説明

液体噴射装置

【課題】時刻情報の狂いに起因するシーケンス制御上の矛盾を解消することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタは、記録ヘッドと、給電中にのみ時刻を計時する時計と、該時計により計時された計時時刻を計時時刻情報として記憶する制御部とを備える。そして、制御部は、インクジェット式プリンタが非給電状態から給電が開始された場合に、ホストコンピュータから送信される正確な外部時刻情報を受信し、該外部時刻情報に基づいて、制御部が記憶している計時時刻情報のうち前回クリーニング時刻情報、前回フラッシング時刻情報、及びインクジェット式プリンタの給電開始時刻情報を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンタなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)からターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。このようなプリンタでは、印刷時におけるインクの噴射不良を低減するために、インクを噴射するノズルから記録ヘッド内の増粘したインクや気泡などを除去するクリーニングを行っている。ところで、こうしたプリンタでは、クリーニングを行ってからの経過時間が長くなるほど、ノズルからのインクの水分蒸発量が多くなって記録ヘッド内のインクの増粘度や気泡が大きくなるため、クリーニングを適切なタイミングで行う必要がある。
【0003】
このため、従来は、クリーニングを行うタイミングを、前回クリーニングを行った時刻とプリンタが持つ時計(計時手段)の示す現在時刻との差によって求め、この求めたタイミングでクリーニングを行うプリンタが知られている(特許文献1)。この特許文献1のプリンタは、コストアップを抑制するため、バックアップ用の電池を持たない。このため、プリンタの電源がオフにされると該プリンタが持つ時計も停止してしまうため、次に該プリンタの電源をオンにした後における最初の印刷時に、情報処理装置(外部装置)から正確な現在時刻情報を印刷情報とともに取得して、この取得した現在時刻情報に基づいて該プリンタの現在時刻を設定するようにしている。すなわち、特許文献1のプリンタは、情報処理装置から取得した現在時刻情報に基づいて、該プリンタの狂いが生じた現在時刻を補正するようにしている。
【特許文献1】特開2004−195800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のプリンタでは、現在時刻の補正は行われるものの、現在時刻以外の時刻情報、例えば、プリンタの電源をオンにした後における最初の印刷前にクリーニングを行ったときの前回クリーニング時刻やプリンタの電源をオンにしたときの時刻などの補正は行われない。このため、例えば、前回クリーニングを行った時刻に基づく他のタイマクリーニング動作が適確に行われなかったり、プリンタの電源をオンにした時刻がプリンタの電源をオフにした時刻よりも後になったりする等のプリンタにおけるシーケンス制御上の矛盾が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、時刻情報の狂いに起因するシーケンス制御上の矛盾を解消することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、給電中にのみ時刻を計時する計時手段と、該計時手段により計時された計時時刻を計時時刻情報として記憶する計時時刻情報記憶手段とを備えた液体噴射装置であって、非給電状態から給電が開始された場合に、外部装置から送信される正確な外部時刻情報を受信し、該外部時刻情報に基づいて前記計時時刻情報のうち前記計時手段の示す現在時刻情報以外の時刻情報である非現在時刻情報を補正する計時時刻情報補正手段を備えた。
【0007】
通常、給電中にのみ時刻を計時する計時手段は、給電を停止して再び給電した場合、該計時手段が示す現在時刻が、給電が停止されていた時間分だけ遅れる。このため、再び給電したときの給電開始時刻などの種々の時刻情報に狂いが生じ、この時刻情報の狂いによってシーケンス制御上の矛盾が生じてしまうことがある。この点、この発明によれば、計時手段が示す現在時刻が狂っていても、計時時刻情報補正手段により、正確な外部時刻情報に基づいて計時手段の示す現在時刻情報以外の時刻情報である非現在時刻情報が補正される。このため、時刻情報の狂いに起因するシーケンス制御上の矛盾を解消することが可能となる。
【0008】
本発明の液体噴射装置において、前記計時時刻情報補正手段は、前記非現在時刻情報を補正した後、前記外部時刻情報に基づいて前記計時手段の示す現在時刻情報を補正する。
この発明によれば、非現在時刻情報を補正した後、正確な外部時刻情報に基づいて計時手段の示す現在時刻情報を補正するため、給電が停止されない限り、計時手段の示す現在時刻情報が正確に維持される。
【0009】
本発明の液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッド内の液体を吸引することにより該液体噴射ヘッドのクリーニングを行うクリーニング手段を備え、前記非現在時刻情報は、前回クリーニングを行った時刻である前回クリーニング時刻情報を含む。
【0010】
給電停止状態から給電が開始された場合、給電中にのみ時刻を計時する計時手段の示す現在時刻には狂いが生じている。このため、給電開始後における計時手段の示す現在時刻情報を補正する前にクリーニングが行われると、計時手段の示す狂いが生じた現在時刻情報に基づいて前回クリーニング時刻情報が更新されるため、この更新される前回クリーニング時刻情報も狂いが生じたものとなる。この点、この発明によれば、計時時刻情報補正手段により、正確な外部時刻情報に基づいて前回クリーニング時刻情報が補正されるため、該前回クリーニング時刻情報が正確な状態で更新される。
【0011】
本発明の液体噴射装置において、前記非現在時刻情報は、前回フラッシングを行った時刻である前回フラッシング時刻情報を含む。
この発明によれば、計時時刻情報補正手段により、正確な外部時刻情報に基づいて前回フラッシング時刻情報が補正されるため、該前回フラッシング時刻情報が正確な状態で更新される。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記非現在時刻情報は、給電が開始された時刻である給電開始時刻情報を含む。
この発明によれば、計時時刻情報補正手段により、正確な外部時刻情報に基づいて給電開始時刻情報が補正されるため、該給電開始時刻情報が正確な状態で更新される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が架設されている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモータ14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0015】
また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、キャリッジ16が、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。すなわち、キャリッジ16は左右方向に貫通形成された支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、このガイド軸15の長手方向に沿って往復移動自在に支持されている。
【0016】
また、フレーム12の後壁内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ18の出力軸が連結されるとともに、これら一対のプーリ17a,17b間には、キャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動可能となっている。
【0017】
キャリッジ16の下面側には液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられる一方、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対して液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に搭載されている。そして、インクカートリッジ20内のインクは、記録ヘッド19に備えられた圧電素子21(図2参照)の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給されるとともに、該記録ヘッド19に備えられた複数のノズル22(図2参照)からプラテン13上に給送された記録用紙Pに噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0018】
なお、フレーム12内の右端部に位置する記録用紙Pが至らないホームポジション領域(非印刷領域)には、非印刷時に記録ヘッド19のクリーニングを行うためのクリーニング手段23が設けられている。
【0019】
次に、クリーニング手段23について詳述する。
図2に示すように、クリーニング手段23は、有底四角箱状をなすキャップ24と、該キャップ24を昇降させるための昇降装置25とを備えている。そして、このクリーニング手段23は、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、キャップ24を昇降装置25により上昇させることで、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル22)をキャップ24により封止するようになっている。また、キャップ24の底壁からは突部26が下方に向かって突設されるとともに、該突部26内には、キャップ24内からインクを排出するための排出路26aが上下方向に貫通形成されている。
【0020】
突部26には、可撓性材料よりなる排出チューブ27の基端側(上流側)が接続されるとともに、該排出チューブ27の他端側(下流側)は、直方体状をなす廃インクタンク28内に挿入されている。また、キャップ24と廃インクタンク28との間における排出チューブ27の中間部には、キャップ24側から廃インクタンク28側へ向かってキャップ24内を吸引するための吸引ポンプ29が配設されている。
【0021】
そして、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル22)をキャップ24により封止した状態で吸引ポンプ29を駆動することで、各ノズル22から増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ24及び排出チューブ27を介して廃インクタンク28内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、廃インクタンク28内には、該廃インクタンク28内に排出されたインクを吸収保持する廃インク吸収材30が収容されている。
【0022】
次に、インクジェット式プリンタ11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、インクジェット式プリンタ11は、計時手段、計時時刻情報記憶手段、計時時刻情報補正手段としての制御部40を備えている。この制御部40には、クリーニング手段23によるクリーニング開始の契機を付与するために操作されるクリーニングスイッチSWが電気的に接続されている。このクリーニングスイッチSWは、例えばユーザにより操作された場合にクリーニング開始の契機となる操作信号を制御部40に出力するようになっている。
【0023】
また、制御部40には、紙送りモータ14、キャリッジモータ18、昇降装置25、及び吸引ポンプ29などが電気的に接続されている。そして、これら両モータ14,18、昇降装置25、及び吸引ポンプ29などは、それぞれの駆動状態が制御部40により制御されるようになっている。さらに、制御部40は、外部装置としてのホストコンピュータ50と通信可能な状態で接続されている。
【0024】
このホストコンピュータ50は、本体51と、キーボードやマウスなどの入力装置52と、表示部53とを備えている。本体51では、プログラムとCPU(図示略)とにより、コンピュータプログラムとしてのプリンタドライバ54が構築されている。このプリンタドライバ54は、画像データや文書データを印刷データに変換する処理、及び印刷データに用紙枚数や用紙サイズなどの設定情報を付する処理などを実行するようになっている。
【0025】
そして、プリンタドライバ54で変換された印刷データは、ホストコンピュータ50からインクジェット式プリンタ11に送信され、該インクジェット式プリンタ11のインターフェース41にて受信される。そして、制御部40は、受信した印刷データに基づいた印刷を記録用紙Pに対して行うために、紙送りモータ14やキャリッジモータ18などの駆動制御を行うようになっている。
【0026】
また、制御部40内には、インターフェース41、CPU42、ROM43、RAM44、時計45、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory )46、CLタイマ47及びFLタイマ48などが設けられている。ROM43には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各制御プログラムなどが記憶されている。RAM44には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0027】
EEPROM46には、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態(非給電状態)にされたとしても消去されるべきではない各種の情報(時計45により計時された後述する計時時刻情報)が記憶されるようになっている。また、時計45は、インクジェット式プリンタ11が電源オン状態(給電状態)である間は、時刻を計時するが、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態(非給電状態)である間は、時刻を計時しない。したがって、時計45が計時するプリンタ時刻(インクジェット式プリンタ11の制御部40が認識する現在時刻)は、実際の現在時刻と異なっている。
【0028】
そして、上述したホストコンピュータ50から送信される例えば印刷データを受信する際などにその時点の実際の現在時刻を示す正確な外部時刻情報を制御部40が受信した場合、制御部40は、その受信した外部時刻情報に基づき時計45にて計時されるプリンタ時刻を補正する。この場合、制御部40は、受信した外部時刻情報に基づき時計45にて計時されるプリンタ時刻が補正された際にTIフラグをオンにセットし、ホストコンピュータ50から送信される外部時刻情報を受信した際にTIフラグをオフにセットする。すなわち、TIフラグは、プリンタ時刻が補正されたか否かを示すものである。なお、インクジェット式プリンタ11の電源オン時において、TIフラグはオンにセットされる。
【0029】
さらに、EEPROM46には、時計45により計時された計時時刻情報のうちプリンタ時刻情報以外の時刻情報である非現在時刻情報として、前回クリーニングを行った時刻である前回クリーニング時刻情報、前回フラッシング(印刷開始前フラッシング)を行った時刻である前回フラッシング時刻情報、及びインクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた時刻である給電開始時刻情報が記憶されている。なお、EEPROM46には、時計45が計時するプリンタ時刻が常に更新されながら記憶されている。したがって、インクジェット式プリンタ11の電源をオフにしたときには、そのときの時計45が示すプリンタ時刻が電源オフ時刻としてEEPROM46の所定領域に記憶される。このため、インクジェット式プリンタ11の電源をオフ状態からオン状態にしたときには、プリンタ時刻が電源オフ時刻から再び計時されるため、インクジェット式プリンタ11の電源オフ時刻と電源オン時刻とは同じになる。
【0030】
また、CLタイマ47は、クリーニングが行われると0にリセットされて、クリーニングが行われてからの経過時間を1時間単位で最大65535時間までカウント可能なタイマである。なお、CLタイマ47は、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた場合には、クリーニングが行われない限り最大値(65535時間)で停止している。
【0031】
また、FLタイマ48は、印刷開始前フラッシングが行われると0にリセットされて、印刷開始前フラッシングが行われてからの経過時間を1時間単位で最大65535時間までカウント可能なタイマである。なお、FLタイマ48は、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた場合には、印刷開始前フラッシングが行われない限り最大値(65535時間)で停止している。
【0032】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、計時時刻情報を補正するための計時時刻情報補正処理ルーチンについて図4に示すフローチャートに基づき説明する。
【0033】
さて、制御部40は、所定周期毎(例えば、0.1秒毎)に計時時刻情報補正処理ルーチンを実行する。そして、この計時時刻情報補正処理ルーチンにおいて、制御部40は、TIフラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、ホストコンピュータ50から送信される外部時刻情報を受信していないと判断し、計時時刻情報補正処理ルーチンを終了する。
【0034】
一方、ステップS1の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、ホストコンピュータ50から送信される外部時刻情報を受信したと判断し、その処理を後述するステップS2に移行する。ステップS2において、制御部40は、インクジェット式プリンタ11の電源オン後にクリーニングを行っていないか否かを判定する(ステップS2)。すなわち、制御部40は、CLタイマ47が最大値であるか否かを判定する。ステップS2の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、その処理を後述するステップS3に移行する。
【0035】
一方、ステップS2の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、EEPROM46の所定領域から前回クリーニング時刻情報を読み出し、この読み出した前回クリーニング時刻情報に、外部時刻情報(実際の正確な現在時刻)からプリンタ時刻を減算したものを加算し、この計算結果を最新の前回クリーニング時刻情報として再びEEPROM46の所定領域に上書き記憶する(ステップS4)。すなわち、制御部40は、前回クリーニング時刻の補正を行う。続いて、制御部40は、ステップS4の処理を行ったことを示すCHフラグをオンにセットし(ステップS5)、その処理を後述するステップS3に移行する。
【0036】
ステップS3において、制御部40は、インクジェット式プリンタ11の電源オン後に印刷開始前フラッシングを行っていないか否かを判定する。すなわち、制御部40は、FLタイマ48が最大値であるか否かを判定する。ステップS3の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、CHフラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS6)。そして、制御部40は、ステップS6の判定結果が肯定判定である場合、その処理を後述するステップS7に移行し、ステップS6の判定結果が否定判定である場合、その処理を後述するステップS8に移行する。
【0037】
一方、ステップS3の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、EEPROM46の所定領域から前回フラッシング時刻情報を読み出し、この読み出した前回フラッシング時刻情報に、外部時刻情報(実際の正確な現在時刻)からプリンタ時刻を減算したものを加算し、この計算結果を最新の前回フラッシング時刻情報として再びEEPROM46の所定領域に上書き記憶する(ステップS7)。すなわち、制御部40は、前回フラッシング時刻の補正を行う。
【0038】
ステップS8において、制御部40は、EEPROM46の所定領域からインクジェット式プリンタ11の電源をオンにしたときの電源オン時刻を読み出し、この読み出した電源オン時刻に、外部時刻情報(実際の正確な現在時刻)からプリンタ時刻を減算したものを加算し、この計算結果を新たな電源オン時刻として再びEEPROM46の所定領域に上書き記憶する。すなわち、制御部40は、電源オン時刻(給電開始時刻情報)の補正を行う。
【0039】
続いて制御部40は、EEPROM46の所定領域からインクジェット式プリンタ11の電源オフ時刻を読み出し、この読み出した電源オフ時刻を、ステップS8において補正された電源オン時刻から減算することで、インクジェット式プリンタ11の電源オフ状態継続時間を算出する(ステップS9)。すなわち、制御部40は、インクジェット式プリンタ11の電源がオフにされていた時間を算出する。
【0040】
続いて制御部40は、プリンタ時刻を外部時刻情報(実際の正確な現在時刻)に合わせる(ステップS10)。すなわち、制御部40は、外部時刻情報に基づいてプリンタ時刻の補正を行う。続いて制御部40は、CHフラグをオフにセットする(ステップS11)。そして、制御部40は、TIフラグをオンにセットし(ステップS12)、その後、計時時刻情報補正処理ルーチンを終了する。
【0041】
以上のように、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた際には、時計45が電源オフ状態では停止しているため、該時計45が示すプリンタ時刻は、実際の現在時刻と異なる。すなわち、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた際には、時計45が示す時刻は実際の現在時刻に対して狂った状態になっている。
【0042】
この点、本実施形態では、制御部40により、正確な外部時刻情報に基づいて、前回クリーニング時刻情報、前回フラッシング時刻情報、及びインクジェット式プリンタ11の給電開始時刻情報が補正される。このため、時計45が示す時刻が狂っていても、これらの補正された各時刻情報を用いて他のシーケンス制御を行うことで、該シーケンス制御上の矛盾が生じなくなる。
【0043】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)給電中にのみ時刻を計時する時計45は、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた際には、該時計45が示すプリンタ時刻が、該インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態にされていた時間分だけ遅れる。このため、インクジェット式プリンタ11を電源オン状態にしたときの前回クリーニング時刻情報、前回フラッシング時刻情報、及びインクジェット式プリンタ11の給電開始時刻情報に狂いが生じる。この結果、これらの各時刻情報を用いて他のシーケンス制御を行った場合、該各時刻情報の狂いによって該シーケンス制御上の矛盾が生じてしまうことがある。この点、本実施形態によれば、時計45が示すプリンタ時刻が狂っていても、制御部40により、正確な外部時刻情報に基づいて各時刻情報(非現在時刻情報)を補正することができる。このため、制御部40によって補正された後の各時刻情報を用いて他のシーケンス制御を行うことで、該各時刻情報の狂いに起因する該シーケンス制御上の矛盾を解消することができる。
【0044】
(2)制御部40により、非現在時刻情報を補正した後、正確な外部時刻情報に基づいて時計45の示すプリンタ時刻を補正することができるので、インクジェット式プリンタ11の電源がオフにされない限り、時計45の示すプリンタ時刻を正確な状態に保つことができる。
【0045】
(3)インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態から電源オン状態にされた際には、給電中にのみ時刻を計時する時計45の示すプリンタ時刻には狂いが生じている。このため、インクジェット式プリンタ11の電源オン後における時計45の示すプリンタ時刻を補正する前にクリーニングが行われると、この狂いが生じたプリンタ時刻に基づいて前回クリーニング時刻情報が更新されるため、この更新される前回クリーニング時刻情報も狂いが生じたものとなる。この点、本実施形態によれば、プリンタ時刻が狂っていても、制御部40により、正確な外部時刻情報に基づいて前回クリーニング時刻情報が補正されるため、該前回クリーニング時刻情報を正確な状態で更新することができる。
【0046】
(4)(3)と同様に、制御部40により、正確な外部時刻情報に基づいて前回フラッシング時刻情報が補正されるため、該前回フラッシング時刻情報を正確な状態で更新することができる。
【0047】
(5)(3)と同様に、制御部40により、正確な外部時刻情報に基づいて給電開始時刻情報が補正されるため、該給電開始時刻情報を正確な状態で更新することができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0048】
・インクジェット式プリンタ11は、インクカートリッジ20をキャリッジ16とは離隔して配置し、該インクカートリッジ20から可撓性のチューブ等からなるインク供給路を介して、キャリッジ16に搭載された記録ヘッド19にインクを供給する、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタであってもよい。
【0049】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11として具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。また、そうした液体噴射装置において噴射される液体としては、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体を含む)であってもよい。例えば基板などをエッチングするために該基板上に液体を噴射する液体噴射装置にあっては、液体としてエッチング液を噴射するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略斜視図。
【図2】同プリンタのクリーニング手段の模式図。
【図3】同プリンタの電気的構成を示すブロック回路図。
【図4】計時時刻情報補正処理ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0051】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、23…クリーニング手段、40…計時手段、計時時刻情報記憶手段、計時時刻情報補正手段としての制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、給電中にのみ時刻を計時する計時手段と、該計時手段により計時された計時時刻を計時時刻情報として記憶する計時時刻情報記憶手段とを備えた液体噴射装置であって、
非給電状態から給電が開始された場合に、外部装置から送信される正確な外部時刻情報を受信し、該外部時刻情報に基づいて前記計時時刻情報のうち前記計時手段の示す現在時刻情報以外の時刻情報である非現在時刻情報を補正する計時時刻情報補正手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記計時時刻情報補正手段は、前記非現在時刻情報を補正した後、前記外部時刻情報に基づいて前記計時手段の示す現在時刻情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッド内の液体を吸引することにより該液体噴射ヘッドのクリーニングを行うクリーニング手段を備え、前記非現在時刻情報は、前回クリーニングを行った時刻である前回クリーニング時刻情報を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記非現在時刻情報は、前回フラッシングを行った時刻である前回フラッシング時刻情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記非現在時刻情報は、給電が開始された時刻である給電開始時刻情報を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23731(P2008−23731A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195311(P2006−195311)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】