説明

液体噴射装置、液体噴射方法

【課題】記録品質の低下を抑制しつつ効率よく記録を行うことができる液体噴射装置、液体噴射方法を提供する。
【解決手段】長尺状の用紙12に対してインクを噴射して印刷処理を施す記録ヘッド29と、用紙12を搬送方向の上流側から下流側へ搬送する第2,第3の搬送ローラー17,18と、記録ヘッド29よりも搬送方向の下流側に設けられて用紙12を搬送方向と交差する幅方向に沿って切断するカッター19と、記録ヘッド29を制御する制御部とを備え、カッター19は、第2,第3の搬送ローラー17,18による用紙12の搬送が停止された状態で用紙12を切断し、制御部は、カッター19による用紙12の切断に合わせて記録ヘッド29を制御してカッター19が用紙12を切断する切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で切断処理と並列にフラッシング処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置、液体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の一つとして、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターでは、インクカートリッジから供給されるインク(液体)を記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に形成されたノズルからターゲットに対して噴射することにより印刷(記録)を施すようになっている。
【0003】
このようなプリンターの中には、例えば特許文献1に記載されるように、長尺状のロール紙に対してインクを噴射して印刷を施すと共に、印刷が施されたロール紙を切断して単票状の印刷物として排紙するものがある。
【0004】
また、ノズルからインクを噴射して印刷を行う場合には、インクが噴射されない状態が長時間に亘ると、ノズルからインクが蒸発して増粘し、噴射不良を起こす虞がある。このような場合、ノズルの状態を良好に維持するためのクリーニング処理は、印刷処理と同時に行うことができないため、印刷処理の終了を待って行っていた。その結果、こうした場合のクリーニング処理の実行は、印刷効率を低下させる要因となっていた。
【0005】
そこで、特許文献1のプリンターでは、ロール紙の切断処理が実行されたことを契機として印刷が終了したものと見做してクリーニング処理を実行し、次回の印刷処理時における印刷を開始するまでの時間を短縮していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−118322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のプリンターの場合は、ロール紙の切断時にノズルからインクを吸引して強制的に排出させる吸引クリーニングを行っている。この吸引クリーニングは、記録ヘッドのノズル形成面にキャップを当接させると共に、キャップ内を負圧にして吸引するため、切断に要する時間よりも長い時間がかかってしまう。
【0008】
そのため、例えば、複数枚の印刷を連続して行うと共に、印刷を中断して切断処理を行うプリンターにおいて、切断処理に伴って吸引クリーニングを行った場合には、印刷の中断時間が長くなってしまう。そして、中断時間が長くなると、吸引クリーニング前に付着したインクが乾燥してしまい、吸引クリーニング後に付着したインクとの間に色目違いが生じて印刷品質を劣化させてしまう虞がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録品質の低下を抑制しつつ効率よく記録を行うことができる液体噴射装置、液体噴射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、長尺状のターゲットに対して液体を噴射して記録処理を施す液体噴射ヘッドと、前記ターゲットを搬送方向の上流側から下流側へ搬送する搬送手段と、前記液体噴射ヘッドよりも前記搬送方向の下流側に設けられて前記ターゲットを前記搬送方向と交差する幅方向に沿って切断する切断手段と、前記液体噴射ヘッドを制御する制御手段とを備え、前記切断手段は、前記搬送手段による前記ターゲットの搬送が停止された状態で該ターゲットを切断し、前記制御手段は、前記切断手段による前記ターゲットの切断に合わせて前記液体噴射ヘッドを制御して前記切断手段が前記ターゲットを切断する切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で前記切断処理と並列に予め定めた並列処理を実行する。
【0011】
この構成によれば、切断手段がターゲットを切断する際に、切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で並列処理を実行するため、切断処理の終了後に速やかにターゲットに対して記録処理を再開することができる。さらに、切断手段がターゲットを切断する際には、ターゲットの搬送が停止していると共に、液体噴射ヘッドによるターゲットに対する記録処理も中断されている。そのため、このように記録処理が中断される切断処理が実行された場合に、切断処理には用いない液体噴射ヘッドに記録処理以外の並列処理を実行させることにより、そのような処理を切断処理時とは別のときに実行させる場合と比べて記録効率を向上させることができる。したがって、記録品質の低下を抑制しつつ効率よく記録を行うことができる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記並列処理は、該液体噴射ヘッドに形成されたノズルから記録処理とは無関係に液体を噴射させるフラッシングである。
この構成によれば、ターゲットの搬送に伴って切断処理が定期的に行われるため、ターゲットの切断に合わせて定期的にノズルから記録処理とは無関係に液体を噴射させてフラッシングを行うことにより、ノズルの状態を良好に維持することができる。すなわち、ノズルからの液体の噴射不良を抑制しつつ効率よく記録処理を施すことができる。
【0013】
本発明の液体噴射装置は、フラッシングを定期的に行うための第1の間隔を記憶する記憶手段をさらに備え、前記切断手段が前記ターゲットの切断処理を前回行ってから今回行うまでの第2の間隔が前記第1の間隔よりも短い場合には、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドを制御して前記切断手段による今回の切断処理と並列にフラッシングを実行し、前記第2の間隔が前記第1の間隔よりも長い場合には、前記第1の間隔でフラッシングを実行する。
【0014】
切断手段が切断処理を行う第2の間隔は、ターゲットの大きさや材質などによって変化する。また、ノズルから液体の噴射されない状態が長時間に亘ると、ノズルから液体が蒸発して増粘したり、メニスカスが上昇したりする虞がある。その点、この構成によれば、記憶手段に記憶された第1の間隔と、切断処理の第2の間隔とを比較して短い方の間隔でフラッシングを行うため、ノズルの状態の悪化を抑制することができる。すなわち、第1の間隔よりも第2の間隔が短い場合には、第2の間隔で切断処理と並列にフラッシングを行ってもノズルの状態を良好に維持することができると共に、記録を中断する切断処理と並列してフラッシングさせることにより効率よく記録を行うことができる。一方、第1の間隔よりも第2の間隔が長い場合には、第2の間隔でフラッシングを行うと液体が蒸発して増粘してしまう虞がある。そこで、第1の間隔でフラッシングを行うことにより、ノズルの状態を良好に維持することができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを前記ターゲットと対向して記録可能な記録位置と該記録位置とは異なる非記録位置との間で移動させる第1の移動手段をさらに備え、前記切断手段は、前記ターゲットを切断するカッターと、該カッターを前記ターゲットの切断が可能な切断位置と該切断位置とは異なる非切断位置との間で移動させる第2の移動手段とを有する。
【0016】
この構成によれば、液体噴射ヘッドを移動させる第1の移動手段と、カッターを移動させる第2の移動手段をそれぞれ別の構成として備えているため、液体噴射ヘッドとカッターを別々に移動させることができる。すなわち、切断処理に伴って液体噴射ヘッドを任意の位置に移動させて並列処理を行うことができる。
【0017】
本発明の液体噴射方法は、液体噴射ヘッドから噴射した液体を長尺状のターゲットに付着させて記録処理を施す記録段階と、前記ターゲットを搬送方向の上流側から下流側へ搬送する搬送段階と、前記記録段階において記録が施されると共に、前記搬送段階において搬送された前記ターゲットの搬送を停止した状態で該ターゲットを前記搬送方向と交差する幅方向に切断する切断段階とを備え、該切断段階において、前記ターゲットを切断する切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で前記液体噴射ヘッドによる予め定められた並列処理を実行する。
【0018】
この構成によれば、上記液体噴射装置に係る発明と同様の作用効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プリンターの正面模式図。
【図2】時間t1における印刷部の平面模式図。
【図3】制御部のブロック図。
【図4】フラッシングタイミングを設定するフローチャート。
【図5】切断処理及びフラッシング処理のタイミングチャート。
【図6】時間t2における印刷部の平面模式図。
【図7】時間t4における印刷部の平面模式図。
【図8】時間t6における印刷部の平面模式図。
【図9】時間t7における印刷部の平面模式図。
【図10】時間t8における印刷部の平面模式図。
【図11】印刷処理再開時の印刷部の平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の液体噴射装置及び液体噴射方法をインクジェット式プリンターにおいて具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向であり、図2に矢印で示した方向を示すものとする。また、この場合における「上下方向」は鉛直方向に相当すると共に、「左右方向」はその左側から右側に向かう方向がターゲットの搬送方向に相当し、「前後方向」はターゲットの搬送方向と交差する幅方向に相当する。
【0021】
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンター11は、長尺状のターゲットとしての用紙12を給紙する給紙部13と、給紙部13から給紙された用紙12に印刷(記録処理)を施す印刷部14とを備えている。また、プリンター11は、給紙部13から繰り出された用紙12の搬送方向を変換する転換ローラー15と、用紙12を表裏両面から挟持して搬送方向(左右方向)の下流側(右側)へ搬送するそれぞれ1対の第1〜第3の搬送ローラー16〜18とを備えている。さらに、印刷部14よりも用紙12の搬送方向の下流側に設けられた第2,第3の搬送ローラー17,18の間には、印刷が施された用紙12を搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に沿って切断するカッター19が設けられている。
【0022】
さて、用紙12の搬送方向の上流側となる給紙部13には、前後方向に延びる巻き軸21が回転可能に設けられていると共に、予めロール状に巻かれた用紙12が巻き軸21と一体回転可能に支持されている。また、プリンター11は、巻き軸21、転換ローラー15、第1〜第3の搬送ローラー16〜18を回転駆動する搬送モーター22(図3参照)を備えている。
【0023】
すなわち、搬送モーター22の駆動に伴って巻き軸21が回転することにより給紙部13から繰り出された用紙12は、転換ローラー15に巻き掛けられて搬送方向を変換される。さらに、用紙12は、第1〜第3の搬送ローラー16〜18の回転に伴って印刷部14を通過するように搬送される。したがって、転換ローラー15、第1〜第3の搬送ローラー16〜18、巻き軸21、搬送モーター22は、搬送方向の上流側から下流側へ用紙12を搬送する搬送手段として機能している。
【0024】
図1,図2に示すように印刷部14は、用紙12を支持する支持台24と、用紙12の幅方向に延びると共に、前後両端が図示しないフレームに支持された棒状のガイド軸25とを有している。そして、ガイド軸25には、キャリッジモーター26(図3参照)の駆動により、ガイド軸25に沿って走査方向(前後方向)に往復移動可能なキャリッジ27が支持されている。さらに、キャリッジ27には、走査方向と直交する副走査方向(左右方向)に延びる少なくとも1つ(本実施形態では4つ)のノズル列28が形成された液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド29が搭載されている。
【0025】
また、支持台24よりも後側の非印刷位置(非記録位置)P1には、記録ヘッド29のフラッシングに伴って各ノズル列28から噴射されたインクを受容するフラッシングボックス31が設けられている。すなわち、キャリッジモーター26は、キャリッジ27を記録ヘッド29が用紙12と対向して印刷(記録)可能な印刷位置(記録位置)P2と、印刷位置P2とは異なって用紙12とは非対向な非印刷位置P1との間で移動させる第1の移動手段として機能している。
【0026】
そして、記録ヘッド29は、キャリッジ27と共に印刷位置P2を移動しつつ、図示しないインクカートリッジから供給されたインク(液体)を、ノズル列28を構成する各ノズルから噴射することにより、支持台24に支持された用紙12に印刷を施すようになっている。
【0027】
また、本実施形態におけるカッター19は円形刃であって、回転軸32を中心として回転可能なロータリーカッターである。そして、カッター19は、第2の移動手段としての切断モーター33(図3参照)の駆動に伴って用紙12の幅方向に延びる図示しない軸に沿って往復移動し、用紙12の切断が可能な切断位置P3と、切断位置とは異なる非切断位置P4との間を移動する。すなわち、カッター19及び切断モーター33は、切断手段として機能している。
【0028】
さらに、図3に示すように、プリンター11には、プリンター11の稼動状態を統括制御する制御手段としての制御部34が設けられている。この制御部34は、操作部35の操作に基づいて搬送モーター22、キャリッジモーター26、記録ヘッド29、切断モーター33を制御し、印刷処理(記録処理)とフラッシング処理(並列処理)と切断処理とを実行するようになっている。また、制御部34は、印刷処理(記録処理)とは無関係にインクを噴射する所謂フラッシングを定期的に行うための第1の間隔としての閾値間隔TTを記憶している。この点で、制御部34は、記憶手段としても機能している。
【0029】
なお、閾値間隔TTとは、ノズルからのインク噴射が連続して行われない状態であっても、インクの増粘などに伴う噴射不良を起こすことなくノズルから正常にインクを噴射することができる時間間隔である。すなわち、閾値間隔TTは、記録ヘッド29から噴射するインクの種類などに応じて設定される時間間隔であって、増粘しやすいインクを噴射する場合には、増粘しにくいインクを噴射する場合よりも閾値間隔TTは短く設定される。
【0030】
また、制御部34は、搬送方向において用紙12を切断するサイズに対応付けて第2の間隔としてのカッティング間隔CTを記憶している。なお、カッティング間隔CTとは、用紙12の切断処理を前回行ってから今回行うまでの時間間隔であって、切断後の用紙12のサイズに応じて変化し、サイズが大きいほどカッティング間隔CTも長くなる。
【0031】
次に、制御部34が実行してフラッシングタイミングを設定するタイミング設定ルーチンについて図4のフローチャートに基づき設定する。
さて、ユーザーによって操作部35が操作されて印刷が開始されると、制御部34は、ステップS101において、閾値間隔TTがカッティング間隔CT以下であるか否かを判断する。そして、閾値間隔TTがカッティング間隔CT以下である場合には(ステップS101:YES)、閾値間隔TTよりも長いカッティング間隔CTでフラッシングを行うと噴射不良が生じてしまう虞があるため、制御部34は閾値間隔TTでフラッシングを実行する。
【0032】
具体的には、制御部34は、ステップS102において、閾値間隔TTが経過したか否かを判断する。すなわち、印刷を開始した開始時間から現在時間との時間間隔が閾値間隔TT以上となった場合には、閾値間隔TTが経過したと判断する(ステップS102:YES)。
【0033】
すると、制御部34は、ステップS103において、キャリッジ27の走査方向が変更されるタイミングを利用してキャリッジモーター26を制御し、記録ヘッド29をフラッシングボックス31と対向する位置まで移動させると共に、記録ヘッド29を制御して全ノズルからインクを噴射させる。すなわち、制御部34は、印刷処理における印刷のために、記録ヘッド29の各ノズルから用紙12に対するインクの噴射がされないタイミングでフラッシング処理を実行する。続いて制御部34は、次のステップS104において、タイマー(図示略)をリセットし、フラッシングが実行されてからの経過時間を計測する。
【0034】
さらに、制御部34は、ステップS105において、印刷が終了したか否かを判断し、印刷が終了した場合にはタイミング設定ルーチンを終了する(ステップS105:YES)。また、印刷が終了していない場合には(ステップS105:NO)、ステップS102に戻り、タイマーの計測時間に基づいて前回のフラッシング処理が実行された時間から現在時間との時間間隔が閾値間隔TT以上であるか否かを判断する。
【0035】
すなわち、タイマーが計測した経過時間が閾値間隔TT以上である場合には(ステップS102:YES)、ステップS103に移行してフラッシング処理を実行する。また、タイマーが計測した経過時間が閾値間隔TT未満である場合には、制御部34は、閾値間隔TTが経過していないと判断する(ステップS102:NO)。すると、制御部34は、その処理をステップS105に移行し、前述したステップS105における処理を実行する。
【0036】
一方、ステップS101において、閾値間隔TTがカッティング間隔CT未満である場合には(ステップS101:NO)、制御部34は、切断処理と並列にフラッシング処理を実行する。すなわち、閾値間隔TTよりもカッティング間隔CTの方が短いため、カッティング間隔CTでフラッシングを行っても、噴射不良が起こる確率は低くなっている。
【0037】
そこで、制御部34は、ステップS106において、切断処理が開始されたか否かを判断する。そして、切断処理が開始された場合には(ステップS106:YES)、制御部34は、ステップS103の場合と同様のフラッシング処理を実行し(ステップS107)、その後、処理をステップS108に移行する。また、ステップS106において切断処理が開始されていない場合には(ステップS106:NO)、ステップS107を経由することなく、その処理を直接ステップS108に移行する。
【0038】
そして、制御部34は、ステップS108において、印刷が終了したか否かを判断し、印刷が終了した場合にはタイミング設定ルーチンを終了する(ステップS108:YES)。また、印刷が終了していない場合には(ステップS108:NO)、ステップS106に戻り、前述したステップS106における処理を実行する。
【0039】
次に、以上のように構成されたプリンター11の作用について、印刷処理の合間に行う切断処理及びフラッシング処理を、図5のタイミングチャートに基づいて以下説明する。但し、閾値間隔TTは、カッティング間隔CT未満であって、プリンター11は、切断処理と並列してフラッシング処理を実行するものとする。
【0040】
そして、本実施形態では、搬送量のずれを考慮し、搬送方向における各画像A〜Cの境界を境として所定間隔(例えば1mm)離れた位置をカッター19によって切断される第1,第2の切り取り位置CP1,CP2とする。すなわち、2枚の画像A,Bを切り分ける1回の切断処理では、画像A,Bの境界よりも搬送方向下流(画像A)側の第1の切り取り位置CP1と、境界よりも搬送方向上流(画像B)側の第2の切り取り位置CP2との2ヶ所を切断する。
【0041】
また、図5に示すタイミングチャートでは、キャリッジ27及びカッター19の前側から後側へ向かって移動する速度を正とすると共に、後側から前側に向かって移動する速度を負として図示している。また、紙送り速度は、用紙12の搬送方向における上流側から下流側への移動速度を正として図示している。
【0042】
さて、プリンター11において操作部35がユーザーによって操作されて印刷が開始されると、搬送モーター22、キャリッジモーター26、記録ヘッド29の駆動に伴って印刷処理が実行される。すなわち、記録ヘッド29は、走査方向に往復移動しつつ、停止した状態の用紙12に対して各ノズルからインクを噴射して印刷を施す(記録段階)。
【0043】
また、用紙12は、キャリッジ27の走査方向が変更されるごとに、キャリッジ27の1回の走査に伴って記録ヘッド29が用紙12に印刷可能な印刷幅Wずつ搬送方向の下流側に搬送される(搬送段階)。なお、本実施形態では、ノズル列28を構成する全てのノズルを使用して印刷を行うため、印刷幅Wは、ノズル列28の搬送方向における列幅と一致している。そのため、用紙12の搬送と印刷とを交互に行うことにより、用紙12には、図2に示すように印刷データに基づいて画像A〜Cが印刷される。
【0044】
そして、図2に示すように、カッター19よりも搬送方向の上流側に位置する第1の切り取り位置CP1とカッター19との搬送方向における距離Lが印刷幅W以下となった場合には、切断処理とフラッシング処理を並列に実行する。すなわち、キャリッジ27は、非印刷位置P1において前側から後側へ向かう移動速度が減速されると共に、キャリッジ27が印刷位置P2から後側の非印刷位置P1に移動する時間t1において搬送モーター22が駆動して用紙12の搬送が開始される。
【0045】
具体的には、図6に示すように、用紙12は、図2に示す状態から、搬送方向において第1の切り取り位置CP1が搬送方向においてカッター19と一致するように搬送される。また、カッター19は、用紙12が停止する時間t2(図5参照)に用紙12の切断を開始するように、用紙12が搬送開始に伴う加速状態から定速状態に移った直後に図2に示す状態から前側に向かって移動開始する。また、このときキャリッジ27は、非印刷位置P1において一旦停止した後、フラッシングボックス31側となる後側への移動を開始する。
【0046】
そして、図7に示すように、キャリッジ27がフラッシングボックス31上に位置するように停止した時間t3(図5参照)に、記録ヘッド29は制御部34から出力されたフラッシング信号(すなわち、印刷とは無関係にインクを噴射させる制御信号)に基づいて全てのノズルからインクを噴射するフラッシングを行う。
【0047】
また、このときカッター19は、後側の非切断位置P4から前側に向かって移動しつつ用紙12を切断して前側の非切断位置P4で停止する。そして、カッター19が切断位置P3から前側の非切断位置P4に移動する時間t4(図5参照)に用紙12の搬送が開始され、用紙12は、第2の切り取り位置CP2が搬送方向においてカッター19と一致するように搬送される。
【0048】
図5に示すように、時間t5において、フラッシングが終了すると、次には、図8に示すように、キャリッジ27がフラッシングボックス31上に位置から前側に向かって移動する。また、このときカッター19は、用紙12が停止する時間t6(図5参照)に用紙12の切断を開始できるように、前側の非切断位置P4から後側に向かって移動する。
【0049】
したがって、図9に示すように、時間t6(図5参照)から時間t7(図5参照)にかけてカッター19が切断位置P3を前側から後側に向けて通過すると、用紙12は、カッター19の移動に伴って第2の切り取り位置CP2で切断される(切断段階)。
【0050】
さらに、図10に示すように、カッター19が切断位置P3から非切断位置P4に移動する時間t7(図5参照)において、用紙12は、図2に示す状態から印刷幅Wだけ搬送された状態となるように搬送が開始される。すなわち、キャリッジ27の走査に伴ってノズル列28と対向する領域と、先の印刷処理において印刷された部分とが搬送方向において連続するように用紙12が搬送される。そして、時間t8(図5参照)に用紙12の搬送が停止するのに合わせて、キャリッジ27を後側から前側に向かって移動させつつ用紙12に対してインクを噴射する印刷処理を再開する(図11参照)。なお、切断処理に要する第1の時間T1(T1=t8−t1)よりも、フラッシング処理に要する第2の時間T2の方が短いため、切断処理の終了後は速やかに印刷処理が再開される(図5参照)。
【0051】
そして、前側に向かって移動したキャリッジ27が前側の非印刷位置P1まで移動すると、用紙12は、さらに印刷幅Wだけ搬送され、印刷に伴って搬送方向の下流側へ徐々に搬送される。そして、カッター19よりも搬送方向の上流側に位置する第1の切り取り位置CP1と、カッター19との距離Lが印刷幅W以下となるまで印刷処理が実行されると、再び切断処理とフラッシング処理が実行される。
【0052】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)カッター19が用紙12を切断する際に、切断処理に要する第1の時間T1よりも短い第2の時間T2でフラッシング処理を実行するため、切断処理の終了後に速やかに用紙12に対して印刷処理を再開することができる。さらに、カッター19が用紙12を切断する際には、用紙12の搬送が停止していると共に、記録ヘッド29による用紙12に対する印刷処理も中断されている。そのため、このように印刷処理が中断される切断処理が実行された場合に、切断処理には用いない記録ヘッド29に印刷処理以外のフラッシング処理を並列的に実行させることにより、そのような処理を切断処理時とは別のときに実行させる場合と比べて印刷効率を向上させることができる。したがって、印刷品質の低下を抑制しつつ効率よく印刷を行うことができる。
【0053】
(2)用紙12の搬送に伴って切断処理が定期的に行われるため、用紙12の切断に合わせて定期的にノズルから印刷処理とは無関係にインクを噴射させてフラッシングを行うことにより、ノズルの状態を良好に維持することができる。すなわち、ノズルからのインクの噴射不良を抑制しつつ効率よく印刷処理を施すことができる。
【0054】
(3)カッター19が切断処理を行うカッティング間隔CTは、用紙12の大きさや材質などによって変化する。また、ノズルからインクの噴射されない状態が長時間に亘ると、ノズルからインクが蒸発して増粘したり、メニスカスが上昇したりする虞がある。その点、制御部34に記憶された閾値間隔TTと、切断処理のカッティング間隔CTとを比較して短い方の間隔でフラッシングを行うため、ノズルの状態の悪化を抑制することができる。すなわち、閾値間隔TTよりもカッティング間隔CT隔が短い場合には、カッティング間隔CTで切断処理と並列にフラッシングを行ってもノズルの状態を良好に維持することができると共に、記録を中断する切断処理と並列してフラッシングさせることにより効率よく印刷を行うことができる。一方、閾値間隔TTよりもカッティング間隔CTが長い場合には、カッティング間隔CTでフラッシングを行うとインクが蒸発して増粘してしまう虞がある。そこで、閾値間隔TTでフラッシングを行うことにより、ノズルの状態を良好に維持することができる。
【0055】
(4)記録ヘッド29を移動させるキャリッジモーター26と、カッター19を移動させる切断モーター33をそれぞれ別の構成として備えているため、記録ヘッド29とカッターを別々に移動させることができる。すなわち、切断処理に伴って記録ヘッド29を任意の位置に移動させてフラッシング処理を行うことができる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、キャリッジモーター26と切断モーター33をどちらか1つ設け、その1つのモーターの駆動力によってキャリッジ27とカッター19の双方を移動させるようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態において、記録ヘッド29は、用紙12の幅方向(前後方向)に亘って印刷可能なライン型の記録ヘッドとしてもよい。また、記録ヘッド29をライン型とする場合には、フラッシングボックス31をノズル列28と対向移動させてフラッシングを行うようにしてもよい。そして、フラッシングボックス31も噴射されたインクを受容可能であれば箱型に限らず、ベルト、糸、ワイヤ、シート、板材など任意に選択することができる。
【0058】
・上記実施形態において、カッター19は、非回転の剃刀状の刃としてもよく、はさみのように用紙12の表裏両面に当たる刃を有するものとしてもよい。また、用紙12の幅方向に亘る刃を有するカッターとし、上下方向に移動もしくは軸を中心として揺動させてもよい。そして、用紙12を同じ大きさに切断する場合には、カッティング間隔CTが一定となるため、制御部34の制御によらずに例えばタイマーによって一定時間経過後に用紙12を切断するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、閾値間隔TTとカッティング間隔CTとの比較を行わず、カッティング間隔CTに関わらずに切断処理が実行された場合にはフラッシング処理を行うようにしてもよい。すなわち、この場合には制御部34に閾値間隔TTを記憶させなくてもよい。
【0060】
・上記実施形態において、閾値間隔TTがカッティング間隔CTの2倍以上である場合には、複数回行われる切断処理のうちフラッシング処理を並列して実行する切断処理を選択することができる。すなわち、例えば閾値間隔TTがカッティング間隔CTの2倍である場合には、カッティング間隔CTで実行される切断処理に対して、1回おきにフラッシング処理を行うようにしてもよい。これにより、フラッシングを行う頻度を閾値間隔TTに近づけることができるため、フラッシングに伴うインクの消費を抑制しつつインクの増粘を抑制することができる。
【0061】
・上記実施形態において、切断処理と並列に実行される予め定めた並列処理は、切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で実行することができるものであれば、フラッシング処理以外の処理を任意に選択することができる。
【0062】
すなわち、例えば、切断処理に伴って用紙12の搬送が停止される間に、用紙12に対して電子透かしを埋め込む埋め込み処理をしてもよい。なお、電子透かしとして情報を埋め込む方法としては、キャリッジ27を走査しつつ記録ヘッド29から無色のインクを用紙に付着させることにより、隣り合うドット同士を合体させてドット径を変更し、ドット径を変化させた位置やドット径の大きさによって情報を埋め込むようにしてもよい。また、紫外線を照射すると発光する蛍光インクや磁気インクを付着させて情報を埋め込むようにしてもよい。そして、埋め込まれる情報としては、日付、印刷者、著作者、複製禁止情報など任意に選択することができる。
【0063】
そして、このような埋め込み処理は、記録ヘッド29の1回の走査によって完了するため、切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で実行することができる。
・上記実施形態において、転換ローラー15を設けずに用紙12を第1〜第3の搬送ローラー16〜18で挟持して搬送するようにしてもよい。さらに、用紙12を搬送可能であれば、第1〜第3の搬送ローラー16〜18は、少なくとも1つ設けていればよい。また、用紙12をベルト上に載置した状態で搬送するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、ターゲットとしては、プラスチックフィルム、シール、金属箔、ガラス板、板材、布など、液体を受容可能な任意の素材及び形状のものを採用することができる。
【0065】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
11…プリンター(液体噴射装置)、12…用紙(ターゲット)、15…転換ローラー(搬送手段)、16〜18…第1〜第3の搬送ローラー(搬送手段)、19…カッター、21…巻き軸(搬送手段)、22…搬送モーター(搬送手段)、26…キャリッジモーター(第1の移動手段)、29…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、33…切断モーター(第2の移動手段)、34…制御部(制御手段、記憶手段)、P1…非印刷位置(印刷位置)、P2…印刷位置(記録位置)、P3…切断位置、P4…非切断位置、CT…カッティング間隔(第2の間隔)、TT…閾値間隔(第1の間隔),T1…第1の時間、T2…第2の時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のターゲットに対して液体を噴射して記録処理を施す液体噴射ヘッドと、
前記ターゲットを搬送方向の上流側から下流側へ搬送する搬送手段と、
前記液体噴射ヘッドよりも前記搬送方向の下流側に設けられて前記ターゲットを前記搬送方向と交差する幅方向に沿って切断する切断手段と、
前記液体噴射ヘッドを制御する制御手段と
を備え、
前記切断手段は、前記搬送手段による前記ターゲットの搬送が停止された状態で該ターゲットを切断し、
前記制御手段は、前記切断手段による前記ターゲットの切断に合わせて前記液体噴射ヘッドを制御して前記切断手段が前記ターゲットを切断する切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で前記切断処理と並列に予め定めた並列処理を実行することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記並列処理は、該液体噴射ヘッドに形成されたノズルから記録処理とは無関係に液体を噴射させるフラッシングであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
フラッシングを定期的に行うための第1の間隔を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記切断手段が前記ターゲットの切断処理を前回行ってから今回行うまでの第2の間隔が前記第1の間隔よりも短い場合には、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドを制御して前記切断手段による今回の切断処理と並列にフラッシングを実行し、
前記第2の間隔が前記第1の間隔よりも長い場合には、前記第1の間隔でフラッシングを実行することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記液体噴射ヘッドを前記ターゲットと対向して記録可能な記録位置と該記録位置とは異なる非記録位置との間で移動させる第1の移動手段をさらに備え、
前記切断手段は、前記ターゲットを切断するカッターと、該カッターを前記ターゲットの切断が可能な切断位置と該切断位置とは異なる非切断位置との間で移動させる第2の移動手段とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体噴射ヘッドから噴射した液体を長尺状のターゲットに付着させて記録処理を施す記録段階と、
前記ターゲットを搬送方向の上流側から下流側へ搬送する搬送段階と、
前記記録段階において記録が施されると共に、前記搬送段階において搬送された前記ターゲットの搬送を停止した状態で該ターゲットを前記搬送方向と交差する幅方向に切断する切断段階と
を備え、
該切断段階において、前記ターゲットを切断する切断処理に要する第1の時間よりも短い第2の時間で前記液体噴射ヘッドによる予め定められた並列処理を実行することを特徴とする液体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−30529(P2012−30529A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173012(P2010−173012)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】