説明

液体噴射装置

【課題】フラッシング時に液体噴射ヘッドのノズルから液体受容体に向けて廃液として噴射される液体の噴射範囲を制約することにより、ターゲットの搬送経路付近が汚れることを抑制できる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】用紙12の搬送経路の途中位置に配置された記録ヘッド29のノズルから廃インクとして噴射されるインクを受容可能なメンテナンスシート14をメンテナンスシートが前記搬送経路上のノズル形成面と対向する位置を通過するように搬送するシート搬送手段と、該手段により搬送されるメンテナンスシートがノズル形成面と対向する位置を通過するときに、メンテナンスシートのノズル形成面に対する対向面における移動方向の縁部を除く中央部分に設定された一定範囲のインク受容領域40内にノズルからインクが噴射されるように、記録ヘッド29のノズルからのインク噴射タイミングを制御する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関し、より詳しくは、液体噴射ヘッドから廃液として噴射される液体を液体噴射ヘッドのノズル形成面と対向する位置に搬送される液体受容体により受容可能とした液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が知られている。このプリンタは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に供給されるインク(液体)を記録ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから記録用紙(ターゲット)に向けて噴射することにより印刷を行っている。こうしたプリンタでは、ノズルからインクが噴射されない状態が連続して長時間に亘ると、ノズルにおけるインクメニスカスの表面が乾燥してインクの噴射不良が生じてしまう虞がある。そのため、こうしたプリンタでは、非印刷時に印刷とは無関係の制御信号に基づきノズルからインクを強制的に噴射させる、所謂フラッシングを行うようにしている。
【0003】
ここで、印刷時に記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って往復移動しながらインクを噴射するシリアル方式又はラテラル方式のプリンタの場合には、非印刷時に記録ヘッドを記録用紙から外れたフラッシング位置に移動させ、その位置に配設されたキャップやフラッシングボックスなどに向けてフラッシングが行われる。しかし、記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って移動することなく記録用紙の搬送経路の途中に記録用紙の搬送方向と直交する方向に用紙幅全体に亘るように配置されたラインヘッド方式のプリンタの場合には、記録ヘッドを記録用紙から外れたフラッシング位置に移動させることができない。
【0004】
そこで、ラインヘッド方式のプリンタでは、一般に、記録ヘッドから噴射されたインクを受容可能なシート状のインク受け部材(液体受容体)を、同部材専用の搬送機構により記録ヘッドのノズル形成面と対向する位置に記録用紙の搬送タイミングとは異なるタイミングで搬送するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
すなわち、特許文献1のプリンタでは、無端状の搬送ベルト(ターゲット搬送手段)により記録用紙を記録ヘッドのノズル形成面と平行な搬送平面に沿って上流側から下流側に搬送し、記録用紙がノズル形成面の下方を通過する時点で印刷のためのインク噴射を行うようにしている。また、搬送ベルトの左右両側に、左右一対の無端状のチェーン等からなる輪状体(移動部材)を、その周回状をなす移動経路の一部が搬送ベルトによる記録用紙の搬送経路とオーバーラップするように設け、その両輪状体間にシート状をなすインク受け部材(液体受容体)が弾性変形可能なワイヤ状の接続部材(支持部材)を介して展張状態に支持されている。そして、輪状体の周回運動に伴いインク受け部材が周回移動して記録ヘッドのノズル形成面と対向する位置を通過するときには、インク受け部材がノズル形成面と対向した位置態様となり、記録ヘッドのノズルからフラッシングのために噴射されたインクを受容するようにしている。
【特許文献1】特開2006−272554号公報(図14,図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フラッシング時には、記録ヘッドのノズルから廃インクがインク受け部材に向けて噴射されるが、その場合には、廃インクをインク受け部材の全面に亘って広範囲にばらけるように噴射する技術が一般的である。しかしながら、そのようにして噴射された廃インクを受容したインク受け部材を輪状体の周回運動によってノズル形成面と対向する位置の下流側まで搬送し、その位置で払拭部材等をインク受け部材のインク付着面に摺接させてインクを拭き取るようにした場合には、次のような不具合がある。
【0007】
すなわち、フラッシング時に噴射されたインクがインク受け部材の縁部やその縁部付近に付着した場合には、その付着インクを払拭するべく払拭部材がインク受け部材のインク付着面に摺接すると、払拭部材により付着インクが縁部の外側に押し出されて裏側に回り込んだり飛散したりしてしまう可能性がある。そして、そのインク受け部材が次回のフラッシング時に再びノズル形成面と対向する位置まで搬送されるときに搬送ベルトの表面にインク受け部材の裏側を接触させることで搬送ベルトの表面を汚してしまい、その結果、その搬送ベルトの表面に載置されて搬送されるターゲットを汚してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラッシング時に液体噴射ヘッドのノズルから液体受容体に向けて廃液として噴射される液体の噴射範囲を制約することにより、ターゲットの搬送経路付近が汚れることを抑制できる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、ターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記ノズルから廃液として噴射される液体を受容可能な液体受容体を該液体受容体が前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置を通過するように搬送する液体受容体搬送手段と、該液体受容体搬送手段により搬送される前記液体受容体が前記ノズル形成面と対向する位置を通過するときに、前記液体受容体の前記ノズル形成面に対する対向面における移動方向の縁部を除く中央部分に設定された一定範囲の液体受容領域内に前記ノズルから前記液体が噴射されるように、前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体噴射タイミングを制御する制御手段とを備えた。
【0010】
この構成によれば、液体受容体がノズル形成面と対向する位置を通過するときには、制御手段により液体噴射ヘッドのノズルからの液体噴射タイミングが制御されるので、ノズルから廃液として噴射された液体は液体受容体の対向面における移動方向の縁部を除く中央部分に設定された一定範囲の液体受容領域で受容される。そのため、液体受容体の縁部に液体が付着した後に対向面の裏側に回り込んだり、液体受容体の縁部の外側へ液体が飛散したりすることを抑制可能となり、ターゲットの搬送経路付近が汚れたりすることを回避できる。
【0011】
また、本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記液体受容体搬送手段により前記液体受容体が搬送される経路上において前記ノズル形成面と対向する位置よりも上流側に設定される基準位置を前記液体受容体が通過してから該液体受容体の前記液体受容領域が前記ノズル形成面と対向する位置に至るまでに要する所要時間の経過した時点で前記ノズルから液体が噴射されるように、前記ノズルからの液体噴射タイミングを制御する。
【0012】
この構成によれば、液体受容体搬送手段によってノズル形成面と対向する位置に向けて上流側から搬送される液体受容体の液体受容領域がノズル形成面と対向する位置に至ったときにノズルから液体が噴射されるので、液体受容体は、その対向面の中央部分に設定された液体受容領域内で正確に液体を受容することができる。
【0013】
また、本発明の液体噴射装置において、前記液体受容体搬送手段により前記液体受容体が搬送される経路上において前記ノズル形成面と対向する位置よりも下流側には、その経路に沿って下流側に搬送される前記液体受容体の前記液体受容領域が設定された面にクリーニング部材を接触させてクリーニングを施すクリーニング手段が配設されている。
【0014】
この構成によれば、クリーニング手段により液体受容体の液体受容領域に付着している液体を払拭できるため、その液体受容体の再利用が可能となる。
また、本発明の液体噴射装置において、前記クリーニング手段は、前記クリーニング部材を前記液体受容体の前記液体受容領域が設定された面における移動方向の縁部を除く領域に対して接触させる。
【0015】
この構成によれば、液体受容体の液体受容領域が設定された面において、クリーニング部材が接触する領域が縁部を除く領域となるので、そのクリーニング部材の接触に伴う払拭作用により液体受容体に付着している液体が押し出されて液体受容体の縁部から零れ落ちることを抑制できる。
【0016】
また、本発明の液体噴射装置において、前記基準位置には、該位置を前記液体受容体が通過した場合に検出信号を出力する検出手段が配設されており、前記制御手段は、前記検出手段から出力された検出信号を入力した場合、その時点での液体受容体搬送手段による液体受容体の搬送速度と前記検出手段の配設位置から前記ノズル形成面に形成された各ノズルの位置までの距離とに基づき前記所要時間を演算する。
【0017】
この構成によれば、液体受容体搬送手段によって搬送方向の下流側に向けて搬送される液体受容体がノズル形成面と対向する位置に接近して検出手段の配設位置を通過すると、検出手段から検出信号が出力され、その検出信号を入力した制御手段が液体噴射ヘッドのノズルからの液体噴射タイミングを演算により求めて制御する。したがって、液体受容体は、その対向面の中央部分に設定された液体受容領域内で正確に液体を受容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」をいう場合は、図1〜図8において矢印で示した方向を基準とするものとする。
【0019】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下「プリンタ」という。)11は、用紙(ターゲット)12を搬送するために駆動される用紙搬送機構(ターゲット搬送手段)13と、メンテナンスシート(液体受容体)14を搬送するために駆動されるシート搬送機構(液体受容体搬送手段)15を備えている。
【0020】
用紙搬送機構13には、用紙搬送モータ(第1駆動源)16(図10参照)の駆動力に基づき左右方向に沿う軸線を中心に回転駆動する駆動プーリ17と、駆動プーリ17の後方において駆動プーリ17と同一高さ位置で駆動プーリ17の軸線と平行な軸線を中心に回転自在な従動プーリ18が設けられている。また、駆動プーリ17と従動プーリ18の各下方位置には、両プーリ17,18の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に且つ軸中心が下方に向けて移動するように付勢された2つのテンションプーリ19,20が設けられている。そして、これらの各プーリ17〜20は、各々の軸部17a,18a,19a,20aの両端部が左右方向に平行な態様で設けられた1対の支持板21,22(図2、図3参照)によって支持されている。
【0021】
図1に示すように、用紙搬送機構13における各プーリ17〜20には、無端状の搬送ベルト(ターゲット搬送部材)23が各テンションプーリ19,20によりテンションを加えられた状態で略四角環状の周回経路を形成するように掛装されている。そして、この搬送ベルト23は、駆動プーリ17の回転駆動に伴い図1において反時計回り方向に周回移動することにより、用紙12を図1に白抜き矢印で搬送方向Xとして示す前方に向けて搬送するように構成されている。すなわち、用紙搬送機構13は、従動プーリ18よりも後方に位置する図示しない給紙トレーから搬送ベルト23上に給紙された用紙12を、搬送ベルト23の周回移動に伴い前方に向けて搬送することにより、駆動プーリ17よりも前方に位置する図示しない排紙トレーに排出する。
【0022】
また、図2に示すように、用紙搬送機構13における左右両支持板21,22のうち、左側に位置する第1支持板(支持体)21は、プリンタ11の本体フレーム(図示略)に対してシート搬送機構15の機構部分を避けた位置で着脱自在に組み付けられている。その一方、右側に位置する第2支持板22はプリンタ11の本体フレーム(図示略)に対して取り外し不能に固定されている。そして、各プーリ17〜20の各軸部17a〜20aは、それらの各左端が第1支持板21に設けられた軸受け部(図示略)に対して各プーリ17〜20の回転自在状態を維持しつつ挿抜不能に支持される一方、それらの各右端が第2支持板22に設けられた孔又は穴からなる軸受け部(着脱部)22aに対して挿抜可能な状態で支持されている。
【0023】
すなわち、用紙搬送機構13は、第1支持板21をユーザが把持して左右方向へ移動させることにより、その第1支持板21と各プーリ17〜20及び搬送ベルト23が一体的取り扱い可能に構成されてなる機構ユニット13Aが、プリンタ11に対して着脱自在とされている。そして、その着脱時には、把持部としても機能する第1支持板21を把持しつつ、機構ユニット13A全体を着脱部となる軸受け部22aの軸方向に沿って移動させることにより、着脱作業が実行可能とされている。
【0024】
図1及び図3に示すように、駆動プーリ17と従動プーリ18の間となる位置であって且つ左右両支持板21,22の間となる位置には、プラテン24が平面状に形成された上面を駆動プーリ17及び従動プーリ18における各周面の最上部と同じ高さ位置となるようにして配設されている。そして、搬送ベルト23が周回運動した場合には、搬送ベルト23において用紙12を載置して搬送方向Xに搬送するベルト部分の裏面が、プラテン24の上面に対して摺接するようになっている。
【0025】
図3に示すように、搬送ベルト23は、その左右幅が用紙12の左右幅よりも幅広に形成されており、駆動プーリ17と従動プーリ18の間でプラテン24上を摺動するベルト部分により用紙12の搬送経路が構成されると共に、そのベルト部分の表面23aにより用紙12が搬送方向Xに搬送される際の搬送平面が構成されている。そして、搬送ベルト23には、その表面23aとプラテン24の上面に摺接する裏面との間を貫通するように多数の円形状をなす通気孔25が形成されている。なお、これらの各通気孔25は、前後方向及び左右方向に等間隔をおいて格子状配置となるように規則的に形成されている。
【0026】
一方、プラテン24には、プラテン24を上下方向(プラテン24の厚み方向)に貫通する多数の吸引孔26が形成されている。各吸引孔26は搬送ベルト23の各通気孔25と左右方向においては各々対応した位置であって且つ前後方向においては各通気孔25よりも広い(例えば約3倍程度)間隔をおいた位置に形成されている。なお、各吸引孔26における上面側の開口は前後方向に沿う長溝状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、プラテン24の下側には、各吸引孔26内を吸引するための箱体状をなす吸引部27が、プラテン24の下面側における各吸引孔26の開口を覆うように設けられ、吸引部27内には複数(本実施形態では3つ)のファン28が設けられている。そして、ファン28の駆動に伴い各吸引孔26内が吸引されて負圧になることで、搬送ベルト23上に載置された状態にある用紙12には、各吸引孔26の長溝状の開口を介して連通した通気孔25を通じて下向きの吸引力が付与されるようになっている。
【0028】
また、図1及び図3に示すように、プラテン24の前側部分と対応する位置であって且つ搬送ベルト23の上側となる位置(搬送経路の途中位置)には、液体としてのインクを噴射可能な記録ヘッド(液体噴射ヘッド)29が、その下面となるノズル形成面29aを搬送ベルト23の表面23aに対向させた状態で配設されている。この記録ヘッド29は、その長手方向が用紙12の搬送方向Xと直交(交差)する左右方向に沿って延びるように配設されると共に、その長手方向の寸法が用紙12の幅方向(左右方向)の寸法よりも長く形成されている。
【0029】
そして、この記録ヘッド29のノズル形成面29aには、多数のノズル30が、用紙12の幅方向(左右方向)全体に亘って複数のノズル列(図1には4列図示)を搬送方向X(前後方向)に所定間隔をおいて配列するように形成されている。すなわち、この記録ヘッド29は、ノズル形成面29aと対向する位置を搬送方向Xに向けて通過する用紙12に対して、用紙12の幅方向全体に亘るようにインクを噴射することにより印刷を施す、いわゆるフルラインタイプの記録ヘッド(ラインヘッド)により構成されている。なお、記録ヘッド29のノズル形成面29aと搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)との間は、ノズル形成面29aの各ノズル30から用紙12の表面に向けてインクが噴射された際にインク滴が用紙12の意図された位置に確実に着弾するように、僅かな(例えば1mm程度の)隙間に設定されている。
【0030】
次に、シート搬送機構15には、図1に示すように、プラテン24を挟んで記録ヘッド29とは反対側となる下方であって且つ用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路よりも下方となる位置に、シート搬送モータ(第2駆動源)31(図10参照)の駆動力に基づき用紙搬送機構13の各プーリ17〜20と平行な軸線を中心に回転駆動する駆動スプロケット32が設けられている。
【0031】
また、用紙搬送機構13における駆動プーリ17の前方となる位置及び従動プーリ18の後方となる位置には前後一対の従動スプロケット33,34が駆動スプロケット32の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に設けられている。さらに、駆動スプロケット32と後側の従動スプロケット34との間には、中継スプロケット35と、軸中心が上方に向けて移動するように付勢されたテンションスプロケット36とが、駆動スプロケット32の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に設けられている。
【0032】
各スプロケット32〜36は、用紙搬送機構13の左右各外側(具体的には、各プーリ17〜20を軸支する左右両支持板21,22の左右各外側)となる位置に、それぞれが同軸配置で左右一対となるように設けられている。そして、図1に示すように、左右一対の各スプロケット32〜36には、無端状のチェーン(移動部材、鎖部材)37がテンションスプロケット36によりテンションを加えられた状態で、用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路の外回りで周回状をなすように掛装されている。
【0033】
すなわち、シート搬送機構15は、用紙搬送機構13における用紙搬送モータ16を駆動源として周回移動する搬送ベルト23の周回経路の外側に、用紙搬送モータ16とは別のシート搬送モータ31を駆動源としてチェーン37が周回状の移動経路に沿って移動するように設けられている。そして、このチェーン37は駆動スプロケット32の回転駆動に伴い図1において反時計回り方向に周回移動するようになっている。なお、図4に示すように、チェーン37は、前後両従動スプロケット33,34間では、記録ヘッド29のノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる上方であって且つ用紙搬送機構13における左右両支持板21,22の上端面よりも上方となる空間域を用紙12の搬送経路に沿って移動するようになっている。
【0034】
図3及び図4に示すように、この2本のチェーン37間には、複数(本実施形態では、前後一対)の剛性を有する帯状の板金部材(支持部材)38,39が、チェーン37の周回移動方向において、記録ヘッド29におけるノズル形成面29aの前後方向幅よりも大きな間隔をおいて架設されている。具体的には、チェーン37を連鎖状に形成する複数の剛性を有した連結片37aのうち、チェーン37の周回移動方向において前記間隔に相当する距離だけ離間した2つの連結片37aに対して、各板金部材38,39の両端部(連結部)38a,39aが連結されている。
【0035】
図4に示すように、各板金部材38,39は、その長手方向における中間部(支持部)38b,39bが両端部38a,39aから若干内側となる位置(具体的には左右各支持板21,22の内側位置)で両端部38a,39aよりもチェーン37の周回状をなす移動経路(周回経路)の内周側において直線状をなすようにクランク状に屈曲されている。すなわち、各板金部材38,39は、チェーン37が周回移動する際、チェーン37の連結片37aに連結された両端部38a,39aよりも中間部38b,39bの方が周回経路の内周側を移動するように構成されている。
【0036】
その結果、チェーン37の周回移動に伴って各板金部材38,39が従動スプロケット33,34の外周と対応する円弧状の曲線経路部分を通過する際には、内輪差に基づき、内周側を移動する中間部38b,39bの方が外周側を移動する両端部38a,39aよりも周回移動方向への移動速度が遅くなる構成となっている。換言すると、各板金部材38,39は、その周回移動途中で、前後両従動スプロケット33,34間などの直線経路部分を通過するときには、中間部38b,39b及び両端部38a,39aが等速度で移動する。その一方、この直線経路部分の上流側及び下流側において該直線経路部分に連続形成された円弧状の曲線経路部分を通過するときには、中間部38b,39bと両端部38a,39aとの間で速度差が発生するようになっている。
【0037】
また、図3及び図4に示すように、各板金部材38,39は、チェーン37の周回移動に伴い用紙12の搬送経路に沿って搬送方向Xに移動する場合には、両端部38a,39aよりも内側の中間部38b,39bが前記搬送方向Xと直交(交差)する方向であって且つ搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)に沿う方向に直線状に延びた状態となる。そして、この搬送方向Xへの移動時には、チェーン37の連結片37aに連結された両端部38a,39aがノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる空間域を移動する一方、中間部38b,39bがノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a側となる空間域を移動するように構成されている。なお、その場合、各板金部材38,39の直線状をなす中間部38b,39bは搬送ベルト23の表面23aに対して極僅かな(例えば、1mm以下の)隙間を形成して近接するように形成されている。そして、このような両板金部材38,39の各中間部38b,39bに対して撥水性及び可撓性を有したシート体14Aからなるメンテナンスシート14が支持されている。
【0038】
図5に示すように、メンテナンスシート14は、一枚のシート体14Aからなり、そのシート体14Aが各板金部材38,39に対して前側(この場合、最前)の板金部材38の中間部38bから後側(この場合、最後)の板金部材39の中間部39bまでを包み込む無端状をなすように巻き掛けられている。そして、メンテナンスシート14は、その巻き掛け状態において周回状の移動経路に沿って移動したときに内周側(図5において下側)となる側でシート体14Aの両端同士が重合されると共に、その重合部分14aが接着されることにより、両板金部材38,39の中間部38b,39bにより無端状の展張状態となるように支持されている。すなわち、メンテナンスシート14は、チェーン37の周回移動に伴い両板金部材38,39により展張状態に支持されつつ記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置態様となったときに記録ヘッド29のノズル30から廃インク(廃液)として噴射されたインクを受容可能となっている。
【0039】
また、このようにメンテナンスシート14が記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を展張状態となって通過する際には、板金部材38,39の中間部38b,39bとノズル形成面29aとの間にメンテナンスシート14のシート体14Aが介在することになる。そのため、もし仮に、板金部材38,39の中間部38b,39bが移動時に上下方向に振動するようなことがあっても、記録ヘッド29のノズル形成面29aに対して板金部材38,39の中間部38b,39bが直接接触することはない。また、記録ヘッド29から噴射された液体が板金部材38,39の中間部38b,39bに付着することもない。
【0040】
また、メンテナンスシート14は、搬送方向Xにおいて前側となる第1板金部材38の中間部38bに対して無端状をなすシート体14Aの移動方向で前端部分の内面側が接着される一方、搬送方向Xにおいて後側となる第2板金部材39の中間部39bに対してはシート体14Aの内面側が接着されない支持状態とされている。すなわち、メンテナンスシート14は、その移動方向の前端部分が最前の第1板金部材38に対して周回移動方向において位置決め支持状態に固着される一方、その移動方向の前端部分よりも後端側の部分が後側の第2板金部材39に対して周回移動方向において摺動可能な状態に支持されている。
【0041】
また、メンテナンスシート14における周回移動の際に外周側(図5において上側)となる面であってノズル形成面29aに対する対向面となるインク受容面(液体受容面)14bの搬送方向Xの略中央部には、そのインク受容面14bにおける縁部の内側にインク受容領域(液体受容領域)40が左右方向に細長い矩形状をなすように設定されている。なお、このインク受容領域40の部分は、メンテナンスシート14が可撓性を有しているため前後両端の縁部(板金部材38,39の中間部38b,39bと対応する部分)よりも内周側に若干撓んでいる(図5参照)。そして、記録ヘッド29からメンテナンスシート14に向けて噴射される廃インクは、このインク受容領域40において受容されるように、制御手段としての制御装置41(図10参照)がメンテナンスシート14を搬送するチェーン37の移動速度及び記録ヘッド29からのインク噴射タイミングを制御するようになっている。
【0042】
すなわち、図1,図3及び図4に示すように、記録ヘッド29よりも用紙12の搬送方向Xの後方側であって且つ右側の第2支持板22の上方となる位置には、光センサ(検出手段)42が配設されている。この光センサ42は、第2支持板22の上端面に向けて光を投光すると共に、その光が第2支持板22の上端面から反射された場合には、その反射光を受光する投受光センサにより構成されている。そして、その光センサ42の下方を左右両チェーン37間に架設された板金部材38,39の両端部38a,39aが通過して前記光が遮光された場合に、メンテナンスシート14を支持した板金部材38,39が光センサ42の配設位置を通過したことを示す検出信号を制御装置41に向けて出力するようになっている。
【0043】
また、図5に示すように、メンテナンスシート14において両板金部材38,39の間に展張された場合に内周側(図5において下側)となる面は、例えば多数の繊維がブラシ状に起毛されたブラシ面(清掃機能面)43となっている。そして、図1に示すように、メンテナンスシート14は、チェーン37の周回経路上において用紙搬送機構13における後側のテンションプーリ20と対応する待機位置Pで停止した場合には、そのテンションプーリ20に巻き掛けられた搬送ベルト23の表面23aに対してブラシ面43が払拭可能に摺接するようになっている。すなわち、メンテナンスシート14のブラシ面43は、周回移動する搬送ベルト23の表面23aに対して速度差を持って摺接することにより搬送ベルト23の表面23aを払拭可能な清掃機能を発揮する。
【0044】
図1及び図6〜図8に示すように、シート搬送機構15における前側及び後側の各従動スプロケット33,34と対応する位置であって且つ左右両チェーン37の間となる位置には、前後一対の案内板(案内手段)44,45が設けられている。各案内板44,45は、金属製の板材からなり、それぞれの断面形状が対応する従動スプロケット33,34に噛み合う各チェーン37の円弧状をなす曲線経路部分に沿った形状となるように曲げ形成されている。すなわち、各案内板44,45は、その内周面(係合部)44a,45aが各チェーン37の円弧状をなす曲線経路部分の経路方向に沿った凹曲面状をなすように形成されている。なお、図示はしないが、各案内板44,45はプリンタ11の本体フレームに対してブラケットを介して支持されている。
【0045】
図6及び図7に示すように、後側の従動スプロケット34と対応する上流側案内板44は、一枚の剛性を有する略矩形状の板材からなり、その板材の上端縁からは用紙12の左右幅よりも幅広であって且つ板金部材38,39の中間部38b,39bの左右長さよりも短い開口幅の切り欠き部(ターゲット通過部)46が形成されている。この切り欠き部46は、給紙トレー側から搬送ベルト23上に給紙される用紙12の通過を許容するためのものであり、切り欠き部46の左右両側には左右一対の突片部47が形成されている。
【0046】
そして、メンテナンスシート14を支持した板金部材38,39が、その周回移動途中で従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39の中間部38b,39bがシート体14Aを介して上流側案内板44の内周面44aに係合することにより移動方向をガイドされるようになっている。つまり、円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39及びその板金部材38,39に展張状態で支持されたメンテナンスシート14が遠心力の作用により外方に向けて変形しようとするが、上流側案内板44の内周面44aにより板金部材38,39及びメンテナンスシート14の外方への変形が抑制されるようになっている。
【0047】
一方、図4及び図8に示すように、前側の従動スプロケット33と対応する下流側案内板45は、上流側案内板44の突片部47と同じ左右幅の二枚の剛性を有する略矩形状の板片により構成されている。この二枚の下流側案内板45は、左右方向で対向する互いの内側縁間の距離が上流側案内板44における切り欠き部46の開口幅と同じとなるように左右方向に離間した状態に配置されている。そのため、搬送ベルト23上から排紙トレー側へ排出される用紙12は左右の両下流側案内板45間の空間領域45bを通過可能であり、この点で下流側案内板45は両者の内側縁間の空間領域45bがターゲット通過部として機能する。また、メンテナンスシート14を支持した板金部材38,39が、その周回移動途中で従動スプロケット33の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39の中間部38b,39bがシート体14Aを介して両案内板45の内周面45aに係合することにより移動方向をガイドされるようになっている。
【0048】
また、図1に示すように、シート搬送機構15におけるチェーン37の周回経路の外側であって且つ用紙搬送機構13における前側のテンションプーリ19の前側斜め下方となる位置(ノズル形成面29aと対向する位置よりも下流側のクリーニング位置)には、クリーニング機構(クリーニング手段)48が設けられている。図9(a)〜(d)に示すように、クリーニング機構48は、テンションプーリ19の軸線と平行な軸線を中心にして、切り替え手段及び回転駆動手段として機能するクリーニングモータ49(図10参照)の駆動力に基づき回転して変位するクリーニングローラ(クリーニング部材)50を備えている。クリーニングローラ50は、少なくとも周面側の部分が吸液性を有する材料で構成されると共に、その軸線と直交する断面の形状がD字状となるように形成されている。
【0049】
換言すると、クリーニングローラ50は、その周面が円筒面状をなす円弧部51と平面状をなす弦部52により構成されている。すなわち、クリーニングローラ50においては軸部50aと円弧部51の周面との距離L1の方が軸部50aと弦部52の周面との距離L2よりも長くなっている。そして、この距離L1と距離L2との差は、シート搬送機構15における板金部材38,39の中間部38b,39bの厚みとメンテナンスシート14を構成するシート体14Aの二枚分の厚みとの合計厚みL3よりも大きくなる(つまり、L1−L2>L3となる)ように設定されている。
【0050】
クリーニングローラ50は、その軸部50aが図示しない本体フレームのブラケットに形成された長溝53に挿入されることにより支持されている。この長溝53は、その長手方向がクリーニングローラ50の軸部50aとテンションプーリ19の軸部19aとを結ぶ直線に沿って延びるように図示しない本体フレームのブラケットに形成されている。また、クリーニングローラ50の軸部50aには、基端側を本体フレームのブラケットに支持された状態で長溝53の長手方向に沿って収縮可能なばね部材(付勢手段)54の先端側が取り付けられている。そして、図9(a)(b)に示すように、クリーニングローラ50は、通常状態では、その軸部50aが長溝53内において最もテンションプーリ19側となる第1位置に静止するように未収縮状態のばね部材54によって保持されている。
【0051】
そして、その通常状態において、図9(a)に示すように、クリーニングローラ50は円弧部51がテンションプーリ19側に向いたクリーニング姿勢態様になった場合には、軸部50aが長溝53内の第1位置にあって、円弧部51の周面がテンションプーリ19に巻き掛けられている搬送ベルト23の表面23aに当接するようになっている。すなわち、周回移動する搬送ベルト23の表面23aに対してクリーニングローラ50の円弧部51の周面が摺接することにより、搬送ベルト23の表面23aが払拭されるようになっている。なお、この場合、搬送ベルト23は、挟持部材として機能するテンションプーリ19とクリーニングローラ50の円弧部51との間に挟持された状態となる。
【0052】
また、その通常状態において、図9(b)に示すように、クリーニングローラ50は弦部52がテンションプーリ19側に向いた非クリーニング姿勢態様になった場合には、同様に軸部50aが長溝53内の第1位置にあっても、弦部52の周面はテンションプーリ19に巻き掛けられている搬送ベルト23の表面23aに当接しないようになっている。そして、その状態においては、チェーン37の周回移動に伴い移動するメンテナンスシート14にも弦部52の平面状をなす周面は当接しないようになっている。この点で、クリーニングローラ50における弦部52は、その周面がメンテナンスシート14に対して接触不可能な非クリーニング機能部として機能する。
【0053】
その一方、図9(c)(d)に示すように、クリーニングローラ50は、円弧部51がテンションプーリ19側に向いたクリーニング姿勢態様になった場合において、その円弧部51とテンションプーリ19との間にメンテナンスシート14が搬送されてきた場合には、そのメンテナンスシート14の外周側の面であるインク受容面14bに当接するようになっている。すなわち、メンテナンスシート14との当接により軸部50aがばね部材54を収縮させながら長溝53内においてテンションプーリ19から離間した第2位置に移動すると共に、円弧部51の周面が周回移動するメンテナンスシート14の外周側の面に接触することにより、メンテナンスシート14のインクが付着した面を払拭可能となっている。この点で、クリーニングローラ50における円弧部51は、その周面がメンテナンスシート14に対して接触可能なクリーニング機能部として機能する。なお、この場合、メンテナンスシート14は、収縮したばね部材54の付勢力でもって挟持部材として機能するテンションプーリ19とクリーニングローラ50の円弧部51との間に挟持された状態となる。
【0054】
次に、プリンタ11における制御構成について図10を参照しながら説明する。
図10に示すように、プリンタ11の稼動状態を統括制御する制御装置(制御手段)41は、入力側インターフェース(図示略)と、出力側インターフェース(図示略)と、CPU55、ROM56、RAM57などを備えたデジタルコンピュータを主体として構成されている。入力側インターフェースには、光センサ42及びプリンタ11の本体フレームの表面に設けられたタッチ入力方式の操作パネル(入力手段)58が電気的に接続されている。また、出力側インターフェースには、記録ヘッド29からインクを噴射するときに駆動される圧電素子59、用紙搬送モータ16、ファン28、シート搬送モータ31、及びクリーニングモータ49がそれぞれ電気的に接続されている。
【0055】
また、制御装置41において、ROM56には、各機構(圧電素子59、用紙搬送モータ16等)を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM57には、プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報(光センサ42の検出信号など)が記憶されるようになっている。そして、制御装置41は入力側の光センサ42及び操作パネル58から入力される信号に基づいて出力側の各機構(圧電素子59、用紙搬送モータ16等)を各別に制御するようになっている。
【0056】
また、図1に示すように、シート搬送機構15においてメンテナンスシート14を搬送するために周回移動するチェーン37の周回経路上には、その経路に沿ってメンテナンスシート14を移動させる目的を異にする複数の経路部Z1〜Z3が設定されている。
【0057】
まず、メンテナンスシート14がテンションプーリ20との間に搬送ベルト23を挟んだ状態となる待機位置Pよりもチェーン37の周回移動方向の下流側であって且つ前後両従動スプロケット33,34の間となる経路部は、ノズル形成面29aと対向する位置を含む第1経路部Z1とされている。そして、第1経路部Z1では、メンテナンスシート14が搬送ベルト23上に順次に給紙される先行用紙12と後続用紙12との間に割り込み配置された状態(図3参照)で、搬送ベルト23の表面23a上に負圧により吸着されつつ、搬送方向Xに搬送されて記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を通過するようになっている。すなわち、第1経路部Z1では、記録ヘッド29からフラッシングのために噴射(吐出)された廃インクがノズル形成面29aと対向する位置を通過するメンテナンスシート14により受容されるようになっている。
【0058】
次に、チェーン37の周回経路上において、前側の従動スプロケット33と下方の駆動スプロケット32との間には、メンテナンスシート14をクリーニング機構48によってクリーニングするための第2経路部Z2が第1経路部Z1との間に所定間隔を有して設定されている。この第2経路部Z2は、メンテナンスシート14がクリーニングローラ50の円弧部51との当接を開始した時点(図9(c)に示す時点)から当接を終了する時点(図9(d)に示す時点)までの間にメンテナンスシート14が移動する領域を少なくとも含む長さに設定されている。
【0059】
そして、チェーン37の周回経路上において、第2経路部Z2と待機位置Pとの間は、第2経路部Z2においてクリーニングされたメンテナンスシート14を再利用のために待機位置Pに向けて戻し搬送する第3経路部Z3とされている。すなわち、メンテナンスシート14は、待機位置Pからチェーン37の周回移動に伴い第1経路部Z1、第2経路部Z2、及び第3経路部Z3を順次に経由して待機位置Pに戻り、その待機位置Pで次回のフラッシング時まで停止状態にて待機するようになっている。
【0060】
次に、上記のように構成された本実施形態のプリンタ11の作用について、印刷途中にフラッシングが行われる場合を中心に説明する。
さて、プリンタ11において用紙12に印刷を施す印刷時には、図示しない給紙トレーから搬送ベルト23上に用紙12が所定間隔をおいて順次に給紙される。なお、その際において、用紙12は、図6に示すように、上流側案内板44の切り欠き部(ターゲット通過部)46を通過して搬送ベルト23上に給紙される。すると同時に、制御装置41が、用紙搬送モータ16とファン28を駆動させ、搬送ベルト23はその表面23a(搬送平面)上に用紙12を負圧に基づき吸着保持した状態で搬送方向Xの下流側に搬送する。
【0061】
そして、その用紙12が記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を通過する時点になると、制御装置41が記録ヘッド29内の圧電素子59を駆動する結果、記録ヘッド29のノズル30から印刷のためのインクが用紙12の表面に向けて噴射される。その後、記録ヘッド29からのインク噴射により印刷が施された用紙12は、搬送ベルト23の周回移動に伴い搬送方向Xの下流側に更に搬送され、図8に示すように、左右両下流側案内板45の内側縁間の空間領域(ターゲット通過部)45bを通過して排紙トレーに排出される。
【0062】
以上のような印刷時において、クリーニング機構48は、図9(a)に示すように、クリーニングローラ50における円弧部51の周面がテンションプーリ19の周面との間に搬送ベルト23を挟んで同搬送ベルト23の表面23aに当接した通常状態にある。したがって、搬送ベルト23において用紙12の吸着搬送を終えた駆動プーリ17よりも周回移動方向で下流側となるベルト部分は、その周回移動に伴いテンションプーリ19の周面を通過するときに、その表面23aがクリーニングローラ50の吸液性を有した円弧部51の周面に摺接する。そのため、搬送ベルト23は、その表面23aにインクが付着している場合、そうした付着インクが周回移動の途中においてクリーニングローラ50により払拭される。
【0063】
また、このとき、シート搬送機構15は、メンテナンスシート14が待機位置Pに位置した状態でシート搬送モータ31が制御装置41により駆動停止状態に制御されている。そのため、図1に示すように、周回移動する搬送ベルト23の表面23aに紙粉や塵埃等が付着していると、それらが待機位置Pに停止しているメンテナンスシート14のブラシ面43により払拭される。すなわち、用紙搬送機構13の搬送ベルト23は、以上のようにクリーニングローラ50の円弧部51及びメンテナンスシート14のブラシ面43により表面23aが払拭された後、そのように清掃された表面23a上に新たに後続用紙12を載置して搬送方向Xに搬送する。
【0064】
一方、プリンタ11において、記録ヘッド29のノズル30から非印刷時に廃インクを噴射して排出するフラッシング時には、制御装置41によりシート搬送機構15が以下のように駆動される。すなわち、制御装置41は、操作パネル58からユーザの入力操作に基づくマニュアルフラッシングの指令信号があった場合や、予め定期フラッシングを実行するために設定した条件を満たしたと判断した場合、シート搬送モータ31を駆動させてチェーン37の周回移動を開始させる。ちなみに、本実施形態では、一例として用紙12が10枚分連続して印刷のために搬送された場合に制御装置41は定期フラッシング条件を満たしたと判断する。
【0065】
シート搬送モータ31が駆動されるとチェーン37が周回移動を開始し、この周回移動に伴い、板金部材38,39に支持されたメンテナンスシート14が、図7に示すように、待機位置Pから後側の従動スプロケット34の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動して第1経路部Z1に搬送される。そして、そのようにメンテナンスシート14が従動スプロケット34の外周に沿って移動する際には、前後の各板金部材38,39の各中間部38b,39bが断面円弧形状をなす上流側案内板44の内周面44aにメンテナンスシート14を介して摺接することにより、その移動方向がガイドされる。
【0066】
ここで、各板金部材38,39は、従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するとき、内輪差の影響により、メンテナンスシート14を支持した内周側の中間部38b,39bの移動速度がチェーン37に連結された外周側の両端部38a,39aの移動速度よりも遅くなる。すなわち、前後両板金部材38,39の中間部38b,39b間には、一方が曲線経路部分を通過中であって他方が直線経路部分を通過中である場合には速度差が発生する。
【0067】
そのため、前側の板金部材38が先に曲線経路部分内に進入して後側の板金部材39が未だ曲線経路部分内に進入する前で直線経路部分を通過中である状態では、後側の板金部材39の中間部39bが前側の板金部材38の中間部38bとの間隔を詰めるように周回移動方向の前方に接近移動しようとする。そして、その際には、後側の板金部材39の中間部39bがメンテナンスシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向の前方への接近移動が許容される。そのため、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたメンテナンスシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0068】
一方、前側の板金部材38が先に曲線経路部分を抜けて直線経路部分を通過中であり後側の板金部材39が未だ曲線経路部分内を通過中である状態では、後側の板金部材39の中間部39bが前側の板金部材38の中間部38bとの間隔を拡げるように周回移動方向の後方に離間移動しようとする。そして、その際には、やはり後側の板金部材39の中間部39bがメンテナンスシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向の後方への離間移動が許容される。そのため、この場合も、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたメンテナンスシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0069】
また、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたメンテナンスシート14は、円弧状の移動軌跡を描くように移動するとき、遠心力で外方に変形しようとする。しかし、その場合には、そのメンテナンスシート14において外方へ変形しようとするシート部分が上流側案内板44の内周面44aの中央領域(切り欠き部46の下側となる領域)に摺接する。そのため、各板金部材38,39の中間部38b,39bに展張状態で支持されたメンテナンスシート14は、従動スプロケット34の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動する際において、外方に大きく膨らむように変形することが抑制され、安定した展張状態で第1経路部Z1に搬送される。したがって、第1経路部Z1においてメンテナンスシート14は搬送ベルト23の表面23aに対して適切な面接触状態となって吸着保持される。
【0070】
なお、待機位置Pに停止していたメンテナンスシート14は、シート搬送モータ31の駆動開始に伴うチェーン37の周回移動に連動して第1経路部Z1に搬送される際、図3に示すように、搬送ベルト23上においては、先行用紙12と後続用紙12との中間位置に前後方向へ等間隔をおいて割り込むように搬送される。すなわち、この場合には、制御装置41が、待機位置Pから第1経路部Z1の上流端までのメンテナンスシート14の移動距離、その際のチェーン37の移動速度、及び用紙搬送機構13における搬送ベルト23上への先行用紙12と後続用紙12の給紙間隔等に基づき、シート搬送モータ31の駆動開始タイミングを制御する。
【0071】
そして、第1経路部Z1では、メンテナンスシート14を搬送方向Xに向けて搬送するチェーン37の周回移動速度が搬送ベルト23の周回移動速度と等速度(第1速度)になるように、制御装置41によりシート搬送モータ31及び用紙搬送モータ16の駆動状態が制御される。そのため、メンテナンスシート14は、搬送方向Xで前方に位置する先行用紙12と後方に位置する後続用紙12との間の各間隔を維持しつつ、ファン28の駆動に基づく負圧により搬送ベルト23の表面23a上に平面的に吸着された状態で搬送方向Xに搬送される。そして、メンテナンスシート14は、記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を用紙12の通過タイミングとは異なる通過タイミングで通過する。
【0072】
また、その際において、チェーン37及び各板金部材38,39においてチェーン37の連結片37aに連結された両端部38a,39aは、用紙搬送機構13における左右両支持板21,22の上方位置を搬送方向Xに沿って移動する。そのため、搬送ベルト23の左右両側には搬送ベルト23の表面23aと同じ高さ位置にチェーン37等の移動空間を確保しなくてよいため、プリンタ11における設計自由度が制約を受ける虞も少ない。
【0073】
その後、前側の板金部材38の両端部38aのうち右側の端部38aが光センサ42の配設位置の下方まで移動すると、光センサ42の投受光する光が遮られるため、その光センサ42から検出信号が制御装置41に出力される。すると、制御装置41は、その時点のチェーン37の移動速度と光センサ42の配設位置(基準位置)から記録ヘッド29の下方位置(ノズル形成面29aと対向する位置)までの距離に基づき、メンテナンスシート14のインク受容領域40がノズル形成面29aと対向する位置態様となるまでに要する時間を演算する。
【0074】
そして、制御装置41は、その演算により求めた時間の経過タイミングで、記録ヘッド29内の圧電素子59を駆動する。すると、記録ヘッド29のノズル30からフラッシングのための廃インクが噴射(吐出)され、そのインクがメンテナンスシート14の外周側の面の中央部に設定されたインク受容領域40により受容される。なお、この場合、記録ヘッド29のノズル形成面29aに形成された各ノズル30からは、メンテナンスシート14のインク受容領域40が搬送方向Xに通過するのに合わせて、搬送方向Xの上流側に位置するノズル列のノズル30から下流側に位置するノズル列のノズル30の順にインクが吐出される。
【0075】
このように、第1経路部Z1において記録ヘッド29のノズル形成面29aの下方位置を通過するときにノズル30から噴射された廃インクを受容したメンテナンスシート14は、次に、前側の従動スプロケット33の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動して第2経路部Z2に向けて搬送される。そして、そのようにメンテナンスシート14が従動スプロケット33の外周に沿って移動する際には、後側の上流側案内板44によりガイドされた場合と同様に、前後の各板金部材38,39の各中間部38b,39bが断面円弧形状をなす下流側案内板45の内周面45aにメンテナンスシート14を介して摺接することにより、その移動方向がガイドされる。
【0076】
そして、その際にも、前後両板金部材38,39の各中間部38b,39b同士は、後側の従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過した場合と同様に、外周側の各両端部38a,39aとの内輪差の影響で、互いに速度差を発生して接近及び離間しようとする。しかし、この場合も、後側の板金部材39の中間部39bがメンテナンスシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向における接近移動及び離間移動が許容される。そのため、この場合も、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたメンテナンスシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0077】
また、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたメンテナンスシート14は、円弧状の移動軌跡を描くように移動するとき、記録ヘッド29から噴射された廃インクを受容したインク受容領域40が左右両下流側案内板45の内側縁間の空間領域45bを移動する。そのため、メンテナンスシート14のインク受容領域40に付着している廃インクにより下流側案内板45が汚れることもない。
【0078】
また、メンテナンスシート14が前側の従動スプロケット33の外周に沿った円弧状の曲線経路部分に進入すると、制御装置41によりクリーニングモータ49が回転駆動される。すると、クリーニング機構48では、クリーニングローラ50が図9(a)に示すクリーニング姿勢態様から図9(b)に示す非クリーニング姿勢態様となるように180度回転する。そして、その状態において制御装置41によりクリーニングモータ49の回転駆動が停止され、クリーニング機構48は、図9(b)に示す非クリーニング姿勢態様を維持しつつメンテナンスシート14の移動方向の前端部分が第2経路部Z2に進入するのを待機する。
【0079】
その後、図9(c)に示すように、チェーン37の周回移動に伴いメンテナンスシート14の前端部分が第2経路部Z2に進入すると、制御装置41がクリーニングモータ49の回転駆動を再開させる。すると、クリーニングローラ50は、図9(c)(d)に矢印で示す時計方向に回転することによりクリーニング姿勢態様に切り替わり、その円弧部51の周面がメンテナンスシート14の外周側となる面(インク受容領域40がある面)に転動しながら接触する。その後、メンテナンスシート14が周回移動方向の下流側に移動し、図9(d)の状態になると、クリーニングローラ50は、その円弧部51の周面がメンテナンスシート14の外周側となる面から離間する。
【0080】
なお、メンテナンスシート14が第2経路部Z2を通過する間(つまり、図9(c)に示す状態から図9(d)に示す状態になるまでの間)、チェーン37の周回移動速度は第1経路部Z1での速度(すなわち、搬送ベルト23の周回移動速度と等速度の第1速度)よりも遅いゆっくりとした速度(第2速度)になるように、制御装置41によりシート搬送モータ31の駆動状態が制御される。そのため、フラッシング時にメンテナンスシート14のインク受容領域40に受容された廃インクはメンテナンスシート14がゆっくりとした速度で移動するため、クリーニングローラ50が略1回転する間に、吸液性を有した円弧部51によって確実に吸収・払拭される。
【0081】
また、その場合において、クリーニングローラ50の円弧部51が転動しながら接触する領域は、メンテナンスシート14の外周側のインク受容面14b全体のうち、前後両端の縁部を除く中央領域60(図3参照)とされる。すなわち、制御装置41は、クリーニングローラ50の円弧部51がメンテナンスシート14の中央領域60にのみ転動しながら接触するようにクリーニングモータ49の駆動によるクリーニングローラ50の回転速度を制御する。そのため、撥液性を有するメンテナンスシート14にクリーニングローラ50の円弧部51の周面が転動しながら接触した場合において、インク受容領域40から廃インクがクリーニングローラ50の円弧部51により押し出されてメンテナンスシート14の縁部から零れ落ちることはない。また、メンテナンスシート14における板金部材38,39の中間部38b,39bの当接により形状が補強された縁部にはクリーニングローラ50の円弧部51が接触することもないので、クリーニングローラ50が寿命延長を図ることも可能となる。
【0082】
第2経路部Z2においてインク受容領域40から廃インクが払拭されたメンテナンスシート14は、チェーン37の周回移動に伴い、次回のフラッシング時に備えるべく、第3経路部Z3を経由して待機位置Pへと搬送される。そして、メンテナンスシート14が通過した後の第2経路部Z2では、クリーニングローラ50が図9(a)に示す状態となった時点で、制御装置41によりクリーニングモータ49の回転が停止される。その結果、再びクリーニングローラ50の円弧部51の周面が搬送ベルト23の表面23aに摺接するようになり、搬送ベルト23の表面23aが払拭される。
【0083】
なお、メンテナンスシート14が第3経路部Z3を待機位置Pに向けて移動する際には、チェーン37の周回移動速度が第1経路部Z1での速度(すなわち、搬送ベルト23の周回移動速度と等速度の第1速度)よりも速い速度(第3速度)になるように、制御装置41によりシート搬送モータ31の駆動状態が制御される。そのため、第2経路部Z2で廃インクを払拭されてクリーニングされたメンテナンスシート14は、迅速に待機位置Pへと搬送される。そして、再びフラッシングを行う場合には、上記と同様の手順でシート搬送機構15が再び駆動される。
【0084】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)記録ヘッド29のノズル30から廃インクが噴射されるフラッシング時には、シート搬送機構15における板金部材38,39の中間部38b,39bがチェーン37の移動に伴い用紙12の搬送経路となる搬送ベルト23の表面23aに沿ってノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a側となる空間域を移動する。そのため、板金部材38,39の中間部38b,39bに展張状態に支持されたメンテナンスシート14は、搬送ベルト23の表面23aとノズル形成面29aとの間をノズル形成面29aと対向した位置態様で通過し、その際に、ノズル30から噴射された廃インクを受容する。そして、その際において、板金部材38,39が連結されたチェーン37はノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23aとは反対側となる空間域を移動するため、このプリンタ11ではチェーン37の移動空間を搬送ベルト23の表面23aと略同じ高さ位置に確保する必要がなくなる。したがって、記録ヘッド29からフラッシング時に噴射された廃インクを受容可能なメンテナンスシート14を記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置に搬送するためのチェーン37を備える場合にも、プリンタ11の設計自由度が制約される虞を低減することができる。
【0085】
(2)シート搬送機構15においてメンテナンスシート14を支持する板金部材38,39及び板金部材38,39を連結した状態で移動するチェーン37が何れも剛性を有している。また、板金部材38,39はチェーン37に対する連結部となる端部38a,39aとメンテナンスシート14を支持する中間部38b,39bとの間が屈曲した形状をしている。そのため、プリンタ11の設計の自由度を確保しつつメンテナンスシート14を記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向した位置に安定した姿勢で搬送することができる。
【0086】
(3)メンテナンスシート14を構成するシート体14Aは、チェーン37に連結された板金部材38,39の中間部38b,39bに移動方向の前端部分が固着されているため、その移動方向の前端部分よりも後方側の部分は、チェーン37と一体的に移動する板金部材38,39の移動に追随して移動方向の後方側に展張した状態となって移動する。したがって、メンテナンスシート14は、そのような展張状態のまま記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置態様となるため、記録ヘッド29から廃液として噴射されたインクを確実に受容することができる。
【0087】
(4)シート搬送機構15における前後の両板金部材38,39は、チェーン37の移動に伴い円弧状の曲線経路部分を通過するとき、内輪差の影響により、前側の板金部材38の中間部38bと後側の板金部材39の中間部39bとの間に速度差が発生し、両中間部38b,39b同士が接近又は離間するように相対移動する。こうした場合、メンテナンスシート14を構成するシート体14Aが各板金部材38,39の中間部38b,39bに対して各々固着されていると、両中間部38b,39bの相対移動時にシート体14Aが歪に撓んだ状態となったり無用な引っ張り力を受けたりしてしまう虞がある。しかし、この点、上記実施形態では、後側の板金部材39の中間部39bはシート体14Aを摺動可能に支持しているため、そのような両中間部38b,39bの相対移動時にシート体14Aが歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりする虞がなく、メンテナンスシート14を良好な姿勢で搬送することができる。
【0088】
(5)メンテナンスシート14は、各板金部材38,39の中間部38b,39bに対して一枚のシート体14Aを全ての中間部38b,39bが包み込まれる無端状をなすように巻き掛けるだけで、簡単に展張状態に支持することができる。そして、そのように展張状態に支持されたメンテナンスシート14は、記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を通過するときには板金部材38,39とノズル形成面29aとの間にシート体14Aが介在することになるため、板金部材38,39がノズル形成面29aに直に接触する虞もない。したがって、記録ヘッド29のノズル形成面29aを板金部材38,39により傷つけたり、ノズル30から噴射された廃インクが板金部材38,39に付着したりすることを抑制できる。
【0089】
(6)メンテナンスシート14を支持する板金部材38,39が曲線経路部分に沿って移動する場合には、案内板44,45の各内周面44a,45aが板金部材38,39に係合することにより、その板金部材38,39を曲線経路部分の経路方向に沿って移動するように案内するので、板金部材38,39が遠心力により曲線経路部分の外方に変位することがない。そのため、この板金部材38,39に支持された状態で板金部材38,39と共に曲線経路部分に沿って移動するメンテナンスシート14も遠心力により曲線経路部分の外方に大きく変形することが回避される。したがって、記録ヘッド29から廃液として噴射されたインクを受容可能なメンテナンスシート14が曲線経路部分を含む移動経路に沿って搬送される場合にも安定した姿勢状態で搬送することができる。
【0090】
(7)搬送方向Xで上流側の案内板44には用紙12の通過を許容する切り欠き部46が形成されると共に、下流側の一対の案内板45は用紙12の通過を許容する空間領域45bを隔てて離間配置されている。そのため、用紙12が給紙トレーから排紙トレーまで搬送経路に沿って搬送方向Xに搬送される際には、案内板44,45により用紙12の通過が阻害されることはなく、用紙12の円滑な搬送を担保することができる。
【0091】
(8)特に、下流側の案内板45においては、メンテナンスシート14においてインクが付着したインク受容面14bが左右の両下流側案内板45の間の空間領域45bと対応する位置を板金部材38,39の中間部38b,39bと共に曲線経路部分に沿って移動することになる。したがって、メンテナンスシート14のインク受容面に付着したインクにより下流側案内板45が汚れる虞を回避できる。
【0092】
(9)また、上流側の案内板44においては、給紙トレー側から切り欠き部46を通過させて用紙12を搬送ベルト23上に搬送することができる。また、ノズル形成面29aと対向する位置を通過する前段階のメンテナンスシート14が上流側の曲線経路部分を移動するときに、その曲線経路部分の外方に変位することを抑制できる。そして、その際には、メンテナンスシート14における外方へ変位しようとするシート部分が上流側案内板44における切り欠き部46以外の部位に摺接するので、より確実に変位抑制を図ることができる。しかも、その時点では、メンテナンスシート14はフラッシングによるインクの噴射を受ける前段階であるので、上流側案内板44をインクにより汚すこともない。
【0093】
(10)そして、各案内板44,45は、メンテナンスシート14が曲線経路部分に沿って移動するとき、そのメンテナンスシート14を支持しつつ移動する板金部材38,39を係合部となる円弧状の内周面44a,45aに対して滑らかに摺動させることができるので、円滑に移動方向を案内することができる。
【0094】
(11)メンテナンスシート14がクリーニング位置を通過するときに、クリーニングモータ49によりクリーニングローラ50をクリーニング姿勢態様に切り替え変位させれば、クリーニングローラ50のクリーニング機能部としての円弧部51の周面によりメンテナンスシート14に付着しているインクを払拭することが可能となる。一方、例えばインクの付着量が少ない場合などクリーニング位置を通過するメンテナンスシート14をクリーニングする必要がないときには、クリーニングモータ49によりクリーニングローラ50を非クリーニング姿勢態様に切り替え変位させれば、移動するメンテナンスシート14にクリーニングローラ50が接触することもないので、シート搬送機構15によるメンテナンスシート14の搬送状態を良好に維持可能となる。したがって、記録ヘッド29から廃液として噴射されたインクを受容可能なメンテナンスシート14を簡単な構成でクリーニングすることにより容易に繰り返し使用することができる。
【0095】
(12)クリーニングモータ49によりクリーニングローラ50を回転させるだけで、必要に応じて、クリーニング位置を通過するメンテナンスシート14に対してクリーニングローラ50におけるクリーニング機能部となる円弧部51の周面を接触させるクリーニング姿勢態様と非クリーニング機能部となる弦部52の周面が対向する非クリーニング姿勢態様とを切り替え変位可能となる。したがって、より簡単にメンテナンスシート14の繰り返し使用を図ることができる。
【0096】
(13)クリーニングローラ50の円弧部51の周面は、クリーニング位置を通過するメンテナンスシート14における移動方向の前後両端の縁部を除く中央領域60に対して接触するので、その接触に伴う払拭作用によりメンテナンスシート14に付着しているインクが押し出されてメンテナンスシート14の縁部から零れ落ちることを抑制できる。また、クリーニングローラ50はメンテナンスシート14におけるエッジ状をなす縁に接触することがないので、クリーニングローラ50の長寿命化を図ることもできる。
【0097】
(14)クリーニングローラ50は、断面D字状をなす構成とされ、1回転することによりメンテナンスシート14に付着しているインクを払拭可能であるため、簡単な構成でメンテナンスシート14を繰り返し使用可能とするクリーニング機構48を実現することができる。
【0098】
(15)クリーニングローラ50は円弧部51の周面がインクの払拭作用に加えてインクの吸収作用も発揮するため、その円弧部51がメンテナンスシート14に対して僅かな接触圧で接触する場合でも、メンテナンスシート14に付着しているインクが容易に除去される。したがって、さらにシート搬送機構15によるメンテナンスシート14の搬送状態を良好に維持することができる。
【0099】
(16)制御装置41によるシート搬送モータ31の駆動状態の制御を通じてメンテナンスシート14の搬送途中での搬送速度を適宜調整することにより、簡単な構成でメンテナンスシート14の搬送効率の向上を図ることができる。
【0100】
(17)特に、メンテナンスシート14がノズル形成面29aと対向する位置を含む経路部Z1を通過する際には、その搬送速度を記録ヘッド29から噴射されたインクを受容するのに適した搬送速度にできる一方、それ以外の経路部Z2,Z3においては該経路部Z2,Z3での搬送目的に適した搬送速度に変更して搬送目的の円滑な達成を図ることができる。
【0101】
(18)制御装置41によるシート搬送モータ31の駆動状態の制御を通じてメンテナンスシート14を待機位置Pから第1経路部Z1、第2経路部Z2、及び第3経路部Z3の順に経由させて循環搬送することができ、メンテナンスシート14の再利用を図ることができる。
【0102】
(19)また、第1経路部Z1では、メンテナンスシート14の搬送速度が用紙搬送機構13による用紙12の搬送速度と等速度に設定されるので、用紙搬送機構13により搬送経路に沿ってノズル形成面29aと対向する位置を通過するように上流側から下流側へ順次に搬送される先行用紙12と後続用紙12との間にメンテナンスシート14を割り込ませてノズル形成面29aと対向する位置に搬送することができる。
【0103】
(20)また、クリーニング機構48が設けられた第2経路部Z2では、メンテナンスシート14が第1経路部Z1での搬送速度よりも遅い搬送速度で搬送されるので、その時点での搬送目的であるメンテナンスシート14のクリーニング目的を効果的に且つ確実に達成することができる。
【0104】
(21)さらに、クリーニングがなされたメンテナンスシート14を待機位置Pに戻し搬送する第3経路部Z3では、メンテナンスシート14が他の経路部Z1,Z2における場合よりも速い搬送速度で搬送されるので、メンテナンスシート14を迅速に待機位置Pに戻すことができる。したがって、例えば1枚などという少ないメンテナンスシート14を使用した高頻度のフラッシングにも対応できると共に、メンテナンスシート14が搬送される経路が長大化するプリンタ11の大型化にも適切に対応することができる。
【0105】
(22)メンテナンスシート14がノズル形成面29aと対向する位置を通過する際には、ノズル30から廃液として噴射されたインクがメンテナンスシート14のインク受容面14bにおける矩形状のインク受容領域40で受容されるように、制御装置41により記録ヘッド29のノズル30からのインク噴射タイミングが制御される。そのため、フラッシング時には、メンテナンスシート14の縁部から外側へのインクの飛散を抑制することが可能となり、用紙12の搬送経路となる搬送ベルト23付近が汚れたりすることを回避できる。
【0106】
(23)フラッシング時には、シート搬送機構15により搬送方向Xの下流側に向けて搬送されるメンテナンスシート14がノズル形成面29aと対向する位置に接近すると、その接近事実が光センサ42により検出されて検出信号が出力される。そして、その検出信号に基づき制御装置41が記録ヘッド29のノズル30からのインク噴射タイミングを制御するので、メンテナンスシート14は、そのインク受容面14bの中央部分に設定されたインク受容領域40内で正確にインクを受容することができる。
【0107】
(24)また、その際において、メンテナンスシート14の搬送方向Xに複数列のノズル列がある場合には、ノズル列毎にインク噴射タイミングを制御することが可能となるため、メンテナンスシート14は、より正確にインク受容領域40でインクを受容することができる。
【0108】
(25)フラッシング時にメンテナンスシート14はインク受容面14bにおける移動方向の縁部を除く中央部分のインク受容領域40でインクを受容しているので、その後、下流側でクリーニングローラ50により付着しているインクを払拭される場合でも、そのインクが縁部からメンテナンスシート14外へ押し出されることを抑制できる。
【0109】
(26)そして、このクリーニング時において、クリーニングローラ50は、撥液性を有するメンテナンスシート14のインク受容面14bに接触圧をもって払拭作用を及ぼすので、効果的に付着インクを除去することができる。
【0110】
(27)用紙搬送機構13のメンテナンス時には、その機構ユニット13A全体をプリンタ11から取り外してメンテナンスすることができるので、搬送ベルト23の取り替えなどの各種メンテナンス作業をシート搬送機構15の取り外し作業を伴うことなく簡便に行うことができる。
【0111】
(28)用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路はシート搬送機構15におけるチェーン37の周回経路の内側に設けられるので、プリンタ11の小型化に貢献できる。
【0112】
(29)プリンタ11において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aを着脱可能とする着脱部は、プリンタ11に固定配置された第2支持板22の内側面に穿孔された孔や穴からなる軸受け部22aにより構成され、その軸受け部22aに対し用紙搬送機構13における各プーリ17〜20の各軸部17a〜20aが挿抜可能とされている。したがって、軸受け部22aに対するプーリ17〜20の軸部17a〜20aの挿抜方向への移動だけで、簡単に用紙搬送機構13の機構ユニット13Aの着脱作業を実行できる。
【0113】
(30)また、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンタ11に対して着脱する際には、機構ユニット13Aにおける支持体としての第1支持板21が把持部として機能するため、機構ユニット13Aを安定的に把持して着脱作業を遂行できる。
【0114】
(31)そして、こうした用紙搬送機構13の機構ユニット13Aの全体を着脱可能とする構成は、用紙搬送機構13における搬送ベルト23を巻き掛ける各プーリ17〜20の軸部17a〜20aと、シート搬送機構15におけるチェーン37を巻き掛ける各スプロケット32〜36の軸部が一致していない構成とすることにより実現できる。
【0115】
(32)メンテナンスシート14は、待機位置Pに停止した状態において、用紙搬送機構13のテンションプーリ20との間に搬送ベルト23を挟持しつつ、搬送ベルト23の表面23aに速度差をもって接触している。そのため、用紙12の搬送のために周回移動する搬送ベルト23の表面23aをメンテナンスシート14により払拭することが可能となり、紙粉や塵埃などが付着している可能性のある搬送ベルト23の表面23aを清掃することができる。
【0116】
(33)メンテナンスシート14により搬送ベルト23の表面23aを清掃する場合はメンテナンスシート14が待機位置Pで停止する一方、搬送ベルト23が周回移動を継続しているプリンタ11の稼働状態で行われるため、スループットの低下を招くことなく、搬送ベルト23の清掃を実行することができる。
【0117】
(34)また、この場合において、搬送ベルト23の表面23aに接触するメンテナンスシート14の裏面側は例えば多数の繊維がブラシ状に起毛されたブラシ面43となっているので、効率良く搬送ベルト23の表面23aを清掃することができる。
【0118】
(35)クリーニング機構48のクリーニングローラ50は、クリーニング位置でメンテナンスシート14をクリーニングする場合、用紙搬送機構13におけるテンションプーリ19との間にメンテナンスシート14を挟持した状態で、クリーニング機能部としての円弧部51の周面がメンテナンスシート14のインク受容面14bに接触する。したがって、可撓性を有するメンテナンスシート14がクリーニングローラ50の接触圧によりクリーニングローラ50から逃げるように撓んでしまうこともなく、クリーニング機能を良好に担保することができる。
【0119】
(36)また、クリーニング位置においては、搬送ベルト23の周回経路とメンテナンスシート14のシート搬送機構15により搬送される経路がオーバーラップしている。そして、クリーニングローラ50は、クリーニング位置をメンテナンスシート14が通過する場合はメンテナンスシート14に接触する一方、メンテナンスシート14が通過しない状態では搬送ベルト23の表面23aに接触する構成となっている。したがって、一つのクリーニングローラ50により搬送ベルト23のクリーニング(払拭清掃)とメンテナンスシート14のクリーニングという複数の機能を兼備させることができる。
【0120】
(37)クリーニングローラ50は、メンテナンスシート14に対してはばね部材54により付勢された状態で接触するので、テンションプーリ19との挟持力も相まって強力にメンテナンスシート14のクリーニングを施すことができる。その一方、搬送ベルト23の表面23aに対してはばね部材54の付勢力が及ばない状態で軽く接触しているだけなので、払拭作用は発揮しつつ、搬送ベルト23の周回移動に対する抵抗は軽微なものとでき、用紙搬送機構13における用紙搬送効率を低下させることもない。
【0121】
(38)また、メンテナンスシート14のクリーニング時にクリーニングローラ50との間でメンテナンスシート14を挟持する挟持部材としては、用紙搬送機構13におけるテンションプーリ19を利用できるので、部品点数の増加を抑制しつつ、多機能なクリーニング機能を得ることができる。
【0122】
(39)さらに、シート搬送機構15において、メンテナンスシート14を周回経路に沿って搬送するべく移動する移動部材はチェーン37により構成されている。そのため、例えば移動部材がベルトにより構成される場合に比して、チェーン37は延びたりすることがないので、メンテナンスシート14の搬送精度が向上すると共に、移動部材の移動経路が長大化するプリンタ11の大型化にも対応することができる。
【0123】
なお、上記実施形態は以下のような変形例により実施してもよい。
・ 図11に示すように、シート搬送機構15における駆動スプロケット32を用紙搬送機構13における前側のテンションプーリ19の直下に配置することにより、搬送ベルト23の周回経路とチェーン37により搬送されるメンテナンスシート14の第2経路部Z2をテンションプーリ19付近でオーバーラップしないように構成してもよい。なお、この場合は、クリーニング位置においてチェーン37の周回経路の内側に、クリーニング位置を通過するメンテナンスシート14をクリーニングローラ50との間で挟持可能な支持台61を挟持部材として配置するとよい。また、この場合は、クリーニングローラ50をばね部材により支持台61の方向に付勢する構成としなくてもよい。このように構成した場合でも、クリーニングローラ50と支持台61によりメンテナンスシート14を挟持しつつクリーニングを行うことができる。
【0124】
・ 図12に示すように、用紙搬送機構13における駆動プーリ17をシート搬送機構15における前側の左右両従動スプロケット33間に同軸配置となるように設け、これらの駆動プーリ17(及び従動スプロケット33)とテンションプーリ19との間で搬送ベルト23の周回経路とメンテナンスシート14の第2経路部Z2をオーバーラップさせてもよい。なお、この場合も、クリーニング位置においてチェーン37の周回経路の内側に、クリーニング位置を通過するメンテナンスシート14をクリーニングローラ50との間で挟持可能な支持台61を挟持部材として配置するとよい。このように構成した場合でも、クリーニングローラ50と支持台61によりメンテナンスシート14を挟持しつつクリーニングを行うことができる。
【0125】
・ 図13に示すように、シート搬送機構15における前側の左右両従動スプロケット33間に用紙搬送機構13の駆動プーリを従動スプロケット33と同一径で同軸の配置となるように設け、その駆動プーリの周面に対して円筒形のクリーニングローラ50が転動しながら接触するようにばね部材54により付勢された構成としてもよい。このように構成した場合でも、クリーニングローラ50と挟持部材として機能する駆動プーリによりメンテナンスシート14を挟持しつつクリーニングを行うことができる。また、この場合は、クリーニングローラ50がメンテナンスシート14をクリーニングする機能と、搬送ベルト23の表面23aを払拭する機能を共に発揮することができる。
【0126】
・ 図14(a),(b)に示すように、クリーニング部材として、クリーニングローラ50の代わりに、先端が湾曲するように形成された樹脂製又はゴム製のブレード62を採用し、このブレード62と支持台61との間にメンテナンスシート14を挟持しつつ、メンテナンスシート14から付着インクを掻き取るようにクリーニングしてもよい。
【0127】
・ 図14(c)に示すように、クリーニングローラは、クリーニング機能部として機能する曲面部63aと非クリーニング機能部となる平面部63bをそれぞれ周面上に2つずつ備えた断面が俵形状のクリーニングローラ63を使用してもよい。
【0128】
・ 図14(d)に示すように、クリーニング部材を、凸曲面を有する押圧治具64と吸液シート65とにより構成し、図示しない付勢部材により押圧治具64を凸曲面で吸液シート65をメンテナンスシート14に押圧し、支持台61との間にメンテナンスシート14を挟持しつつ払拭する構成としてもよい。
【0129】
・ 図15に示すように、前後一対の板金部材38,39の上面にメンテナンスシート14を構成するシート体14Aをビス66により止着するようにしてもよい。この場合、搬送方向Xで前側の板金部材38の中間部38bに対してはシート体14Aの前端部分が相対移動不能に固定される一方、後側の板金部材39の中間部39bに対してはシート体14Aの後端部分が相対移動可能(すなわち、摺動可能)な状態に支持される。具体的には、シート体14Aにおいてビス66の止着位置と対応する位置にはメンテナンスシート14の搬送方向(移動方向)Xに沿って長孔67が形成され、その長孔67内にビス66の軸(凸部)66aが摺動可能に挿通される。
【0130】
このように構成した場合も、簡単にメンテナンスシート14を構成するシート体14Aを前後の板金部材38,39により展張状態に支持することが可能となる。そして、シート体14A及び該シート体14Aを支持する各板金部材38,39が円弧状をなす曲線経路部分を通過する際には、最後の板金部材39の中間部39bに止着されたビス66の軸(凸部)66aがシート体14Aの長孔67内で移動方向に摺動することにより、シート体14Aが歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりする虞を回避できる。
【0131】
・ 上記実施形態において、板金部材38,39は3つ以上の複数でメンテナンスシート14を支持してもよい。この場合も、最前の板金部材の中間部にはメンテナンスシート14の前端部分を固着すると共に最前以外の他の板金部材の中間部にはメンテナンスシート14の後端側の部分を摺動可能に支持するのが望ましい。
【0132】
・ 上記実施形態において、板金部材は1つのみで構成してもよい。この場合、メンテナンスシート14を構成するシート体14Aは、その1つの板金部材の中間部に前端部分が固着され、後端側の部分は自由端状態となっていてもよい。このように構成しても、その1つの板金部材がチェーン37と共に移動するのに伴い、メンテナンスシート14は、移動方向の後方側に展開した状態で搬送される。
【0133】
・ 上記実施形態において、シート搬送機構15の移動部材は、鎖部材であるチェーン37以外にワイヤなどからなる輪状体、さらには無端状のベルト体であってもよい。
・ 上記実施形態において、チェーン37及びその連結片37aに連結された板金部材38,39の端部38a,39aの移動空間は、ノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる位置であれば、左右両支持板21,22の間となる空間域であってもよい。この場合、板金部材38,39はクランク状に屈曲した形状ではなく、略U字状になる。
【0134】
・ 図15(a)(b)に示す変形例において、メンテナンスシート14を構成するシート体14Aに形成される長孔67は、その長手方向においてシート搬送方向の後方側となる部分が前方側よりも幅広になった所謂ひょうたん形状の長孔であってもよい。このように構成した場合には、メンテナンスシート14(シート体14A)の着脱交換が簡単になる。
【0135】
・ 上記実施形態において、案内板44,45の断面形状は、従動スプロケット33,34の周方向に沿っているならば、楕円状や多角形状に折れ曲げた形状であってもよい。要するに、メンテナンスシート14及びこれを支持する板金部材38,39が曲線経路部分を通過するときに外方へ大きく変位することを抑制可能な形状ならば、断面円弧状に限定されない。
【0136】
・ 上記実施形態において、上流側の案内板44と下流側の案内板45は、互いに同じ形態のものを使用してもよい。
・ 上記実施形態において、案内板44,45は少なくとも下流側の案内板45があれば、上流側の案内板44は必ずしもなくてよい。
【0137】
・ 上記実施形態において、案内板は例えば駆動スプロケット32の周方向に沿う曲線経路部分など従動スプロケット33,34以外の他のスプロケット32,35,36の外周と対応する位置に設けられていてもよい。
【0138】
・ 上記実施形態において、案内板44,45は、その係合部となる内周面44a,45aに対して板金部材38,39の各中間部38b,39bの左右両端部分が直接係合する構成であってもよい。この場合は、シート体14Aの左右幅を狭くすればよい。
【0139】
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50はメンテナンスシート14に転動しながら接触するとき、その回転方向は何れの方向に回転してもよい。
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50はメンテナンスシート14に回転することなく接触して付着インクを払拭するクリーニングを行う構成であってもよい。
【0140】
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50は、クリーニング機能部としての円弧部51の周面部分だけが吸液性を有する構成であってもよい。
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50は図13に示すように断面円形状のローラであってもよい。
【0141】
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50はクリーニング姿勢態様と非クリーニング姿勢態様との切り替え変位をクリーニングモータ49の回転駆動によらず、手動で切り替えされる構成であってもよく、さらにはカム機構などの切り替え変位機構を別途に設けてもよい。
【0142】
・ 上記実施形態において、クリーニングローラ50はメンテナンスシート14のインク受容面14bにおける全面に接触する構成であってもよい。
・ 上記実施形態において、シート搬送機構15はチェーン37が周回状の移動経路に沿って移動するのではなく、非無端状の経路に沿って往復移動する構成であってもよい。
【0143】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14の搬送速度は、第3経路部Z3の速度が第1経路部Z1よりも速い速度であるなら、クリーニングが行われる第2経路部Z2は第1経路部Z1と同じ速度であってもよい。
【0144】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14の搬送速度は、第2経路部Z2の速度が第1経路部Z1よりも遅い速度であるなら、メンテナンスシート14を待機位置Pに戻し搬送する第3経路部Z3は第1経路部Z1と同じ速度であってもよい。
【0145】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14の搬送速度は、用紙搬送機構13における先行用紙12と後続用紙12の搬送間隔が十分に広い間隔である場合やフラッシング時には用紙12の搬送が停止される場合には、第1経路部Z1での速度は用紙12の搬送速度と等速度でなくてもよい。
【0146】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14の搬送速度は、第1経路部Z1の速度とそれ以外の他の経路部Z2,Z3の速度の二種類であってもよい。
・ 上記実施形態において、フラッシング時にはノズル形成面29aと対向する位置を通過するメンテナンスシート14のインク受容面14bに対して全ノズル30から同時に廃インクを噴射するようにしてもよい。
【0147】
・ 上記実施形態において、フラッシング時にメンテナンスシート14のインク受容領域40内に廃インクを噴射するタイミングは、待機位置Pから移動開始してからの経過時間に基づき制御装置41が演算するようにしてもよい。このように構成すれば光センサ42は不要となる。なお、この場合は、待機位置Pが基準位置となる。
【0148】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14に対してメンテナンスシート14における前後方向(移動方向)でインク受容領域40と対応する位置に被検出部を設ける一方、記録ヘッド29に対してはノズル30(ノズル列)と対応する位置に検出手段を設け、メンテナンスシート14がノズル形成面29aと対向する位置を通過するときには、検出手段が被検出部を検出したタイミングでインクを噴射するようにしてもよい。
【0149】
・ 上記実施形態において、制御装置41は、メンテナンスシートが搬送される場合に待機位置P等の基準位置を通過(又は移動開始)してからノズル形成面29aと対向する位置に至るまでに要する所要時間を予め記憶しておき、その記憶している時間の経過時点でインクを噴射させるようにしてもよい。
【0150】
・ 上記実施形態において、クリーニング機構48はプリンタ11に対して着脱自在な構成としてもよい。
・ 上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンタ11に対して着脱する際に把持する把持部は第1支持板21以外に把持用のアームを設けるなどしてもよい。
【0151】
・ 上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンタ11に対して着脱する際、第1支持板21、各プーリ17〜20、及び搬送ベルト23を個別に着脱する構成であってもよい。
【0152】
・ 上記実施形態において、ターゲット搬送部材は、回転運動することにより用紙12を搬送方向Xに搬送可能であって、機構ユニット13Aにおいて支持体として機能する第1支持板21と一体的に取り扱い可能に構成されるならば、搬送ローラであってもよい。
【0153】
・ 上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンタ11に対して着脱可能とする着脱部は、軸受け部22a以外に支持枠などの他の着脱自在とする構成であってもよい。
【0154】
・ 上記実施形態において、待機位置Pで搬送ベルト23の表面23aに接触するメンテナンスシート14の裏面側は、ブラシ面43以外に、粘着面や吸液性を有する面などにより清掃機能面としての機能を発揮するものでもよい。また、ブラシ面43は、全面ではなく一部がブラシ状となっているものでもよい。
【0155】
・ 上記実施形態において、メンテナンスシート14は、その裏面のブラシ面43を搬送ベルト23と速度差をもった状態で接触させる構成であれば、必ずしも停止した状態で接触する構成に限定されない。したがって、速度差が生じるならば、メンテナンスシート14の方が搬送ベルト23の周回速度よりも速い速度で周回移動することにより、搬送ベルト23を追い越すようにして搬送ベルト23の表面23aを払拭する構成でもよい。
【0156】
・ 上記実施形態において、クリーニング機構48は、ローラ、ブレード、吸液シートなどの複数種類のクリーニング部材を備え、それらを適宜に選択使用するように配置替えする構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】プリンタの模式図。
【図2】用紙搬送機構の模式斜視図。
【図3】プリンタの一部平面模式図。
【図4】図3における4−4線矢視断面図。
【図5】図3における5−5線矢視断面図。
【図6】図1における6−6線矢視断面図。
【図7】チェーンの周回経路における上流側の曲線経路部分を示す模式断面図。
【図8】図1における8−8線矢視断面図。
【図9】(a)搬送ベルトのクリーニング時の模式図、(b)メンテナンスシートのクリーニング開始の模式図、(c)メンテナンスシートのクリーニング開始時の模式図、(d)メンテナンスシートのクリーニング終了時の模式図。
【図10】制御装置のブロック図。
【図11】変形例におけるクリーニング機構を説明する概略構成図。
【図12】変形例におけるクリーニング機構を説明する概略構成図。
【図13】変形例におけるクリーニング機構を説明する概略構成図。
【図14】(a)〜(d)は変形例におけるクリーニング機構を説明する概略構成図。
【図15】(a)変形例におけるメンテナンスシートを説明する平面模式図、(b)メンテナンスシートの断面模式図。
【符号の説明】
【0158】
11…プリンタ(液体噴射装置)、12…用紙(ターゲット)、13…用紙搬送機構(ターゲット搬送手段)、13A…機構ユニット、14…メンテナンスシート(液体受容体)、14A…シート体、14b…インク受容面(対向面となる液体受容面)、15…シート搬送機構(液体受容体搬送手段)、16…用紙搬送モータ(第1駆動源)、17〜20…プーリ、21…第1支持板(支持体)、22a…軸受け部(着脱部)、23…搬送経路を形成する搬送ベルト(ターゲット搬送部材)、23a…搬送ベルトの表面(搬送平面)、29…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、29a…ノズル形成面、30…ノズル、31…シート搬送モータ(第2駆動源)、32〜36…スプロケット、37…チェーン(移動部材、鎖部材)、37a…連結片、38,39…板金部材(支持部材)、38a,39a…端部(連結部)、38b,39b…中間部(支持部)、40…インク受容領域(液体受容領域)、41…制御装置(制御手段)、42…光センサ(検出手段)、43…ブラシ面(清掃機能面)、44,45…案内板(案内手段)、44a,45a…内周面(係合部)、45b…空間領域(ターゲット通過部)、46…切り欠き部(ターゲット通過部)、48…クリーニング機構(クリーニング手段)、49…クリーニングモータ(切り替え手段)、50,63…クリーニングローラ(クリーニング部材)、51…円弧部(クリーニング機能部)、52…弦部(非クリーニング機能部)、54…ばね部材(付勢手段)、60…中央領域、61…支持台(挟持部材)、62…ブレード(クリーニング部材)、64…クリーニング部材を構成する押圧治具、65…クリーニング部材を構成する吸液シート、66…凸部を形成するビス、67…長孔、L1,L2…距離、P…待機位置、X…搬送方向、Z1〜Z3…経路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、
前記ノズルから廃液として噴射される液体を受容可能な液体受容体を該液体受容体が前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置を通過するように搬送する液体受容体搬送手段と、
該液体受容体搬送手段により搬送される前記液体受容体が前記ノズル形成面と対向する位置を通過するときに、前記液体受容体の前記ノズル形成面に対する対向面における移動方向の縁部を除く中央部分に設定された一定範囲の液体受容領域内に前記ノズルから前記液体が噴射されるように、前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体噴射タイミングを制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記制御手段は、前記液体受容体搬送手段により前記液体受容体が搬送される経路上において前記ノズル形成面と対向する位置よりも上流側に設定される基準位置を前記液体受容体が通過してから該液体受容体の前記液体受容領域が前記ノズル形成面と対向する位置に至るまでに要する所要時間の経過した時点で前記ノズルから液体が噴射されるように、前記ノズルからの液体噴射タイミングを制御することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記液体受容体搬送手段により前記液体受容体が搬送される経路上において前記ノズル形成面と対向する位置よりも下流側には、その経路に沿って下流側に搬送される前記液体受容体の前記液体受容領域が設定された面にクリーニング部材を接触させてクリーニングを施すクリーニング手段が配設されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記クリーニング手段は、前記クリーニング部材を前記液体受容体の前記液体受容領域が設定された面における移動方向の縁部を除く領域に対して接触させることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置において、
前記基準位置には、該位置を前記液体受容体が通過した場合に検出信号を出力する検出手段が配設されており、前記制御手段は、前記検出手段から出力された検出信号を入力した場合、その時点での液体受容体搬送手段による液体受容体の搬送速度と前記検出手段の配設位置から前記ノズル形成面に形成された各ノズルの位置までの距離とに基づき前記所要時間を演算することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−248334(P2009−248334A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95281(P2008−95281)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】