液体媒体中で磁性粒子を操作及び混合するためのデバイス及び方法
周囲液体媒体中に磁性粒子(3)を混合及び操作するためのデバイスであって、ギャップを横切り互いに対向し、前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散し、前記ギャップを有する前記磁極が電磁気回路を形成し、前記ギャップ領域中に磁場勾配を提供するように配置された少なくとも一対の磁極(1,1’)と;懸濁液中に前記磁性粒子を含む、マイクロ流体ネットワークの一部分であり、前記電磁極(1,1’)のギャップ内に配置された反応チャンバとを具えることを特徴とするデバイス。前記反応チャンバ(2)は好ましくは、開散する空洞を伴う少なくとも一部分を有し、前記磁極間の開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体あるいはマイクロ流体プラットフォームの一部分である反応チャンバ内で磁性粒子を処理し混合するシステムに関する。特に、本発明は周囲液体媒体と粒子の混合を改善する方法における、及び、液体が流体プラットフォーム中で自動処理された場合の磁性粒子の処理方法に関する。更には、本発明は生化学的活性面磁性粒子を用いて特異な生物学的又は化学的物質を含むテストサンプル上で、及び、粒子が前述のシステム及び方法に従い処理される場合に、アッセイを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、磁性粒子(ビーズ)は生化学アッセイ及び診断における標準的な技術である。磁性粒子技術は実際には、高い性能(感度及び精度)を得ることを可能し、アッセイプロトコルの簡易自動化の可能性を開いている、ロバスト性の技術である。多くのアプリケーションにおいては、磁性粒子面は抗体、レクチン、オリゴヌクレオチドあるいは他のバイオ反応性分子のような好適な配位子又は受容体でコーティングされており、混合中の標的物質を他の物質と選択的に結合できる。小さな磁性粒子又はビーズの例は、米国特許第4,230,685号、米国特許第4,554,088号及び米国特許第4,628,037号に開示されている。
【0003】
磁性粒子のバイオ分離及び処理技術における1の重要な要素は、有効な混合であり、ターゲット物質と粒子面との間の反応速度を向上させている。実際には、表面ベースのアッセイに関しては、反応は自然拡散過程によって強く制限され、強い動き及び混合が、配位子と標的物質との間の親和結合反応を促進するのに必要である。
【0004】
試験媒体における磁性粒子混合装置の一般例は、米国特許第6,231,760号で開示されており、MixSep(登録商標)システムの名のもとで、Sigris Research社によって商業上入手可能である。この特許及びシステムにおいては、好適な容器内に磁性粒子を有する試験媒体は、外部磁石により生成された磁場勾配中に配置される。混合の概念は固定容器に対する磁石の移動、あるいは、機械的手段を用いた永久磁石に対する容器の移動のいずれかに基づいており、従って、容器内部の磁力勾配位置の「相対的な転置」を誘起する。この磁場勾配の転置は次々と磁性粒子を誘起して、磁石(磁場勾配)位置の変化と共に連続移動し、これにより混合を引き起こす。しかしながら、この方法では、磁場勾配は容器の壁に近い空洞領域内に粒子を引きつけ拘束するであろう(http://www.sigris.com/mixsep_technology.html参照)。このような状態においては、粒子と試験媒体との間の接触は、混合効果を低減させる前記空洞空間に制限される。磁石の「機械的移動」が混合手段として要求されるが、容器周囲に配置された電磁石の連続的な操作によって、粒子の角運動を生成する可能性についても述べられている。しかしながら、電磁石は永久磁石と比較した場合、より低い磁場を提供するが、述べられたように、隣接した電磁石間の磁力結合は容器外側の磁束と強く反発し、更なる磁場強度の低下とくぼみ効果の強化を生じる。このような状態下では、粒子運動(移動)及び混合は、大部分は壁境界に近い領域での凝集体としてゆっくりと動くように誘導するように、粒子を強く変化するであろう。
【0005】
同一の精神内で、米国特許第6,764,859号においては、容器内で磁性粒子を混合する方法が、容器と磁石の介在アレイ構造との間の相対的な「機械的」移動に基づき開示されている。このような構造において隣接した磁石は、容器と2の隣接した磁石との間の相対的な介在移動中に磁場極性の変化を誘起する対立極性を有している。実際にこのような状態においては、粒子は互いから比較的離れた場合に移動し、混合に潜在的な影響を与える。しかしながら、このアプローチでは、粒子処理プロセスの全期間を考慮した場合、互いに比較的離れる時間は比較的短くなる。結果として、いくつかの混合サイクルが有効な混合を保証するのに必要となる。更に、粒子が混合プロセス中に試験管内のサンプル容量と均一に接触せず、次々に混合効果を強く制限する。この問題はサンプル容量が大きい場合により顕著になる。
【0006】
結果的に機械的な混合アプローチが「試験管の手動混合」と比較された場合、反応時間と性能は低くない場合と実質的にほぼ同一であり、拡散が未だ重要な制限因子であることを示している。
【0007】
磁性粒子の分離と再懸濁の一態様は、欧州特許第0,504,192号に開示されている。この特許は、チャンバの壁で互いと逆に配置される2つの磁場源(電磁石)の連続操作の使用を開示している。前記電磁石の提唱された操作概念は、第1の磁石が徐々に十分なエネルギを与えられ、ついでそのパワーを低減させる一方、次の電磁石が自助にエネルギを与えられる等の、「バイナリ」(すなわちONとOFF)又は「アナログ」による電磁石の連続エネルギ(操作)に基づいている。この操作を通じて、粒子は反応チャンバ体積に移動し引き込まれ、それによって再懸濁される。「連続」操作で(少なくとも)2の電磁石を用いた概念は、概念的には凝集体からの再懸濁粒子についての明らかな方法であり、これらの「移動」中、粒子は印加した磁場下での双極性相互作用により大部分は凝集化したままである。「超常磁性」粒子を動かして、チャンバ体積を占有した後に、チャンバ内の「均一な」再懸濁を十分に保証する唯一の方法は、外部磁場を完全除去し、ブラウン及び熱運動に対して分離しないままにすることである。更には、この出願は十分な速度で2の電磁石に交互にエネルギを与え、エネルギを除去することで、粒子がチャンバの中央で懸濁されたままになることを開示している。このプロセスは粒子の動きを比較的小さな距離に限定し、粒子と周囲液体媒体との間の混合効果を十分に低減する。
【0008】
一般的には、人工磁性粒子技術の条件の限定された混合能力以上に、「試験管の近位に磁石を持ってくる」という概念に主に基づく場合、磁性粒子アッセイ手順の統合及び自動化は非常に複雑であり、扱いづらいロボットシステムを必要とする。これらの制限は総て、アッセイ手順が複雑になるにつれて、より重大な意味を持つようになる。
【0009】
マイクロ流体ベースの技術は今日、使用が容易でかつ小型自動化したシステムでの複雑な生化学アッセイ手順のより簡単な統合に通じうる大きな可能性を有するエネルギ技術として認知されている。磁性粒子技術をマイクロフルイディクスと組合わせることは、確実に、異なる試薬の正確な制御(マイクロフルイディクスによって許容された)として非常に重要であり、生物学的種及びその反応の処理(磁性粒子によって許容された)は、単一システム内に一緒に統合されるであろう。
【0010】
マイクロ流体チャネルで磁性粒子を混合する1のアプローチは、2002年の「Micro Electro Mechanical Systems」での第15回IEEE国際会議の予稿集におけるSuzuki,H.による発表「Magnetic force driven chaotic micro−mixer」で教示されている。このアプローチはマイクロ流体チャネル中の懸濁液に注入された磁性粒子の流動混合であり、この場合、周囲媒体との混合が流動経路に沿って埋め込まれたマイクロ電磁石によって生成された磁場によって保証される。マイクロチャネル中の流動駆動力と共に、粒子上にマイクロ電磁石により誘起される磁場の組合せは、無秩序なレジームを誘起し、それによって混合する。同様の概念は米国特許出願第2006/140,051号で近年開示され、ここでは磁場は流動の方向に対応する所定方向の側壁に配置された電磁石によって生成される。連続操作で電磁石をOFF/ONすることによって、回転磁力は流動によって運ばれた粒子の混合に通ずるように生成できる。この「流動内混合」アプローチの主要な制限は粒子と混合されうる試験媒体の容量が非常に小さく、反応時間が非常に短いことであり、その適用場面をかなり制限する。
【0011】
「流動内混合アプローチ」の限界を克服するために、溶液は磁場勾配を用いて流体チャネル又はチャンバの既定位置内に粒子を保持することに存じる一方で、試験溶液は保持された磁性粒子を通る流動と共に注入される。このアプローチは米国特許出願第2005/032,051号及び第2004/166,547号で開示され、この場合、流動マイクロチャネルに保持された粒子はイムノアッセイ法用の固体支持体として用いられた。同一方針で、DNAハイブリダイゼーションと検出アッセイ用に適用された流動概念は、刊行物「“Dynamics DNA hybridization on a Chip Using Paramagnetic Beads”,Z.Hugh Fan & al.,Analytical Chemistry,71,1999」に記載されている。しかしながら、連続した流体処理環境内で処理させるために、粒子は磁場に連続して曝露されなければならないため、ここで述べた流動アプローチは重大な物理的制限を受ける。このような状況下では、粒子は互いに固着、凝集化し、それによって主要な利点を失い、液流と能動的に接触する粒子面は激烈に低減し、アッセイ性能に重大な支障を来たすであろう。
【0012】
流動アプローチ中の磁性粒子の凝集体問題に対する解決は、米国特許出願第2005/208,464号で開示された。このアプローチにおいては、粒子は流動チャネルの一部分に保持されて、流動チャネルの横断面を実質的に均一にカバーする一種のフィルタを形成する。このフィルタを取得するために、時間変化する場(振幅、周波数及び極性)を用いて粒子凝集体を制御するように操作される。液体のマイクロ流体混合用のこのアプローチの効果は、同じ著者グループの刊行物「“Manipulation of Self−Assembled Structures of Magnetic Beads for Microfluidic Mixing and Assaying”,A.Rida & al.Analytical Chemistry,76,2004」に示されてきた。マイクロ流体環境で処理、混合する磁性粒子の重要な発生を示す場合に、米国特許出願第2005/208,464号で開示されたアプローチは、しかしながら、多くの実用的に制限する拘束を受ける。第1に、粒子が固定状態にされ、流動セルの狭いセグメントに固定される場合に、粒子とターゲット物質との間の接触はその狭い領域かつ至って短時間に限定され、実際にはこのようなプロセスは設定困難である。第2に、このアプローチはマイクロ流体環境の流動状態下で磁性粒子を処理し混合するのに特に適合し、異なるアッセイ状態下には十分には適合しない。
【0013】
適用可能な既知の手順及びアプローチが欠点を有し、マイクロ流体上でより多くの集束を有する様々な環境、同様に様々なプロセス制限で磁性ビーズを処理、混合するための要求を含み、ファクタや無効性を限定している。
【発明の概要】
【0014】
本発明は流動環境において、特にマイクロ流体環境において磁性粒子を処理し、有効に混合するためのデバイスと方法を提供している。この文脈における「混合」は、(1)特定の標的分子への粒子の有効な結合と、(2)残りの液体媒体から粒子で捕捉された標的を洗浄し、分離し、溶出し、検出する更なる可能性とを得るような方法で、大きな粒子面を周囲液体媒体に、非常に有効的な方法で特に接触させることを意味する。
【0015】
提唱された混合メカニズムは容積ユニットごとの粒子の活性面の大きく永続的な増加を提供し、この大きな粒子面と標的物質との間の強化された接触を引き起こす。更に、提唱される磁性粒子処理プロセスは都合良く、僅かな時間で全反応体積を実質的にカバーする均一な混合を保証し、それによって更に多くのサンプル容量が有効かつ迅速に粒子表面と接触するのを可能にしている。更には操作中に、粒子は全反応チャンバ体積をカバーする永続的な有効移動状態にあり、粒子混合を向上させるカギである。
【0016】
更に本発明は、流動下で、あるいは都合良くば、非流動状態下で操作できるコンパクトかつ使用が容易なシステムで複雑なアッセイ手順の統合を実際に許容する新しいデバイスと方法を提供している。
【0017】
本発明の主な態様は、特にマイクロ流体環境中で磁性粒子を操作及び混合するデバイスと方法に関し、それぞれ独立請求項1及び15により得られている。
【0018】
更に本発明は、磁性粒子を操作して混合する前記デバイス及び方法に関する技術態様を特に統合するマイクロ流体構造及び組成を開示する。本目的は独立請求項14によるマイクロ流体チップとともに得られている。
【0019】
本発明の第3の態様は、生命科学分野の、特にバイオ分子及び化学物質のアッセイ、操作、及び精製用の、先の態様に従い調整され操作された磁性粒子を用いた方法を開示している。この目的は請求項23で得られている。
【0020】
異なる実施例は従属請求項で設定され、磁性粒子を操作し混合するデバイスの別の実施例は、先の請求項のいずれかで設定されている。
【0021】
異なる実施例は従属請求項で設定される。
【0022】
本発明の一実施例によると、周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスであって:
(a)ギャップを横切り互いに対向し、前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散する、少なくとも一対の磁極であって、前記ギャップを有する前記磁極が前記ギャップ領域中に磁場勾配を提供するように配置される閉じた電磁気回路の別の部分である、少なくとも一対の磁極と;
(b)懸濁液中に前記磁性粒子を含む、マイクロ流体ネットワークの一部分であり、前記電磁極のギャップ内に配置された反応チャンバであって、当該反応チャンバ内外へ前記液体媒体を誘導及び除去のための入口/出口末端を有し、前記反応チャンバの末端が前記ギャップの狭い及び広い末端と対応するように前記ギャップに沿って、その末端間に延在する反応チャンバと;
を具え、
(c)好ましくは、前記磁極の各々が、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置の時間変化を誘起するのに合わせて変化する極性と振幅を有する磁場配列で操作され、それによって、粒子の霧が前記反応チャンバの全体積をカバーするように使用中の前記粒子に相対的な並進及び回転運動をさせることを特徴とするデバイスである。
【0023】
本発明による本デバイスの重要な要素は、チャネル寸法の横径の増加(収束部分)又はチャネル寸法の減少(開散部分)によってここで表された反応チャンバの形状変化である。チャネル形状の変化は、反応チャンバ断面を通じて流動速度の変化を誘起し、開示された混合メカニズムの重要な因子となる。実際に、流動ストリームが主要なチャンネル横断面に対し通常の方向にのみ発生する単一形状のチャネルと逆に、マイクロチャネルの変化はより有効な流動混合を導く横径速度勾配を誘起する。
【0024】
よって、可変形状反応チャンバは、反応チャンバの形状と同一方向に変化する形状を有する磁極間の空隙に配置される。反応チャンバの開散/収束部分はギャップを横切り互いに対向した少なくとも一対の磁極の空隙に配置され、前記磁極が反応チャンバと、共通の開散状態/共通の収束状態で配置される。磁極の収束/開散配置は磁極によって区切られた空隙領域を横切る磁場の変化を誘起し、それによって前記磁極の空隙に配置された反応チャンバの全体積をカバーする磁場勾配を生成する。このように生成された磁場勾配は磁性粒子を反応チャンバ中で操作、混合するための駆動力として作用する。
【0025】
そうして述べられた反応チャンバ/磁極形状によって得られる所望の効果は、磁場勾配の変化プロファイルは反応チャンバ中の流動速度勾配に関して同一の変化プロファイルに対応することである。流動速度/磁場勾配(力)のこのような「共通の変化」は、(1)液体流動状態下の反応チャンバ中で前記磁性粒子を保持して分離し、(2)磁性粒子の周囲液体媒体との混合状態でより多くの均一性を得ることができる。
【0026】
本発明の別の重要な態様は:
(1)粒子の鎖状凝集体を分解あるいは阻害し、相対的な力学動作中の粒子の霧として懸濁液中で前記粒子を維持するのに有効な、時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、前記電磁極から適用するステップと;
(2)配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバを横切る前記粒子の霧の転置を誘起し、これによって、前記粒子の霧が準即時的に又はある期間にわたり、反応チャンバの体積全体を実質的に占有するステップと;
からなる磁極操作メカニズムに関する。
【0027】
この磁極操作メカニズムが、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置(転置)の連続的な時間変化を導き、それによって、前記粒子が実質的に前記反応チャンバの全体積を実質的にカバーできる永続的で相対的な並進及び回転運動状態になるように導くことが分かった。
【0028】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られた所望の効果は、それらの動作中に前記粒子が小型の凝集体として転置されるのではなく、むしろ粒子の霧として移動していることであり、前記粒子面と前記周囲液体媒体との間の接触の強い促進を生じさせる。
【0029】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られる所望の効果は、前記粒子混合が前記反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、開示された従来技術の概念のように狭いセグメントに限定されないことである。従って、この磁性粒子処理プロセスは都合良く、均一な混合を保証し、更に多くの液体容積が前記粒子面と有効に接触するのを許容する。
【0030】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られる所望の効果は、前記粒子を均一に混合するだけではなく、前記粒子を分離あるいは拘束して、前記粒子が、前記反応チャンバの外側境界で前記反応チャンバの体積中の部分体積を占有するようにする磁場配列を選択する将来性である。例えば、第1の磁場配列を印加して均一に転置でき、ひいては、実質的に前記反応チャンバの全体積に前記粒子を混合でき、次いで前記磁場勾配の方向を特異的に選択した第2の磁場配列を印加して、前記粒子が前記印加した磁場勾配の方向によって決定された前記反応チャンバの部分体積へ引き込まれるように導くことができる。前記粒子を制御するこの柔軟性は、アッセイプロセスに対応する粒子状態を処理及び制御するのを許容するのに、好都合に重要である。
【0031】
本発明の別の特徴は、並進運動(移動)中に、前記粒子凝集体のサイズは前記磁場極性変化の「周波数」によって主に制御できる一方、混合の均一性は磁場振幅によって制御されることである。更には、前記磁場(勾配)振幅をスイッチングパラメータとして用いて、例えば、実質的に前記反応チャンバの全体積にわたり、前記粒子を均一に混合でき、あるいは、前記反応チャンバの外側境界にそれらを引き込む(分離する)ことができる。
【0032】
更には、本発明による前記デバイス及び操作メカニズムによって得られた所望の効果は、粒子の極めて迅速な操作である。例えば、特定の第1の操作シーケンスを用いて前記反応チャンバの外側境界に前記粒子がまず分離される構成から開始された場合、第2の操作シーケンスを用いて均一の混合構成中に前記粒子を配置するには、僅かな時間(1秒又はそれ未満)で十分である。粒子はその後再度、前記第1の操作シーケンスを適用することによって、前記反応チャンバの外側境界に引き込むことができる。この迅速な操作プロセスは、血液ライセートのような複雑な高粘性媒体中にさえ到達できる。
【0033】
所望の効果に到達するために、使用中の前記磁性粒子が好ましくは、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる初期に非磁化された磁性粒子である。特に、前記粒子は200乃至1000エルステッド間の抗電界を有している。
【0034】
所望の効果に到達するために、前記時間変化した磁場配列は好ましくは、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいはこれらの形態のいくつかの組み合わせを有している。
【0035】
本発明によると、マイクロ流体チップが:
(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、開散−収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する反応チャンバと;
(b)当該チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分である磁極を受け入れる開口部と;
を具え、
(c)前記磁極が、前記反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置される;
ことを特徴とする。
【0036】
上述した態様及び公開によると、本発明は、マイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバで、マイクロ流体環境の磁性粒子を周囲媒体と混合する方法を開示し、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記方法が:
(a)各々の前記電磁極からの時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を適用するステップと;
(b)各磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値の位置(転置)の連続的な時間変化を誘起するステップと;
(c)前記粒子を均一に分配させ、前記反応チャンバの体積の実質的な部分にわたり、粒子の霧として力学的に動作するステップと;
を具えている。
【0037】
本発明の最終目的については、使用中の前記粒子が少なくとも1の標的分子との親和認識、あるいは前記反応チャンバ内の周囲液体媒体との反応を許容するように設計されるコーティング面を有している。前記標的分子あるいは試薬は前記反応チャンバへの流動によって運ばれる。互いに結合した場合、現在の発明の総ての態様は、固体支持体として磁性粒子を用いて、複雑な生化学的な合成及び分析手順の向上した性能を伴う処理を可能にする。一般的な例は、この手順を限定しないが、酵素結合アッセイ、タンパク質及び核酸抽出、又は化学発光法、NASBA、TMAあるいはPCRのような酵素の信号増幅法に基づく検出法である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の目的及び特徴は、添付の請求項に詳細に説明されている。更なる目的と利点と共に、その構成及び操作法の双方に関して、本発明は以下の記載によって最良に理解でき、添付の図と結びつけることができる。
【図1】図1(a)と(b)は、従来技術で述べたような流動磁性粒子処理アプローチの概念の概略表現である。
【図2】図2(a)は、ギャップと、このギャップ中に配置された反応チャンバ(チャネル)とを横切って互いに対向する一対の「開散」磁極を含む、本発明のある好ましい態様の概略図である。図2(b)は図2(a)の断面図であり、特に反応チャンバに磁場を提供する電磁気回路を示している。
【図3】図3(a)は、特に一対の「開散」磁極と、ギャップ形状と共通の開散状態で配置された開散型空洞を有する反応チャンバとを含む本発明の好ましい実施例の概略表現を示している。図3(b)は前記磁極の軸に沿った磁場変化プロファイルを示している。
【図4】図4(a)と(b)は、開散型反応チャンバ形状によって誘起された流動速度プロファイルと変化を示している。
【図5】図5(a)と(b)は、磁極の極性方向の変化を特に含む、本発明の好ましい実施例による磁性粒子処理及び混合の概略表現であり、誘起された磁場は粒子を軸方向に動かす効果を有している。
【図6】図6は、磁極の4極構造を含む、本発明の更に別の好ましい実施例の概略図であり、反応チャンバの空洞と共通に開散/共通に収束している。
【図7】図7(a)乃至(d)は図6の好ましい実施例のために、時間と共に変化する極性と振幅を有する磁場を用いて、電磁極の操作シーケンス結果として、反応チャンバの体積を横切る粒子の相対位置及び動作を示している。
【図8】図8は、粒子の混合及び移動が反応チャンバの全体積を均一にカバーする場合に、本発明による4極の実施例で得られる所望の効果を示している。
【図9】図9(a)及び(b)は、本発明の好ましい実施例による電磁気回路の投射図を示している。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施例によるマイクロ流体チップのレイアウトを示している。
【図11】図11(a)乃至(c)は、一般的なアッセイ、特にイムノアッセイを行うための本発明の混合方法及びデバイスを用いた処理を概略的に示している。
【図12】図11は、「パルス注入/混合」モードで処理し、磁性粒子を周囲媒体と混合する別の実施例を概略的に示している。
【図13】図13は、「回転する磁場」下での磁性粒子の異なる振る舞いを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の主要な到達可能な効果は、向上し、かつ均一な周囲媒体との混合を許容する磁性粒子の有効制御である。特に、磁性粒子の混合はマイクロ流体ネットワークの一部分であり、粒子が特定の構成及び形状を有する外部磁極を用いて処理される反応チャンバ内に実現される。従って、異なる試薬が液体流動を用いて反応チャンバに誘導され、磁極を特異に操作して、反応チャンバ内部で使用中の磁性粒子を制御する。
【0040】
一般的には、本発明のマイクロ流体環境は好ましくは0.1ml乃至500μlの範囲内の微小容量を分析するのに好適な規模で一般的に設計されたデバイスに関する。しかしながら、本発明の主要なアプリケーションの1つにおいては、大きなサンプルを用いて、デバイス中の特定のバイオ分子を次の分析用の小さな容量に濃縮する。微小規模の流動チャネルやウェルは、0.05乃至1mm程度の深度及び幅が好ましい。ここで用いたようなマイクロ流体ネットワークの一部の「反応チャンバ」は、0.1ml乃至500mlの範囲内、好ましくは、10ml乃至100mlの範囲内の体積を有する空洞を有するチャンバである。しかしながら、多くのアプリケーションについては、ミリメータ規模のより大きな「中規模の」寸法が用いられうる。同様にして、基質中のチャンバは、幅1乃至10mm及び深さ1乃至5mmの規模で、マイクロチャネルより大きな寸法をたいてい有している。
【0041】
本発明の重要な利点を示すために、図1は従来技術で述べられているような流動磁性粒子処理アプローチの概念を概略的に示している。実際に従来技術においては、磁極チップ(1)及び(1’)によって区切られた流動セル(2)の狭い領域に固定されたままである。粒子は、米国特許出願第2004/166,567号で述べたような静止磁界が適用される場合、流動セルを部分的にカバーでき、米国特許出願第2005/208,464号で述べたような時間変化する磁場が適用される場合、流動セルを均一にカバーできる。磁場勾配を生成するのに用いられた磁極チップ構成は、流動セルの静止固定化した、かつ、狭いセグメントで粒子を収束し、その狭い領域に、及び至って短時間に、粒子と標的分子との間の接触を制限する。
【0042】
従来技術の制限を克服するために、新規の磁性デバイス及び磁極形状が開示されている。従って、図2に示すように、周囲液体媒体で磁性粒子を操作及び混合するためのデバイスが、(i)ギャップを横切り互いに対向する少なくとも一対の磁極(1)−(1’)を具え、前記対向する磁極が前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散している。前記磁極は電磁気回路の一部を形成して、ギャップ領域中に磁場勾配(5)を提供するように配置される。このギャップ領域内に、流体ネットワークの一部分であり、使用中の磁性粒子が操作される、管状反応チャンバが配置される。磁気回路は電流が供給された場合に、磁極(1)、(1’)を通じてギャップ領域内に磁場を生成する、磁心(6)とコイル(7)で構成される。更に、各磁極(1)及び(1’)は好ましくは、2つの独立駆動が可能なコイル(7)を用いて互いから独立して電磁力的に駆動できる。
【0043】
述べてきた磁極形状によって得られた効果は、磁場勾配が狭い領域に限定されるのではなく、前記磁極の空隙のX軸方向に沿って延在する空間領域全体をカバーすることである。
【0044】
混合効果を向上させるために、好ましくは空隙領域中に配置された反応チャンバ(2)が磁極の方向と同一方向に変化する空洞形状を有している。図3(a)に概略的に示すように、図2(a)におけるように同一形状(同一断面)を伴う流動チャネルを有するより、反応チャンバ(2)は好ましくは、磁極間の開散型ギャップで実質的に共通に開散する可変形状を有している。反応チャンバ形状のこのような変化がある場合、有効な流動混合を導く横径速度勾配(8)を誘起するであろう(図4参照)。
【0045】
磁極(1)−(1’)によって生成される空間変化する磁場は、磁場勾配ひいては、反応チャンバ(2)中の流体の流動中の磁性粒子(9)を保持するように用いられた、X方向に沿った磁力(5)を提供する(図5参照)。反応チャンバ(2)中に粒子(9)を保持できるためには、粒子上で作用する生成された磁力(5)は、粒子を遠方に駆動しがちな流動抵抗よりも大きくしなければならない。更には、磁力(5)と流動抵抗は、X軸に沿った同一方向に減少するので、生成された磁力(5)を制御することが可能であり、実質的に流動抵抗に等しくなる。反応チャンバ(2)に誘導され、静的磁場を受ける場合、磁性粒子(9)は磁場流動線に沿って磁気チェーンを形成する傾向にある。反応チャンバ(2)中に生成される磁場勾配のために、磁気粒子の鎖は合体して、強く凝集した鎖状構造を形成する。好ましくは用いられる磁性粒子(9)の量は、磁気凝集構造が図5の左側に示すように、反応チャンバ(2)の円錐部分の磁極近くに主に配置される。交流磁場として時間変化する磁場はその後適用され、所定の流速で(すなわち、必要に応じて少し増やして)、このような磁性粒子構造を通る流体流動で、凝集した鎖状構造を分解する。低く凝集した磁気構造は図5の右に示すように得られ、磁場振幅及び周波数と、磁極形状によって提供された磁場勾配と、反応チャンバ(2)中の流動の流速とを調節することによって制御される。
【0046】
このように述べられてきた反応チャンバ/磁極形状によって得られる所望の効果は、磁場勾配の変化特性が、反応チャンバ中の流動速度勾配について同一の変化特性に対応することである(図3(b)及び図4(b)に示すように)。流動速度/磁場勾配(力)のこのような「共通な変化」は、磁性粒子の液体流動との混合状態(ひいては、より制御され、且つ有効な混合)で更なる均一性に到達するようにできる。
【0047】
本発明による、図2乃至5のデバイスの幾何学的パラメータは、反応チャンバ(2)中の磁気損失を低減し、磁束の最大集束を保証する方法で設定される。更に、これらの寸法の調整は、生成された磁場勾配が反応チャンバ全体をカバーし、消えた磁場勾配を有する反応チャンバ内部のゾーンの存在を最小化する。この展望において、反応チャンバの開散部分の長さ(L)に対する大きな末端の深度(H)との間の比率は、0.1乃至10の間、好ましくは0.1乃至1の間である。開散部分の長さ(L)の一般的な値は、50μm乃至10mmの間、好ましくは100μm乃至5mmの間である。反応チャンバの狭い末端に接続されたマイクロ流体チャネルの寸法は、50μm乃至5mm、好ましくは100μm乃至1mmの範囲にある。
【0048】
従って、本発明の主要な態様は時間変化する極性と強度とを有する磁場配列の各電磁極の適用に基づいた磁極操作メカニズムに関する。
【0049】
本発明によるこの操作態様の一般例は、図5に示されている。図5(a)に概略的に示されるように、「平行振動する」磁場(4)−(4’)はこのような状態下で、磁極:
磁極1及び1’:B=B0sin(2πf1t) (1)
に適用され、磁界の極性の永続性変化のために、磁気凝集(鎖)は磁界の周波数(f1)をとともに減少するサイズを有する小さな粒子の鎖状構造へ分解するであろう。最終的に粒子は相対的な力学運動における粒子の霧として振る舞うであろう。「振動する」磁場の使用を特徴づける別の重要な現象は、粒子凝集分解に更に寄与する(粒子が同じ速度で回転しないという事実による)粒子間の負の双極相互作用の生成である。例えば、粒子が磁極方向に凝集塊として大部分引き込まれるような静止磁界の場合(図1(a)に示したような)と対照的に、振動する磁場においては、粒子(回転中の)は、反応チャンバの断面にわたって均一に与えられる傾向にある(図5(a)に示したように)。言い換えれば、振動する磁場の下では、粒子は粒子間の反発的な磁力の発生のためにより大きな空間を占有する傾向にある。
【0050】
要約すれば、本発明による磁極の基礎操作としての時間で変化する極性と振幅を有する磁場の使用は、粒子凝集体の有効な分解あるいは阻害を可能にし、相対的な力学運動の粒子の霧として懸濁液中に粒子を維持する傾向にある。
【0051】
しかしながら、磁性粒子の操作が磁気(力)勾配(5)の使用を必要とする場合、粒子は反応チャンバの狭いセグメントに引き込まれ、集束して、ひいては粒子を凝集する傾向になる。この凝集体は適用される磁界の振幅(B0)、及びこれによって磁力勾配を低減することにより減ずることができる。実際に適用される磁界の振幅(B0)を低減することによって力を減ずる場合、「回転する」粒子構造(9)が相対回転によって誘起される粒子間の反発的な磁力のためにX方向にそって急激に伸びるのを観察する。
【0052】
磁場勾配によって誘起される更なる凝集体を克服するために、図5(b)で示したような本発明によると、磁極(1)と(1’)の各々から生成された磁場極性(4)−(4’)の極性は平行から逆(逆平行):
磁極1:B=B0sin(2πf1t+π)、
磁極1’:B=B0sin(2πf1t) (2)
へと変化して、磁力(5)の方向に変化を生じ、磁力(5)の方向に従いX方向の軸方向に、反応チャンバの狭いセグメントから広いセグメントまで粒子(9)を動かす。
【0053】
従って、式(1)及び(2)によって規定された磁極の操作スキーム間の連続的な「スイッチング」は、反応チャンバの狭いセグメントから広いセグメントへの磁場勾配の最大値の位置の連続的な時間変化を生じさせる。これらの磁場勾配の最大値は次々と、粒子が磁場勾配(5)の変化に従い反応チャンバの狭いセグメントと広いセグメント間の永続性の軸方向移動状態になるように誘導する。
【0054】
従って、本発明による操作メカニズムは、式(1)及び(2)によって規定された磁極の操作スキーム間の切替周波数(f2)の好適な選択によって、図5(c)に概略的に示したように、粒子が反応体積全体を実質的に均一にカバーする状態に到達できるという知見に基づいている。
【0055】
このように述べてきた操作メカニズムは、実質的に反応チャンバの体積全体をカバーできるように永続的な相対的な並進及び回転運動状態となるように、粒子を誘導する。このような粒子のダイナミクスは、混合が反応チャンバの体積全体を実質的にカバーし、開示された従来技術の概念のように狭いセグメントに限定されないような、本発明によって開示された粒子混合の重要な因子である。ゆえに、この磁性粒子処理プロセスは都合良く、均一な混合がより多くの液体容量を粒子表面と有効に接触するのを可能にすることを保証する。
【0056】
更に、欧州特許第0,504,192号の従来技術の磁性粒子再懸濁概念と比較すると、図2の開示された磁性デバイスでの「バイナリ」(すなわちON及びOFF)あるいは「アナログ」による電磁石の連続励磁(操作)は、大部分で凝集されたままである場合に至ってゆっくりと移動するように粒子を誘導する。更に、図5(a)と5(b)の2つの状態間の極性変化は、米国特許第6,231,760号によって示唆されるように、この問題を実質的には解決しない。このような困難性が、相対的に「小さな」作業体積が隣接する磁石間の強い磁力結合を導く場合の「マイクロ流体」の特異性である。
【0057】
本問題を解決するために、本発明の重要な知見は、各電磁極に時間変化する極性と強度を有する磁場配列を適用することであり、役割は、粒子凝集体を効果的に分解又は制御し、相対的な力学運動での粒子の霧として懸濁液中の粒子を維持することであり、その後、ある配列の異なる磁極からの磁場を結合して、実質的に反応チャンバの全体積にわたる粒子の均一混合を誘起することである。
【0058】
明らかさのために、及び、最初の図として望むものに反して、図5(a)及び5(b)中の(及び他の図総ての)磁極の極性を表す「矢印」は固定されていない。実際に、これらの極性は時間によって方向を連続変化する。「代わりに」、「固定化した」狭い方向は粒子操作中の電磁石の「相対的な」極性を表している。
【0059】
本発明による別の実施例において、及び図6に示すように、磁性粒子を操作し混合するためのデバイスは、磁極が、(i)開散型ギャップを形成する互いに対向した第1の一対の磁極(1)−(1’)と、(ii)互いに対向し開散型ギャップを形成する第2の一対の磁極(10)−(10’)とを具え、互いに対向した前記第1及び第2の一対の磁極の前記開散型ギャップの広い末端を伴う4極子と、(iii)流体ネットワークの一部分である反応チャンバとを形成するように提供され、前記磁極間の前記開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置される前記反応チャンバの開散部分を伴う空洞を有している。
【0060】
4極構成がより向上した効果を許容する、先の実施例のより洗練されたバージョンであることは明らかである。特に、前述の2極構造の場合のような実質的な軸性(軸対称)である以上に、磁場勾配(5)は、実質的に「球対称」を有している。一対以上の磁極によって誘起される「多方向」磁場勾配を有する可能性は、図7(a)−(d)に示されるような、より「豊富な」構造に従い、磁場勾配の最大値の位置を動かす可能性を提供する。特に、多極(4極)構成の各磁極から誘起された磁場(4)の固有かつ連続操作によって、反応チャンバの体積を横切る磁場勾配の最大値の位置を、これらの最大値の連続位置が反応チャンバの全体積をカバーする方法で動かすことができる。
【0061】
図7(a)−(d)は概略的に異なる磁極操作(4)と対応する磁性粒子構成を示し、実際には磁場勾配の最大値の位置に対応している。このような磁気処理プロセスによって得られる効果は、例えば粒子を連続移動することによって、図7(a)−(d)の構成に従い、粒子の移動は図8に示すように反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、これによって、周囲液体媒体との強い混合を保証している。
【0062】
先の事項から、本発明による操作メカニズムの第1の重要な要素は、時間と共に変化する極性と振幅を有する磁場である磁極の「基本」磁場操作(4)である。この操作する磁界の一般例は、式(1)のうちの1つとしての振動する磁場である。一般的に、このような基本磁気の操作磁界は実質的に矩形、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいは前記形態のいくつかの組み合わせを有している。
【0063】
先の事項から、本発明による操作メカニズムの第2の重要な要素は、磁極が特定の配列に従い操作され、反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値位置の連続時間変化を誘起し、それによって、使用中の粒子が反応チャンバの全体積をカバーする相対的な力学動作になるようにする。
【0064】
従って、「時間変化する極性と強度を有する磁界配列」による本発明においては、配列変化に沿った各磁極の「基本」操作磁界の組成を意味し、反応チャンバの体積を横切る粒子移動を誘起する。実際には、2つの主要な要素:(1)時間と共に変化する極性と振幅を有する基本操作磁界要素と(2)反応チャンバを横切る粒子転置を誘起し、それによって粒子混合に影響を与える、この基本操作磁界要素の連続変化と、で各磁極を操作する磁界配列を分解する。
【0065】
従って、実際には基本操作磁界要素は粒子の鎖状の凝集体を分解する役割を有し、それによって、粒子の多くの表面が周囲液体媒体と接触するのを保証する一方で、この基本操作磁界の連続変化が反応チャンバ全体にわたる粒子「霧」の連続移動を誘起し、それによって実質的に反応チャンバの全体積にわたり、「凝集されていない」粒子の均一な曝露を保証している。
【0066】
結果的に、本発明による操作メカニズムによって得られた所望のの効果は、動作中に小さな凝集体として転置されず、粒子の霧として移動し、粒子表面と周囲液体媒体との間の接触の強い向上を生ずる。
【0067】
前述の操作メカニズムにおいて、磁極の配列操作と同様に、基本操作磁界の時間変化は周期性のない変化であるが、周期性のある変化であることが好ましい。周期的な場合において、基本磁界(f1)と操作配列(f2)の周波数は実際に異なりうる(f1≠f2)。前述の粒子混合効果に到達するために、操作配列周波数(f2)は基本磁界周波数(f1)とほぼ同一又はそれ以下である。一般的には、前述の粒子混合効果に到達するために、基本磁界の時間磁界変化(すなわち各磁極中の振幅及び極性の時間変化)は好ましくは、磁極の連続時間操作より高いか少なくとも等しい。
【0068】
周波数f1とf2によって規定される、本発明による磁場の時間変化は、0.1Hz乃至1000Hz程度であり、好ましくは1Hzと500Hzの間であり、他の時間尺度は非周期変化を特徴づける。
【0069】
本発明による操作メカニズムによって得られる有利な効果は、粒子が特定期間にわたって全反応容量をカバーする力学的移動を示すことである。実際に本発明によると、粒子は反応チャンバ体積の少なくとも50%、好ましくは80%乃至99%を均一にカバーする。この均一なカバーは、磁極の配列操作時間(又は周波数)によって決定される期間中に得られる。実際には、均一混合は10s乃至10nm間、好ましくは1s乃至10ms間の期間で得られる。好ましい実施例において、かつ、操作磁界パラメータによると、混合の均一性は長期にわたって反応チャンバの99%をカバーするであろう。
【0070】
所望の効果に到達するために、使用中の粒子が好ましくは、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる初期に非磁化された磁性粒子となる。特に、粒子は200乃至1000エルステッドの抗電界を有している。使用中の粒子が好ましくは「超常磁性」である場合、先の技術で報告したことに反し、粒子が特定の(強磁気)ヒステレシス反応を示すという事実が、本発明による混合効果を得るのに重要な条件であることが分かる。実際には前述したように、粒子操作メカニズムは各磁極の「基本」操作磁場要素として、好ましくは高周波数「振動」磁界の使用中に存ずる。このような高い変化周波数(f1>1Hz)では、粒子がヒステレシス反応を有するという事実が、磁界振動で物理的に回転することによってこのような「迅速な」磁場変化に従うことを可能にする。高周波数振動磁場(時間変化する極性と強度を有する磁界)でのこの粒子回転は、粒子脱分離プロセスの始まりである。
【0071】
更に、所望の効果に到達するために、好ましくは使用中の粒子が、使用中の粒子の抗電界より低い振幅(最大の磁場強度)を有する「振動する」(時間変化する極性と強度を有する磁界)磁場で操作される。
【0072】
従って、使用中の粒子は国際特許出願第WO2005/056579号に開示されたプロセスに従う特性で好ましくは合成され、参照としてここに取り込まれる。
【0073】
一般的に本発明はマイクロ流体環境概念で処理及び混合する前述の磁性粒子の総てを統合する方法を提供する。本方法はマイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバの使用にあり、少なくとも一対の磁極が互いに反応チャンバを横切って対向し、本方法は、(a)時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、電磁極の各々から適用するステップと、(b)各磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値の位置の連続時間変化を誘起するステップと、(c)粒子が反応チャンバの全体積をカバーする相対的な並進及び回転運動状態にあるようにするステップと、を具えている。
【0074】
所望の効果を得るために、磁極は好ましくは「閉じた」磁気回路によって互いに磁力結合されたものとなる。このような磁気回路の一般例は、図9の投射図に示されている。実際は、図10(a)に示されるように図6の4極構成について、各磁極(1)−(1’)、(10)−(10’)はコイル(7)を有する磁心(6)によって形成された電磁石と結合される。更に、各磁心(6)は「8」の形状の「基本」磁心部分(6’)と接触している。基本磁心6’の「8」形状は各磁極の対構成が閉じた磁気回路を形成するのを保証し、これによって式(1)によって記載されたもののような操作プロセス中に磁束の強い循環を保証する。更に、各対の磁極が「閉じた」磁気回路を形成するという事実は、反応チャンバの磁束及び磁束勾配を強く集束する(集中する)のに必須である。更に、この状態は前述したように、本発明による混合プロセス及び効果を特に保証できる。
【0075】
図9(b)は4極構成のより洗練された形状と図9(a)の磁気回路を示し、4極構成のアレイが、4の異なる隣接反応チャンバで本発明による並列操作を保証し、磁性粒子を処理する。4極アレイの同一の設計及び構成は、多くの反応チャンバで磁性粒子を処理するために広げることができる。
【0076】
本発明の別の態様は、上述の磁性粒子の操作及び混合の異なる幾何学的態様を統合するマイクロ流体チップに関する。従って、マイクロ流体チップは、(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、懸濁液中の粒子を含み、開散/収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する反応チャンバ(2)と、(b)反応チャンバに出入りする液体を送達するために、それぞれ開散/収束部分の狭いセグメントにそれぞれ連結された入口(12)及び出口(13)チャネルと、(c)反応チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分である磁極を受ける入口構造とを具え、磁極は反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置される。
【0077】
反応チャンバに加えて、本発明のマイクロ流体チップは使用に依存する既知のデバイスにある1又はそれ以上の要素変化を含むように構成された。これらの要素は限定されないが、サンプル入口ポート、サンプル誘導又は収集モジュール、細胞処理モジュール(例えば、細胞溶解(ここに述べたような超音波溶解を含む)、細胞除去、細胞濃縮、細胞分離又は捕捉、細胞増殖等)、例えば、電気泳動、ゲル濾過、イオン交換/親和クロマトグラフィ(捕捉及び放出)等のような分離モジュール、化学又は生物学的反応あるいはサンプルの変更用の反応モジュール、を含み、標的分析物の増幅(例えば、標的分析物が核酸である場合、増幅技術は有用である)を具えている。
【0078】
本発明の総ての前述の実施例及び態様は主目的として、標的媒体内の標的物質と、前記液体に懸濁される粒子面との間の反応を向上させなければならない。有効な混合は、実際に、例えば(限定されないが)核酸及びタンパク質等のバイオ分子の抽出あるいは(及び)検出のような生化学的プロセスの実行に強い効果を有する。更には、開示された磁性粒子処理概念の1の重要な要素は、粒子操作手順が、検討中の生化学プロセスに対応して再適応あるいは調整されうることである。
【0079】
通常、磁性粒子の表面は公知の技術を用いてバイオ分子及び化学物質のプローブ及び操作のための特定の配位子によって生化学的に官能性を持たされている。このために、磁性粒子面は、例えば、標的分子あるいは標的分子の集まりに結合できる官能基又は配位子を具えている。可能性のある官能基は、限定されないが、カルボン酸、ヒドロキサル酸、非粘着化合物、アミン、イソシアン酸及びシアン化物を具えている。可能性のある配位子は限定されないが、タンパク質、DNA、RNA、酵素、疎水性物質、親水性物質及び抗体を具えている。一般的には、本発明の使用に好適な配位子の例は、限定されないが、タンパク質及びタンパク質の断片、ペプチド及びポリペプチド、抗体、レセプタ、アプタマ、酵素、基質、基質類似体、リボザイム、構造タンパク質、DNA及びRNA及びDNA/RNA複合型のような核酸、糖類、脂質、様々な疎水性又は親水性物質、親油性物質、化学誘引物質、酵素、ホルモン、フィブロネクチン等の分子及びマクロ分子を具えている。このような分子及びマクロ分子は自然発生及び合成にすることができる。用語「配位子」は、細胞、組織、全部の微生物、ウイルス等のような大きな主体を含むこともできる。
【0080】
このような官能基を持った粒子を用いて、本発明の混合及び分離プロセス分離のためのバイオ特有の親和結合反応を含む様々な実験及び臨床手順に特に有用性がある。バイオ特有の親和結合反応は生物学的サンプルの標的物質の広い範囲の決定又は単離用に使用されうる。標的物質の例は、細胞、細胞成分、細胞亜集団(真核及び原核の双方)、バクテリア、ウイルス、寄生虫、抗原、特異な抗体、核酸配列等である。
【0081】
更に本発明の混合及び分離プロセスは検出手順で特定の用途を有し、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、実時間PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖転置増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)を含んでいる。
【0082】
開示した磁性粒子の処理及び混合デバイス/方法の使用例は、図11に示されている。この図はサンドイッチ型イムノアッセイの異なるステップを示し、(a)第1のステップでは(図11(a))、特異的な捕捉プローブでコーティングされた粒子は、図7及び9で前述のように反応チャンバを均一にカバーするように混合された。本ステップにおいては、標的のバイオ分子を含むサンプルは、反応チャンバを通じて液体流動で押される。その目的のために、反応チャンバ/磁極の「共通に変化する」形状は、(図3及び図4に示すように)液体流動を伴う磁性粒子の混合状態の均一性を保証している。整然と調整される場合、これらの状態総てが、粒子面で標的の強い捕捉効果を許容する。(b)図11(b)に述べたように、洗浄ステップの後に、検出プローブを含む規定量の試薬(反応チャンバの体積と実質的に等しい)が、反応チャンバに注入される。この場合において、粒子は再び周囲媒体と均一に接触及び混合され、粒子面上での基質と検出プローブとの間の有効な相互作用を許容する。検出信号が拡散によって主に誘起される古典的なイムノアッセイ試験に反して、本混合プロセスは反応チャンバの全体積をカバーする検出基質と粒子表面との間の強い相互作用を可能にしている。ゆえに、検出信号の大きな向上は、この方法で生成され、開始サンプル(血液あるいは血漿として)内の低い標的分子濃度の検出を可能にしている。図11(c)に示すように、検出中に粒子は図7(b)の配列に従って、反応チャンバの境界に引き込まれる(分離される)。
【0083】
本発明による磁性粒子処理及び混合の使用の異なる実施例においては、大きなサンプル量から標的を捕捉するための流動を有するよりも(例えば、前の例11(a)のステップで示されたように)、標的の濃度は静止(流動なし)状態下でより制御された方法で得ることができる。図11に概略的に示された本実施例は、反応チャンバ中のサンプルの「パルス注入」(連続流動の代わり)の概念の使用に基づき、後に粒子の均一混合が続いている。特に、第1のステップ(図11、上)においては、粒子は反応チャンバの壁に引き寄せられ(図7(b)の操作配列を用いて)、反応チャンバの体積を過剰せずに規定量のサンプルが注入される間保持される。第2のステップ(図11、下)においては、特定の捕捉プローブでコーティングされた粒子は、図8に前述したように反応チャンバを均一にカバーするように混合されるが、いかなる流れもなしである。規定期間の混合後、粒子は再度反応チャンバの壁に引き付けられ、新しいサンプル量が反応に注入され、その後混合される。このプロセスはサンプル量全体が磁性粒子と混合するまで、連続した方法で繰り返される。
【0084】
このような「パルス注入/混合」モードの利点の1つは、実際には設定がとても難しい流動状態内の磁性粒子を処理する制限を扱うのを避けていることである。更には、接触時間が比較的極度に短い流動の場合に反して、混合時間はパルスモードではより容易に制御され、標的分子及び最終使用に対応するように適用できる。
【0085】
以下の実施例は本発明を用いる方法とプロセスを更に詳述する。本実施例は例示的であり発明を限定しないと見なすべきである。本実施例で与えられた操作は、他に示されていない限り、周囲温度である。
【実施例1】
【0086】
操作メカニズム
図7の操作配列は、基本配列として用いられる時間変化する(振幅及び極性)磁場を用いて操作する間に、どのようにして磁性粒子を各磁極からの磁場の組合せに従って移動できるかの例示である。この移動中、粒子は粒子の霧として反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、それによって混合を保証する。「不連続な」配列として示されているが、図7に示すような粒子の配列は、磁極操作配列に従う回転磁場として得られる。
磁極1及び10’:B=B0sin(ft)、
磁極1’及び10:B=B0sin(ft+π/2) (3)
【0087】
式(3)において、各磁極での基本配列操作は、操作プロセスが対角線に結合された磁極間のπ/2の位相シフトによって保証される場合、振動する磁界である。この構成においては、基本及び配列操作磁界は同一周波数fを有している。
【0088】
式(3)の配列による操作において、低周波及び高周波レジームという、2の粒子レジームが区別されうる。
【0089】
一般的にf<5Hzの低周波では、粒子は比較的「ゆっくりと」回転し、粒子は図7に概略的に示されるように、配列を一般的に生成する反応体積を横切って移動する。このレジームの特殊性は1の磁極構成から他方への移動中の粒子(図7参照)が、より長い磁気チェーンを「凝集」するのに十分な時間を有することである。1Hzより高い周波数では、実質的に総ての(>90%)反応体積をカバーする迅速で強いダイナミクスを示す。しかしながら、回転磁場のこのレジームでは、粒子は「比較的」凝集されている。
【0090】
より脱凝集した粒子サイズは、f>5Hzの回転磁場の高い周波数で最終的に得られる。代わりにこのレジームでは、磁性粒子の迅速な回転が鎖形成に十分な時間を与えず、磁界周波数で減少する大きさを有する小さな粒子の鎖状構造に分解するように粒子の鎖を誘導するため、粒子の振る舞いが激しく異なっている。低周波レジームでの違いとして、粒子が反応チャンバの対角線に沿って延在する時間がないので、図7(b)の配列は観測されない。実際に高周波で生ずることは、粒子が反応チャンバの壁に引き付けられ収束することである。図13(a)は高周波での粒子の振る舞いの映像を示している。
【0091】
この問題を克服するために、本発明についての知見は、強磁性粒子の使用と組み合わせて、適用される回転磁界の周波数を増加させる場合に振幅を減ずることである。磁場振幅の低減は実際に、回転粒子間の磁気勾配力及び反発的な二極性の力の低減によって反応チャンバ体積にわたり更に粒子を広げるのを可能にする。磁力の減少が粒子の移動を減速すると、高い周波数の磁界が粒子移動を更に推進するのに要求される。一般的に20Hz以上と、好ましくは、100Hz乃至500Hzの範囲内との間にある、このような高周波数では、強磁性粒子の使用は、これらの粒子の「磁気異方性」が移動し、磁界変化に従うように誘導するカギである。図13(b)は高回転周波数(約300Hz)の下で得られる反応チャンバ中の粒子の均一被覆度を示している。この混合中に、粒子は反応チャンバを横切って強く移動し、それによって強くかつ有効に混合するのを可能にする。
【0092】
本例中に与えられた周波数の値が指標のためだけの一般的な値であり、実験で用いた特定の粒子(Roche Diagnostics社のMagNA Pure LC粒子)で得られることをここで指摘することは重要である。他の粒子型の使用は前述のように、異なる粒子のレジーム及び振る舞いの周波数の制限に確実に影響を与えるであろう。
【実施例2】
【0093】
操作メカニズム
式(4)は本発明による混合を得るための別の操作配列を示している。
磁極1及び10’:B=B0sin(f1t)sin(f2t)、
磁極1’及び10:B=B0sin(f1t)sin(f2t+π/2) (4)
【0094】
この配列においては実際には、第1の振動要素(sin(f1t))は、磁極の周波数f1での基本操作磁界以上のものではなく、第2項は周波数f2を有する回転形態中の粒子の「霧」を移動させる操作配列を規定している。式(4)の配列は特に、前述(例1)の式(3)の低周波回転磁界の粒子の凝集を解決することを可能にする。例えば、周波数f2=1Hzで粒子を回転することによって、粒子の鎖は基本磁界f1>10Hzの高速振動によって分解されるであろう。
【実施例3】
【0095】
操作メカニズム
式(5)は本発明による混合を得るための別の操作配列を示し、式(1)の回転する磁場の周波数は、「変調」される。
f=f0+f1sin(Ωt) (5)
【0096】
知見は低周波のレジームと高周波のレジームとの間の周波数を変調することが、それによって有効な混合を保証することである。変調周波数(Ω)の好適な選択によって、この場合、低周波での凝集体との均一混合、及び高周波での霧粒子構造との「不均一」混合という、2のレジーム間で平衡できる。回転磁界の周波数を変調するこの方法は、均一混合が例1に示したような振動周波数を増加することのみによっては得るのが難しい場合の、高粘性液体にとって特に重要である。
【0097】
周波数変調が例えば、1の高周波数値と1の低周波数値との間を切り替える「方形」信号のような他の形態によってなされうることは、当業者にとって明らかである。各値は液体粘度に本質的に依存する特定期間維持して、均一混合を保証することができる。
【0098】
使用中の粒子が好ましくは強磁性であり、粒子が高周波で移動及び回転するのを可能にすることをここで再度強調することは価値があることである。
【実施例4】
【0099】
操作メカニズム
ここまでの例では、「回転する磁場」を用いることに基づいていたが、粒子の霧の線形操作配列を更に用いて、混合して均一状態に到達させることができる。線形操作モードの一般例は、粒子を図7(b)で示されるように操作配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt+π) (6)
を用いて粒子を、外側境界へ移動させることによって得ることができる。
【0100】
この段階で、粒子は配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt+π/2) (7)
によって反応チャンバの左隅(狭い部分)に移動できる。
【0101】
対称性によって、反応チャンバの右隅(狭い部分)方向の転置は、配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt+π/2)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt) (8)
によって得ることができる。
【0102】
前の3構成間の連続移動は、所定速度で順番:(6)→(7)→(6)→(8)に従い、期間にわたって均一混合を得ることができる。
【0103】
実際には、より良い混合プロセスは回転あるいは線形モードのみを通じては得られず、通常は両モードの混合が好ましい。
【0104】
ここでこの例において、基本操作としての「正弦」磁界の選択は、式を伴う現実的な分析形態だからである。本発明の範囲内であれば、時間通りに変化する極性と強度とを有する、より複雑な操作の「基本配列」は、同一の効果を誘導するであろう。
【実施例5】
【0105】
混合の概念及びデバイスの使用
本実施例では、開示した磁性粒子デバイス及び方法が、挿入されたプラスミドを有するバクテリア(大腸菌)培養液からのDNAの抽出に用いられている。抽出のために、Roche Diagnostics社(スイス)のMagNA Pure LCキットが用いられる。このキットの特殊性は、磁性粒子が約200エルステッドの抗電界で強磁性反応を示すことである。
【0106】
サンプル標本用に、約2×108細胞/mlの濃度を有する、200μlのPBS中のバクテリア培養物は、(a)400μlの溶解結合バッファ、(b)100μlのイソプロパノール、(c)100μlのプロテイナーゼKと混合される。全抽出体積はそれゆえ800μlである。
【0107】
アッセイ用に、図11のレイアウトを有するマイクロ流体チップが用いられる。このチップ中の反応チャンバは、以下の寸法:H=0.25mm、L=0.5mm、1mmの深度を有する。反応チャンバの全体積は従って、約25μlである。この反応チャンバにおいては、キットの約50μlのガラス粒子が反応チャンバ中で分離及び保持される。
【0108】
チップを通じてのサンプル及び試薬処理は、前述の「パルス注入」モードに従って行われ、ここでは、粒子は2s間にわたり反応チャンバ中で均一に混合され、約1sの分離及び液体注入が後に続く。25μlのサンプル容量を処理するのに約3秒必要であり、。0.5ml/minの処理流動速度と等価である。
【0109】
洗浄ステップは各々300μlの容量を有する、キットの3つの洗浄試薬を用いて実行される。洗浄は流動モード及び「パルス注入」モードの双方を組み合わせることによって実行される。総ての必要な洗浄ステップを実行するのに2分未満必要である。DNA溶出用の、キットの溶出バッファの容量は、反応チャンバの体積(〜30ml)と実質的に等しく、約3分間で均一に混合される。
【0110】
均一な混合の利点を決定するために、標準的な手動抽出(参照として)、及び、例1に示し、図13(a)に示したような高周波回転する磁場下で不均一な混合と、比較された。DNA抽出実験の実行のために、以下の結果で光吸収度を使用した。
【0111】
【表1】
【0112】
これらの結果から、粒子とサンプル内の標的分子(DNA)との間の親和結合を向上させる際に、提唱された磁性粒子の混合効果の強い影響を見ることができる。実際に、手動抽出は実行に約20分かかるが、開示した均一混合方法及びデバイスを用いた全抽出には約8分必要とした。更に、手動抽出においては、約100μlの粒子懸濁液が用いられるが、マイクロ流体の均一混合においては50μlのみが用いられる。ここで開示したように開示した均一混合を伴って小さな反応チャンバの体積(25μl)中で精製できる(10μgまで)比較的多量のDNAを考えると、混合が有効な粒子の脱分離を示す間、及びアッセイ中の混合の間、多くの利用可能な粒子面について明らかな発現がある。粒子の均一混合の別の実証は不均一混合によって得られる低い性能である。
【実施例6】
【0113】
混合の概念及びデバイスの使用
この実施例においては、開示された磁性粒子及び方法はヒトの血液全体からのDNA抽出に用いられる。抽出のために、Roche Diagnostics社(スイス)のMagNA Pure LC キットIIが例4と同一のプロセス及びプロトコルで用いられる。
【0114】
抽出結果は、>1.7の間のOD値で4乃至5μgのDNAの収量を示している。本例は、血液全体のような複雑なサンプルからの開示した混合方法の有効なDNA抽出を示している。
【0115】
当該技術分野の当業者は、ここに述べた好ましい実施例の様々な適応及び変更が、本発明の範囲及び精神から離れることなく構成されうることが分かるであろう。従って、付属の請求項の範囲内で、本発明は特にここに記載されたようなもの以外で実行できることは理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は流体あるいはマイクロ流体プラットフォームの一部分である反応チャンバ内で磁性粒子を処理し混合するシステムに関する。特に、本発明は周囲液体媒体と粒子の混合を改善する方法における、及び、液体が流体プラットフォーム中で自動処理された場合の磁性粒子の処理方法に関する。更には、本発明は生化学的活性面磁性粒子を用いて特異な生物学的又は化学的物質を含むテストサンプル上で、及び、粒子が前述のシステム及び方法に従い処理される場合に、アッセイを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、磁性粒子(ビーズ)は生化学アッセイ及び診断における標準的な技術である。磁性粒子技術は実際には、高い性能(感度及び精度)を得ることを可能し、アッセイプロトコルの簡易自動化の可能性を開いている、ロバスト性の技術である。多くのアプリケーションにおいては、磁性粒子面は抗体、レクチン、オリゴヌクレオチドあるいは他のバイオ反応性分子のような好適な配位子又は受容体でコーティングされており、混合中の標的物質を他の物質と選択的に結合できる。小さな磁性粒子又はビーズの例は、米国特許第4,230,685号、米国特許第4,554,088号及び米国特許第4,628,037号に開示されている。
【0003】
磁性粒子のバイオ分離及び処理技術における1の重要な要素は、有効な混合であり、ターゲット物質と粒子面との間の反応速度を向上させている。実際には、表面ベースのアッセイに関しては、反応は自然拡散過程によって強く制限され、強い動き及び混合が、配位子と標的物質との間の親和結合反応を促進するのに必要である。
【0004】
試験媒体における磁性粒子混合装置の一般例は、米国特許第6,231,760号で開示されており、MixSep(登録商標)システムの名のもとで、Sigris Research社によって商業上入手可能である。この特許及びシステムにおいては、好適な容器内に磁性粒子を有する試験媒体は、外部磁石により生成された磁場勾配中に配置される。混合の概念は固定容器に対する磁石の移動、あるいは、機械的手段を用いた永久磁石に対する容器の移動のいずれかに基づいており、従って、容器内部の磁力勾配位置の「相対的な転置」を誘起する。この磁場勾配の転置は次々と磁性粒子を誘起して、磁石(磁場勾配)位置の変化と共に連続移動し、これにより混合を引き起こす。しかしながら、この方法では、磁場勾配は容器の壁に近い空洞領域内に粒子を引きつけ拘束するであろう(http://www.sigris.com/mixsep_technology.html参照)。このような状態においては、粒子と試験媒体との間の接触は、混合効果を低減させる前記空洞空間に制限される。磁石の「機械的移動」が混合手段として要求されるが、容器周囲に配置された電磁石の連続的な操作によって、粒子の角運動を生成する可能性についても述べられている。しかしながら、電磁石は永久磁石と比較した場合、より低い磁場を提供するが、述べられたように、隣接した電磁石間の磁力結合は容器外側の磁束と強く反発し、更なる磁場強度の低下とくぼみ効果の強化を生じる。このような状態下では、粒子運動(移動)及び混合は、大部分は壁境界に近い領域での凝集体としてゆっくりと動くように誘導するように、粒子を強く変化するであろう。
【0005】
同一の精神内で、米国特許第6,764,859号においては、容器内で磁性粒子を混合する方法が、容器と磁石の介在アレイ構造との間の相対的な「機械的」移動に基づき開示されている。このような構造において隣接した磁石は、容器と2の隣接した磁石との間の相対的な介在移動中に磁場極性の変化を誘起する対立極性を有している。実際にこのような状態においては、粒子は互いから比較的離れた場合に移動し、混合に潜在的な影響を与える。しかしながら、このアプローチでは、粒子処理プロセスの全期間を考慮した場合、互いに比較的離れる時間は比較的短くなる。結果として、いくつかの混合サイクルが有効な混合を保証するのに必要となる。更に、粒子が混合プロセス中に試験管内のサンプル容量と均一に接触せず、次々に混合効果を強く制限する。この問題はサンプル容量が大きい場合により顕著になる。
【0006】
結果的に機械的な混合アプローチが「試験管の手動混合」と比較された場合、反応時間と性能は低くない場合と実質的にほぼ同一であり、拡散が未だ重要な制限因子であることを示している。
【0007】
磁性粒子の分離と再懸濁の一態様は、欧州特許第0,504,192号に開示されている。この特許は、チャンバの壁で互いと逆に配置される2つの磁場源(電磁石)の連続操作の使用を開示している。前記電磁石の提唱された操作概念は、第1の磁石が徐々に十分なエネルギを与えられ、ついでそのパワーを低減させる一方、次の電磁石が自助にエネルギを与えられる等の、「バイナリ」(すなわちONとOFF)又は「アナログ」による電磁石の連続エネルギ(操作)に基づいている。この操作を通じて、粒子は反応チャンバ体積に移動し引き込まれ、それによって再懸濁される。「連続」操作で(少なくとも)2の電磁石を用いた概念は、概念的には凝集体からの再懸濁粒子についての明らかな方法であり、これらの「移動」中、粒子は印加した磁場下での双極性相互作用により大部分は凝集化したままである。「超常磁性」粒子を動かして、チャンバ体積を占有した後に、チャンバ内の「均一な」再懸濁を十分に保証する唯一の方法は、外部磁場を完全除去し、ブラウン及び熱運動に対して分離しないままにすることである。更には、この出願は十分な速度で2の電磁石に交互にエネルギを与え、エネルギを除去することで、粒子がチャンバの中央で懸濁されたままになることを開示している。このプロセスは粒子の動きを比較的小さな距離に限定し、粒子と周囲液体媒体との間の混合効果を十分に低減する。
【0008】
一般的には、人工磁性粒子技術の条件の限定された混合能力以上に、「試験管の近位に磁石を持ってくる」という概念に主に基づく場合、磁性粒子アッセイ手順の統合及び自動化は非常に複雑であり、扱いづらいロボットシステムを必要とする。これらの制限は総て、アッセイ手順が複雑になるにつれて、より重大な意味を持つようになる。
【0009】
マイクロ流体ベースの技術は今日、使用が容易でかつ小型自動化したシステムでの複雑な生化学アッセイ手順のより簡単な統合に通じうる大きな可能性を有するエネルギ技術として認知されている。磁性粒子技術をマイクロフルイディクスと組合わせることは、確実に、異なる試薬の正確な制御(マイクロフルイディクスによって許容された)として非常に重要であり、生物学的種及びその反応の処理(磁性粒子によって許容された)は、単一システム内に一緒に統合されるであろう。
【0010】
マイクロ流体チャネルで磁性粒子を混合する1のアプローチは、2002年の「Micro Electro Mechanical Systems」での第15回IEEE国際会議の予稿集におけるSuzuki,H.による発表「Magnetic force driven chaotic micro−mixer」で教示されている。このアプローチはマイクロ流体チャネル中の懸濁液に注入された磁性粒子の流動混合であり、この場合、周囲媒体との混合が流動経路に沿って埋め込まれたマイクロ電磁石によって生成された磁場によって保証される。マイクロチャネル中の流動駆動力と共に、粒子上にマイクロ電磁石により誘起される磁場の組合せは、無秩序なレジームを誘起し、それによって混合する。同様の概念は米国特許出願第2006/140,051号で近年開示され、ここでは磁場は流動の方向に対応する所定方向の側壁に配置された電磁石によって生成される。連続操作で電磁石をOFF/ONすることによって、回転磁力は流動によって運ばれた粒子の混合に通ずるように生成できる。この「流動内混合」アプローチの主要な制限は粒子と混合されうる試験媒体の容量が非常に小さく、反応時間が非常に短いことであり、その適用場面をかなり制限する。
【0011】
「流動内混合アプローチ」の限界を克服するために、溶液は磁場勾配を用いて流体チャネル又はチャンバの既定位置内に粒子を保持することに存じる一方で、試験溶液は保持された磁性粒子を通る流動と共に注入される。このアプローチは米国特許出願第2005/032,051号及び第2004/166,547号で開示され、この場合、流動マイクロチャネルに保持された粒子はイムノアッセイ法用の固体支持体として用いられた。同一方針で、DNAハイブリダイゼーションと検出アッセイ用に適用された流動概念は、刊行物「“Dynamics DNA hybridization on a Chip Using Paramagnetic Beads”,Z.Hugh Fan & al.,Analytical Chemistry,71,1999」に記載されている。しかしながら、連続した流体処理環境内で処理させるために、粒子は磁場に連続して曝露されなければならないため、ここで述べた流動アプローチは重大な物理的制限を受ける。このような状況下では、粒子は互いに固着、凝集化し、それによって主要な利点を失い、液流と能動的に接触する粒子面は激烈に低減し、アッセイ性能に重大な支障を来たすであろう。
【0012】
流動アプローチ中の磁性粒子の凝集体問題に対する解決は、米国特許出願第2005/208,464号で開示された。このアプローチにおいては、粒子は流動チャネルの一部分に保持されて、流動チャネルの横断面を実質的に均一にカバーする一種のフィルタを形成する。このフィルタを取得するために、時間変化する場(振幅、周波数及び極性)を用いて粒子凝集体を制御するように操作される。液体のマイクロ流体混合用のこのアプローチの効果は、同じ著者グループの刊行物「“Manipulation of Self−Assembled Structures of Magnetic Beads for Microfluidic Mixing and Assaying”,A.Rida & al.Analytical Chemistry,76,2004」に示されてきた。マイクロ流体環境で処理、混合する磁性粒子の重要な発生を示す場合に、米国特許出願第2005/208,464号で開示されたアプローチは、しかしながら、多くの実用的に制限する拘束を受ける。第1に、粒子が固定状態にされ、流動セルの狭いセグメントに固定される場合に、粒子とターゲット物質との間の接触はその狭い領域かつ至って短時間に限定され、実際にはこのようなプロセスは設定困難である。第2に、このアプローチはマイクロ流体環境の流動状態下で磁性粒子を処理し混合するのに特に適合し、異なるアッセイ状態下には十分には適合しない。
【0013】
適用可能な既知の手順及びアプローチが欠点を有し、マイクロ流体上でより多くの集束を有する様々な環境、同様に様々なプロセス制限で磁性ビーズを処理、混合するための要求を含み、ファクタや無効性を限定している。
【発明の概要】
【0014】
本発明は流動環境において、特にマイクロ流体環境において磁性粒子を処理し、有効に混合するためのデバイスと方法を提供している。この文脈における「混合」は、(1)特定の標的分子への粒子の有効な結合と、(2)残りの液体媒体から粒子で捕捉された標的を洗浄し、分離し、溶出し、検出する更なる可能性とを得るような方法で、大きな粒子面を周囲液体媒体に、非常に有効的な方法で特に接触させることを意味する。
【0015】
提唱された混合メカニズムは容積ユニットごとの粒子の活性面の大きく永続的な増加を提供し、この大きな粒子面と標的物質との間の強化された接触を引き起こす。更に、提唱される磁性粒子処理プロセスは都合良く、僅かな時間で全反応体積を実質的にカバーする均一な混合を保証し、それによって更に多くのサンプル容量が有効かつ迅速に粒子表面と接触するのを可能にしている。更には操作中に、粒子は全反応チャンバ体積をカバーする永続的な有効移動状態にあり、粒子混合を向上させるカギである。
【0016】
更に本発明は、流動下で、あるいは都合良くば、非流動状態下で操作できるコンパクトかつ使用が容易なシステムで複雑なアッセイ手順の統合を実際に許容する新しいデバイスと方法を提供している。
【0017】
本発明の主な態様は、特にマイクロ流体環境中で磁性粒子を操作及び混合するデバイスと方法に関し、それぞれ独立請求項1及び15により得られている。
【0018】
更に本発明は、磁性粒子を操作して混合する前記デバイス及び方法に関する技術態様を特に統合するマイクロ流体構造及び組成を開示する。本目的は独立請求項14によるマイクロ流体チップとともに得られている。
【0019】
本発明の第3の態様は、生命科学分野の、特にバイオ分子及び化学物質のアッセイ、操作、及び精製用の、先の態様に従い調整され操作された磁性粒子を用いた方法を開示している。この目的は請求項23で得られている。
【0020】
異なる実施例は従属請求項で設定され、磁性粒子を操作し混合するデバイスの別の実施例は、先の請求項のいずれかで設定されている。
【0021】
異なる実施例は従属請求項で設定される。
【0022】
本発明の一実施例によると、周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスであって:
(a)ギャップを横切り互いに対向し、前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散する、少なくとも一対の磁極であって、前記ギャップを有する前記磁極が前記ギャップ領域中に磁場勾配を提供するように配置される閉じた電磁気回路の別の部分である、少なくとも一対の磁極と;
(b)懸濁液中に前記磁性粒子を含む、マイクロ流体ネットワークの一部分であり、前記電磁極のギャップ内に配置された反応チャンバであって、当該反応チャンバ内外へ前記液体媒体を誘導及び除去のための入口/出口末端を有し、前記反応チャンバの末端が前記ギャップの狭い及び広い末端と対応するように前記ギャップに沿って、その末端間に延在する反応チャンバと;
を具え、
(c)好ましくは、前記磁極の各々が、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置の時間変化を誘起するのに合わせて変化する極性と振幅を有する磁場配列で操作され、それによって、粒子の霧が前記反応チャンバの全体積をカバーするように使用中の前記粒子に相対的な並進及び回転運動をさせることを特徴とするデバイスである。
【0023】
本発明による本デバイスの重要な要素は、チャネル寸法の横径の増加(収束部分)又はチャネル寸法の減少(開散部分)によってここで表された反応チャンバの形状変化である。チャネル形状の変化は、反応チャンバ断面を通じて流動速度の変化を誘起し、開示された混合メカニズムの重要な因子となる。実際に、流動ストリームが主要なチャンネル横断面に対し通常の方向にのみ発生する単一形状のチャネルと逆に、マイクロチャネルの変化はより有効な流動混合を導く横径速度勾配を誘起する。
【0024】
よって、可変形状反応チャンバは、反応チャンバの形状と同一方向に変化する形状を有する磁極間の空隙に配置される。反応チャンバの開散/収束部分はギャップを横切り互いに対向した少なくとも一対の磁極の空隙に配置され、前記磁極が反応チャンバと、共通の開散状態/共通の収束状態で配置される。磁極の収束/開散配置は磁極によって区切られた空隙領域を横切る磁場の変化を誘起し、それによって前記磁極の空隙に配置された反応チャンバの全体積をカバーする磁場勾配を生成する。このように生成された磁場勾配は磁性粒子を反応チャンバ中で操作、混合するための駆動力として作用する。
【0025】
そうして述べられた反応チャンバ/磁極形状によって得られる所望の効果は、磁場勾配の変化プロファイルは反応チャンバ中の流動速度勾配に関して同一の変化プロファイルに対応することである。流動速度/磁場勾配(力)のこのような「共通の変化」は、(1)液体流動状態下の反応チャンバ中で前記磁性粒子を保持して分離し、(2)磁性粒子の周囲液体媒体との混合状態でより多くの均一性を得ることができる。
【0026】
本発明の別の重要な態様は:
(1)粒子の鎖状凝集体を分解あるいは阻害し、相対的な力学動作中の粒子の霧として懸濁液中で前記粒子を維持するのに有効な、時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、前記電磁極から適用するステップと;
(2)配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバを横切る前記粒子の霧の転置を誘起し、これによって、前記粒子の霧が準即時的に又はある期間にわたり、反応チャンバの体積全体を実質的に占有するステップと;
からなる磁極操作メカニズムに関する。
【0027】
この磁極操作メカニズムが、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置(転置)の連続的な時間変化を導き、それによって、前記粒子が実質的に前記反応チャンバの全体積を実質的にカバーできる永続的で相対的な並進及び回転運動状態になるように導くことが分かった。
【0028】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られた所望の効果は、それらの動作中に前記粒子が小型の凝集体として転置されるのではなく、むしろ粒子の霧として移動していることであり、前記粒子面と前記周囲液体媒体との間の接触の強い促進を生じさせる。
【0029】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られる所望の効果は、前記粒子混合が前記反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、開示された従来技術の概念のように狭いセグメントに限定されないことである。従って、この磁性粒子処理プロセスは都合良く、均一な混合を保証し、更に多くの液体容積が前記粒子面と有効に接触するのを許容する。
【0030】
更に、本発明による操作メカニズムによって得られる所望の効果は、前記粒子を均一に混合するだけではなく、前記粒子を分離あるいは拘束して、前記粒子が、前記反応チャンバの外側境界で前記反応チャンバの体積中の部分体積を占有するようにする磁場配列を選択する将来性である。例えば、第1の磁場配列を印加して均一に転置でき、ひいては、実質的に前記反応チャンバの全体積に前記粒子を混合でき、次いで前記磁場勾配の方向を特異的に選択した第2の磁場配列を印加して、前記粒子が前記印加した磁場勾配の方向によって決定された前記反応チャンバの部分体積へ引き込まれるように導くことができる。前記粒子を制御するこの柔軟性は、アッセイプロセスに対応する粒子状態を処理及び制御するのを許容するのに、好都合に重要である。
【0031】
本発明の別の特徴は、並進運動(移動)中に、前記粒子凝集体のサイズは前記磁場極性変化の「周波数」によって主に制御できる一方、混合の均一性は磁場振幅によって制御されることである。更には、前記磁場(勾配)振幅をスイッチングパラメータとして用いて、例えば、実質的に前記反応チャンバの全体積にわたり、前記粒子を均一に混合でき、あるいは、前記反応チャンバの外側境界にそれらを引き込む(分離する)ことができる。
【0032】
更には、本発明による前記デバイス及び操作メカニズムによって得られた所望の効果は、粒子の極めて迅速な操作である。例えば、特定の第1の操作シーケンスを用いて前記反応チャンバの外側境界に前記粒子がまず分離される構成から開始された場合、第2の操作シーケンスを用いて均一の混合構成中に前記粒子を配置するには、僅かな時間(1秒又はそれ未満)で十分である。粒子はその後再度、前記第1の操作シーケンスを適用することによって、前記反応チャンバの外側境界に引き込むことができる。この迅速な操作プロセスは、血液ライセートのような複雑な高粘性媒体中にさえ到達できる。
【0033】
所望の効果に到達するために、使用中の前記磁性粒子が好ましくは、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる初期に非磁化された磁性粒子である。特に、前記粒子は200乃至1000エルステッド間の抗電界を有している。
【0034】
所望の効果に到達するために、前記時間変化した磁場配列は好ましくは、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいはこれらの形態のいくつかの組み合わせを有している。
【0035】
本発明によると、マイクロ流体チップが:
(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、開散−収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する反応チャンバと;
(b)当該チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分である磁極を受け入れる開口部と;
を具え、
(c)前記磁極が、前記反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置される;
ことを特徴とする。
【0036】
上述した態様及び公開によると、本発明は、マイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバで、マイクロ流体環境の磁性粒子を周囲媒体と混合する方法を開示し、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記方法が:
(a)各々の前記電磁極からの時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を適用するステップと;
(b)各磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値の位置(転置)の連続的な時間変化を誘起するステップと;
(c)前記粒子を均一に分配させ、前記反応チャンバの体積の実質的な部分にわたり、粒子の霧として力学的に動作するステップと;
を具えている。
【0037】
本発明の最終目的については、使用中の前記粒子が少なくとも1の標的分子との親和認識、あるいは前記反応チャンバ内の周囲液体媒体との反応を許容するように設計されるコーティング面を有している。前記標的分子あるいは試薬は前記反応チャンバへの流動によって運ばれる。互いに結合した場合、現在の発明の総ての態様は、固体支持体として磁性粒子を用いて、複雑な生化学的な合成及び分析手順の向上した性能を伴う処理を可能にする。一般的な例は、この手順を限定しないが、酵素結合アッセイ、タンパク質及び核酸抽出、又は化学発光法、NASBA、TMAあるいはPCRのような酵素の信号増幅法に基づく検出法である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の目的及び特徴は、添付の請求項に詳細に説明されている。更なる目的と利点と共に、その構成及び操作法の双方に関して、本発明は以下の記載によって最良に理解でき、添付の図と結びつけることができる。
【図1】図1(a)と(b)は、従来技術で述べたような流動磁性粒子処理アプローチの概念の概略表現である。
【図2】図2(a)は、ギャップと、このギャップ中に配置された反応チャンバ(チャネル)とを横切って互いに対向する一対の「開散」磁極を含む、本発明のある好ましい態様の概略図である。図2(b)は図2(a)の断面図であり、特に反応チャンバに磁場を提供する電磁気回路を示している。
【図3】図3(a)は、特に一対の「開散」磁極と、ギャップ形状と共通の開散状態で配置された開散型空洞を有する反応チャンバとを含む本発明の好ましい実施例の概略表現を示している。図3(b)は前記磁極の軸に沿った磁場変化プロファイルを示している。
【図4】図4(a)と(b)は、開散型反応チャンバ形状によって誘起された流動速度プロファイルと変化を示している。
【図5】図5(a)と(b)は、磁極の極性方向の変化を特に含む、本発明の好ましい実施例による磁性粒子処理及び混合の概略表現であり、誘起された磁場は粒子を軸方向に動かす効果を有している。
【図6】図6は、磁極の4極構造を含む、本発明の更に別の好ましい実施例の概略図であり、反応チャンバの空洞と共通に開散/共通に収束している。
【図7】図7(a)乃至(d)は図6の好ましい実施例のために、時間と共に変化する極性と振幅を有する磁場を用いて、電磁極の操作シーケンス結果として、反応チャンバの体積を横切る粒子の相対位置及び動作を示している。
【図8】図8は、粒子の混合及び移動が反応チャンバの全体積を均一にカバーする場合に、本発明による4極の実施例で得られる所望の効果を示している。
【図9】図9(a)及び(b)は、本発明の好ましい実施例による電磁気回路の投射図を示している。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施例によるマイクロ流体チップのレイアウトを示している。
【図11】図11(a)乃至(c)は、一般的なアッセイ、特にイムノアッセイを行うための本発明の混合方法及びデバイスを用いた処理を概略的に示している。
【図12】図11は、「パルス注入/混合」モードで処理し、磁性粒子を周囲媒体と混合する別の実施例を概略的に示している。
【図13】図13は、「回転する磁場」下での磁性粒子の異なる振る舞いを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の主要な到達可能な効果は、向上し、かつ均一な周囲媒体との混合を許容する磁性粒子の有効制御である。特に、磁性粒子の混合はマイクロ流体ネットワークの一部分であり、粒子が特定の構成及び形状を有する外部磁極を用いて処理される反応チャンバ内に実現される。従って、異なる試薬が液体流動を用いて反応チャンバに誘導され、磁極を特異に操作して、反応チャンバ内部で使用中の磁性粒子を制御する。
【0040】
一般的には、本発明のマイクロ流体環境は好ましくは0.1ml乃至500μlの範囲内の微小容量を分析するのに好適な規模で一般的に設計されたデバイスに関する。しかしながら、本発明の主要なアプリケーションの1つにおいては、大きなサンプルを用いて、デバイス中の特定のバイオ分子を次の分析用の小さな容量に濃縮する。微小規模の流動チャネルやウェルは、0.05乃至1mm程度の深度及び幅が好ましい。ここで用いたようなマイクロ流体ネットワークの一部の「反応チャンバ」は、0.1ml乃至500mlの範囲内、好ましくは、10ml乃至100mlの範囲内の体積を有する空洞を有するチャンバである。しかしながら、多くのアプリケーションについては、ミリメータ規模のより大きな「中規模の」寸法が用いられうる。同様にして、基質中のチャンバは、幅1乃至10mm及び深さ1乃至5mmの規模で、マイクロチャネルより大きな寸法をたいてい有している。
【0041】
本発明の重要な利点を示すために、図1は従来技術で述べられているような流動磁性粒子処理アプローチの概念を概略的に示している。実際に従来技術においては、磁極チップ(1)及び(1’)によって区切られた流動セル(2)の狭い領域に固定されたままである。粒子は、米国特許出願第2004/166,567号で述べたような静止磁界が適用される場合、流動セルを部分的にカバーでき、米国特許出願第2005/208,464号で述べたような時間変化する磁場が適用される場合、流動セルを均一にカバーできる。磁場勾配を生成するのに用いられた磁極チップ構成は、流動セルの静止固定化した、かつ、狭いセグメントで粒子を収束し、その狭い領域に、及び至って短時間に、粒子と標的分子との間の接触を制限する。
【0042】
従来技術の制限を克服するために、新規の磁性デバイス及び磁極形状が開示されている。従って、図2に示すように、周囲液体媒体で磁性粒子を操作及び混合するためのデバイスが、(i)ギャップを横切り互いに対向する少なくとも一対の磁極(1)−(1’)を具え、前記対向する磁極が前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散している。前記磁極は電磁気回路の一部を形成して、ギャップ領域中に磁場勾配(5)を提供するように配置される。このギャップ領域内に、流体ネットワークの一部分であり、使用中の磁性粒子が操作される、管状反応チャンバが配置される。磁気回路は電流が供給された場合に、磁極(1)、(1’)を通じてギャップ領域内に磁場を生成する、磁心(6)とコイル(7)で構成される。更に、各磁極(1)及び(1’)は好ましくは、2つの独立駆動が可能なコイル(7)を用いて互いから独立して電磁力的に駆動できる。
【0043】
述べてきた磁極形状によって得られた効果は、磁場勾配が狭い領域に限定されるのではなく、前記磁極の空隙のX軸方向に沿って延在する空間領域全体をカバーすることである。
【0044】
混合効果を向上させるために、好ましくは空隙領域中に配置された反応チャンバ(2)が磁極の方向と同一方向に変化する空洞形状を有している。図3(a)に概略的に示すように、図2(a)におけるように同一形状(同一断面)を伴う流動チャネルを有するより、反応チャンバ(2)は好ましくは、磁極間の開散型ギャップで実質的に共通に開散する可変形状を有している。反応チャンバ形状のこのような変化がある場合、有効な流動混合を導く横径速度勾配(8)を誘起するであろう(図4参照)。
【0045】
磁極(1)−(1’)によって生成される空間変化する磁場は、磁場勾配ひいては、反応チャンバ(2)中の流体の流動中の磁性粒子(9)を保持するように用いられた、X方向に沿った磁力(5)を提供する(図5参照)。反応チャンバ(2)中に粒子(9)を保持できるためには、粒子上で作用する生成された磁力(5)は、粒子を遠方に駆動しがちな流動抵抗よりも大きくしなければならない。更には、磁力(5)と流動抵抗は、X軸に沿った同一方向に減少するので、生成された磁力(5)を制御することが可能であり、実質的に流動抵抗に等しくなる。反応チャンバ(2)に誘導され、静的磁場を受ける場合、磁性粒子(9)は磁場流動線に沿って磁気チェーンを形成する傾向にある。反応チャンバ(2)中に生成される磁場勾配のために、磁気粒子の鎖は合体して、強く凝集した鎖状構造を形成する。好ましくは用いられる磁性粒子(9)の量は、磁気凝集構造が図5の左側に示すように、反応チャンバ(2)の円錐部分の磁極近くに主に配置される。交流磁場として時間変化する磁場はその後適用され、所定の流速で(すなわち、必要に応じて少し増やして)、このような磁性粒子構造を通る流体流動で、凝集した鎖状構造を分解する。低く凝集した磁気構造は図5の右に示すように得られ、磁場振幅及び周波数と、磁極形状によって提供された磁場勾配と、反応チャンバ(2)中の流動の流速とを調節することによって制御される。
【0046】
このように述べられてきた反応チャンバ/磁極形状によって得られる所望の効果は、磁場勾配の変化特性が、反応チャンバ中の流動速度勾配について同一の変化特性に対応することである(図3(b)及び図4(b)に示すように)。流動速度/磁場勾配(力)のこのような「共通な変化」は、磁性粒子の液体流動との混合状態(ひいては、より制御され、且つ有効な混合)で更なる均一性に到達するようにできる。
【0047】
本発明による、図2乃至5のデバイスの幾何学的パラメータは、反応チャンバ(2)中の磁気損失を低減し、磁束の最大集束を保証する方法で設定される。更に、これらの寸法の調整は、生成された磁場勾配が反応チャンバ全体をカバーし、消えた磁場勾配を有する反応チャンバ内部のゾーンの存在を最小化する。この展望において、反応チャンバの開散部分の長さ(L)に対する大きな末端の深度(H)との間の比率は、0.1乃至10の間、好ましくは0.1乃至1の間である。開散部分の長さ(L)の一般的な値は、50μm乃至10mmの間、好ましくは100μm乃至5mmの間である。反応チャンバの狭い末端に接続されたマイクロ流体チャネルの寸法は、50μm乃至5mm、好ましくは100μm乃至1mmの範囲にある。
【0048】
従って、本発明の主要な態様は時間変化する極性と強度とを有する磁場配列の各電磁極の適用に基づいた磁極操作メカニズムに関する。
【0049】
本発明によるこの操作態様の一般例は、図5に示されている。図5(a)に概略的に示されるように、「平行振動する」磁場(4)−(4’)はこのような状態下で、磁極:
磁極1及び1’:B=B0sin(2πf1t) (1)
に適用され、磁界の極性の永続性変化のために、磁気凝集(鎖)は磁界の周波数(f1)をとともに減少するサイズを有する小さな粒子の鎖状構造へ分解するであろう。最終的に粒子は相対的な力学運動における粒子の霧として振る舞うであろう。「振動する」磁場の使用を特徴づける別の重要な現象は、粒子凝集分解に更に寄与する(粒子が同じ速度で回転しないという事実による)粒子間の負の双極相互作用の生成である。例えば、粒子が磁極方向に凝集塊として大部分引き込まれるような静止磁界の場合(図1(a)に示したような)と対照的に、振動する磁場においては、粒子(回転中の)は、反応チャンバの断面にわたって均一に与えられる傾向にある(図5(a)に示したように)。言い換えれば、振動する磁場の下では、粒子は粒子間の反発的な磁力の発生のためにより大きな空間を占有する傾向にある。
【0050】
要約すれば、本発明による磁極の基礎操作としての時間で変化する極性と振幅を有する磁場の使用は、粒子凝集体の有効な分解あるいは阻害を可能にし、相対的な力学運動の粒子の霧として懸濁液中に粒子を維持する傾向にある。
【0051】
しかしながら、磁性粒子の操作が磁気(力)勾配(5)の使用を必要とする場合、粒子は反応チャンバの狭いセグメントに引き込まれ、集束して、ひいては粒子を凝集する傾向になる。この凝集体は適用される磁界の振幅(B0)、及びこれによって磁力勾配を低減することにより減ずることができる。実際に適用される磁界の振幅(B0)を低減することによって力を減ずる場合、「回転する」粒子構造(9)が相対回転によって誘起される粒子間の反発的な磁力のためにX方向にそって急激に伸びるのを観察する。
【0052】
磁場勾配によって誘起される更なる凝集体を克服するために、図5(b)で示したような本発明によると、磁極(1)と(1’)の各々から生成された磁場極性(4)−(4’)の極性は平行から逆(逆平行):
磁極1:B=B0sin(2πf1t+π)、
磁極1’:B=B0sin(2πf1t) (2)
へと変化して、磁力(5)の方向に変化を生じ、磁力(5)の方向に従いX方向の軸方向に、反応チャンバの狭いセグメントから広いセグメントまで粒子(9)を動かす。
【0053】
従って、式(1)及び(2)によって規定された磁極の操作スキーム間の連続的な「スイッチング」は、反応チャンバの狭いセグメントから広いセグメントへの磁場勾配の最大値の位置の連続的な時間変化を生じさせる。これらの磁場勾配の最大値は次々と、粒子が磁場勾配(5)の変化に従い反応チャンバの狭いセグメントと広いセグメント間の永続性の軸方向移動状態になるように誘導する。
【0054】
従って、本発明による操作メカニズムは、式(1)及び(2)によって規定された磁極の操作スキーム間の切替周波数(f2)の好適な選択によって、図5(c)に概略的に示したように、粒子が反応体積全体を実質的に均一にカバーする状態に到達できるという知見に基づいている。
【0055】
このように述べてきた操作メカニズムは、実質的に反応チャンバの体積全体をカバーできるように永続的な相対的な並進及び回転運動状態となるように、粒子を誘導する。このような粒子のダイナミクスは、混合が反応チャンバの体積全体を実質的にカバーし、開示された従来技術の概念のように狭いセグメントに限定されないような、本発明によって開示された粒子混合の重要な因子である。ゆえに、この磁性粒子処理プロセスは都合良く、均一な混合がより多くの液体容量を粒子表面と有効に接触するのを可能にすることを保証する。
【0056】
更に、欧州特許第0,504,192号の従来技術の磁性粒子再懸濁概念と比較すると、図2の開示された磁性デバイスでの「バイナリ」(すなわちON及びOFF)あるいは「アナログ」による電磁石の連続励磁(操作)は、大部分で凝集されたままである場合に至ってゆっくりと移動するように粒子を誘導する。更に、図5(a)と5(b)の2つの状態間の極性変化は、米国特許第6,231,760号によって示唆されるように、この問題を実質的には解決しない。このような困難性が、相対的に「小さな」作業体積が隣接する磁石間の強い磁力結合を導く場合の「マイクロ流体」の特異性である。
【0057】
本問題を解決するために、本発明の重要な知見は、各電磁極に時間変化する極性と強度を有する磁場配列を適用することであり、役割は、粒子凝集体を効果的に分解又は制御し、相対的な力学運動での粒子の霧として懸濁液中の粒子を維持することであり、その後、ある配列の異なる磁極からの磁場を結合して、実質的に反応チャンバの全体積にわたる粒子の均一混合を誘起することである。
【0058】
明らかさのために、及び、最初の図として望むものに反して、図5(a)及び5(b)中の(及び他の図総ての)磁極の極性を表す「矢印」は固定されていない。実際に、これらの極性は時間によって方向を連続変化する。「代わりに」、「固定化した」狭い方向は粒子操作中の電磁石の「相対的な」極性を表している。
【0059】
本発明による別の実施例において、及び図6に示すように、磁性粒子を操作し混合するためのデバイスは、磁極が、(i)開散型ギャップを形成する互いに対向した第1の一対の磁極(1)−(1’)と、(ii)互いに対向し開散型ギャップを形成する第2の一対の磁極(10)−(10’)とを具え、互いに対向した前記第1及び第2の一対の磁極の前記開散型ギャップの広い末端を伴う4極子と、(iii)流体ネットワークの一部分である反応チャンバとを形成するように提供され、前記磁極間の前記開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置される前記反応チャンバの開散部分を伴う空洞を有している。
【0060】
4極構成がより向上した効果を許容する、先の実施例のより洗練されたバージョンであることは明らかである。特に、前述の2極構造の場合のような実質的な軸性(軸対称)である以上に、磁場勾配(5)は、実質的に「球対称」を有している。一対以上の磁極によって誘起される「多方向」磁場勾配を有する可能性は、図7(a)−(d)に示されるような、より「豊富な」構造に従い、磁場勾配の最大値の位置を動かす可能性を提供する。特に、多極(4極)構成の各磁極から誘起された磁場(4)の固有かつ連続操作によって、反応チャンバの体積を横切る磁場勾配の最大値の位置を、これらの最大値の連続位置が反応チャンバの全体積をカバーする方法で動かすことができる。
【0061】
図7(a)−(d)は概略的に異なる磁極操作(4)と対応する磁性粒子構成を示し、実際には磁場勾配の最大値の位置に対応している。このような磁気処理プロセスによって得られる効果は、例えば粒子を連続移動することによって、図7(a)−(d)の構成に従い、粒子の移動は図8に示すように反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、これによって、周囲液体媒体との強い混合を保証している。
【0062】
先の事項から、本発明による操作メカニズムの第1の重要な要素は、時間と共に変化する極性と振幅を有する磁場である磁極の「基本」磁場操作(4)である。この操作する磁界の一般例は、式(1)のうちの1つとしての振動する磁場である。一般的に、このような基本磁気の操作磁界は実質的に矩形、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいは前記形態のいくつかの組み合わせを有している。
【0063】
先の事項から、本発明による操作メカニズムの第2の重要な要素は、磁極が特定の配列に従い操作され、反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値位置の連続時間変化を誘起し、それによって、使用中の粒子が反応チャンバの全体積をカバーする相対的な力学動作になるようにする。
【0064】
従って、「時間変化する極性と強度を有する磁界配列」による本発明においては、配列変化に沿った各磁極の「基本」操作磁界の組成を意味し、反応チャンバの体積を横切る粒子移動を誘起する。実際には、2つの主要な要素:(1)時間と共に変化する極性と振幅を有する基本操作磁界要素と(2)反応チャンバを横切る粒子転置を誘起し、それによって粒子混合に影響を与える、この基本操作磁界要素の連続変化と、で各磁極を操作する磁界配列を分解する。
【0065】
従って、実際には基本操作磁界要素は粒子の鎖状の凝集体を分解する役割を有し、それによって、粒子の多くの表面が周囲液体媒体と接触するのを保証する一方で、この基本操作磁界の連続変化が反応チャンバ全体にわたる粒子「霧」の連続移動を誘起し、それによって実質的に反応チャンバの全体積にわたり、「凝集されていない」粒子の均一な曝露を保証している。
【0066】
結果的に、本発明による操作メカニズムによって得られた所望のの効果は、動作中に小さな凝集体として転置されず、粒子の霧として移動し、粒子表面と周囲液体媒体との間の接触の強い向上を生ずる。
【0067】
前述の操作メカニズムにおいて、磁極の配列操作と同様に、基本操作磁界の時間変化は周期性のない変化であるが、周期性のある変化であることが好ましい。周期的な場合において、基本磁界(f1)と操作配列(f2)の周波数は実際に異なりうる(f1≠f2)。前述の粒子混合効果に到達するために、操作配列周波数(f2)は基本磁界周波数(f1)とほぼ同一又はそれ以下である。一般的には、前述の粒子混合効果に到達するために、基本磁界の時間磁界変化(すなわち各磁極中の振幅及び極性の時間変化)は好ましくは、磁極の連続時間操作より高いか少なくとも等しい。
【0068】
周波数f1とf2によって規定される、本発明による磁場の時間変化は、0.1Hz乃至1000Hz程度であり、好ましくは1Hzと500Hzの間であり、他の時間尺度は非周期変化を特徴づける。
【0069】
本発明による操作メカニズムによって得られる有利な効果は、粒子が特定期間にわたって全反応容量をカバーする力学的移動を示すことである。実際に本発明によると、粒子は反応チャンバ体積の少なくとも50%、好ましくは80%乃至99%を均一にカバーする。この均一なカバーは、磁極の配列操作時間(又は周波数)によって決定される期間中に得られる。実際には、均一混合は10s乃至10nm間、好ましくは1s乃至10ms間の期間で得られる。好ましい実施例において、かつ、操作磁界パラメータによると、混合の均一性は長期にわたって反応チャンバの99%をカバーするであろう。
【0070】
所望の効果に到達するために、使用中の粒子が好ましくは、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる初期に非磁化された磁性粒子となる。特に、粒子は200乃至1000エルステッドの抗電界を有している。使用中の粒子が好ましくは「超常磁性」である場合、先の技術で報告したことに反し、粒子が特定の(強磁気)ヒステレシス反応を示すという事実が、本発明による混合効果を得るのに重要な条件であることが分かる。実際には前述したように、粒子操作メカニズムは各磁極の「基本」操作磁場要素として、好ましくは高周波数「振動」磁界の使用中に存ずる。このような高い変化周波数(f1>1Hz)では、粒子がヒステレシス反応を有するという事実が、磁界振動で物理的に回転することによってこのような「迅速な」磁場変化に従うことを可能にする。高周波数振動磁場(時間変化する極性と強度を有する磁界)でのこの粒子回転は、粒子脱分離プロセスの始まりである。
【0071】
更に、所望の効果に到達するために、好ましくは使用中の粒子が、使用中の粒子の抗電界より低い振幅(最大の磁場強度)を有する「振動する」(時間変化する極性と強度を有する磁界)磁場で操作される。
【0072】
従って、使用中の粒子は国際特許出願第WO2005/056579号に開示されたプロセスに従う特性で好ましくは合成され、参照としてここに取り込まれる。
【0073】
一般的に本発明はマイクロ流体環境概念で処理及び混合する前述の磁性粒子の総てを統合する方法を提供する。本方法はマイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバの使用にあり、少なくとも一対の磁極が互いに反応チャンバを横切って対向し、本方法は、(a)時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、電磁極の各々から適用するステップと、(b)各磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバの全体積を横切る磁場勾配の最大値の位置の連続時間変化を誘起するステップと、(c)粒子が反応チャンバの全体積をカバーする相対的な並進及び回転運動状態にあるようにするステップと、を具えている。
【0074】
所望の効果を得るために、磁極は好ましくは「閉じた」磁気回路によって互いに磁力結合されたものとなる。このような磁気回路の一般例は、図9の投射図に示されている。実際は、図10(a)に示されるように図6の4極構成について、各磁極(1)−(1’)、(10)−(10’)はコイル(7)を有する磁心(6)によって形成された電磁石と結合される。更に、各磁心(6)は「8」の形状の「基本」磁心部分(6’)と接触している。基本磁心6’の「8」形状は各磁極の対構成が閉じた磁気回路を形成するのを保証し、これによって式(1)によって記載されたもののような操作プロセス中に磁束の強い循環を保証する。更に、各対の磁極が「閉じた」磁気回路を形成するという事実は、反応チャンバの磁束及び磁束勾配を強く集束する(集中する)のに必須である。更に、この状態は前述したように、本発明による混合プロセス及び効果を特に保証できる。
【0075】
図9(b)は4極構成のより洗練された形状と図9(a)の磁気回路を示し、4極構成のアレイが、4の異なる隣接反応チャンバで本発明による並列操作を保証し、磁性粒子を処理する。4極アレイの同一の設計及び構成は、多くの反応チャンバで磁性粒子を処理するために広げることができる。
【0076】
本発明の別の態様は、上述の磁性粒子の操作及び混合の異なる幾何学的態様を統合するマイクロ流体チップに関する。従って、マイクロ流体チップは、(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、懸濁液中の粒子を含み、開散/収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する反応チャンバ(2)と、(b)反応チャンバに出入りする液体を送達するために、それぞれ開散/収束部分の狭いセグメントにそれぞれ連結された入口(12)及び出口(13)チャネルと、(c)反応チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分である磁極を受ける入口構造とを具え、磁極は反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置される。
【0077】
反応チャンバに加えて、本発明のマイクロ流体チップは使用に依存する既知のデバイスにある1又はそれ以上の要素変化を含むように構成された。これらの要素は限定されないが、サンプル入口ポート、サンプル誘導又は収集モジュール、細胞処理モジュール(例えば、細胞溶解(ここに述べたような超音波溶解を含む)、細胞除去、細胞濃縮、細胞分離又は捕捉、細胞増殖等)、例えば、電気泳動、ゲル濾過、イオン交換/親和クロマトグラフィ(捕捉及び放出)等のような分離モジュール、化学又は生物学的反応あるいはサンプルの変更用の反応モジュール、を含み、標的分析物の増幅(例えば、標的分析物が核酸である場合、増幅技術は有用である)を具えている。
【0078】
本発明の総ての前述の実施例及び態様は主目的として、標的媒体内の標的物質と、前記液体に懸濁される粒子面との間の反応を向上させなければならない。有効な混合は、実際に、例えば(限定されないが)核酸及びタンパク質等のバイオ分子の抽出あるいは(及び)検出のような生化学的プロセスの実行に強い効果を有する。更には、開示された磁性粒子処理概念の1の重要な要素は、粒子操作手順が、検討中の生化学プロセスに対応して再適応あるいは調整されうることである。
【0079】
通常、磁性粒子の表面は公知の技術を用いてバイオ分子及び化学物質のプローブ及び操作のための特定の配位子によって生化学的に官能性を持たされている。このために、磁性粒子面は、例えば、標的分子あるいは標的分子の集まりに結合できる官能基又は配位子を具えている。可能性のある官能基は、限定されないが、カルボン酸、ヒドロキサル酸、非粘着化合物、アミン、イソシアン酸及びシアン化物を具えている。可能性のある配位子は限定されないが、タンパク質、DNA、RNA、酵素、疎水性物質、親水性物質及び抗体を具えている。一般的には、本発明の使用に好適な配位子の例は、限定されないが、タンパク質及びタンパク質の断片、ペプチド及びポリペプチド、抗体、レセプタ、アプタマ、酵素、基質、基質類似体、リボザイム、構造タンパク質、DNA及びRNA及びDNA/RNA複合型のような核酸、糖類、脂質、様々な疎水性又は親水性物質、親油性物質、化学誘引物質、酵素、ホルモン、フィブロネクチン等の分子及びマクロ分子を具えている。このような分子及びマクロ分子は自然発生及び合成にすることができる。用語「配位子」は、細胞、組織、全部の微生物、ウイルス等のような大きな主体を含むこともできる。
【0080】
このような官能基を持った粒子を用いて、本発明の混合及び分離プロセス分離のためのバイオ特有の親和結合反応を含む様々な実験及び臨床手順に特に有用性がある。バイオ特有の親和結合反応は生物学的サンプルの標的物質の広い範囲の決定又は単離用に使用されうる。標的物質の例は、細胞、細胞成分、細胞亜集団(真核及び原核の双方)、バクテリア、ウイルス、寄生虫、抗原、特異な抗体、核酸配列等である。
【0081】
更に本発明の混合及び分離プロセスは検出手順で特定の用途を有し、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、実時間PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖転置増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)を含んでいる。
【0082】
開示した磁性粒子の処理及び混合デバイス/方法の使用例は、図11に示されている。この図はサンドイッチ型イムノアッセイの異なるステップを示し、(a)第1のステップでは(図11(a))、特異的な捕捉プローブでコーティングされた粒子は、図7及び9で前述のように反応チャンバを均一にカバーするように混合された。本ステップにおいては、標的のバイオ分子を含むサンプルは、反応チャンバを通じて液体流動で押される。その目的のために、反応チャンバ/磁極の「共通に変化する」形状は、(図3及び図4に示すように)液体流動を伴う磁性粒子の混合状態の均一性を保証している。整然と調整される場合、これらの状態総てが、粒子面で標的の強い捕捉効果を許容する。(b)図11(b)に述べたように、洗浄ステップの後に、検出プローブを含む規定量の試薬(反応チャンバの体積と実質的に等しい)が、反応チャンバに注入される。この場合において、粒子は再び周囲媒体と均一に接触及び混合され、粒子面上での基質と検出プローブとの間の有効な相互作用を許容する。検出信号が拡散によって主に誘起される古典的なイムノアッセイ試験に反して、本混合プロセスは反応チャンバの全体積をカバーする検出基質と粒子表面との間の強い相互作用を可能にしている。ゆえに、検出信号の大きな向上は、この方法で生成され、開始サンプル(血液あるいは血漿として)内の低い標的分子濃度の検出を可能にしている。図11(c)に示すように、検出中に粒子は図7(b)の配列に従って、反応チャンバの境界に引き込まれる(分離される)。
【0083】
本発明による磁性粒子処理及び混合の使用の異なる実施例においては、大きなサンプル量から標的を捕捉するための流動を有するよりも(例えば、前の例11(a)のステップで示されたように)、標的の濃度は静止(流動なし)状態下でより制御された方法で得ることができる。図11に概略的に示された本実施例は、反応チャンバ中のサンプルの「パルス注入」(連続流動の代わり)の概念の使用に基づき、後に粒子の均一混合が続いている。特に、第1のステップ(図11、上)においては、粒子は反応チャンバの壁に引き寄せられ(図7(b)の操作配列を用いて)、反応チャンバの体積を過剰せずに規定量のサンプルが注入される間保持される。第2のステップ(図11、下)においては、特定の捕捉プローブでコーティングされた粒子は、図8に前述したように反応チャンバを均一にカバーするように混合されるが、いかなる流れもなしである。規定期間の混合後、粒子は再度反応チャンバの壁に引き付けられ、新しいサンプル量が反応に注入され、その後混合される。このプロセスはサンプル量全体が磁性粒子と混合するまで、連続した方法で繰り返される。
【0084】
このような「パルス注入/混合」モードの利点の1つは、実際には設定がとても難しい流動状態内の磁性粒子を処理する制限を扱うのを避けていることである。更には、接触時間が比較的極度に短い流動の場合に反して、混合時間はパルスモードではより容易に制御され、標的分子及び最終使用に対応するように適用できる。
【0085】
以下の実施例は本発明を用いる方法とプロセスを更に詳述する。本実施例は例示的であり発明を限定しないと見なすべきである。本実施例で与えられた操作は、他に示されていない限り、周囲温度である。
【実施例1】
【0086】
操作メカニズム
図7の操作配列は、基本配列として用いられる時間変化する(振幅及び極性)磁場を用いて操作する間に、どのようにして磁性粒子を各磁極からの磁場の組合せに従って移動できるかの例示である。この移動中、粒子は粒子の霧として反応チャンバの全体積を実質的にカバーし、それによって混合を保証する。「不連続な」配列として示されているが、図7に示すような粒子の配列は、磁極操作配列に従う回転磁場として得られる。
磁極1及び10’:B=B0sin(ft)、
磁極1’及び10:B=B0sin(ft+π/2) (3)
【0087】
式(3)において、各磁極での基本配列操作は、操作プロセスが対角線に結合された磁極間のπ/2の位相シフトによって保証される場合、振動する磁界である。この構成においては、基本及び配列操作磁界は同一周波数fを有している。
【0088】
式(3)の配列による操作において、低周波及び高周波レジームという、2の粒子レジームが区別されうる。
【0089】
一般的にf<5Hzの低周波では、粒子は比較的「ゆっくりと」回転し、粒子は図7に概略的に示されるように、配列を一般的に生成する反応体積を横切って移動する。このレジームの特殊性は1の磁極構成から他方への移動中の粒子(図7参照)が、より長い磁気チェーンを「凝集」するのに十分な時間を有することである。1Hzより高い周波数では、実質的に総ての(>90%)反応体積をカバーする迅速で強いダイナミクスを示す。しかしながら、回転磁場のこのレジームでは、粒子は「比較的」凝集されている。
【0090】
より脱凝集した粒子サイズは、f>5Hzの回転磁場の高い周波数で最終的に得られる。代わりにこのレジームでは、磁性粒子の迅速な回転が鎖形成に十分な時間を与えず、磁界周波数で減少する大きさを有する小さな粒子の鎖状構造に分解するように粒子の鎖を誘導するため、粒子の振る舞いが激しく異なっている。低周波レジームでの違いとして、粒子が反応チャンバの対角線に沿って延在する時間がないので、図7(b)の配列は観測されない。実際に高周波で生ずることは、粒子が反応チャンバの壁に引き付けられ収束することである。図13(a)は高周波での粒子の振る舞いの映像を示している。
【0091】
この問題を克服するために、本発明についての知見は、強磁性粒子の使用と組み合わせて、適用される回転磁界の周波数を増加させる場合に振幅を減ずることである。磁場振幅の低減は実際に、回転粒子間の磁気勾配力及び反発的な二極性の力の低減によって反応チャンバ体積にわたり更に粒子を広げるのを可能にする。磁力の減少が粒子の移動を減速すると、高い周波数の磁界が粒子移動を更に推進するのに要求される。一般的に20Hz以上と、好ましくは、100Hz乃至500Hzの範囲内との間にある、このような高周波数では、強磁性粒子の使用は、これらの粒子の「磁気異方性」が移動し、磁界変化に従うように誘導するカギである。図13(b)は高回転周波数(約300Hz)の下で得られる反応チャンバ中の粒子の均一被覆度を示している。この混合中に、粒子は反応チャンバを横切って強く移動し、それによって強くかつ有効に混合するのを可能にする。
【0092】
本例中に与えられた周波数の値が指標のためだけの一般的な値であり、実験で用いた特定の粒子(Roche Diagnostics社のMagNA Pure LC粒子)で得られることをここで指摘することは重要である。他の粒子型の使用は前述のように、異なる粒子のレジーム及び振る舞いの周波数の制限に確実に影響を与えるであろう。
【実施例2】
【0093】
操作メカニズム
式(4)は本発明による混合を得るための別の操作配列を示している。
磁極1及び10’:B=B0sin(f1t)sin(f2t)、
磁極1’及び10:B=B0sin(f1t)sin(f2t+π/2) (4)
【0094】
この配列においては実際には、第1の振動要素(sin(f1t))は、磁極の周波数f1での基本操作磁界以上のものではなく、第2項は周波数f2を有する回転形態中の粒子の「霧」を移動させる操作配列を規定している。式(4)の配列は特に、前述(例1)の式(3)の低周波回転磁界の粒子の凝集を解決することを可能にする。例えば、周波数f2=1Hzで粒子を回転することによって、粒子の鎖は基本磁界f1>10Hzの高速振動によって分解されるであろう。
【実施例3】
【0095】
操作メカニズム
式(5)は本発明による混合を得るための別の操作配列を示し、式(1)の回転する磁場の周波数は、「変調」される。
f=f0+f1sin(Ωt) (5)
【0096】
知見は低周波のレジームと高周波のレジームとの間の周波数を変調することが、それによって有効な混合を保証することである。変調周波数(Ω)の好適な選択によって、この場合、低周波での凝集体との均一混合、及び高周波での霧粒子構造との「不均一」混合という、2のレジーム間で平衡できる。回転磁界の周波数を変調するこの方法は、均一混合が例1に示したような振動周波数を増加することのみによっては得るのが難しい場合の、高粘性液体にとって特に重要である。
【0097】
周波数変調が例えば、1の高周波数値と1の低周波数値との間を切り替える「方形」信号のような他の形態によってなされうることは、当業者にとって明らかである。各値は液体粘度に本質的に依存する特定期間維持して、均一混合を保証することができる。
【0098】
使用中の粒子が好ましくは強磁性であり、粒子が高周波で移動及び回転するのを可能にすることをここで再度強調することは価値があることである。
【実施例4】
【0099】
操作メカニズム
ここまでの例では、「回転する磁場」を用いることに基づいていたが、粒子の霧の線形操作配列を更に用いて、混合して均一状態に到達させることができる。線形操作モードの一般例は、粒子を図7(b)で示されるように操作配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt+π) (6)
を用いて粒子を、外側境界へ移動させることによって得ることができる。
【0100】
この段階で、粒子は配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt+π/2) (7)
によって反応チャンバの左隅(狭い部分)に移動できる。
【0101】
対称性によって、反応チャンバの右隅(狭い部分)方向の転置は、配列:
磁極1及び1’:B=B0sin(ωt+π/2)、
磁極10及び10’:B=B0sin(ωt) (8)
によって得ることができる。
【0102】
前の3構成間の連続移動は、所定速度で順番:(6)→(7)→(6)→(8)に従い、期間にわたって均一混合を得ることができる。
【0103】
実際には、より良い混合プロセスは回転あるいは線形モードのみを通じては得られず、通常は両モードの混合が好ましい。
【0104】
ここでこの例において、基本操作としての「正弦」磁界の選択は、式を伴う現実的な分析形態だからである。本発明の範囲内であれば、時間通りに変化する極性と強度とを有する、より複雑な操作の「基本配列」は、同一の効果を誘導するであろう。
【実施例5】
【0105】
混合の概念及びデバイスの使用
本実施例では、開示した磁性粒子デバイス及び方法が、挿入されたプラスミドを有するバクテリア(大腸菌)培養液からのDNAの抽出に用いられている。抽出のために、Roche Diagnostics社(スイス)のMagNA Pure LCキットが用いられる。このキットの特殊性は、磁性粒子が約200エルステッドの抗電界で強磁性反応を示すことである。
【0106】
サンプル標本用に、約2×108細胞/mlの濃度を有する、200μlのPBS中のバクテリア培養物は、(a)400μlの溶解結合バッファ、(b)100μlのイソプロパノール、(c)100μlのプロテイナーゼKと混合される。全抽出体積はそれゆえ800μlである。
【0107】
アッセイ用に、図11のレイアウトを有するマイクロ流体チップが用いられる。このチップ中の反応チャンバは、以下の寸法:H=0.25mm、L=0.5mm、1mmの深度を有する。反応チャンバの全体積は従って、約25μlである。この反応チャンバにおいては、キットの約50μlのガラス粒子が反応チャンバ中で分離及び保持される。
【0108】
チップを通じてのサンプル及び試薬処理は、前述の「パルス注入」モードに従って行われ、ここでは、粒子は2s間にわたり反応チャンバ中で均一に混合され、約1sの分離及び液体注入が後に続く。25μlのサンプル容量を処理するのに約3秒必要であり、。0.5ml/minの処理流動速度と等価である。
【0109】
洗浄ステップは各々300μlの容量を有する、キットの3つの洗浄試薬を用いて実行される。洗浄は流動モード及び「パルス注入」モードの双方を組み合わせることによって実行される。総ての必要な洗浄ステップを実行するのに2分未満必要である。DNA溶出用の、キットの溶出バッファの容量は、反応チャンバの体積(〜30ml)と実質的に等しく、約3分間で均一に混合される。
【0110】
均一な混合の利点を決定するために、標準的な手動抽出(参照として)、及び、例1に示し、図13(a)に示したような高周波回転する磁場下で不均一な混合と、比較された。DNA抽出実験の実行のために、以下の結果で光吸収度を使用した。
【0111】
【表1】
【0112】
これらの結果から、粒子とサンプル内の標的分子(DNA)との間の親和結合を向上させる際に、提唱された磁性粒子の混合効果の強い影響を見ることができる。実際に、手動抽出は実行に約20分かかるが、開示した均一混合方法及びデバイスを用いた全抽出には約8分必要とした。更に、手動抽出においては、約100μlの粒子懸濁液が用いられるが、マイクロ流体の均一混合においては50μlのみが用いられる。ここで開示したように開示した均一混合を伴って小さな反応チャンバの体積(25μl)中で精製できる(10μgまで)比較的多量のDNAを考えると、混合が有効な粒子の脱分離を示す間、及びアッセイ中の混合の間、多くの利用可能な粒子面について明らかな発現がある。粒子の均一混合の別の実証は不均一混合によって得られる低い性能である。
【実施例6】
【0113】
混合の概念及びデバイスの使用
この実施例においては、開示された磁性粒子及び方法はヒトの血液全体からのDNA抽出に用いられる。抽出のために、Roche Diagnostics社(スイス)のMagNA Pure LC キットIIが例4と同一のプロセス及びプロトコルで用いられる。
【0114】
抽出結果は、>1.7の間のOD値で4乃至5μgのDNAの収量を示している。本例は、血液全体のような複雑なサンプルからの開示した混合方法の有効なDNA抽出を示している。
【0115】
当該技術分野の当業者は、ここに述べた好ましい実施例の様々な適応及び変更が、本発明の範囲及び精神から離れることなく構成されうることが分かるであろう。従って、付属の請求項の範囲内で、本発明は特にここに記載されたようなもの以外で実行できることは理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスであって:
(a)ギャップを横切り互いに対向し、前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散する、少なくとも一対の磁極であって、前記ギャップを有する前記磁極が前記ギャップ領域中に磁場勾配を提供するように配置される閉じた電磁気回路の一部である、少なくとも一対の磁極と;
(b)懸濁液中に前記磁性粒子を含む、マイクロ流体ネットワークの一部分であり、前記電磁極のギャップ内に配置された反応チャンバであって、当該反応チャンバ内外へ前記液体媒体を誘導及び除去のための入口/出口末端を有し、前記反応チャンバの末端が前記ギャップの狭い及び広い末端と対応するように前記ギャップに沿って、その末端間に延在する反応チャンバと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記磁極の各々が、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置の時間変化を誘起するのに合わせて変化する極性と振幅を有する磁場配列で操作され、それによって、粒子の霧が実質的に前記反応チャンバの全体積をカバーするように使用中の前記粒子に相対的な並進及び回転運動をさせることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバがマイクロチャネルであることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバが前記磁極間の開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置された少なくとも1の開散部分を有する空洞であることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバの狭い及び広い末端は、前記反応チャンバ内外の液体を送達するための入口及び出口とそれぞれ接続されることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバについて、前記開散部分の長さ(L)に対する前記広い末端の深さ(H)の比率が、0.1乃至1の間であることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項2に記載のデバイスにおいて、前記時間変化した磁気配列は、実質的に矩形、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいは前記形態のいくつかの組み合わせを有することを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスにおいて、前記磁場の脈動あるいは振動周波数は、毎秒0.1乃至1000周期の間であり、好ましくは毎秒1乃至500周期の間であることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスにおいて、使用中の前記粒子が、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる非磁化された磁性粒子であることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記粒子が50乃至10000エルステッド間、好ましくは200乃至1000エルステッド間の抗電界を有することを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記粒子が液流によって前記反応チャンバ中に運ばれる少なくとも1の標的分子と前記粒子を選択的に結合できるように設計されたコーティング面を有することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、液体が振動流あるいはパルス流として、前記反応チャンバを通じて流れることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のデバイスであって、周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスが:
(a)(i)開散型ギャップを形成する互いに対向した第1の一対の磁極と、(ii)互いに対向し開散型ギャップを形成する第2の一対の磁極とを具え、前記第1及び第2の一対の磁極の前記開散型ギャップの広い末端が互いに対向する磁極の4極構造と;
(b)流体ネットワークの一部分であり、開散部分を伴う空洞を有し、前記開散部分の広い末端が互いに対向する反応チャンバと;
を具え、
(c)当該反応チャンバの前記開散部分が前記磁極間の前記開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置される;
ことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
マイクロ流体チップであって:
(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、開散−収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する、懸濁液中の粒子を含む反応チャンバと;
(b)当該チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分であり、中に受け入れられる場合に、前記反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置された磁極を受け入れる開口部と;
(c)前記反応チャンバの逆側で入口−出口を提供する前記チップ内のマイクロ流体チャネルと;
を具えることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項15】
マイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバで、マイクロ流体環境の磁性粒子を周囲媒体と混合する方法において、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記方法が:
(a)粒子の鎖状の凝集体を分解あるいは阻害し、相対的な力学的な移動中の粒子の霧として懸濁液中で前記粒子を維持するのに有効な、時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、前記電磁極から適用するステップと;
(b)配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバを横切る前記粒子の霧の転置を誘起し、これによって、前記粒子の霧が準即時的に又はある期間にわたり、前記反応チャンバの体積全体を実質的に占有するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記粒子を分離又は拘束し、前記粒子が前記反応チャンバの体積中の部分体積を占有するようにするステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、各対の磁極は、前記反応チャンバが配置された磁気ギャップとともに、閉じた磁気回路を形成することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の磁性粒子を混合する方法において、前記反応チャンバが開散/収束部分を伴う少なくとも1のセグメントを有し、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記反応チャンバの開散/収束部分で開散/収束する方法で幾何学配置されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記磁極が4極構造を形成することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれか1項に記載の磁性粒子を周囲液体と混合する方法において、前記粒子が、液流によって前記反応チャンバ中に運ばれる少なくとも1の標的分子と前記粒子を選択的に結合できるように設計されたコーティング面を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法において、使用中の前記粒子が、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生する非磁化された磁性粒子であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスにおいて、前記粒子が50乃至10000エルステッド間、好ましくは200乃至1000エルステッド間の抗電界を有することを特徴とするデバイス。
【請求項23】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のデバイス、又は、請求項14に記載のマイクロ流体チップ、及び/又は、請求項15乃至22のいずれか1項に記載の方法における、磁性粒子を操作し混合するデバイスの使用が、生命科学分野、あるいは生化学アッセイ用であることを特徴とする使用。
【請求項1】
周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスであって:
(a)ギャップを横切り互いに対向し、前記ギャップの狭い末端から前記ギャップの広い末端まで開散する、少なくとも一対の磁極であって、前記ギャップを有する前記磁極が前記ギャップ領域中に磁場勾配を提供するように配置される閉じた電磁気回路の一部である、少なくとも一対の磁極と;
(b)懸濁液中に前記磁性粒子を含む、マイクロ流体ネットワークの一部分であり、前記電磁極のギャップ内に配置された反応チャンバであって、当該反応チャンバ内外へ前記液体媒体を誘導及び除去のための入口/出口末端を有し、前記反応チャンバの末端が前記ギャップの狭い及び広い末端と対応するように前記ギャップに沿って、その末端間に延在する反応チャンバと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記磁極の各々が、前記反応チャンバを横切る磁場勾配の最大値の位置の時間変化を誘起するのに合わせて変化する極性と振幅を有する磁場配列で操作され、それによって、粒子の霧が実質的に前記反応チャンバの全体積をカバーするように使用中の前記粒子に相対的な並進及び回転運動をさせることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバがマイクロチャネルであることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバが前記磁極間の開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置された少なくとも1の開散部分を有する空洞であることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバの狭い及び広い末端は、前記反応チャンバ内外の液体を送達するための入口及び出口とそれぞれ接続されることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記反応チャンバについて、前記開散部分の長さ(L)に対する前記広い末端の深さ(H)の比率が、0.1乃至1の間であることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項2に記載のデバイスにおいて、前記時間変化した磁気配列は、実質的に矩形、正弦、鋸歯状、非対称三角形、又は対称三角形の形態、あるいは前記形態のいくつかの組み合わせを有することを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスにおいて、前記磁場の脈動あるいは振動周波数は、毎秒0.1乃至1000周期の間であり、好ましくは毎秒1乃至500周期の間であることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスにおいて、使用中の前記粒子が、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生させる非磁化された磁性粒子であることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記粒子が50乃至10000エルステッド間、好ましくは200乃至1000エルステッド間の抗電界を有することを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記粒子が液流によって前記反応チャンバ中に運ばれる少なくとも1の標的分子と前記粒子を選択的に結合できるように設計されたコーティング面を有することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、液体が振動流あるいはパルス流として、前記反応チャンバを通じて流れることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のデバイスであって、周囲液体媒体中に磁性粒子を混合し、液体媒体から磁性粒子を分離するためのデバイスが:
(a)(i)開散型ギャップを形成する互いに対向した第1の一対の磁極と、(ii)互いに対向し開散型ギャップを形成する第2の一対の磁極とを具え、前記第1及び第2の一対の磁極の前記開散型ギャップの広い末端が互いに対向する磁極の4極構造と;
(b)流体ネットワークの一部分であり、開散部分を伴う空洞を有し、前記開散部分の広い末端が互いに対向する反応チャンバと;
を具え、
(c)当該反応チャンバの前記開散部分が前記磁極間の前記開散型ギャップ中に共通の開散状態で配置される;
ことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
マイクロ流体チップであって:
(a)マイクロ流体ネットワークの一部分であり、開散−収束部分を伴う少なくとも1の空洞を有する、懸濁液中の粒子を含む反応チャンバと;
(b)当該チャンバの両側に配置されて、外部磁気回路の一部分であり、中に受け入れられる場合に、前記反応チャンバの開散−収束部分で共通に開散/共通に収束する方法で幾何学的に配置された磁極を受け入れる開口部と;
(c)前記反応チャンバの逆側で入口−出口を提供する前記チップ内のマイクロ流体チャネルと;
を具えることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項15】
マイクロ流体ネットワークの一部分である反応チャンバで、マイクロ流体環境の磁性粒子を周囲媒体と混合する方法において、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記方法が:
(a)粒子の鎖状の凝集体を分解あるいは阻害し、相対的な力学的な移動中の粒子の霧として懸濁液中で前記粒子を維持するのに有効な、時間通りに変化する極性と強度を有する磁場配列を、前記電磁極から適用するステップと;
(b)配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記反応チャンバを横切る前記粒子の霧の転置を誘起し、これによって、前記粒子の霧が準即時的に又はある期間にわたり、前記反応チャンバの体積全体を実質的に占有するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、配列中の異なる磁極からの磁場を組み合わせて、前記粒子を分離又は拘束し、前記粒子が前記反応チャンバの体積中の部分体積を占有するようにするステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、各対の磁極は、前記反応チャンバが配置された磁気ギャップとともに、閉じた磁気回路を形成することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の磁性粒子を混合する方法において、前記反応チャンバが開散/収束部分を伴う少なくとも1のセグメントを有し、少なくとも一対の電磁極が前記反応チャンバを横切って互いに対向し、前記反応チャンバの開散/収束部分で開散/収束する方法で幾何学配置されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記磁極が4極構造を形成することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれか1項に記載の磁性粒子を周囲液体と混合する方法において、前記粒子が、液流によって前記反応チャンバ中に運ばれる少なくとも1の標的分子と前記粒子を選択的に結合できるように設計されたコーティング面を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法において、使用中の前記粒子が、外部磁場に対し特定の強磁気ヒステレシス反応を発生する非磁化された磁性粒子であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスにおいて、前記粒子が50乃至10000エルステッド間、好ましくは200乃至1000エルステッド間の抗電界を有することを特徴とするデバイス。
【請求項23】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のデバイス、又は、請求項14に記載のマイクロ流体チップ、及び/又は、請求項15乃至22のいずれか1項に記載の方法における、磁性粒子を操作し混合するデバイスの使用が、生命科学分野、あるいは生化学アッセイ用であることを特徴とする使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−541734(P2009−541734A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516052(P2009−516052)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052410
【国際公開番号】WO2008/010111
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508369711)スピノミックス エス.エイ. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052410
【国際公開番号】WO2008/010111
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508369711)スピノミックス エス.エイ. (1)
【Fターム(参考)】
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