液体噴射装置
【課題】ヒーターを備えた構成においてエネルギー効率を高めるとともに印刷動作可能状態に短時間で移行できる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接してノズルを封止するキャップ部と、キャップ部に設けられ、ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構161と、液体噴射ヘッドのノズルから媒体上に噴射された液体を加熱することで乾燥させて媒体に定着させる加熱機構88と、冷却機構161から排出される排熱を加熱機構88に供給する排熱供給部101と、を備えた液体噴射装置に関する。
【解決手段】媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接してノズルを封止するキャップ部と、キャップ部に設けられ、ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構161と、液体噴射ヘッドのノズルから媒体上に噴射された液体を加熱することで乾燥させて媒体に定着させる加熱機構88と、冷却機構161から排出される排熱を加熱機構88に供給する排熱供給部101と、を備えた液体噴射装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク滴をインクジェットヘッドのノズルから記録紙(媒体)に対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。プリンターにおいては、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を抑制すべく、メンテナンスユニットに含まれるキャップを用いてノズル形成面を封止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載のプリンターは、ターゲットに噴射したインクをヒーターで加熱することで強制的に定着させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、ヒーターが所定温度に到達するまでに時間を要するため、プリンターの初期駆動時においては印刷可能な状態となるまでの時間が長くなるといった問題があった。また、ヒーターの熱を効率的に利用することで省エネ化が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一つに鑑みてなされたものであって、ヒーターを備えた構成においてエネルギー効率を高めるとともに印刷動作可能状態に短時間で移行できる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部と、前記キャップ部に設けられ、前記ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構と、前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記媒体上に噴射された前記液体を加熱することで乾燥させて前記媒体に定着させる加熱機構と、前記冷却機構から排出される排熱を前記加熱機構に供給する排熱供給部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体噴射装置によれば、冷却機構から供給される排熱による温風が加熱機構の発熱をアシストすることができる。よって、排熱が加熱機構の駆動時における温度上昇速度を向上させることができ、加熱機構が所定温度に到達することで噴射ヘッドから媒体上に液体を噴射する印刷可能状態に短時間で移行することができる。また、冷却機構の排熱を再利用することで省エネルギー効率を向上させることができる。
【0008】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記排熱を前記加熱機構側へ供給する第1分岐路及び前記排熱を前記加熱機構とは異なる場所へ放出する第2分岐路を有する分岐部と、前記第1分岐路及び前記第2分岐路をそれぞれ閉塞可能な閉塞バルブと、前記閉塞バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御部と、を備えるのが好ましい。
この構成によれば、バルブ開閉制御部が閉塞バルブの開閉動作を制御することで排熱の加熱機構への供給の有無を必要性に応じて切り替えることができる。よって、例えば第1分岐路のみを開くことで加熱機構に排熱を供給することができ、第2分岐路のみを開くことで不要な排熱を加熱機構とは異なる外部に放出することができる。また、第1分岐路及び第2分岐路の各閉塞バルブの開き量をそれぞれ調整することで加熱機構に供給する排熱量を種々に設定することができる。
【0009】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷空間に前記排熱を供給するのが好ましい。
この構成によれば、排熱を供給することで印刷空間の温度を上昇させることができる。よって、印刷空間内にある媒体を間接的に加熱することで媒体上に噴射された液体の乾燥速度を速めることができる。従って、媒体が搬送される際の振動等によって液体が濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の低下を抑制できる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷領域において前記媒体を支持する媒体支持部材に排熱を供給して前記媒体支持部材を加熱するのが好ましい。
この構成によれば、媒体支持部材の温度を上昇させることができる。よって、媒体支持部材を介して媒体を直接的に加熱することで媒体上に噴射された液体を短時間で乾燥させることができる。従って、媒体が搬送される際の振動等によって液体が濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェット式プリンターの概略正面図。
【図2】同プリンターの概略平面図。
【図3】同プリンターの記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図4】記録ヘッドのノズル基板を下面側から視た図。
【図5】(a)はキャップ部の斜視構成図、(b)は断面構成図。
【図6】同プリンターの強制乾燥装置の正面拡大断面図。
【図7】同プリンターの強制乾燥装置の平面拡大図。
【図8】排熱ダクトの接続部の要部構成を示す図。
【図9】排熱ダクトの変形例に係る構成を示す図。
【図10】排熱の供給先における変形例に係る構成を示す図。
【図11】排熱の供給先における変形例に係る構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、液体の噴射方向をZ方向とし、ヘッドの移動方向をY方向とし、Z方向とY方向とに直交する方向をX方向とした。
【0013】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、プリンターと称す)11は、長尺状のターゲットとしての連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、連続紙12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されるとともに下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。
【0014】
繰り出し部13は本体ケース16の左面下端部から左方に延びる支持板17を備えており、該支持板17の前面は鉛直面になっている。支持板17の前面における先端部には前方(図1において紙面と直交する方向の手前側)に向かって延びる巻き軸18が支持板17に対して回転可能に支持されている。また、巻き軸18の基端には、円板状の回転板19が巻き軸18と一体回転するように設けられている。
【0015】
そして、巻き軸18には予めロール状に巻かれた連続紙12が該巻き軸18と一体回転可能に支持されており、このロール状に巻かれた連続紙12における両側縁のうち回転板19側の側縁は回転板19の前面に当接している。すなわち、巻き軸18に予めロール状に巻かれた連続紙12を支持させた際に、このロール状に巻かれた状態の連続紙12における一方の側縁が回転板19の前面に当接することで、連続紙12の搬送方向と直交するX方向での位置決めがなされるようになっている。なお、本実施形態の連続紙12には光沢紙が用いられている。
【0016】
図1及び図2に示すように、繰り出し部13は本体ケース16の左面中央部から左方に向かって水平に延びる平板状の繰り出し台20を備えており、該繰り出し台20の先端部には巻き軸18から繰り出される連続紙12を巻き掛けて繰り出し台20の上面に導くための中継ローラー21が回転可能に設けられている。
【0017】
図2に示すように、繰り出し台20の上面における後端縁には、Y方向に沿って延びる細長いブロック状のガイド手段としてのガイド部24が、該後端縁のほぼ全体にわたって設けられている。さらに、繰り出し台20の上面には、ガイド部24の左端部と対向するように配置されたガイド手段としてのガイドブロック25が設けられている。繰り出し台20の上面におけるガイド部24とガイドブロック25との間の領域は連続紙12の搬送経路の一部になっており、ガイド部24とガイドブロック25とは連続紙12のX方向の幅と同じ距離だけ離間している。
【0018】
そして、繰り出し台20の上面に沿って連続紙12が右側(本体部14側)に向かって搬送される際には、連続紙12のX方向の側縁がガイド部24及びガイドブロック25に対して摺動することで、連続紙12が搬送方向(ここでは右方向)に沿ってガイドされるようになっている。なお、繰り出し台20の上面においてガイドブロック25はX方向に移動可能になっており、連続紙12のX方向の幅が変更された場合には、ガイドブロック25を移動させることで、ガイド部24とガイドブロック25との間の距離が連続紙12のX方向の幅に合わせて変更される。
【0019】
図1に示すように、本体部14の本体ケース16内におけるZ方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース16内をZ方向沿って区画する平板状のベース部材としての基台30が設けられており、本体ケース16内における基台30よりも上側の領域は連続紙12に印刷を行うための印刷室31となっている。一方、本体ケース16内における基台30よりも下側の領域には、Y方向に並ぶように区画された3つの区画室33,34,35が形成されている。なお、これら3つの区画室は、左から順に第1区画室33、第2区画室34、第3区画室35とされている。
【0020】
本体ケース16の左壁には繰り出し台20の上面から第1区画室33内に連続紙12を搬入するための図示しない搬入口が設けられており、第1区画室33には上記搬入口と近接位置で対向するように引き込み駆動ローラー36が回転駆動可能に設けられている。すなわち、引き込み駆動ローラー36は、第1区画室33の左端部に配設されている。
【0021】
また、第1区画室33内における引き込み駆動ローラー36の右方には中継ローラー40が回転可能に設けられている。そして、引き込み駆動ローラー36の駆動によって第1区画室33内に引き込まれた連続紙12は、印刷室31の左端部寄りの位置に向かうように中継ローラー40に巻き掛けられている。
【0022】
第1区画室33内における引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間には図示しない昇降機構の駆動に基づき昇降移動する昇降ローラー42が設けられている。そして、この昇降ローラー42に対しては連続紙12が下側から巻き掛けられている。
【0023】
ここで、引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間に位置する連続紙12の長さは、昇降ローラー42が下降するほど長くなるとともに、昇降ローラー42が上昇するほど短くなるようになっている。すなわち、昇降ローラー42が下側に位置するほど引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間の連続紙12の搬送距離が長くなるとともに、昇降ローラー42が上側に位置するほど引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間の連続紙12の搬送距離が短くなるようになっている。
【0024】
図1に示すように、基台30における中継ローラー40と対向する位置には、該基台30をZ方向に貫通するように、連続紙12を搬送方向(ここでは上方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置43が設けられている。印刷室31内におけるガイド装置43の上側には中継ローラー46が設けられており、該中継ローラー46には連続紙12が左側下方から巻き掛けられて右方向に水平に搬送されるようになっている。
【0025】
印刷室31内における中継ローラー46の右側の領域には、基台30上に支持された矩形板状の支持部材としてのプラテン48が設けられている。プラテン48の右側には、該プラテン48を挟んで中継ローラー46と対向するように転換ローラー49が設けられている。この場合、中継ローラー46の上面、プラテン48の上面、及び転換ローラー49の上面は、互いに面一になっている。
【0026】
転換ローラー49には中継ローラー46からプラテン48の上面に沿って水平右方向に搬送される連続紙12が左側上方から巻き掛けられて連続紙12の搬送方向が水平右方向から鉛直下方向に転換されている。そして、転換ローラー49によって搬送方向が鉛直下方向に転換された連続紙12は、基台30に設けられた図示しない挿通孔を通って第3区画室35内に搬送されるようになっている。
【0027】
印刷室31内におけるプラテン48のX方向両側にはY方向に延びるガイドレール50(図1では二点鎖線で示す)が対をなすように設けられており、該ガイドレール50の上面はプラテン48の上面よりも高くなっている。両ガイドレール50の上面には、矩形板状のキャリッジ51が該両ガイドレール50に沿ってY方向へ往復移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ51は、図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール50上をY方向に移動するようになっている。
【0028】
図1及び図2に示すように、キャリッジ51の下面には、矩形板状のスライド板53が該キャリッジ51に対してX方向にスライド移動可能に支持されている。スライド板53の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド54が支持されている。
【0029】
ここで、記録ヘッド54の構成について図3を参照して説明する。図3に示すように、記録ヘッド54は、合成樹脂などを用いて形成されたヘッドケース118を主体として構成されている。ヘッドケース118は、例えば中空部を有するように箱型に形成されている。ヘッドケース118の下端面には、流路ユニット119が接合されている。ヘッドケース118の内部に形成された中空部137内には、アクチュエータユニット120が収容されている。
【0030】
ヘッドケース118の内部には、高さ方向を貫通してケース流路125が設けられている。ケース流路125の下端は、流路ユニット119内の共通インク室144に連通されている。このため、インクカートリッジ(図示略)から導入されたインクは、ケース流路125を通じて共通インク室144側に供給されるようになっている。
【0031】
アクチュエータユニット120は、例えば櫛歯状に配置された複数の圧電振動子138と、当該圧電振動子138を保持する固定板139と、圧電振動子138に対して制御装置(不図示)からの駆動信号を供給するフレキシブルケーブル140とを有している。
【0032】
圧電振動子138は、図中下側端部が固定板139の下端面から突出するように固定されている。このように、各圧電振動子138は、所謂片持ち梁の状態で固定板139上に取り付けられている。各圧電振動子138を支持する固定板139は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。固定板139のうち圧電振動子138の固定された面とは異なる面が中空部137を区画するケース内壁面に接着されている。
【0033】
流路ユニット119は、振動板141、流路基板142及びノズル基板143を有している。振動板141、流路基板142及びノズル基板143は、積層された状態で接着されている。流路ユニット119は、共通インク室144からインク供給口145、圧力室146を通り、ノズルNZに至るまでの一連のインク流路(液体流路)を構成している。圧力室146は、ノズルNZの配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向が長手方向となるように形成されている。
【0034】
共通インク室144は、ケース流路125に接続されている。共通インク室144には、インクカートリッジ側からのインクが導入される室である。また、共通インク室144は、インク供給口145に接続されている。共通インク室144に導入されたインクは、当該インク供給口145を通じて各圧力室146に分配されるようになっている。
【0035】
ノズル基板143は、流路ユニット119の底部に配置されている。ノズル基板143には、連続紙12に印刷する画像などのドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズルNZが形成されている。ノズル基板143としては、例えばステンレス鋼などの金属製の板材が用いられる。図4はノズル基板143の下面側から視た図である。ノズル基板143の下面は、図4に示すように噴射面(ノズル形成面)110aを構成しており、噴射面110aには複数のノズルNZが配置されてなるノズル列L1〜L4が設けられている。
【0036】
また、印刷室31内における本体ケース16の後壁上部には、液体としてのインクを一時貯留する複数のバルブユニット55が設けられている。各バルブユニット55には、互いに色の異なるインクが一時貯留されている。
【0037】
そして、各バルブユニット55は、記録ヘッド54とそれぞれ図示しないインク供給チューブを介して接続されており、該各インク供給チューブを介して記録ヘッド54のノズル列L1〜L4に各インクを供給するようになっている。具体的に、記録ヘッド54は、各ノズル列L1〜L4のノズルNZからそれぞれ異なる色のインクを噴射可能となっている。これにより、記録ヘッド54は、各バルブユニット55から供給されたインクを該各ノズルNZからプラテン48上に搬送されて停止された状態の連続紙12に向かって噴射することで印刷が行われるようになっている。
【0038】
したがって、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の印刷が行われるプラテン48の左端から右端までの領域は液体噴射領域としての印刷領域Aとされており、連続紙12は該連続紙12の搬送経路を印刷領域A単位で間欠的に搬送されるようになっている。
【0039】
なお、本体ケース16内には、互いに色の異なるインクを収容した複数のインクカートリッジ(図示略)が着脱自在な状態で設けられている。これら各インクカートリッジ(図示略)は、図示しないインク供給チューブを介して各バルブユニット55とインク供給可能な状態でそれぞれ接続されている。また、本体ケース16内には、各インクカートリッジ(図示略)内を加圧するための加圧ポンプ(図示略)が設けられており、該加圧ポンプを駆動させることで各インクカートリッジ(図示略)内のインクがインク供給チューブ(図示略)を介して各バルブユニット55にそれぞれ加圧供給されるようになっている。
【0040】
基台30上におけるプラテン48のY両側には、印刷途中に適宜フラッシングを行う際に、記録ヘッド54の各ノズル開口(図示略)から吐出されるインクを受容するためのフラッシングボックス58が設けられている。また、基台30上における左側のフラッシングボックス58の左側には、記録ヘッド54のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット59が設けられている。メンテナンスユニット59は、記録ヘッド54と対応するキャップ部59aを備えており、該キャップ部59aは昇降可能になっている。
【0041】
図5は、メンテナンスユニット59のキャップ部59aにおける構成を示す図であり、図5(a)は斜視図であり、図5(b)は図5(a)におけるA−A線矢視による断面図である。
【0042】
キャップ部59aは、図5(a)に示すように、記録ヘッド54の噴射面110aを区画するように当接する隔壁160と、隔壁160を冷却する冷却機構161と、を備えている。隔壁160は樹脂を成形することで構成されている。隔壁160の先端は、平面視した状態で各ノズル列L1〜L4を囲む長孔状のリブ構造となっている。具体的に、隔壁160は各ノズル列L1〜L4に対応する複数の開口部分160aを構成しており、噴射面110aに当接した際に、開口部分160aと噴射面110aとの間に形成される空間に各ノズル列L1〜L4をそれぞれ封止するようになっている。
【0043】
キャップ部59aは、図5(b)に示すように、各開口部分160aの底部に対応する位置に排出チューブ(チューブ)TBが接続されており、該排出チューブTBを介して廃液タンク(不図示)と連通している。排出チューブTBの途中位置には該排出チューブTB内をキャップ部59a側から廃液タンク側に向かって吸引可能な減圧ポンプPが設けられている。これにより、キャップ部59aは、減圧ポンプPを駆動することで各開口部分160aと噴射面110aとの間に形成される空間を減圧し、各ノズル列L1〜L5のノズルNZごとに強制的にインクを排出するいわゆるクリーニングが行えるようになっている。すなわち、排出チューブTBと減圧ポンプPとは、本発明の減圧機構を構成している。なお、クリーニングによってキャップ部59a内に排出された排出インクは排出チューブTBを介して廃液タンク内に回収されるようになっている。
【0044】
上記冷却機構161は、隔壁160内に埋め込まれた流路162と、流路162に冷媒を供給する冷媒供給部163と、を含む。流路162はチューブ部材からなり、隔壁160と一体成形されている。また、冷媒供給部163は、流路162内に例えば水等の冷媒を供給することで隔壁160を冷却するようになっている。また、冷媒供給部163は、流路162に対して冷媒を循環させる構成を採用している。
【0045】
これにより、隔壁160を冷却することで温度が上昇した冷媒を循環させることで温度を低下させた後、再度流路162に供給することができる。よって、流路162に供給される冷媒の温度を一定に保つことができ、隔壁160を良好に冷却することが可能となっている。なお、本実施形態では、開口部分160a間に位置する隔壁160に流路162が2本ずつ埋め込まれている。これにより、隔壁160を効率的に冷却可能となっている。
【0046】
このような構成に基づき、メンテナンスユニット59は、隔壁160を冷却することで開口部分160aの内壁に結露を生じさせることが可能となっている。
【0047】
ところで、冷却機構161は、構造上、冷媒供給部163から排熱が排出されるようになっている。本実施形態においては、冷却機構161から排出される排熱による温風が排熱ダクト(排熱供給部)101を介して後述の強制乾燥装置60に供給されるようになっている。具体的に、排熱ダクト101は、冷却機構161の排熱による温風を強制乾燥装置60に供給することでヒーター88による発熱動作を補助するようになっている。
【0048】
図1に示したように、第3区画室35内における左寄りの位置には印刷領域Aで印刷された後の連続紙12を強制的に乾燥させるための強制定着手段及び強制乾燥手段としてのZ方向に長い強制乾燥装置60が設けられている。そして、転換ローラー49に巻き掛けられて鉛直下方に搬送された連続紙12は、強制乾燥装置60内を通って該強制乾燥装置60の下側に回転可能に設けられた反転ローラー61に左側上方から巻き掛けられてやや右斜め上方に向かって搬送されるようになっている。
【0049】
このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域としての強制乾燥領域Bとされている。そして、連続紙12の搬送方向(ここではZ方向)における強制乾燥領域Bの距離は、連続紙12の搬送方向(ここではY方向)における印刷領域Aの距離の正の整数倍(本実施形態では1倍)となるように設定されている。ちなみに、本実施形態では、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離と印刷領域Aの距離とは等しくなるように設定されている。
【0050】
また、連続紙12の搬送経路の途中位置であって印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間で連続紙12が転換ローラー49に巻き掛けられる領域は、印刷領域Aで印刷された後の連続紙12が強制乾燥領域Bで強制乾燥される前に自然乾燥される領域となるため、自然乾燥領域Cとされている。なお、本実施形態では、強制乾燥領域Bと自然乾燥領域Cとにより定着領域としての乾燥領域が構成されている。
【0051】
反転ローラー61から右斜め上方に向かって搬送された連続紙12は、第3区画室35内における右下端部に回転可能に設けられた中継ローラー62に左側下方から巻き掛けられ、第3区画室35内を本体ケース16の右壁に沿うように上方に向かって搬送されるようになっている。第3区画室35内における反転ローラー61と中継ローラー62との間の位置には、強制乾燥領域Bで強制乾燥された後の連続紙12に張力を付与するように該連続紙12を下側から押圧する押圧部材としてのダンサーローラー93が設けられている。
【0052】
また、本体ケース16の右壁における第3区画室35の上端部と対応する位置には連続紙12を巻き取り部15側へ搬出するための図示しない搬出口が設けられており、第3区画室35には上記搬出口と近接位置で対向するように送り出し駆動ローラー64が回転駆動可能に設けられている。そして、この送り出し駆動ローラー64を駆動することで、連続紙12が上記搬出口を介して巻き取り部15側へ送り出されるようになっている。
【0053】
図1に示したように、巻き取り部15は直方体状の巻き取りフレーム68を備えており、巻き取りフレーム68の高さは送り出し駆動ローラー64の高さとほぼ同じになっている。巻き取りフレーム68の前面における上端部には中継ローラー69が回転可能に設けられている。上記搬出口から送り出される連続紙12は、中継ローラー69に左側上方から巻き掛けられ、真下に向かって搬送されるようになっている。
【0054】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラー69の下側の位置には、中継ローラー69から真下に向けて搬送された連続紙12を搬送方向(ここでは下方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置72が設けられている。巻き取りフレーム68の前面におけるガイド装置72の下側の位置には中継ローラー73が回転可能に設けられており、ガイド装置72を介して下方に搬送ガイドされる連続紙12は中継ローラー73に左側から巻き掛けられて右斜め下方に向かって搬送されるようになっている。
【0055】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラー73の右斜め下方には前方に向かって延びる巻き取り駆動軸74が巻き取りフレーム68に対して回転駆動可能に支持されている。巻き取り駆動軸74には中継ローラー73から右斜め下方に向かって搬送された連続紙12が巻き付けられており、該巻き取り駆動軸74を回転駆動することで巻き取り駆動軸74に連続紙12が順次巻き取られるようになっている。
【0056】
巻き取り駆動軸74の基端には該巻き取り駆動軸74と一体に回転する円板状の回転板75が設けられており、該回転板75は巻き取り駆動軸74で連続紙12を巻き取る際に、連続紙12が正確に巻き取られるようにするためのガイドとして機能するようになっている。
【0057】
次に、強制乾燥装置60の構成について図6乃至図8を参照しながら詳述する。
図6乃至図8に示すように、強制乾燥装置60は断面視矩形状をなす乾燥ケース80を備えており、該乾燥ケース80内におけるY方向のほぼ中央には該乾燥ケース80内を左右2つの区画室に区画する区画プレート81が設けられている。乾燥ケース80内において、区画プレート81の右側の区画室は温風が送入される温風送入室82とされ、区画プレート81の左側の区画室は印刷された後の連続紙12が乾燥される乾燥室83とされている。
【0058】
区画プレート81には温風送入室82と乾燥室83とを連通する多数の連通孔81aが形成されており、連通孔81aは区画プレート81全体にわたってX方向及びY方向に規則的に配列されている。すなわち、区画プレート81には、該区画プレート81全体にわたって多数の連通孔81aが均一に配列形成されている。
【0059】
乾燥ケース80の上下両壁における乾燥室83と対応する位置には、乾燥室83の内外を貫通するように平面視矩形状の貫通孔84がそれぞれ設けられている。したがって、転換ローラー49から搬送される連続紙12は、乾燥ケース80の上側の貫通孔84、乾燥室83、下側の貫通孔84を通って反転ローラー61側へ搬送されるようになっている。この場合、連続紙12は、乾燥室83内を搬送される際に、印刷された面である表面が区画プレート81の左面と対向するようになっている。
【0060】
乾燥ケース80の後側には送風ファン85が設けられており、該送風ファン85の上面には送風ファン85を駆動するためのファンモーター86が設けられている。送風ファン85の前面における右端側には図示しない送風口が設けられており、該送風口は乾燥ケース80の後壁における温風送入室82と対応する位置に温風送入室82の内外を貫通するように設けられた送入口87に臨んでいる。
【0061】
また、乾燥ケース80の後側であって送風ファン85の左斜め前側にはヒーター88が設けられており、該ヒーター88は送風ファン85の前面と左面との間の面に設けられた図示しない吸気口に臨んでいる。
【0062】
具体的に本実施形態においては、図8に示すように、ヒーター88の吸気口88aに排熱ダクト101が接続されている。これにより、上述のように冷却機構161が排出した排熱による温風が排熱ダクト101を介してヒーター88に供給されるようになっている。本実施形態では、冷媒供給部163から排出される排熱の温度が例えば35℃〜40℃に設定されている。ヒーター88は、吸気口88aから取り込んだ排熱により温められた空気(温風)を例えば60℃〜80℃の範囲まで加熱する。
【0063】
ヒーター88で上記所定温度まで加熱された空気は送風ファン85へと送られる。そして、送風ファン85が駆動することで、ヒーター88によって暖められた空気が送風ファン85の吸気口(図示略)から吸入されて送風ファン85の送風口(図示略)から温風として温風送入室82内に送入されるようになっている。
【0064】
そして、温風送入室82内に送入された温風が区画プレート81に設けられた各連通孔81aから乾燥室83内を搬送される連続紙12の表面に均一に吹き付けられることで、該連続紙12が強制的に均一に乾燥されるようになっている。なお、図6乃至図8における矢印は、連続紙12の表面に吹き付けられる温風を示している。
【0065】
ところで、強制乾燥装置60は、ヒーター88で加熱された空気が所定温度(60℃〜80℃)に到達するまで上記送風ファン85を駆動しない。これは、所定温度に到達していない温風は、上記温風送入室82内の連通孔81aを介して乾燥室83に供給したとしても連続紙12の表面を良好に乾燥できないためである。
【0066】
従って、プリンター11は、ヒーター88による加熱後の空気が所定温度に到達するまで、連続紙12に対する印刷処理を開始しないようにしている。以下、上述のようなヒーター88による加熱後の空気が所定温度に到達するまでの時間、すなわち連続紙12に対する印刷動作が可能な状態となるまでの時間を印刷開始準備時間と呼ぶことにする。
【0067】
このような印刷開始準備時間は短いのが望ましい。これに対し、本実施形態に係るプリンター11では、上述のように冷却機構161が排出した排熱による温風(35℃〜40℃)が排熱ダクト101を介してヒーター88に供給されるため、ヒーター88は冷却機構161の排熱により予備加熱された空気を加熱している。従って、ヒーター88は、常温の外気を吸気口88aから取り込んで加熱する場合に対し、極めて短い時間で空気を所定温度(60℃〜80℃)まで加熱することができる。
【0068】
このように本実施形態では、冷却機構161が排出した排熱を有効に利用することで上述した印刷開始準備時間を大幅に短縮することができる。また、冷却機構161から排出される排熱を連続紙12の乾燥に再利用するため、省エネルギー効率を向上することができる。また、ヒーター88による発熱量を少なくできるため、ヒーター88による消費電力を抑えることができる。さらに、プリンター11は、従来はプリンター11の外部に全て排出されていた冷却機構161の排熱を有効に利用するため、排熱によりプリンター11の周辺環境の温度が上昇するのを抑制することができる。よって、例えば、プリンター11の周辺環境の温度を一定に保持するための空調設備を別途用意する必要が無い。
【0069】
図6に示したように、押圧手段としての押圧ユニット63は、第3区画室35(図1参照)の内底面に固定されるとともに上面が左側に傾斜した台座90を備えている。台座9の上面には弾性部材としてのコイルばね91が立設されており、該コイルばね91の先端(上端)には枠状のローラー支持部材92が支持されている。ローラー支持部材92にはダンサーローラー93が該ローラー支持部材92に対して回転可能に軸支されており、該ダンサーローラー93は連続紙12の印刷された面とは反対側の面である裏面に当接している。
【0070】
この場合、ダンサーローラー93はコイルばね91によりローラー支持部材92を介して常に連続紙12側である上側に向かって付勢されている。したがって、ダンサーローラー93は、連続紙12に張力を付与するように、該連続紙12の裏面を常に押圧するようになっている。
【0071】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について説明する。
連続紙12は、プラテン48上にて最初に印刷する部分の印刷が完了すると、この最初に印刷が完了した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には2番目に印刷する部分が搬送されて支持される。このとき、連続紙12において最初に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0072】
したがって、2番目に印刷する部分が印刷されている間、連続紙12は、最初に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。引き続き、プラテン48上にて2番目に印刷する部分の印刷が完了すると、連続紙12は、この2番目に印刷した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には3番目に印刷する部分が搬送されて支持される。
【0073】
すると、連続紙12において、最初に印刷が完了した部分のうち自然乾燥領域Cに位置していた部分は強制乾燥領域Bに位置するとともに、強制乾燥領域Bに位置していた部分は強制乾燥領域Bよりも下流側に搬送される。このとき、2番目に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0074】
したがって、連続紙12は、3番目に印刷する部分が印刷されている間、2番目に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。このようにして連続紙12には印刷領域Aの距離単位で順次印刷が行われる。
【0075】
そして、本実施形態では、連続紙12が一定時間毎に間欠的に搬送されるとともに、連続紙12の搬送方向における印刷領域Aの距離と強制乾燥領域Bの距離とが等しくなっているので、強制乾燥領域Bでの各印刷領域Aの距離単位における連続紙12の強制乾燥時間は一定となる。この場合、強制乾燥領域Bの距離が印刷領域Aの距離の正の整数倍(1倍、2倍、3倍、・・・)となるように設定されていれば、連続紙12の強制乾燥領域Bにおける強制乾燥時間は一定になる。
【0076】
そして、本実施形態のように、自然乾燥領域Cが存在し、印刷領域Aに相当する分の連続紙12を一括して強制乾燥領域Bに挿入できないときでも、連続紙12を間欠して搬送し続ける中で、連続紙12における1回分の印刷が完了した領域のうち、先に強制乾燥領域Bに挿入された部分における強制乾燥時間と、後に挿入された部分における強制乾燥時間とはトータルとして同じになる。
【0077】
したがって、各印刷領域Aの距離単位毎の連続紙12は全て均一に乾燥されるため、長尺状の連続紙12全体も均一に乾燥される。なお、本実施形態では、連続紙12として印刷後のインクが特に乾燥しにくい光沢紙を用いているが、印刷後の連続紙12は、強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられるため、限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥される。このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域(強制乾燥領域B)とされ、光沢紙(連続紙12)等に印字された液体(インク)を定着するための手段を備えることで良好な印刷物が得られる。
【0078】
また、連続紙12に光沢紙を用いると、印刷した後に乾燥させると膨張したりしわができたりして搬送時に弛むことがある。この点、本実施形態では、連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bのすぐ下流側に、連続紙12に対して張力を付与するように押圧するダンサーローラー93が設けられているため、連続紙12の弛みが効果的に抑制される。したがって、連続紙12が搬送時にX方向に蛇行することが抑制される。このとき、ダンサーローラー93は、連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧しているため、連続紙12に印刷された印刷画像に悪影響を及ぼすことはない。
【0079】
また、ダンサーローラー93はコイルばね91に支持されたローラー支持部材92によって支持されているため、ダンサーローラー93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分がコイルばね91の弾力性によって吸収される。このため、ダンサーローラー93により連続紙12に対して常に適度な張力が与えられる。
【0080】
また、本実施形態に係るプリンター11は、印刷後の連続紙12が強制乾燥領域Bで温風を吹き付けられて強制的に乾燥されるので、印刷後の連続紙12を限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥させることができる。このため、印刷後の連続紙12が乾燥不足の状態で巻き取り駆動軸74に巻き取られることを抑制することができる。
【0081】
また、連続紙12は印刷領域Aの距離単位で一定時間毎に間欠的に搬送され、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離は印刷領域Aの距離の1倍となるように設定されている。このため、連続紙12が印刷領域Aの距離単位毎に強制乾燥領域Bで乾燥される時間が一定となるので、印刷後の連続紙12を均一に乾燥することができる。
【0082】
また、連続紙12の搬送経路において、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間には自然乾燥領域Cが設けられているため、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとは自然乾燥領域Cの距離分だけ離間される。加えて、連続紙12の搬送方向は、自然乾燥領域Cにおいて転換ローラー49により水平右方向から鉛直下方向に、すなわち記録ヘッド54から遠ざかる方向に転換されている。このため、強制乾燥領域Bにおいて印刷後の連続紙12を強制乾燥させる際に該連続紙12に吹き付ける温風が、印刷領域Aでの連続紙12の印刷に対して悪影響を及ぼすことを効果的に抑制することができる。
【0083】
なお、上記強制乾燥領域Bでは、上述のように冷却機構161が排出した排熱を有効利用したヒーター88によって加熱した温風を強制乾燥装置80が乾燥室83内を搬送される連続紙12の表面に均一に吹きつけている。
【0084】
また、連続紙12の搬送経路において、ガイド部24及びガイドブロック25は巻き軸18の直ぐ下流側に配設され、ガイド装置43はプラテン48の直ぐ上流側に配設され、ガイド装置72は巻き取り駆動軸74の直ぐ上流側に配設されている。このため、連続紙12の搬送経路において、特に、ガイド部24及びガイドブロック25、ガイド装置43、及びガイド装置72の直ぐ下流側で連続紙12が蛇行して搬送されることを抑制することができる。したがって、ガイド部24及びガイドブロック25により本体部14側へ正確に連続紙12を搬送することができること、ガイド装置43によりプラテン48の上面に正確に連続紙12を搬送することができること、及びガイド装置72により連続紙12が正確に巻き取られるようにすることができることの3つの効果を同時に得ることができる。
【0085】
また、連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bの直ぐ下流側の位置には、強制乾燥後の連続紙12に張力を付与するダンサーローラー93が設けられているため、印刷して強制乾燥させた際に連続紙12が弛んだとしても、該強制乾燥後の連続紙12に対して好適に張力を付与することができる。このため、印刷して強制乾燥させた後の連続紙12の搬送時における弛みを解消することができるので、該連続紙12が搬送時に蛇行することを抑制することができる。
【0086】
また、ダンサーローラー93は連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧することで該連続紙12に対して張力を付与しているため、連続紙12の表面に印刷された印刷画像に対してダンサーローラー93が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0087】
また、連続紙12に対して張力を付与するダンサーローラー93はコイルばね91に支持されたローラー支持部材92によって回転可能に支持されている。このため、ダンサーローラー93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分をコイルばね91の弾力性によって吸収することができるので、ダンサーローラー93によって連続紙12に付与される張力の変動を抑えることができる。すなわち、ダンサーローラー93によって連続紙12に付与される張力を安定させることができる。
【0088】
ところで、本実施形態に係るプリンター11は、印刷処理を行っている場合、メンテナンスユニット59のキャップ部59aが記録ヘッド54に当接していない状態となっている。そのため、本体部14内においてキャップ部59aが露出した状態となっている。一方、印刷処理中においては、強制乾燥装置60によって暖められた空気が本体部14内に広がるため、キャップ部59aが高温環境下に曝されることとなる。すると、クリーニングによってキャップ部59aに付着しているインクの乾燥が促進されて、キャップ部59a内でインク詰まりが生じる結果、キャップ部59aの寿命が短くなる可能性がある。
【0089】
これに対し、本実施形態に係るメンテナンスユニット59は、プリンター11が印刷処理を行っているときに、隔壁160内に埋め込まれた流路162に冷媒を供給することで隔壁160を冷却し、冷却された隔壁160と外気温との温度差によって開口部分160a(キャップ部59a)の内壁を結露させることができる。
【0090】
これにより、各開口部分160a内を保湿することで、キャップ部59aを噴射面110aに当接した際、各ノズル列L1〜L5のノズルNZをそれぞれ良好に保湿できる。すなわち、本発明は、強制乾燥装置60を備えたプリンターにおいて特に顕著な効果を得ることができる。
【0091】
また、メンテナンスユニット59は、開口部分160aの内壁に結露した水分を吸引するようにしてもよい。これにより、開口部分160a内に付着している廃インク及び排出チューブTB内の廃インクのインク濃度を低下させることができ、廃インクが乾燥して固化するのを抑制できる。
【0092】
また、冷媒供給部163は流路162に対して冷媒を循環させることで、隔壁160を冷却して温度が上昇した冷媒の温度を低下させた後、再度流路162に供給するため、流路162に一定の温度の冷媒を供給することができる。よって、隔壁160を効率的に冷却するができ、ノズルNZの乾燥を良好に抑制できる。
【0093】
このように、メンテナンスユニット59は、結露により生じた水分によって開口部分160a内を保湿することでインクが乾燥を抑制するので、インク詰まりの発生によって生じるキャップ部59aの寿命を延ばすことができる。
また、メンテナンスユニット59は、結露した水分を利用することでノズルNZを保湿する構成を採用することで、開口部分160a内に外部から水を供給する給水機構を別途用意する必要が無い。
【0094】
以上のように、本実施形態に係るプリンター11によれば、冷却機構161から供給される排熱を利用することで省エネルギー効率を向上させつつ、排熱による温風を用いてヒーター88の発熱をアシストすることができる。よって、排熱がヒーター88の駆動時における温度上昇速度を向上させることができ、ヒーター88が所定温度に到達することで記録ヘッド54から連続紙12上にインクが噴射する印刷処理を開始するまでに要する印刷開始準備時間を大幅に短縮できる。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、冷却機構161から排出された排熱が常にヒーター88に供給される構成となっていたが、排熱を必要に応じてヒーター88に供給する構成であっても構わない。
【0096】
この場合、排熱ダクト102は、図9に示すように冷却機構161と反対側の端部に分岐部103を備えている。分岐部103は、第1分岐路103a及び第2分岐路103bを有している。第1分岐路103aは冷却機構161からの排熱をヒーター88へと供給するためのものであり、第2分岐路103bは冷却機構161からの排熱をヒーター88とは異なる場所、一例としてプリンター11の外部に放出するためのものである。
【0097】
また、第1分岐路103a及び第2分岐路103bには、それぞれの内部流路を閉塞可能な閉塞バルブB1,B2が設けられている。また、閉塞バルブB1,B2には、該閉塞バルブB1,B2の開閉を制御する制御装置(バルブ開閉制御部)105が接続されている。制御装置105は、プリンター11における各駆動部の駆動を制御する機能も有している。
【0098】
制御装置105は、例えば閉塞バルブB1を開き、閉塞バルブB2を閉じるように制御することで冷却機構161が排出した排熱をヒーター88に供給することができる。また、制御装置105は、例えば閉塞バルブB1を閉じ、閉塞バルブB2を開くように制御することで冷却機構161が排出した排熱をヒーター88に供給しない状態とすることができる。
【0099】
この構成によれば、制御装置105は閉塞バルブB1,B2の開閉を制御することで排熱のヒーター88への供給の有無を必要に応じて切り替えることができる。また、制御装置105は閉塞バルブB1,B2の開き量をそれぞれ調整することで、すなわち同時に閉塞バルブB1,B2を開いた状態とすることでヒーター88に供給する排熱の量を種々の値に調整することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、冷却機構161から排出された排熱がヒーター88のみに供給される場合について説明したが、記録ヘッド54による連続紙12に対する印刷処理が行われる印刷室31内の空間(印刷空間)に排熱の一部を供給する構成であっても構わない。この場合、図10に示すように排熱ダクト101を印刷室31に引き回せばよい。
【0101】
この構成によれば、印刷室31内に排熱を供給することで空調設備を用いることなく、印刷室31内の温度を上昇させることができる。よって、印刷空間内の連続紙12を間接的に加熱することで連続紙12上に噴射されたインクの乾燥速度を速めることができる。従って、インク着弾後の連続紙12が搬送される際の振動等によってインクが連続紙12上に濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の発生を抑制することができる。
【0102】
あるいは、図11に示すように、記録ヘッド54による印刷処理を行う印刷領域Aにおいて連続紙12を支持するプラテン106を設けた場合において、該プラテン106に対して排熱の一部を供給する構成であっても構わない。なお、プラテン106は、連続紙12に対して均一に排熱による温風を噴射するための複数の開口部が形成された構造であっても構わない。
【0103】
この構成によれば、プラテン106に排熱を供給することでプラテン106の温度を上昇させることができる。よって、プラテン106を介して連続紙12を直接的に加熱することで連続紙12上に噴射されたインクを短時間で乾燥させることができる。従って、インク着弾後の連続紙12が搬送される際の振動等によってインクが連続紙12上に濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の発生を抑制することができる。
【0104】
なお、このように印刷室31内に排熱を供給する場合、或いはプラテン108に排熱を供給する場合には、キャップ部59aに対して排熱が悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態では上述のようにキャップ部59a内に結露を生じさせることでキャップ部59a内にてインク詰まりが発生することが抑制されるため、問題ない。
【0105】
また、上記実施形態では、流路162が隔壁160を貫通した状態で形成される場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることはない。上述したように流路162はチューブ部材からなり隔壁160と一体成形されて構成されることから、開口部分160aの周囲を囲むように流路162を引き回す構成を採用できる。この構成によれば、開口部分160aの周囲を囲むように流路162が配置されるので、開口部分160aを全域に亘って冷却することができ、開口部分160a内に結露を良好に生じさせることができる。
【0106】
また、上記実施形態では、排出チューブTBごとに減圧ポンプPが設けられる場合を例に挙げたが、弁機構を組み合わせることで1つの減圧ポンプPによって複数の排出チューブTBを介して各開口部分160a内を減圧するようにしても構わない。
【0107】
また、強制乾燥装置60は、送風ファン85を省略し、ヒーター88の輻射熱によって印刷後の連続紙12を強制乾燥するように構成してもよい。また、連続紙12の代わりに、単票紙や長尺状のプラスチックフィルムなどをターゲットとして用いてもよい。
【0108】
なお、上記実施形態では、冷媒として流路162内に例えば水を供給する構成について説明したが、冷媒としては水以外の二酸化炭素、アンモニア等を用いることができる。
【0109】
また、上述の実施形態では、本発明の液体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、上述液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0110】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては、上述実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0111】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0112】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0113】
NZ…ノズル、11…プリンター(液体噴射装置)、54…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、59a…キャップ部、101,102…排熱ダクト(排熱供給部)、110a…噴射面(ノズル形成面)、160a…開口部分、160…隔壁、161…冷却機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク滴をインクジェットヘッドのノズルから記録紙(媒体)に対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。プリンターにおいては、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を抑制すべく、メンテナンスユニットに含まれるキャップを用いてノズル形成面を封止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載のプリンターは、ターゲットに噴射したインクをヒーターで加熱することで強制的に定着させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、ヒーターが所定温度に到達するまでに時間を要するため、プリンターの初期駆動時においては印刷可能な状態となるまでの時間が長くなるといった問題があった。また、ヒーターの熱を効率的に利用することで省エネ化が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一つに鑑みてなされたものであって、ヒーターを備えた構成においてエネルギー効率を高めるとともに印刷動作可能状態に短時間で移行できる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部と、前記キャップ部に設けられ、前記ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構と、前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記媒体上に噴射された前記液体を加熱することで乾燥させて前記媒体に定着させる加熱機構と、前記冷却機構から排出される排熱を前記加熱機構に供給する排熱供給部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体噴射装置によれば、冷却機構から供給される排熱による温風が加熱機構の発熱をアシストすることができる。よって、排熱が加熱機構の駆動時における温度上昇速度を向上させることができ、加熱機構が所定温度に到達することで噴射ヘッドから媒体上に液体を噴射する印刷可能状態に短時間で移行することができる。また、冷却機構の排熱を再利用することで省エネルギー効率を向上させることができる。
【0008】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記排熱を前記加熱機構側へ供給する第1分岐路及び前記排熱を前記加熱機構とは異なる場所へ放出する第2分岐路を有する分岐部と、前記第1分岐路及び前記第2分岐路をそれぞれ閉塞可能な閉塞バルブと、前記閉塞バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御部と、を備えるのが好ましい。
この構成によれば、バルブ開閉制御部が閉塞バルブの開閉動作を制御することで排熱の加熱機構への供給の有無を必要性に応じて切り替えることができる。よって、例えば第1分岐路のみを開くことで加熱機構に排熱を供給することができ、第2分岐路のみを開くことで不要な排熱を加熱機構とは異なる外部に放出することができる。また、第1分岐路及び第2分岐路の各閉塞バルブの開き量をそれぞれ調整することで加熱機構に供給する排熱量を種々に設定することができる。
【0009】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷空間に前記排熱を供給するのが好ましい。
この構成によれば、排熱を供給することで印刷空間の温度を上昇させることができる。よって、印刷空間内にある媒体を間接的に加熱することで媒体上に噴射された液体の乾燥速度を速めることができる。従って、媒体が搬送される際の振動等によって液体が濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の低下を抑制できる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷領域において前記媒体を支持する媒体支持部材に排熱を供給して前記媒体支持部材を加熱するのが好ましい。
この構成によれば、媒体支持部材の温度を上昇させることができる。よって、媒体支持部材を介して媒体を直接的に加熱することで媒体上に噴射された液体を短時間で乾燥させることができる。従って、媒体が搬送される際の振動等によって液体が濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェット式プリンターの概略正面図。
【図2】同プリンターの概略平面図。
【図3】同プリンターの記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図4】記録ヘッドのノズル基板を下面側から視た図。
【図5】(a)はキャップ部の斜視構成図、(b)は断面構成図。
【図6】同プリンターの強制乾燥装置の正面拡大断面図。
【図7】同プリンターの強制乾燥装置の平面拡大図。
【図8】排熱ダクトの接続部の要部構成を示す図。
【図9】排熱ダクトの変形例に係る構成を示す図。
【図10】排熱の供給先における変形例に係る構成を示す図。
【図11】排熱の供給先における変形例に係る構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、液体の噴射方向をZ方向とし、ヘッドの移動方向をY方向とし、Z方向とY方向とに直交する方向をX方向とした。
【0013】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、プリンターと称す)11は、長尺状のターゲットとしての連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、連続紙12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されるとともに下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。
【0014】
繰り出し部13は本体ケース16の左面下端部から左方に延びる支持板17を備えており、該支持板17の前面は鉛直面になっている。支持板17の前面における先端部には前方(図1において紙面と直交する方向の手前側)に向かって延びる巻き軸18が支持板17に対して回転可能に支持されている。また、巻き軸18の基端には、円板状の回転板19が巻き軸18と一体回転するように設けられている。
【0015】
そして、巻き軸18には予めロール状に巻かれた連続紙12が該巻き軸18と一体回転可能に支持されており、このロール状に巻かれた連続紙12における両側縁のうち回転板19側の側縁は回転板19の前面に当接している。すなわち、巻き軸18に予めロール状に巻かれた連続紙12を支持させた際に、このロール状に巻かれた状態の連続紙12における一方の側縁が回転板19の前面に当接することで、連続紙12の搬送方向と直交するX方向での位置決めがなされるようになっている。なお、本実施形態の連続紙12には光沢紙が用いられている。
【0016】
図1及び図2に示すように、繰り出し部13は本体ケース16の左面中央部から左方に向かって水平に延びる平板状の繰り出し台20を備えており、該繰り出し台20の先端部には巻き軸18から繰り出される連続紙12を巻き掛けて繰り出し台20の上面に導くための中継ローラー21が回転可能に設けられている。
【0017】
図2に示すように、繰り出し台20の上面における後端縁には、Y方向に沿って延びる細長いブロック状のガイド手段としてのガイド部24が、該後端縁のほぼ全体にわたって設けられている。さらに、繰り出し台20の上面には、ガイド部24の左端部と対向するように配置されたガイド手段としてのガイドブロック25が設けられている。繰り出し台20の上面におけるガイド部24とガイドブロック25との間の領域は連続紙12の搬送経路の一部になっており、ガイド部24とガイドブロック25とは連続紙12のX方向の幅と同じ距離だけ離間している。
【0018】
そして、繰り出し台20の上面に沿って連続紙12が右側(本体部14側)に向かって搬送される際には、連続紙12のX方向の側縁がガイド部24及びガイドブロック25に対して摺動することで、連続紙12が搬送方向(ここでは右方向)に沿ってガイドされるようになっている。なお、繰り出し台20の上面においてガイドブロック25はX方向に移動可能になっており、連続紙12のX方向の幅が変更された場合には、ガイドブロック25を移動させることで、ガイド部24とガイドブロック25との間の距離が連続紙12のX方向の幅に合わせて変更される。
【0019】
図1に示すように、本体部14の本体ケース16内におけるZ方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース16内をZ方向沿って区画する平板状のベース部材としての基台30が設けられており、本体ケース16内における基台30よりも上側の領域は連続紙12に印刷を行うための印刷室31となっている。一方、本体ケース16内における基台30よりも下側の領域には、Y方向に並ぶように区画された3つの区画室33,34,35が形成されている。なお、これら3つの区画室は、左から順に第1区画室33、第2区画室34、第3区画室35とされている。
【0020】
本体ケース16の左壁には繰り出し台20の上面から第1区画室33内に連続紙12を搬入するための図示しない搬入口が設けられており、第1区画室33には上記搬入口と近接位置で対向するように引き込み駆動ローラー36が回転駆動可能に設けられている。すなわち、引き込み駆動ローラー36は、第1区画室33の左端部に配設されている。
【0021】
また、第1区画室33内における引き込み駆動ローラー36の右方には中継ローラー40が回転可能に設けられている。そして、引き込み駆動ローラー36の駆動によって第1区画室33内に引き込まれた連続紙12は、印刷室31の左端部寄りの位置に向かうように中継ローラー40に巻き掛けられている。
【0022】
第1区画室33内における引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間には図示しない昇降機構の駆動に基づき昇降移動する昇降ローラー42が設けられている。そして、この昇降ローラー42に対しては連続紙12が下側から巻き掛けられている。
【0023】
ここで、引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間に位置する連続紙12の長さは、昇降ローラー42が下降するほど長くなるとともに、昇降ローラー42が上昇するほど短くなるようになっている。すなわち、昇降ローラー42が下側に位置するほど引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間の連続紙12の搬送距離が長くなるとともに、昇降ローラー42が上側に位置するほど引き込み駆動ローラー36と中継ローラー40との間の連続紙12の搬送距離が短くなるようになっている。
【0024】
図1に示すように、基台30における中継ローラー40と対向する位置には、該基台30をZ方向に貫通するように、連続紙12を搬送方向(ここでは上方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置43が設けられている。印刷室31内におけるガイド装置43の上側には中継ローラー46が設けられており、該中継ローラー46には連続紙12が左側下方から巻き掛けられて右方向に水平に搬送されるようになっている。
【0025】
印刷室31内における中継ローラー46の右側の領域には、基台30上に支持された矩形板状の支持部材としてのプラテン48が設けられている。プラテン48の右側には、該プラテン48を挟んで中継ローラー46と対向するように転換ローラー49が設けられている。この場合、中継ローラー46の上面、プラテン48の上面、及び転換ローラー49の上面は、互いに面一になっている。
【0026】
転換ローラー49には中継ローラー46からプラテン48の上面に沿って水平右方向に搬送される連続紙12が左側上方から巻き掛けられて連続紙12の搬送方向が水平右方向から鉛直下方向に転換されている。そして、転換ローラー49によって搬送方向が鉛直下方向に転換された連続紙12は、基台30に設けられた図示しない挿通孔を通って第3区画室35内に搬送されるようになっている。
【0027】
印刷室31内におけるプラテン48のX方向両側にはY方向に延びるガイドレール50(図1では二点鎖線で示す)が対をなすように設けられており、該ガイドレール50の上面はプラテン48の上面よりも高くなっている。両ガイドレール50の上面には、矩形板状のキャリッジ51が該両ガイドレール50に沿ってY方向へ往復移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ51は、図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール50上をY方向に移動するようになっている。
【0028】
図1及び図2に示すように、キャリッジ51の下面には、矩形板状のスライド板53が該キャリッジ51に対してX方向にスライド移動可能に支持されている。スライド板53の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド54が支持されている。
【0029】
ここで、記録ヘッド54の構成について図3を参照して説明する。図3に示すように、記録ヘッド54は、合成樹脂などを用いて形成されたヘッドケース118を主体として構成されている。ヘッドケース118は、例えば中空部を有するように箱型に形成されている。ヘッドケース118の下端面には、流路ユニット119が接合されている。ヘッドケース118の内部に形成された中空部137内には、アクチュエータユニット120が収容されている。
【0030】
ヘッドケース118の内部には、高さ方向を貫通してケース流路125が設けられている。ケース流路125の下端は、流路ユニット119内の共通インク室144に連通されている。このため、インクカートリッジ(図示略)から導入されたインクは、ケース流路125を通じて共通インク室144側に供給されるようになっている。
【0031】
アクチュエータユニット120は、例えば櫛歯状に配置された複数の圧電振動子138と、当該圧電振動子138を保持する固定板139と、圧電振動子138に対して制御装置(不図示)からの駆動信号を供給するフレキシブルケーブル140とを有している。
【0032】
圧電振動子138は、図中下側端部が固定板139の下端面から突出するように固定されている。このように、各圧電振動子138は、所謂片持ち梁の状態で固定板139上に取り付けられている。各圧電振動子138を支持する固定板139は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。固定板139のうち圧電振動子138の固定された面とは異なる面が中空部137を区画するケース内壁面に接着されている。
【0033】
流路ユニット119は、振動板141、流路基板142及びノズル基板143を有している。振動板141、流路基板142及びノズル基板143は、積層された状態で接着されている。流路ユニット119は、共通インク室144からインク供給口145、圧力室146を通り、ノズルNZに至るまでの一連のインク流路(液体流路)を構成している。圧力室146は、ノズルNZの配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向が長手方向となるように形成されている。
【0034】
共通インク室144は、ケース流路125に接続されている。共通インク室144には、インクカートリッジ側からのインクが導入される室である。また、共通インク室144は、インク供給口145に接続されている。共通インク室144に導入されたインクは、当該インク供給口145を通じて各圧力室146に分配されるようになっている。
【0035】
ノズル基板143は、流路ユニット119の底部に配置されている。ノズル基板143には、連続紙12に印刷する画像などのドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズルNZが形成されている。ノズル基板143としては、例えばステンレス鋼などの金属製の板材が用いられる。図4はノズル基板143の下面側から視た図である。ノズル基板143の下面は、図4に示すように噴射面(ノズル形成面)110aを構成しており、噴射面110aには複数のノズルNZが配置されてなるノズル列L1〜L4が設けられている。
【0036】
また、印刷室31内における本体ケース16の後壁上部には、液体としてのインクを一時貯留する複数のバルブユニット55が設けられている。各バルブユニット55には、互いに色の異なるインクが一時貯留されている。
【0037】
そして、各バルブユニット55は、記録ヘッド54とそれぞれ図示しないインク供給チューブを介して接続されており、該各インク供給チューブを介して記録ヘッド54のノズル列L1〜L4に各インクを供給するようになっている。具体的に、記録ヘッド54は、各ノズル列L1〜L4のノズルNZからそれぞれ異なる色のインクを噴射可能となっている。これにより、記録ヘッド54は、各バルブユニット55から供給されたインクを該各ノズルNZからプラテン48上に搬送されて停止された状態の連続紙12に向かって噴射することで印刷が行われるようになっている。
【0038】
したがって、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の印刷が行われるプラテン48の左端から右端までの領域は液体噴射領域としての印刷領域Aとされており、連続紙12は該連続紙12の搬送経路を印刷領域A単位で間欠的に搬送されるようになっている。
【0039】
なお、本体ケース16内には、互いに色の異なるインクを収容した複数のインクカートリッジ(図示略)が着脱自在な状態で設けられている。これら各インクカートリッジ(図示略)は、図示しないインク供給チューブを介して各バルブユニット55とインク供給可能な状態でそれぞれ接続されている。また、本体ケース16内には、各インクカートリッジ(図示略)内を加圧するための加圧ポンプ(図示略)が設けられており、該加圧ポンプを駆動させることで各インクカートリッジ(図示略)内のインクがインク供給チューブ(図示略)を介して各バルブユニット55にそれぞれ加圧供給されるようになっている。
【0040】
基台30上におけるプラテン48のY両側には、印刷途中に適宜フラッシングを行う際に、記録ヘッド54の各ノズル開口(図示略)から吐出されるインクを受容するためのフラッシングボックス58が設けられている。また、基台30上における左側のフラッシングボックス58の左側には、記録ヘッド54のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット59が設けられている。メンテナンスユニット59は、記録ヘッド54と対応するキャップ部59aを備えており、該キャップ部59aは昇降可能になっている。
【0041】
図5は、メンテナンスユニット59のキャップ部59aにおける構成を示す図であり、図5(a)は斜視図であり、図5(b)は図5(a)におけるA−A線矢視による断面図である。
【0042】
キャップ部59aは、図5(a)に示すように、記録ヘッド54の噴射面110aを区画するように当接する隔壁160と、隔壁160を冷却する冷却機構161と、を備えている。隔壁160は樹脂を成形することで構成されている。隔壁160の先端は、平面視した状態で各ノズル列L1〜L4を囲む長孔状のリブ構造となっている。具体的に、隔壁160は各ノズル列L1〜L4に対応する複数の開口部分160aを構成しており、噴射面110aに当接した際に、開口部分160aと噴射面110aとの間に形成される空間に各ノズル列L1〜L4をそれぞれ封止するようになっている。
【0043】
キャップ部59aは、図5(b)に示すように、各開口部分160aの底部に対応する位置に排出チューブ(チューブ)TBが接続されており、該排出チューブTBを介して廃液タンク(不図示)と連通している。排出チューブTBの途中位置には該排出チューブTB内をキャップ部59a側から廃液タンク側に向かって吸引可能な減圧ポンプPが設けられている。これにより、キャップ部59aは、減圧ポンプPを駆動することで各開口部分160aと噴射面110aとの間に形成される空間を減圧し、各ノズル列L1〜L5のノズルNZごとに強制的にインクを排出するいわゆるクリーニングが行えるようになっている。すなわち、排出チューブTBと減圧ポンプPとは、本発明の減圧機構を構成している。なお、クリーニングによってキャップ部59a内に排出された排出インクは排出チューブTBを介して廃液タンク内に回収されるようになっている。
【0044】
上記冷却機構161は、隔壁160内に埋め込まれた流路162と、流路162に冷媒を供給する冷媒供給部163と、を含む。流路162はチューブ部材からなり、隔壁160と一体成形されている。また、冷媒供給部163は、流路162内に例えば水等の冷媒を供給することで隔壁160を冷却するようになっている。また、冷媒供給部163は、流路162に対して冷媒を循環させる構成を採用している。
【0045】
これにより、隔壁160を冷却することで温度が上昇した冷媒を循環させることで温度を低下させた後、再度流路162に供給することができる。よって、流路162に供給される冷媒の温度を一定に保つことができ、隔壁160を良好に冷却することが可能となっている。なお、本実施形態では、開口部分160a間に位置する隔壁160に流路162が2本ずつ埋め込まれている。これにより、隔壁160を効率的に冷却可能となっている。
【0046】
このような構成に基づき、メンテナンスユニット59は、隔壁160を冷却することで開口部分160aの内壁に結露を生じさせることが可能となっている。
【0047】
ところで、冷却機構161は、構造上、冷媒供給部163から排熱が排出されるようになっている。本実施形態においては、冷却機構161から排出される排熱による温風が排熱ダクト(排熱供給部)101を介して後述の強制乾燥装置60に供給されるようになっている。具体的に、排熱ダクト101は、冷却機構161の排熱による温風を強制乾燥装置60に供給することでヒーター88による発熱動作を補助するようになっている。
【0048】
図1に示したように、第3区画室35内における左寄りの位置には印刷領域Aで印刷された後の連続紙12を強制的に乾燥させるための強制定着手段及び強制乾燥手段としてのZ方向に長い強制乾燥装置60が設けられている。そして、転換ローラー49に巻き掛けられて鉛直下方に搬送された連続紙12は、強制乾燥装置60内を通って該強制乾燥装置60の下側に回転可能に設けられた反転ローラー61に左側上方から巻き掛けられてやや右斜め上方に向かって搬送されるようになっている。
【0049】
このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域としての強制乾燥領域Bとされている。そして、連続紙12の搬送方向(ここではZ方向)における強制乾燥領域Bの距離は、連続紙12の搬送方向(ここではY方向)における印刷領域Aの距離の正の整数倍(本実施形態では1倍)となるように設定されている。ちなみに、本実施形態では、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離と印刷領域Aの距離とは等しくなるように設定されている。
【0050】
また、連続紙12の搬送経路の途中位置であって印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間で連続紙12が転換ローラー49に巻き掛けられる領域は、印刷領域Aで印刷された後の連続紙12が強制乾燥領域Bで強制乾燥される前に自然乾燥される領域となるため、自然乾燥領域Cとされている。なお、本実施形態では、強制乾燥領域Bと自然乾燥領域Cとにより定着領域としての乾燥領域が構成されている。
【0051】
反転ローラー61から右斜め上方に向かって搬送された連続紙12は、第3区画室35内における右下端部に回転可能に設けられた中継ローラー62に左側下方から巻き掛けられ、第3区画室35内を本体ケース16の右壁に沿うように上方に向かって搬送されるようになっている。第3区画室35内における反転ローラー61と中継ローラー62との間の位置には、強制乾燥領域Bで強制乾燥された後の連続紙12に張力を付与するように該連続紙12を下側から押圧する押圧部材としてのダンサーローラー93が設けられている。
【0052】
また、本体ケース16の右壁における第3区画室35の上端部と対応する位置には連続紙12を巻き取り部15側へ搬出するための図示しない搬出口が設けられており、第3区画室35には上記搬出口と近接位置で対向するように送り出し駆動ローラー64が回転駆動可能に設けられている。そして、この送り出し駆動ローラー64を駆動することで、連続紙12が上記搬出口を介して巻き取り部15側へ送り出されるようになっている。
【0053】
図1に示したように、巻き取り部15は直方体状の巻き取りフレーム68を備えており、巻き取りフレーム68の高さは送り出し駆動ローラー64の高さとほぼ同じになっている。巻き取りフレーム68の前面における上端部には中継ローラー69が回転可能に設けられている。上記搬出口から送り出される連続紙12は、中継ローラー69に左側上方から巻き掛けられ、真下に向かって搬送されるようになっている。
【0054】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラー69の下側の位置には、中継ローラー69から真下に向けて搬送された連続紙12を搬送方向(ここでは下方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置72が設けられている。巻き取りフレーム68の前面におけるガイド装置72の下側の位置には中継ローラー73が回転可能に設けられており、ガイド装置72を介して下方に搬送ガイドされる連続紙12は中継ローラー73に左側から巻き掛けられて右斜め下方に向かって搬送されるようになっている。
【0055】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラー73の右斜め下方には前方に向かって延びる巻き取り駆動軸74が巻き取りフレーム68に対して回転駆動可能に支持されている。巻き取り駆動軸74には中継ローラー73から右斜め下方に向かって搬送された連続紙12が巻き付けられており、該巻き取り駆動軸74を回転駆動することで巻き取り駆動軸74に連続紙12が順次巻き取られるようになっている。
【0056】
巻き取り駆動軸74の基端には該巻き取り駆動軸74と一体に回転する円板状の回転板75が設けられており、該回転板75は巻き取り駆動軸74で連続紙12を巻き取る際に、連続紙12が正確に巻き取られるようにするためのガイドとして機能するようになっている。
【0057】
次に、強制乾燥装置60の構成について図6乃至図8を参照しながら詳述する。
図6乃至図8に示すように、強制乾燥装置60は断面視矩形状をなす乾燥ケース80を備えており、該乾燥ケース80内におけるY方向のほぼ中央には該乾燥ケース80内を左右2つの区画室に区画する区画プレート81が設けられている。乾燥ケース80内において、区画プレート81の右側の区画室は温風が送入される温風送入室82とされ、区画プレート81の左側の区画室は印刷された後の連続紙12が乾燥される乾燥室83とされている。
【0058】
区画プレート81には温風送入室82と乾燥室83とを連通する多数の連通孔81aが形成されており、連通孔81aは区画プレート81全体にわたってX方向及びY方向に規則的に配列されている。すなわち、区画プレート81には、該区画プレート81全体にわたって多数の連通孔81aが均一に配列形成されている。
【0059】
乾燥ケース80の上下両壁における乾燥室83と対応する位置には、乾燥室83の内外を貫通するように平面視矩形状の貫通孔84がそれぞれ設けられている。したがって、転換ローラー49から搬送される連続紙12は、乾燥ケース80の上側の貫通孔84、乾燥室83、下側の貫通孔84を通って反転ローラー61側へ搬送されるようになっている。この場合、連続紙12は、乾燥室83内を搬送される際に、印刷された面である表面が区画プレート81の左面と対向するようになっている。
【0060】
乾燥ケース80の後側には送風ファン85が設けられており、該送風ファン85の上面には送風ファン85を駆動するためのファンモーター86が設けられている。送風ファン85の前面における右端側には図示しない送風口が設けられており、該送風口は乾燥ケース80の後壁における温風送入室82と対応する位置に温風送入室82の内外を貫通するように設けられた送入口87に臨んでいる。
【0061】
また、乾燥ケース80の後側であって送風ファン85の左斜め前側にはヒーター88が設けられており、該ヒーター88は送風ファン85の前面と左面との間の面に設けられた図示しない吸気口に臨んでいる。
【0062】
具体的に本実施形態においては、図8に示すように、ヒーター88の吸気口88aに排熱ダクト101が接続されている。これにより、上述のように冷却機構161が排出した排熱による温風が排熱ダクト101を介してヒーター88に供給されるようになっている。本実施形態では、冷媒供給部163から排出される排熱の温度が例えば35℃〜40℃に設定されている。ヒーター88は、吸気口88aから取り込んだ排熱により温められた空気(温風)を例えば60℃〜80℃の範囲まで加熱する。
【0063】
ヒーター88で上記所定温度まで加熱された空気は送風ファン85へと送られる。そして、送風ファン85が駆動することで、ヒーター88によって暖められた空気が送風ファン85の吸気口(図示略)から吸入されて送風ファン85の送風口(図示略)から温風として温風送入室82内に送入されるようになっている。
【0064】
そして、温風送入室82内に送入された温風が区画プレート81に設けられた各連通孔81aから乾燥室83内を搬送される連続紙12の表面に均一に吹き付けられることで、該連続紙12が強制的に均一に乾燥されるようになっている。なお、図6乃至図8における矢印は、連続紙12の表面に吹き付けられる温風を示している。
【0065】
ところで、強制乾燥装置60は、ヒーター88で加熱された空気が所定温度(60℃〜80℃)に到達するまで上記送風ファン85を駆動しない。これは、所定温度に到達していない温風は、上記温風送入室82内の連通孔81aを介して乾燥室83に供給したとしても連続紙12の表面を良好に乾燥できないためである。
【0066】
従って、プリンター11は、ヒーター88による加熱後の空気が所定温度に到達するまで、連続紙12に対する印刷処理を開始しないようにしている。以下、上述のようなヒーター88による加熱後の空気が所定温度に到達するまでの時間、すなわち連続紙12に対する印刷動作が可能な状態となるまでの時間を印刷開始準備時間と呼ぶことにする。
【0067】
このような印刷開始準備時間は短いのが望ましい。これに対し、本実施形態に係るプリンター11では、上述のように冷却機構161が排出した排熱による温風(35℃〜40℃)が排熱ダクト101を介してヒーター88に供給されるため、ヒーター88は冷却機構161の排熱により予備加熱された空気を加熱している。従って、ヒーター88は、常温の外気を吸気口88aから取り込んで加熱する場合に対し、極めて短い時間で空気を所定温度(60℃〜80℃)まで加熱することができる。
【0068】
このように本実施形態では、冷却機構161が排出した排熱を有効に利用することで上述した印刷開始準備時間を大幅に短縮することができる。また、冷却機構161から排出される排熱を連続紙12の乾燥に再利用するため、省エネルギー効率を向上することができる。また、ヒーター88による発熱量を少なくできるため、ヒーター88による消費電力を抑えることができる。さらに、プリンター11は、従来はプリンター11の外部に全て排出されていた冷却機構161の排熱を有効に利用するため、排熱によりプリンター11の周辺環境の温度が上昇するのを抑制することができる。よって、例えば、プリンター11の周辺環境の温度を一定に保持するための空調設備を別途用意する必要が無い。
【0069】
図6に示したように、押圧手段としての押圧ユニット63は、第3区画室35(図1参照)の内底面に固定されるとともに上面が左側に傾斜した台座90を備えている。台座9の上面には弾性部材としてのコイルばね91が立設されており、該コイルばね91の先端(上端)には枠状のローラー支持部材92が支持されている。ローラー支持部材92にはダンサーローラー93が該ローラー支持部材92に対して回転可能に軸支されており、該ダンサーローラー93は連続紙12の印刷された面とは反対側の面である裏面に当接している。
【0070】
この場合、ダンサーローラー93はコイルばね91によりローラー支持部材92を介して常に連続紙12側である上側に向かって付勢されている。したがって、ダンサーローラー93は、連続紙12に張力を付与するように、該連続紙12の裏面を常に押圧するようになっている。
【0071】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について説明する。
連続紙12は、プラテン48上にて最初に印刷する部分の印刷が完了すると、この最初に印刷が完了した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には2番目に印刷する部分が搬送されて支持される。このとき、連続紙12において最初に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0072】
したがって、2番目に印刷する部分が印刷されている間、連続紙12は、最初に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。引き続き、プラテン48上にて2番目に印刷する部分の印刷が完了すると、連続紙12は、この2番目に印刷した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には3番目に印刷する部分が搬送されて支持される。
【0073】
すると、連続紙12において、最初に印刷が完了した部分のうち自然乾燥領域Cに位置していた部分は強制乾燥領域Bに位置するとともに、強制乾燥領域Bに位置していた部分は強制乾燥領域Bよりも下流側に搬送される。このとき、2番目に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0074】
したがって、連続紙12は、3番目に印刷する部分が印刷されている間、2番目に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。このようにして連続紙12には印刷領域Aの距離単位で順次印刷が行われる。
【0075】
そして、本実施形態では、連続紙12が一定時間毎に間欠的に搬送されるとともに、連続紙12の搬送方向における印刷領域Aの距離と強制乾燥領域Bの距離とが等しくなっているので、強制乾燥領域Bでの各印刷領域Aの距離単位における連続紙12の強制乾燥時間は一定となる。この場合、強制乾燥領域Bの距離が印刷領域Aの距離の正の整数倍(1倍、2倍、3倍、・・・)となるように設定されていれば、連続紙12の強制乾燥領域Bにおける強制乾燥時間は一定になる。
【0076】
そして、本実施形態のように、自然乾燥領域Cが存在し、印刷領域Aに相当する分の連続紙12を一括して強制乾燥領域Bに挿入できないときでも、連続紙12を間欠して搬送し続ける中で、連続紙12における1回分の印刷が完了した領域のうち、先に強制乾燥領域Bに挿入された部分における強制乾燥時間と、後に挿入された部分における強制乾燥時間とはトータルとして同じになる。
【0077】
したがって、各印刷領域Aの距離単位毎の連続紙12は全て均一に乾燥されるため、長尺状の連続紙12全体も均一に乾燥される。なお、本実施形態では、連続紙12として印刷後のインクが特に乾燥しにくい光沢紙を用いているが、印刷後の連続紙12は、強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられるため、限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥される。このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域(強制乾燥領域B)とされ、光沢紙(連続紙12)等に印字された液体(インク)を定着するための手段を備えることで良好な印刷物が得られる。
【0078】
また、連続紙12に光沢紙を用いると、印刷した後に乾燥させると膨張したりしわができたりして搬送時に弛むことがある。この点、本実施形態では、連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bのすぐ下流側に、連続紙12に対して張力を付与するように押圧するダンサーローラー93が設けられているため、連続紙12の弛みが効果的に抑制される。したがって、連続紙12が搬送時にX方向に蛇行することが抑制される。このとき、ダンサーローラー93は、連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧しているため、連続紙12に印刷された印刷画像に悪影響を及ぼすことはない。
【0079】
また、ダンサーローラー93はコイルばね91に支持されたローラー支持部材92によって支持されているため、ダンサーローラー93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分がコイルばね91の弾力性によって吸収される。このため、ダンサーローラー93により連続紙12に対して常に適度な張力が与えられる。
【0080】
また、本実施形態に係るプリンター11は、印刷後の連続紙12が強制乾燥領域Bで温風を吹き付けられて強制的に乾燥されるので、印刷後の連続紙12を限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥させることができる。このため、印刷後の連続紙12が乾燥不足の状態で巻き取り駆動軸74に巻き取られることを抑制することができる。
【0081】
また、連続紙12は印刷領域Aの距離単位で一定時間毎に間欠的に搬送され、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離は印刷領域Aの距離の1倍となるように設定されている。このため、連続紙12が印刷領域Aの距離単位毎に強制乾燥領域Bで乾燥される時間が一定となるので、印刷後の連続紙12を均一に乾燥することができる。
【0082】
また、連続紙12の搬送経路において、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間には自然乾燥領域Cが設けられているため、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとは自然乾燥領域Cの距離分だけ離間される。加えて、連続紙12の搬送方向は、自然乾燥領域Cにおいて転換ローラー49により水平右方向から鉛直下方向に、すなわち記録ヘッド54から遠ざかる方向に転換されている。このため、強制乾燥領域Bにおいて印刷後の連続紙12を強制乾燥させる際に該連続紙12に吹き付ける温風が、印刷領域Aでの連続紙12の印刷に対して悪影響を及ぼすことを効果的に抑制することができる。
【0083】
なお、上記強制乾燥領域Bでは、上述のように冷却機構161が排出した排熱を有効利用したヒーター88によって加熱した温風を強制乾燥装置80が乾燥室83内を搬送される連続紙12の表面に均一に吹きつけている。
【0084】
また、連続紙12の搬送経路において、ガイド部24及びガイドブロック25は巻き軸18の直ぐ下流側に配設され、ガイド装置43はプラテン48の直ぐ上流側に配設され、ガイド装置72は巻き取り駆動軸74の直ぐ上流側に配設されている。このため、連続紙12の搬送経路において、特に、ガイド部24及びガイドブロック25、ガイド装置43、及びガイド装置72の直ぐ下流側で連続紙12が蛇行して搬送されることを抑制することができる。したがって、ガイド部24及びガイドブロック25により本体部14側へ正確に連続紙12を搬送することができること、ガイド装置43によりプラテン48の上面に正確に連続紙12を搬送することができること、及びガイド装置72により連続紙12が正確に巻き取られるようにすることができることの3つの効果を同時に得ることができる。
【0085】
また、連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bの直ぐ下流側の位置には、強制乾燥後の連続紙12に張力を付与するダンサーローラー93が設けられているため、印刷して強制乾燥させた際に連続紙12が弛んだとしても、該強制乾燥後の連続紙12に対して好適に張力を付与することができる。このため、印刷して強制乾燥させた後の連続紙12の搬送時における弛みを解消することができるので、該連続紙12が搬送時に蛇行することを抑制することができる。
【0086】
また、ダンサーローラー93は連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧することで該連続紙12に対して張力を付与しているため、連続紙12の表面に印刷された印刷画像に対してダンサーローラー93が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0087】
また、連続紙12に対して張力を付与するダンサーローラー93はコイルばね91に支持されたローラー支持部材92によって回転可能に支持されている。このため、ダンサーローラー93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分をコイルばね91の弾力性によって吸収することができるので、ダンサーローラー93によって連続紙12に付与される張力の変動を抑えることができる。すなわち、ダンサーローラー93によって連続紙12に付与される張力を安定させることができる。
【0088】
ところで、本実施形態に係るプリンター11は、印刷処理を行っている場合、メンテナンスユニット59のキャップ部59aが記録ヘッド54に当接していない状態となっている。そのため、本体部14内においてキャップ部59aが露出した状態となっている。一方、印刷処理中においては、強制乾燥装置60によって暖められた空気が本体部14内に広がるため、キャップ部59aが高温環境下に曝されることとなる。すると、クリーニングによってキャップ部59aに付着しているインクの乾燥が促進されて、キャップ部59a内でインク詰まりが生じる結果、キャップ部59aの寿命が短くなる可能性がある。
【0089】
これに対し、本実施形態に係るメンテナンスユニット59は、プリンター11が印刷処理を行っているときに、隔壁160内に埋め込まれた流路162に冷媒を供給することで隔壁160を冷却し、冷却された隔壁160と外気温との温度差によって開口部分160a(キャップ部59a)の内壁を結露させることができる。
【0090】
これにより、各開口部分160a内を保湿することで、キャップ部59aを噴射面110aに当接した際、各ノズル列L1〜L5のノズルNZをそれぞれ良好に保湿できる。すなわち、本発明は、強制乾燥装置60を備えたプリンターにおいて特に顕著な効果を得ることができる。
【0091】
また、メンテナンスユニット59は、開口部分160aの内壁に結露した水分を吸引するようにしてもよい。これにより、開口部分160a内に付着している廃インク及び排出チューブTB内の廃インクのインク濃度を低下させることができ、廃インクが乾燥して固化するのを抑制できる。
【0092】
また、冷媒供給部163は流路162に対して冷媒を循環させることで、隔壁160を冷却して温度が上昇した冷媒の温度を低下させた後、再度流路162に供給するため、流路162に一定の温度の冷媒を供給することができる。よって、隔壁160を効率的に冷却するができ、ノズルNZの乾燥を良好に抑制できる。
【0093】
このように、メンテナンスユニット59は、結露により生じた水分によって開口部分160a内を保湿することでインクが乾燥を抑制するので、インク詰まりの発生によって生じるキャップ部59aの寿命を延ばすことができる。
また、メンテナンスユニット59は、結露した水分を利用することでノズルNZを保湿する構成を採用することで、開口部分160a内に外部から水を供給する給水機構を別途用意する必要が無い。
【0094】
以上のように、本実施形態に係るプリンター11によれば、冷却機構161から供給される排熱を利用することで省エネルギー効率を向上させつつ、排熱による温風を用いてヒーター88の発熱をアシストすることができる。よって、排熱がヒーター88の駆動時における温度上昇速度を向上させることができ、ヒーター88が所定温度に到達することで記録ヘッド54から連続紙12上にインクが噴射する印刷処理を開始するまでに要する印刷開始準備時間を大幅に短縮できる。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、冷却機構161から排出された排熱が常にヒーター88に供給される構成となっていたが、排熱を必要に応じてヒーター88に供給する構成であっても構わない。
【0096】
この場合、排熱ダクト102は、図9に示すように冷却機構161と反対側の端部に分岐部103を備えている。分岐部103は、第1分岐路103a及び第2分岐路103bを有している。第1分岐路103aは冷却機構161からの排熱をヒーター88へと供給するためのものであり、第2分岐路103bは冷却機構161からの排熱をヒーター88とは異なる場所、一例としてプリンター11の外部に放出するためのものである。
【0097】
また、第1分岐路103a及び第2分岐路103bには、それぞれの内部流路を閉塞可能な閉塞バルブB1,B2が設けられている。また、閉塞バルブB1,B2には、該閉塞バルブB1,B2の開閉を制御する制御装置(バルブ開閉制御部)105が接続されている。制御装置105は、プリンター11における各駆動部の駆動を制御する機能も有している。
【0098】
制御装置105は、例えば閉塞バルブB1を開き、閉塞バルブB2を閉じるように制御することで冷却機構161が排出した排熱をヒーター88に供給することができる。また、制御装置105は、例えば閉塞バルブB1を閉じ、閉塞バルブB2を開くように制御することで冷却機構161が排出した排熱をヒーター88に供給しない状態とすることができる。
【0099】
この構成によれば、制御装置105は閉塞バルブB1,B2の開閉を制御することで排熱のヒーター88への供給の有無を必要に応じて切り替えることができる。また、制御装置105は閉塞バルブB1,B2の開き量をそれぞれ調整することで、すなわち同時に閉塞バルブB1,B2を開いた状態とすることでヒーター88に供給する排熱の量を種々の値に調整することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、冷却機構161から排出された排熱がヒーター88のみに供給される場合について説明したが、記録ヘッド54による連続紙12に対する印刷処理が行われる印刷室31内の空間(印刷空間)に排熱の一部を供給する構成であっても構わない。この場合、図10に示すように排熱ダクト101を印刷室31に引き回せばよい。
【0101】
この構成によれば、印刷室31内に排熱を供給することで空調設備を用いることなく、印刷室31内の温度を上昇させることができる。よって、印刷空間内の連続紙12を間接的に加熱することで連続紙12上に噴射されたインクの乾燥速度を速めることができる。従って、インク着弾後の連続紙12が搬送される際の振動等によってインクが連続紙12上に濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の発生を抑制することができる。
【0102】
あるいは、図11に示すように、記録ヘッド54による印刷処理を行う印刷領域Aにおいて連続紙12を支持するプラテン106を設けた場合において、該プラテン106に対して排熱の一部を供給する構成であっても構わない。なお、プラテン106は、連続紙12に対して均一に排熱による温風を噴射するための複数の開口部が形成された構造であっても構わない。
【0103】
この構成によれば、プラテン106に排熱を供給することでプラテン106の温度を上昇させることができる。よって、プラテン106を介して連続紙12を直接的に加熱することで連続紙12上に噴射されたインクを短時間で乾燥させることができる。従って、インク着弾後の連続紙12が搬送される際の振動等によってインクが連続紙12上に濡れ広がることで印刷品質が低下するといった不具合の発生を抑制することができる。
【0104】
なお、このように印刷室31内に排熱を供給する場合、或いはプラテン108に排熱を供給する場合には、キャップ部59aに対して排熱が悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態では上述のようにキャップ部59a内に結露を生じさせることでキャップ部59a内にてインク詰まりが発生することが抑制されるため、問題ない。
【0105】
また、上記実施形態では、流路162が隔壁160を貫通した状態で形成される場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることはない。上述したように流路162はチューブ部材からなり隔壁160と一体成形されて構成されることから、開口部分160aの周囲を囲むように流路162を引き回す構成を採用できる。この構成によれば、開口部分160aの周囲を囲むように流路162が配置されるので、開口部分160aを全域に亘って冷却することができ、開口部分160a内に結露を良好に生じさせることができる。
【0106】
また、上記実施形態では、排出チューブTBごとに減圧ポンプPが設けられる場合を例に挙げたが、弁機構を組み合わせることで1つの減圧ポンプPによって複数の排出チューブTBを介して各開口部分160a内を減圧するようにしても構わない。
【0107】
また、強制乾燥装置60は、送風ファン85を省略し、ヒーター88の輻射熱によって印刷後の連続紙12を強制乾燥するように構成してもよい。また、連続紙12の代わりに、単票紙や長尺状のプラスチックフィルムなどをターゲットとして用いてもよい。
【0108】
なお、上記実施形態では、冷媒として流路162内に例えば水を供給する構成について説明したが、冷媒としては水以外の二酸化炭素、アンモニア等を用いることができる。
【0109】
また、上述の実施形態では、本発明の液体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、上述液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0110】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては、上述実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0111】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0112】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0113】
NZ…ノズル、11…プリンター(液体噴射装置)、54…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、59a…キャップ部、101,102…排熱ダクト(排熱供給部)、110a…噴射面(ノズル形成面)、160a…開口部分、160…隔壁、161…冷却機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部と、
前記キャップ部に設けられ、前記ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構と、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記媒体上に噴射された前記液体を加熱することで乾燥させて前記媒体に定着させる加熱機構と、
前記冷却機構から排出される排熱を前記加熱機構に供給する排熱供給部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記排熱供給部は、前記排熱を前記加熱機構側へ供給する第1分岐路及び前記排熱を前記加熱機構とは異なる場所へ放出する第2分岐路を有する分岐部と、前記第1分岐路及び前記第2分岐路をそれぞれ閉塞可能な閉塞バルブと、前記閉塞バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷空間に前記排熱を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷領域において前記媒体を支持する媒体支持部材に排熱を供給して前記媒体支持部材を加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
媒体上に液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を含む液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部と、
前記キャップ部に設けられ、前記ノズル形成面を区画するように当接する隔壁を冷却する冷却機構と、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記媒体上に噴射された前記液体を加熱することで乾燥させて前記媒体に定着させる加熱機構と、
前記冷却機構から排出される排熱を前記加熱機構に供給する排熱供給部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記排熱供給部は、前記排熱を前記加熱機構側へ供給する第1分岐路及び前記排熱を前記加熱機構とは異なる場所へ放出する第2分岐路を有する分岐部と、前記第1分岐路及び前記第2分岐路をそれぞれ閉塞可能な閉塞バルブと、前記閉塞バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷空間に前記排熱を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記排熱供給部は、前記液体噴射ヘッドが前記媒体上に前記液体を噴射する印刷処理を行う印刷領域において前記媒体を支持する媒体支持部材に排熱を供給して前記媒体支持部材を加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−192612(P2012−192612A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57933(P2011−57933)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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