説明

液体噴射装置及びそのメンテナンス方法

【課題】液体噴射開始時における液体の噴射不良を確実に抑制することが可能な液体噴射装置及びそのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタは、ノズル形成面に形成されたノズルから保湿剤及び水分を含有するインクを噴射する記録ヘッドと、該記録ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップとを備える。さらに、インクジェット式プリンタは、ノズルからキャップ内に排出されたインクの量を検出し、該検出したインクの量に基づいてキャップ内におけるインク中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量である有効水分量を算出し、該算出した有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりもノズルから排出するインクの量が少なくなるように、ノズルからインクをキャップ内に強制的に排出させるメンテナンス制御を行う制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタ等の液体噴射装置及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」と言う)は、キャリッジに搭載された記録ヘッド(液体噴射ヘッド)のノズル形成面に形成されたノズルから記録媒体にインク(液体)を噴射することで印刷を行っている。この場合、ノズルの開口から該ノズル内のインクの水分が蒸発しやすくなっているため、該ノズル内のインクの粘度が上昇してノズルが目詰まりしやすい。このため、このようなプリンタでは、定期的にノズル内のインクを強制的に排出するメンテナンス(クリーニング、フラッシング等)を行うことで、ノズルの目詰まりを解消するようにしている。
【0003】
また、プリンタの休止時には、キャップにより記録ヘッドのノズル形成面を封止することで、ノズルの開口からのインクの水分蒸発を抑制するようにしている。しかしながら、インク中には、該インクのノズルからの吐出安定性等を向上するために、保湿剤が添加されているため、クリーニングを行うと該保湿剤がキャップ内に残ってしまう。このため、キャップ内に残った保湿剤が、キャップ内の水分を吸収するだけでなく、ノズル内のインクから水分を奪い取ることとなり、この結果、キャップによってノズル形成面を封止しているにもかかわらず、ノズル内のインクが増粘してインクの吐出不良を引き起こすという問題があった。
【0004】
このため、従来は、プリンタの休止状態に移行する前に、キャップ内に最も保湿成分(保湿剤)の少ない組成のインクを吐出してキャップ内の保湿成分の割合を少なくすることで、ノズル内のインクからキャップ内の保湿成分によって水分が奪われるのを抑制するようにしたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−26112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンタでは、プリンタの休止状態に移行する前に、キャップ内に最も保湿成分の少ない組成のインクを吐出するようにしているものの、該キャップ内に存在するインクの状態(水分や保湿成分の割合等)が管理されておらず、クリーニングも単に印刷履歴に応じて行っているだけである。すなわち、特許文献1のプリンタでは、キャップ内に存在する保湿成分がノズル内のインクに対して与える影響を考慮してクリーニングが行われていないため、印刷開始時のインクの噴射不良を確実に抑制することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体噴射開始時における液体の噴射不良を確実に抑制することが可能な液体噴射装置及びそのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズルから保湿剤及び水分を含有する液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップとを備えた液体噴射装置において、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量を検出する液体量検出手段と、該液体量検出手段による検出結果に基づいて、前記キャップ内における前記液体中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量である有効水分量を算出する有効水分量算出手段と、該有効水分量算出手段による算出結果に基づいて、前記有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりも前記ノズルから排出する液体の量が少なくなるように、前記ノズルから液体を前記キャップ内に強制的に排出させるメンテナンス制御を行う制御手段とを備えた。
【0008】
液体噴射ヘッドのノズル形成面がキャップにより封止された状態、すなわち液体噴射休止中では、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が少ないほどノズルが目詰まりしやすいので、液体噴射開始時において液体の噴射不良が発生しやすい。したがって、ノズルから液体をキャップ内に強制的に排出させるメンテナンス時には、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が少ないほどノズルからキャップ内に排出させる液体の量を多くする必要がある。この点、この発明によれば、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりもノズルから排出する液体の量が少なくなるように、ノズルから液体をキャップ内に強制的に排出させるメンテナンス制御を行うことで、液体噴射開始時における液体の噴射不良を確実に抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の液体噴射装置は、前記キャップによる1回毎の前記ノズル形成面の非封止継続時間を計測する非封止継続時間計時手段と、前記キャップによる1回毎の前記ノズル形成面の封止継続時間を計時する封止継続時間計時手段と、前記キャップによる前記ノズル形成面の非封止累積時間を計時する非封止累積時間計時手段とを備え、前記有効水分量算出手段は、前記非封止継続時間計時手段による計時結果と、前記封止継続時間計時手段による計時結果と、前記非封止累積時間計時手段による計時結果とに基づいて前記有効水分量を算出する。
【0010】
この発明によれば、キャップによるノズル形成面の封止継続時間、非封止継続時間、及び非封止累積時間に基づいて有効水分量を算出することにより、有効水分量の算出精度を向上することが可能となる。
【0011】
本発明の液体噴射装置は、前記制御手段が、前記有効水分量算出手段による算出結果に基づく前記有効水分量が予め設定した初期状態における前記キャップ内の初期有効水分量よりも少ない場合には、液体噴射終了後に、前記有効水分量と前記初期有効水分量との差分の有効水分量を含有する液体量の前記液体が前記ノズルから前記キャップ内に吐出されるように、前記メンテナンス制御を行う。
【0012】
この発明によれば、例えばキャップ内が高い湿潤状態になるようにクリーニング直後のキャップ内の有効水分量を初期状態における初期有効水分量に設定すると、キャップ内の有効水分量が初期有効水分量よりも少なくなった場合には、その差分を補うようにメンテナンス制御が行われ、キャップ内に液体が補充されてキャップ内の有効水分量が初期有効水分量に戻される。このため、キャップ内が高い湿潤状態に維持することが可能となり、ノズルの目詰まりを好適に抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の液体噴射装置は、前記キャップ内を吸引可能な吸引手段をさらに備え、前記制御手段は、前記キャップ内に排出された保湿剤量が予め設定した所定量を超えた場合に、該キャップ内から保湿剤が排出されるように前記吸引手段を吸引動作させることにより前記メンテナンス制御を行う。
【0014】
この発明によれば、キャップ内の保湿剤量が予め設定した所定量以下に抑えられるため、キャップ内の保湿剤がノズル内の液体から奪う水分量が低減される。このため、ノズルの目詰まりを好適に抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の液体噴射装置は、前記制御手段が、液体噴射開始前に、前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる液体の量である排出液体量を前記有効水分量に基づいて算出し、該算出した排出液体量の液体が前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出されるように前記メンテナンス制御を行う。
【0016】
液体噴射ヘッドのノズル形成面がキャップにより封止された状態、すなわち液体噴射休止中では、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が少ないほどノズルが目詰まりしやすいので、液体噴射開始時において液体の噴射不良が発生しやすい。したがって、ノズルから液体をキャップ内に強制的に排出させるメンテナンス時には、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が少ないほどノズルからキャップ内に排出させる排出液体量を多くする必要がある。しかしながら、この場合、排出液体量を必要以上に多くすると、無駄に液体を消費してしまうこととなる。この点、この発明によれば、キャップ内に存在する液体中の有効水分量に基づいて排出液体量が決定されるので、液体噴射開始前にノズルからキャップ内に強制的に排出する際における液体の無駄を削減することが可能となる。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、前記制御手段が、前回の液体噴射終了時からの経過時間を計時し、該計時結果に基づいて、前回の液体噴射終了時からの前記キャップ内から該キャップ外への累積水分透過量を算出し、該算出した累積水分透過量に基づいて前記有効水分量を算出する。
【0018】
この発明によれば、前回の液体噴射終了時からのキャップ内からキャップ外への累積水分透過量に基づいて有効水分量が算出されるため、該有効水分量の算出精度を向上することが可能となる。
【0019】
本発明の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドの雰囲気温度を計測する温度計測手段を備え、前記制御手段が、前記経過時間中における前記温度計測手段による前記雰囲気温度の計測結果に基づいて前記累積水分透過量を算出する。
【0020】
この発明によれば、前回の液体噴射終了時からの経過時間中における液体噴射ヘッドの雰囲気温度に基づいて累積水分透過量が決定されるので、該累積水分透過量の算出精度を向上することが可能となる。
【0021】
本発明の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドの雰囲気湿度を計測する湿度計測手段を備え、前記制御手段が、前記経過時間中における前記湿度計測手段による前記雰囲気湿度の計測結果に基づいて前記累積水分透過量を算出する。
【0022】
この発明によれば、前回の液体噴射終了時からの経過時間中における液体噴射ヘッドの雰囲気湿度に基づいて累積水分透過量が決定されるので、該累積水分透過量の算出精度を向上することが可能となる。
【0023】
本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、ノズル形成面に形成されたノズルから保湿剤及び水分を含有する液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップとを備えた液体噴射装置のメンテナンス方法であって、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量を検出し、該検出した液体の量に基づいて前記キャップ内における前記液体中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量である有効水分量を算出し、該算出した有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりも前記ノズルから排出する液体の量が少なくなるように、前記ノズルから液体を前記キャップ内に強制的に排出させるメンテナンスを行う。
【0024】
液体噴射ヘッドのノズル形成面がキャップにより封止された状態、すなわち液体噴射休止中では、キャップ内に存在する液体中の有効水分量が少ないほどノズルが目詰まりしやすいので、液体噴射開始時の液体の噴射不良が発生しやすい。したがって、メンテナンス時には、有効水分量が少ないほどノズルからキャップ内に強制的に排出させる液体の量を多くする必要がある。この点、この発明によれば、有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりもノズルから排出する液体の量が少なくなるように、ノズルから液体をキャップ内に強制的に排出させるメンテナンスを行うことで、液体噴射開始時における液体の噴射不良を確実に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0026】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内には、左右方向に延びるプラテン13が架設されるとともに、該プラテン13上には、フレーム12の背面に設けられた紙送りモータ14を有する紙送り機構により記録用紙Pが後側から給送されるようになっている。また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に棒状のガイド部材15が架設されている。
【0027】
このガイド部材15には、キャリッジ16が、該ガイド部材15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ16は、フレーム12内の後面に設けられた一対のプーリ17a間に張設されたタイミングベルト17を介してフレーム12の背面に設けられたキャリッジモータ18に駆動連結されることにより、該キャリッジモータ18の駆動によりガイド部材15に沿って往復移動されるようになっている。
【0028】
キャリッジ16の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられるとともに、該記録ヘッド19の下面は、複数(本実施形態では4つ)のノズル20(図2参照)が形成されたノズル形成面19a(図2参照)とされている。また、キャリッジ16における記録ヘッド19の上側には、インクカートリッジ21が着脱可能に搭載されるとともに、該インクカートリッジ21内には、液体としてのインクがそれぞれ記録ヘッド19に供給可能に収容されている。
【0029】
このインクには、保湿剤及び水分が含有されるとともに、該保湿剤としては、グリセリンやジエチレングリコール等の多価アルコール類が用いられる。多価アルコール類は、吸湿性を有するため、インクに含有させることで、ノズル内でのインクの増粘を抑制し、結果としてノズルの目詰まりを抑制するようになっている。
【0030】
そして、インクカートリッジ21内のインクが、記録ヘッド19内に各ノズル20と対応するように備えられた圧電素子20a(図2参照)の駆動により、該インクカートリッジ21から記録ヘッド19へと供給され、各ノズル20からプラテン13上に給送された記録用紙Pに向けて噴射されることにより、該記録用紙Pに印刷が行われるようになっている。また、フレーム12内の右端部に位置する非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド19のメンテナンス(クリーニング、フラッシング等)を行うためのメンテナンスユニット22が設けられている。
【0031】
図2に示すように、メンテナンスユニット22は、記録ヘッド19のノズル形成面19aを封止可能な上側が開口した有底四角箱状をなす合成樹脂製のキャップ23を備えている。キャップ23の全ての壁部(底壁及び周壁)の肉厚は、均一になっている。キャップ23内には、該キャップ23の内底面全体を覆うように、可撓性を有する多孔質材料からなる四角板状のインク吸収材24が敷設されている。キャップ23の上面全体には、ゴム等の可撓性部材よりなる四角枠状のシール部材25が密着するように設けられている。
【0032】
また、キャップ23には、該キャップ23を昇降させるための昇降装置26が連結されている。そして、キャリッジ16を非印刷領域に移動させた状態で、キャップ23を昇降装置26によって上昇させることで、シール部材25の上面が記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接され、各ノズル20がキャップ23により封止されるようになっている。なお、キャップ23がノズル形成面19aを封止した状態では、インク吸収材24は、キャップ23内のインクを吸収保持して該キャップ23内の空間を保湿するようになっている。
【0033】
キャップ23の下面には、該キャップ23内からキャップ23外へインクを排出させる排出通路27aを内部に有する排出部27が下側に延びるように設けられている。排出部27には、可撓性材料よりなる排出チューブ28の基端側(上流側)が接続されるとともに、排出通路27aを介してキャップ23内と排出チューブ28内とが連通されている。排出チューブ28の先端側(下流側)は、直方体形状をなす廃インクタンク29内に挿入されている。また、排出チューブ28の中間部には、キャップ23側から廃インクタンク29側へ向かってキャップ23内を吸引するための吸引手段としてのチューブポンプ30が配設されている。
【0034】
そして、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ23により封止した状態でチューブポンプ30を駆動することで、各ノズル20内の増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ23及び排出チューブ28を介して廃インクタンク29内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、廃インクタンク29内には、該廃インクタンク29内に排出されたインクを吸収保持する廃インク吸収材31が収容されている。
【0035】
次に、インクジェット式プリンタ11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、インクジェット式プリンタ11は、液体量検出手段、有効水分量算出手段、制御手段としての制御部40を備えている。制御部40には、紙送りモータ14、キャリッジモータ18、圧電素子20a、昇降装置26、及びチューブポンプ30などが電気的に接続されている。そして、これら両モータ14,18、圧電素子20a、昇降装置26、及びチューブポンプ30などは、それらの駆動状態がそれぞれ制御部40によって制御されるようになっている。
【0036】
制御部40内には、CPU41、ROM42、RAM43、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)44、RTC(Real Time Clock)45、非封止累積時間計時手段としての第2タイマ46、非封止継続時間計時手段及び封止継続時間計時手段としての第1タイマ47などが設けられている。ROM42には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各制御プログラム、及び各種情報(後述する各クリーニングパターン及び各フラッシングパターンを示すテーブル)などが記憶されている。RAM43には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記録されるようになっている。また、CPU41は、キャップ23内へフラッシングによって吐出したインク量を累計してカウントする機能を備えており、この累計してカウントしたインク量をCapCnt値としてEEPROM44の所定領域に記憶する。
【0037】
EEPROM44には、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態にされたとしても消去されるべきではない各種の情報(後述する前回クリーニング時刻TB、前回フラッシング時刻TD、電源オフ時刻、前回印刷終了時刻TGなど)が記録されるようになっている。RTC45は、インクジェット式プリンタ11が電源オン状態である間は勿論のこと、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態となってからも図示しないコンデンサからの給電がある間は、時刻を計時可能とされている。
【0038】
次に、ROM42に記憶されるテーブルについて説明する。
図4に示すテーブルには、本実施形態のメンテナンスユニット22が実行するクリーニングにおいて適用されるタイマクリーニングパターンが示されている。
【0039】
タイマクリーニングは、EEPROM44に記録された前回クリーニングを行ったときからの経過時間T1に応じて実行されるクリーニングである。そして、このタイマクリーニングに関し、本実施形態では、記録ヘッド19の各ノズル20からのインクの排出量に差を持たせることにより、複数種類のタイマクリーニングパターン、すなわち第1タイマクリーニングパターンTCL1及び第2タイマクリーニングパターンTCL2の2種類が設定されている。この場合、第1タイマクリーニングパターンTCL1は、第2タイマクリーニングパターンTCL2よりも、記録ヘッド19の各ノズル20内からのインクの排出量が多くなるように設定されている。
【0040】
図5に示すテーブルには、本実施形態のメンテナンスユニット22が実行するフラッシングにおいて適用されるフラッシングパターンが示されている。そして、このフラッシングに関し、本実施形態では、記録ヘッド19の各ノズル20からのインクの排出量に差を持たせることにより、複数種類のフラッシングパターン、すなわち第1フラッシングパターンFL1、第2フラッシングパターンFL2、第3フラッシングパターンFL3、及び第4フラッシングパターンFL4の4種類が設定されている。
【0041】
この場合、各フラッシングパターンFL1〜FL4は、記録ヘッド19の各ノズル20内からのインクの排出量が、第1フラッシングパターンFL1、第2フラッシングパターンFL2、第3フラッシングパターンFL3、第4フラッシングパターンFL4、の順で段階的に多くなるように設定されている。すなわち、記録ヘッド19の各ノズル20内からのインクの排出量は、第1フラッシングパターンFL1が最も少なく、第4フラッシングパターンFL4が最も多くなるように設定されている。なお、記録ヘッド19の各ノズル20内からのインクの排出量は、第4フラッシングパターンFL4よりも第2タイマクリーニングパターンTCL2の方が多くなるように設定されている。
【0042】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、印刷開始前にメンテナンスユニット22に記録ヘッド19のメンテナンスを実行させるための印刷開始前動作処理ルーチンについて、図6及び図7に基づき説明する。
【0043】
さて、制御部40は、EEPROM44から前回クリーニングを行ったときの時刻である前回クリーニング時刻TBを読み出すとともに、RTC45から現在時刻TAを読み出し、現在時刻TAから前回クリーニング時刻TBを減算することで、前回クリーニングを行ったときからの経過時間T1を計算する(ステップS1)。続いて制御部40は、EEPROM44から前回フラッシングを行ったときの時刻である前回フラッシング時刻TDを読み出すとともに、RTC45から現在時刻TAを読み出し、現在時刻TAから前回フラッシング時刻TDを減算することで、前回フラッシングを行ったときからの経過時間Tfを計算する(ステップS1−1)。
【0044】
続いて制御部40は、後述するキャッピング時のインク状態計算処理(図16に示すキャッピング時のインク状態計算処理ルーチン)を実行する(ステップS2)。このステップS2では、キャップ23内におけるインク中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量であるキャップ内有効水分量Wが算出される。
【0045】
続いて制御部40は、タイマクリーニングを実行する間隔の時間を補正するタイマクリーニング補正時間tを計算する(ステップS3)。すなわち、制御部40は、ROM42から、該ROM42に予め記憶されていたタイマクリーニング間隔の時間の最大値である480時間及びキャッピング時蒸発係数Aを読み出し、480時間からステップS2で算出したキャップ内有効水分量Wをキャッピング時蒸発係数Aで除算した値を減算することで、タイマクリーニング補正時間tを算出する。なお、タイマクリーニング間隔の時間の最大値である480時間及びキャッピング時蒸発係数Aは、予め実験等を行うことで求められた値である。
【0046】
続いて制御部40は、ステップS3で計算したタイマクリーニング補正時間tが480時間よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、タイマクリーニング補正時間tを480時間に設定し(ステップS5)、その後、その処理を後述するステップS8に移行する。一方、ステップS4の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、タイマクリーニング補正時間tが0時間よりも小さいか否かを判定する(ステップS6)。
【0047】
ステップS6の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、タイマクリーニング補正時間tを0時間に設定し(ステップS7)、その後、その処理を後述するステップS8に移行する。一方、ステップS6の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、その処理を後述するステップS8に移行する。
【0048】
ステップS8において、制御部40は、ステップS1で計算した経過時間T1が480時間以上であるか否かを判定する。ステップS8の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第1タイマクリーニングパターンTCL1の実行を行い(ステップS9)、その後、その処理を後述するステップS12に移行する。一方、ステップS8の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS3で計算したタイマクリーニング補正時間tが480時間以上であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第2タイマクリーニングパターンTCL2の実行を行い(ステップS11)、その後、その処理を後述するステップS12に移行する。
【0049】
ステップS12において、制御部40は、ステップS9における第1タイマクリーニングパターンTCL1の実行終了時刻またはステップS11における第2タイマクリーニングパターンTCL2の実行終了時刻をRTC45から読み出す。そして、制御部40は、RTC45から読み出した実行終了時刻を前回クリーニング時刻TBとしてセットし、該前回クリーニング時刻TBをEEPROM44の所定領域に書き込む。すなわち制御部40は、前回クリーニング時刻TBを更新する。その後、制御部40は、印刷開始前動作処理ルーチンを終了する。
【0050】
一方、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS1−1で計算した経過時間Tfが48時間よりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第1フラッシングパターンFL1の実行を行い(ステップS14)、その処理を後述するステップS20に移行する。ステップS13の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS1−1で計算した経過時間Tfが48時間以上かつ120時間よりも小さいか否かを判定する(ステップS15)。
【0051】
ステップS15の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第2フラッシングパターンFL2の実行を行い(ステップS16)、その処理を後述するステップS20に移行する。ステップS15の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS1−1で計算した経過時間Tfが120時間以上かつ360時間よりも小さいか否かを判定する(ステップS17)。
【0052】
ステップS17の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第3フラッシングパターンFL3の実行を行い(ステップS18)、その処理を後述するステップS20に移行する。ステップS17の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、第4フラッシングパターンFL4の実行を行い(ステップS19)、その処理を後述するステップS20に移行する。
【0053】
ステップS20において、制御部40は、ステップS14における第1フラッシングパターンFL1の実行終了時刻、ステップS16における第2フラッシングパターンFL2の実行終了時刻、ステップS18における第3フラッシングパターンFL3の実行終了時刻、またはステップS19における第4フラッシングパターンFL4の実行終了時刻をRTC45から読み出す。そして、制御部40は、RTC45から読み出した実行終了時刻を前回フラッシング時刻TDとしてセットし、該前回フラッシング時刻TDをEEPROM44の所定領域に書き込む。すなわち制御部40は、前回フラッシング時刻TDを更新する。その後、制御部40は、印刷開始前動作処理ルーチンを終了する。
【0054】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、キャップ23が記録ヘッド19のノズル形成面19aを封止する(キャッピングする)際に実行するキャッピング動作処理ルーチンについて、図8に基づき説明する。
【0055】
さて、制御部40は、キャップ23が1回毎に開放されている時間(キャップ23が1回毎に記録ヘッド19のノズル形成面19aから離間している時間)をカウントする第1タイマ47から現在のカウント値であるキャップ開放カウント時間T2を読み出す(ステップS21)。続いて制御部40は、ステップS21で読み出したキャップ開放カウント時間T2をキャップ開放時間COT(非封止継続時間)としてRAM43に記録する(ステップS22)。
【0056】
続いて制御部40は、キャップ23が開放されている累積時間(非封止累積時間)、すなわちキャップ23が記録ヘッド19のノズル形成面19aから離間している累積時間を計測する第2タイマ46の時間のカウントを停止する(ステップS23)。そして、制御部40は、第1タイマ47のカウント値をリセットするとともに、該第1タイマ47の時間のカウントをスタートさせる(ステップS24)。
【0057】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、キャップ23が記録ヘッド19のノズル形成面19aを開放する(非封止する)際に実行するキャップ開放動作処理ルーチンについて、図9に基づき説明する。
【0058】
さて、制御部40は、キャップ23が1回毎に記録ヘッド19のノズル形成面19aを封止している時間をカウントする第1タイマ47から現在のカウント値であるキャッピングカウント時間T3を読み出す(ステップS30)。続いて制御部40は、ステップS30で読み出したキャッピングカウント時間T3をキャッピング時間CCT(封止継続時間)としてRAM43に記録する(ステップS31)。続いて制御部40は、第2タイマ46の時間のカウントをスタートさせる(ステップS32)。そして、制御部40は、第1タイマ47のカウント値をリセットするとともに、該第1タイマ47の時間のカウントをスタートさせる(ステップS33)。
【0059】
ここで、第1タイマ47及び第2タイマ46の一動作を図18に示すタイミングチャートに基づいて説明する。
例えば、インクジェット式プリンタ11の電源がオンにされたときの時刻を0とし、その100時間後に印刷が開始され、印刷開始から20時間後に印刷が終了した場合について以下説明する。
【0060】
電源オン時には、キャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが封止され、印刷開始時には、キャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが開放され、印刷終了時には、再びキャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが封止される。この場合、第1タイマ47は、電源オン時から印刷開始時までの100時間をキャッピングカウント時間T3として計測し、印刷開始時から印刷終了時までの20時間をキャップ開放カウント時間T2として計測する。一方、第2タイマ46は、電源オン時から印刷開始時までの100時間をカウントせず、印刷開始時から印刷終了時までの20時間をキャップ23が開放されている累積時間(非封止累積時間)として計測する。
【0061】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、インクジェット式プリンタ11の印刷中に実行する定期空吸引動作処理ルーチンについて、図10に基づき説明する。
【0062】
さて、制御部40は、印刷中にキャップ23内へフラッシングしたインク量が、予め実験等によって設定されてROM42に記憶されている所定量J1を超えたか否かを判定する(ステップS40)。この場合、1回の圧電素子20aの駆動によって吐出されるインク量は予め設定されているため、制御部40が、キャップ23内へのフラッシングにおける圧電素子20aの駆動回数と1回の圧電素子20aの駆動によって吐出されるインク量とを乗じることで、印刷中にキャップ23内へフラッシングしたインク量が求められる。
【0063】
ステップS40の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、後述するキャップ開放時のインク状態計算処理(図15に示すキャップ開放時のインク状態計算処理ルーチン)を実行する(ステップS41)。このステップS41では、キャップ内有効水分量W、キャップ内保湿剤量H、キャップ内インク量I、キャップ内有効水分量比WH、及びキャップ内保湿剤量比HHが算出される。一方、ステップS40の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、定期空吸引動作処理ルーチンを終了する。
【0064】
続いて制御部40は、チューブポンプ30を駆動して、キャップ内のインクを排出する定期空吸引を実行する(ステップS42)。引き続き制御部40は、後述するキャップ内インク残量計算処理(図14に示すキャップ内インク残量計算処理ルーチン)を実行する(ステップS43)。このステップS43では、定期空吸引実行後のキャップ内有効水分量W及びキャップ内保湿剤量Hが計算される。
【0065】
続いて制御部40は、CapCnt値をEEPROM44から読み出し、この読み出したCapCnt値を0にセット(リセット)した後、該CapCnt値をEEPROM44の所定領域に記憶する(ステップS44)。引き続き制御部40は、後述するLastCapCnt値をEEPROM44から読み出し、この読み出したLastCapCnt値を0にセット(リセット)した後、該LastCapCnt値をEEPROM44の所定領域に記憶する(ステップS45)。その後、制御部40は、定期空吸引動作処理ルーチンを終了する。
【0066】
ここで、第1タイマ47及び第2タイマ46の一動作を図18に示すタイミングチャートに基づいて説明する。
例えば、インクジェット式プリンタ11の電源がオンにされたときの時刻を0とし、その200時間後に印刷が開始され、印刷開始から100時間後に定期空吸引が行われ、定期空吸引が行われてから150時間後に印刷が終了した場合について以下説明する。
【0067】
印刷開始時には、キャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが開放され、定期空吸引時には、キャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが開放され、印刷終了時には、キャップ23により記録ヘッド19のノズル形成面19aが封止される。この場合、第1タイマ47は、印刷開始時から定期空吸引時までの100時間をキャップ開放カウント時間T2として計測し、リセット後、定期空吸引時から印刷終了時までの150時間を再びキャップ開放カウント時間T2として計測する。一方、第2タイマ46は、印刷開始時から印刷終了時までの250時間をキャップ23が開放されている累積時間(非封止累積時間)として計測する。
【0068】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、記録ヘッド19のクリーニング時に実行するクリーニング動作処理ルーチンについて、図11に基づき説明する。
【0069】
さて、制御部40は、クリーニングを実行する(ステップS50)。続いて制御部40は、キャップ内インク量Iを初期値NIに設定する(ステップS51)。この初期値NIは、クリーニング実行直後にキャップ内に残っているフレッシュインク(インクカートリッジ21に収容されている新品状態のインクと同等のインク)のインク量であり、予め実験等によって求められてROM42に記憶されている。続いて制御部40は、クリーニング実行直後にキャップ内に残っているフレッシュインク中のキャップ内有効水分量W及びキャップ内保湿剤量Hをそれぞれ初期値NW(初期有効水分量)及び初期値NHに設定する(ステップS52)。これら初期値NW及び初期値NHは、予め実験等によって求められてROM42に記憶されている。
【0070】
引き続き制御部40は、第2タイマ46をリセットして停止する(ステップS53)。続いて制御部40は、キャップ開放時間COT及びキャッピング時間CCTをリセットする(ステップS54)。そして、制御部40は、第1タイマ47をリセットしてスタートさせる(ステップS55)。
【0071】
続いて制御部40は、CapCnt値をEEPROM44から読み出し、この読み出したCapCnt値を0にセット(リセット)した後、該CapCnt値をEEPROM44の所定領域に記憶する(ステップS56)。引き続き制御部40は、後述するLastCapCnt値をEEPROM44から読み出し、この読み出したLastCapCnt値を0にセット(リセット)した後、該LastCapCnt値をEEPROM44の所定領域に記憶する(ステップS57)。その後、制御部40は、クリーニング動作処理ルーチンを終了する。
【0072】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、印刷終了時に実行する印刷終了時動作処理ルーチンについて、図12に基づき説明する。
さて、制御部40は、キャップ内保湿剤量Hが予め実験等によって設定されてROM42に記憶されている所定量J2よりも大きい否かを判定する(ステップS60)。ステップS60の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、キャップ23内へ適量(キャップ23内の保湿剤を洗い流すために十分な量;予め実験等によって求められた量)のインクをフラッシングする(ステップS61)。引き続き制御部40は、チューブポンプ30を駆動して、キャップ23内のインクを排出する空吸引を実行し(ステップS62)、その後、その処理を後述するステップS63に移行する。
【0073】
一方、ステップS60の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、キャップ23が開放されている累積時間、キャップ23の大きさ、インクの種類などに基づいて、初期値NW(初期有効水分量)からキャップ23の開放中に該キャップ23内から蒸発して減少する分の水分量を計算し、該水分量を含有するインク量である水分補充インク量Kを計算する(ステップS64)。引き続き制御部40は、水分補充インク量Kの分量のインクがキャップ23内に吐出(補充)されるまで該キャップ23内へのフラッシングを実行する(ステップS65)。
【0074】
続いて制御部40は、後述するキャップ開放時のインク状態計算処理(図15に示すキャップ開放時のインク状態計算処理ルーチン)を実行し(ステップS66)、その後、その処理を後述するステップS63に移行する。ステップS63において、制御部40は、第2タイマ46をリセットして停止し、その後、制御部40は、印刷終了時動作処理ルーチンを終了する。
【0075】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、インクジェット式プリンタ11の電源オフ時に実行する電源オフ動作処理ルーチンについて、図13に基づき説明する。
【0076】
さて、制御部40は、後述するキャッピング時のインク状態計算処理(図16に示すキャッピング時のインク状態計算処理ルーチン)を実行する(ステップS70)。引き続き制御部40は、RTC45から現在時刻TAを読み出し、該現在時刻TAを電源オフ時刻としてEEPROM44に記憶し(ステップS71)、その後、制御部40は、電源オフ動作処理ルーチンを終了する。
【0077】
次に、前述したステップS41及びステップS66で実行されるキャップ開放時のインク状態計算処理ルーチンについて、図14に基づき説明する。
さて、制御部40は、第1タイマ47からキャップ開放カウント時間T2を読み出す(ステップS80)。引き続き制御部40は、キャップ内有効水分量Wを更新する(ステップS81)。すなわち、制御部40は、キャップ23内に新たに吐出したインク中の有効水分量TW(キャップ23内に新たに吐出したインク中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量)を計算する。そして、制御部40は、この有効水分量TWから予め実験等によって求められてROM42に記憶されているキャップ開放時蒸発係数BとステップS80で読み出したキャップ開放カウント時間T2とを乗じた値を減じた値を算出し、この値をRAM43から読み出したキャップ内有効水分量Wに加算する。そして、制御部40は、この加算結果をキャップ内有効水分量WとしてRAM43の所定領域に書き込む。
【0078】
引き続き制御部40は、キャップ内保湿剤量Hを更新する(ステップS82)。すなわち、制御部40は、キャップ23内に新たに吐出したインク中の保湿剤量THを算出し、該保湿剤量THをRAM43から読み出したキャップ内保湿剤量Hに加算する。そして、制御部40は、この加算結果をキャップ内保湿剤量HとしてRAM43の所定領域に書き込む。
【0079】
引き続き制御部40は、キャップ内インク量Iを更新する(ステップS83)。すなわち、制御部40は、キャップ23内に新たに吐出したインク量TIを計算する。そして、制御部40は、このインク量TIからキャップ開放時蒸発係数BとステップS80で読み出したキャップ開放カウント時間T2とを乗じた値を減じた値を算出し、この値をRAM43から読み出したキャップ内インク量Iに加算する。そして、制御部40は、この加算結果をキャップ内インク量IとしてRAM43の所定領域に書き込む。
【0080】
引き続き制御部40は、ステップS81〜ステップS83でそれぞれ更新したキャップ内有効水分量W、キャップ内保湿剤量H、及びキャップ内インク量Iに基づいて、キャップ内インクのキャップ内有効水分量比WHとキャップ内保湿剤量比HHとを計算する(ステップS84)。引き続き制御部40は、キャップ開放時間COTをリセットする(ステップS84−1)。
【0081】
続いて制御部40は、CapCnt値をEEPROM44から読み出し、この読み出したCapCnt値をLastCapCnt値としてEEPROM44の所定領域に記憶する(ステップS84−2)。このLastCapCnt値は、この時点(このステップS84−2の実行直前)までにカウントされたCapCnt値(前回、キャップ23内へフラッシングによって吐出したインクの累計量)である。続いて制御部40は、第1タイマ47をリセットしてスタートさせ(ステップS85)、その後、キャップ開放時のインク状態計算処理ルーチンを終了する。
【0082】
次に、前述したステップS43で実行されるキャップ内インク残量計算処理ルーチンについて、図15に基づき説明する。
さて、制御部40は、キャップ内インク量Iが初期値NIよりも大きいか否かを判定する(ステップS90)。ステップS90の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、前述したステップS84において計算したキャップ内インクのキャップ内有効水分量比WH及びキャップ内保湿剤量比HHに基づいて、定期空吸引実行後のキャップ内有効水分量W及びキャップ内保湿剤量Hを計算する(ステップS91)。引き続き制御部40は、初期値NIをキャップ内インク量IとしてRAM43に記録し(ステップS92)、その後、キャップ内インク残量計算処理ルーチンを終了する。一方、ステップS90の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、キャップ内インク残量計算処理ルーチンを終了する。
【0083】
次に、前述したステップS2及びステップS70で実行されるキャッピング時のインク状態計算処理ルーチンについて、図16に基づき説明する。
さて、制御部40は、第1タイマ47からキャッピングカウント時間T3を読み出す(ステップS100)。引き続き制御部40は、キャップ内有効水分量Wを更新する(ステップS101)。すなわち、制御部40は、RAM43から読み出したキャップ内有効水分量Wからキャッピング時蒸発係数AとステップS100で読み出したキャッピングカウント時間T3とを乗じた値を減算し、この減算結果をキャップ内有効水分量WとしてRAM43の所定領域に書き込む。
【0084】
引き続き制御部40は、キャップ内インク量Iを更新する(ステップS102)。すなわち、制御部40は、RAM43から読み出したキャップ内インク量Iからキャッピング時蒸発係数AとステップS100で読み出したキャッピングカウント時間T3とを乗じた値を減算し、この減算結果をキャップ内インク量IとしてRAM43の所定領域に書き込む。引き続き制御部40は、後述する電源オフ経過時間(電源がオフ状態にされていた時間)をリセットする(ステップS102−1)。続いて制御部40は、第1タイマ47をリセットしてスタートさせ(ステップS103)、その後、キャッピング時のインク状態計算処理ルーチンを終了する。
【0085】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、インクジェット式プリンタ11の電源オン時に実行する電源オン動作処理ルーチンについて、図17に基づき説明する。
【0086】
さて、制御部40は、RTC45から現在時刻TAを読み出し、該現在時刻TAを電源オン時刻としてRAM43の所定領域に記憶する(ステップS110)。続いて制御部40は、RAM43から電源オン時刻を読み出すとともにEEPROM44から電源オフ時刻を読み出し、電源オン時刻から電源オフ時刻を減算することで、電源オフ経過時間を算出し、該算出結果を電源オフ経過時間(電源がオフ状態にされていた時間)としてRAM43に記憶する(ステップS111)。その後、制御部40は、電源オン動作処理ルーチンを終了する。
【0087】
以上のように、本実施形態では、前回クリーニングからの経過時間T1が長くなるほどキャップ内有効水分量Wが蒸発などにより少なくなると推定できるので、制御部40は、この経過時間T1が長くなるほどノズル20からキャップ23内に排出されるインクの量が多くなるようにメンテナンス制御を行っている。
【0088】
すなわち、図7に示されるように、制御部40は、経過時間T1が最も長い480時間以上の場合、ノズル20からキャップ23内に排出されるインクの量が最も多い第1タイマクリーニングパターンTCL1の実行を行い、経過時間T1が最も短い48時間未満の場合、ノズル20からキャップ23内に排出されるインクの量が最も少ない第1フラッシングパターンFL1の実行を行っている。
【0089】
以上、詳述した第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)記録ヘッド19のノズル形成面19aがキャップ23で封止された状態では、キャップ内有効水分量Wが少ないほどノズル20が目詰まりしやすいので、印刷開始時のインクの噴射不良が発生しやすい。このため、記録ヘッド19のメンテナンス時には、キャップ内有効水分量Wが少ないほどノズル20からキャップ23内に強制的に排出させるインクの量を多くする必要がある。この点、本実施形態によれば、キャップ内有効水分量Wが多い場合の方が少ない場合よりもノズル20からキャップ23内に排出するインクの量が少なくなるように、タイマクリーニング及びフラッシングを選択的に実行しているため、印刷開始時におけるインクの噴射不良を確実に抑制することができる。
【0090】
(2)制御部40は、キャップ23が開放されている累積時間と、キャッピング時間CCTとキャップ開放時間COTとに基づいてキャップ内有効水分量Wを算出しているため、キャップ内有効水分量Wの算出精度を向上することができる。
【0091】
(3)制御部40は、キャップ内有効水分量Wが初期値NWからキャップ23の開放中に該キャップ23内から蒸発して減少する分の水分量を計算し、該水分量を含有するインク量である水分補充インク量Kを計算し、該水分補充インク量Kの分量のインクがキャップ23内に補充されるまで該キャップ23内へのフラッシングを実行している。このため、キャップ内有効水分量Wが初期値NWよりも少なくなった場合に、キャップ23内にインクが補充されてキャップ内有効水分量Wを初期値NWに戻すことができる。したがって、キャップ23内を高い湿潤状態に維持することができ、ノズル20の目詰まりを好適に抑制することができる。
【0092】
(4)制御部40は、キャップ内保湿剤量Hが予め設定した所定量J2を超えた場合に、キャップ23内から保湿剤が排出されるようにチューブポンプ30を駆動させるため、キャップ23内の保湿剤量を所定量J2以下に抑えることができる。このため、キャップ23内の保湿剤がノズル20内のインクから奪う水分量を低減することができ、該ノズル20の目詰まりを好適に抑制することができる。
【0093】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図19に示すように、この第2実施形態では、インクジェット式プリンタ11(図1参照)内に、記録ヘッド19(図1参照)の雰囲気温度を計測するための温度計測手段としての温度センサ50と、該記録ヘッド19の雰囲気湿度を計測するための湿度計測手段としての湿度センサ51とが備えられている。これら温度センサ50及び湿度センサ51は、制御部40と電気的に接続されている。
【0094】
ROM42には、キャップ23が記録ヘッド19のノズル形成面19aを封止した状態において、該キャップ23内で蒸発して該キャップ23を構成する壁部を透過してキャップ23外へ拡散する所定単位時間STあたりの水分透過量Mを求めるための計算式(M=k・dp/dx・S)・・・(A)が記憶されている。この計算式(A)において、kは予め実験等により決定された拡散係数を示し、pはキャップ23周辺の水蒸気分密度、xはキャップ23を構成する壁部の厚さ(キャップ23の内外間の距離)を示し、Sはキャップ23における内面の総面積を示している。この場合、水蒸気分密度pは、記録ヘッド19の雰囲気温度及び雰囲気湿度などにより決定される値である。
【0095】
さらに、ROM42には、図20に示すように、印刷開始前におけるキャップ内有効水分量Wと、該キャップ内有効水分量Wの値に基づいて記録ヘッド19の各ノズル20からキャップ23内に排出させるインク量である排出インク量(排出液体量)HIと、該排出インク量HIに対応するようにメンテナンスユニット22が実行するメンテナンスパターンとの関係を示すテーブルが記憶されている。
【0096】
そして、このメンテナンスに関し、本実施形態では、排出インク量HIに差を持たせることにより、複数種類のメンテナンスパターン、すなわちクリーニングパターンCL、第1フラッシングパターンFL1、第2フラッシングパターンFL2、第3フラッシングパターンFL3、及び第4フラッシングパターンFL4の5種類が設定されている。
【0097】
この場合、クリーニングパターンCLは排出インク量HIが200mgとなるように設定され、第1フラッシングパターンFL1は排出インク量HIが40mgとなるように設定されている。さらに、この場合、第2フラッシングパターンFL2は排出インク量HIが80mgとなるように設定され、第3フラッシングパターンFL3は排出インク量HIが120mgとなるように設定され、第4フラッシングパターンFL4は排出インク量HIが160mgとなるように設定されている。
【0098】
すなわち、キャップ内有効水分量Wが負の値である場合にはクリーニングパターンCLが実行され、0mg以上50mg未満である場合には第4フラッシングパターンFL4が実行される。さらに、キャップ内有効水分量Wが、計算上、50mg以上100mg未満である場合には第3フラッシングパターンFL3が実行され、100mg以上150mg未満である場合には第2フラッシングパターンFL2が実行され、150mg以上である場合には第1フラッシングパターンFL1が実行される。
【0099】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、印刷開始前にメンテナンスユニット22に記録ヘッド19のメンテナンスを実行させるための印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンについて、図21及び図22に基づき説明する。
【0100】
さて、制御部40は、EEPROM44から前回印刷終了時の時刻である前回印刷終了時刻TGを読み出すとともに、RTC45から現在時刻TAを読み出し、現在時刻TAから前回印刷終了時刻TGを減算することで、前回の印刷終了時からの経過時間TXを計算する(ステップS120)。続いて制御部40は、温度センサ50からの入力信号に基づいて経過時間TX中の記録ヘッド19の平均雰囲気温度Qを計算する(ステップS121)。
【0101】
続いて制御部40は、湿度センサ51からの入力信号に基づいて経過時間TX中の記録ヘッド19の平均雰囲気湿度Rを計算する(ステップS122)。続いて制御部40は、ROM42から計算式(A)を読み出し、該計算式(A)に基づいて所定単位時間STあたりの水分透過量Mを計算し、この計算した水分透過量Mと経過時間TXとを乗じることで、経過時間TX中におけるキャップ23内からキャップ23外への累積水分透過量WXを計算する(ステップS123)。
【0102】
続いて制御部40は、前回印刷終了時においてキャップ23内に存在する全水分量WPから、保湿剤によって吸湿される吸湿水分量WRと累積水分透過量WXとを減算することで、キャップ内有効水分量Wを計算する(ステップS124)。続いて制御部40は、ステップS124で計算したキャップ内有効水分量Wが0mgよりも小さい負の値であるか否かを判定する(ステップS125)。ステップS125の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、クリーニングパターンCLの実行を行い(ステップS126)、その後、印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを終了する。
【0103】
一方、ステップS125の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS124で計算したキャップ内有効水分量Wが0mg以上かつ50mg未満であるか否かを判定する(ステップS127)。ステップS127の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第4フラッシングパターンFL4の実行を行い(ステップS128)、その後、印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを終了する。
【0104】
一方、ステップS127の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS124で計算したキャップ内有効水分量Wが50mg以上かつ100mg未満であるか否かを判定する(ステップS129)。ステップS129の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第3フラッシングパターンFL3の実行を行い(ステップS130)、その後、印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを終了する。
【0105】
一方、ステップS129の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ステップS124で計算したキャップ内有効水分量Wが100mg以上かつ150mg未満であるか否かを判定する(ステップS131)。ステップS131の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、第2フラッシングパターンFL2の実行を行い(ステップS132)、その後、印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを終了する。一方、ステップS131の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、第1フラッシングパターンFL1の実行を行い(ステップS133)、その後、印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを終了する。
【0106】
次に、上記印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンに基づく処理ついて具体的に例を挙げて説明する。
ここでは、前回印刷終了時におけるキャップ23内における全水分量WPが500mgであり、同じくキャップ23内における保湿剤量が120mgであるものとし、キャップ23内の湿度を100%と仮定した場合において、120mgの保湿剤によって吸湿される吸湿水分量WRは300mgであるものとする。また、前回の印刷終了時からの経過時間TXを10日間とし、この10日間中の記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rをそれぞれ25℃及び42%RHとした。
【0107】
そして、所定単位時間STを1日とし、この1日あたりの水分透過量Mを計算式(A)によって計算したところ、水分透過量Mは1.54mgであった。したがって、累積水分透過量WXは、1.54mg×10日=15.4mgとなる。よって、キャップ内有効水分量Wは、500mg−300mg−15.4mg=184.6mgとなる。この結果、図20に示すテーブルから、排出インク量HIは40mgとなる。同様に、経過時間TXを1ヶ月間(30日間)及び6ヶ月間(180日間)とすると、排出インク量HIは、それぞれ80mg及び120mgとなる。
【0108】
また、上記と同様に、記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rをそれぞれ29℃及び35%RHとした場合における経過時間TXを10日、1ヶ月及び6ヶ月とした場合の排出インク量HIは、それぞれ80mg、120mg及び160mgとなる。さらに、上記と同様に、記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rをそれぞれ29℃及び22%RHとした場合における経過時間TXを10日、1ヶ月及び6ヶ月とした場合の排出インク量HIは、それぞれ120mg、160mg及び200mgとなる。
【0109】
以上の結果をまとめると、図23に示す表のようになる。この表から、平均雰囲気温度Qが同じである場合には、平均雰囲気湿度Rが低いほどキャップ内有効水分量Wが少なくなるため、排出インク量HIが多くなる。また、平均雰囲気湿度Rが同じである場合には、平均雰囲気温度Qが高いほどキャップ内有効水分量Wが少なくなって排出インク量HIが多くなると考えられる。
【0110】
このように、印刷開始前には、キャップ内有効水分量Wが少ないほど、記録ヘッド19の各ノズル20内のインクの増粘度が大きくなるため、印刷開始前に行う記録ヘッド19のメンテナンス(フラッシングまたはクリーニング)によってキャップ23内に排出させるインクの量(排出インク量HI)を増やす必要がある。この点、本実施形態では、印刷開始前における排出インク量HIが、記録ヘッド19の周囲の環境(温度や湿度)及び前回の印刷終了時からの経過時間TXに基づいて計算された累積水分透過量WXを考慮して算出されたキャップ内有効水分量Wに基づいて適切に調節されるため、インクの無駄が削減される。
【0111】
以上、詳述した第2実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(5)記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)がキャップ23により封止された状態、すなわち印刷休止中では、キャップ内有効水分量Wが少ないほど各ノズル20がインクの増粘によって目詰まりしやすいので、印刷開始時においてインクの噴射不良が発生しやすい。したがって、印刷開始前において各ノズル20からインクをキャップ23内に強制的に排出させるメンテナンスを行う際には、キャップ内有効水分量Wが少ないほど各ノズル20からキャップ23内に排出させる排出インク量HIを多くする必要がある。しかしながら、この場合、排出インク量HIを必要以上に多くすると、無駄にインクを消費してしまうこととなる。この点、本実施形態によれば、キャップ内有効水分量Wに基づいて排出インク量HIを適切に調節することができるので、印刷開始前に行うフラッシングやクリーニングのインクの無駄な消費を抑制することができる。
【0112】
また、上記キャップ内有効水分量Wは、前回の印刷終了時からの経過時間TXと、該経過時間TX中における記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rとに基づいて計算されたキャップ23内から該キャップ23外への累積水分透過量WXを考慮して計算される。このため、印刷開始前におけるキャップ内有効水分量Wの精度を向上させることができ、この結果、排出インク量HIをより一層適切に調節することができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0113】
・第1実施形態において、キャップ開放カウント時間T2を計測するタイマとキャッピングカウント時間T3を計測するタイマとを別々に設けるようにしてもよい。
・第2実施形態において、排出インク量HIは、キャップ内有効水分量Wに基づいてリニアに調節されるようにしてもよい。
【0114】
・第2実施形態における印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンにおいて、記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rは、それぞれ印刷開始直前における記録ヘッド19の雰囲気温度及び雰囲気湿度にしてもよい。
【0115】
・第2実施形態において、キャップ内有効水分量Wは、必ずしも累積水分透過量WXに基づいて算出する必要はない。
・第2実施形態において、累積水分透過量WXは、必ずしも記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rに基づいて算出する必要はない。あるいは、累積水分透過量WXは、記録ヘッド19の平均雰囲気温度Q及び平均雰囲気湿度Rのうちいずれか一方に基づいて算出するようにしてもよい。
【0116】
・上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11として具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンタの斜視図。
【図2】第1実施形態のメンテナンスユニットの断面簡略図。
【図3】第1実施形態のインクジェット式プリンタの電気的構成を示すブロック回路図。
【図4】第1実施形態の各タイマクリーニングパターンを示すテーブル。
【図5】第1実施形態の各フラッシングパターンを示すテーブル。
【図6】第1実施形態の印刷開始前動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】第1実施形態の印刷開始前動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】第1実施形態のキャッピング動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】第1実施形態のキャップ開放動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図10】第1実施形態の定期空吸引動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図11】第1実施形態のクリーニング動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図12】第1実施形態の印刷終了時動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図13】第1実施形態の電源オフ動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図14】第1実施形態のキャップ開放時のインク状態計算処理ルーチンを示すフローチャート。
【図15】第1実施形態のキャップ内インク残量計算処理ルーチンを示すフローチャート。
【図16】第1実施形態のキャッピング時のインク状態計算処理ルーチンを示すフローチャート。
【図17】第1実施形態の電源オン動作処理ルーチンを示すフローチャート。
【図18】第1実施形態の第1タイマ及び第2タイマの動作を示すタイミングチャート。
【図19】第2実施形態のインクジェット式プリンタの電気的構成を示すブロック回路図。
【図20】第2実施形態のキャップ内有効水分量と排出インク量と実行するメンテナンスパターンとの関係を示すテーブル。
【図21】第2実施形態の印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを示すフローチャート。
【図22】第2実施形態の印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンを示すフローチャート。
【図23】第2実施形態の印刷開始前ヘッドメンテナンス処理ルーチンに基づく処理を行った際の具体的な一例を示す表。
【符号の説明】
【0118】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、19a…ノズル形成面、20…ノズル、23…キャップ、30…吸引手段としてのチューブポンプ、40…液体量検出手段、有効水分量算出手段、及び制御手段としての制御部、46…非封止累積時間計時手段としての第2タイマ、47…非封止継続時間計時手段及び封止継続時間計時手段としての第1タイマ、50…温度計測手段としての温度センサ、51…湿度計測手段としての湿度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズルから保湿剤及び水分を含有する液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップとを備えた液体噴射装置において、
前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量を検出する液体量検出手段と、該液体量検出手段による検出結果に基づいて、前記キャップ内における前記液体中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量である有効水分量を算出する有効水分量算出手段と、該有効水分量算出手段による算出結果に基づいて、前記有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりも前記ノズルから排出する液体の量が少なくなるように、前記ノズルから液体を前記キャップ内に強制的に排出させるメンテナンス制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップによる1回毎の前記ノズル形成面の非封止継続時間を計測する非封止継続時間計時手段と、前記キャップによる1回毎の前記ノズル形成面の封止継続時間を計時する封止継続時間計時手段と、前記キャップによる前記ノズル形成面の非封止累積時間を計時する非封止累積時間計時手段とを備え、
前記有効水分量算出手段は、前記非封止継続時間計時手段による計時結果と、前記封止継続時間計時手段による計時結果と、前記非封止累積時間計時手段による計時結果とに基づいて前記有効水分量を算出することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記有効水分量算出手段による算出結果に基づく前記有効水分量が予め設定した初期状態における前記キャップ内の初期有効水分量よりも少ない場合には、液体噴射終了後に、前記有効水分量と前記初期有効水分量との差分の有効水分量を含有する液体量の前記液体が前記ノズルから前記キャップ内に吐出されるように、前記メンテナンス制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ内を吸引可能な吸引手段をさらに備え、前記制御手段は、前記キャップ内に排出された保湿剤量が予め設定した所定量を超えた場合に、該キャップ内から保湿剤が排出されるように前記吸引手段を吸引動作させることにより前記メンテナンス制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記制御手段は、液体噴射開始前に、前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる液体の量である排出液体量を前記有効水分量に基づいて算出し、該算出した排出液体量の液体が前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出されるように前記メンテナンス制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前回の液体噴射終了時からの経過時間を計時し、該計時結果に基づいて、前回の液体噴射終了時からの前記キャップ内から該キャップ外への累積水分透過量を算出し、該算出した累積水分透過量に基づいて前記有効水分量を算出することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドの雰囲気温度を計測する温度計測手段を備え、前記制御手段は、前記経過時間中における前記温度計測手段による前記雰囲気温度の計測結果に基づいて前記累積水分透過量を算出することを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記液体噴射ヘッドの雰囲気湿度を計測する湿度計測手段を備え、前記制御手段は、前記経過時間中における前記湿度計測手段による前記雰囲気湿度の計測結果に基づいて前記累積水分透過量を算出することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
ノズル形成面に形成されたノズルから保湿剤及び水分を含有する液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップとを備えた液体噴射装置のメンテナンス方法であって、
前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量を検出し、該検出した液体の量に基づいて前記キャップ内における前記液体中の保湿剤によって吸湿される水分を除いた水分量である有効水分量を算出し、該算出した有効水分量が多い場合の方が少ない場合よりも前記ノズルから排出する液体の量が少なくなるように、前記ノズルから液体を前記キャップ内に強制的に排出させるメンテナンスを行うことを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2008−44337(P2008−44337A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284871(P2006−284871)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】