発明の記録ヘッド2は、主としてテキスト印刷に用いられる染料系の色材を含む染料インク(本発明における第1の液体に相当)を噴射するノズル35a(本発明における第1ノズルに相当)と、主として写真印刷に用いられる顔料系の色材を含む顔料インク(本発明における第2の液体に相当)を噴射するノズル35b(本発明における第2ノズルに相当)とを有している。そして、この記録ヘッド2は、ノズル35aを列設したノズル列39a(本発明における第1ノズル群に相当)と、ノズル列39aに対して平行にノズル35bを列設したノズル列39b(本発明における第2ノズル群に相当)とを、副走査方向Yに1/2ピッチ(ノズル間のピッチ)だけ相対位置をずれさせ且つ主走査方向Xに間隔(ノズル列同士の間隔。図中にLで示す)を空けた状態で横並びに2列設けている。即ち、ノズルプレート32には、染料インクを噴射するノズル35aから構成されたノズル列39aと、顔料インクを噴射するノズル35bから構成されたノズル列39bとが主走査方向Xに並べて配置されている。なお、染料インクは、顔料インクに比べて記録紙6に着弾した際に記録紙6に対して浸透し易い。
【0034】
流路形成基板33は、リザーバー36、インク供給口37、及び圧力室38からなる一連のインク流路を形成する板状部材である。具体的には、この流路形成基板33は、各ノズル35に対応させて圧力室38となる空部を隔壁で区画した状態で複数形成すると共に、インク供給口37およびリザーバー36となる空部を形成した板状の部材である。そして、本実施形態の流路形成基板33は、シリコンウェハーをエッチング処理することで作製されている。上記の圧力室38は、ノズル35の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成され、インク供給口37は、圧力室38とリザーバー36との間を連通する流路幅の狭い狭窄部として形成されている。また、リザーバー36は、インクカートリッジ3に貯留されたインクを各圧力室38に供給するための室であり、インク供給口37を通じて対応する各圧力室38に連通している。
【0035】
振動板34は、ステンレス鋼等の金属製の支持板40上にPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂フィルム41をラミネート加工した二重構造の複合板材であり、圧力室38の一方の開口面を封止してこの圧力室38の容積を変動させるためのダイヤフラム部42を有すると共に、リザーバー36の一方の開口面を封止するコンプライアンス部43が形成された部材である。そして、ダイヤフラム部42は、圧力室38に対応した部分の支持板40にエッチング加工を施し、当該部分を環状に除去して圧電振動子30の自由端部の先端を接合するための島部44を形成することで構成されている。この島部44は、圧力室38の平面形状と同様に、ノズル35の列設方向と直交する方向に細長いブロック状であり、この島部44の周りの樹脂フィルム41が弾性体膜として機能する。また、コンプライアンス部43として機能する部分、すなわちリザーバー36に対応する部分は、このリザーバー36の開口形状に倣って支持板40がエッチング加工で除去されて樹脂フィルム41のみとなっている。
【0036】
そして、上記の島部44には圧電振動子30の先端面が接合されているので、この圧電振動子30の自由端部を伸縮させることで圧力室38の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室38内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド2は、この圧力変動を利用してノズル35からインク滴を噴射させるようになっている。なお、本発明における記録ヘッド2は、ノズル35aに連通する圧力室38の容積を変動させる第1圧電振動子(本発明における第1圧力発生手段に相当)を駆動することで、ノズル35aからインク滴を噴射する一方、ノズル35bに連通する圧力室38の容積を変動させる第2圧電振動子(本発明における第2圧力発生手段に相当)を駆動することで、ノズル35bからインク滴を噴射するように構成されている。
【0037】
次に、プリンター1の電気的な構成を説明する。
図4は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、プリンターコントローラー50とプリントエンジン51とで概略構成されている。プリンターコントローラー50は、ホストコンピューター等の外部装置からのデータが入力される外部インターフェース(外部I/F)52と、各種データ等を記憶するRAM53と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM54と、EEPROMやフラッシュROM等からなる不揮発性記憶素子55と、各部の制御を行う制御部56(本発明における調整部に相当)と、クロック信号を発生する発振回路57と、記録ヘッド2へ供給する駆動信号COMを発生する駆動信号発生回路58(本発明における駆動信号発生部に相当)と、印刷データ(ドットパターンデータ)や駆動信号COM等を記録ヘッド2に出力するための内部インターフェース(内部I/F)59と、を備えている。プリントエンジン51は、記録ヘッド2と、キャリッジ移動機構7と、紙送り機構8と、リニアエンコーダー10から構成されている。
【0038】
制御部56は、外部装置から外部I/F52を通じて受信した印刷データをドットパターンデータに変換し、このドットパターンデータを内部I/F59を通じて記録ヘッド2側に出力する。このドットパターンデータは、階調データをデコード(翻訳)することにより得られる印刷データによって構成されている。また、制御部56は、発振回路57からのクロック信号に基づいて記録ヘッド2に対してラッチ信号LAT、チェンジ信号CHを供給する。これらのラッチ信号やチェンジ信号は、駆動信号COMを構成する各駆動パルスDPの供給タイミングを規定する。
【0039】
図5は、基本駆動信号COM1の構成を説明する波形図である。本発明における駆動信号発生回路58は、記録紙6上に1画素(画像等の形成単位)を形成する期間に対応する1噴射周期T内に、圧電振動子30を駆動してノズル35から記録紙6に向けてインクを噴射するための駆動パルスDP1を複数含む一連の基本駆動信号COM1を発生する。本実施形態における基本駆動信号COM1は、1噴射周期(又は1記録周期:図5中に符号Tで示す)において、駆動パルスDP1を4つ含み、これを繰り返し単位としている。そして、駆動信号発生回路58は、この基本駆動信号COM1をそれぞれ内部I/F59を介して記録ヘッド2側に供給する。
【0040】
図6は、上記構成の駆動信号発生回路58が発生する基本駆動信号COM1に含まれる駆動パルスDP1の構成を説明する波形図である。なお、図6において、縦軸は駆動パルスDP1の電位であり、横軸は時間[μs]である。また、駆動パルスDP1の最低電位VLから最高電位VHまでの電位差(駆動電圧)はvh1に設定されている。
駆動パルスDP1は、基準電位VBから膨張電位VHまでプラス側に電位が変化して圧力室38を膨張させる膨張要素p1と、膨張電位VHを一定時間維持する膨張維持要素p2と、膨張電位VHから収縮電位VLまでマイナス側に電位が変化して圧力室38を急激に収縮させる収縮要素p3と、収縮電位VLを一定時間維持する収縮維持(制振ホールド)要素p4と、収縮電位VLから基準電位VBまで電位が復帰する復帰要素p5と、を含んでいる。
【0041】
駆動パルスDP1が圧電振動子30に供給されると次のように作用する。まず、膨張要素p1が圧電振動子30に供給されると、当該圧電振動子30が収縮し、これに伴って圧力室38が基準電位VBに対応する基準容積から最高電位VHに対応する最大容積まで変化、ここでは膨張する。これにより、ノズル35に露出しているメニスカスが圧力室38側に引き込まれる。この圧力室38の膨張状態は、膨張維持要素p2の供給期間中に亘って一定に維持される。
【0042】
膨張維持要素p2の後に続いて膨張要素p1によって電圧が変化した方向とは反対方向に電圧を変化させる要素となる収縮要素p3が圧電振動子30に供給されると、当該圧電振動子30が伸長し、これにより、圧力室38が上記最大容積から最低電位VLに対応する最小容積まで急激に変化、ここでは収縮する。この圧力室38の急激な収縮によって圧力室38内のインクが加圧され、これにより、ノズル35からは数pl〜数十plのインクが噴射される。この圧力室38の収縮状態は、収縮維持要素p4の供給期間に亘って短時間維持され、その後、制振要素p5が圧電振動子30に供給されて、圧力室38が最低電位VLに対応する容積から基準電位VBに対応する基準容積まで復帰する。
【0043】
図7は、記録紙6上におけるインクの着弾状態を説明する模式図であって、(a)は往路の状態であり、(b)は復路の状態である。
次に、主走査方向Xに沿って記録ヘッド2を往復移動させながら、圧電振動子30に基本駆動信号COM1を供給することで、ノズル35aとノズル35bそれぞれから噴射された染料インクと顔料インクとが記録紙6に着弾した際の着弾状態について説明する。なお、以下では、顔料インクと染料インクを用いて記録紙6上の所定の領域を塗りつぶす所謂ベタ塗り印刷を行うことを想定する。このベタ塗り印刷では、1噴射周期Tにおいて基本駆動信号COM1に含まれる複数(例えば、4つ)の駆動パルスDP1を圧電振動子30に印加することで、対応するノズル35から複数連続してインクを噴射させて記録紙6上の画素領域に複数の単位ドットから成る大ドットを形成する。図7における1つのドットは、1画素分のドット(大ドット)を示している。
最初に、往路時と復路時の両方で基本駆動信号COM1を用いる場合(即ち、本発明を適用していない場合)について説明する。まず、往路方向X1に記録ヘッド2を走査する場合には、図7(a)左側に示すように、ノズル列39bを構成する各ノズル35bから噴射された顔料インクは、ノズル列39bにおけるノズル35bピッチに対応して副走査方向Yに互いの間隔を1/2ピッチ空けた状態で列状(図中最左側の1列目)に着弾する。そして、顔料インクが記録紙6に着弾すると、顔料成分が記録紙6の表面上に堆積し、記録紙内部には殆ど浸透しない。これにより、副走査方向Yに沿って間隔を空けて並んだ顔料インクのドット(図中D2で示す)によって構成される1列目のドットD2の列が形成される。
【0044】
次に、往路方向X1に記録ヘッド2を所定ピッチ(例えば、約1ドット分)走査した後に、再びノズル列39bを構成する各ノズル35bから噴射された顔料インクは、1列目の顔料インクのドットD2の列から往路方向X1に所定ピッチ離れた位置に、副走査方向Yに互いの間隔を1/2ピッチ空けた状態で列状(図中左側から2列目)に着弾する。そして、記録紙6に着弾した2列目の顔料インクの顔料成分は、隣接する1列目の顔料インクの各ドットD2の隣に堆積する。これにより、副走査方向Yに沿って間隔を空けて並んだ顔料インクのドットD2によって構成される2列目のドットD2の列が形成される。このように記録ヘッド2を走査しながらノズル35bからインクを噴射してドットD2を順次形成していくことで主走査方向Xに隣接するドットD2同士が連結し、主走査方向Xに沿ってドットD2の行が形成される。
【0045】
一方、ノズル列39bによって1列目のドットD2を形成するためのインクを噴射した時点から、間隔Lに対応する距離だけ記録ヘッド2を走査した時点でノズル列39aを構成する各ノズル35aから染料インクを噴射する。ノズル35aから噴射される染料インクは、記録紙6に対して先に着弾した1列目の顔料インクのドットD2同士の間隔を埋めるように、副走査方向Yに互いの間隔を1/2ピッチ空けた状態で列状(図中最左側の1列目)に着弾する。そして、記録紙6に着弾した染料インクは、一部が記録紙6に浸透しつつ、その着弾位置を中心に記録紙6の表面に広がって、隣接する1列目の顔料インクの各ドットD2の端部(上下端)に連結する状態で被覆する。これにより、副走査方向Yに沿って間隔を空けて並んだ染料インクのドット(図中D1で示す)によって構成される1列目のドットD1の列が形成され、副走査方向Yに隣接するドットD1,D2同士が連結するように、染料インクの各ドットD1と顔料インクの各ドットD2が交互に形成される。このように記録ヘッド2を走査しながらノズル35bからインクを噴射してドットD1を順次形成していくことで主走査方向Xに隣接するドットD1同士が連結し、ドットD2の行間にドットD1の行が形成される。
【0046】
また、往路方向X1とは反対の復路方向X2に記録ヘッド2を走査する場合には、図7(b)左側に示すように、染料インクと顔料インクとの記録紙6に対する着弾順序が復路方向X2に走査する場合とは反対になる。即ち、復路方向X2に記録ヘッド2を走査する場合、記録紙6に対し、同一の列で見たときに(以下、同様。)先に染料インクが着弾した後に顔料インクが着弾する。先に染料インクが着弾してドットD1の列が形成された後、この列のドットD1同士の間に顔料インクが着弾してドットD2が形成されると、顔料インクの顔料成分の一部が、先に着弾した染料インクの記録紙への浸透に伴って染料インクのドットD1側に引っ張られてしまい、その分、ドットD2の濃度が薄くなってしまう。これにより、復路方向X2に記録ヘッド2を走査する場合、復路方向X1に走査する場合に比べて、記録紙6上に形成されたドットD1,D2を視認した際の濃度が薄くなる。
【0047】
このように、染料インクは顔料インクに比べて記録紙6に対して浸透し易く、主走査方向Xにおける往路と復路とで、染料インクと顔料インクとの記録紙6に対する着弾順序が異なるときには、着弾したインクによる濃度ムラ(色ムラ)が発生する場合がある。特に、記録紙6に対して染料インクと顔料インクとを重なって着弾する場合には、記録紙6に対する着弾順序の違いによって、記録紙6上に記録された画像等に濃度ムラが発生して画質が低下する虞があった。具体的には、記録紙6に対して先に顔料インクが着弾した後に染料インクが着弾する場合は、記録紙6に対して先に染料インクが着弾した後に顔料インクが着弾する場合に比べて、着弾したインクによるドットD1,D2を視認した際の濃度が濃くなることがあった。
【0048】
そこで、本発明におけるプリンター1では、制御部56が記録紙6における染料インクと顔料インクとの着弾順序に応じて駆動信号COMを変更させて、染料インクまたは顔料インクのうち少なくとも一方の噴射量を調整することに特徴を有している。より詳しくは、本実施形態の制御部56は、記録紙6に対して先に顔料インクが着弾した後に染料インクが着弾する往路方向X1において、記録紙6に対して先に染料インクが着弾した後に顔料インクが着弾する復路方向X2で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に少なくなるように、顔料インクに対応するノズル列39bの噴射に使用する往路用駆動信号COM2を設定する。以下、本発明における往路用駆動信号COM2について説明する。
【0049】
図8は、往路用駆動信号COM2Aの構成を説明する波形図である。
本発明における駆動信号発生回路58は、1噴射周期T内に、駆動パルスDP2を複数含む一連の往路用駆動信号COM2Aを発生する。本実施形態における往路用駆動信号COM2Aは、1画素分の区間において、駆動パルスDP2を4つ含み、これを繰り返し単位としている。この駆動パルスDP2の駆動電圧vh2は、駆動パルスDP1の駆動電圧vh1よりも小さい値に設定されている(vh2<vh1)。そして、制御部56は、復路方向X2において染料インク及び顔料インクと往路方向X1において染料インクを噴射する際には、基本駆動信号COM1を用いる一方、往路方向X1において染料インクを噴射する際にはそのまま基本駆動信号COM1を使用するのに対し、顔料インクを噴射する際には、往路用駆動信号COM2Aに変更する。このように変更された往路用駆動信号COM2Aを、往路方向X1において顔料インクを噴射するノズル35bに対応する圧電振動子30に供給することにより、図7(a)右側に示すように、往路方向X1において、復路方向X2で用いる基本駆動信号COM1を用いて記録紙6に着弾させたドットD2(図7(b)右側)と比較して、顔料インクの噴射量が相対的に少なくなる。これにより、往路方向X1におけるドットD1,D2の濃度を、復路方向X2におけるドットD1,D2の濃度に揃えることで、往路方向X1と復路方向X2との濃度差が低減される。
【0050】
図9は、往路用駆動信号の変形例の構成を説明する波形図である。
本発明の往路用駆動信号COM2は、上記した往路用駆動信号COM2Aに限られない。例えば、1画素分の区間において、駆動パルスDP1を3つ含み、これを繰り返し単位とした往路用駆動信号COM2Bに変更しても良い。これにより、制御部56は、圧電振動子30に印加する駆動信号COMに含まれる駆動パルスDPのパルス数を変更することで噴射重量を調整するので、即ち、1画素あたりに着弾するインクの量が調整されるので、駆動パルスDPの駆動電圧vhを変更する場合と比べ、インクの噴射重量の調整量を広げることができ、記録紙6に着弾した際のインクの浸透速度の差に起因する濃度ムラを簡単な構成で低減させることができる。なお、駆動信号COMに含まれる駆動パルスDPのパルス数を減らす変更をした場合には、駆動パルスDPの駆動電圧vhを高める変更を同時にすることで、さらに正確に噴射重量を調整することができる。
【0051】
図10は、他の実施形態における記録紙6に着弾したインクの着弾状態を説明する模式図であって、(a)は往路の状態であり、(b)は復路の状態である。
上記した実施形態では、往路方向X1において、復路方向X2で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に少なくなるように往路用駆動信号COM2を設定する構成を説明したが、これには限られず、復路方向X2において、往路方向X1で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に多くなるように復路用駆動信号COM3(図示せず)を設定しても良い。具体的には、制御部56は、圧電振動子30に印加する復路用駆動信号COM3Aに含まれる駆動パルスDP3(図示せず)の駆動電圧vh3を、駆動パルスDP1の駆動電圧vh1よりも高めても良いし、1画素分の区間において、駆動パルスDP1を5つ以上含み、これを繰り返し単位とした復路用駆動信号COM3Bに変更しても良い。このように変更された復路用駆動信号COM3A,COM3Bを、復路方向X2において顔料インクを噴射するノズル35bに対応する圧電振動子30に供給することにより、図10(b)右側に示すように、往路方向X1において、復路方向X2で用いる基本駆動信号COM1を用いて記録紙6に着弾させたドットD2(図10(a)右側)と比較して、顔料インクの噴射量が相対的に多くなる。これにより、復路方向X2と往路方向X1との濃度差が低減される。これにより、復路方向X1におけるドットD1,D2の濃度を、往路方向X1におけるドットD1,D2の濃度に揃えることで、往路方向X1と復路方向X2との濃度差が低減される。
【0052】
このように、本実施形態のプリンター1は、記録紙6における染料インクと顔料インクとの着弾順序に応じて駆動信号COMを変更させて、染料インクまたは顔料インクのうち少なくとも一方の噴射量を調整する制御部56を備えたので、即ち、制御部56は、記録紙6に対して先に顔料インクが着弾した後に染料インクが着弾する往路方向X1において、記録紙6に対して先に染料インクが着弾した後に顔料インクが着弾する復路方向X2で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に少なくなるように往路用駆動信号COM2Aを設定し、又は、復路方向X2において、往路方向X1で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に多くなるように復路用駆動信号COM3を設定するので、異なる色材を含むインク同士の着弾順序が相対移動方向における往路と復路とで異なっても、記録紙6に対するインクの浸透速度の差に起因する濃度ムラを簡単な構成で低減させることができ、記録紙6等に記録された画像の画質の低下を抑制することができる。
【0053】
制御部56は、圧電振動子30に印加する駆動信号COMに含まれる駆動パルスDPの駆動電圧vhを変更することで噴射重量を調整するので、インクの噴射重量を容易に調整できる。
【0054】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0055】
上記実施形態では、本発明における駆動パルスの一例として、図5,図6,図8,図9に示す駆動パルスDPを挙げたが、パルスの形状は例示したものに限られず、圧電振動子30の駆動状態を可変に設定させていれば、任意の波形のものを用いることができる。
【0056】
また、染料インクを噴射するノズル35aを列設したノズル列39aと、顔料インクを噴射するノズル35bを列設したノズル列39bとの主走査方向Xにおける並び順は、反対でも良い。この際には、往路方向X2において、復路方向X1で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に多くなるように往路用駆動信号COM2Aを設定し、又は、復路方向X1において、往路方向X2で用いる基本駆動信号COM1と比較して、顔料インクの噴射重量が相対的に少なくなるように復路用駆動信号COM3を設定すれば良い。
【0057】
なお、上記各実施形態では、圧力発生手段として、所謂縦振動型の圧電振動子30を例示したが、これには限られず、例えば、所謂撓み振動型の圧電振動子を採用することも可能である。この場合、例示した駆動信号に関し、電位の変化方向、つまり上下が反転した波形となる。また、圧力振動子30は、磁歪素子や発熱素子を用いる場合にも本発明を適用することが可能である。
【0058】
以上は、液体噴射装置の一種であるプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…プリンター、2…記録ヘッド、6…記録紙、7…キャリッジ移動機構、30…圧電振動子、35…ノズル、38…圧力室、39…ノズル列、56…制御部、58…駆動信号発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料系の色材を含む第1の液体を噴射する第1ノズルと、顔料系の色材を含む第2の液体を噴射する第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第1圧力発生手段および前記第2ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第2圧力発生手段を駆動することで前記ノズルから液体を噴射して着弾対象に着弾させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動する駆動パルスを含む駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記着弾対象と前記液体噴射ヘッドとを相対的に移動させる走査機構と、を備えた液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドは、当該液体噴射ヘッドと前記着弾対象との相対移動方向に交差する方向に前記第1ノズルを列設した第1ノズル群と、当該第1ノズル群に対して平行に前記第2ノズルを列設した第2ノズル群とを、前記相対移動方向に並べて配置し、
前記着弾対象における前記第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて前記駆動信号を変更させて、前記第1の液体または前記第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整する調整部を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記着弾対象に対して第2の液体が先に着弾した後に前記第1の液体が着弾する第1の相対移動方向において、前記着弾対象に対して第1の液体が先に着弾した後に前記第2の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定し、又は、前記第2の相対移動方向において、前記第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
染料系の色材を含む第1の液体を噴射する第1ノズルと、顔料系の色材を含む第2の液体を噴射する第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第1圧力発生手段および前記第2ノズルに連通する圧力室の容積を変動させる第2圧力発生手段を駆動することで前記ノズルから液体を噴射して着弾対象に着弾させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動する駆動パルスを含む駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記着弾対象と前記液体噴射ヘッドとを相対的に移動させる走査機構と、を備えた液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体噴射ヘッドと前記着弾対象との相対移動方向に交差する方向に前記第1ノズルを列設した第1ノズル群と、当該第1ノズル群に対して平行に前記第2ノズルを列設した第2ノズル群とを、前記相対移動方向に並べて配置した前記液体噴射ヘッドの各ノズルから前記液体を噴射する際に、前記着弾対象における第1の液体と第2の液体との着弾順序に応じて前記駆動信号を変更させて、前記第1の液体または前記第2の液体のうち少なくとも一方の噴射重量を調整することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項6】
前記着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第1の相対移動方向において、前記着弾対象に対して先に第2の液体が着弾した後に第1の液体が着弾する第2の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に少なくなるように駆動信号を設定し、又は、前記第2の相対移動方向において、前記第1の相対移動方向で用いる駆動信号と比較して、前記第2の液体の噴射重量が相対的に多くなるように駆動信号を設定することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置の制御方法。
【請求項7】
前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスの駆動電圧を変更することで噴射重量を調整することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体噴射装置の制御方法。
【請求項8】
前記圧力発生手段に印加する前記駆動信号に含まれる前記駆動パルスのパルス数を変更することで噴射重量を調整することを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか一項に記載の液体噴射装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−6239(P2012−6239A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143788(P2010−143788)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】