説明

液体噴射装置のクリーニング方法、及び液体噴射装置

【課題】性能の低下を抑制できる液体噴射装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】第1液体を噴射可能な第1ノズル及び第2液体を噴射可能な第2ノズルを有する噴射ヘッドを備える液体噴射装置のクリーニング方法である。クリーニング方法は、第1キャップ部を用いて第1ノズルから第1吸引力で第1液体を吸引する第1吸引工程と、第2キャップ部を用いて第2ノズルから第1吸引力よりも小さい第2吸引力で第2液体を吸引する第2吸引工程と、第2ノズルが形成された第2ノズル形成領域を含む第2噴射面をワイピング部材で拭くワイピング工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置のクリーニング方法、及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、記録ヘッド(噴射ヘッド)のノズル(噴射口)より記録媒体にインク(液体)を噴射するインクジェット式のプリンタ(液体噴射装置)が知られている。プリンタにおいては、例えばインクの増粘によりインクの噴射速度や噴射量が低下してしまい、噴射不良が生じる場合がある。そのため、インクの噴射特性を維持するために、従来から、記録ヘッドのクリーニング処理が行われている。下記特許文献1には、クリーニング処理として、吸引動作によってノズルからインクを強制的に排出した後、ノズル形成面(噴射面)に付着したインクをワイピング部材によって払拭するワイピング動作を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−052381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイピング動作は、吸引動作の後、ノズルにおけるインクのメニスカスを整える目的で行われる。例えば、吸引動作が実行されないノズルに対してワイピング動作が実行されると、いわゆる乾拭き状態となってしまう可能性がある。その場合、増粘したインクがノズルに擦り込まれたり、摩擦により自励振動が発生したりして、ノズルにおけるインクのメニスカスが良好に維持されなくなる可能性がある。その結果、例えばドット抜けを誘発したり、噴射不良が生じたりする等、プリンタの性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、性能の低下を抑制できる液体噴射装置のクリーニング方法、及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、第1液体を噴射可能な第1ノズル及び第2液体を噴射可能な第2ノズルを有する噴射ヘッドを備える液体噴射装置のクリーニング方法であって、第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから第1吸引力で前記第1液体を吸引する第1吸引工程と、第2キャップ部を用いて前記第2ノズルから前記第1吸引力よりも小さい第2吸引力で前記第2液体を吸引する第2吸引工程と、前記第2ノズルが形成された第2ノズル形成領域を含む第2噴射面をワイピング部材で拭くワイピング工程と、を含む液体噴射装置のクリーニング方法が提供される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、第1キャップ部を用いて第1ノズルを第1吸引力で吸引することによって、例えば第1ノズルを良好にクリーニングできる。例えば、第1液体の噴射動作が実行された第1ノズルを、第1キャップ部を用いて第1吸引力で吸引することによって、第1ノズルが良好にクリーニングされる。また、例えば第2液体の噴射動作が実行されていない第2ノズルについては、吸引動作を実行しないことによって、第2液体が無駄に消費されてしまうことが抑制される。その後、第2キャップ部を用いて第2ノズルを第2吸引力で吸引することによって、第2液体の消費を抑制しつつ、第2噴射面を第2液体で濡らすことができる。その後、第2噴射面をワイピング部材で拭くことによって、例えば摩擦による自励振動等の不具合の発生を抑制しつつ、第2ノズルを良好にクリーニングできる。このように、本発明の第1の態様によれば、第2液体の消費を抑制しつつ、第1、第2ノズルを良好にクリーニングできるため、噴射不良を抑制し、液体噴射装置の性能の低下を抑制できる。
【0008】
前記第2吸引工程は、前記第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから前記第2吸引力で前記第1液体を吸引することを含み、前記第ワイピング工程は、前記第1噴射面を前記ワイピング部材で拭くことを含む構成でもよい。これにより、第1液体の消費を抑制しつつ、第1噴射面を第1液体で濡らした後、ワイピング部材で拭くことができる。したがって、第1ノズルをさらに良好にクリーニングできる。
【0009】
前記第1吸引工程の後、前記第2吸引工程の前に、前記第1ノズルが形成された第1ノズル形成領域を含む第1噴射面をワイピング部材で拭くことを含む構成でもよい。これにより、第1吸引工程において第1液体で濡れた第1噴射面をワイピング部材で拭くことができる。したがって、第1ノズルがさらに良好にクリーニングされる。
【0010】
前記ワイピング工程は、前記ワイピング部材で前記第2噴射面を拭く前に、前記ワイピング部材と前記第2噴射面とを接触させた状態で、前記ワイピング部材に前記第2ノズルから前記第2液体を噴射することを含む構成でもよい。これにより、ワイピング部材を第2液体で濡らした後、そのワイピング部材によるワイピング動作を実行することができる。したがって、例えば自励振動の発生等をより確実に抑制することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に従えば、第1液体を噴射可能な第1ノズル及び第2液体を噴射可能な第2ノズルを有する噴射ヘッドと、前記第1ノズルから前記第1液体を吸引可能な第1キャップ部と、前記第2ノズルから前記第2液体を吸引可能な第2キャップ部と、前記第1ノズルが形成された第1ノズル形成領域を含む第1噴射面及び前記第2ノズルが形成された第2ノズル形成領域を含む第2噴射面を拭くことができるワイピング部材と、前記第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから第1吸引力で前記第1液体を吸引した後、前記第2キャップ部を用いて前記第2ノズルから前記第1吸引力よりも小さい第2吸引力で前記第2液体を吸引し、次いで、前記第2噴射面を前記ワイピング部材で拭くように制御する制御装置と、を備える液体噴射装置が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、第1キャップ部を用いて第1ノズルを第1吸引力で吸引することによって、例えば第1ノズルを良好にクリーニングできる。例えば、第1液体の噴射動作が実行された第1ノズルを、第1キャップ部を用いて第1吸引力で吸引することによって、第1ノズルが良好にクリーニングされる。また、例えば第2液体の噴射動作が実行されていない第2ノズルについては、吸引動作を実行しないことによって、第2液体が無駄に消費されてしまうことが抑制される。その後、第2キャップ部を用いて第2ノズルを第2吸引力で吸引することによって、第2液体の消費を抑制しつつ、第2噴射面を第2液体で濡らすことができる。その後、第2噴射面をワイピング部材で拭くことによって、例えば摩擦による自励振動等の不具合の発生を抑制しつつ、第2ノズルを良好にクリーニングできる。このように、本発明の第1の態様によれば、第2液体の消費を抑制しつつ、第1、第2ノズルを良好にクリーニングできるため、噴射不良を抑制し、液体噴射装置の性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の一例を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る噴射ヘッドの一例を示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係るクリーニング方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係るクリーニング方法の一例を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るクリーニング方法の一例を説明するための図である。
【図6】第2実施形態に係るクリーニング方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の液体噴射装置に係る形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタと称す)を例示する。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタ1の構成を概略的に示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、プリンタ1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド(噴射ヘッド)2を搭載すると共に液体貯留部材の一種であるインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8と、プリンタ1の動作を制御する制御装置58とを備える。上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向;同図中X方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向;同図中Y方向)である。
【0018】
本実施形態においては、インクカートリッジ3から、例えば、ブラックのインクが、記録ヘッド2供給される。また、インクカートリッジ3から、例えばマゼンタ、イエロー、及びシアン等のカラーインクが、記録ヘッド2に供給される。
【0019】
なお、インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンタ1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。
【0020】
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御部(図示せず)に送信されるようになっている。制御装置58は、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(噴射動作、吐出動作)等を制御する。
【0021】
記録ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャッピング装置11が設けられている。キャッピング装置11は、キャップ部材100によって記録ヘッド2のノズル形成面23を封止し、インク溶媒の蒸発を防止する。このキャッピング装置11は、封止状態のノズル形成面23に負圧を与えてインクを強制的に吸引排出するクリーニング動作等にも用いられる。
【0022】
また、ホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面23を払拭するワイピング装置12が設けられている。このワイピング装置12は、上述のクリーニング動作によって記録ヘッド2のノズル形成面23に付着したインクをワイピング部材200によって払拭する、所謂ワイピング動作を行うためのものである。
【0023】
ワイピング部材200は、長さ、材質、及び厚さの少なくともいずれかがノズル形成面23に応じて設定されている。これにより、ワイピング部材200は、後述するように記録ヘッド2の払拭面(ノズル形成面23)に対し、高い追従性(腰の柔らかい)を有したものとなっている。
【0024】
具体的に本実施形態では、ワイピング部材200は、弾性材料から構成されている。そして、ワイピング部材200は、ゴム硬度が40〜55°程度、払拭時の干渉量が1〜1.5mm程度となっている。
【0025】
このように、ワイピング部材200の追従性を向上させることで、インクの尾引き及びメニスカスの破壊を防止した状態で良好にワイピング動作を行うことができ、且つワイパ荷重が低減することで、ワイピング部材200自体の耐久性を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係るワイピング部材200は、親水性材料から構成されている。具体的なワイピング部材200の材質としては、ウレタン系、ナイロン系、EVOH系、EVA系の材料を用いるのが好ましい。また、ワイピング部材200は、少なくとも表面がインクに対して親水性とされるものであればよい。例えば、ワイピング部材200を、親水性処理を施した親水性シリコンや親水性ポリオレフィンから構成するようにしてもよい。これにより、ワイピング部材200がインク中の水分を引き寄せるため、インクの尾引きや拭き残しを低減することが可能とされる。
【0027】
図2は、記録ヘッド2の断面図である。図2に示すように、記録ヘッド2は、ヘッド本体48と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット42とを備えている。ノズル24は、ノズル基板21に形成されている。
【0028】
流路形成ユニット42は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合して一体にしたものである。また、本実施形態に係る記録ヘッド2は、プリンタ1が対象とする最大サイズの印刷紙の幅員(最大記録紙幅)以上の長さに亘ってノズル24が多数配列された、所謂ラインヘッドとして使用しても良い。
【0029】
記録ヘッド2は、ヘッド本体48の内部に形成された収容空間63と、収容空間63に配置された駆動ユニット44とを備えている。駆動ユニット44は、複数の圧電素子65と、圧電素子65の上端を支持する固定部材と、駆動信号を圧電素子65に供給する柔軟なケーブルとを備えている。圧電素子65は、複数のノズル24のそれぞれに対応するように設けられている。
【0030】
また、記録ヘッド2は、ヘッド本体48の内部に形成され、インクカートリッジからインク供給チューブを介して供給されたインクが流れる内部流路68と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット42によって形成され、内部流路68と接続された共通インク室29と、流路形成ユニット42によって形成され、共通インク室29と接続されたインク供給口40と、流路形成ユニット42によって形成され、インク供給口40と接続された圧力室とを備えている。圧力室は、複数のノズル24に対応するように複数設けられている。複数のノズル24のそれぞれは、複数の圧力室のそれぞれに接続されている。
【0031】
ヘッド本体48は、合成樹脂で形成されている。振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものである。振動板19の圧力室に対応する部分には、圧電素子65の下端と接合される島部が形成されている。振動板19の少なくとも一部は、圧電素子65の駆動に応じて弾性変形する。振動板19と内部流路68の下端近傍との間にはコンプライアンス部43が形成されている。
【0032】
流路基板20は、内部流路68の下端とノズル24とを接続する共通インク室29、インク供給口40、及び圧力室それぞれの空間を形成するための凹部を有する。本実施形態においては、流路基板20は、シリコンを異方性エッチングすることで形成されている。
【0033】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル24を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の下面は、後述するように複数のノズル24によって形成されるノズル形成面(噴射面)23を構成している。
【0034】
このように構成されたプリンタ1は、インクを貯留するインク貯留部(液体貯留部)として、不図示のインクカートリッジを有し、このインクカートリッジからインク供給チューブを介して供給されたインクが図2に示した内部流路68の上端に流入するように構成されている。内部流路68の下端は、共通インク室29に接続されており、インクカートリッジからインク供給チューブ(不図示)を介して内部流路68の上端に流入したインクは、内部流路68を流れた後、共通インク室29に供給される。共通インク室29に供給されたインクは、インク供給口40を介して、複数の圧力室のそれぞれに分配されるように供給される。
【0035】
ケーブルを介して圧電素子65に駆動信号が入力されると、圧電素子65が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。これにより、圧力室の容積が変化し、インクを収容した圧力室の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル24から、インクが噴射(吐出)される。
【0036】
このように、本実施形態の圧電素子65は、ノズル24よりインクを噴射するために、入力される駆動信号に基づいて、ノズル24に接続された圧力室の圧力を変動させる。
【0037】
本実施形態において、複数のノズル24は、第1のインクを噴射可能な第1ノズル24Aと、第2のインクを噴射可能な第2ノズル24Bとを含む。記録ヘッド2は、第1ノズル24Aを複数有する。記録ヘッド2は、第2ノズル24Bを複数有する。すなわち、記録ヘッド2は、第1のインクを噴射する複数の第1ノズル24Aを含む第1ノズル群241と、第2のインクを噴射する複数の第2ノズル24Bを含む第2ノズル群242とを有する。
【0038】
ノズル形成面23は、第1ノズル24A(第1ノズル群241)が形成された領域を含む第1ノズル形成面23Aと、第2ノズル24B(第2ノズル群242)が形成された領域を含む第2ノズル形成面23Bとを含む。
【0039】
第1のインクは、例えばブラックのインクである。第2のインクは、例えばマゼンタ、イエロー、及びシアン等のカラーインクである。すなわち、第1ノズル24A(第1ノズル群241)は、ブラックインク用のノズル24である。第2ノズル24B(第2ノズル群242)は、カラーインク用のノズル24である。以下の説明において、ブラックインクを適宜、Bkインク、と称し、カラーインクを適宜、Colインク、と称する。
【0040】
なお、第1のインクがカラーインクで、第2のインクがブラックインクでもよい。
【0041】
本実施形態において、キャップ部材100は、第1ノズル群241に対する吸引動作を実行する第1キャップ部101と、第2ノズル群242に対する吸引動作を実行する第2キャップ部102とを有する。
【0042】
次に、本実施形態に係るプリンタ1のクリーニング方法の一例について、図3のフローチャート、及び図4、図5を参照して説明する。
【0043】
以下の説明においては、第1ノズル群241が使用され、第2ノズル群242が使用されていない記録ヘッド2をクリーニングする場合について説明する。ここで、使用とは、ノズル24からインクを噴射(吐出)することをいう。換言すれば、使用とは、ノズル24からインクを噴射して記録紙6に記録(印刷)することをいう。
【0044】
本実施形態のクリーニング方法は、第1キャップ部101を用いて第1ノズル24A(第1ノズル群241)から第1吸引力でBkインクを吸引する第1吸引工程と、第1ノズル形成面23Aをワイピング部材200で拭く第1ワイピング工程と、第1ワイピング工程の後、第2キャップ部102を用いて第2ノズル24B(第2ノズル群242)から第1吸引力よりも小さい第2吸引力でColインクを吸引する第2吸引工程と、第2吸引工程の後、第2ノズル形成面23Bをワイピング部材200で拭く第2ワイピング工程と、を含む。
【0045】
以下の説明において、第1吸引力で吸引する動作を適宜、本吸引動作、と称し、第2吸引力で吸引する動作を適宜、微量吸引動作、と称する。なお、第1吸引力とは、例えば単位時間当たり第1流量で流体(液体及び気体の一方又は両方を含む)を吸引することを含む。第2吸引力とは、例えば単位時間当たり第1流量よりも少ない第2流量で流体を吸引することを含む。
【0046】
図4を参照して、第1吸引工程及び第1ワイピング工程について説明する。図4(A)に示すように、キャップ部材100と記録ヘッド2とが接近する。第1、第2キャップ部101、102はそれぞれ、流路R1、R2を介してポンプ等を含む真空装置に接続されている。制御装置58は、第1キャップ部101に通じる流路R1を介して、第1キャップ部101と第1ノズル形成面23Aとで形成される空間S1の流体を吸引する。制御装置58は、第1吸引力で空間S1の流体を吸引(本吸引)する。これにより、第1ノズル群241の第1ノズル24Aから第1吸引力でBkインクが吸引(本吸引)される。
【0047】
使用された後の第1ノズル24A(第1ノズル群241)に対して本吸引動作が実行されることにより、第1ノズル24A(第1ノズル群241)は良好にクリーニングされる。
【0048】
一方、制御装置58は、第1ノズル24Aに対する本吸引動作が実行されているとき、第2キャップ部102を用いる吸引動作を実行しない。換言すれば、第1ノズル24Aに対する本吸引動作が実行されているとき、第2キャップ部102と第2ノズル形成面23Bとで形成される空間S2の流体の吸引動作は実行されない。
【0049】
第2ノズル24B(第2ノズル群242)に対する本吸引動作が実行されないことにより、Colインクの消費量が抑制される。
【0050】
次に、図4(B)に示すように,ワイピング部材200と記録ヘッド2とが接近する。制御装置58は、ワイピング部材200と第1ノズル形成面23Aとが接触した状態で、ワイピング部材200と記録ヘッド2とを相対移動する。本実施形態においては、例えば図4(C)に示すように、ワイピング部材200に対して記録ヘッド2が移動する。制御装置58は、ワイピング部材200で第1ノズル形成面23Aを拭き、第2ノズル形成面23Bを拭かない。すなわち、第1ワイピング工程では、第1ノズル形成面23Aに対するワイピング動作が実行され、第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作は実行されない。
【0051】
第1ノズル24A(第1ノズル群241)について本吸引動作が実行された第1ノズル形成面23Aは、Bkインクによって濡れている。したがって、例えば自励振動等の不都合の発生を抑制しつつ、第1ノズル形成面23Aを良好にクリーニング(ワイピング)できる。
【0052】
第2ノズル24B(第2ノズル群242)について吸引動作が実行されていない第2ノズル形成面23Bは濡れていないので、第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作を実行しないことによって、例えば乾拭き状態でのワイピング動作に伴う不都合は生じない。
【0053】
次に、図5を参照して、第2吸引工程及び第2ワイピング工程について説明する。図5(A)に示すように、キャップ部材100と記録ヘッド2とが接近する。制御装置58は、第1キャップ部101に通じる流路R1を介して、第1キャップ部101と第1ノズル形成面23Aとで形成される空間S1の流体を第2吸引力で吸引(微量吸引)する。また、制御装置58は、第2キャップ部102に通じる流路R2を介して、第2キャップ部102と第2ノズル形成面23Bとで形成される空間S2の流体を第2吸引力で吸引(微量吸引)する。これにより、第1ノズル群241の第1ノズル24Aから第2吸引力でBkインクが吸引(微量吸引)されるとともに、第2ノズル群242の第2ノズル24Bから第2吸引力でColインクが吸引(微量吸引)される。
【0054】
本実施形態においては、微量吸引動作によって、第1ノズル形成面23Aは、Bkインクで濡れ、第2ノズル形成面23Bは、Colインクで濡れる。本実施形態において、第2吸引工程では、微量吸引動作でBkインク及びColインクを吸引しているため、キャッピング装置11によって吸引されるインクの量(消費量)を抑制しつつ、第1、第2ノズル形成面23A、23Bのそれぞれを濡らすことができる。
【0055】
次に、図5(B)に示すように,ワイピング部材200と記録ヘッド2とが接近する。制御装置58は、ワイピング部材200と第1ノズル形成面23Aとが接触した状態で、ワイピング部材200と記録ヘッド2とを相対移動する。本実施形態においては、例えば図5(C)に示すように、ワイピング部材200に対して記録ヘッド2が移動する。制御装置58は、ワイピング部材200で第1ノズル形成面23Aを拭く。また、制御装置58は、例えば図5(D)に示すように、ワイピング部材200で第2ノズル形成面23Bも拭く。本実施形態において、制御装置58は、ワイピング部材200を用いる第1ノズル形成面23Aに対するワイピング動作を実行した後、連続して、第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作を実行する。すなわち、制御装置58は、ノズル形成面23(第1ノズル形成面23A)の−X側の端とワイピング部材200とを接触させた状態で、記録ヘッド2を−X方向に移動する。制御装置58は、ワイピング部材200がノズル形成面23(第1ノズル形成面23A)の−X側の端と接触する状態から、ノズル形成面23(第2ノズル形成面23B)の+X側の端と接触する状態に変化するまで、記録ヘッド2を−X方向に移動する。これにより、第1ノズル形成面23A及び第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作が連続的に実行される。
【0056】
本実施形態においては、第1ノズル形成面23AがBkインクで濡れ、第2ノズル形成面23BがColインクで濡れている状態でワイピング動作が実行される。したがって、例えば自励振動等の不都合の発生を抑制しつつ、第1、第2ノズル形成面23A、23Bを良好にクリーニング(ワイピング)できる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1吸引工程において、第1キャップ部101を用いて第1ノズル24A(第1ノズル群241)を第1吸引力で吸引することによって、使用された後の第1ノズル24A(第1ノズル群241)を良好にクリーニング(吸引)することができる。また、第1吸引工程においては、使用されていない第2ノズル24B(第2ノズル群242)に対する吸引動作が実行されないので、Colインクが無駄に消費(吸引)されてしまうことが抑制される。そして、第2吸引工程において、第2ノズル24B(第2ノズル群242)から第2吸引力でColインクを吸引することによって、Colインクの消費を抑制しつつ、第2ノズル形成面23BをColインクで濡らすことができる。したがって、その第2ノズル形成面23Bをワイピング部材200で拭くワイピング動作において、例えば摩擦による自励振動等の不具合の発生を抑制しつつ、第2ノズル24B及び第2ノズル形成面23Bを良好にクリーニングできる。
【0058】
以上により、本実施形態によれば、インクの消費を抑制しつつ、第1、第2ノズル24A、24B(第1、第2ノズル形成面23A、23B)を良好にクリーニングできる。したがって、インクの噴射不良を抑制し、プリンタ1の性能の低下を抑制できる。
【0059】
なお、本実施形態においては、第2吸引工程において、第1キャップ部101を用いて第1ノズル24A(第1ノズル群241)から第2吸引力でBkインクを吸引することとしたが、吸引しなくてもよい。例えば、第2吸引工程において、空間S2の流体を第2吸引力で吸引し、空間S1に対する吸引動作は実行されなくてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、第2ワイピング工程において、第1ノズル形成面23Aをワイピング部材200で拭くこととしたが、拭かなくてもよい。例えば、第2ワイピング工程においては、第2ノズル形成面23Bのみをワイピング部材200で拭き、第1ノズル形成面23Aはワイピング部材200で拭かなくてもよい。
【0061】
なお、本実施形態において、第1ワイピング工程が省略されてもよい。
【0062】
なお、本実施形態においては、第1吸引工程において、第1ノズル24A(第1ノズル群241)を吸引することとしたが、もちろん、第2ノズル24B(第2ノズル群242)を第1吸引力で吸引してもよい。例えば第2ノズル24B(第2ノズル群242)が使用され、第1ノズル24A(第1ノズル群241)が使用されていない場合、第1吸引工程において、第2ノズル24B(第2ノズル群242)に対する本吸引動作を実行することにより、第2ノズル24B(第2ノズル群242)が良好にクリーニングされる。そして、第2吸引工程において、第1ノズル24A(第1ノズル群241)に対する微量吸引動作を実行し、その後、ワイピング部材200で第1ノズル形成面23Aを拭くことによって、第1ノズル24A(第1ノズル形成面23A)を良好にクリーニングすることができる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0064】
図6は、第2実施形態に係るクリーニング方法の一例を示す図である。本実施形態においては、第2ノズル24B(第2ノズル群242)が使用され、第1ノズル24A(第1ノズル群241)が使用されていない記録ヘッド2をクリーニングする場合について説明する。
【0065】
図6(A)に示すように、第2ノズル24B(第2ノズル群242)に対する本吸引動作が実行される。第1ノズル24A(第1ノズル群241)に対する吸引動作は実行されない。
【0066】
吸引動作が実行された後、図6(B)に示すように、制御装置58は、ワイピング部材200と記録ヘッド2とを接近させる。次に、図6(C)に示すように、制御装置58は、ワイピング部材200と第1ノズル形成面23Aとを接触させた状態で、そのワイピング部材200に第1ノズル24AからBkインクを噴射する。これにより、ワイピング部材200は、Bkインクで濡れる。
【0067】
その後、制御装置58は、ワイピング部材200と記録ヘッド2とを相対移動して、第1ノズル形成面23Aに対するワイピング動作を実行する。本実施形態においては、Bkインクでワイピング部材200を濡らした後、第1ノズル形成面23Aに対するワイピング動作を実行するので、例えば自励振動等の不都合の発生を抑制しつつ、第1ノズル形成面23Aを良好にクリーニング(ワイピング)できる。
【0068】
本実施形態において、制御装置58は、ワイピング部材200がノズル形成面23(第1ノズル形成面23A)の−X側の端と接触する状態から、ノズル形成面23(第2ノズル形成面23B)の+X側の端と接触する状態に変化するまで、記録ヘッド2を−X方向に移動する。これにより、第1ノズル形成面23A及び第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作が連続的に実行される。
【0069】
なお、第1実施形態で説明したクリーニング方法と、第2実施形態で説明したクリーニング方法とを組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態に係るクリーニングシーケンスの後、上述の第1実施形態で説明した第2吸引工程及び第2ワイピング工程が実行されてもよい。
【0070】
なお、上述の第1実施形態において、例えば第2ノズル24B(第2ノズル群242)に対する微量吸引動作を実行した後、第2ワイピング工程を実行する場合において、ワイピング部材200で第2ノズル形成面23Bを拭く前に、ワイピング部材200と第2ノズル形成面23Bとを接触させた状態で、ワイピング部材200に第2ノズル24BからColインクを噴射してもよい。これにより、ワイピング部材200がColインクで濡れる。Colインクで濡れたワイピング部材200で第2ノズル形成面23Bに対するワイピング動作を実行することによって、例えばワイピング動作において、自励振動等の不具合の発生をより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0071】
1…プリンタ、2…記録ヘッド、 24…ノズル、24A…第1ノズル、24B…第2ノズル、58…制御装置、100…キャップ部材、101…第1キャップ部、102…第2キャップ部、200…ワイピング部材、241…第1ノズル群、242…第2ノズル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を噴射可能な第1ノズル及び第2液体を噴射可能な第2ノズルを有する噴射ヘッドを備える液体噴射装置のクリーニング方法であって、
第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから第1吸引力で前記第1液体を吸引する第1吸引工程と、
第2キャップ部を用いて前記第2ノズルから前記第1吸引力よりも小さい第2吸引力で前記第2液体を吸引する第2吸引工程と、
前記第2ノズルが形成された第2ノズル形成領域を含む第2噴射面をワイピング部材で拭くワイピング工程と、を含む液体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記第2吸引工程は、前記第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから前記第2吸引力で前記第1液体を吸引することを含み、
前記第ワイピング工程は、前記第1噴射面を前記ワイピング部材で拭くことを含む請求項1に記載の液体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記第1吸引工程の後、前記第2吸引工程の前に、前記第1ノズルが形成された第1ノズル形成領域を含む第1噴射面をワイピング部材で拭くことを含む請求項1又は2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記ワイピング工程は、前記ワイピング部材で前記第2噴射面を拭く前に、前記ワイピング部材と前記第2噴射面とを接触させた状態で、前記ワイピング部材に前記第2ノズルから前記第2液体を噴射することを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項5】
第1液体を噴射可能な第1ノズル及び第2液体を噴射可能な第2ノズルを有する噴射ヘッドと、
前記第1ノズルから前記第1液体を吸引可能な第1キャップ部と、
前記第2ノズルから前記第2液体を吸引可能な第2キャップ部と、
前記第1ノズルが形成された第1ノズル形成領域を含む第1噴射面及び前記第2ノズルが形成された第2ノズル形成領域を含む第2噴射面を拭くことができるワイピング部材と、
前記第1キャップ部を用いて前記第1ノズルから第1吸引力で前記第1液体を吸引した後、前記第2キャップ部を用いて前記第2ノズルから前記第1吸引力よりも小さい第2吸引力で前記第2液体を吸引し、次いで、前記第2噴射面を前記ワイピング部材で拭くように制御する制御装置と、を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223893(P2012−223893A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90752(P2011−90752)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】