説明

液体噴霧乾燥機

【課題】乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することのできる液体噴霧乾燥機を提供することを目的とする。
【解決手段】液状処理物Eを噴霧し乾燥させるドライヤ本体4を、液状処理物Eに熱を加えて乾燥させる2基のドライヤドラム43と、液状処理物Eを吐出する液状処理物搬送パイプ25と、ドライヤドラム43に向かって、圧縮空気Aを噴出する噴出ノズル36とを備え、噴出ノズル36を、液状処理物搬送パイプ25から吐出した液状処理物Eに対して圧縮空気Aを噴出する位置に配置するとともに、液状処理物搬送パイプ25における吐出方向を、噴出ノズル36からドライヤドラム43に向う圧縮空気Aの噴出方向に対して交差する方向とし、内部空間42bにおいて、噴出された圧縮空気Aと吐出された液状処理物Eとが衝突する衝突箇所を開放空間とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃液や汚泥等の液状処理物の減容及び再資源化のため、あるいは、水溶化された食品や薬品等から乾燥製品を製造するために乾燥処理を行なう液体噴霧乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚泥や廃液等の減容及び再資源化のため、あるいは、水溶化された食品や薬品等から乾燥製品を製造するために、廃液や水溶液等の液状処理物を乾燥させて乾燥物(以下において、乾燥処理物という)を生成するために液体乾燥機が用いられている。
【0003】
このような液体乾燥機は、加熱された乾燥手段に対して処理する液状処理物を流入し、液状処理物の水分を加熱によって蒸発させて、乾燥処理物を生成する装置である。しかし、流入した液状処理物を乾燥させるため、乾燥効率が悪く、乾燥効率の向上を目的とし、液状処理物を霧化してから乾燥させる液体噴霧乾燥機が用いられている。
【0004】
このような液体噴霧乾燥機は、液状処理物をスプレーノズルで霧化して噴霧し、噴霧された処理物(以下において、噴霧状処理物という)に熱を加えて乾燥させ、乾燥処理物を生成することができる。
【0005】
例えば、このような液体噴霧乾燥機のひとつとして、2流体スプレーノズルを用いた液体噴霧乾燥機が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に示す液体噴霧乾燥機は、上部に配置した2流体スプレーノズルと、2流体スプレーノズルの下方に配置し、内部が高温空間である乾燥塔とで構成し、2流体スプレーノズルで霧化して噴霧状処理物を、乾燥塔内部の高温空間で乾燥させ、乾燥処理物として生成することができる。
【0006】
上記2流体スプレーノズルは、下端が開口する釣鐘状のノズル本体と、ノズル本体内部における上部に配置され、細い線状に液状処理物を噴出する液体噴出口と、液体噴出口から噴出された液状処理物に向かって圧縮空気を噴出する圧縮空気噴出口とで構成している。
【0007】
このような構成の2流体スプレーノズルにより、液体噴出口から噴出された液状処理物は、圧縮空気噴出口から噴出された圧縮空気によって霧化され、釣鐘状のノズル本体の下端の開口部から、下方に配置された乾燥塔内部の高温な乾燥空間に向かって、噴霧することができる。
【0008】
そして、乾燥塔内部の高温な乾燥空間において、噴霧状処理物の水分を蒸発させることによって、乾燥処理物を生成することができる。このように、液体噴霧乾燥機では、液状処理物を乾燥処理物として回収するため、処理物を減容化して回収できるとともに、回収した処理物を再資源化できるとされている。
【0009】
しかし、上記液体噴霧乾燥機は、2流体スプレーノズルが詰まりやすく、メンテナンスに手間がかかり、満足できる処理性能を確保できない可能性があった。
詳しくは、上記液体噴霧乾燥機では、ノズル本体の内部において、ノズル本体の下端の開口部から下方に向かって噴霧する噴霧状処理物の噴霧方向に一致する方向に、液体噴出口から液状処理物を噴出する。これに対して、圧縮空気噴出口は、液体噴出口から噴出された液状処理物に向かって圧縮空気を噴出するため、上記噴霧方向に交差する方向に圧縮空気を噴出させることとなる。
【0010】
したがって、噴霧方向に一致する噴出方向に噴出される液状処理物と、噴霧方向に交差する噴出方向に噴出される圧縮空気とがノズル本体内部において衝突して霧化する際に、液状処理物は、ノズル本体内部で飛び散り、ノズル本体内面に付着する。
【0011】
なお、飛び散った液状処理物が付着するノズル本体内面は、高温な乾燥空間を内部に備えた乾燥塔に近いため、加熱されて高温になっており、飛び散って付着した液状処理物はノズル本体内面で乾燥し、強固に付着する。
【0012】
一旦、処理物がノズル本体内面に付着すると、付着した処理物上に、処理物がどんどん蓄積し、ノズル本体の開口部を閉塞することとなる。完全に開口部が閉塞されずとも、蓄積した処理物によって、開口断面積が減少するため、噴霧状処理物の噴霧量が低減したり、蓄積した液状処理物が滴下したりして、乾燥処理の処理能力が低減することとなる。このような乾燥処理の処理能力の低減を防止するためには、つまり、処理能力を維持するためには、ノズル本体内面に付着した処理物をこまめに除去する必要があり、満足できる処理性能を確保できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−330146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明は、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することのできる液体噴霧乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、液状処理物を噴霧し乾燥させる液体噴霧乾燥機であって、前記液状処理物に熱を加えて乾燥させる乾燥手段と、前記液状処理物を吐出する吐出手段と、前記乾燥手段に向かって、気体を噴出する気体噴出手段とを備え、前記気体噴出手段を、前記吐出手段から吐出した前記液状処理物に対して前記気体を噴出する位置に配置するとともに、前記吐出手段における吐出方向を、前記気体噴出手段から前記乾燥手段に向う前記気体の噴出方向に対して交差する方向とし、乾燥機本体内部において、噴出された前記気体と吐出された前記液状処理物とが衝突する衝突箇所を開放空間としたことを特徴とする。
【0016】
上記乾燥手段は、外周面が加熱された倒位姿勢の円柱状のドラム式ドライヤ、加熱された円盤、あるいは、熱風の内部への送風や遠赤外線による加熱等により、内部が高温な雰囲気である乾燥室などの適宜の乾燥手段とすることができる。
【0017】
上記吐出手段は、液状処理物が内部空間を流れ、端部の開口から流出する配管やパイプとし、さらには、内部空間における液状処理物の流れる方向において、空間断面が一定である、縮小する、あるいは拡大する吐出手段とすることができる。
【0018】
上記液状処理物は、含油汚泥、水性塗料、水性インキ、活性汚泥、洗浄水・洗剤廃液、コーヒー滓、ジャガイモ等の食品の皮・身などの乾燥処理物が処分対象となる含有物を含有する液状の処理物、あるいは、脱脂粉乳、インスタントコーヒー、粉末茶、調味料、プロテイン、粉末青汁、粉薬、顔料、セラミックス素材、触媒支持剤、化粧品、あるいは粉末洗剤等の乾燥処理物を製品として利用できる様々な水溶液とすることができる。
【0019】
上記気体は、空気または窒素ガスなど液状処理物の性状に応じた適宜の気体とし、上記気体噴出手段は、適宜の気体を所定方向に噴出する噴出ノズルとすることができる。
【0020】
上述の前記気体噴出手段によって、吐出手段から吐出した前記液状処理物に対して前記気体を噴出するということは、吐出手段の吐出部分の近傍の液状処理物に対して気体を噴出するということ、吐出手段から吐出され、乾燥手段に散布された液状処理物に対して気体を噴出するということ、あるいは吐出部分から乾燥手段までの間における液状処理物に対して気体を噴出するということを含む概念である。
【0021】
したがって、上述の噴出された前記気体と吐出された前記液状処理物とが衝突する衝突箇所は、吐出手段の吐出部分の近傍、乾燥手段上あるいは吐出部分から乾燥手段までの間における箇所を含む概念となる。
【0022】
上述の乾燥機本体内部において、噴出された前記気体と吐出された前記液状処理物とが衝突する衝突箇所を開放空間とするということは、乾燥機本体内部において、気体噴出手段から噴出された気体と、吐出手段から吐出した液状処理物とが衝突する衝突箇所の周囲を略囲繞する、例えば上述したようなノズル本体等の乾燥機本体内部と衝突箇所の周囲とを仕切る仕切りを備えていない空間であり、乾燥機本体内部において開放された空間であることをいう。
【0023】
この発明により、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することのできる液体噴霧乾燥機を構成することができる。
詳しくは、乾燥機本体内部において、噴出された前記気体と吐出された前記液状処理物とが衝突する衝突箇所を開放空間としたことにより、液状処理物が気体と衝突して飛び散った場合であっても、例えば、ノズル本体内部で衝突した場合のように、液状処理物がノズル本体内面に付着してノズル本体の開口を閉塞し、ノズル本体から噴霧する噴霧状処理物の噴霧量が低減するような不具合が生じることを防止できる。
【0024】
また、吐出手段における吐出方向を、気体噴出手段から乾燥手段に向う気体の噴出方向に対して交差する方向としているため、吐出手段から吐出した液状処理物は、気体噴出手段から乾燥手段に向って噴出された気体によって、乾燥手段に向う方向に液状処理物を噴霧することができる。したがって、例えば、吐出手段が液状処理物を乾燥手段に向って吐出するとともに、吐出手段が液状処理物を吐出する吐出方向に交差する方向に気体を噴出する気体噴出手段を複数備え、複数の気体噴出手段から噴出される気体が合わさって、吐出された液状処理物を乾燥手段に向かって噴霧する場合と比較して、確実に、液状処理物を霧化して、乾燥手段に向かって噴霧することができる。
【0025】
詳しくは、吐出手段が液状処理物を乾燥手段に向って吐出するとともに、吐出手段が液状処理物を吐出する吐出方向に交差する方向に気体を噴出する気体噴出手段を複数備え、複数の気体噴出手段から噴出される気体が合わさって、液状処理物を乾燥手段に向かって噴霧する装置において、複数の気体噴出手段のそれぞれから噴出される気体の噴出圧力や噴出量のバランスが崩れた場合、複数の気体噴出手段から噴出され、合わさった気体の噴出方向が変化する。したがって、噴霧状処理物の噴霧方向が変化し、液状処理物を噴霧状処理物として乾燥手段に向かって確実に噴霧することができないおそれがある。
【0026】
これに対し、乾燥手段に向かって気体を噴出する気体噴出手段を、吐出手段から吐出した液状処理物に対して気体を噴出する位置に配置するとともに、吐出手段における吐出方向を、気体噴出手段から前記乾燥手段に向う気体の噴出方向に対して交差する方向とすることにより、気体噴出手段からの気体の噴出方向が乾燥手段に向かっているため、吐出手段から吐出する液状処理物を、乾燥手段に向かって確実に噴霧することができる。
【0027】
したがって、噴出された気体によって噴霧状処理物を安定して乾燥手段に供給することができ、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することができる。また、例えば、上述したようなノズル本体内部で液状処理物と噴出した気体とを衝突させ、噴霧状処理物をノズル本体から噴霧させる場合を比較して、メンテナンスの必要性を低減し、利用者の満足度や利便性を向上することができる。
【0028】
この発明の態様として、前記吐出手段から吐出する前記液状処理物の吐出圧力及び吐出量のうち少なくとも一方を調節する吐出調節手段、前記液状処理物の吐出方向を調節する吐出方向調節手段、前記気体噴出手段から噴出する前記気体の噴出圧力及び噴出流量のうち少なくとも一方を調節する噴出状態調節手段、並びに、前記気体の噴出方向を調節する噴出方向調節手段のうち少なくともひとつを備えることができる。
【0029】
この発明により、液状処理物の吐出圧力及び吐出量、気体の噴出圧力及び噴出量、液状処理物の吐出方向、並びに気体の噴出方向のうち少なくともひとつを調節することができる。これにより、性状の異なる様々な液状処理物に応じた適切な吐出圧力、吐出量及び吐出方向、並びに、噴出圧力、噴出量及び噴出方向に設定することができ、液状処理物の性状に応じて乾燥処理に適した噴霧状態を構成することができる。したがって、様々な性状の液状処理物であっても、効率よく乾燥処理することができる。
【0030】
また、この発明の態様として、前記吐出手段及び前記気体噴出手段を、前記乾燥手段より高い位置に配置することができる。
この発明により、噴霧状処理物を乾燥手段に向かって効率よく噴出させることができる。
【0031】
詳しくは、吐出方向が気体噴出手段の噴出方向に対して交差する吐出手段より吐出された液状処理物は、自重によって乾燥手段に向かって落下することとなる。つまり、自重による液状処理物の落下方向と、気体の噴出方向が略一致し、自重によって乾燥手段に向かって落下する液状処理物に対して気体を噴出させるため、低い噴出圧力や少ない噴出量で確実に噴霧状処理物を乾燥手段に向かって噴霧することができる。
【0032】
また、この発明の態様として、前記乾燥手段を、少なくとも外周面が加熱され、中心軸方向に対して回転する倒位姿勢の円柱状の加熱円柱体で構成し、吐出手段における吐出方向を水平方向とすることができる。
【0033】
上記中心軸方向に対して回転する倒位姿勢の円柱状の加熱円柱体は、円柱断面の中心を通り、円柱状の高さ方向である中心軸を回転中心として回転するとともに、中心軸方向が、垂直方向に対して交差する方向である姿勢の円柱体であり、いわゆるドラム式ドライヤで構成することができる。
上記水平方向は、水平な方向、あるいは略水平な方向とすることができる。
【0034】
この発明により、より効率的に液状処理物を乾燥処理することができる。
詳しくは、外周面が加熱され、中心軸を回転中心として回転する倒位姿勢の円柱状の加熱円柱体で乾燥手段を構成するとともに、吐出手段における吐出方向を水平方向とすることにより、噴霧状処理物を加熱円柱体の外周面の広い範囲にわたって散布することができる。
【0035】
したがって、加熱円柱体の外周面において噴霧状処理物の散布範囲が狭く、集中する場合と比べて、噴霧状処理物が広い範囲に散布されることにより、乾燥効率を向上することができる。また、加熱円柱体の外周面において噴霧状処理物の散布範囲が狭く、集中する場合、一旦噴霧状処理物は、加熱円柱体の外周面で液状となり、加熱円柱体の外周面を伝って液ダレし、既に乾燥した処理物に付着するおそれがあるが、上記外周面における広い範囲に散布することにより、散布された液状処理物を効率的に乾燥し、液ダレが生じることを防止できる。
【0036】
また、この発明の態様として、前記吐出手段及び前記気体噴出手段を、それぞれ独立した構成とすることができる。
この発明により、簡単な構造で構成するとともに、メンテナンス性を向上することができる。
【0037】
詳しくは、例えば、前記吐出手段及び前記気体噴出手段を一体構成した場合、一体構成された吐出手段及び気体噴出手段に接続する液状処理物や気体の配管等の構造が複雑化する。また、例えば、吐出手段における吐出方向を調整する吐出方向調節手段や、気体噴出手段における噴出方向を調整する噴出方向調節手段を備える場合、一体構成された吐出手段及び気体噴出手段に上記方向調整手段を備える場合と比較して、簡易な構造で方向調整手段を備えることができる。
【0038】
さらには、例えば、前記吐出手段及び前記気体噴出手段のうちいずれかが故障した場合、前記吐出手段及び前記気体噴出手段を一体構成とすると、両方を交換する必要があるが、別体構成することにより、故障した方のみを交換すればよく、またメンテナンス作業が容易となる。
【0039】
また、この発明の態様として、前記吐出手段を、前記液状処理物が導通する断面中空部の形状が導通方向に一様な液状処理物導通パイプとすることができる。
上述の液状処理物が導通する断面中空部の形状が導通方向に一様な液状処理物導通パイプは、液状処理物が導通する断面中空部の断面形状が、液状処理物の導通方向、つまり長手方向に変化しないパイプである。
【0040】
この発明により、メンテナンスの必要性が低く、安定して乾燥処理を行うことができる。
詳しくは、例えば、吐出手段を、液状処理物が導通する断面中空部の形状が導通方向に向かって縮径する先細りの導通パイプで構成した場合、導通パイプの先端で液状処理物に含有する固形物が蓄積して閉塞するおそれがある。しかし、断面中空部の形状が導通方向に一様な液状処理物導通パイプを用いることによって、導通する液状処理物に固形物が含有する場合であっても、断面内空部が閉塞するおそれがない。したがって、所望の吐出量及び吐出圧力で液状処理物を吐出できるため、安定した乾燥処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
この発明により、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することのできる液体噴霧乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】液体噴霧乾燥機の全体概要図。
【図2】乾燥機本体の断面図。
【図3】乾燥機本体内部の斜視図。
【図4】噴霧状処理物についての説明図。
【図5】別の実施形態の乾燥機本体の断面図。
【図6】さらに別の実施形態の乾燥機本体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は液体噴霧乾燥機1の全体概要図を示し、図2はドライヤ本体4の断面図を示し、図3はドライヤ本体4の内部における斜視図を示し、図4はドライヤ本体4における噴霧状処理物E’についての説明図を示している。なお、図4(a)は液状処理物搬送パイプ25と噴出ノズル36の拡大側面図を示し、図4(b)は噴霧状処理物が乾燥する課程について説明するための拡大断面図を示している。
【0044】
液体噴霧乾燥機1は、図1に示すように、液状処理物Eを乾燥する液状処理物乾燥部10と、液状処理物Eを液状処理物乾燥部10に供給する液状処理物供給部20と、圧縮空気を液状処理物乾燥部10に供給する圧縮空気供給部30とで構成している。
【0045】
なお、ここで乾燥処理する処理対象である液状処理物Eは、含油汚泥、水性塗料、水性インキ、活性汚泥、洗浄水・洗剤廃液、コーヒー滓、ジャガイモ等の食品の皮・身などの乾燥処理物が処分対象となる含有物を含有する液状の処理物、あるいは、脱脂粉乳、インスタントコーヒー、粉末茶、調味料、プロテイン、粉末青汁、粉薬、顔料、セラミックス素材、触媒支持剤、化粧品、あるいは粉末洗剤等の乾燥処理物を製品として利用できる様々な水溶液とすることができる。
【0046】
液状処理物乾燥部10は、ドライヤ本体4と、高温の水蒸気を生成するボイラ11と、ボイラ11で発生した水蒸気をドライヤ本体4の内部へ供給する蒸気ライン12と、蒸気ドレーンコック13aを備え、ドライヤ本体4の内部に溜まった水分を外部に排出する排水ライン13と、運ばれてきた蒸発蒸気(ベーパ)を含む排気ガスを蒸発蒸気と排気ガスとに分離する気水分離機14と、経路途中に換気ファン15aを有し、ドライヤ本体4の上部の換気口42aと気水分離機14とを接続する換気ライン15と、気水分離機14と液状処理物タンク21とを接続する処理物循環ライン16と、気水分離機14に接続し、排気ガスを外気へ排出する排気ライン17とで構成している。
【0047】
なお、換気ライン15は、換気ファン15aによりドライヤ本体4内で発生する液状処理物Eから蒸発した蒸発蒸気(ベーパ)を含む排気ガスを気水分離機14へ排出する構成である。また、処理物循環ライン16は、分離された蒸発蒸気を、後述する液状処理物タンク21へ還元する構成である。
【0048】
液状処理物供給部20は、液状処理物Eを貯蔵する液状処理物タンク21、該液状処理物タンク21の液状処理物Eを液状処理物乾燥部10に向かって圧送する圧送ポンプ22、液状処理物乾燥部10に供給する液状処理物Eの流量を調整する液状処理物流量調整バルブ23、並びに、圧送ポンプ22及び液状処理物流量調整バルブ23を介し、液状処理物タンク21と液状処理物乾燥部10とを結ぶ液状処理物搬送ライン24で構成している。
【0049】
なお、液状処理物搬送ライン24の先端には、ドライヤ本体4内部に配置される液状処理物搬送パイプ25が接続され、液状処理物搬送パイプ25の先端には、液状処理物吐出口26が形成される(図3参照)。
液状処理物搬送パイプ25は、内部に導通空間25aが形成され、長手方向に断面変化しない円形断面の導通パイプで形成している。
【0050】
圧縮空気供給部30は、圧縮空気Aを生成するコンプレッサ31、コンプレッサ31で生成された圧縮空気Aを貯蔵しておく圧空タンク32、圧空タンク32からドライヤ本体4へ向けて圧縮空気Aを供給する圧空ライン33、及びドライヤ本体4へ向けて供給する圧縮空気Aの流量を調整する空気流量調整バルブ34で構成している。なお、圧空ライン33の先端には、ドライヤ本体4内部に配置される圧空搬送パイプ35が接続され、圧空搬送パイプ35の先端には、圧縮空気Aを噴出する噴出ノズル36を備えている(図3参照)。
【0051】
ダブルドラム式ドライヤと呼ばれるドライヤ本体4は、作業架台41上に配置されたドライヤハウジング42と、ドライヤハウジング42内部に配置された倒位姿勢の2基のドライヤドラム43と、ドライヤドラム43で乾燥した乾燥処理物Fをドラム表面から剥がすスクレーパ44と、スクレーパ44によって剥がされた乾燥処理物Fを回収する乾燥処理物回収タンク45とで構成している。
【0052】
ドライヤハウジング42は、下から順に階段状に小さくなる正面視略ピラミッド型であり、上端に換気口42aを備え、内部に略閉鎖状の内部空間42bを構成している。
【0053】
内部空間42bには、図2,3に示すように、2基のドライヤドラム43を、その中心軸L同士が同じ高さで平行となるように設置するとともに、奥行き位置も合わせて配置している。そして、2基のドライヤドラム43は、図示省略する駆動源により互いに、中心軸Lを回転中心として、外向きに回転する構成である(図2における矢印参照)。なお、2基のドライヤドラム43の対向部分は、外周面が互いに接しているが、わずかにクリアランスを設けてもよい。
【0054】
そして、ドライヤドラム43の背面側側面の中心に蒸気ライン12が接続され、ドライヤドラム43の内部へ導入された高温の水蒸気によって、ドライヤドラム43の外周面は加熱される。
【0055】
スクレーパ44は、液状処理物乾燥部10の両外側下部に設けられており、スクレーパ44の先端部44aは、ドライヤドラム43の外周面に接し、ドライヤドラム43の外周面上を摺動する。
【0056】
また、内部空間42bにおいて、液状処理物導通パイプ25及び圧空搬送パイプ35を、ドライヤドラム43の上方に設けている。なお、液状処理物導通パイプ25は、液状処理物搬送ライン24に接続され、圧空搬送パイプ35は、圧空ライン33に接続されている。
【0057】
液状処理物導通パイプ25は、2基のドライヤドラム43の対向部分の直上において、ドライヤドラム43の中心軸Lに平行となるように水平に設けられている。これに対して、圧空搬送パイプ35は、2基のドライヤドラム43の対向部分の直上において、その長手方向が垂直になるよう配置している。
【0058】
圧空搬送パイプ35は、内径が二段階に分かれており、開口部付近のパイプの内径R2が開口部より遠いパイプの内径R1より小さくなっている、すなわち、開口部に近づくと圧空搬送パイプ35の内径が小さくなる構造になっている。圧縮空気Aは、圧空タンク32から圧空ライン33を通って圧空搬送パイプ35へ達し、圧空搬送パイプ35の開口部から液状処理物乾燥部10へ向かって噴出する構成である。なお、圧空搬送パイプ35は、開口部に近づくとパイプの内径が小さくなる構造であるため、圧縮空気Aは、開口部付近で流速を増して開口部より、ドライヤドラム43に向かって圧縮空気Aを垂直下向きに噴出することができる。
【0059】
図4(a)に示すように、液状処理物導通パイプ25は一様な内径R3の円筒でありドライヤドラム43の中心軸Lと略平行に液状処理物Eを吐出することができる。
【0060】
したがって、液状処理物導通パイプ25より水平に吐出された液状処理物Eは、圧空搬送パイプ35から噴出した圧縮空気Aにより霧化されて噴霧状処理物E’となり、自重と空気圧によりドライヤドラム43の外側面に対して薄く、そして広く散布することができる。
【0061】
なお、正面視における噴霧状処理物E’の噴霧形状は、圧空搬送パイプ35の開口部を通る鉛直軸に対して対称な噴角Dが約60度の扇形状となる。また、側面視における噴霧状処理物E’の噴霧形状は、液状処理物導通パイプ25の液状処理物吐出口26からドライヤドラム43の外周面全域にわたる放物形状となる。
【0062】
また、図2,3に示すように、ドライヤドラム43の上方であり、液状処理物搬送パイプ25から吐出される液状処理物Eと圧空搬送パイプ35の噴出ノズル36から噴出される圧縮空気Aとが衝突して噴霧状処理物E’となる衝突箇所Sの周囲には、略閉鎖空間である内部空間42bにおいて開放空間となっており、液状処理物導通パイプ25及び圧空搬送パイプ35以外に何も設置されていない。
【0063】
このような構成及び配置の液状処理物搬送パイプ25及び圧空搬送パイプ35によって、ドライヤドラム43の外周面に薄く散布された液状処理物E(噴霧状処理物E’)は、ドライヤドラム43の熱によって加熱され、水分が蒸発し、乾燥した乾燥処理物Fとしてドライヤドラム43の外周面に付着する。そして、ドライヤドラム43の外向きの回転により、ドライヤドラム43の外周面に対して相対的に摺動するスクレーパ44によって、乾燥処理物Fはドライヤドラム43の外周面から剥がされ、略粉状となって落下し、下方に配置された乾燥処理物回収タンク45に集められる。
【0064】
このように、液状処理物E(噴霧状処理物E’)を噴霧し乾燥させるドライヤ本体4を、液状処理物Eに熱を加えて乾燥させる2基のドライヤドラム43と、液状処理物Eを吐出する液状処理物搬送パイプ25と、ドライヤドラム43に向かって、圧縮空気Aを噴出する噴出ノズル36とを備え、噴出ノズル36を、液状処理物搬送パイプ25から吐出した液状処理物Eに対して圧縮空気Aを噴出する位置に配置するとともに、液状処理物搬送パイプ25における吐出方向を、噴出ノズル36からドライヤドラム43に向う圧縮空気Aの噴出方向に対して交差する方向とし、内部空間42bにおいて、噴出された圧縮空気Aと吐出された液状処理物Eとが衝突する衝突箇所Sを開放空間としたことにより、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することができる。
【0065】
詳しくは、内部空間42bにおいて、噴出された圧縮空気Aと吐出された液状処理物Eとが衝突して噴霧状処理物E’となる衝突箇所Sを開放空間としたことにより、液状処理物Eが圧縮空気Aと衝突して飛び散った場合であっても、例えば、ノズル本体内部で衝突した場合のように、液状処理物Eがノズル本体内面に付着してノズル本体を閉塞し、ノズル本体から噴霧する噴霧状処理物E’の噴霧量が低減するような不具合が生じることを防止できる。
【0066】
また、液状処理物搬送パイプ25における吐出方向を、噴出ノズル36からドライヤドラム43に向う圧縮空気Aの噴出方向、すなわち垂直方向に対して交差する方向である水平方向としているため、液状処理物搬送パイプ25から吐出した液状処理物Eを、噴出ノズル36からドライヤドラム43に向って噴出された圧縮空気Aによって、ドライヤドラム43に向う方向に噴霧状処理物E’として噴霧することができる。
【0067】
したがって、例えば、液状処理物搬送パイプが液状処理物Eをドライヤドラムに向って吐出するとともに、液状処理物搬送パイプが液状処理物Eを吐出する吐出方向に交差する方向に圧縮空気Aを噴出する噴出ノズルを複数備え、複数の噴出ノズルから噴出される圧縮空気Aが合わさって、吐出された液状処理物Eをドライヤドラムに向かって噴霧する場合と比較して、確実に、液状処理物Eを霧化して噴霧状処理物E’として、ドライヤドラム43に向かって噴霧することができる。
【0068】
詳しくは、液状処理物搬送パイプが液状処理物Eをドライヤドラムに向って吐出するとともに、液状処理物搬送パイプが液状処理物Eを吐出する吐出方向に交差する方向に圧縮空気Aを噴出する噴出ノズルを複数備え、複数の噴出ノズルから噴出される圧縮空気Aが合わさって、液状処理物Eをドライヤドラムに向かって噴霧する装置において、複数の噴出ノズルのそれぞれから噴出される圧縮空気Aの噴出圧力や噴出量のバランスが崩れた場合、複数の噴出ノズルから噴出され、合わさった圧縮空気Aの噴出方向が変化するため、噴霧状処理物E’の噴霧方向が変化し、液状処理物をドライヤドラムに向かって確実に噴霧することができないおそれがある。
【0069】
これに対し、ドライヤドラム43に向かって垂直下向きに圧縮空気Aを噴出する噴出ノズル36を、液状処理物搬送パイプ25から吐出した液状処理物Eに対して圧縮空気Aを噴出する位置に配置するとともに、液状処理物搬送パイプ25における吐出方向を、噴出ノズル36からドライヤドラム43に向う圧縮空気Aの噴出方向に対して交差する水平方向とすることにより、噴出ノズル36からの圧縮空気Aの噴出方向がドライヤドラム43に向かっているため、液状処理物搬送パイプ25から吐出する液状処理物Eを、ドライヤドラム43に向かって確実に噴霧状処理物E’として噴霧することができる。
【0070】
したがって、噴出された圧縮空気Aによって噴霧状処理物E’を、安定してドライヤドラム43に供給することができ、乾燥処理能力が低下することなく、安定して乾燥処理することができる。また、例えば、ノズル本体内部で液状処理物Eと噴出した圧縮空気Aとを衝突させ、噴霧状処理物E’をノズル本体から噴霧させる場合を比較して、メンテナンスの必要性を低減し、利用者の満足度や利便性を向上することができる。
【0071】
また、液状処理物搬送パイプ25から吐出する液状処理物Eの吐出圧力を調整する圧送ポンプ22及び吐出量を調整する液状処理物流量調整バルブ23、並びに噴出ノズル36から噴出する圧縮空気Aの噴出圧力を調整するコンプレッサ31及び噴出流量を調節する空気流量調整バルブ34を備えているため、液状処理物Eの吐出圧力及び吐出量、並びに圧縮空気Aの噴出圧力及び噴出量を調節することができる。
【0072】
これにより、性状の異なる様々な液状処理物Eに応じた適切な吐出圧力及び吐出量、並びに、噴出圧力及び噴出量に設定することができ、液状処理物Eの性状に応じて乾燥処理に適した噴霧状態を構成することができる。したがって、様々な性状の液状処理物Eであっても、効率よく乾燥処理することができる。
【0073】
また、液状処理物搬送パイプ25及び噴出ノズル36を、ドライヤドラム43より高い位置に配置したことにより、液状処理物Eを噴霧状処理物E’としてドライヤドラム43に向かって効率よく噴出させることができる。
【0074】
詳しくは、吐出方向が噴出ノズル36の噴出方向に対して交差する液状処理物搬送パイプ25より吐出された液状処理物Eは、自重によってドライヤドラム43に向かって落下することとなる。つまり、自重による液状処理物Eの落下方向と、圧縮空気Aの噴出方向が略一致し、自重によってドライヤドラム43に向かって落下する液状処理物Eに対して圧縮空気Aを噴出させるため、低い噴出圧力や少ない噴出量で確実に液状処理物Eを噴霧状処理物E’としてドライヤドラム43に向かって噴霧することができる。
【0075】
また、外周面が加熱され、中心軸Lを回転方向中心として回転する倒位姿勢の円柱状のドライヤドラム43に対して、液状処理物搬送パイプ25における液状処理物Eの吐出方向を水平方向とするため、より効率的に液状処理物Eを乾燥処理することができる。
【0076】
詳しくは、外周面が加熱され、中心軸Lに対して回転する倒位姿勢の円柱状のドライヤドラム43に対して、液状処理物搬送パイプ25における液状処理物Eの吐出方向を水平方向とすることにより、噴霧状処理物E’を加熱円柱状のドライヤドラム43の外周面の広い範囲にわたって散布することができる。
【0077】
したがって、ドライヤドラム43の外周面において噴霧状処理物E’の散布範囲が狭く、集中する場合と比べて、噴霧状処理物E’が広い範囲に散布されることにより、乾燥効率を向上することができる。また、ドライヤドラム43の外周面において噴霧状処理物E’の散布範囲が狭く、集中する場合、噴霧状処理物E’はドライヤドラム43の外周面で液状となり、ドライヤドラム43の外周面を伝って液ダレし、既に乾燥した乾燥処理物Fに付着するおそれがあるが、上記外周面における広い範囲に散布することにより、散布された噴霧状処理物E’を効率的に乾燥し、液ダレが生じることを防止できる。
【0078】
また、液状処理物搬送パイプ25及び噴出ノズル36を、それぞれ独立した構成としているため、簡単な構造で構成するとともに、メンテナンス性を向上することができる。
詳しくは、例えば、液状処理物搬送パイプ及び噴出ノズルを一体構成した場合、一体構成された液状処理物搬送パイプに接続する圧空ライン33や、噴出ノズルに接続する液状処理物搬送ライン24等の構造が複雑化する。さらには、例えば、液状処理物搬送パイプ25及び噴出ノズル36のうちいずれかが故障した場合、液状処理物搬送パイプ25及び噴出ノズル36を一体構成とすると、両方を交換する必要があるが、別体構成することにより、故障した方のみを交換すればよく、メンテナンス作業が容易となる。
【0079】
また、液状処理物Eが導通する断面中空部の形状が導通方向に一様な導通パイプで液状処理物搬送パイプ25を構成したことにより、メンテナンスの必要性が低く、安定して乾燥処理を行うことができる。
詳しくは、例えば、液状処理物搬送パイプ25を、液状処理物Eが導通する断面中空部の形状が導通方向に向かって縮径する先細りの導通パイプで構成した場合、導通パイプの先端で液状処理物Eに含有する固形物が蓄積して閉塞するおそれがある。しかし、断面中空部の形状が導通方向に一様な導通パイプを用いることによって、導通する液状処理物Eに固形物が含有する場合であっても、導通空間25aが閉塞するおそれがない。したがって、所望の吐出量及び吐出圧力で液状処理物Eを吐出できるため、安定した乾燥処理を行うことができる。
【0080】
また、液状処理物搬送パイプ25から吐出する液状処理物Eの吐出圧力を調整する圧送ポンプ22、液状処理物Eの吐出量を調節する液状処理物流量調整バルブ23、噴出ノズル36から噴出する圧縮空気Aの噴出圧力を調整するコンプレッサ31及び噴出流量を調節する空気流量調整バルブ34を備えることにより、性状の異なる様々な液状処理物Eに応じた適切な液状処理物Eの吐出圧力、吐出量、圧縮空気Aの噴出圧力、並びに、噴出量を設定し、液状処理物Eの性状に応じて乾燥処理に適した噴霧状態を構成することができる。したがって、様々な性状の液状処理物Eであっても、効率よく乾燥処理することができる。
【0081】
なお、上述の説明では、ドライヤドラム43及び液状処理物搬送パイプ25を水平に配置したが、ドライヤドラム43及び液状処理物搬送パイプ25をわずかに傾斜させてもよく、またドライヤドラム43及び液状処理物搬送パイプ25のいずれか一方をわずかに傾斜させてもよい。例えば、ドライヤドラム43を傾斜させることにより、噴霧状処理物E’がドライヤドラム43の外周面における散布範囲を拡大することができる。
【0082】
また、ドライヤ本体4内部において、噴霧状処理物E’を、蒸気によって外周面が加熱されたドライヤドラム43に対して噴霧して乾燥したが、例えば電気的にドライヤドラム43の外周面を加熱してもよい。さらには、熱風の内部への送風や遠赤外線による加熱等により、内部が高温な雰囲気である乾燥室などに、噴霧状処理物E’を噴霧して乾燥処理してもよい。さらには、回転するとともに、加熱された円盤に対して噴霧状処理物E’を散布して乾燥処理物Fを生成する構成であってもよい。
【0083】
また、上述のドライヤ本体4では、液状処理物搬送パイプ25の液状処理物吐出口26から吐出された液状処理物Eに対して、噴出ノズル36から圧縮空気Aを噴出させ、液状処理物吐出口26の近傍の衝突箇所Sで圧縮空気Aと液状処理物Eとを衝突させ、噴霧状処理物E’としてドライヤドラム43に散布したが、液状処理物吐出口26とドライヤドラム43の外面との間における液状処理物Eの吐出放物線上におけるいずれの位置で、圧縮空気Aと液状処理物Eとを衝突させて噴霧状処理物E’としてもよい。
【0084】
この場合、衝突箇所Sが液状処理物吐出口26から離れるほど拡散した液状処理物Eに対して圧縮空気Aが衝突するため、噴霧状処理物E’を構成する水滴の大きさは大きくなるものの、ドライヤドラム43に対する散布範囲が拡大する。したがって、噴霧状態となる衝突箇所Sの位置を、液状処理物Eの性状に応じ、液状処理物吐出口26に対する噴出ノズル36の相対位置によって調整すればよい。これにより、いずれの性状の液状処理物Eであっても、上述のドライヤ本体4と同様の乾燥処理能力を確保することができる。
【0085】
さらには、ドライヤドラム43の外周面に直接散布された液状処理物Eに対して、噴出ノズル36から圧縮空気Aを噴出させ、ドライヤドラム43の外表面における液状処理物Eの散布範囲を拡散させてもよい。この場合は、噴霧状処理物E’は生成されないものの、噴霧状処理物E’がドライヤドラム43上に散布された状態と同じ状態となるため、上述のドライヤ本体4と同様の乾燥処理能力を確保することができる。ただ、液状処理物Eの温度や散布量によっては、ドライヤドラム43の外表面の温度が低下するおそれがあるため、加熱された圧縮空気Aを噴出させることがより好ましい。
【0086】
また、液状処理物搬送パイプ25と圧空搬送パイプ35とを別体構成したが、メンテナンス性は若干低減するものの、もちろん一体構成してもよい。
また、液状処理物搬送パイプ25を、内部の導通空間25aが長手方向に断面変化しない円形断面の導通パイプで形成しているが、例えば、導通空間25aにおける液状処理物Eの流れる方向、つまり長手方向において、わずかに縮小する、あるいは拡大するパイプで構成することができる。これによって、液状処理物吐出口26から吐出する液状処理物Eの吐出速度を調整することができる。
【0087】
さらには、液状処理物搬送パイプ25の吐出方向や圧空搬送パイプ35の噴出方向を調整できるように、方向調整機構を備えてもよい。これにより、霧化させる液状処理物Eの性状に応じて、吐出方向や噴出方向を調整し、より効率的な乾燥処理を行うことができる。
【0088】
この場合であっても、液状処理物搬送パイプ及び噴出ノズルが一体構成された場合と比べ、液状処理物搬送パイプ25と圧空搬送パイプ35とを別体構成としているため、簡易な構造で方向調整手段を備えることができる。
【0089】
また、コンプレッサ31による圧縮空気Aの噴出圧力の調整、空気流量調整バルブ34による圧縮空気Aの噴出量の調整、圧送ポンプ22による液状処理物Eの吐出圧力の調整、液状処理物流量調整バルブ23による液状処理物Eの吐出量の調整、あるいは上述の液状処理物搬送パイプ25の吐出方向の調整や圧空搬送パイプ35の噴出方向の調整を、CPU等によって構成されるコントローラによって全体的に制御して調整してもよい。
【0090】
また、上述の説明では、圧縮空気供給部30のコンプレッサ31で、圧縮空気Aを生成したが、空気に限定されず、窒素ガスなどの適宜の気体を圧縮して噴出させてもよい。さらには、噴霧能力は低減するものの、圧縮せずとも、勢いよく適宜の気体を噴出させてもよい。
【0091】
また、上述の液体噴霧乾燥機1におけるドライヤ本体4は、外向き回転する2基のドライヤドラム43を備え、ドライヤドラム43の外周面で乾燥した乾燥処理物Fをスクレーパ44で剥がして回収する構成であったが、図5に示すように、内向き回転の2基のドライヤドラム43を配置する構成であってもよい。
【0092】
この場合、2基のドライヤドラム43の間にわずかなクリアランスを設けて配置する。このように構成することによって、ドライヤドラム43の外周面に散布された液状処理物Eは、ドライヤドラム43同士の対向部分で両側のドライヤドラム43で挟んで加熱されるため、乾燥効率を向上することができる。なお、この場合、スクレーパ44をドライヤドラム43の外側上部に配置することとなる。
【0093】
さらには、図6に示すように、1基のドライヤドラム43を備えた、いわゆるシングルドラム式ドライヤと呼ばれるドライヤ本体4であってもよい。この場合、液状処理物搬送パイプ25及び圧空搬送パイプ35は、ドライヤドラム43の中心の上部に配置され、図6におけるドライヤドラム43の右肩に液状処理物Eの液ダレを防止するサブローラ45を備え、左肩にスクレーパ44を備えることとなる。このドライヤ本体4の場合、ドライヤドラム43が1基であるため、ドライヤ本体4をコンパクトに構成することができる。
【0094】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の液体噴霧乾燥機は、液体噴霧乾燥機1におけるドライヤ本体4に対応し、
以下同様に、
液状処理物は、液状処理物E、及び液状処理物Eが霧化されて噴霧する噴霧状処理物E’に対応し、
気体は、圧縮空気Aに対応し、
乾燥機本体は、ドライヤハウジング42に対応し、
乾燥手段及び加熱円柱体は、ドライヤドラム43に対応し、
吐出手段は、液状処理物供給部20における液状処理物搬送パイプ25に対応し、
気体噴出手段は、圧縮空気供給部30における圧空搬送パイプ35の噴出ノズル36に対応し、
吐出調節手段は、圧送ポンプ22及び液状処理物流量調整バルブ23に対応し、
噴出状態調節手段は、コンプレッサ31及び空気流量調整バルブ34に対応し、
液状処理物導通パイプは、導通パイプに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0095】
例えば、液状処理物搬送パイプ25と圧空搬送パイプ35との組み合わせを、ドライヤドラム43の中心軸Lの方向に所定間隔を隔てて複数備えてもよく、この構成により、乾燥処理の効率をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…液体噴霧乾燥機
4…ドライヤ本体
20…液状処理物供給部
22…圧送ポンプ
23…液状処理物流量調整バルブ
25…液状処理物搬送パイプ
30…圧縮空気供給部
31…コンプレッサ
34…空気流量調整バルブ
35…圧空搬送パイプ
36…噴出ノズル
42…ドライヤハウジング
43…ドライヤドラム
A…圧縮空気
E…液状処理物
E’…噴霧状処理物
S…衝突箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状処理物を噴霧し乾燥させる液体噴霧乾燥機であって、
前記液状処理物に熱を加えて乾燥させる乾燥手段と、
前記液状処理物を吐出する吐出手段と、
前記乾燥手段に向かって、気体を噴出する気体噴出手段とを備え、
前記気体噴出手段を、前記吐出手段から吐出した前記液状処理物に対して前記気体を噴出する位置に配置するとともに、
前記吐出手段における吐出方向を、前記気体噴出手段から前記乾燥手段に向う前記気体の噴出方向に対して交差する方向とし、
乾燥機本体内部において、噴出された前記気体と吐出された前記液状処理物とが衝突する衝突箇所を開放空間とした
液体噴霧乾燥機。
【請求項2】
前記吐出手段から吐出する前記液状処理物の吐出圧力及び吐出量のうち少なくとも一方を調節する吐出調節手段、
前記液状処理物の吐出方向を調節する吐出方向調節手段、
前記気体噴出手段から噴出する前記気体の噴出圧力及び噴出流量のうち少なくとも一方を調節する噴出状態調節手段、
並びに、前記気体の噴出方向を調節する噴出方向調節手段のうち少なくともひとつを備えた
請求項1に記載の液体噴霧乾燥機。
【請求項3】
前記吐出手段及び前記気体噴出手段を、前記乾燥手段より高い位置に配置した
請求項1または2に記載の液体噴霧乾燥機。
【請求項4】
前記乾燥手段を、少なくとも外周面が加熱され、中心軸方向に対して回転する倒位姿勢の円柱状の加熱円柱体で構成し、
吐出手段における吐出方向を水平方向とした
請求項1から3のいずれかひとつに記載の液体噴霧乾燥機。
【請求項5】
前記吐出手段及び前記気体噴出手段を、それぞれ独立した構成とした
請求項1から4のいずれかひとつに記載の液体噴霧乾燥機。
【請求項6】
前記吐出手段を、
前記液状処理物が導通する断面中空部の形状が導通方向に一様な液状処理物導通パイプとした
請求項1から5のいずれかひとつに記載の液体噴霧乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−32128(P2012−32128A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174224(P2010−174224)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(593071270)山本技研工機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】