説明

液体圧送装置

【課題】 円錐状弁体に付着した異物が弁口のテーパー加工孔に付着した異物に引っ掛かることのない温度応動弁を提供する。
【解決手段】 図2(a)に示すように弁口8のテーパー加工孔8cと円錐状弁体13との間に形成される断面略三角形部に付着堆積する異物A,Bは円錐状弁体13がR加工孔8aを開けたときに、図2(b)に示すようにテーパー加工孔8cに異物A1が付着し円錐状弁体13に異物A2が付着し、テーパー加工孔8cに異物B1が付着し円錐状弁体13に異物B2が付着する。そのため、図2(b)或いは図2(c)に示すように弁軸12の回転停止位置に拘らず、弁軸12が軸方向に変位して円錐状弁体13がR加工孔8aを閉じるときに円錐状弁体13に付着した異物A2,B2がテーパー加工孔8cに付着した異物A1,B1に引っ掛かることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被制御流体で加熱冷却され、その温度に応じて変形する感温部材により弁口を開閉する温度応動弁に関する。本発明の温度応動弁は所定温度以上あるいは以下の流体を系外に排出したり、複数の流体を混合して所定温度の流体にしたりする場合に用いられ、特に所定温度以下の復水を自動的に排出する温調トラップとして用いる場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温度応動弁は、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁体嵌合孔と弁口を形成し、弁口を弁体嵌合孔の奥壁から連続して下流に向かって通過面積が小さくなるR加工孔と該R加工孔の終端から連続して下流に向かって通過面積の等しいストレート孔と該ストレート孔の終端から連続して下流に向かって通過面積が大きくなるテーパー加工孔とから形成し、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングに進退調節可能にねじ結合し、一端側が弁体嵌合孔に変位自在に嵌合し先端にR加工孔を開閉する円錐状弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて円錐状弁体でR加工孔を開閉し、調節棒の弁ケーシングに対するねじ進退に伴って回転するように弁軸を調節棒に連結し、弁体嵌合孔の奥壁に対面する弁軸の部位に刃物を設け、調節棒をねじ込んで弁軸を回転させるものである。
【0003】
上記従来技術の温度応動弁は、調節棒を回転させて弁軸12を回転させることにより、弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を弁軸12に設けた刃物15で削除できるものであるが、図3(a)に示すように弁口8のストレート孔8bと円錐状弁体13との間に形成される断面略三角形部に異物A,Bが付着堆積する。この異物A,Bは円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを開けたときに、図3(b)に示すように弁口8のストレート孔8bに異物A1が多く付着し円錐状弁体13に異物A2が少なく付着したり、逆に弁口8のストレート孔8bに異物B1が少なく付着し円錐状弁体13に異物B2が多く付着したりする。この状態から感温部材の変形作用により弁軸12が軸方向に変位して円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じる場合は円錐状弁体13に少なく付着した異物A2が弁口8のストレート孔8bに多く付着した異物A1に引っ掛かったり或いは円錐状弁体13に多く付着した異物B2が弁口8のストレート孔8bに少なく付着した異物B1に引っ掛かったりすることはないが、排出すべき流体の温度を変更するために或いは弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を削除するために調節棒をねじ進退させ、弁軸12を図3(c)に示す回転位置で停止させた場合、この状態から感温部材の変形作用により弁軸12が軸方向に変位して円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じようとすると、円錐状弁体13に多く付着した異物B2が弁口8のストレート孔8bに多く付着した異物A1に引っ掛かり、円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを完全閉止できなくなる問題点があった。
【特許文献1】特許第4046956号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の技術的課題は、円錐状弁体に付着した異物が弁口に付着した異物に引っ掛かることのない温度応動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために講じた本発明の技術的手段は、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁体嵌合孔と弁口を形成し、弁口を弁体嵌合孔の奥壁から連続して下流に向かって通過面積が小さくなるR加工孔と該R加工孔の終端から連続して下流に向かって通過面積が大きくなるテーパー加工孔とから形成し、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングに進退調節可能にねじ結合し、一端側が弁体嵌合孔に変位自在に嵌合し先端にR加工孔を開閉する円錐状弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて円錐状弁体でR加工孔を開閉し、調節棒の弁ケーシングに対するねじ進退に伴って回転するように弁軸を調節棒に連結し、弁体嵌合孔の奥壁に対面する弁軸の部位に刃物を設け、調節棒をねじ込んで弁軸を回転させることを特徴とする温度応動弁にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の温度応動弁は、弁口を弁体嵌合孔の奥壁から連続して下流に向かって通過面積が小さくなるR加工孔と該R加工孔の終端から連続して下流に向かって通過面積が大きくなるテーパー加工孔とから形成することにより、円錐状弁体に付着した異物が弁口のテーパー加工孔に付着した異物に引っ掛かることがないので、弁口を完全閉止できるという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、従来技術と同様に、調節棒を回転させて弁軸を回転させることにより、弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を弁軸12に設けた刃物15で削除できるものである。そして、図2(a)に示すように弁口8のテーパー加工孔8cと円錐状弁体13との間に形成される断面略三角形部に異物A,Bが付着堆積する。この異物A,Bは円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを開けたときに、図2(b)に示すように弁口8のテーパー加工孔8cに異物A1が付着し円錐状弁体13に異物A2が付着し、弁口8のテーパー加工孔8cに異物B1が付着し円錐状弁体13に異物B2が付着する。そのため、図2(b)或いは図2(c)に示すように弁軸12の回転停止位置に拘らず、感温部材の変形作用により弁軸12が軸方向に変位して円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じるときに円錐状弁体13に付着した異物A2が弁口8のテーパー加工孔8cに付着した異物A1,B1に引っ掛かったり或いは円錐状弁体13に付着した異物B2が弁口8のテーパー加工孔8cに付着した異物A1,B1に引っ掛かったりすることがない。
【実施例1】
【0008】
上記の技術的手段の具体例を示す実施例を説明する(図1乃至図2参照)。入口1と出口2を有する本体3に蓋4をねじ結合して内部に弁室5を有する弁ケーシングを形成する。弁室5には入口1が通孔6を通して連通し、出口2が弁体嵌合孔7と弁口8と通孔9を通して連通する。弁体嵌合孔7と弁口8は本体3にねじ結合した弁座部材10に形成する。弁口8は弁体嵌合孔7の奥壁14から連続して下流に向かって通過面積が小さくなるR加工孔8aと該R加工孔8aの終端から連続して下流に向かって通過面積が大きくなるテーパー加工孔8cとから形成する。
【0009】
弁室5内に入口1から流入する流体の流れ方向を規制し、流体中の異物を捕捉するスクリーン11を配置する。弁口8に対向して弁軸12を配置する。弁軸12の下端には弁口8のR加工孔8aを開閉する円錐状弁体13を一体に設ける。弁軸12の円錐状弁体13の上方に弁体嵌合孔7に変位自在に嵌合する二面幅から成る刃物15を一体に設ける。二面幅から成る刃物15は弁室5内の流体を弁口8側に通過させ、その下端で弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を削除する。
【0010】
弁軸12の上端側は蓋4にOリング16を介して進退調節可能にねじ結合した調節棒17の弁軸嵌合孔18に変位自在に嵌合する。弁体嵌合孔7と弁口8と弁軸嵌合孔18は同一軸上に形成する。調節棒17の上部は蓋4から突出し、その上端面にドライバー等の工具の先端が嵌る切割19を設ける。調節棒17の突出部にはロックナット20を取付けて緩み止めを行い、キャップ21で覆う。調節棒17は上下方向の切割22を有し、弁軸12の上部に貫通して固定した連結棒23が切割22に嵌合する。これにより、弁軸12が調節棒17の回転に伴って回転する。
【0011】
弁軸12の中央部にばね受け24を固定し、断面ほぼU字状で中央孔と上端の外側に鍔部を設けた中間部材25を、中央孔を弁軸12に変位自在にばね受け24の下端面に当接させて嵌合する。弁軸12の周りで、調節棒17の下端面と中間部材25の鍔部の間に感温部材としてのバイメタル積層体26と平座金27を配置する。バイメタル積層体26はバイメタルディスクを湾曲方向を変えて組み合わせた2枚で一対とし、それを複数対重ねたものである。ばね受け24の上端面と平座金27の下端面の間にばね受け24を弁口8方向に付勢する弁体付勢ばね28を配置する。中間部材25の鍔部と弁室5の底壁の間に復帰ばね29を配置する。
【0012】
流体は入口1から通孔6とスクリーン11を通って弁室5に入り、バイメタル積層体26の周りを流れ、弁体嵌合孔7と弁口8から通孔9を通って出口2に流出する。バイメタル積層体26は周囲の流体の温度が上昇して高温に加熱されると、各バイメタルディスクが湾曲してその度合が大きくなり、平座金27と中間部材25を介して復帰ばね29を圧縮しながら積層方向に伸張する。これに伴い、中間部材25と弁軸12が弁口8方向に変位し、次第に弁口8の開度が小さくなり、終わりには弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じる。弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じた後、更に高温の流体が弁室5に流入すると、バイメタル積層体26は復帰ばね29と弁体付勢ばね28を圧縮しながら更に伸張する。このとき、中間部材25は弁口8方向に変位するが、弁軸12は変位しない。弁室5の流体の温度が低下すれば、バイメタル積層体26は湾曲力が小さくなり、復帰ばね29で中間部材25を介して押し戻される。これに伴い、中間部材25と弁軸12が弁口8から離れる方向に変位し、弁口8のR加工孔8aが開けられて弁室5の流体が出口2に排出される。
【0013】
排出すべき流体の温度を変更する場合、調節棒17を回転させる。調節棒17をねじ込めば排出すべき流体の温度が低くなり、調節棒17をねじ上げれば排出すべき流体の温度が高くなる。また、調節棒17をねじ込んで弁軸12を回転させることにより、弁軸12に設けた刃物15の下端で弁体嵌合孔7の奥壁14に付着した異物を削除する。図2(a)に示すように弁口8のテーパー加工孔8cと円錐状弁体13との間に形成される断面略三角形部に付着堆積する異物A,Bは円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを開けたときに、図2(b)に示すように弁口8のテーパー加工孔8cに異物A1が付着し円錐状弁体13に異物A2が付着し、弁口8のテーパー加工孔8cに異物B1が付着し円錐状弁体13に異物B2が付着する。そのため、図2(b)或いは図2(c)に示すように弁軸12の回転停止位置に拘らず、感温部材の変形作用により弁軸12が軸方向に変位して円錐状弁体13が弁口8のR加工孔8aを閉じるときに円錐状弁体13に付着した異物A2が弁口8のテーパー加工孔8cに付着した異物A1,B1に引っ掛かったり或いは円錐状弁体13に付着した異物B2が弁口8のテーパー加工孔8cに付着した異物A1,B1に引っ掛かったりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の温度応動弁の断面図。
【図2】図1の円錐状弁体部分の拡大断面図。
【図3】従来技術を示す図2と同様の断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 入口
2 出口
3 本体
4 蓋
5 弁室
7 弁体嵌合孔
8 弁口
8a R加工孔
8c テーパー加工孔
10 弁座部材
12 弁軸
13 弁体
14 弁体嵌合孔の奥壁
15 刃物
17 調節棒
18 弁軸嵌合孔
22 切割
23 連結棒
26 バイメタル積層体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室と出口の間に弁体嵌合孔と弁口を形成し、弁口を弁体嵌合孔の奥壁から連続して下流に向かって通過面積が小さくなるR加工孔と該R加工孔の終端から連続して下流に向かって通過面積が大きくなるテーパー加工孔とから形成し、弁軸嵌合孔を有する調節棒を弁ケーシングに進退調節可能にねじ結合し、一端側が弁体嵌合孔に変位自在に嵌合し先端にR加工孔を開閉する円錐状弁体を設けた弁軸の他端側を弁軸嵌合孔に変位自在に嵌合して配置し、弁軸の周りに感温部材を配置し、感温部材の変形作用で弁軸を軸方向に変位させて円錐状弁体でR加工孔を開閉し、調節棒の弁ケーシングに対するねじ進退に伴って回転するように弁軸を調節棒に連結し、弁体嵌合孔の奥壁に対面する弁軸の部位に刃物を設け、調節棒をねじ込んで弁軸を回転させることを特徴とする温度応動弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25181(P2010−25181A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185426(P2008−185426)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】