説明

液体噴射記録ヘッドおよびそのための基体並びに基体の製造方法

【課題】液体噴射記録ヘッド用基体に形成される蓄熱層などの層において、その層が薄い場合であっても、被覆性や層質の低下を抑え、パーティクルの影響を回避し、長期間良好な吐出特性を得ることのできる基体及びその製造方法を提供する。長期間良好な吐出特性を示す液体噴射記録ヘッドを提供する。
【解決手段】吐出口から液滴を吐出する液体噴射記録ヘッドに用いられる基体であって、支持体1と、前記支持体1上に形成された蓄熱層1bと、熱エネルギーを発生するための発熱抵抗体2aと、前記発熱抵抗体2aに導通するように前記支持体1上に形成される一対の電極と、前記一対の電極および前記発熱抵抗体2aを覆う保護層4とを備え、前記蓄熱層1bが、ECRスパッタ層よりなることを特徴とする液体噴射記録ヘッド用基体8。この基体の製造方法。上記液体噴射記録ヘッド用基体8を有する液体噴射記録ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用の液体を熱エネルギーを利用して吐出口から吐出させることにより記録を行なう液体噴射記録ヘッドに関し、またこのヘッドに用いられる基体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを利用して吐出口からインクなどの液滴を吐出、飛翔させることによって被記録媒体(多くの場合は紙)上に記録を行なう液体噴射記録方法は、ノンインパクト型の記録方法であって、騒音が少ないこと、普通紙に直接記録できること、多色のインクを用いることによりカラー画像記録が容易にできることなどの特長を有し、さらに記録装置の構造が簡単で高密度マルチノズル化が容易であり、高解像度、高速度のものを容易に得ることができるという利点を有しており、近年急速に普及しつつある。
【0003】
図3はこの液体噴射記録ヘッドの例の、液路に平行な平面での要部垂直断面図である。この液体噴射記録ヘッドは、図3に示すように、一般に、インクなどの記録用の液体を吐出するための多数の微細な吐出口7、吐出口7ごとに設けられて吐出口7に連通する液路6、各液路6に記録用の液体を供給するため各液路6に共通に設けられた液室(図示せず)、液室に液体を供給するため液室の天井部分に設けられた液体供給口(図示せず)、そして記録用の液体に熱エネルギーを加えるための発熱抵抗体2aを各液路6に対応して有する液体噴射記録ヘッド用基体8とから構成されている。液路6、吐出口7、液体供給口、液室は、一体的に天板5に形成されるようになっている。
【0004】
液体噴射記録ヘッド用基体8は、図3に示すように、基板1上に、ある程度の大きさの体積抵抗率を有する材料からなる発熱抵抗層2を設け、発熱抵抗層2の上に、電気伝導性のよい材料からなる電極層3を積層した構成である。電極層3は、発熱抵抗層2と同様の形状であるが一部分が欠落しており、この欠落した部分において発熱抵抗層2が露出し、この部分が発熱抵抗体2aすなわち発熱部となっている。電極層3は、発熱抵抗体2aをはさんで2つの電極となり、これら電極間に電圧を印加することにより、発熱抵抗体2aに電流が流れて発熱するようになっている。発熱抵抗体2aは、天板5の対応する液路6のそれぞれ底部に位置するように、液体噴射記録ヘッド用基体8上に形成されている。さらに液体噴射記録ヘッド用基体8には、電極や発熱抵抗体2aを被覆するようにして、保護層4が設けられている。この保護層4は、記録用の液体との接触やこの液体の浸透による発熱抵抗体2aおよび電極3の電蝕や電気的絶縁破壊を防止する目的で設けられたものである。保護層4は、SiO2を用いて構成することが一般的である。さらに、保護層4の上に耐キャビテーション層(図3には不図示)が設けられる。保護層4の形成方法としては、各種の真空成膜法、例えばプラズマCVD法、スパッタリング法、あるいはバイアススパッタリング法などが用いられている。
【0005】
シリコンを支持体1として使用する場合、液体噴射記録ヘッド基体8としてのより良好な特性を得る目的で、支持体の放熱性と蓄熱性のバランスをとるよう、SiO2からなる蓄熱層を支持体の表面もしくはその一部として設けることが一般的である。また、支持体が導電体である場合、配線の電気的ショートを避けるため、蓄熱層が絶縁層を兼ねる方が、設計的にもコスト的にも都合がよい。そして蓄熱層の形成方法としては、シリコンからなる支持体1の表面を熱酸化して形成する方法や、支持体1の上に各種の真空成膜法(例えば、スパッタリング法、バイアススパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法、イオンビーム法)でSiO2を堆積させる方法がある。
【0006】
また、液体噴射記録ヘッド用基体の構成によっては、基板上にマトリクス状に2層の配線が設けられることがある(発熱抵抗体に接続される一対の電極もこのうちの一層である)。この場合、発熱抵抗層に直接接続される配線層(電極)は、液路との位置関係から、基板より遠い方の配線層となる。したがって基板に近い方の配線層は、蓄熱層に埋め込まれるような形態となる。図6は、このような液体噴射記録ヘッド用基体の構成を示す模式的断面図である。
【0007】
図6に示す液体噴射記録ヘッド用基体では、蓄熱層402が、第1の蓄熱層402aと第2の蓄熱層402bとに分けて形成されている。シリコン基板401の上にSiO2からなる第1の蓄熱層402aが設けられ、第1の蓄熱層402aの上に、1層目の配線層である下部配線403が形成されている。この第1の蓄熱層402aは、シリコン基板401の熱酸化によって形成することができる。下部配線403は、一般的にアルミニウムからなり、例えば発熱部をマトリクス駆動するために設けられるものである。一方、第2の蓄熱層402bは、下部配線403を被覆するようにして、下部配線403が形成された第1の蓄熱層402aの上面に形成されている。第2の蓄熱層402bは、SiO2で構成されている。さらに、第2の蓄熱層402bの上に、図3で示した液体噴射記録ヘッド用基体と同様に、発熱抵抗層404、2層目の配線層である電極層405、SiN(窒化珪素)からなる保護層406、耐キャビテーション層407が設けられている。第2の蓄熱層402bは、下部配線403の存在のために熱酸化では形成できないので、保護層406と同様に、プラズマCVD法、スパッタリング法、バイアススパッタリング法などで形成される。
【0008】
特許文献1には、インクジェットヘッドにおける蓄熱層,発熱抵抗体,配線,保護膜の基本的な膜構成が記載されている。
【0009】
特許文献2には、電気熱変換素子を分割駆動するための多層配線の一方の配線を、蓄熱層内に形成する構成が記載されており、層間絶縁膜となる層、すなわち上述した第二の蓄熱層となる層として、CVD法によりSiO2成膜する実施例が記載されている。
【特許文献1】特公昭63−38306号公報
【特許文献2】特開平2−125741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように液体噴射記録ヘッド用基体では、蓄熱層等にSiO2層で代表されるシリコン酸化物層等が用いられる。これらの層は、次の二つに分類できる。
【0011】
(1)シリコンからなる支持体の熱酸化で形成できる層(図3での蓄熱層1bや図6での第1の蓄熱層402a)。
【0012】
(2)シリコンの熱酸化では形成できない層(図3での保護層4や、図6での第2の蓄熱層402bおよび保護層406や、金属などが支持体の場合)。
【0013】
ここで、この分類にしたがって、これらの層の形成上の問題点を検討する。
【0014】
(1)熱酸化で形成可能な層:熱酸化で形成可能な層については、コストや得られる膜の膜質の点から、熱酸化で形成することが望ましい。すなわち、従来の各種の真空成膜法で形成した場合には、後述するように、膜厚が不均一になったり、成膜速度が遅かったりするおそれがある。また成膜時にゴミが発生しやすいのでそのゴミが膜中に混入して直径数μmのブツ状の欠陥となりキャビテーションによる破壊の原因となったりするというおそれがある。さらに、このブツ状の欠陥から電流がリークして、電気的短絡の原因になるというおそれがある。また、スピンオングラス法やディップ引き上げ法などにより、熱酸化工程を行なわずに基板表面にSiO2からなる層を形成する方法もある。しかし、いずれの方法によっても膜質が悪く、良好な膜質を得るためには高温熱処理が必要だったり膜中に不純物粒子が混入しやく、さらに蓄熱層として必要な3μm程度の膜厚のSiO2層を形成できないことがある。
【0015】
(2)熱酸化では形成不可能な層:熱酸化では形成不可能な層の場合、必然的に、プラズマCVD法、スパッタリング法、バイアススパッタリング法などの真空成膜法によってSiO2層を形成することになる。この場合、配線層や発熱抵抗層、多結晶シリコンの熱酸化層の上に、SiO2層を形成することになり、この層は段差部においても良好に形成される必要がある。また、このように形成したSiO2層の上にさらに配線層や発熱抵抗層が形成される場合があるので、段差部においてもその上面側が平坦になっていることが望ましい。以下に、プラズマCVD法、スパッタリング法、バイアススパッタリング法のそれぞれについて、SiO2層を形成する場合の問題点について説明する。
【0016】
プラズマCVD法においては、配線の段差部において膜の形状が急峻である、配線段差部での膜質が必ずしも良好とは言えない、形成される膜の表面に微小な凹凸が生じやすいといった点で問題が生ずる場合がある。まず、段差部で形状が急峻になることについて説明する。
【0017】
図7(a)は、アルミニウム配線(薄膜)409上にプラズマCVD法により形成したSiO2膜410の段差部の構造を示す断面図である。プラズマCVD法を用いて段差部を形成すると、図示矢印Aで指示される部分のように、段差部の切り込みが深いものとなる。このため、図7(b)に示すように、SiO2膜410上に蒸着、スパッタリング法などで薄膜411を形成すると、A部への膜のまわり込みが悪いために平坦部より薄くなってしまい、配線等を形成した場合には電流密度が大きくなって、発熱や断線の原因となる場合がある。また、SiO2膜410上に形成される配線をパターニングする場合、通常のフォトリソグラフィー技術で行なうと、段差部でのレジストのヌケが悪くなり、配線間のショートを引き起こしやすい。図7(c)は、図7(b)に示したものをC方向より見た図であり、段差部に沿って、SiO2膜410上の膜411(図中斜線部)例えばアルミニウム配線が、レジストパターニング時に、SiO2のカバレッジ部分にレジストが残ってしまったために、段差に沿ってのびている状態が示されている。この問題は特に層間膜すなわち複数の配線層にはさまれるSiO2層で起こりやすい。
【0018】
プラズマCVD法でSiO2膜を形成した場合、例えば図7(a)のBで示されるような段差部の膜質があまり良くないものとなる場合がある。形成したSiO2膜をフッ酸系のエッチング液によってエッチングすると、熱酸化で形成されたSiO2膜の2〜4倍の速度でしか平坦部の膜がエッチングされないのに対し、B部の膜は、緻密性が低いので、瞬時にエッチングされてしまう場合がある。このように緻密性の低い膜の部分では、ヒータ(発熱部)の繰り返し加熱冷却の熱ストレスによりクラックが発生しやすく、保護層として使用した場合にその機能を容易に失なってしまう場合がある。また、SiO2膜上に積層される膜、例えば発熱抵抗層に使用されるHfB2膜や耐キャビテーション層として使用されるTa膜のパターニングには、フッ酸系のエッチング液の使用はできない場合がある。
【0019】
プラズマCVD法で形成したSiO2膜表面の微小な凹凸について説明する。プラズマCVD法による膜は、一般的に、平坦な基板上に成膜したとしても表面には微小な凹凸が発生しやすい。このSiO2膜の凹凸形状は、インクに直接接する耐キャビテーション層上にも残るため、ヒータ面上でのインクの発泡の際に発泡の開始点(発泡核)がヒータ面上に点在することになって、安定な膜沸騰現象が再現しにくく、吐出性能にも悪影響を及ぼす場合がある。
【0020】
スパッタリング法では、配線の段差部において膜の形状が急峻である、形成される膜の膜質があまり良くない、また、いわゆるパーティクルが多いといった点で問題が生じることがある。段差部で急峻となることはプラズマCVD法の場合と同様であるので説明を割愛し、まず、膜質について説明する。
【0021】
通常のスパッタリング法(SiO2ターゲットをArガスでスパッタする方法)でSiO2膜を形成する場合、基板温度を300℃程度まで上げないと緻密な膜が形成できない。しかし、300℃程度まで昇温すると、配線に使用されるアルミニウム層に大きなヒロックが成長してしまう場合がある。特に、図8に示すようにアルミニウム配線409のエッジ部にヒロックが発生した場合には、その上のSiO2膜410における実質的な膜厚段差が大きくなり、膜としての被覆性が悪化する。つまりステップ部でクラックが生じやすく、クラック部よりインクが電極に接すると電蝕が発生してしまう場合がある。また、300℃に基板温度を上げても段差部の膜質は改善されないため、プラズマCVD法によって形成された膜と同様の点で問題が生じることがある。
【0022】
膜質を悪化させることなく低温で成膜させる方法として、ArとH2の雰囲気中でSiO2ターゲットをスパッタリングする方法もあるが、段差部の膜質は改善されることはなく、また段差部の膜形状も図7(a)の場合と同じであるため、プラズマCVDにより形成された膜と同様の問題が生じる。さらにH2ガスを添加すると成膜速度が低下し(H2添加量が多いほど速度は低下すると考えられる)、処理能力が落ちることになる。
【0023】
また、スパッタリング装置の成膜室には、ターゲットやシールド板、シャッター板などが設けられており、プラズマCVD装置の反応室と比較して構造が複雑である。そしてSiO2などの絶縁膜を形成するときは、チャージアップなどにより火花放電が発生することもある。火花放電による部材の飛散や複雑な成膜室内のメンテナンス(クリーニング)で取りきれない堆積ゴミなどが、基板上にパーティクルとなって降り積もるという点で問題が生じることがある。すなわち、これらのゴミが膜中に取り込まれると数μmのブツ状の欠陥となり、その欠陥上に発熱抵抗体が形成されると、吐出の際にキャビテーション破壊が起きることがある。基板に導電性がある場合は、ブツ欠陥部から電流がリークし、電気的にショートすることもある。このため、製造される記録ヘッドの信頼性および耐久性を高くすることは容易とは言えない。
【0024】
バイアススパッタリング法は基板側にも高周波電力を印加し、自己バイアスによるスパッタ効果を利用して段差部の形状をなだらかにする方法であり、スパッタリングやプラズマCVDとは異なり段差部の平坦化を良好に行うことが容易である。
【0025】
図9はバイアススパッタリング法でアルミニウム配線409の上にSiO2層410を成膜させたときの段差部の構造を模式的に示すものであり、この図から、プラズマCVD法などの場合に比べ、段差部が平坦化されていることがわかる。しかし、通常のスパッタリング法と同様にパーティクルが生じやすいという点で問題が生じることがある。またバイアススパッタは、膜厚安定性が悪い場合がある。
【0026】
本発明の目的は、液体噴射記録ヘッド用基体に形成される蓄熱層などの層において、その層が薄い場合であっても、被覆性や層質の低下を抑え、パーティクルの影響を回避し、もって長期間良好な吐出特性を得ることのできる基体を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、このように優れた液体噴射記録ヘッド用基体を製造するに好適な方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、長期間良好な吐出特性を示すことのできる液体噴射記録ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明により、吐出口から液滴を吐出する液体噴射記録ヘッドに用いられる基体であって、
支持体と、前記支持体上に形成された蓄熱層と、熱エネルギーを発生するための発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に導通するように前記支持体上に形成される一対の電極と、
前記一対の電極および前記発熱抵抗体を覆う保護層とを備え、
前記蓄熱層が、ECRスパッタ層よりなることを特徴とする液体噴射記録ヘッド用基体が提供される。
【0030】
前記蓄熱層が、支持体上に形成されたマトリクス状の複数層の配線層を絶縁膜を介して積層され、配線層上に形成される絶縁層がECRスパッタ層であることができる。
【0031】
前記ECRスパッタ層がシリコン酸化物を含むことができる。
【0032】
前記ECRスパッタ層がシリコン窒化酸化物を含むことができる。
【0033】
本発明により、支持体と、前記支持体上に形成された蓄熱層と、熱エネルギーを発生するための発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に導通するように前記支持体上に形成される一対の電極と、
前記一対の電極および前記発熱抵抗体を覆う保護層とを備える液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法において、
前記蓄熱層を、ECRスパッタ法により形成することを特徴とする液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法が提供される。
【0034】
上記方法において、前記蓄熱層が、支持体上に形成されたマトリクス状の複数層の配線層を絶縁膜を介して積層され、該配線層上に形成される絶縁層がECRスパッタ層であることができる。
【0035】
上記方法において、前記ECRスパッタ層がシリコン酸化物を含むことができる。
【0036】
上記方法において、前記ECRスパッタ層がシリコン窒化酸化物を含むことができる。
【0037】
本発明により、上記の液体噴射記録ヘッド用基体;
前記液体噴射記録ヘッド用基体に備わる発熱抵抗体に対応して設けられた、記録用の液体を流通させるための液路;および、
前記液路に連通し記録用の液体が吐出するための吐出口
を有する液体噴射記録ヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、液体噴射記録ヘッド用基体に形成される蓄熱層などの層において、その層が薄い場合であっても、被覆性や層質の低下を抑え、パーティクルの影響を回避し、もって長期間良好な吐出特性を得ることのできる基体が提供される。
【0039】
また本発明により、このように優れた液体噴射記録ヘッド用基体を製造するに好適な方法が提供される。
【0040】
さらに本発明により、長期間良好な吐出特性を示すことのできる液体噴射記録ヘッドが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
発熱抵抗体および一対の電極と支持体との間に、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタ層を配する形態について説明する。以下、発熱抵抗体および一対の電極と、支持体との間に配される層を下部層という。下部層の例として蓄熱層を挙げることができ、まず、蓄熱層である下部層の形成方法に関して説明を行なう。
【0042】
本発明は、熱酸化による下部層の形成が困難であり、また、基板の放熱性を確保しつつ、発泡に必要なエネルギーの低減を図るため、数μm(例えば0.1μm以上5.0μm以下)の厚さの下部層を設ける必要がある場合に特に有効である。
【0043】
支持体としては、多結晶シリコン支持体やグレーズ層のないアルミナ支持体、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミック支持体、アルミニウム、ステンレス、銅、コバールなどの金属支持体などを用いることができる。
【0044】
支持体上に下部層を形成する際に、本発明では従来の真空成膜方法(スパッタリング、バイアススパッタリング、プラズマCVDなど)でSiO2を成膜する代わりに、ECRスパッタ成膜法によりSiO2を成膜する。
【0045】
また、SiO2以外の膜、例えば窒化ケイ素膜を下部層として設ける場合においても、ECRスパッタ法により成膜を行なう。
【0046】
まず、ECRスパッタ法について説明する(参考資料:精密工学会誌VOl.66,No.4,2000,天沢敬生,及川秀男,廣野滋,松尾誠太郎)。ECRスパッタ法は、磁場(例えば875ガウス)とマイクロ波(例えば2.45GHz)の相互作用で電子がサイクロトロン運動し、スパッタガスの電離確率が高くなり、例えば10-5〜10-4Torr(10-3〜10-2Pa)の高真空下で安定したプラズマが得られる。勾配磁場によりプラズマの中性を保ちながら引き出されたプラズマ流中イオンは途中に配置した負にバイアスされたターゲットに加速され衝突しスパッタされる。スパッタされた中性粒子はプラズマ中でイオン化されプラズマ流とともに基板方向に加速され成膜される。
【0047】
このときプラズマ流のエネルギーは例えば10〜30eVである。ECRスパッタの特徴の一つに、高品質な薄膜形成を上げることができるが、これの最大の理由は、このようにエネルギー制御された大量のイオンが照射するなかで薄膜成長が進むことである。
【0048】
基板に入射するイオンのエネルギーが50eV程度以上になると、イオンが基板内に入り込んだり、基板を構成する原子がたたき出されたり、あるいは基板に欠陥を発生させるなどにより、薄膜の不純物汚染やラフネスなどの問題を引き起こす場合がある。逆に蒸着法のように熱的なエネルギーのみで成膜する場合には、入射粒子のエネルギーは0.1eVという低いオーダーであり、基板表面で十分にマイグレーションできなくなる場合がある。これに対しECRスパッタでは、圧力などを変えることにより、照射イオンのエネルギーを好適な値に制御することが可能である。基板表面に到達した原子は、薄膜成長に好適なエネルギーを与えられて表面上をマイグレーションし、安定な位置に留まることができる。これによって、化合物薄膜においては、化学的に安定となるような高い結合力も期待できる。また、成膜中の圧力が低く、CVDにおけるような不要な反応生成物などの汚染が発生することもない。例えば、ターゲットがSiの場合、Arガスを用いるとSi膜が成膜され、Ar+O2ガスでは、SiO2膜,Ar+N2ではSi34膜が成膜される。従って、化学量論的にも、バルク材に匹敵するものとなる。SiH4ガスを用いるCVDと異なり、水素フリーな膜が得られる。従って、化学量論的にも、バルク材に匹敵するものとなる。そればかりでなく、危険なガスを全く用いない、優れた環境適合性も有する。
【0049】
すなわち、プラズマCVDや一般的なスパッタよりも、より化学量論比的にバルクに近く、環境適合性の優れた膜を形成することが可能となる。
このようにECRプラズマは、理想に近い薄膜成長環境を提供することから、緻密・平滑性に優れたバルクの物性に近い薄膜の形成が可能になる。ECR薄膜の平滑性に関しては、膜の凸凹は原子レベルである。例えば、ECR膜と一般のRFスパッタ膜に関して、厚み100nmのAl23のAFM(原子間力顕微鏡による像)を比較すると、ECR膜の最大粗さRmaxが0.48nm程度であるのに対して、RFスパッタ膜の最大粗さは5.3nm程度である。
【0050】
さらには、化合物を含むほとんどの薄膜形成において特別な基板加熱を必要としないことから、高温プロセスを嫌う、様々な目的にも利用しうる。そしてまた、ECRスパッタ法はビーム方式であり、基板をイオン流に対して斜め方向に配置することによって、カバレッジを向上させることが可能になる。
【0051】
次に、図5を用いて下部層(蓄熱層)を形成するに好適なECRスパッタ装置の構成の一例について説明する。装置全体は、排気口321に接続された排気ポンプ(不図示)によって、高真空まで排気されるようになっている。プラズマ室314にはマイクロ波導波管413より2.45GHzのマイクロ波が導入され、第1のガス導入口315よりArが導入される。このとき、プラズマ発生室314の外側部分に周設されたコイル312の磁力を調節してECR(電子サイクロトロン共鳴)条件を成立させると、プラズマ室314内に、高密度高活性なプラズマが生成する。このプラズマ化されたガスは、試料室317に移動する。このときターゲット320にRF(高周波電圧)13.56MHzを印可するとスパッタリングが行われ、試料室317に設けられた第2のガス導入口316よりO2を導入することによって、試料室317内に設置された基板ホルダー318上に載置された基板(支持体)319上にSiO2膜(蓄熱層)が積層される。
【0052】
このようにして形成した図2に示す基板1のSiO2(蓄熱層)層1b上に、例えば図1(a)および(b)に示すような電極層3および発熱抵抗体層2を所定の形状にパターニングして発熱抵抗体2aを形成し、さらに必要に応じて保護層4を設けることによって、液体噴射記録ヘッド用基体8を得ることができる。
【0053】
なお、発熱抵抗体の形状や保護層4の構成などは図示されるものに限定されない。次に、液体噴射記録ヘッド用基体8上に例えば図3に示すように液路6、吐出口7及び必要に応じて液室(図示せず)を形成することによって本発明の液体噴射記録用ヘッドを形成することができる。
【0054】
なお、液体噴射記録ヘッドの構造も図示されるものに限定されない。
【0055】
例えば図3に示した例は吐出口から液体が吐出する方向と液路の熱エネルギー発生体の発熱部が設けられた箇所へ液体が供給される方向とがほぼ同じである構成を取るが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば前記2つの方向が互いに異なる(例えばほぼ垂直である)液体噴射記録用ヘッドに対しても適用できるものである。
【0056】
本発明における液体噴射記録記録ヘッドの基本的構成は公知のものと同様でよい(ECRスパッタ法により形成された層を有する液体噴射記録ヘッド用基体を用いる点は除く)。従って、製造プロセスは基本的に変えることなく製造できる(上記層をECRスパッタ法で形成することを除く)。
【0057】
例えば、蓄熱層(例えば2〜2.8μm)としてはSiO2、発熱抵抗体(発熱抵抗層)(例えば0.02〜0.2μm)としてはHfB2など、電極(例えば0.1〜0.5μm)としてはTi、Al、Crなど、上部保護層(第1の保護層)(例えば0.5〜2μm)としてはSiO2、SiNなど、第2の保護層(例えば0.3〜0.6μm)としてはTa,Ta25など、第3の保護層としては感光性ポリイミド等を用いることができる。
【0058】
ここで言う第1〜第3の保護層は、保護層を三層構成としたものである。第1の保護層は、SiO2等の無機酸化物やSi34等の無機窒化物等の比較的電気絶縁性、熱伝導性、及び耐熱性に優れた無機材料で構成される。第2の保護層は、粘りがあって、比較的機械的強度に優れ、第1の保護層に対して密着性と接着力のある、例えば第1の層がSiO2で形成されている場合には、Ta等の金属材料で構成される。第3の保護層は、共通液室部も含めた液流路における液体と接触する可能性のある基板の主たる表面に設けられ、その主たる役目は液浸透防止と耐液作用にある。さらには、共通液室より後方の電極配線部をも被覆するように設けることによって、電極配線部の製造工程中に起こる電極配線部のキズの発生、断線の発生等を防止することが出来る。
【0059】
液体噴射記録ヘッド用基体に使用される層をECRスパッタ法で積層することにより、
化学量論比からのずれが極めて小さい良質な層を薄膜でも形成可能で、バルク材に極めて近い物性の膜を成膜することが可能である。そして配線段差部の形状および膜質が良好であり、表面形状がなだらかなものとすることができる。また低温で成膜することが可能であるため、下部配線にヒロックの発生などの悪影響を与えず、膜の平坦性も非常に高く、製造プロセスの選択の幅が広い。液体(記録液)に近い部分で用いられる膜(層)に、ゴミなどの介在をほとんどなくすこともできる。従って、欠陥がほとんどなく絶縁耐圧が高い層を形成することが容易である。その結果、ショートする心配のない、長期使用に耐え得る液体噴射記録ヘッド用基体が得られ、吐出が安定され、信頼性が高く、高品位な印字が可能な高耐久の液体噴射記録ヘッドを得ることができる。
【0060】
また、多結晶体や金属などの支持体を用いた場合であっても、良好な平坦性を有する蓄熱層(下部層)を形成することができる。
【0061】
本発明の液体噴射記録ヘッド用基体においては、ECRスパッタ層を電気絶縁のために設けることができる。
【0062】
本発明の液体噴射記録ヘッド用基体においては、前記発熱抵抗体および一対の電極と支持体との間に、前記ECRスパッタ層を配することができる。そして、本発明の液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法においては、発熱抵抗体および一対の電極より支持体側に、ECRスパッタ法で層を形成することができる。
【0063】
本発明の液体噴射記録ヘッド用基体が、さらに、前記電極とは別に、前記ECRスパッタ層と支持体との間に配線層を有することができる。
【0064】
本発明の液体噴射記録ヘッド用基体においては、前記ECRスパッタ層がシリコン酸化物を含むことができる。そして、本発明の液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法においては、前記ECRスパッタ法で形成する層がシリコン酸化物を含むことができる。
【実施例】
【0065】
〔実施例1〕
図6に示す層構成を有する液体噴射記録ヘッド用基体を作成し、この基体を用いて図2に示すように天板を設けて吐出口や液路を形成して液体噴射記録ヘッドを作成した。
【0066】
製造方法としては、基体上にドライフィルムによって液流路パターンを形成し、これの上に接着材を用いて天板を貼り合わせた。天板の材料としては、例えばガラスを用いることが可能である。基体と天板を貼り合わせた後、天板,基体に対して垂直に切断し、この切断面をフェイス面とすることにより、発熱抵抗体に対して水平方向にインクが吐出するインクジェットヘッドを製作することが可能となる。
【0067】
まず、支持体であるシリコン基板(シリコンウエハー)上に、バブリング法による酸素導入によって熱酸化のSiO2を形成した。温度は1150℃であり、時間は12時間である。図6に示すように、これを第一の蓄熱層402aとする。
【0068】
この上に、1層目の配線層である下部配線403が形成されている。下部配線403は、一般的にアルミニウムからなり、例えば発熱部をマトリクス駆動するために設けられるものである。
【0069】
第一の蓄熱層上に下部配線を形成した後、その上に前述のECRスパッタ装置を用いて第二の蓄熱層402bとなるSiO2を成膜した。ECRスパッタ装置には、エヌ・ティ・ティアフティ株式会社製のAFTEX−7800L(商品名)を使用した。成膜条件は、アルゴン40sccm,酸素7sccmであり、成膜圧力は1.51×10-0.1Pa,マイクロ波のパワーは500W,ターゲットに印可したパワーも500W、磁場を形成するコイルには26A印可した。このとき成膜レートは約100Å/minであり、形成した膜厚は350nmである。また、成膜時においては、図4に示すように、基板をイオン流に対して30°傾斜させ、且つ基板を自転させながら成膜した。
【0070】
第二の蓄熱層402bは、下部配線403を被覆するようにして、下部配線403の形成された第1の蓄熱層402aの上面に形成されている。
【0071】
第二の蓄熱層の成膜後、下層部配線403と第二の蓄熱層402bの断面形状(特に下部配線による段差部)を観察したところ、図7(a)や図7(b)に示したような形状にはなっておらず、図9に非常に近い形状になっていた。なお、図9は、バイアススパッタリング法によってアルミニウム配線409の上にSiO2層410を成膜した様子を示すものである。ECRスパッタ成膜法によって成膜した場合は、バイアススパッタリング法を用いた場合に比較して、パーティクルの発生が非常に少なく、実用上非常に好ましいレベルであった。
【0072】
また、ECRスパッタで第二の蓄熱層(SiO2)を成膜後、配線の形成されていない部分の表面段差を触針式粗さ計を用いて測定したところ、表面段差の発生は最大15nm以下であり、成膜前との有意差は、認められなかった。
【0073】
なお、実験的に基板表面へサーモラベルを貼り付けECRスパッタ成膜中の基板温度を測定したところ、150℃以下であることが確認できた。また、アルミからなる下部配線403にヒロックなどの現象も認められなかった。
【0074】
次に、第二の蓄熱層上に、一般的なスパッタによってHfB2からなる発熱抵抗層(20μm×100μm、膜厚0.16μm、配線密度16Pel)を、電子ビーム蒸着によってAlからなる電極層(膜厚0.6μm、幅20μm)を形成した。
【0075】
その後、レジストによりパターンを形成し、その次にこれをマスクとしてウエットエッチングを行い、図1(a)に示すパターンと同様のパターンで発熱抵抗層404および電極層405を形成した。Alのウエットエッチングには燐酸:硝酸:酢酸:水=16:1:2:1の混合液を使用し、HfB2のエッチングには、ふっ酸と硝酸の混合液を用いた。その後レジストを剥離し、AlとHfB2のパターンが完成した。すなわち各発熱抵抗体2aに互いに離間して電極3aおよび3bが接続されるようにした。このとき発熱抵抗体は256個並べて設けた。なお、HfB2膜の下層に形成されていたECRスパッタによる第二の蓄熱層402bのダメージは、極めて小さかった。
【0076】
次に、電極および発熱抵抗体が形成された部分の上部にSiO2から成る保護層406(膜厚2μm)とTaからなる耐キャビテーション層407(0.5μm)とをいずれも一般的なスパッタ法により成膜し、液体噴射記録ヘッド用基体を得た。
【0077】
上述の液体噴射記録ヘッド用基体の上に、図3に示したような液路6および液室(不図示)等をドライフィルムにより形成し、天板を接着剤で貼り合わせ、最後にスライサー切断により吐出口面を形成する面を切断して液体噴射記録ヘッドを得た。
【0078】
このようにして作成した液体噴射記録ヘッド1000個について、吐出耐久試験を実施した。
【0079】
各発熱抵抗体に1.1Vth、パルス幅10μsの印字信号を印加して各吐出口から液体を吐出させ、発熱抵抗体が断線するまでの電気信号のサイクル数を測定し、その耐久性を評価した。上記ヘッドは1ヘッド当たり256個の発熱抵抗体を持つが、そのうち1個の発熱抵抗体でも断線した時点でそのヘッドは試験打ち切りとした。得られた結果は表1に示すとおりである。すなわち、1000個のヘッドのうちの99.8%において、109回以上の液体吐出を良好に行うことができた。
【0080】
【表1】

【0081】
〔比較例1〕
ECRスパッタ法ではなく、プラズマCVD法により第二の蓄熱層(SiO2、膜厚:350nm)を成膜したこと以外は実施例1と同様にして液体噴射記録ヘッドを1000個作成し、吐出耐久試験を実施した。
【0082】
プラズマCVDの成膜温度は200℃で、成膜時の圧力は2.0torr(270Pa)であり、ガスはSiH4:N2O=200sccm:6000sccmである。
【0083】
第二の蓄熱層成膜後、下層部配線403と第二の蓄熱層402bの断面形状を観察したところ、図7(a)のような形状になっていた。
【0084】
HfB2(発熱抵抗層)エッチングに際してオーバーエッチングを行った後、断面形状を測定したところ、図7(a)のB部に相当する部位の膜が、緻密性が低いためにエッチングされていた。
【0085】
吐出耐久試験により得られた結果は次のとおりである。
【0086】
【表2】

【0087】
パルス数1×107以下にて断線したヘッドを分解し原因を調べたところ、図7に示すB部に相当する部位においてクラックが発生し、そのクラックがきっかけとなって破損した保護層・耐キャビテーション層からインクがしみ込み、下部配線403が腐食していた。
【0088】
〔実施例2〕
HfB2(発熱抵抗層)のエッチングを塩素系のガスを用いてドライエッチングしたこと以外は実施例1と同様にして液体噴射記録ヘッドを作成し、評価した。第二の蓄熱層上にはダメージがほとんどなかった。耐久試験を行ったところ、実施例1と同レベルの結果を得た。
【0089】
〔比較例2〕
塩素系ガスを使用し、ドライエッチングによってHfB2(発熱抵抗層)をエッチングしたこと以外は比較例1と同様にして液体噴射記録ヘッドを作成し、評価した。やはり図7(a)B部に相当する部位にダメージが生じてしまい、耐久試験の結果に向上は認められなかった。
【0090】
〔比較例3〕
段差部の膜質改善をねらって、プラズマCVD成膜時の基板温度を300℃に上げたこと以外は比較例1と同様にして液体噴射記録ヘッドを作成し、評価した。
【0091】
しかしながら、プラズマCVD−SiO2の下部に位置するアルミ配線エッジ部に、図8に示すようなヒロックが生じてしまった。耐久試験を行ったところ、結果は悪化してしまった。断線したヘッドを分解して調べたところ、ヒロックが発生したために、その上のSiO2膜における実質的な膜厚段差が大きくなった部分において、膜としての被覆性が悪化し、ステップ部でクラックが生じ、このクラック部よりインクが電極に接し電蝕の発生したことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の液体噴射記録ヘッドは、インクジェットプリンターなどにおいて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】(a)は液体噴射記録ヘッド用基体の一例の模式的平面図であり、(b)はX−X’線における模式的断面図である。
【図2】基体の形成に用いる支持体の構成例を示す断面模式図である。
【図3】液体噴射記録ヘッドの一例の、液路を含む平面における垂直断面模式図である。
【図4】基板を傾斜させて配置したECRスパッタ装置の構造例を示す模式図である。
【図5】ECRスパッタ装置の基本構造例を示す模式図である。
【図6】液体噴射記録ヘッド用基体の一例の断面模式図である。
【図7】(a)はアルミニウム配線の段差がある場合のSiO2層の断面形状を示す模式図、(b)はSiO2層の上にさらに薄膜を積層した場合の断面形状を示す模式図、(c)はその平面形状を示す模式図である。
【図8】アルミニウム配線のヒロックがある場合のSiO2層の断面形状を示す模式図である。
【図9】アルミニウム配線の段差がある場合のSiO2層の断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0094】
1 支持体
1b 蓄熱層
2 発熱抵抗層
2a 発熱抵抗体
3 電極層
3a,3b 電極
4 保護層
5 天板
6 液流路
7 吐出口
8 液体噴射記録ヘッド用基体
312 コイル
314 プラズマ室
315 第一のガス導入口
316 第二のガス導入口
317 試料室
318、323 基板ホルダー
319、322 基板
320 ターゲット
321 排気口
413 マイクロ波導波管
401 シリコン基板
402 蓄熱層
402a 第1の蓄熱層
402b 第2の蓄熱層
403 下部配線
404 発熱抵抗層
405 電極層
406 保護層
407 耐キャビテーション層
409 アルミニウム配線
410 SiO2薄膜
411 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から液滴を吐出する液体噴射記録ヘッドに用いられる基体であって、
支持体と、前記支持体上に形成された蓄熱層と、熱エネルギーを発生するための発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に導通するように前記支持体上に形成される一対の電極と、
前記一対の電極および前記発熱抵抗体を覆う保護層とを備え、
前記蓄熱層が、ECRスパッタ層よりなることを特徴とする液体噴射記録ヘッド用基体。
【請求項2】
前記蓄熱層が、支持体上に形成されたマトリクス状の複数層の配線層を絶縁膜を介して積層され、配線層上に形成される絶縁層がECRスパッタ層である請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド用基体。
【請求項3】
前記ECRスパッタ層がシリコン酸化物を含む請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド用基体。
【請求項4】
前記ECRスパッタ層がシリコン窒化酸化物を含む請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド用基体。
【請求項5】
支持体と、前記支持体上に形成された蓄熱層と、熱エネルギーを発生するための発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に導通するように前記支持体上に形成される一対の電極と、
前記一対の電極および前記発熱抵抗体を覆う保護層とを備える液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法において、
前記蓄熱層を、ECRスパッタ法により形成することを特徴とする液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法。
【請求項6】
前記蓄熱層が、支持体上に形成されたマトリクス状の複数層の配線層を絶縁膜を介して積層され、該配線層上に形成される絶縁層がECRスパッタ層である請求項5に記載の液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法。
【請求項7】
前記ECRスパッタ層がシリコン酸化物を含む請求項5に記載の液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法。
【請求項8】
前記ECRスパッタ層がシリコン窒化酸化物を含む請求項5に記載の液体噴射記録ヘッド用基体の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド用基体;
前記液体噴射記録ヘッド用基体に備わる発熱抵抗体に対応して設けられた、記録用の液体を流通させるための液路;および、
前記液路に連通し記録用の液体が吐出するための吐出口
を有する液体噴射記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−160777(P2007−160777A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361799(P2005−361799)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】